特許第6153934号(P6153934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153934
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】暫間補綴物の作製方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/77 20170101AFI20170619BHJP
   A61K 6/083 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   A61C5/77
   A61K6/083 500
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-536775(P2014-536775)
(86)(22)【出願日】2013年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2013074468
(87)【国際公開番号】WO2014045956
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2016年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-203972(P2012-203972)
(32)【優先日】2012年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000181217
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】幾島 啓介
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特公平02−034615(JP,B2)
【文献】 特公昭53−030957(JP,B2)
【文献】 特開2004−337419(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0248189(US,A1)
【文献】 米国特許第02930124(US,A)
【文献】 特開昭62−233157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/77
A61C 13/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
暫間補綴物を適用する形状に成型された歯牙を含む口腔内を再現した成型歯模型(M)を作製し、該成型歯模型(M)上で作製しようとする暫間補綴物と同形状を有する補綴物模型(W)を作製し、印象材を用いて該補綴物模型(W)を装着した状態の成型歯模型(M)の印象(I)を採得し、成型歯模型(M)から取り外した該印象(I)内の歯冠となる部分に歯科用コンポジットレジン材料(C)を一層塗布し重合させ、その後、粉液タイプの常温重合レジン(R)の粉液混合物を該印象(I)内に入れ、前記成型歯模型(M)を前記印象(I)に再度嵌め合わせた状態で常温重合レジン(R)を硬化させることを特徴とする暫間補綴物の作製方法。
【請求項2】
暫間補綴物を適用しようとする歯牙を含む口腔内の印象(I)から口腔内を再現した模型(M’)を作製し、次いで暫間補綴物を適用する形状に成型された歯牙を含む口腔内を再現した成型歯模型(M)を作製し、前記印象(I)内の歯冠となる部分に歯科用コンポジットレジン材料(C)を一層塗布し重合させ、その後、粉液タイプの常温重合レジン(R)の粉液混合物を該印象(I)内に入れ、前記成型歯模型(M)を前記印象(I)に嵌めた状態で常温重合レジン(R)を硬化させることを特徴とする暫間補綴物の作製方法。
【請求項3】
歯科用コンポジットレジン材料(C)が(メタ)アクリレート化合物,重合開始剤,充填材から構成され、充填材の割合が45〜80重量%である請求項1または2に記載の暫間補綴物の作製方法。
【請求項4】
常温重合レジン(R)の粉液混合物が、(メタ)アクリレート化合物,常温重合開始剤から構成される液成分と、ポリ(メタ)アクリレート粉末,常温重合開始剤から構成される粉成分とからなり、粉成分に配合される充填材の割合が10重量%以下である請求項1ないし3の何れか1項に記載の暫間補綴物の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は最終補綴物を装着するまでに仮装着される歯科用の暫間補綴物の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クラウン,ブリッジ等の歯科用補綴物において、天然歯に近似した審美性が要求される症例の場合には、レジン前装鋳造冠,陶材焼付前装鋳造冠,レジン前装ブリッジ,陶材焼付ブリッジやオールセラミッククラウン等が用いられている。これ等の歯科用補綴物の製作は、支台歯形成を行った患者の口腔内から印象(歯牙の陰型)を採得し、更にこの印象から樹脂や石膏等によって模型(歯牙の複製)を作製した後、かかる模型に基づいて、例えばロストワックス鋳造法により作製されている。ロストワックス法は、先ず支台歯模型上にワックスを用いてコア部の蝋型を作製し、この蝋型を耐火埋没材中に埋没させ、埋没材が硬化した後に電気炉中に入れ加熱して蝋型を焼却させ、得られた鋳型に金属を鋳造し、この鋳造物を埋没材から掘り出した後、切削・研磨して金属製の補綴物を作製する。あるいは、金属製のコーピングを作製し、その後、得られたコーピング部に歯冠用硬質レジンを築盛・重合することによって作製されている。また、オールセラミッククラウンの場合は、耐火模型材を用いて複模型を作製し、この複模型上に陶材を築盛・焼成した後、耐火複模型を除去し、形態修正,研磨を行うことによって作製されている。
【0003】
通常これ等の作業は歯科技工士により行われ、最終補綴物を患者の口腔内に装着するまでには3日〜1週間程度の時間が必要となる。その間、形成された支台歯が生活歯の場合は食事中に食物が当たる物理的,酸味等の化学的,あるいは食物の温度による刺激を防ぐために最終補綴物を装着するまでに仮装着される暫間補綴物が歯科医師により作製されている。暫間補綴物にはその他にも、咬合機能の維持や審美性の回復等重要な機能を有している。
【0004】
従来の暫間補綴物は、主に常温重合レジン(即時重合レジンと呼ばれることもある)や専用の2液混合型のペースト状レジンにより作製されている(例えば、特許文献1,2参照。)。常温重合レジンは、(メタ)アクリル酸エステルポリマー粉末と(メタ)アクリル酸エステルモノマーの粉液を混合し、混合物を予め準備しておいた型を使用して作製される。あるいは患者の口腔内で直接または模型上にて筆積み法と呼ばれる方法によって作製されている(例えば、特許文献3,4参照。)。
【0005】
しかし常温重合レジンや従来のペースト状レジンで作製された暫間補綴物は一般的に充填材の配合量が少ないため摩耗しやすく強度も低い欠点があった。そのため、暫間補綴物は使用時間が数日から1週間程度と短い間であっても咬合圧等により摩耗してしまい咬合に支障が出てしまうという問題があった。また、患者の来院の都合によっては数ヶ月の間において使用されることもあり、このような場合には摩耗による不都合はより顕著に現れる。更に、使用期間に拘わらず、堅い食物による欠損や破壊の虞も大きく、より強い暫間補綴物が望まれていた。
【0006】
近年ではCAD/CAMを用いた補綴物の作製が広く行われており、暫間補綴物も同様に作製すれば強度を高めることが可能である(例えば、特許文献5,6参照。)。しかしCAD/CAMを用いる作製は、現場で作製可能な常温重合レジンによる作製と比較して作製が煩雑であり、製作に要する期間はロストワックス法と大差がないという欠点があった。
【特許文献1】特表2002−502865号公報
【特許文献2】特表2003−502351号公報
【特許文献3】特開平6−219919号公報
【特許文献4】特公平5−78531号公報
【特許文献5】特開2001−137263号公報
【特許文献6】特開2012−045190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、歯科医院で作製することが可能な簡単な方法でありながら、摩耗や破損の虞の少ない暫間補綴物を作製することが可能な暫間補綴物の作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、従来の常温重合レジンの咬合面をより強度の高い歯科用コンポジットレジンで作製すれば、前記課題を解決可能であることを見出して本発明を完成させた。
【0009】
即ち本発明の一つの実施形態は、暫間補綴物を適用する形状に成型された歯牙を含む口腔内を再現した成型歯模型を作製し、該成型歯模型上で作製しようとする暫間補綴物と同形状を有する補綴物模型を作製し、印象材を用いて該補綴物模型を装着した状態の成型歯模型の印象を採得し、成型歯模型から取り外した該印象内の歯冠となる部分に歯科用コンポジットレジン材料を一層塗布し重合させ、その後、粉液タイプの常温重合レジンの粉液混合物を該印象内に入れ、前記成型歯模型を前記印象に再度嵌め合わせた状態で常温重合レジンを硬化させることを特徴とする暫間補綴物の作製方法である。
また本発明のもう一つの実施形態は、暫間補綴物を適用しようとする歯牙を含む口腔内の印象から口腔内を再現した模型を作製し、次いで暫間補綴物を適用する形状に成型された歯牙を含む口腔内を再現した成型歯模型を作製し、前記印象内の歯冠となる部分に歯科用コンポジットレジン材料を一層塗布し重合させ、その後、粉液タイプの常温重合レジンの粉液混合物を該印象内に入れ、前記成型歯模型を前記印象に嵌めた状態で常温重合レジンを硬化させることを特徴とする暫間補綴物の作製方法である。
【0010】
更に上記の発明において、歯科用コンポジットレジン材料が(メタ)アクリレート化合物,光重合開始剤,充填材から構成され、充填材の割合が45〜80重量%であること、及び/または、常温重合レジンの粉液混合物が、(メタ)アクリレート化合物,常温重合開始剤から構成される液成分と、ポリ(メタ)アクリレート粉末,常温重合開始剤から構成される粉成分とからなり、粉成分に配合される充填材の割合が10重量%以下であること、歯科用コンポジットレジン材料が光重合型であることが好ましいこともそれぞれ究明したのである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る暫間補綴物の作製方法は、歯科医院で作製することが可能な簡単な方法でありながら、摩耗や破損の虞の少ない暫間補綴物を作製することが可能な暫間補綴物の作製方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】暫間補綴物を適用する形状に成型された歯牙を含む口腔内を再現した成型歯模型MのA-A'断面の模式図。
図2図1の模型に補綴物模型Wを取り付けた状態を示す模式図。
図3図2の模型の印象を採得している状態を示す模式図。
図4】印象を成型歯模型から取り外し、印象内部の歯冠となる部分に歯科用コンポジットレジン材料を一層塗布した状態を示す模式図。
図5図4の印象に常温重合レジンの粉液混合物を入れた状態を示す模式図。
図6図5の印象に成型歯模型を再度嵌め合わせた状態を示す模式図。
図7】常温重合レジンを硬化させ、印象から外し形態修正,研磨等の調整を行い作製された暫間補綴物の断面を示す模式図。
図8】暫間補綴物を適用しようとする歯牙を含む口腔内の印象及びそれから作製された模型M'のB-B'断面の模式図。
図9】暫間補綴物を適用しようとする歯牙を含む口腔内を再現した模型M'のB-B'断面の模式図。
図10】暫間補綴物を適用する形状に成型された歯牙を含む口腔内を再現した成型歯模型MのA-A'断面の模式図。
図11】印象を模型から取り外し、印象内部の歯冠となる部分に歯科用コンポジットレジン材料を一層塗布した状態を示す模式図。
図12図11の印象に常温重合レジンの粉液混合物を入れた状態を示す模式図。
図13図12の印象に成型歯模型を嵌め合わせた状態を示す模式図。
図14】常温重合レジンを硬化させ、印象から外し形態修正,研磨等の調整を行い作製された暫間補綴物の断面を示す模式図(図7と同じ)。
図15】暫間補綴物を適用する形状に成型された歯牙を含む口腔内を再現した成型歯模型M。
図16】暫間補綴物を適用しようとする歯牙を含む口腔内を再現した成型歯模型M'。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明に係る暫間補綴物の作製方法について詳細に説明する。本発明に係る暫間補綴物の作製方法の第1の方法を説明する。先ず図15及び図1に示すように、暫間補綴物を適用する形状に成型された歯牙TT、即ち支台歯形成または窩洞形成が行われた歯牙を含む口腔内を再現した成型歯模型Mを通常の方法により作製する。成型歯模型Mは従来からの歯科用石膏で作製されることが好ましいが、樹脂等の重合,切削,三次元プリンティング等の方法で作製してもよい。
【0014】
この成型歯模型Mを用いて、作製しようとする暫間補綴物と同形状の補綴物模型Wをワックスや合成樹脂等で作製する(図2)。次いで歯科用の印象材を用いて該補綴物模型Wを装着した状態の成型歯模型Mの印象Iを採得する(図3)。
【0015】
該印象Iを成型歯模型Mから取り外し、取り外した印象I内部の作製される暫間補綴物の歯冠となる部分に歯科用コンポジットレジン材料Cを一層塗布し重合させる(図4)。このとき、コンポジットレジン材料Cは天然歯牙のエナメル質に相当する箇所に適応することが目的なので、通常は印象材の凹部の底部が歯冠となる部分2iとなり、ここにコンポジットレジン材料を塗布する。
【0016】
その後、粉液タイプの常温重合レジンRの粉材と液材とを混合した物を該印象I内に流し込みや充填等で入れ(図5)、補綴物模型Wを取り外した状態の前記成型歯模型Mを前記印象Iに再度嵌め合わせる(図6)。このとき、余分な常温重合レジン2rが模型と印象の間から出るので必要により除去する。この状態で常温重合レジンRを硬化させ、印象から外し形態修正,研磨等の調整を行うことで暫間補綴物が作製される(図7)。
【0017】
次に本発明に係る暫間補綴物の作製方法の第2の方法を説明する。通常の方法を用いて暫間補綴物を適用しようとする歯牙を含む口腔内の印象I(図8)から口腔内を再現した模型M’を作製する(図16及び図9)。模型は従来からの歯科用石膏で作製されることが好ましいが、樹脂等の重合,切削,三次元プリンティング等の方法で作製してもよい。
【0018】
次いで、通常の方法で暫間補綴物を適用する形状に成型された歯牙TTを含む口腔内を再現した成型歯模型Mを作製する(図10及び図15)。その後、前記印象I内の作製される暫間補綴物の歯冠となる部分に歯科用コンポジットレジン材料Cを一層塗布し重合させる(図11)。このとき、コンポジットレジン材料Cは天然歯牙のエナメル質に相当する箇所に適応することが目的なので、通常は印象材の凹部の底部が歯冠となる部分2iとなり、ここにコンポジットレジン材料を塗布すればよい。その後、粉液タイプの常温重合レジンRの粉材と液材とを混合した物を該印象I内に流し込みや充填等で入れ(図12)、前記成型歯模型Mを前記印象Iに嵌め合わせる(図13)。
【0019】
このとき、余分な常温重合レジン2rが模型と印象の間から出るので必要により除去する。この状態で常温重合レジンRを硬化させ、印象から外し形態修正,研磨等の調整を行うことで暫間補綴物が作製される(図14)。
【0020】
本発明に係る暫間補綴物の作製方法は、第1の方法,第2の方法の何れの場合も歯科用コンポジットレジン材料Cが(メタ)アクリレート化合物,光重合開始剤,充填材から構成され、充填材の割合が45〜80重量%であると、歯科用の常温重合レジンと比較して摩耗や破損の虞の少ない暫間補綴物を作製することができるので好ましい。
【0021】
本発明に係る暫間補綴物の作製方法に使用されるコンポジットレジン材料Cに用いられる(メタ)アクリレート化合物は、メタクリレート若しくはアクリレートのモノマー,オリゴマー,プレポリマーであり、歯科用材料に用いる物質としては公知のものである。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ウレタン結合を持つ(メタ)アクリレートとして、ジ−2−(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオンがあり、その他2,2’−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとから成るウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとから成るウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート等がある。
【0022】
本発明に係る暫間補綴物の作製方法に使用されるコンポジットレジン材料Cに用いられる重合開始剤は、後述する常温重合レジンと同様のものが使用できる。この場合は、コンポジットレジンを2以上の成分に分割して用いる必要がある。コンポジットレジン材料Cの重合開始剤は光重合開始剤であることが好ましい。この場合は1成分とすることが可能となる。光重合開始剤は、増感剤と還元剤との組み合わせが一般に用いられる。増感剤には、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物等があり、これ等は単独若しくは混合して使用できる。
【0023】
還元剤としては3級アミンが一般に使用される。3級アミンとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート,トリエタノールアミン,4−ジメチルアミノ安息香酸メチル,4−ジメチルアミノ安息香酸エチル,4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルが好ましい。また他の還元剤として、ベンゾイルパーオキサイド,有機金属化合物,スルフィン酸誘導体等が挙げられる。この様にして得られるコンポジットレジン材料Cは紫外線若しくは可視光線等の活性光線を照射することにより重合反応が達せられる。
【0024】
光源としては超高圧、高圧、中圧及び低圧の各種水銀灯,ケミカルランプ,カーボンアーク灯,メタルハライドランプ,蛍光ランプ,タングステンランプ,キセノンランプ,アルゴンイオンレーザー等を使用することもできる。その他、必要に応じて紫外線吸収剤,着色剤,重合禁止剤等が微量使用される。
【0025】
発明に係る暫間補綴物の作製方法に使用されるコンポジットレジン材料Cに用いられる充填材は、有機,無機,あるいは有機・無機複合の何れの充填材でもよく、例えば石英粉末、アルミナ粉末,ガラス粉末,カオリン,タルク,炭酸カルシウム,バリウムアルミノシリケートガラス,酸化チタン,ホウケイ酸ガラス,コロイダルシリカ粉末,コロイダルシリカをポリマーで固めて粉砕した所謂有機複合フィラ等があり、またポリマー粉末として、ポリ(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体,架橋型ポリ(メタ)アクリ酸メチル,エチレン−酢酸ビニル共重合体等があり、あるいはこれ等ポリマー粉と前記無機粉末とを混合して用いることもできる。
【0026】
充填材の配合割合は、コンポジットレジン材料Cの全体量に対して45〜80重量%であることが好ましい。45重量%未満では十分な強度を得ることができない虞があり、80重量%を超えると操作性が悪化する傾向がある。
【0027】
前記無機質充填材は充填材と(メタ)アクリレート化合物との混合を行なう前に、充填材と(メタ)アクリレート化合物の両方に反応することのできるカップリング剤を用いて処理することが好ましい。カップリング剤としてはシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等を用いることができる。あるいは無機質フィラーの表面をグラフト化しバインダーレジンとの結合を図ることもできる。
【0028】
シランカップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエトキシ)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレノイドプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
本発明に係る暫間補綴物の作製方法は、第1の方法,第2の方法の何れの場合も常温重合レジンRの粉液混合物が、(メタ)アクリレート化合物,常温重合開始剤から構成される液成分と、ポリ(メタ)アクリレート粉末,常温重合開始剤から構成される粉成分とからなり、粉成分に配合される充填材の割合が10重量%以下であると、全体を歯科用コンポジットレジンで作製することに比べて暫間補綴物を低コストで作製することができるので好ましい。
【0030】
本発明に係る暫間補綴物の作製方法に使用される常温重合レジンに用いられる(メタ)アクリレート化合物及びポリ(メタ)アクリレート粉末は、前述のコンポジットレジン材料と同様の物質が使用可能である。特に、反応の速さや硬化後の硬さの面からメチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレートの液と、これ等のポリマー粉末であることが好ましい。
【0031】
本発明に係る暫間補綴物の作製方法に使用される常温重合レジンに用いられる常温重合開始剤は、有機過酸化物と芳香族第3級アミンとの組合せが挙げられる。これ等の触媒を使用するには常温重合レジンの組成を有機過酸化物と芳香族第3級アミンとは別々に分けて粉成分と液成分とに配合し、常温重合レジンの使用時に混合されるようにして用いられる。有機過酸化物としては、芳香族を有するジアシルパーオキサイド類や過安息香酸のエステルと見なされるようなパーオキシエステル類が好ましく、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が効果的である。これ等は粉成分に含まれるのが一般的である。
【0032】
第3級アミンとしては、芳香族基に直接窒素原子が置換した第3級アミンが好ましく、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N, N−ジメチルアニリン、N−メチル−N−β−ヒドロキシアニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキプロピル)−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、トリエタノールアミン、4− ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が好ましい。これ等は液成分に含まれるのが一般的である。
【0033】
常温重合開始剤としては前述の物質に加えて以下のような物質も使用することができる。例えば、ピリミジントリオン誘導体、有機金属化合物、有機ハロゲン化合物の組合せが挙げられる。これは、一方の成分にピリミジントリオン誘導体と有機金属化合物とを、もう一方の成分に有機ハロゲン化合物を配合するようにして使用する。ピリミジントリオン誘導体としては、1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン、1−ベンジル−5−フェニルピリミジントリオン、5−ブチルピリミジントリオン、5−フェニルピリミジントリオン、1,3−ジメチルピリミジントリオン、5−エチルピリミジントリオン等が好ましい。これ等は粉成分に含まれるのが一般的である。
【0034】
有機金属化合物としては、アセチルアセトン銅、4−シクロヘキシル酪酸銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅、アセチルアセトンマンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸マンガン、アセチルアセトンコバルト、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトンリチウム、酢酸リチウム、アセチルアセトン亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトンニッケル、酢酸ニッケル、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンカルシウム、アセチルアセトンクロム、アセチルアセトン鉄、ナフテン酸ナトリウム、レアアースオクトエート等が好ましい。これ等は粉成分に含まれるのが一般的である。
【0035】
有機ハロゲン化合物としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド等が好ましい。これ等は液成分に含まれるのが一般的である。
【0036】
常温重合レジンにおいては、粉成分に配合される充填材の割合は10重量%以下であることが好ましい。10重量%を超えると製造コストが増加する傾向がある。
【符号の説明】
【0037】
M 成型歯模型 M' 模型 I 印象 2i 歯冠となる部分 W 補綴物模型 C コンポジットレジン材料 R 常温重合レジン 2r 余分な常温重合レジン
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