特許第6153993号(P6153993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6153993クロロトリフルオロプロペンとヘキサフルオロブテンとの組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153993
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】クロロトリフルオロプロペンとヘキサフルオロブテンとの組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   C09K5/04 F
   C09K5/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-235390(P2015-235390)
(22)【出願日】2015年12月2日
(62)【分割の表示】特願2013-540448(P2013-540448)の分割
【原出願日】2010年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-102210(P2016-102210A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2016年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ラシェド, ウィザム
(72)【発明者】
【氏名】アバ, ロラン
(72)【発明者】
【氏名】ブティエ, ジャン−クリストフ
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−531970(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/137087(WO,A1)
【文献】 特表2013−514444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00、
C09K3/20−5/20、
C11D1/00−19/00、
F25B1/00−7/00、
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜70重量%のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、30〜50重量のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとから成る組成物の、空調設備またはヒートポンプの遠心圧縮機の2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン(HCFC−123)の代替品として使用
【請求項2】
1〜25重量%のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、75〜99重量%のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとから成る組成物の、空調設備またはヒートポンプの遠心圧縮機の1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)の代替品としての使用
【請求項3】
1〜85重量%のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、15〜99重量%のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとから成る組成物の、有機ランキンサイクルでの1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)の代替品および2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン(HCFC−123)の代替品として使用
【請求項4】
上記組成物が共沸組成物または共沸様組成物である請求項1〜のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロトリフルオロプロペン、特に1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)とヘキサフルオロブテンとから成る組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルオロカーボンをベースにした流体は冷媒、エアーゾル推進剤、発泡剤、伝熱媒質およびガス誘電体を含む多くの用途で工業的に使用されている。しかし、相対的に高い地球温暖化ポテンシャル、例えば、その流体の使用に関連すると疑われる環境問題のために、オゾン破壊ポテンシャルが無いか、低い流体の使用が望まれている。さらに、沸騰および蒸発時に分離しない単一成分流体または共沸混合物の使用が望ましい。
【0003】
しかし、共沸物を形成するか否かは予測できないため、新規で環境に安全な非分別性(non-fractionating)混合物を同定することは容易ではない。
【0004】
従って、CFCおよびHCFCを代替する環境的により安全な新規でフルオロカーボンベースの混合物を工業界は絶えず求めている。
【0005】
オゾン層保護のためのモントリオールプロトコールではクロロフルオロカーボン(CFC)の使用が禁止され、オゾン層に「優しい」材料、例えばハイドロフルオロカーボン(HFC)、例えばHFC−134aがクロロフルオロカーボンの代わりに用いられてきたが、クロロフルオロカーボン化合物は温室ガスを引起し、地球温暖化の原因になることが証明され、気候変動に関する京都プロトコールによって規制された。新しい代替材料のヒドロフルオロプロペンはオゾン破壊ポテンシャル(ODP)がゼロで、GWPが低いため環境的に許容されることがわかっている。
【0006】
特許文献1(国際公開第WO2007/002625号公報)には熱伝達流体として使用可能な3〜6個の炭素原子を有する少なくとも一種のフルオロオレフィンを含む組成物が開示されている。テトラフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペンおよびペンタフルオロプロペンが好ましいと考えられている。
【0007】
特許文献2(国際公開第WO2007/002703号公報)には発泡体(ポリウレタンおよび熱可塑性プラスチック)の製造に使用する発泡剤としてのフルオロプロペンの使用が記載されている。
【0008】
特許文献3(国際公開第WO2008/134061号公報)にはZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(Z−FC−1336mzz)とギ酸メチルとの共沸(アゼオトロープ)組成物または共沸様(azeotrope-like)組成物が記載されている。
【0009】
特許文献4(国際公開第WO2008/154612)にはE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(Z−FC−1336mzz)とギ酸メチルとの共沸組成物または共沸様組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第WO2007/002625号公報
【特許文献2】国際公開第WO2007/002703号公報
【特許文献3】国際公開第WO2008/134061号公報
【特許文献1】国際公開第WO2008/154612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、オゾン破壊ポテンシャルが低いかゼロで、現在のHFCに比べて地球温暖化ポテンシャルが低いという要求を満たす、ユニークな特性を有する冷媒、熱伝達流体、発泡剤、溶剤、エアロゾルとして使用可能な新規な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者達は、CFCおよびHCFCを代替するという常に求められているニーズを満たすことができる1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと少なくとも一種のクロロトリフルオロプロペンとから成る組成物を開発した。
【0013】
この組成物は1〜99重量%の1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、1〜99重量%のクロロトリフルオロプロペンとから成るのが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明組成物は60〜99重量%の1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、1〜40重量%のクロロトリフルオロプロペンとから成るのが好ましい。また、1〜30重量%の1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、70〜99重量%のクロロトリフルオロプロペンとから成る組成物もより好ましい。本発明ではE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(すなわち、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンのトランス異性体)が好ましい。
【0015】
クロロトリフルオロプロペンとしては1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)および2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)が好ましい。本発明では1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが好ましい。
【0016】
組成物中に存在する1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの90重量%以上がトランス異性体(E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)であるのが好ましい。
【0017】
本発明の好ましい組成物は可燃性を下げるか、非可燃性で、地球温暖化ポテンシャル(GWP)は相対的に低くなる傾向がある。本発明組成物はCFC、HCFCおよびHFC(例えばCFC−114、HCFC−23、HFC−134a、HFC−245fa、HFC−365mfc)の代替品として使用でき、冷媒、エアロゾルおよびその他の用途で使用できるということを本発明者は確認した。
【0018】
さらに驚くことに、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと少なくとも一種のクロロトリフルオロプロペンとの共沸または共沸様組成物が形成できるということも本発明者は確認した。
【0019】
本発明の好ましい一実施例では、共沸または共沸様組成物はE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンとから成る。
【0020】
本発明者はさらに、本発明の共沸様組成物は冷媒組成物および発泡体の発泡剤で使用のできるということも確認した。従って、その他の実施例では、本発明は1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと少なくとも一種のクロロトリフルオロプロペンとの共沸または共沸様組成物、好ましくはE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンとから成る共沸または共沸様組成物から成る伝熱組成物および/または発泡剤、エアロゾルおよび溶剤を提供する。
【0021】
共沸様組成物
「共沸様(azeotrope-like)」という用語は厳密に共沸である組成物と、共沸混合物のように振る舞う組成物とを含む広い意味を有する。流体の熱力学的状態は基本原理的には圧力、温度、液体組成および蒸気組成で定義される。共沸混合物は所定圧力および温度で液組成および蒸気組成が等しい少なくとも2つまたは複数の成分から成る系である。実際に、共沸混合物の成分はコンスタントに沸騰し、状態変化時に分離できないということを意味する。
【0022】
本発明の共沸様組成物は新しい共沸様系を形成しない追加の成分または第1蒸留カット中にない追加の成分を含むことができる。この第1蒸留カットは全還流条件下で蒸留塔が定常運転状態になった後に採られる最初のカットである。ある成分の追加が本発明の範囲内か否か、新しい共沸様系を形成するか否かを判断する一つの方法は、その成分を含む組成物のサンプルを蒸留して、非共沸混合物が分離した成分に分離するか否かを見る方法である。追加の成分を含む混合物が非共沸様である場合、その追加の成分は共沸様組成物から成分が分離する。混合物が共沸様である場合には、一定沸騰であるか、単一物質として振る舞う混合物成分の全てを含む最初の蒸留カットが一定量得られる。
【0023】
共沸様組成物の上記特性に続く他の特性は、共沸用または一定沸騰である組成比の異なる同じ成分を含む組成物のレンジがあるということである。これら全ての組成物は「共沸様」および「一定沸騰」という用語でカバーされる。例えば、一つの共沸組成は圧力が異なるとその組成物の沸点と同様に少なくともわずかに変化するということは周知である。従って、AとBの共沸物はユニークな関係を有するが、温度および/または圧力に従って組成が変化する。すなわち、共沸様組成物の場合、共沸様である同じ成分を異なる比率で含む組成物のレンジがある。そうした全ての組成物は共沸様という用語でカバーされる。
【0024】
本発明の好ましい実施例では、本発明の共沸または共沸様組成物は、基本的に共沸または共沸様に有効な量の1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと少なくとも一種のクロロトリフルオロプロペンとから成る。「共沸または共沸様に有効な量」とは、他の成分と組み合わせた時に本発明の共沸様組成物を形成するような各成分の量を意味する。本発明の共沸用組成物は基本的に約1〜約99重量%のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、そで、約1〜約99重量%のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとから成るのが好ましい。本発明の共沸用組成物は基本的に約60〜約99重量%のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、約1〜約40重量%のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとか成るのが有利である
【0025】
本発明の共沸様組成物は約1〜約30重量%のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、約70〜約99重量%のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとから成るのが好ましい。
【0026】
本発明の共沸様組成物は、共沸または共沸様に有効な量の1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンとクロロトリフルオロプロペンとを合わせることで製造できる。例えば、バッチまたは連続反応および/またはプロセスの一部で、または、これら組み合わせて、E−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンとE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとを手動および/または機械によって混合、ブレンドして製造できる。
【0027】
組成物の添加物
本発明組成物、共沸または共沸様組成物はさらに、安定剤、金属受動態化剤、腐食防止剤等を含む各種の任意添加物をさらに含むことができる。
本発明の一つの好ましい実施例では、本発明組成物は潤滑剤を含む。本発明組成物では任意の公知潤滑剤を使うことができる。潤滑剤の重要な必要条件は使用中に冷媒系で使用した時に、コンプレッサが潤滑されるようにコンプレッサに戻る系を充分に潤滑しなければならない点にある。所定システムに適した潤滑剤は冷媒/潤滑剤特性とそれを使用するシステムの特性とにより決定される。適した潤滑剤の例は鉱物油、アルキル・ベンゼン誘導体、ポリアルキレン・グリコールを含むポリオール・エステル、PAGオイル、ポリビニルエーテル・オイルである。パラフィン油またはナフテン油を含む鉱物油は市販されている。市販の鉱物油にはWitco社のWitcoLP 250(登録商標)、Shrieve Chemical社のZero300(登録商標)、Witco社のSunisco 3GS、Calumet社のCalumet R015が含まれる。市販のアルキル・ベンゼン潤滑剤にはZerol 150(登録商標)が含まれる。市販のエステルにはEmery2917(登録商標)、Hatcol 2370(登録商標)として入手可能なネオペンチル・グリコールジペラゴネートが含まれる。その他の有用なエステルには燐酸エステル、二塩基酸エステルおよびフルオロエステルが含まれる。好ましい潤滑剤にはポリアルキレン・グリコールとそのエステルが含まれる。より好ましい潤滑剤はポリアルキレン・グリコールである。
【0028】
本発明組成物の使用
本発明組成物は広範囲の用途を有する。例えば、本発明の一つの実施例は本発明組成物から成る熱伝達流体組成物である。本発明の熱伝達流体組成物は空調、冷蔵、ヒートポンプ、特に140℃以下の凝縮温度で運転されるヒートポンプ、冷却器、HVACシステム、遠心圧縮機、動力および電気生産用有機ランキン(Organic Rankin)サイクルを含む多種多様な冷蔵システムで使うことができる。
ヒートポンプおよび有機ランキンサイクルは太陽、地熱や工業プロセス等の再生可能エネルギー源からのエネルギー源を使用できる。
【0029】
一つの好ましい実施例では本発明組成物がHCFC冷媒、例えばHCFC−123用に設計された冷蔵システムで使われる。本発明の好ましい組成物はHCFC−123、その他のHFC冷媒の望ましい特性、例えば従来のHFC冷媒より低いGWPとこの種の冷媒より高い能力を示す傾向がある。さらに、本発明組成物の比較的一定な沸騰特性は多くの用途で冷媒としての使用する場合に従来のHFCの沸騰特性より望ましいことさえある。
【0030】
共沸様組成物、好ましくは基本的に1〜85重量%のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、15〜99重量%のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとから成る共沸様組成物は有機ランキンサイクルで1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)の代替品およびHCFC−123(2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン)の代替品として有用である。この共沸様組成物は特に有機ランキンサイクルで有用である。
【0031】
共沸様組成物、好ましくは基本的に50〜70重量%のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、30〜50重量のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとから成る共沸様組成物は空気調和、特にエアーコンディショナまたはヒートポンプの遠心圧縮機のHCFC−123(2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン)の代替品として有用である。
【0032】
共沸様組成物、好ましくは基本的に1〜25重量%のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、75〜99重量%のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとから成る共沸様組成物はエアーコンディショナまたはヒートポンプの遠心圧縮機の1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)の代替品として有用である。
【0033】
共沸様組成物、好ましくは基本的に1〜45重量%のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと、55〜99重量%のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとから成る共沸様組成物は1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)の代替品として、好ましくはヒートポンプ、好ましくは高温ヒートポンプの代替品として有用である。
【0034】
他の好ましい実施例では、本発明組成物がCFC−冷媒の用に設計された冷蔵システムで使用される。本発明の好ましい冷蔵組成物は、従来はCFC−冷媒用に使われていた潤滑剤、例えば鉱物油、シリコーン油、ポリアルキレングリコールオイル等を含む系で使うことができ、また、HFC冷媒で伝統的に使われている他の潤滑剤と一緒に使うことができる。ここで「冷蔵システム」とは一般に任意のシステムまたは装置あるいは冷気を作るためのそうしたシステムまたは装置の一部を意味する。そうした冷蔵システムの例は空調、電気冷蔵庫、冷却器、運送冷蔵システム、商用冷蔵システムである。
【0035】
冷蔵システムへ本発明の冷媒組成物を導入する方法は広範囲の中から使用できる。例えば、一つの方法では冷媒コンテナを冷蔵システムの低圧側に付け、冷蔵システム・コンプレッサをオンにして冷媒をシステムに入れる。この実施例では冷媒コンテナに計器を付けてシステムに入る冷媒組成物の量をモニターすることができる。所望量の冷媒組成物がシステムに入ったときに充填を止める。なお、当業者に公知の各種の充填具が市販されている。従って、上記の開示内容を考慮して当業者は過度の実験無しに本発明の冷蔵システムに本発明の冷媒組成物を容易に導入することができる。
【0036】
本発明の一つの他の実施例で本発明は本発明冷媒を含む冷蔵システムと、本発明組成物を凝縮および/または蒸発させることによって熱または冷気作る方法とを提供する。一つの好ましい実施例での本発明によって物品を冷却する方法では、本発明の共沸様組成物から成る冷媒組成物を凝縮し、次いで、被冷却物品の近傍でこの冷媒組成物を蒸発させる。物品を加熱するための一つの好ましい方法では、加熱される物品の近傍で本発明共沸様組成物から成る冷媒組成物を凝縮した後に、その冷媒組成物を蒸発させる。
【0037】
伝熱システムで使用する熱交換器は任意タイプのものにすることができる。典型的な熱交換器には並流フロー、向流、十字流が含まれる。本発明の伝熱組成物を使用する熱交換器は向流、向流状または十字流であるのが好ましい。
【0038】
本発明の他の実施例では、本発明共沸様組成物をスプレー可能な組成物の推進剤または公知推進剤と一緒に推進剤として使うことができる。推進剤組成物は基本的に本発明の共沸様組成物から成るか、本発明の共沸様組成物を含むのが好ましい。
【0039】
スプレー可能な組成物には不活性原料、溶剤、その他の材料をスプレー可能な混合物中に入れることができる。スプレー可能な組成物はエアロゾルであるのが好ましい。スプレーするのに適した活性物質は医薬原材料、例えば抗喘息剤、抗口臭剤等の薬剤投与の他に、脱臭剤、香料、ヘアスプレー等の化粧用原材料、クレンザー、研磨剤を含むが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明のさらに他の実施例は一種以上の本発明共沸様組成物を含む発泡剤である。さらに他の実施例では本発明は発泡体組成物、好ましくはポリウレタンおよびポリイソシアヌレート発泡体組成物と、その発泡方法とを提供する。この発泡体の実施例では、本発明の一種以上の共沸様組成物を発泡剤として発泡性組成物に加える。この発泡性組成物は適当な条件下で反応し、発泡してセル組織を形成するための追加の有効成分を含む。これらは公知の技術である。本発明のフォームの実施例で使用に適した公知の任意技術を使うことができる。
【0041】
本発明の他の実施例は下記の発泡熱可塑性製品の製造方法である。すなわち、各成分を任意の順番で混合することによって発泡性ポリマー組成物を調製する。一般には、ポリマー樹脂を可塑化し、初期圧力で発泡剤組成物成分を加えて発泡性ポリマー組成物を調製する。ポリマ樹脂を可塑化する通常の方法は熱可塑化で、これは発泡剤組成物のブレンドが十分に軟化するのに十分な時間、ポリマー樹脂を加熱することを含む。一般に、熱可塑化は結晶性重合体のガラス遷移温度(Tg)または溶融温度(Tm)の近くまで熱可塑性ポリマー樹脂を加熱することを含む。
【0042】
本発明共沸様組成物の他の用途は溶剤、クリーナ等での使用を含む。その実施例には蒸気脱脂、精密クリーニング、エレクトロニクス洗浄、ドライクリーニング、溶剤エッチングクリーニング、潤滑剤を堆積させるためのキャリヤー溶剤、リリース薬剤、その他の溶剤または表面処理が含まれる。当業者は過度の実験無しにこの種の用途に本発明組成物を容易に適応させることができる。
【実施例】
【0043】
実施例1
共沸様組成物
サファイアチューブを備えた真空セルをオイルバスを使用して60℃に加熱する。温度平衡に達した後、セルにE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを入れ、平衡に達した時の圧力を記録する。所定量のE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンをセルに導入し、内容物を混合して均質にする。平衡時に液相および気相から少量のサンプルを採り、熱検出器を有するガスクロマトグラフィで分析する。E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンとの異なる組成での平衡データを集め、各組成での沸点での圧力に変換する。E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの約0〜99重量%での組成物の沸点は1.5℃以下変化した。このレンジで各組成物は共沸様特性を示す。
【0044】
【0045】
実施例2
圧縮システムの用途
技術的背景
気体密度、エンタルピーおよびエントロピーのデータをRK−ソーブ(Soave)状態式を用いて計算し、それを用いて各混合物の蒸発気化熱および蒸気平衡データを予測した。この状態式に必要な基礎データ(臨界温度、臨界圧および温度対蒸気圧)は静的セルを使用して測定した。各純粋化合物の偏心因子は蒸気圧曲線の測定値から計算した。理想気体の熱容量データはベンソングループ方法を使用して推定した。これらの予測方法の全ては下記文献に記載されている。
【非特許文献1】The Properties of Gases & Liquids,Bruce E. Poling, John M. Prausnitz, Johan P. O≡connell, 5th edition, published McGraw-Hill
【0046】
純粋化合物の干渉パラメータは気液平衡計測から得た。E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの気液平衡の結果は上記パラグラフに記載した。サイクル性の計算にはRK−Soave均等式を使用した熱力学モデルを使用した。このサイクルには熱交換器(蒸発器、凝縮器...)、内部熱交換器、加熱器、膨脹弁、圧縮器、液体ポンプおよびタービンが含まれる。
【0047】
成績係数(COP)はシステムが出す有効エネルギーをエネルギー使用量で割った比である。参照値はローレンツ成績係数で、これはシステム温度を関数にして計算され、流体の性能を比較するのに使われる。COPローレンツ(COPLorenz)下記で定義される:
【0048】
空調または冷蔵のCOPローレンツは下記で定義される:
【0049】
ヒートポンプ用のCOPローレンツは下記で定義される:
【0050】
各組成物に対して、ローレンツ成績係数を温度の関数で計算する。%COP/COPローレンツはローレンツCOPに対するシステムCOPのパーセンテージ比である。有機のランキンサイクルの場合、効率はタービン出口での利用可能エネルギーを蒸発器でのエネルギー使用量で割った比である。
【0051】
空調および遠心圧縮機を使用した空調
システムは5℃のスーバーヒート、内部熱交換器および等エントロピー効率81%の遠心圧縮機で運転する。組成物の性能は[表1],[表2]に示す。各化合物(HCFO−1233zd(E)(2E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブテ−2−エン)の組成は重量百分率である。
【0052】
HFC−245faを代替する場合の最も好ましい組成物はHFO−1233zdが75〜99重量%の間にある。
HCFC−123を代替する場合の最も好ましい組成物はHFO−1233zdが30〜50重量%の間にある。
これらの組成物の場合、ブレンド物の音速はHCFC−123または音のHFC−245faに相当する。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
ヒートポンプおよび高温ヒートポンプ
システムは5℃のスーパーヒートで、内部熱交換器およびスクリュー圧縮機を用いて運転する。圧縮機の等エントロピー効率は下記の式に従った圧縮比の関数で計算する。
【0056】
(ここで、a、b、c、d、eは空調および冷蔵ハンドブック第11.52頁の公開データを使用した係数である。
各組成物の性能は[表3]に示す。各化合物(HCFO−1233zd(E)(2E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブテ−2−エン)の比は重量百分率である。
【0057】
【表3】
【0058】
有機ランキンサイクル
システムはタービンを含む。タービンを発電機に連結して電気を作ることができる。組成物の性能は[表4]および[表5]に示す。各化合物(HCFO−1233zd(E)(2E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブテ−2−エン)の比は重量百分率である。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
発泡剤、発泡体および発泡性組成物
典型的な「ホアインプレース(pour in place)」フォームをハンドミキシングで作る。ポリオール配合物(B−サイド)は100重量部のポリオール・ブレンドと、1.0重量部のN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンと、0.3重量部のN,N,N',N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミンと、1.9重量部のシリコーン界面活性剤(Evonikから市販のTegostab(登録商標)B 8465)と、2重量部の水と、13重量部のHCFO−1233zd(E)とE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブテ−2−エンとから成る50重量%/50重量%比)発泡剤とからなる。
【0062】
トータルB−サイドを調製し、132重量部のイソシアネートDesmodur 44V70Lと混合した。良質のフォームがられた。気泡構造は細かく、規則的で、独立気泡の含有量が95%以上であった。