(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カム溝は、前記バランスウエイトの回転中心を通る中心線に平行に延びる直線状に形成され、前記第1の駆動ピンが直線方向のみに移動可能な長溝形状を有してなることを特徴とする請求項6に記載のエンジンバランサ。
前記出力部材の前記カム面は、前記クランクシャフトが0°、90°、180°、270°、及び360°の90°ごとの回転位置で前記クランクシャフトの回転に伴う慣性力が最大になったとき、前記バランスウエイトが前記クランクシャフトに対して最大の移動量となるアンバランス方向に移動可能なように、前記出力部材の回転中心を通る中心線に対して対称形状に形成されたことを特徴とする請求項6に記載のエンジンバランサ。
前記第2の駆動ピンと前記カム面とに基づく前記バランスウエイトのクランクシャフト回転中心からの移動量は、前記バランスウエイトの質量と移動量との積が前記クランクシャフトの往復移動で発生するアンバランス量となるように設定されたことを特徴とする請求項6又は9に記載のエンジンバランサ。
前記バランスウエイトのクランクプーリ側のアンバランス量及び前記バランスウエイトのトランスミッション側のアンバランス量のそれぞれは、前記クランクシャフトの往復移動で発生するアンバランス量の略半分となるように設定されたことを特徴とする請求項5に記載のエンジンバランサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の振動低減装置は、エンジンの振動を打ち消すための副慣性モーメントをエンジン補機に依存している。しかしながら、エンジン補機をクランクシャフトの回転に対して逆方向に増速回転させるためには、エンジン補機の設計変更などが必要になり、既存のエンジン補機を効果的に適用することはできない場合がある。
【0008】
一方、一つの遊星歯車機構によりエンジンの振動低減を図る場合には、振動低減効果が得られにくい。他の種類の遊星歯車機構を備える場合は、軽量化及びコンパクト化が図りにくくなるという問題点があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、軽量化及びコンパクト化を図ることを可能としたエンジンバランサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明は、エンジンブロックの内部に往復移動可能に設けられるピストンによって回転駆動するクランクシャフトと、前記クランクシャフトの回転に対して回転可能とされ、前記クランクシャフトに対して同軸上に配置される
遊星歯車機構と、前記
遊星歯車機構を介して前記クランクシャフトの回転に伴う慣性力による振動を減少させるバランスウエイトと、を備えており、
前記遊星歯車機構は、前記クランクシャフトに固定される出力部材と、前記出力部材に固定されるリングギヤと、前記リングギヤに噛み合う複数のピニオンギヤと、前記複数のピニオンギヤを保持し、前記エンジンブロックに固定されるキャリヤと、前記複数のピニオンギヤに噛み合うことで前記リングギヤの回転に対して逆方向に増速回転するサンギヤとを備え、前記バランスウエイトは、前記クランクシャフトの軸回りに所定の間隔をもって配置されるとともに、前記クランクシャフトの回転角度に対応してアンバランス量を調整するように
前記出力部材と前記サンギヤとに対して移動可能に取り付けられていることを特徴とするエンジンバランサにある。
【0012】
[2]上記
[1]に記載の発明にあって、前記
遊星歯車機構は、前記クランクシャフトの回転の2倍の回転数になるように歯数を設定した機構としたことを特徴とする。
【0013】
[3]上記
[1]又は[2]に記載の発明にあって、前記
遊星歯車機構及び前記バランスウエイトは、前記エンジンブロックのクランクプーリ側にあって、前記クランクシャフトに固定されたクランクプーリの内部又は前記サンギヤに固定されたクランクプーリの内部に配置されてなることを特徴とする。
【0014】
[4]上記
[1]又は[2]に記載の発明にあって、前記
遊星歯車機構及び前記バランスウエイトは、前記エンジンブロックのトランスミッション側にあって、前記エンジンブロックとトランスミッションの間に配置されてなることを特徴とする。
【0015】
[5]上記
[1]又は[2]に記載の発明にあって、前記
遊星歯車機構及び前記バランスウエイトは、前記エンジンブロックのクランクプーリ側と前記エンジンブロックのトランスミッション側の両側に配置されてなることを特徴とする。
【0016】
[6]上記
[1]〜[5]のいずれかに記載の発明にあって、前記サンギヤのバランスウエイト側対向面には、前記出力部材の回転に伴い逆方向に増速回転する一対の第1の駆動ピンが設けられ、前記バランスウエイトには、前記第1の駆動ピンによって前記バランスウエイト自身の移動を規制する一対のカム溝が形成されてなり、前記バランスウエイトの出力部材側対向面には、前記出力部材の回転とは逆方向に増速回転する第2の駆動ピンが設けられ、前記出力部材のバランスウエイト側対向面には、前記第2の駆動ピンの移動を規制するカム面が形成されてなることを特徴とする。
【0017】
[7]上記
[6]に記載の発明にあって、前記カム溝は、前記バランスウエイトの回転中心を通る中心線に平行に延びる直線状に形成され、前記第1の駆動ピンが直線方向のみに移動可能な長溝形状を有してなることを特徴とする。
【0018】
[8]上記
[6]又は[7]に記載の発明にあって、前記カム溝内には、前記バランスウエイトを直線方向に押す弾性部材が配置されてなることを特徴とする。
【0019】
[9]上記
[6]に記載の発明にあって、前記出力部材の前記カム面は、前記クランクシャフトが0°、90°、180°、270°、及び360°の90°ごとの回転位置で前記クランクシャフトの回転に伴う慣性力が最大になったとき、前記バランスウエイトが前記クランクシャフトに対して最大の移動量となるアンバランス方向に移動可能なように、前記出力部材の回転中心を通る中心線に対して対称形状に形成されたことを特徴とする。
【0020】
[10]上記
[6]又は[9]に記載の発明にあって、前記第2の駆動ピンと前記カム面とに基づく前記バランスウエイトのクランクシャフト回転中心からの移動量は、前記バランスウエイトの質量と移動量との積が前記クランクシャフトの往復移動で発生するアンバランス量となるように設定されたことを特徴とする。
【0021】
[11]上記
[5]記載の発明にあって、前記バランスウエイトのクランクプーリ側のアンバランス量及び前記バランスウエイトのトランスミッション側のアンバランス量のそれぞれは、前記クランクシャフトの往復移動で発生するアンバランス量の略半分となるように設定されたことを特徴とする。
【0022】
[12]上記
[6]に記載の発明にあって、前記第1の駆動ピン及び前記第2の駆動ピンの少なくとも一方には、ブッシュを介してベアリングが固定されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、軽量化及びコンパクト化を図りながら、振動低減効果を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0026】
[第1の実施の形態]
(エンジンバランサの全体構成)
図1において、全体を示す符号10は、この第1の実施の形態に係る典型的なエンジンバランサを模式的に示している。このエンジンバランサ10は、例えば図示しないトランスミッションに連結される多気筒内燃機関である直列4気筒型のエンジン100に装着されている。
【0027】
このエンジン100の外郭を構成するエンジンブロック101の内部には、
図1に示すように、第1〜第4気筒のピストン102〜105がコネクティングロッド106〜109を介してクランクシャフト110に連結されている。
【0028】
このクランクシャフト110の一端部には、
図1に示すように、エンジン100の回転駆動力を図示しないエンジン補機に無端状ベルト111を介して伝達するクランクプーリ112が固定されている。クランクシャフト110の他端部側には、エンジンブロック101のトランスミッション側の図示しないメインクラッチやトルクコンバータなどが備えられている。
【0029】
このクランクシャフト110のクランクプーリ112側には、
図1に示すように、往復運動するピストン102〜105の振動により生じる慣性力(遠心力)を減少させるための振動低減機構であるエンジンバランサ10が取り付けられている。
【0030】
このエンジンバランサ10は、
図1に示すように、クランクシャフト110の回転に対しては逆方向に回転する変速機構20と、この変速機構20を介してクランクシャフト110の回転方向とは逆方向に回転する慣性体であるバランスウエイト30とを備えている。この変速機構20とバランスウエイト30とは、クランクプーリ112の内部に集約化して配置されている。
【0031】
この変速機構20は、
図1に示すように、クランクシャフト110に対して同軸上に配置された遊星歯車機構21により構成されている。この遊星歯車機構21は、クランクシャフト110に固定される円盤状の出力部材22と、この出力部材22に固定されるリングギヤ23と、このリングギヤ23の回転に対して逆方向に増速回転するサンギヤ24と、このリングギヤ23及びサンギヤ24に噛み合う複数のピニオンギヤ25,…,25とを備えている。
【0032】
このピニオンギヤ25は、
図1に示すように、エンジンブロック101に固定されるキャリヤ26に回転可能に支持されている。ピニオンギヤ25に噛み合うリングギヤ23は、出力部材22を介してクランクシャフト110に固定されていることから、リングギヤ23の回転出力は、ピニオンギヤ25を介して、リングギヤ23とは逆方向の回転としてサンギヤ24に伝達される。
【0033】
このサンギヤ24の回転出力は、クランクシャフト110の回転方向とは逆方向の回転としてバランスウエイト30に伝達される。このサンギヤ24の歯数は、リングギヤ23の歯数よりも少なく設定されている。サンギヤ24の歯数及びリングギヤ23の歯数を適宜に選択することで、変速機構20のギヤ比を所要の値に設定することができる。
【0034】
このリングギヤ23の歯数に対してサンギヤ24の歯数を少なく設定することで、バランスウエイト30には、増速された回転が生じる。この第1の実施の形態では、特に限定するものではないが、クランクシャフト110の2倍の回転数となる回転力がサンギヤ24に伝達される構成となっている。これにより、ピストン102〜105の振動を打ち消すための慣性力の作用が高められており、エンジンバランサ10の振動低減機能を向上させることができる。
【0035】
(アンバランス量調整構造)
このピストン102〜105の振動を低減させるためには、クランクシャフト110の回転に対してエンジンバランサ10のアンバランス量を調整することが肝要である。この第1の実施の形態に係るエンジンバランサ10において最も基本的な構成は、クランクシャフト110の回転に対してアンバランス量を調整する構造にある。
【0036】
図示例によると、このアンバランス量調整構造は、遊星歯車機構21の出力部材22及びサンギヤ24と、バランスウエイト30とにより構成される。この出力部材22の回転角度に対応してバランスウエイト30とクランクシャフト110との間の距離を変動させることで、このエンジンバランサ10には、往復するピストン102〜105の振動により生じる慣性力を低減する方向及び大きさの慣性力が発生する。
【0037】
このバランスウエイト30は、
図1に示すように、クランクシャフト挿入用の軸孔30aを有する円柱状のブロック体からなる。その軸孔30aは、クランクシャフト110の軸回りに所定の間隔をもって配置されており、バランスウエイト30が、クランクシャフト110の回転中心から放射方向のアンバランス量を調整するように移動可能に出力部材22とサンギヤ24とに対して取り付けられている。
【0038】
このサンギヤ24のバランスウエイト側対向面には、
図1及び
図2Aに示すように、サンギヤ24の回転軸線を中心に一対の第1の駆動ピン24a,24aが突出して形成されている。一方のバランスウエイト30には、一対の第1の駆動ピン24aに対応して一対のカム溝30b,30bが形成されている。この一対のカム溝30bは、バランスウエイト30の回転中心を通る中心線の両側に180°の位相差をもって互いに平行に延びる直線状に形成されており、一対の第1の駆動ピン24aが直線方向のみに移動可能な長溝形状を有している。
【0039】
このカム溝30bの内部には、
図2Aに示すように、押圧手段27が組み付けられている。この押圧手段27は、カム溝30bの内部に圧縮状態で組み付けられる弾性部材である圧縮コイルスプリング28と、この圧縮コイルスプリング28の押圧力をサンギヤ24の駆動ピン24aに付与する接触部材29とからなる。
【0040】
このサンギヤ24の駆動ピン24aは、バランスウエイト30のカム溝30bをクランクシャフト110と連動する出力部材22の回転に対して逆方向に回転させる。このカム溝30bは、バランスウエイト30の回転角度に応じて駆動ピン24aを介してバランスウエイト自身の移動を規制する。エンジン前方からみたときのバランスウエイト30の縦方向の移動はカム溝30bを介して案内されるが、バランスウエイト30の横方向の移動は、カム溝30bによって規制される。これにより、エンジン前方からみたときの横方向のアンバランス量の発生が低減される。
【0041】
このバランスウエイト30の出力部材側対向面には、
図1及び
図2Aに示すように、バランスウエイト30の回転軸線を中心に一対の第2の駆動ピン30c,30cが固定されている。この駆動ピン30cは、サンギヤ24の駆動ピン24aとは略直角の位相差をもって配置されている。
【0042】
一方の出力部材22のバランスウエイト側対向面には、
図1及び
図2Aに示すように、バランスウエイト30の駆動ピン30cの移動を規制するカム面22aが形成されている。このカム面22aは、環状の波形カム面からなり、出力部材22の内周面に円周方向に沿って突出する4つの内方突出部22b及び4つの外方突出部22cを有している。この内方突出部22b及び外方突出部22cのそれぞれは、互いに同一円周上に90°の位相差をもって形成されている。
【0043】
この外方突出部22cは、
図2Aに示すように、クランクシャフト110の回転に伴う慣性力が最大になったとき、バランスウエイト30をクランクシャフト110に対して最大の移動量となるアンバランス方向及びアンバランス位置に移動可能な突出量を有している。
【0044】
一方の内方突出部22bは、
図2Cに示すように、クランクシャフト110に対するバランスウエイト30のアンバランス量が発生しない状態となったとき、バランスウエイト30の駆動ピン30cの移動を規制可能な突出量を有している。
【0045】
この駆動ピン30cとカム面22aとに基づいてバランスウエイト30のクランクシャフト110の回転中心C
2からの移動量(距離)dが設定される。この距離dとしては、バランスウエイト30の質量と移動量との積がクランクシャフト110の往復移動で発生するアンバランス量となるように設定することが好適である。カム面22aの突出量を適宜に選択することで、駆動ピン30cの移動量を所要の値に設定することができる。
【0046】
(バランスウエイトの動作)
上記のように構成されたアンバランス量調整構造を備えたエンジンバランサ10は、
図2A〜
図2Iに示すように、クランクシャフト110と連動する出力部材22の回転角度に対応してバランスウエイト30の回転中心C
1とクランクシャフト110の回転中心C
2との間の距離を変動させることで、クランクシャフト110の回転中心C
2から放射方向のアンバランス量の発生を調整するように構成されている。
【0047】
このバランスウエイト30の回転中心C
1とクランクシャフト110の回転中心C
2との間の距離dは、
図2A〜
図2Iに示すように、サンギヤ24の駆動ピン24aに対するバランスウエイト30のカム溝30bと、出力部材22のカム面22aに対するバランスウエイト30の駆動ピン30cとにより調整される。
【0048】
ここで、
図3を参照すると、同図には、エンジン回転角度とアンバランス量との関係が示されている。同図において、エンジン回転角度0°に対応するアンバランス量は、
図2Aに示すバランスウエイト30の回転角度0°に、エンジン回転角度22.5°に対応するアンバランス量は、
図2Bに示すバランスウエイト30の回転角度45°に、エンジン回転角度45°に対応するアンバランス量は、
図2Cに示すバランスウエイト30の回転角度90°にそれぞれに対応している。
【0049】
図3において、エンジン回転角度67.5°に対応するアンバランス量は、
図2Dに示すバランスウエイト30の回転角度135°に、エンジン回転角度90°に対応するアンバランス量は、
図2Eに示すバランスウエイト30の回転角度180°にそれぞれに対応している。
【0050】
図3において、エンジン回転角度112.5°に対応するアンバランス量は、
図2Fに示すバランスウエイト30の回転角度225°に、エンジン回転角度135°に対応するアンバランス量は、
図2Gに示すバランスウエイト30の回転角度270°にそれぞれに対応している。
【0051】
図3において、エンジン回転角度157.5°に対応するアンバランス量は、
図2Hに示すバランスウエイト30の回転角度315°に、エンジン回転角度180°に対応するアンバランス量は、
図2Iに示すバランスウエイト30の回転角度360°にそれぞれに対応している。
【0052】
このエンジン回転角度に対応して、クランクシャフト110は、
図3に示すように、0°、90°、180°、270°、及び360°の90°ごとの回転位置でクランクシャフト110の回転に伴う慣性力が最大になる。このとき、バランスウエイト30がクランクシャフト110に対して最大の移動量となるアンバランス方向及びアンバランス位置に移動する。
【0053】
次に、
図2A〜
図2Iを参照しながら、バランスウエイト30の動作について説明する。
【0054】
図2Aにおいて、エンジン回転角度が0°である場合は、バランスウエイト30の回転中心C
1とクランクシャフト110の回転中心C
2とが、エンジン前方からみたときの縦方向の軸線上にあって、バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2の真下に離れている。
【0055】
このサンギヤ24の駆動ピン24aは、バランスウエイト30のカム溝30bの一端部に接触し、バランスウエイト30の駆動ピン30cが出力部材22のカム面22aの外方突出部22cに接触している。バランスウエイト30は、クランクシャフト110の回転中心C
2から最も遠い距離dのアンバランス位置に移動した状態にある。
【0056】
図2A〜
図2Cにおいて、エンジン回転角度0°〜45°の増加に応じて、バランスウエイト30が0°〜90°で回転する。バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2の下側から上側へ向けて次第に近づく。
【0057】
図2Cにおいて、バランスウエイト30が90°に回転したとき、バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2に最も近づくことになる。サンギヤ24の駆動ピン24aは、バランスウエイト30のカム溝30bの中心部分に接触するとともに、バランスウエイト30の駆動ピン30cは、出力部材22の内方突出部22bに接触することから、アンバランス量が発生しない状態となる。
【0058】
図2C〜
図2Eにおいて、エンジン回転角度45°〜90°の増加に伴い、バランスウエイト30が90°〜180°で回転する。バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2の上側へ向けて次第に遠ざかることとなる。
【0059】
図2Eにおいて、クランクシャフト110がエンジン回転角度90°で回転したとき、クランクシャフト110の回転に伴う慣性力が最大になる。バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2の真上に移動する。バランスウエイト30の駆動ピン30cは、出力部材22の外方突出部22cに接触することから、バランスウエイト30は、クランクシャフト110の回転中心C
2から最も遠い距離dのアンバランス位置に移動した状態になる。
【0060】
図2E〜
図2Gにおいて、エンジン回転角度90°〜135°の増加に伴って、バランスウエイト30は180°〜270°で回転する。バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2の上側から下側に向けて次第に近づく。
【0061】
図2Gにおいて、バランスウエイト30が270°に回転したとき、バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2に最も近づくことになる。サンギヤ24の駆動ピン24aは、バランスウエイト30のカム溝30bの中心部分に接触する。バランスウエイト30の駆動ピン30cは、出力部材22の内方突出部22bに接触することから、アンバランス量が発生しない状態となる。
【0062】
図2G〜
図2Iにおいて、エンジン回転角度135°〜180°の増加に伴って、バランスウエイト30は270°〜360°で回転する。バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2から下側に向けて次第に遠ざかる。
【0063】
図2Iにおいて、クランクシャフト110がエンジン回転角度180°に回転したとき、クランクシャフト110の回転に伴う慣性力が最大になる。このとき、バランスウエイト30が360°に回転する。エンジンバランサ10は、
図2Aと同様に、クランクシャフト110の回転中心C
2から最も遠い距離dのアンバランス位置に戻り、上記操作を繰り返す。
【0064】
このエンジンバランサ10のアンバランス量は、
図3に示すように、エンジン回転角度に対応して発生するピストン102〜105の振動とは逆相の状態で変動する。バランスウエイト30の慣性力とピストン102〜105の振動により生じる慣性力とが釣り合うこととなり、エンジン100の振動を低減することが可能となる。
【0065】
(第1の実施の形態の効果)
以上のように構成された第1の実施の形態に係るエンジンバランサ10は、エンジン100のクランクシャフト110の回転角度に応じて、バランスウエイト30のアンバランス量を調整するように移動する構成となっていることから、上記効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0066】
(1)既存のエンジンにクランクプーリ112の配置領域を追加して装着するだけでエンジンバランサ10を配置することが可能となり、エンジン100の共有化を図ることができるようになる。
(2)既存の車両にエンジンバランサ10を追加して装着することができるようになる。
【0067】
[第2の実施の形態]
図4及び
図5A〜
図5Eには、第2の実施の形態であるエンジンバランサの一構成例が例示されている。なお、これらの図において、上記第1の実施の形態と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付している。従って、上記第1の実施の形態と実質的に同じ部材に関する詳細な説明は省略する。
【0068】
この第2の実施の形態において上記第1の実施の形態と異なるところは、上記第1の実施の形態では、バランスウエイト30の出力部材側対向面に一対の第2の駆動ピン30cを備えた構成であったものを、バランスウエイト30の出力部材側対向面に回転軸線とは同一軸線上に固定された第2の駆動ピン30dを備えている点にある。
【0069】
図4及び
図5Aにおいて、円盤状の出力部材22のバランスウエイト側対向面には、第2の駆動ピン30dの移動を規制するカム面22dが形成されている。このカム面22dは、環状のクローバ形カム面からなる。このクローバ形カム面は、出力部材22の内周面の円周方向に沿って突出する4つの外方突出部22e,…,22eを有している。
【0070】
この4つの外方突出部22eは、
図5Aに示すように、互いに同一円周上に90°の位相差をもって形成されている。この外方突出部22eにあっても、上記第1の実施の形態におけるアンバランス量調整構造と同様に、バランスウエイト30をクランクシャフト110に対して最大の移動量となるアンバランス方向及びアンバランス位置に移動可能な突出量を有している。
【0071】
図5A〜
図5Eを参照すると、これらの図には、第2の実施の形態に係るエンジンバランサ10の動作の一例が例示されている。
【0072】
図5Aにおいて、エンジンバランサ10がエンジン回転角度0°にあるとき、サンギヤ24の駆動ピン24aがバランスウエイト30のカム溝30bの中心部分にあり、バランスウエイト30の駆動ピン30dが出力部材22のカム面22dの外方突出部22eに接触している。バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2の真下にあり、バランスウエイト30は、クランクシャフト110の回転中心C
2から最も遠い距離dのアンバランス位置に移動した状態にある。
【0073】
図5A〜
図5Cにおいて、エンジン回転角度0°〜45°の増加に応じて、バランスウエイトが0°〜90°で回転している間は、サンギヤ24の駆動ピン24aに対するバランスウエイト30のカム溝30bの移動と、出力部材22のカム面22dに対するバランスウエイト30の駆動ピン30dの移動とにより調整される。バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2の下側から上側へ向けて次第に近づく。
【0074】
図5Cにおいて、このバランスウエイト30が90°に回転したとき、バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2に最も近づくことになり、アンバランス量が発生しない状態となる。
【0075】
このとき、バランスウエイト30のカム溝30bに対するサンギヤ24の一対の駆動ピン24aの回転位置と、出力部材22のカム面22dに対するバランスウエイト30の駆動ピン30dの回転位置とが多少は変動して位置ずれを生じるが、
図5Cに符号S
1,S
2で示す移動範囲内であれば、エンジンバランサ10のアンバランス量としては問題にならないレベルであり、そのアンバランス量を抑制することができる。
【0076】
図5C〜
図5Eにおいて、エンジン回転角度45°〜90°の増加に伴い、バランスウエイト30が90°〜180°で回転している間は、バランスウエイト30の回転中心C
1がクランクシャフト110の回転中心C
2から上側に向けて次第に遠ざかる。バランスウエイト30の移動は、サンギヤ24の駆動ピン24aに対するバランスウエイト30のカム溝30bと、出力部材22のカム面22dに対するバランスウエイト30の駆動ピン30dとにより調整される。
【0077】
図5Eにおいて、クランクシャフト110がエンジン回転角度90°に回転したとき、クランクシャフト110の回転に伴う慣性力が最大になる。バランスウエイト30の回転中心C
1は、クランクシャフト110の回転中心C
2の真上に移動する。サンギヤ24の駆動ピン24aがバランスウエイト30のカム溝30bの中心部分に接触するとともに、バランスウエイト30の駆動ピン30dは出力部材22のカム面22dの外方突出部22eに接触する。
【0078】
このバランスウエイト30は、クランクシャフト110に対して最大の移動量となるアンバランス方向に移動することで、クランクシャフト110の回転中心C
2から最も遠い距離dのアンバランス位置に移動した状態になる。
【0079】
更にエンジン回転角度90°〜180°の増加に伴い、バランスウエイト30は180°〜360°で回転する。バランスウエイト30が180°〜360°で回転している間は、アンバランス量を調整しながら、クランクシャフト110の回転中心C
2の上側から下側に向けて回転する。このバランスウエイト30が360°に回転したとき、エンジンバランサ10は、
図5Aに示すアンバランス位置に戻り、上記操作を繰り返す。
【0080】
(第2の実施の形態の効果)
上記第2の実施の形態に係るエンジンバランサ10にあっても、エンジン回転角度とアンバランス量との関係を表す
図3に示す特性と同様に、エンジン回転角度に対応して、バランスウエイト30のアンバランス量が、ピストン102〜105の振動とは逆相の状態で変動する。
【0081】
バランスウエイト30の慣性力とピストン102〜105の振動により生じる慣性力とが上下方向に釣り合うこととなり、上記第1の実施の形態と同様に、エンジン100の上下方向の振動を効果的に低減することが可能となる。
【0082】
[変形例]
以上より、本発明に係るエンジンバランサ10の代表的な構成例を上記各実施の形態及び図示例を挙げて説明したが、エンジンバランサ10は、次に示すような変形例も可能である。
【0083】
遊星歯車機構21のサンギヤ24は、
図6に示すように、例えばバランスウエイト側対向面に突出して形成される第1の駆動ピン24aにブッシュ40を介してニードルベアリング等のベアリング41を固定した構成となっている。これにより、フリクションロスを低減させることができるようになり、振動低減効果の向上を図ることが可能となる。
【0084】
なお、バランスウエイト30の出力部材側対向面に固定される第2の駆動ピン30c,30dにブッシュを介してベアリングを固定してもよいことは勿論である。
【0085】
本発明に係るエンジンバランサ10は更に、次に示すような変形例も可能である。
【0086】
(1)変速機構20及びバランスウエイト30は、エンジンブロック101とエンジンブロック101のトランスミッションの間に配置されてもよい。
(2)変速機構20及びバランスウエイト30は、エンジンブロック101のクランクプーリ側とトランスミッション側の両側に配置されても構わない。バランスウエイト30のクランクプーリ側のアンバランス量及びトランスミッション側のアンバランス量としては、クランクシャフト110の往復移動で発生するアンバランス量の略半分となるように設定することが好適である。これにより、モーメントバランスを取ることができる。
(3)クランクプーリ112は、遊星歯車機構21のサンギヤ24に固定される構成であってもよい。
(4)出力部材22の内周面に4つの外方突出部22c,22eを形成する構成に限らず、クランクシャフト110の回転に伴う慣性力が最大になるアンバランス方向及びアンバランス位置に同じ位相差をもって外方突出部22c,22eを形成することができる。
(5)アンバランス量調整構造としては、サンギヤ24のバランスウエイト側対向面にカム溝等の凹部又は駆動ピン等の凸部が形成され、一方のバランスウエイト30にサンギヤ24の凹部又は凸部と嵌合する凸部又は凹部が形成される構成であっても構わない。
(6)バランスウエイト30の出力部材側対向面にカム面等の凹部又は駆動ピン等の凸部が形成され、一方の出力部材22にバランスウエイト30の凹部又は凸部と嵌合する凸部又は凹部が形成される構成であっても構わない。
(7)直列4気筒エンジン以外の他の多気筒型のエンジンに採用することができることは勿論である。農業機械、建設土木機械、運搬機械等の作業用車両、不整地用四輪走行車(ATV)、鉄道等の各種の車両、各種の産業機械や工作機械等のエンジンにも適用可能であり、本発明の初期の目的を十分に達成することができる。