特許第6154069号(P6154069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6154069改良されたピトー管の形態を有する差圧ベースの流量測定装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154069
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】改良されたピトー管の形態を有する差圧ベースの流量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/46 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   G01F1/46
【請求項の数】30
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-517507(P2016-517507)
(86)(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公表番号】特表2016-532088(P2016-532088A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】US2014049556
(87)【国際公開番号】WO2015047543
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年4月6日
(31)【優先権主張番号】14/039,006
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】ヴィークルント,デイヴィッド,ユージン
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06470755(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0211368(US,A1)
【文献】 米国特許第03765241(US,A)
【文献】 特開2001−242025(JP,A)
【文献】 特開平06−058786(JP,A)
【文献】 特公昭54−009069(JP,B1)
【文献】 実開昭60−135666(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差圧に基づく流量測定システムであって、
プロセス流体の流量に関連する圧力センサ出力を有する差圧センサと、
前記差圧センサに結合され、前記プロセス流体を流通させる導管中に挿入されるように構成された細長いプローブと、
前記差圧センサに結合された少なくとも1つの上流開口を有し、それによって上流圧力を前記差圧センサに適用する前記プローブ中の上流プレナムと、
前記差圧センサに結合された少なくとも1つの下流開口を有し、それによって下流圧力を前記差圧センサに適用する前記プローブ中の下流プレナムと、
前記細長いプローブに近接してプロセス流体の流れの中に位置され、前記細長いプローブのスパンに沿ってコヒーレントに離脱しない渦によって引き起こされる前記下流圧力における変動を低減するように構成された渦離脱安定化器と、
を備えた流量測定システム。
【請求項2】
前記渦離脱安定化器が、少なくとも1つの境界層フェンスからなる請求項1に記載の流量測定システム。
【請求項3】
前記境界層フェンスが、プロセス流体の流れの方向と略平行に配置された平表面からなる請求項2に記載の流量測定システム。
【請求項4】
前記細長いプローブの長さに沿って位置された複数の境界層フェンスを含む請求項2に記載の流量測定システム。
【請求項5】
前記上流プレナムが、複数の上流開口を含み、前記複数の境界層フェンスが、前記上流開口の間に位置されている請求項4に記載の流量測定システム。
【請求項6】
前記境界層フェンスが、前記細長いプローブの上流面から前記細長いプローブの下流面に延びていて、前記細長いプローブの縦方向軸に対して垂直に配置されている請求項2に記載の流量測定システム。
【請求項7】
前記渦離脱安定化器が、下流エレメントからなる請求項1に記載の流量測定システム。
【請求項8】
前記下流エレメントがプレートからなり、該プレートは、前記下流プレナムに隣接するように配置されているが、該プレートと前記細長いプローブの間をプロセス流体の流れが通ることができる、あるいは該プレートは、前記上流プレナムの下流にあって前記下流プレナムを形成するが、前記上流プレナムと前記下流プレナムの間をプロセス流体の流れが通ることができる請求項7に記載の流量測定システム。
【請求項9】
前記下流エレメントが、プロセス流体の流れに対して垂直な方向に延びている請求項7に記載の流量測定システム。
【請求項10】
前記下流エレメントが、前記細長いプローブに略平行な方向に延びている請求項9に記載の流量測定システム。
【請求項11】
前記下流プレナムが、前記下流エレメント内に取り付けられている請求項7に記載の流量測定システム。
【請求項12】
前記細長いプローブと前記下流エレメントの間の開口は、それらの間での流体伝達を許す請求項7に記載の流量測定システム。
【請求項13】
前記細長いプローブが、平均ピトー管からなる請求項1に記載の流量測定システム。
【請求項14】
前記細長いプローブは、断面"T"形を有し、前記渦離脱安定化器は、前記"T"形のベースを通って延びている開口からなる請求項1に記載の流量測定システム。
【請求項15】
差圧に基づいてプロセス流体の流量を測定する方法であって、
プロセス流体の流れを運ぶ導管内に、上流面と下流面を有する細長いプローブを配置すること、
前記細長いプローブに関して上流圧力および下流圧力を圧力センサに結合させること、
前記上流圧力および下流圧力に基づいてプロセス流体の流量を測定すること、
前記プロセス流体が前記細長いプローブを通過して動くときに、前記細長いプローブのスパンに沿ってコヒーレントに離脱しない渦によって引き起こされる前記下流圧力における変動を低減すること、
からなる方法。
【請求項16】
前記下流圧力における変動を低減することが、前記細長いプローブに近接して少なくとも1つの境界層フェンスを配置することからなる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記境界層フェンスが、プロセス流体の流れの方向と略平行に配置された平表面からなる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細長いプローブの長さに沿って位置された複数の境界層フェンスを与えることを含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記細長いプローブが、複数の上流開口を有する上流プレナムを含み、前記複数の境界層フェンスが、前記上流開口の間に位置されている請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記境界層フェンスが、前記細長いプローブの上流面から前記細長いプローブの下流面に延びていて、前記細長いプローブの縦方向軸に対して垂直に配置されている請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記下流圧力における変動を低減することが、前記細長いプローブに近接して下流エレメントを配置することからなる請求項15の方法。
【請求項22】
前記細長いプローブが、少なくとも1つの上流側開口を有する上流プレナムと少なくとも1つの下流側開口を有する下流プレナムを含み、前記下流エレメントは、プレートからなり、該プレートは、前記下流プレナムに隣接するように配置されているが、該プレートと前記細長いプローブの間をプロセス流体の流れが通ることができる、あるいは該プレートは、前記上流プレナムの下流にあって前記下流プレナムを形成するが、前記上流プレナムと前記下流プレナムの間をプロセス流体の流れが通ることができる請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記下流エレメントが、プロセス流体の流れに対して垂直な方向に延びている請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記下流エレメントが、前記細長いプローブに略平行な方向に延びている請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記下流エレメントは、前記下流圧力を前記圧力センサに結合するプレナムを含む請求項21の方法。
【請求項26】
前記細長いプローブと前記下流エレメントの間の開口は、それらの間での流体伝達を許す請求項21の方法。
【請求項27】
前記細長いプローブが、平均ピトー管からなる請求項15に記載の方法。
【請求項28】
導管内に挿入されるように構成されて、前記導管内のプロセス流体の流量の測定に使用される平均ピトー管であって、
圧力センサに結合するように構成された少なくとも1つの上流開口を有し、それによって上流圧力を前記圧力センサに適用する上流プレナムと、
前記圧力センサに結合されるように構成された少なくとも1つの下流開口を有し、それによって下流圧力を前記圧力センサに適用する下流プレナムと、
プロセス流体の流れの中に位置されて、細長いプローブのスパンに沿ってコヒーレントに離脱しない渦によって引き起こされる前記下流圧力における変動を低減するように構成された渦離脱安定化器と、
を備えた平均ピトー管。
【請求項29】
前記渦離脱安定化器が、少なくとも境界層フェンスからなる請求項28に記載の平均ピトー管。
【請求項30】
前記渦離脱安定化器が、下流エレメントからなる請求項28に記載の平均ピトー管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業プロセスにおけるプロセス流体の流量測定に関する。より具体的には、本発明は、差圧を利用する平均ピトー管を使用する流量測定に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス工業では、化学、ポンプ、石油、薬品、食品、およびその他の処理プラントにおける固体、スラリ、液体、蒸気、および気体などの物質に関係するプロセス変数を監視するために、プロセス変数送信機を使用する。プロセス変数は、圧力、温度、流量、レベル、濁り、密度、濃度、化学成分、およびその他の特性を含む。プロセス流量送信機は、感知されたプロセス液体の流量に関する出力を提供する。その流量送信器の出力は、プロセス制御ループを介して制御室に伝達することができ、あるいは別のプロセス装置に伝達してそのプロセスの動作を監視し、制御することができる。
【0003】
導管の内部幾何学的形状を変更し、流体中で測定された差圧にアルゴリズムを適用することによって、閉じた導管中の流体の流速を測定することは、知られている。慣例では、ベンチュリ計によって、あるいはオリフィス板、平均ピトー管などの流れ変更デバイスが導管の中に挿入され、導管の断面が変更されることによって導管の幾何学的形状が変えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平均ピトー管は、一般に、導管内の流体の流れを少し妨げる本体を含む。ピトー管の上流側と下流側の間の差圧が測定され、流速に相関させられる。しかしながら、差圧の変動が流速の決定に不正確さをもたらす可能性がある。
背景技術の項で述べたように、平均ピトー管ベースの流量センサは、典型的には、流れている流体中に差圧を発生させることによって動作する。この差圧を感知するために差圧センサが使用され、感知された圧力は、プロセス流体の流速に相関させられる。ピトー管から得られる上流と下流の圧力が、流管の直径を横切って取得される平均圧力であれば、より正確な流量測定値が得られることが知られている。これは、より正確な流量測定値を与えるが、流体がプローブを通過するときに差圧中に起こる不安定な変動のために、流量測定値にまだ誤差が生じることがある。特に、低周波変動は、流速の変化として誤って検出される。本発明は、渦離脱低周波振動を安定化し、それによって、より正確な流量測定値を提供する。これは、以下に詳細に記述される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
差圧流量測定システムは、測定回路に結合された圧力センサを含む。細長いプローブが、プロセス流体を導く導管内に挿入されるように構成される。流体が前記プローブを通過するときに流体の流れ中に差圧が発生し、圧力センサは、その差圧を感知する。渦離脱安定化器が、前記細長いプローブの近隣で、プロセス流体の流れ中に位置される。前記渦離脱安定化器は、前記細長いプローブの近隣の流体の流れにおける渦の離脱を安定化するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の流量測定システムおよびプロセス配管の切断面を示す図である。
図2】流量測定システムおよび本発明の実施形態に従う流量送信器の簡略ブロック図である。
図3A】平均ピトー管およびプロセス流体が管を通過して流れるときの渦の離脱の透視図である。
図3B】時間に対する圧力振幅のグラフである。
図3C】ある渦の離脱のシナリオでの周波数に対する圧力振幅のグラフである。
図3D】時間に対する圧力振幅のグラフである。
図3E】他の渦の離脱のシナリオでの周波数に対する圧力振幅のグラフである。
図3F】時間に対する圧力振幅のグラフである。
図4A図1に示された平均ピトー管の前側平面図であり、境界層フェンスの例を示す。
図4B図1に示された平均ピトー管の後側平面図であり、境界層フェンスの例を示す。
図4C図1に示された平均ピトー管の透視図であり、境界層フェンスの例を示す。
図5A】平均ピトー管の下流に位置するプレートとして配置された渦離脱安定化器を含む平均ピトー管の上側断面図である。
図5B】平均ピトー管の下流に位置するプレートとして配置された渦離脱安定化器を含む平均ピトー管の上側断面図である。
図5C】下流プレートを有する他構成の平均ピトー管の上側断面図である。
図6】渦離脱安定化器の他の形態例の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、プロセス制御システム10の概略図であり、本発明の形態の環境の一例を示している。流量測定システム12は、プロセス制御ループ16を通って制御室14(電圧源と抵抗でモデル化される)に結合される。ループ16は、適当なプロトコルを利用して、流量送信器12と制御室14の間で流量情報を通信する。例えば、プロセス制御ループ16は、高速アドレス可能遠隔変換器(HART (登録商標))、ファウンデーション(FOUNDATION (登録商標))フィールドバス、あるいは他の適当なプロトコルなどのプロセス工業標準プロトコルに従って動作する。さらに、プロセス制御ループ16は、例えば、IEC62591基準に従う無線HART((登録商標))通信プロトコルを使用して情報を無線通信する無線プロセス制御ループから成ってもよい。Ethernet(登録商標)または光ファイバ接続を含む他の通信手法が用いられてもよい。
【0008】
図1は、さらに、中に差圧測定プローブ20が据え付けられた管、あるいは閉じた導管のようなプロセス流体容器の切断面を示している。プローブ20は、管18の内側を直径方向に延びる平均ピトー管である。図1の矢印24は、管18中の流体の流れ方向を示している。流体マニホールド26と流量送信機ハウジング13が、ピトー管20の外部端にマウントされて示されている。送信機ハウジング13は、通路30を通してプローブ20に流体結合された差圧センサ28を含む。さらに、図1は、任意の第2のセンサ接続27を図示しており、この第2のセンサ接続は、プローブ20に搭載された1つ以上のプロセス変数センサを流量送信機13内の回路に接続するために使用される。例えば、温度センサに接続するために、これを使用することができる。渦離脱安定化器(図1には示されていない)は、プローブ20近隣に位置され、以下でより詳細に説明されるように、プローブ20に近い渦の離脱の変動を安定化する。
【0009】
図2は、流量送信機12のシステムブロック図である。流量測定送信器12は、流量送信機ハウジング13および差圧測定プローブ20を含む。流量測定送信器12は、ループ16のようなプロセス制御ループに結合可能であり、管18内のプロセス流体の流量に関連するプロセス変数出力を通信するように適合される。送信機12は、ループ通信機32、差圧センサ28、測定回路34、および制御器36を含む。
【0010】
ループ通信機32は、ループ16のようなプロセス制御ループに結合可能であり、プロセス制御ループ上で通信するように適合される。この通信は、どのような適当なプロセス工業標準プロトコルに従うものでもよく、例えば、上述したプロトコルに従うものでよい。
【0011】
第1および第2のポート38,40は、通路30を通ってプローブ20の第1および第2のプレナム(plenum)42,44にそれぞれ結合される。センサ28は、適用された圧力の変化に応答して電気的特性が変化する、どのようなデバイスでもよい。例えば、センサ28は、ポート38とポート40の間に適用された差圧に応答して容量が変化する容量型圧力センサでよい。他の測定手法が使用されてもよい。
【0012】
測定回路34は、センサ28に結合され、ポート38とポート40の間の差圧に関連するセンサ出力を提供するように構成される。測定回路34は、どのような電子回路でもよく、それにより差圧に関連する適当な信号を提供することができる。測定回路34は、例えば、アナログ−デジタル変換器、容量−デジタル変換器、あるいは他のどのような適当な回路でよい。
【0013】
制御器36は、測定回路34およびループ通信機32に結合される。制御器36は、測定回路34によって提供されるセンサ出力に関連するプロセス変数出力をループ通信機32に提供するように適合される。制御器36は、マイクロプロセッサ、あるいは他のどのような適当なデバイスでよい。典型的には、制御器36は、差圧を、プロセス流体の流速に関連する出力に変換する。制御器36は、例えば、曲線あてはめ手法(curve fitting techniques)などを使用して補償を実行し、差圧と流速の間の関係における非線形性を調整してもよい。追加の係数を使用して流速の測定値を補償してもよく、これには、温度、感知されるプロセス流体、絶対圧などによる変動の補償が含まれる。
【0014】
ループ通信機32、測定回路34および制御器36は、個別のモジュールとして記載されたが、それらは、1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)上に組み合わせてもよい。同様に、マイクロプロセッサベースのシステムにおける種々のソフトウエア要素により、測定回路34、制御器36、およびループ通信機32の機能を実行することができる。
【0015】
差圧測定プローブ20は、通路30によって送信機ハウジング13に結合される。このようにして、センサ28のポート38は、第1のプレナム42に結合され、一方、センサ28のポート40は、第2のプレナム44に結合される。"プレナム"とは、通路、管、あるいはそのようなものであり、その中に特定の性質または圧力の流体が導かれ、すなわち収容され、そして、それを通して流体圧が伝えられ、すなわち伝達される。
【0016】
図示された形態では、第1(上流)のプレナム42は、少なくとも1つの衝撃開口(impact aperture)48を含み、プローブ衝撃(すなわち上流)表面46からの圧力をセンサ28のポート38に伝達するように配置される。開口48は、適当などのような形態でもよい。開口48は、縦軸成分を含み、幾つかの形態では、その縦軸成分は、十分長く、(スロットのような)開口48は、プローブ20の縦軸に実質的に整列する。第2(下流)のプレナム42は、衝撃表面46から下流に間隔をおいて位置された非衝撃(すなわち下流)表面50を含む。非衝撃表面50は、非衝撃表面からの圧力を、プレナム44を介してセンサ28のポート40に伝達するように配置された少なくとも1つの非衝撃開口52を含む。測定されている圧力の場所は、記述の上でのものであり、本発明は、この形態に限定されない。
【0017】
背景技術の項で議論されたように、差圧における変動は、流量測定値に誤差をもたらす可能性がある。平均ピトー管(Averaging Pitot Tube: APT)流量計のようなピトー管ベースの流量計は、その出力中に大きい変動を持つ可能性があることが留意される。APTは、その上流側と下流側の間の差圧を生成する。下記の式(1),(2)を使用して、質量流速Qmassまたは体積流速Qvolumetricを測定することができる。
【0018】
【数1】
【0019】
【数2】
【0020】
式(1)および(2)において、質量流速は、単位時間当たりの質量(mass)単位量(kg/hr, lbs/secなど)であり、体積流速は、単位時間当たりの実体積(actual volume)単位量(actual cubic ft/hour, actual cubic meters/minuteなど)である。要素Nは、定数の変換係数であり、その値は、式(1)および(2)における他の種々の要素の単位によって決定される。式(1)および(2)の変数は、温度の関数である管直径D、デバイスを通る速度を変化させる流体密度を変化させる原因であって、差圧と静圧の比の関数である気体膨張係数Y、静圧と温度の関数である流体密度ρ、およびAPTの前面と後面の間で測定される差圧(DP)である。残りの要素は、流量係数Kである。これは、流量計を通る真の流速と、その計器を通る理論上の流速の比を示す実験上の要素である。その流量係数は、定数として簡単化されてもよいし、レイノルズ数(Reynolds number)の関数とされてもよい。
【0021】
Kは、実験上の要素であることが留意される。APTの周りの流れ場は、下流側で結果的に生じる高度乱流再循環領域で、プローブ20の先端エッジから流れの分離が生じる、という事実から、Kを実験的に決定する必要がある。再循環領域の圧力場は、差圧(DP)に変動をもたらす重大で不安定な変動を持つ。DP(あるいは、これに代えてK)における変動に寄与するもう1つの要素は、典型的なAPTの幅が、管の直径より極めて小さいことである。すなわち、典型的なAPTアプリケーションでは、管をまたぐ長くて細長い突っ張りを含むことである。APTにいくらか類似する他の流量技術は、渦流発生型流量計である。この型の流量計では、渦離脱体が(APTと同様に)管にまたがり、下流側で、同様の高度乱流再循環領域による流れ分離を持つ。この技術との相違は、妨害係数(blockage factor)である。これは、下記の式(3)で定義される。
【0022】
【数3】
【0023】
式(3)において、dは、流入する流れに面するAPTの幅であり、Dは、管の直径である。APT計器に対し、与えられたAPTは、広範囲の管サイズに対して使用することができるが、渦式計器に対し、妨害係数は、すべての計器サイズで本来同じである(すなわち、その離脱バーの幅は、各管のサイズに対して変わる)。APTに対し、これは、与えられたAPT幅に対して管サイズが増大すると妨害係数が減少することを意味する。渦流発生型流量計に対し、妨害は、力学的相似性を利用するために一定に保持され、全ての計器が同じ流体力学的特徴を持つことを確実にする。この方策は、渦の離脱が、大体は2次元様式で振る舞うという事実により、渦式計器に対して好結果をもたらすことが証明されている。すなわち、離脱バーが管にまたがるという事実にもかかわらず、そのスパンの影響が最小になる。渦の離脱現象は、離脱バー幅に対するスパン方向長さの比が約4:1と5:1の間にあるように長ければ、スパンに沿ってコヒーレント性を示す。実際、全ての商業的な渦式計器は、この考えで設計される。殆どのAPTの周囲の分離された流れ場は、離脱の渦を指示する。
【0024】
APTでは、差圧は、上流の停滞圧力から(ウェーク領域(wake zone)で測定される)下流圧力を減算することによって得られる。これら両者の圧力は、典型的には、流れを横切る方向での圧力平均を提供する複数の圧力ポートを持つプレナムチャンバ(plenum chambers)内で測定される。差圧信号の大部分は、吸い込み側、つまり下流側から発生する。このため、下流側の圧力場における変動を最小にすることが重要である。
【0025】
APTの後流は、渦の離脱によって強く支配される。妨害がより高い小サイズの管に対しては、渦の離脱は、APTのスパンに沿って、より一様である。管サイズが増大して妨害係数が低減すると、スパンに沿った渦の離脱のコヒーレント性は、より低下したものとなる。これは、トルネード形態で生じるものに類似する。形成されるトルネードの曲がりくねった形状は、地面に下降するように渦を巻く。APTの場合、流れの分離は、APTの表面に沿って固定されて留まらない。むしろ、渦の軸は、そのある部分が他の前に分離するように曲げられる。渦の離脱は、離脱部のスパンに沿ってコヒーレント性でない。図3Cに示されるように、周波数fm1とfm2は、別々に認識可能な周波数を持たないかも知れない。圧力信号においてfm1とfm2に対応する周波数を識別できるとは限らない。しかしながら、図3Cに図示されるように、渦の離脱のピークが普通に広がり、図3Eに図示される鋭いピークの形状と対象的である。
【0026】
APTシステムでは、考慮されなければならない4つの圧力影響がある。第1は、上流圧力(沈滞圧力)がAPTのスパンに沿って少し変化することである。これは、管内の流速プロフィルによるものである。十分に発達した乱流では、その圧力は、中央で少しピークとなる。その結果、沈滞圧力は、APTの前面に沿って変化する。上流プレナムチャンバではいくらかの第2の流れが起こるかも知れないが、それは、動的影響でないので、測定される沈滞圧力に圧力変動をもたらさない。第2は、流れがプローブの両側の周りを分かれて進むときに、プローブの上流を横方向に振動させる上流圧力があることである。他の2つの圧力影響は、下流圧力測定値に生じる。第1は、渦自身による圧力変動がある。渦の離脱の周波数は、例えば、液体への適用の場合、5Hzから100Hz程度に分布し、気体への適用の場合には、100から1000Hz程度に分布する。典型的な差圧力送信器の周波数応答は、典型的には、10Hzを大きく超える周波数では圧力変動が弱められて検出不可能な点になっている。したがって、下流圧力の変動は、流体流れへの適用の場合、極めて低速度に対して関係するだけである。渦の強さ(すなわち、圧力変動の大きさ)は、圧力の2乗に関係するので、低速での圧力変動は、比較的小さくなる。より関係するのは、APTのスパンに沿ってコヒーレントに離脱しない渦によって引き起こされる後流の変動である。これは、APTの後面に沿って圧力傾斜を引き起こし、それにより下流プレナムチャンバ内に第2の流れが生じる可能性がある。このような変動および/または第2の流れは、ゆっくり変化し、および/またはランダムな性質であるかも知れない。そのような変動は、差圧信号における低周波振動として表れる。差圧送信機に対する固定のサンプルレートは、流量計の出力を、雑音があり、再現性を小さいものにする。
【0027】
流れ中の障害物の下流側に形成される渦は、位置と時間の両者によって変化する非常に複雑な形態を有する。図3Aは、プローブ20の後縁(非衝撃側)50に形成されるトレイリング(trailing)渦33−1,33−2および33−3を示す極めて簡単化された図である。渦33−1,33−2および33−3は、プローブ20の長さに沿う種々の位置に形成される。これらは、プロセス流体を通る個々のスライスとして観察することができ、実際の渦は、図3Aで下流(右側)に動くように、プローブ20の長さに沿って連続的に形成される。個々の渦は、急速に形成され、プローブ20の両側の間で振動する。さらに、渦の位置、形状およびタイミングは、プローブ20の長さに沿って変化する。図3Bは、図3Aに示された渦33−1の、時間に対する圧力振幅を示している図である。図3Bに示されるように、fm1-2として図示された低周波数エンベロープ内に含まれる第1の渦の振動fvがある。これらの周波数は、図3Cで示された振幅対周波数のグラフの中に示されている。図3Cには、第1の渦離脱周波数fvの他に、低周波数fm1とfm2が示されている。典型的には、fvは、十分に高い周波数であるので、流速を決定するために使用される圧力測定値と干渉しない。しかし、周波数fm1とfm2によって形成される低周波数エンベロープは、差圧を測定するために使用される圧力センサによって感知され、流量の測定値に誤差を引き起こす可能性がある。以下でより詳細に説明するように、下流エレメントが、離脱周波数fvを変調する低周波数エンベロープを低減するために使用され、それによって、流速の測定値の誤差を低減する。図3Eは、下流エレメントが使用されたときの渦の離脱の効果を示す時間対圧力振幅の図である。同様に、図3Eは、周波数対振幅の図である。図3Dおよび3Eで示されるように、周波数fm1とfm2によって形成される低周波数エンベロープは、除去される。これにより、圧力測定値における誤差が低減される。
【0028】
個々の渦が示す低周波数振動に加えて、プローブの長さに沿って観察される渦のタイミング変動もある。図3Fは、渦33−1と33−2の時間対振幅の図である。図3Fに示されるように、それらの渦の間にはタイミング オフセットがある。図3Fで図示されている時間的推移は、プローブ20のプレナム内に圧力変動を引き起こし、その結果、流量測定値に誤差が生じる。以下でより詳細に説明するように、境界層フェンスがプローブ20に近接して位置されて、それらの時間的変動を低減し、それによって流量測定値の精度を高める。図4A,4Bおよび4Cは、そのような境界層フェンスの一例の実施形態を示している。
【0029】
図4Aは、プローブ20の前縁を示す前平面図であり、図4Bは、プローブ20の後縁を示す後平面図である。図4Aでは、上流開口48が、プローブ20の上流面側のスパンに沿って散在する。同様に、図4Bでは、開口52が、プローブ20の任意に設けられる下流エレメントの両側で、プローブ20の下流面側のスパンに沿って散在する。図4Aおよび4Bでは、複数の渦離脱安定化境界層フェンス80が示されており、以下により詳細に説明されるように動作する。図4Cは、プローブ20の透視図であり、プローブ20の外側周囲の周りに延びる境界層フェンス80の一例の形態を示している。
【0030】
図4A−Cに示されている境界層フェンス80は、プローブ20のスパンに沿う外部圧力の伝達を途絶させるように働く。これは、流体が、コヒーレントな長さの範囲内の幾何学に限定されるように、それをふるまわせる。これは、渦の離脱を正規のものにする。その壁のサイズおよび開口の配置を適当にすることは、渦の離脱をプローブ20に沿ってより均一にし、その結果、差圧は、より再現性のあるものとなる。さらに、境界層フェンス80のサイズおよび開口48の配置に加えて、プローブ20の幅を種々に調整して、渦の離脱の正規性を高めることができる。これは、速度が少し低い管壁の近くが最も重要である。管の壁により近くにある境界層フェンス80は、それらの影響を最小にすることに役立つ。ある観点では、境界層フェンス80のサイズおよび/または形態は、プローブ20のスパンに沿って変化する。境界層フェンス80は、平らなエレメントとして示されているが、どのような適当な形態が使用されてもよい。さらに、境界層フェンス80の間隔、配置、サイズおよび形状は、要求に従って変えられてもよい。
【0031】
図5Aと5Bは、渦の離脱のコヒーレント性を改善するための下流エレメントの一例を示し、それによって、図3Bと3Cで示される低周波成分による差圧測定値の変動を低減する。図5Aと5Bは、プローブ20の一形態の上断面図であり、上流プレナム42および下流プレナム44を示している。台形APTが図示されているが、その形は、要求されるように変えられてよい。APTの下流には、数個の点でAPTに取り付けられたプレート90として配置された渦離脱安定化器があるが、流れは、プレート90とプローブ20の間を通ることができる。プレート90によって下流プレナム44を支持できることが注目される。このような形態では、プレナムからプロセス流体に開口する圧力ポートは、プレート90がある下流側に位置される。図5に示されたよういな形態では、プレート90がプレナム42の下流にあってプレナム44を形成する。最初に、流れは、プローブ20に近づき、流れがプローブの前面を横切って横方向に振動するように、上流振動93が生じる。流れは、最初、APTの前縁92から分離し、渦を形成する。それらが十分に形成される前に、流れは、下流プレート90の角94から再び分離する。流れ視覚化実験およびひな形は、そのような形態では、APT20とプレート90の間に、極めて整然として(すなわち、一定流速で、渦周波数の標準偏差がより小さい) 、強い交差流を持つ(すなわち、図5Aと5Bで垂直方向の)強い渦が生成されることを示す。図5Aと5Bで示されるように、上流プレナムチャンバ42および下流プレナムチャンバ44は、各上流面の動圧およびAPTと、APTと下流側のプレートの間の圧力を測定する。渦の形態は、プローブ20の両側の間で振動する。図5Aでは、渦は、ページの上側に向かって形成され、プローブ20とプレート90の間に、ページの下側から上側方向への流れを引き起こす。これとは反対に、図5Bでは、渦は、ページの下側に向かって形成され、プローブ20とプレート90の間に、ページの下側に向かう方向に流れを引き起こす。プローブ20とプレート90の間のこの流れの振動は、安定であり、したがって、不安定な低周波圧力振動fm1とfm2に起因する、上述の測定値における誤差が低減される。
【0032】
図6は、平均ピトー管プローブ20の透視図であり、図5で示された形態の、もう1つ例を示している。図6では、複数の開口96が下流エレメント54のスパンに沿って配置されている。図6Aに示されているように、下流エレメント54は、プローブ20のT形の延長リブ(elongate rib)を形成する。開口96は、下流エレメント54の両側の間に広がり、それらの間での流体伝達を許す。これは、図5Aと5Bに示されたプローブ20とプレート90との間の離間と同様に機能する。
【0033】
ある形態では、図5Aと5Bに示されているような形態により増大される渦による圧力の変動を低減するために、プレナムチャンバ42,44と圧力センサ28の間に制限が置かれてもよい。そのような制限は、APT/DPの時間応答を劣化させず、かつ実流量の変化を検知するAPTの能力を低減させないように選択される。
【0034】
本発明は、好ましい実施形態を参照して記述されたが、当業者には、本発明の精神および見地から逸脱することなく、形状および詳細を変更してもよいことが認識されるであろう。ここで使用された用語"ピトー管"は、一般的に、流体の流れの中に挿入されるプローブに向けられている。"ピトー管"は、プロセス流体の流れ内から外部の圧力センサに圧力を導くための内部通路を要求するものでない。本発明では、渦離脱安定化器が、細長いプローブに近接してプロセス流体の流れの中に位置される。渦離脱安定化器は、どのような形態でもよく、外部プレート(下流エレメント)90(図5A−Cと図6)に加えて、境界層フェンス80,82(図4A−C)を含む。しかし、本発明における渦離脱安定化器の形態は、どのようなものでもよく、ここで図示されたものに限られない。ある形態では、境界層フェンス80と外部プレート90の組み合わせが使用されて、差圧測定値がさらに改善される。ここで図示された平均ピトー管は、"T"形である。図6では、開口96は、"T"形のベースを通って広がっているように図示され、それによりエレメント54は下流エレメントを与える。差圧センサは、単一の圧力センサで形成されてもよく、複数の圧力センサが使用されてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10・・・プロセス制御システム、12・・・流量測定システム(流量送信器)、13・・・流量送信機ハウジング、14・・・制御室、16・・・プロセス制御ループ、18・・・導管、20・・・プローブ(差圧測定プローブ,ピトー管)、24・・・流体流れ方向、26・・・流体マニホールド、27・・・センサ接続、28・・・差圧センサ、30・・・通路、32・・・ループ通信機、33−1〜33−3・・・渦、34・・・測定回路、36・・・制御器、38,40・・・ポート、42,44・・・プレナム、46,50・・・プローブ表面、48,52,96・・・開口、54・・・下流エレメント、80・・・渦離脱安定化境界層フェンス、90・・・プレート、92・・・APT前縁、93・・・上流振動、94・・・プレート角
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6