特許第6154077号(P6154077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154077
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】オボムチン液体製剤及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20170619BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20170619BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20170619BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170619BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20170619BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170619BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20170619BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   A61K38/00
   A61P31/12
   A61P31/04
   A61K9/08
   A61K47/18
   A61K47/10
   A61K47/42
   A61K47/02
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-541784(P2016-541784)
(86)(22)【出願日】2014年9月2日
(65)【公表番号】特表2016-534137(P2016-534137A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】CN2014085737
(87)【国際公開番号】WO2015032302
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2016年3月9日
(31)【優先権主張番号】201310407056.4
(32)【優先日】2013年9月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516071929
【氏名又は名称】華中農業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】馬美湖
(72)【発明者】
【氏名】単媛媛
(72)【発明者】
【氏名】黄茜
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−203850(JP,A)
【文献】 特開2000−229865(JP,A)
【文献】 特開2005−000133(JP,A)
【文献】 特開昭62−093386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 9/08
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/18
A61K 47/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤であって、
オボムチン 0.01〜0.1%と、
補助タンパク質 0.0010.01%と、
アミノ酸 1.5〜4%と、
ポリオール 0.5〜5%と、
pH値が6〜8である緩衝液又は水残部と、を含み
前記補助タンパク質はリゾチーム及び/又はオボトランスフェリンであることを特徴とする抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤。
【請求項2】
前記オボムチン液体製剤には50〜500mmol/Lのカルシウムイオン又は10〜500mmol/Lのマグネシウムイオンをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤。
【請求項3】
前記オボムチン液体製剤に50〜200mmol/Lのカルシウムイオン又はマグネシウムイオンを含むことを特徴とする請求項2に記載の抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤。
【請求項4】
前記補助タンパク質はリゾチームとオボトランスフェリンであり、前記リゾチームとオボトランスフェリンとの重量比が1:1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤。
【請求項5】
前記アミノ酸はリジン及び/又はアルギニンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤。
【請求項6】
前記ポリオールはマンニトール及び/又はポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤。
【請求項7】
1)アミノ酸をpH値が6〜8である緩衝液又は水に溶解して、重量含有量が1.5〜4%であるアミノ酸溶液が得られ、さらにアミノ酸溶液にオボムチンを添加して、オボムチンの重量含有量が0.010.1%になるようにし、オボムチンが完全に溶解するまで攪拌するステップと、
2)続いてステップ1)の溶液に補助タンパク質を添加して、補助タンパク質の重量含有量が0.001〜0.01%になるようにし、4°Cにて50〜100回転/分の速度で攪拌して、それを十分に溶解するステップと、
3)最後にポリオールを添加して、ポリオールの重量含有量が0.5〜5%になるようにし、0.45μmの無菌精密ろ過膜(Microfiltration Membrane)で濾過して得られるステップと、を含み、
前記補助タンパク質はリゾチーム及び/又はオボトランスフェリンであることを特徴とする抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤の調製方法。
【請求項8】
ステップ2)又は3)にカルシウムイオン又はマグネシウムイオンを添加して、かつカルシウムイオンの濃度が50〜500mmol/Lに達し、或いはマグネシウムイオンの濃度が10〜500mmol/Lに達するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤の調製方法。
【請求項9】
前記アミノ酸はリジン及び/又はアルギニンであることを特徴とする請求項7又は8に記載の抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤の調製方法。
【請求項10】
前記ポリオールはマンニトール及び/又はポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項7又は8に記載の抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗微生物活性の高いオボムチン(ovomucin)製剤及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病原微生物の表面抗原性はいつも絶えず変異が発生するため、ウィルスワクチン株の増殖過程に手間がかかり、さらに重要なことは、ワクチンの接種効果がウィルスの表面抗原の変異又はドリフトにより低下してしまう。抗ウィルス化学薬物及び抗生物質は、現在、感染病を治療する最も重要な方法であるが、これらの薬物はいずれも生体に対してある程度の毒性副作用を有し、かつ一部のインフルエンザウィルス及び病原性細菌は、すでに一部の薬物に対して薬剤耐性を示す。この状況に基づいて、効率的なワクチンと薬物を開発すると同時に、豊かな自然資源から新しい天然の抗ウィルス活性成分を求めて発見するのは、注目する分野となっている。
【0003】
天然の抗ウィルス活性成分において、抗ウイルスタンパク質は重要な一類である。現在、植物、昆虫及び海洋生物などの種から複数種の抗ウイルスタンパク質を既に抽出しているが、我が国乃至世界における産量が豊かなタンパク資源である、卵における抗微生物タンパク質に対する研究は比較的少ない。実際には、卵に複数種の微生物感染抵抗の活性タンパク質、例えば、オボムチン、トランスフェリン、アビジン及びリゾチームなどがあり、そのうちオボムチンは非常に重要な抗菌・抗ウイルスタンパク質の1つである。多くの粘性タンパク質ファミリーのメンバーと同様に、オボムチンはシアル酸残基を含む巨大分子量の硫酸糖タンパク質であり、従来の研究によれば、オボムチンは比較的よい抗菌・抗ウィルス活性を有することが発見され、複数種のウィルスによる血球凝集反応に対して良好な抑制作用を有している。しかしながら、現在まで、商業応用のレベルに達するオボムチン製品が存在しない。その2つの重要な原因は、オボムチンが精製化調製過程を経った後に抗菌・抗ウィルス活性が損なわれてしまい、また、その溶解性が比較的な低いため、その活性を発揮するのに必要な濃度に達することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は従来技術の不十分な点を克服して、抗菌・抗ウィルス活性を有するオボムチン液体製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は下記の技術方法により実現することができる。
【0006】
オボムチン液体製剤であって、それは、
オボムチン 0.01〜0.1%
補助タンパク質 0.001〜0.01%
アミノ酸 1.5〜4%
ポリオール 0.5〜5%
pH値が6〜8である緩衝液又は水 残部、を含み、
前記補助タンパク質はリゾチーム及び/又はオボトランスフェリンである。
【0007】
好ましくは、前記オボムチン液体製剤に50〜500mmol/Lのカルシウムイオン又は10〜500mmol/Lのマグネシウムイオンを含む。
【0008】
さらに、好ましくは、前記オボムチン液体製剤に50〜200mmol/Lのカルシウムイオン又はマグネシウムイオンを含む。
【0009】
好ましくは、前記補助タンパク質はリゾチームとオボトランスフェリンであり、前記リゾチームとオボトランスフェリンとの重量比が1:1である。
【0010】
好ましくは、前記アミノ酸はリジン及び/又はアルギニンである。
【0011】
好ましくは、前記ポリオールはマンニトール及び/又はポリエチレングリコールである。
【0012】
オボムチン液体製剤の調製方法であって、該調整方法は、
1)アミノ酸をpH値が6〜8である緩衝液又は水に溶解して、重量含有量が1.5〜4%であるアミノ酸溶液を得、さらにアミノ酸溶液にオボムチンを添加し、オボムチンの重量含有量が0.01〜0.1%になるようにし、オボムチンが完全に溶解するまで攪拌するステップと、
2)続いてステップ1)の溶液に補助タンパク質を添加して、補助タンパク質の重量含有量が0.001〜0.01%となるようにし、4℃にて50〜100回転/分の速度で攪拌し、十分に溶解させるステップと、
3)最後にポリオールを添加し、ポリオールの重量含有量が0.5〜5%となるようにし、0.45μmの無菌精密ろ過膜(Microfiltration Membrane)で濾過するステップとを、含む。
前記補助タンパク質はリゾチーム及び/又はオボトランスフェリンである。
【0013】
好ましくは、ステップ2)又は3)にカルシウムイオン又はマグネシウムイオンを添加し、かつカルシウムイオンの濃度が50〜500mmol/Lに達し、或いはマグネシウムイオンの濃度が10〜500mmol/Lに達させるステップをさらに含む。
【0014】
好ましくは、前記アミノ酸はリジン及び/又はアルギニンである。
【0015】
好ましくは、前記ポリオールはマンニトール及び/又はポリエチレングリコールである。
【0016】
本発明が調製するオボムチン液体製剤は、食品表面や、動物あるいは人の口・鼻、創傷などの箇所に塗布することができ、微生物の侵入を抵抗し、ウィルス活性と毒性を低下させる役割を果たす。
【0017】
本発明で調製するオボムチン液体製剤は、細菌に対して良好な粘着性を有し、ウィルスに対して強い抵抗活性を有し、製剤におけるオボムチンの濃度が高く、タンパク生物活性の有效期限が長く、微生物の侵入を効果的に抵抗して、ウィルス活性と毒性を低下させることができ、H5N1とH1N1インフルエンザウィルスに対して一定の抑制作用を有している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下は具体的な実施例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
【0019】
実施例1 補助タンパク質のオボムチンの細菌粘着効果に対する影響
【0020】
研究によれば、オボムチンは粘着作用により微生物の活動を抑制することで、微生物の成長、増殖及び毒性などに対して抑制作用を発揮する。卵白において、天然状態下でオボムチンはリゾチームなどのほかのオボアルブミン質と会合状態(association state)の形式で濃厚タンパク質を形成して、卵に微生物の侵入を抵抗するバリアを提供している。そのため、本発明は天然状態をシミュレートして、異なる補助タンパク質のオボムチンの細菌粘着能に対する影響を研究する。
【0021】
高純度のオボムチンにそれぞれ表1の割合で異なる種類及び割合の補助タンパク質を添加し、タンパクの混合物を作成し、その後に大腸菌、サルモネラ菌及び黄色ブドウ球菌を対象とし、酵素免疫吸着測定法(ELISA)を用いて異なるタンパク混合物の細菌に対する粘着効果を測定する。
【0022】
操作過程は以下の通りである。異なるタンパクのサンプルを50mol/Lホウ酸塩緩衝液(pH9.6)に溶解させ、タンパク濃度が100μg/mLになるように調整する。96ウェルELISA用プレートの各穴に100μLのオボムチン混合物を添加して、4℃で固定して終夜し、上清をゆっくり吸出し、PBS−Tで1−2回洗濯して、固定しないタンパク質を除去する。各穴に100μLBSAを添加して、37℃で2h培養して非特異性結合部位を遮蔽して、その後にPBS−Tで1−2回洗浄する。実験穴に菌体200μLを添加した後に37℃で60min培養し、余分の菌液をゆっくり吸い取り、さらにPBS−Tで1−2回洗浄して、粘着しない細菌を除去する。試験細菌の抗体100μLを添加して、37℃で続いて1h培養し、さらにPBS−Tを添加して洗浄する。各穴に100μLのホースラディッシュペルオキシダーゼで標記される二次抗体(力価1:5000)を添加して、室温で30min放置した後に100μLの0.4mg/mL及び0.2μL/mLのHを含有するクエン酸−リン酸塩緩衝液を添加して、室温で30min日影に置く。その後に100μLの3mol/Lの硫酸を添加して反応を停止させる。マイクロプレートリーダーで490nm箇所の吸光値を読み取る。粘着率は下式で計算する。
粘着率(%)=(A−Ac)/(A−A)×100%
ただし、Aは、サンプル穴の490nm箇所での吸光値であり、Aは、細菌制御穴の490nm箇所での吸光値であり、Acは、ブランク対照穴(菌体を添加しない)の吸光値である。
【0023】
表1 補助タンパク質の最適化実験
【0024】
上記結果によれば、リゾチーム及び/又はオボトランスフェリンを補助タンパク質とすることは、オボムチンの細菌に対する粘着効果を著しく向上させることができるが、そのほかの補助タンパク質は、例えば、ウシ血清アルブミンとオボアルブミンの効果が顕著ではない。
【0025】
実施例2 塩のオボムチンの抗ウィルス活性に対する影響
【0026】
それぞれオボムチンを異なる塩(150mmol/L)を含む緩衝液に溶解させ、十分に攪拌した後に遠心させ、沈殿を取って、再び上記塩溶液で溶解し、タンパク質の終濃度が50μg/mLになるように調整し、SDS−PAGE電気泳動法を採用してサンプルの純度を測定する。それと同時に、国際標準GB/T14926.53−2001とGB/T14926.54−2001の方法を採用してオボムチンのニューカッスル病ウィルスに対する血液凝固及び血液凝固抑制(HI)活性を測定して、血液凝固力価の半数抑制濃度(IC50)を抗ウィルス活性指標とし、異なる種類の塩処理のオボムチン純度及び抗ウィルス活性に対する影響を研究し、結果を表2に示す。
【0027】
表2 塩種類のオボムチン製剤の抗ウィルス効果に対する影響
【0028】
上記データによれば、ブランク対照及びその他の塩の処理組に比べて、カルシウム塩又はマグネシウム塩で処理された後に、オボムチンの抗ウィルス活性は著しく強化することを示す。
【0029】
さらに赤血球凝集抑制試験を用いて異なる濃度のカルシウム塩とマグネシウム塩のオボムチン製剤の抗ウィルス活性に対する影響を評価し、結果を表3に示す。
【0030】
表3 カルシウム塩とマグネシウム塩の濃度のオボムチンの抗ウィルス活性に対する影響
【0031】
以上の試験結果によれば、50〜500mmol/Lカルシウム塩または10〜500mmol/Lマグネシウム塩は、オボムチンIC50を対照組(Control group)より低させることができ、カルシウム塩又はマグネシウム塩の濃度が50〜200mmol/Lである時に、効果はより著しい。
【0032】
実施例3 オボムチンの溶解性試験
【0033】
オボムチンは、高度の不溶解性を有し、その通常の緩衝液における飽和濃度は約0.1mg/mLであり、オボムチンの作用を十分に発揮するために、その溶解度を向上する必要がある。アミノ酸は、小分子有機物であり、溶液にイオンの強度を増加することができるだけでなく、タンパク質と相互作用を発生して、タンパク質の表面電荷を変え、それによりタンパク質の溶解度を増加させる作用を発揮している。そのため、本発明はいくつかのアミノ酸のオボムチンの溶解度に対する影響を研究する。
【0034】
1gオボムチンをそれぞれ100mLの異なる種類のアミノ酸(100mmol/L)を含む緩衝液に添加して、定容した後に均一に混合し、6〜8h攪拌する。1500r/minで5min遠心し、ケルダール法でそれぞれ添加した総タンパク質、上清及び相応溶媒における窒素含有量を測定し、溶剤の溶解性能は窒素溶解性指数で示し、可溶化剤を添加しない蒸留水と中性リン酸塩緩衝液がブランク対照とされている。
窒素溶解性指数(%)=(上清における窒素含有量−溶剤における窒素含有量)/固体サンプルにおける窒素含有量×100%
【0035】
オボムチンの溶解度の測定は従来文献に知られる方法(Hiidenhovietal,2008)を参照して行い、A280=KCLに基づいて、ただし、Kが吸光係数であり、タンパク質の平均係数1L/(g・cm)で計算すれば、オボムチン濃度C(mg/mL)=A280になる。
【0036】
実験結果は表4に示す。オボムチンはアミノ酸が添加されていない蒸留水に溶解性が悪いが、リジンを添加することでその窒素溶解性指数が2%程度から10%以上まで向上することができ、溶解度が5倍以上向上することができ、アルギニンを添加することでその窒素溶解性指数を20%以上に向上させることができ、溶解度が8倍以上向上することができ、リジンとアルギニンとの混合物を使用する時に、溶解度が約11倍程度に向上することができる。
【0037】
表4 可溶化剤(Solubilizer)のオボムチンの溶解度に対する影響
【0038】
実施例4 保護剤を添加してオボムチンの有效期限を延長する
【0039】
水溶液において、タンパク質は変性して生物活性を失いやすく、オボムチン製剤の有效期限を延長するために、ポリオール、高分子ポリマー(ポリエチレングリコール)などの製剤の有效期限に対する影響を研究する。
【0040】
オボムチン製剤に2%のグリセリン(I)、マンニトール(II)、ソルビトール(III)、ポリエチレングリコール(IV)又はその混合物(II+IV)を添加し、均一に攪拌した後にそれぞれペニシリンボトルに入れて、シールした後にそれぞれ4℃で静置し、7日おきにサンプルして実施例1に記載の方法に従ってオボムチン製剤の大腸菌に対する粘着能を測定し、粘着率が50%以下に降下する時に、製剤が失効すると認定する。測定結果は表5に示す。
【0041】
表5 保護剤のオボムチンの有效期限に対する影響
【0042】
上記データによれば、保護剤を添加しないオボムチン製剤は低温貯蔵条件で細菌に対する粘着性が迅速に低下し、細菌粘着率が3週間貯蔵した後にすでに50%より低く、一定量の保護剤を添加した後に、大腸菌に対する粘着能は5週間以上保持することができ、ただし、マンニトール(II)とポリエチレングリコール(IV)との効果が比較的によいが、両者を複合して使用する時に獲得する効果は最もよく、7週間保存した後に製剤の細菌に対する粘着率は依然として50%以上保持している。
【0043】
実施例5〜9 オボムチン液体製剤及びその抗ウィルス効果の検査
【0044】
実施例5〜9において、オボムチン液体製剤の配合方法は6に示す。
【0045】
表6 実施例5〜9の配合方法
注釈:符号「%」がパーセントを示し、重量の割合であり、Rがリゾチームを示し、Lがオボトランスフェリンを示す。
【0046】
その調製方法は、1)アミノ酸を緩衝液又は水に溶解させ、一定の濃度のアミノ酸溶液を得、さらにアミノ酸溶液に一定量のオボムチンを添加して、オボムチンが完全に溶解するように攪拌するステップと、
2)続いてステップ1)の溶液に一定量の補助タンパク質を添加して、4℃にて50〜100回転/分の速度で攪拌して、十分に溶解させるステップと、
3)最後に、一定量のマグネシウム塩又はカルシウム塩(例えば、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム)とポリオールを添加して、0.45μmの無菌精密ろ過膜で濾過するステップとを、含む。
【0047】
実施例5〜9のオボムチン液体製剤のインフルエンザウィルスに対する抑制作用:
インフルエンザウィルスはイヌ腎臓細胞(MDCK細胞)の死亡を引き起こすが、オボムチンはウィルスを抑制することができ、それにより細胞に対して保護作用を有している。オボムチン液体製剤の有効性を検証するために、まず、製剤をMDCK細胞と培養し、さらにインフルエンザウィルスに接種して、細胞の生存率とウィルスに対する抑制率を研究する。
【0048】
具体的なステップは:96ウェルプレートにおけるイヌ腎臓細胞(MDCK細胞)が70%〜80%単層を成長したあと、培養液を吸い取り、100μLオボムチン液体製剤を添加して、37℃で1h培養して、サンプル液を廃棄して、100倍のTCID50のインフルエンザウィルス液100μLを添加して、37℃で1h培養する。遊離ウィルスを洗い出し、細胞維持液200μLを添加して37℃、5%CO中で続いて培養して、細胞病変を観察する。観察を停止する96ウェル培養プレートの各穴に10μLCCK−8溶液(100uL系)を添加して、ゆっくりと均一に混合して、37℃の培養箱で1h培養した後に、酵素結合免疫測定装置で450nm箇所の吸光値(A450)値を読み取り、以下の公式でオボムチンのインフルエンザウィルスに対する抑制率を計算すると同時に、維持液を取って血液凝固実験を行い、細胞病変がウィルスによる特異性病変であることを判断する。
【0049】

細胞生存率(%)=(実験組の平均A値−ブランク対照A値)/(細胞対照組の平均A値−ブランク対照A値)×100
ウィルス抑制率(%)=(実験組(薬物+ウィルス)平均A値−ウィルス対照組の平均A値)/(サンプル組平均A値−ウィルス対照組の平均A値)×100
【0050】
本発明のオボムチン製剤のインフルエンザウィルスに対する抑制効果は表7に示す。
【0051】
表7 オボムチンのインフルエンザウィルスに対する抑制効果
【0052】
結果によれば、インフルエンザウィルスを感染する前にMDCK細胞に異なる濃度のオボムチンを添加し、H5N1とH1N1ウィルスとの感染に対していずれも一定の抑制作用を有し、かつ細胞生存率とウィルス感染抑制率はいずれもオボムチン濃度の増加に伴って上昇し、本発明で調製するオボムチン液体製剤は、インフルエンザウィルスが細胞を感染する過程においてよい抗ウィルス効果を有することを説明する。