(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る操作感覚シミュレータ100の構成例を示す外観斜視図である。また、
図2は、本実施形態に係るアクチュエータ10の構成例を示す概略図である。また、
図3及び
図4は、本実施形態に係るアクチュエータ10の構成例を示す説明図であり、
図3が正面視を、
図4が側面視を示している。
【0017】
本実施形態に係る操作感覚シミュレータ100は、
図1にて示すように、アクチュエータ10と、制御装置30と、アクチュエータ10に横付けされた座席シート51と、を有して構成されている。なお、
図1で示す操作感覚シミュレータ100には、座席シート51に座るユーザの位置に合わせて、ハンドル91、アクセルペダル92、クラッチペダル93、シフト方向モータ17を支えるイケール94及びセレクト方向モータを支えるイケール95が配置されているが、これらの部材は本実施形態に必須の構成要素ではない。ただし、アクセルペダル92やクラッチペダル93等を制御装置30に接続し、これらの部材の操作状態を制御装置30が取得することで、より現実に近いシミュレーションを行うようにしてもよい。
【0018】
次に、本実施形態に係るアクチュエータ10について、
図2〜
図4を参照して説明を行う。
【0019】
本実施形態に係るアクチュエータ10は、上端側に操作グリップ12を有するとともに下端側に作用部16を有する操作レバー11と、この操作レバー11における操作グリップ12と作用部16との間に位置する回転中心部14と、作用部16を支承する作用部支承体24を有するとともに、作用部16の動作に応じて駆動される駆動装置としてのボールスプライン装置23と、操作レバー11に対して回転駆動力を及ぼすことで、回転中心部14を傾動中心とした操作レバー11の傾動動作を実現する2つのモータ17,21とを備えて構成されている。すなわち、本実施形態に係るアクチュエータ10は、2つのモータ17,21によって駆動される2軸制御が実行される構成となっている。したがって、2つのモータ17,21が、操作レバー11に対して回転駆動力を及ぼすことで、回転中心部14を傾動中心とした操作レバー11の傾動動作が行われるようになっている。
【0020】
操作レバー11は、ユーザが操作を行うための棒状の部材であり、操作グリップ12と、荷重検出センサ13と、回転中心部14と、作用部16と、を有するように構成されている。具体的には、上端側に操作グリップ12を有し、その下方側に荷重検出センサ13、回転中心部14の順で各部材が配置され、下端側に作用部16を有する。なお、操作レバー11については、車種によって長さや形状が異なること、長さや形状が異なることにより操作感が異なることから、ボルトやナット等の締結手段によって取り換え自在もしくは調節自在に構成されていることが好ましい。
【0021】
操作グリップ12は、ユーザが操作レバー11を操作するときに把手となる部材である。この操作グリップ12についても、車種によって形状や大きさ等が異なり、形状や大きさが異なることにより操作感が異なることから、ボルトやナット等の締結手段によって取り換え自在もしくは調節自在に構成されていることが好ましい。
【0022】
荷重検出センサ13は、操作レバー11に対して及ぼされる荷重を検出するためのセンサである。具体的には、トルクセンサが用いられており、本実施形態において、操作レバー情報検出部として機能する。
【0023】
回転中心部14は、操作グリップ12と作用部16との間に位置し、操作レバー11がシフト方向及びセレクト方向に傾動するときの傾動中心として機能する部分である。本実施形態では、操作レバー11の長手方向に延びる中心軸と、円柱部材15aの中心軸の延長線との交点が、回転中心部14となる。
【0024】
回転伝導部15は、シフト方向モータ17と回転中心部14との間で回転力を受け渡す部材である。本実施形態に係る回転伝導部15の具体的な構成は、
図2に示すように、回転中心部14を挿通するように、かつ、操作レバー11との関係で十字状に見えるように突出する円柱部材15aと、円柱部材15aの両端部と接続する略コ字形の伝達部材15bと、伝達部材15bにおける円柱部材15aとの接続部とは逆側に接続される軸部材15cとから構成されている。そして、軸部材15cは、シフト方向モータ17のモータ軸と接続しているので、シフト方向モータ17が駆動すると、モータ軸に発生する回転駆動力は、軸部材15cを回転させる。このとき、回転伝導部15を構成する円柱部材15a、伝達部材15b及び軸部材15cは、一つの剛体として回転駆動力を受けるので、この回転駆動力は、回転中心部14を傾動中心として操作レバーを回転させる力として及ぶこととなる。
【0025】
作用部16は、操作レバー11を操作したときに、操作による力が作用する部分である。作用部16は、球状に形成されており、対になって設けられる作用部支承体24に対して滑り接触するように構成されている。なお、本実施形態では、作用部16は、作用部支承体24に対してすべり接触するように構成されているが、転がり接触するように構成されていてもよい。
【0026】
シフト方向モータ17は、操作レバー11のシフト方向への操作力に対して力を加える部材である。また、シフト方向モータ17は、減速機17aと接続されている(
図3参照)。そして、減速機17aは、回転伝導部15と軸同士がカップリング17bにより接続されているので、回転駆動力を正確に伝達するために、それぞれの軸がずれないように構成されている。なお、減速機17aをシフト方向モータ17の直前に配設することにより、シフト方向モータ17の回転角を大きくでき、1パルス当たりの分解能を細かくできる。すなわち、細かい検出精度及び細かい提示力を必要とするシフト方向に対して反力を提示するシフト方向モータ17は、減速機17aやカップリング17bと接続されることで、操作レバーの操作に関して細かい検出精度を発揮することが可能となるとともに、細かい提示力を精度よく提示することが可能となっている。
【0027】
また、シフト方向モータ17には、シフト方向エンコーダ18が配設されている。このシフト方向エンコーダ18は、シフト方向モータ17の軸の回転量を把握できるように配設された部材である。すなわち、シフト方向エンコーダ18は、シフト方向モータ17が回転駆動することに応じてパルスを発生させるように構成されており、本実施形態におけるシフト方向の操作レバー情報検出部として機能する。また、シフト方向エンコーダ18は、取得したパルス数を伝達するために、制御装置30が備えるサーボアンプなどの制御手段としての制御部31と接続するように構成されている。
【0028】
一方、セレクト方向モータ21は、操作レバー11のセレクト方向への操作力に対して力を加える部材である。また、セレクト方向モータ21は、減速機21aと接続されている(
図4参照)。そして、減速機21aは、ボールスプライン装置23のスプライン軸23aに対してカップリング21bを介して接続されているので回転駆動力を正確に伝達するために、それぞれの軸がずれないように構成されている。なお、減速機21aをセレクト方向モータ21の直前に配設することにより、セレクト方向モータ21の回転角を大きくでき、1パルス当たりの分解能を細かくできる。すなわち、細かい検出精度と提示力を必要とするセレクト方向に対して反力を提示するセレクト方向モータ21は、減速機21aやカップリング21bと接続されることで、ノブ上のストロークに関して細かい検出精度を発揮することが可能となるとともに、細かい提示力を精度よく提示することが可能となっている。
【0029】
また、セレクト方向モータ21には、セレクト方向エンコーダ22が配設されている。セレクト方向エンコーダ22は、セレクト方向モータ21の軸の回転量を把握できるように配設されている部材である。すなわち、セレクト方向エンコーダ22は、セレクト方向モータ21が回転することに応じてパルスを発生させるように構成されており、本実施形態におけるセレクト方向の操作レバー情報検出部として機能する。また、セレクト方向エンコーダ22は、取得したパルス数を伝達するために、制御装置30が備えるサーボアンプなどの制御部31と接続するように構成されている。
【0030】
ボールスプライン装置23は、スプライン軸23aと、スプライン外筒23bと、これらスプライン軸23aとスプライン外筒23bとの間に無限循環可能に介装される不図示の複数のボールとを備える駆動装置であり、スプライン外筒23bは、スプライン軸23aの軸方向に対しては自由に往復移動が可能であるが、スプライン軸23aの軸周りの方向にはロックが掛かり、自由に移動を行えない機構である。特に、本実施形態に係るボールスプライン装置23では、スプライン外筒23bの外周面に対して作用部支承体24が形成されているので、スプライン外筒23bと操作レバー11の作用部16とは、作用部支承体24を介して接続状態となっている。つまり、シフト方向モータ17からの回転駆動力が、操作レバー11の回転伝導部15を介して回転中心部14に作用し、回転中心部14を傾動中心とした操作レバー11のシフト方向での傾動運動として作用部16に及ぼされた場合には、その回転駆動力はスプライン軸23aの軸方向に及ぼされることになる。したがって、スプライン外筒23bのみがスプライン軸23aの軸方向に向けて移動することとなる。一方、セレクト方向モータ21からの回転駆動力がスプライン軸23aに及ぼされた場合には、その回転駆動力はスプライン軸23aの軸周りの方向で及ぼされることになるので、ボールスプライン装置23全体がスプライン軸23aの軸周りの方向に向けて回転移動することとなる。そして、セレクト方向モータ21からの回転駆動力は、最終的に作用部支承体24を介して操作レバー11の作用部16に対してセレクト方向の傾動運動として及ぼされることとなる。
【0031】
以上、本実施形態に係る操作感覚シミュレータ100及びアクチュエータ10の具体的な構成例を説明した。次に、本実施形態に係るアクチュエータ10の動作について説明する。
【0032】
まず、ユーザがシフト方向に対して操作力を加えたときの、アクチュエータ10の動作について説明する。
【0033】
操作レバー11のシフト方向に対してユーザの操作が行われると、回転中心部14を回転軸として回転伝導部15が回転する。回転伝導部15が回転することにより、回転伝導部15が有する軸部材15cが回転し、カップリング接続された減速機17aの軸も回転する。減速機17aの軸が回転することにより、シフト方向モータ17のモータ軸が回転する。そして、シフト方向エンコーダ18は、モータ軸の回転量に応じたパルスを出力する。
【0034】
ユーザによるシフト方向への操作によりシフト方向モータ17のモータ軸が回転する一方で、セレクト方向モータ21側では、回転中心部14を支点として、作用部16が滑るように作用部支承体24に対して作用する。その作用力は、作用部支承体24に接続されているボールスプライン装置23まで伝達されこととなるが、シフト方向に対する操作により生じる作用力は、ボールスプライン装置23においては、軸方向の作用力となる。上述のように、ボールスプライン装置23は、軸方向の力に対しては、スプライン軸上をスプライン外筒23bが滑るように移動することとなる。したがって、シフト方向に対する操作により生じる作用力は、スプライン軸上でスプライン外筒23bを移動させることにのみ作用し、セレクト方向モータ21に動きを生じさせることはない。
【0035】
すなわち、ユーザによって操作レバー11のシフト方向に対する操作が行われると、シフト方向モータ17側に対しては、操作グリップ12、荷重検出センサ13、回転中心部14、回転伝導部15、カップリング17b、減速機17a、シフト方向モータ17の順に操作力が伝達されて行くこととなる。一方で、セレクト方向モータ21側には、操作グリップ12、荷重検出センサ13、回転中心部14、作用部16、作用部支承体24、スプライン外筒23bの順に操作力が伝達されていくこととなるが、スプライン外筒23bとスプライン軸23aとの間で前記操作力は消滅することとなる。したがって、セレクト方向モータ21は、シフト方向に対して操作力が加わったことによる影響を受けることがない。
【0036】
次に、ユーザがセレクト方向に対して操作力を加えたときの、アクチュエータ10の動作について説明する。
【0037】
セレクト方向に対してユーザにより操作が行われると、回転中心部14を回転軸として作用部16が滑るようにして、作用部支承体24に対してセレクト方向の操作力を作用させる。作用部16から作用部支承体24を介して伝達されてきた操作力は、作用部支承体24が形成されたスプライン外筒23bをスプライン軸23aの軸周りでの回転方向に回転させる。ボールスプライン装置23は、上述のように、回転方向の力にはボールの循環運動が働かず、スプライン軸23aとスプライン外筒23bとはロックされるので、スプライン外筒23bとスプライン軸23aは一体となって回転する。ボールスプライン装置23が回転すると、カップリング21bと接続された減速機21aの軸も回転する。そして、減速機21aの軸が回転することにより、セレクト方向モータ21のモータ軸が回転する。セレクト方向エンコーダ22は、セレクト方向モータ21のモータ軸の回転量に応じたパルスを出力する。
【0038】
セレクト方向への操作によりセレクト方向モータ21が回転する一方で、シフト方向モータ17側においては、回転伝導部15の円柱部材15aが回転中心部14のセレクト方向の回転に対して影響を受けないように回転中心部14を貫通するように構成されている。したがって、回転中心部14が円柱部材15aを回転中心軸として回転運動するだけで、シフト方向モータ17に動きが生じることはない。
【0039】
すなわち、ユーザが操作レバー11をセレクト方向に操作すると、セレクト方向モータ21側に対しては、操作グリップ12、荷重検出センサ13、回転中心部14、作用部16、ボールスプライン装置23、カップリング21b、減速機21a、セレクト方向モータ21の順に操作力が伝達されていくこととなる。一方で、シフト方向モータ17側に対しては、操作グリップ12、荷重検出センサ13、回転中心部14の順に操作力が伝達されて行くこととなるが、回転中心部14と回転伝導部15との間で前記操作力は消滅することとなる。したがって、シフト方向モータ17は、セレクト方向に対して操作力が加わったことによる影響を受けることがない。
【0040】
次に、制御装置30がシフト方向モータ17に対して反力を提示したときの、アクチュエータ10の動作について説明する。すなわち、上述した、操作レバー11を操作したときの操作力の伝達ではなく、各モータ側から反力を加えたときのアクチュエータ10の動作について説明する。
【0041】
シフト方向モータ17の回転駆動により、シフト方向モータ17のモータ軸が回転し、接続されている減速機17aの軸も回転する。減速機17aの軸が回転すると、カップリング接続されている回転伝導部15に接続するカップリング17bの軸が回転し、回転伝導部15が回転する。そして、回転伝導部15が回転すると、回転伝導部15と接続する回転中心部14は、傾動軸となって、回転中心部14と接続する操作レバー11をシフト方向に傾動させる。
【0042】
すなわち、制御装置30がシフト方向モータ17に対して力(反力)を提示すると、操作グリップ12側に対しては、シフト方向モータ17、減速機17a、カップリング17b、回転伝導部15、回転中心部14、荷重検出センサ13、操作グリップ12の順に反力が伝達されていくこととなる。一方で、セレクト方向モータ21側に対しては、上述したように、ボールスプライン装置23の作用によって反力は伝達されることがない。つまり、セレクト方向モータ21は、シフト方向モータ17によって発生する反力による影響を受けない。
【0043】
次に、制御装置30がセレクト方向モータ21に対して反力を提示したときの、アクチュエータ10の動作について説明する。
【0044】
セレクト方向モータ21の回転駆動により、セレクト方向モータ21のモータ軸が回転駆動し、減速機21aが回転駆動する。減速機21aが回転駆動すると、減速機21aと接続するカップリング21bの軸が回転し、カップリング接続されているボールスプライン装置23全体がスプライン軸23aの軸周りで回転運動する。ボールスプライン装置23全体が回転することにより、作用部16を力点、回転中心部14を支点として、操作レバー11が傾動する。
【0045】
すなわち、制御装置30がセレクト方向モータ21に対して力(反力)を提示すると、操作グリップ12側に対しては、セレクト方向モータ21、減速機21a、カップリング21b、ボールスプライン装置23、回転中心部14、荷重検出センサ13、操作グリップ12の順に反力が伝達されていくこととなる。一方で、シフト方向モータ17側に対しては、上述したように、回転中心部14と円柱部材15aとの作用によって反力は伝達されることがない。つまり、シフト方向モータ17は、セレクト方向モータ21によって発生する反力による影響を受けない。
【0046】
本実施形態に係るアクチュエータ10は、上述した構成を有することにより、ユーザが操作レバー11を操作したときに、異なる2つの軸方向への力の伝達に関して切り分ける機構が採用されているので、操作レバー11の正確な位置情報を検出することができるようになっている。
【0047】
また、本実施形態に係るアクチュエータ10は、2つのモータ17,21のいずれか一方を回転駆動させることで、シフト方向及びセレクト方向のいずれかに対して反力を加えた場合であっても、他方のモータに影響を与えない構成が採用されているので、シフト方向及びセレクト方向のそれぞれに対して制御を実施すればよく、シフト方向及びセレクト方向の2軸制御が容易に実行可能となっている。すなわち、本実施形態に係るアクチュエータ10によれば、制御負担を減らしながらもより精度の高い反力提示を行うことが可能となっている。
【0048】
さらに、本実施形態に係るアクチュエータ10では、上述したように、シフト方向及びセレクト方向のそれぞれに対して制御を行えばよいので、シフト方向とセレクト方向を組み合わせた動作、すなわち、操作レバー11を斜め方向に移動させたり、操作レバー11を曲線的に移動させたりする場合であっても、その制御は容易である。かかる点からも、本実施形態に係るアクチュエータ10は、制御負担を減らしながらもより精度の高い反力提示を行うことが可能な装置であるということができる。
【0049】
以上、本実施形態に係るアクチュエータ10の動作について説明した。
【0050】
次に、本実施形態に係る制御装置30について、図面を用いて説明する。ここで、
図5は、本実施形態に係る制御装置30の内部の構成を示すブロック図である。
【0051】
本実施形態に係る制御装置30は、
図1にて示すように、アクチュエータ10との間でデータの出入力を行えるように構成されている。制御装置30とアクチュエータ10との接続方法は、有線や無線等の任意の方法で行えばよい。
【0052】
本実施形態に係る制御装置30の内部の構成は、
図5にて示すように、制御部31と、演算部32と、プログラム読取部33と、表示部34と、音声出力部35と、ユーザ操作受付部36と、記憶部37とを含むように構成されている。
【0053】
制御部31は、サーボアンプを含み、プログラム読取部33により記憶部37から読み取られた操作感覚提示プログラムを実行し、操作感覚を提示するための各種の制御を実行する機能を有する。例えば、制御部31は、後で詳説する「セレクト方向反力提示処理」や「シフト方向反力提示処理」などの各種処理を行う。
【0054】
演算部32は、制御部31から入力された情報に基づいて、例えば、「反力の演算」などの各種の演算を行う。本実施形態では、演算部32は、操作レバー情報検出部としてのエンコーダ18,22から送信されたパルス数に基づいて、操作レバー11の位置や、ストロークの量、ストロークの速度、ストロークの加速度を演算する処理を行う。なお、詳しい処理内容については後述する。
【0055】
プログラム読取部33は、操作感覚を提示するための各種機能を実行させるためのプログラムを読み取る。プログラム読取部33は、インターネット回線を通じてダウンロードなどの方法によりプログラムを読み取る。読み取られたプログラムは、記憶部37に格納されるように構成されている。
【0056】
表示部34は、制御部31の制御に従って、現在の反力パターンや、仮想的な走行速度や、反力波形などの画面を表示する表示装置である。表示部34は、例えば、液晶表示装置によって構成される。
【0057】
音声出力部35は、制御部31の制御に従って、音声案内や、エンジン音や、ギヤチェンジ時の変速音などの音声を出力する。
【0058】
ユーザ操作受付部36は、所定のコントローラからのユーザ操作に応じた操作信号を受け付け、その結果を制御部31に通知する。例えば、本実施形態に係る反力パターン情報の決定をユーザから受け付けるときに、受け付けた反力パターン情報の種類を制御部31に通知する。
【0059】
記憶部37は、操作感覚を提示するときに必要なプログラムや各種のデータを記憶する記憶媒体である。記憶部37は、例えば、RAMなどの不揮発性のメモリによって構成される。記憶部37には、ユーザから収集した評価や感覚などの結果を示す各種の情報や、シフト方向エンコーダ18から送信されたパルス数など、提示する反力を決定する際に利用される各種の情報が格納される。
【0060】
さて、本実施形態において、記憶部37は、壁情報記憶部37aと、反力パターン情報記憶部37bと、操作レバー情報記憶部37cとを含む。ここで、記憶部37に対して格納された情報群の格納状態を
図6〜
図9にて例示する。すなわち、
図6は、壁情報の格納状態を示す説明図である。また、
図7は、セレクト方向用の反力パターン情報の格納状態の例を示す説明図であり、
図8は、シフト方向用の反力パターン情報の格納状態の例を示す説明図である。さらに、
図9は、
図7及び
図8で設定された反力パターン情報の具体的な構成例を示すグラフ図であり、図中の分図(a)が操作レバー11をプラス方向に操作した場合の反力パターン情報を示し、分図(b)が操作レバー11をマイナス方向に操作した場合の反力パターン情報を示している。またさらに、
図10は、操作レバー情報の格納状態の例を示す説明図である。
【0061】
壁情報記憶部37aは、操作レバー11の操作可能範囲と操作不可能範囲との境界を示す規制手段としての壁情報を記憶する。本実施形態に係る壁情報記憶部37aは、
図6で示されるような壁情報を複数記憶し、かかる壁情報を選択することで、操作レバー11の操作範囲を自由に規定することができるようになっている。なお、制御装置30において、壁情報記憶部37aに記憶された壁情報は、壁情報取得手段として機能する制御部31によって取得され、さらに、制御部31が操作可能範囲規制手段として機能することで、操作レバー11の操作可能範囲が所望の領域内に規制されることとなる。そして、壁情報記憶部37aを用いることで、例えば異なる車種の壁情報を複数用意すれば、様々な車種のシフトチェンジを即座に体験することが可能となる。よって、本実施形態によれば、制御面での操作可能範囲と操作不可能範囲の境界設定の自由度が大きくなる。
【0062】
反力パターン情報記憶部37bは、
図7にて示すように、操作レバーの位置と、反力特性情報とを対応付けしたセレクト方向用反力パターン情報や、
図8にて示すように、操作レバーの位置と、反力特性情報とを対応付けしたシフト方向用反力パターン情報を記憶する。また、「反力特性情報」とは、
図9にて示すように、目標とする反力がどのような波形をしているかを示す情報である。すなわち、反力特性情報は、操作レバーの位置と、ストロークの量と、ストロークの速度と、ストロークの加速度とに応じて、反力の特性が決定されるように構成されている情報である。
【0063】
なお、
図9にて示す反力特性情報は、横軸に操作レバー11のストロークの量が取ってあり、縦軸に操作レバー11に及ぼされる反力の荷重量が設定されている。また、この反力特性情報は、
図7及び
図8の表中に示されるように、操作レバー11のシフト方向とセレクト方向の動きのみではなく、壁の端に操作レバー11を入れる場合(すなわち、ギヤチェンジを行う場合。「入り特性」と記す。)と、操作レバー11を壁の端から中心方向に戻す場合(すなわち、ニュートラル状態とする場合。「戻り特性」と記す。)とで別々に設けられている。つまり、様々なパターンの反力特性情報を用意することで、操作レバー11のあらゆる動作状態(例えば、ストロークの量、ストロークの速度、ストロークの加速度、荷重)に応じて様々な反力を提示することが可能となっている。
【0064】
操作レバー情報記憶部37cは、
図10にて示すように、操作レバー11の位置、操作レバー11の位置と、ストロークの速度と、ストロークの加速度と、操作力と、を含む操作レバー情報を記憶する。「ストロークの量」は、シフト方向エンコーダ18から取得するパルス数に基づいて算出することができる。また、「ストロークの速度」及び「ストロークの加速度」は、ストロークの量の変化の時間微分に基づいて算出することができる。なお、本実施形態では、操作レバー情報は、操作レバー11の位置、ストロークの量、ストロークの速度と、ストロークの加速度と、操作力とを含むこととしているが、これらのうち、少なくとも操作レバー11の位置を含んで構成されていることが必要である。すなわち、少なくとも操作レバーの位置を把握しておくことにより、位置に対応した反力を提示することができるようになるため、シフト方向とセレクト方向との複合的な操作に応じて反力を提供することができるようになる。また、操作レバー情報に操作レバー11のストロークの量、ストロークの速度、ストロークの加速度、操作力などを含ませることで、さらに精度の高い反力の提示が可能となる。
【0065】
以上、本実施形態に係る制御装置30の構成例について説明した。
【0066】
次に、本実施形態に係る制御部31の動作について、
図11を用いて説明する。ここで、
図11は、制御部31が実行するシフト方向モータ17に対する反力提示処理の例を示すフローチャートである。
【0067】
まず、制御部31が、壁情報の入力を受け付ける(ステップS101)。このとき、制御部31は、壁情報取得手段として機能している。壁情報の入力を受け付けると、制御部31は、操作レバー11の操作可能範囲を決定する(ステップS102)。このとき、制御部31は、操作可能範囲規制手段として機能している。このように、本実施形態では、制御部31が壁情報の入力を受け付けることにより、操作レバー11の操作可能範囲が規定されることになる。
【0068】
操作レバー11の操作可能範囲が決定されると、制御部31は、反力パターン情報の入力を受け付ける(ステップS103)。このとき、制御部31は、反力パターン情報取得手段として機能している。反力パターン情報を受け付けると、制御部31は、受け付けた反力パターン情報を、反力提示処理にて用いる反力パターン情報として決定する(ステップS104)。このとき、制御部31は、反力特性情報決定手段として機能している。
【0069】
反力提示処理にて用いる反力パターン情報が決定されることにより、本実施形態の操作感覚シミュレータ100の動作準備が完了する。動作準備が完了すると、制御部31は、ユーザの操作レバー11の操作に応じて操作レバー情報を取得する(ステップS105)。
【0070】
操作レバー情報を取得しながら、制御部31は、セレクト方向反力提示処理(ステップS106)やシフト方向反力提示処理(ステップS107)を実行する。
【0071】
これらの処理(ステップS106、ステップS107)の具体的な内容としては、まず、制御部31は、シフト方向エンコーダ18及びセレクト方向エンコーダ22により取得したパルスによって、操作レバー11の位置、ストロークの量などに関する操作レバー情報を取得する。そして、反力パターン情報と操作レバー情報に含まれる操作レバー11の位置とに応じて、
図9にて示す反力パターン情報を抽出する。反力パターン情報を抽出すると、制御部31は、反力パターン情報と操作レバー11の位置とに応じて、操作レバー11に対して提示する反力を決定し、決定された反力を提示するように、2つのモータ17,21に対して動作指令信号を発信する。
【0072】
また、セレクト方向反力提示処理(ステップS106)やシフト方向反力提示処理(ステップS107)には、フィードバック処理を含ませるようにしてもよい。例えば、制御部31によって決定された反力が決定され、その決定された反力を提示するように2つのモータ17,21に対して動作指令信号が発信されたとき、操作レバー11に加わる反力の状態は、荷重検出センサ13によって検出することができる。この荷重検出センサ13によって検出された荷重と、制御部31が指令した反力とを比較し、その間に誤差が生じている場合には、その誤差を解消すべく、再度制御部31によって補正のための反力が決定され、その決定された補正反力を提示するように2つのモータ17,21に対して動作指令信号を発信するようにしてもよい。このような「フィードバック処理」を実行することで、操作レバー11に対する所望の反力の提示精度がより高まることとなる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0074】
例えば、
図1にて示される座席シート51に対しては、回転機構を備えるように構成することが可能である。座席シート51を回転可能とすることで、例えば座席シート51を180度回転させれば、座席シート51に対するアクチュエータ10の位置が左右逆転するので、右ハンドル車の場合と左ハンドル車の場合の両方のパターンを容易にシミュレーションすることが可能となる。
【0075】
また、例えば、
図1にて示される座席シート51に対しては、座席シート51の回転に限らず、座席シート51が上下左右に移動する移動機構を備えるように構成することが可能である。同様に、アクチュエータ10全体が移動機構を備えるように構成することも可能である。このような構成によれば、ユーザは、自身の体型や操作しやすい位置に合わせて、座席シート51又は操作レバー11を移動することができるようになるため、ユーザ一人一人に対して最適な操作環境を提供することができるようになる。
【0076】
また、例えば、操作レバー11の長さをユーザの好みに合わせて付け替え可能に構成することが可能である。このような操作感覚シミュレータ100を用いることで、実機では試すことができないような組み合わせが試せるようになるため、ユーザに対してあらゆるシミュレーションパターンを提供することができるようになる。
【0077】
また、例えば、様々な壁情報や、反力パターン情報を用意することでシミュレーションパターンを無限に作り出すことが可能である。このような操作感覚シミュレータ100を用いることで、ユーザニーズの掘り起こしや、より実機に近い操作感を得ることができるようになる。
【0078】
さらに、例えば、上述した実施形態では、操作感覚シミュレータ100が、座席シート51や、ハンドル91、アクセルペダル92及びクラッチペダル93を備えていたが、これらの部材は必ずしも必須の構成要素ではなく、適宜、設置や取り外しが可能である。
【0079】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。