(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、1つの実施形態にかかる光照射装置1を模式的示した外観図である。光照射装置1は、光照射装置1の外観を形成する筐体2及び、筐体2に保持される光照射手段10が備えられている。光照射装置1には光照射装置に備えられるべき公知の他の部材も具備されている。
【0017】
筐体2は光照射装置1の外殻を形成する部材であり、両端に底を有する筒状である。筐体2の形状は公知の光照射装置1と同様の形態を採用することができ、特に限定されることはない。
【0018】
光照射手段10は、筐体2内及び必要に応じてその一部が筐体2の表面に露出して配置され、口腔内に充填された光重合樹脂を硬化し得る波長の光を出射する手段である。ただし上記したように、単なる光の出射では患者に不快感を与えることがあるので、光照射手段10はこれを解消できるように構成されている。
図2には光照射手段10の構成をブロック図で示した。
【0019】
光照射手段10は、光源11、非接触温度センサ12、操作手段13、情報処理手段20、及び表示装置30を備えている。
【0020】
光源11は、光重合樹脂を重合させることが可能な波長を含む光源であり、公知の光源を用いることができる。これには発光ダイオード(LED)、ハロゲンランプ、キセノンランプ、またはレーザーダイオード等を挙げることができる。ただし、非接触温度センサ12として赤外線放射温度センサを用いる場合には、誤動作を回避するため赤外線を含まない光源であることが好ましく、かかる観点からLEDが望ましい。
【0021】
非接触温度センサ12は、非接触で対象部位の温度を測定し、これを電気信号に変換することができるセンサである。このような温度センサであれば特に限定されることはないが、測定精度や測定速度の観点から、測定対象部位から放射される赤外線を検知することにより温度を測定する赤外線放射センサが好ましい。
非接触温度センサ12は、光源11が照射する対象部位をその測定範囲とする。通常、口腔内において光源11は対象部位から1mm〜10mm程度離隔して照射がおこなわれることから、この範囲で非接触温度センサ12が対象部位の温度を測定することができるように測定の軸を設定すればよい。従ってこのような測定が可能であれば非接触温度センサ12が配置される位置は特に限定されることはない。
【0022】
操作手段13は、光照射装置1の使用者の操作に供される手段である。使用者は操作手段13に備えられる各種選択キー等を選択することにより、使用者の意思を光照射装置1に反映させることができる。
このような操作手段13は、特に限定されるものでなく、公知のものを適用することができ、その形式は特に限定されるものではない。
【0023】
情報処理手段20は、非接触温度センサ12、操作手段13から情報を取得し温度測定の結果を表示させ、及び/または光源の点灯及び消灯に関する演算をし、それらの結果を各機器に反映させる手段である。
【0024】
情報処理手段20は、受信手段21、中央演算子22、記憶手段23、RAM24、及び送信手段25を有して構成されている。
【0025】
受信手段21は、上記した非接触温度センサ12、及び操作手段13からの情報を適切に取り入れる機能を有する部材であり、これらの手段が接続される。いわゆる入力ポート、入力コネクタ等もこれに含まれる。
【0026】
中央演算子22はいわゆるCPUであり、光源制御演算手段として機能する。従って後述する各種演算はこの中央演算子22でおこなわれる。また、中央演算子22は、その他にも情報処理手段20に含まれる各部材に接続されて、これらを制御することができるように構成されている。すなわち、中央演算子22は、記憶媒体として機能する記憶手段23に記憶された各種プログラムを実行し、これに基づいて光源制御演算をおこない、後述するような光照射装置の制御方法を実行させる。具体的な演算内容については後で詳しく説明する。
【0027】
記憶手段23は、中央演算子22が演算する各種プログラムやデータが保存される記憶媒体として機能する部材である。従って光源制御演算のためのプログラムもここに保存されている。また記憶手段23には、プログラムの実行により得られた中間、最終の各種結果を保存することができてもよい。
【0028】
RAM24は、中央演算子22による演算の作業領域や一時的なデータの記憶手段として機能する部材である。RAM24は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等で構成することができ、公知のRAMと同様である。
【0029】
送信手段25は、中央演算子22による指令や演算結果を出力すべき機器へ適切に出力する機能を有する部材であり、本実施形態では光源11及び表示装置30が接続される。いわゆる出力ポート、出力コネクタ等もこれに含まれる。
【0030】
このような情報処理手段20を形成する具体的な態様の例としては、制御基板を挙げることができる。制御基板に備えられる受信手段及び送信手段を情報処理手段20の受信手段21及び送信手段25として構成し、制御基板に備えられる記憶装置を記憶手段23として各種のプログラムやデータ等を記憶させておくことができる。そして各種演算や制御、指令は制御基板に備えられる中央演算子(CPU)が中央演算子22として機能し、記憶手段23に記憶された各種プログラムを実行することによりおこなわれる。
【0031】
表示装置30は、測定した温度、その他使用者に伝えるべき事項を表示する装置であり、いわゆるディスプレイや簡易な構造であるインジケータ等により構成することができる。
【0032】
以上のように構成される光照射装置1によれば、照射される光により生じる熱に起因する患者の不快を抑制することが可能となる。より具体的な詳しい内容は後で説明する。
【0033】
本実施形態では、非接触温度センサ12は温度測定範囲の平均値を求めて測定温度とする例を説明したが、温度測定範囲内で温度を分布として表示するように構成してもよい。すなわちサーモグラフィーのような形態である。この際には、表示装置30は必ずしも筐体2に配置されることはなく、配線により連結されたモニタに表示することができるように構成できる。
【0034】
図3に、1つの例である光照射装置の制御方法S10(「制御方法S10」と記載することがある。)の流れを示した。ここでは分かりやすさのため光照射装置1を用いた例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、以下の趣旨を含む方法を可能とするものであれば他の構成を備える光照射装置によるものであってもよい。以下に示す他の例についても同様である。
【0035】
制御方法S10は、光源の点灯過程S11、温度測定過程S12、及び温度表示過程S13を含んでいる。
光源の点灯過程S11では、使用者が操作手段13により光源点灯の指令をすると、これを受信した光源制御演算手段として機能する情報処理手段20から、光源11に点灯指令がなされ、光源11が点灯する。
温度測定過程S12では、光源の点灯過程S11で光源11が点灯するとともに、非接触温度センサ12により温度測定が開始される。ここで温度測定がされるのは、上記の通り光源11により光が照射された部位である。
温度表示過程S13では、非接触温度センサ12の測定結果が情報処理手段20に送信され、情報処理手段20が表示装置30に対して表示をする旨の指令をし、温度が表示される。
そして、使用者の判断による操作手段13の操作(例えばスイッチ操作によるOFF)及び/または使用者が設定した時間が経過すると自動的にOFFとなる等の条件により、光源11が消灯されるまで、温度測定過程S12、及び温度表示過程S13が繰り返される。
【0036】
制御方法S10によれば、光が照射されている部位を直接に非接触温度センサで測定することが可能である。そして制御方法S10によれば温度が表示されるので、使用者がこの温度を参照しつつ光の照射を調整し、患者に不快感が生じることを回避することも可能となる。
【0037】
図4に、他の1つの例である光照射装置の制御方法S20(「制御方法S20」と記載することがある。)の流れを示した。制御方法S20は、過程S21〜過程S28を有して構成されている。
【0038】
過程S21及び過程S22は上記した光源の点灯過程S11及び温度測定過程S12にそれぞれ相当する。
【0039】
過程S23は、過程S22で得られた温度が許容範囲内であるかを判断する。ここで許容範囲は、光重合樹脂がある程度効率よく硬化すると考えられる光が照射された時の温度で、かつ、十分に患者が不快を感じない温度である範囲が好ましい。従って、許容範囲の下限は光重合材料がある程度効率よく硬化する量の光が照射されたときの温度、上限は患者が不快を感じない十分な温度とすることが好ましい。
過程S23で許容範囲内であると判断されたときには「Y」が選択され、そのまま光の照射が維持されて過程S22に戻る。
一方、許容範囲から外れていると判断されたときには「N」が選択され、過程S24に進む。
【0040】
過程S24は、過程S22で得られた温度が高温側で許容範囲を外れたかを判断する。低温側で許容範囲を外れた場合には、光重合樹脂が重合するために十分な光が照射されていないので、「N」が選択され、過程S25に進み光の照射強度が高められた上で過程S22に戻る。
過程S24では低温側で許容範囲を外れた場合も想定した過程としたが、照射時間をなるべく短くする観点から、通常は初期設定とし最大出力で光を照射することが多いことから、過程S25を要しないこともある。この場合には過程S24及び過程S25は含まれない流れを設定することもできる。
【0041】
一方、過程S24において高温側で許容範囲を外れたと判断されたときには「Y」が選択され過程S26に進む。
【0042】
過程S26では、高温側で許容範囲を外れた程度が所定の範囲であるかを判断する。ここで所定の範囲とは、許容範囲よりは高温であるがその程度がわずかであり、この後すぐに光の照射強度を弱めれば患者に不快感を与えることなく温度を低下させることができる程度の温度を意味する。従って、所定の範囲より温度が高い場合にはただちに患者に不快感を与える虞がある。
そこで、所定の範囲よりも高い温度であった場合には過程S26で「N」が選択され、過程S28にてただちに光源が消灯され、その旨が表示装置30に表示される。
一方、所定の範囲よりも低い温度であった場合には過程S26で「Y」が選択され、過程S27で光の照射強度を低下させたり、パルス制御(ONとOFFの切り替え)等の温度を低下させるための制御がなされ、過程S22に戻る。
【0043】
制御方法S20は例えば次のような条件の1つまたは組み合わせにより終了する。
・使用者の判断による操作手段13の操作(例えばスイッチ操作によるOFF)
・使用者の設定した時間が経過すると自動的にOFF
・設定した光量(J/m
2)が照射された時点で自動的にOFF
ここで、光量(J/m
2)は、単位時間当たりの総照射強度(W/m
2)、照射時間(s)、及び照射強度等に依存した補正係数の積等により求めることができる。光量を規定した場合には、制御によって照射強度が変更された場合であっても、材料の硬化不足を防ぎ、より確実に材料を硬化させることができる。
【0044】
光照射装置1を以上のように制御することにより、光重合樹脂を効率よく硬化することができるとともに、患者の不快を最小限に抑えることが可能となる。そしてこれが自動的におこなわれるので使用者の利便性も高い。
【0045】
図5に、さらに異なる1つの例である光照射装置の制御方法S30(「制御方法S30」と記載することがある。)の流れを示した。制御方法S30は、過程S31〜過程S36を有して構成されている。
【0046】
過程S31では、光源11を予備点灯する。予備点灯では、実際の重合の際に照射される光(「本点灯」と記載することがある。)よりかなり低い強度で光を照射する。
【0047】
過程S32では、予備点灯により照射された部位の温度を非接触温度センサ12で測定する。
【0048】
過程S33では、過程S32で得られた温度、及び温度上昇にかかった時間に基づいて、光源11が本点灯されたときに温度がどの程度まで上昇するかを予測する。温度予測は、予備点灯による温度上昇の時間と到達温度との関係を、本点灯における到達温度に関連づけるデータを予め情報処理手段20の記憶手段23に保存しておき、逐次これを呼び出して光源制御演算手段として機能する中央演算子22で演算して算出する。
【0049】
過程S34は過程S33で予測した温度が、許容される温度であったかを判断する過程である。許容される温度は、予測温度が患者が不快に感じる温度にまで達してしまったかで判断する。
許容される温度以内であったときには、本点灯が可であるとして「Y」が選択されて過程S35に進み、光源11を本点灯する。
一方、許容される温度より高かったときには、本点灯が否であるとして「N」が選択されて過程S36に進み、光源11が消灯してその旨が表示装置30に表示される。
【0050】
過程S36に進んだ場合には使用者は光源11の強度設定を変える等して再度制御方法S30をおこなう。
【0051】
制御方法S30によれば、予備点灯により予め本点灯における到達温度を把握することができるので、本点灯後の温度調整に比べてさらに患者の不快の可能性を減らすことができる。
【0052】
本実施形態では、過程S34で「Y」と判断された後、自動に本点灯(過程S35)する態様で説明した。これによれば使用者は手を動かす必要がなく、位置決めした照射位置がずれずに済む利点を有する。
ただし、より使用者の確認を促して安全性を高める観点から、例えば過程S31の予備点灯は操作手段13に備えられるスイッチの半押しを必要とし、過程S35の本点灯の際には当該スイッチの最後までの押し込みを必要とするように構成してもよい。
【0053】
また上記制御方法S10、S20、S30を全て併せて適用してもよい。すなわち、測定された温度は全て表示装置30により表示しつつ、本点灯時には制御方法S20を適用し、本点灯に先立って制御方法S30による設定をおこなうことができる。これによりさらに確実に患者及び使用者への負担を軽減することができる。