特許第6154118号(P6154118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6154118作業車両のリアPTO軸の動力伝達装置、動力伝達装置付作業車両、及びロータリー除雪車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154118
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】作業車両のリアPTO軸の動力伝達装置、動力伝達装置付作業車両、及びロータリー除雪車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/28 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   B60K17/28 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-250742(P2012-250742)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-97733(P2014-97733A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】512295442
【氏名又は名称】三協建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512295453
【氏名又は名称】菅井工業有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】遠田 繁美
(72)【発明者】
【氏名】菅井 金一
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−055833(JP,U)
【文献】 実開昭49−049008(JP,U)
【文献】 実開昭60−051920(JP,U)
【文献】 実開昭62−088630(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリア側にPTO軸が設けられている作業車両に設置されるPTO軸の動力伝達装置であって、
作業車両の前後方向に設けられるシャフト部材と、
当該シャフト部材を作業車両に対して軸周り自在に保持するシャフト保持部材と、
前記シャフト部材に対して作業車両のPTO軸の動力を伝える動力伝達部材とからなり、
前記作業車両のフロント側に於いては、前記リア側のPTO軸と同じ向きの動力を取り出すことができ、
更に作業車両のフロント側に設置した作業機を上下昇降させる昇降装置を備えており、
当該昇降装置は、作業車両のリア側に設置されている3点リンク機構の動作を利用した油圧システム、又は3点リンク機構の動作をワイヤーによって車両のフロント側に伝える事により昇降動作を行う事を特徴とする、作業車両のリアPTO軸の動力伝達装置。
【請求項2】
前記動力伝達部材は、少なくとも2つ以上のギアによって構成されており、
前記作業車両のPTO軸に取り付けられて、当該PTO軸と共に軸周りに回転する第1ギアと、
前記シャフト部材に設けられて、当該シャフト部材と共に軸周りに回転する第2ギアとを具備し、
当該第1ギアと第2ギアとは、相互に逆向きに回転する様に組み合わされている、請求項1に記載の作業車両のリアPTO軸の動力伝達装置。
【請求項3】
少なくともリア側にPTO軸が設けられている作業車両であって、
当該PTO軸には、前記請求項1又は2に記載の作業車両のリアPTO軸の動力伝達装置が設けられており、
前記作業車両のリア側に設けられたPTO軸の動力が、前記シャフト部材を介して作業車両のフロント側に伝導されている事を特徴とする動力伝達装置付作業車両。
【請求項4】
請求項3に記載の動力伝達装置付作業車両と、
作業車両のフロント側に設けられるロータリー除雪装置と、
当該ロータリー除雪装置を上下昇降させる油圧ユニットとからなり、
当該ロータリー除雪装置は、前記動力伝達装置を介したリアPTO軸の動力により稼働する事を特徴とするロータリー除雪車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラクター等の作業車両のリア側に取出されるPTO軸の動力をフロント側に伝達させて取り出す為の動力伝達装置、および当該動力伝達装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来提供されている標準仕様の農業用トラクターや乗用管理機等の作業車両では、作業車両の前部にエンジンを搭載し、該エンジンの動力にて車輪を駆動するとともに、この動力の一部を作業車両の後部に設けたPTO軸に伝達するように構成した上で、作業車両の後部に連結した作業機を、後部のPTO軸から取り出した動力で駆動するように構成している。
【0003】
一方、当該農業用トラクター等に於いては、作業車両の前部に作業機を連結することもあり、このため、標準仕様とは別に、作業車両の前方にフロントPTO軸を突設するとともに、前輪駆動伝達軸から動力を分岐して該フロントPTO軸へ伝達するフロントPTO装置を備え、前部作業機を駆動できるようにした作業車両も知られている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2001−26223号公報)では、作業車両のフロントPTO装置にクラッチやリンク機構を取り付けるための設置スペースを小にするとともに、標準仕様と部品の共用化を図るべく、エンジンの前方に出力軸を突出してフライホイールを設け、該フライホイールに乾式クラッチを装着してケースにて被蔽し、該ケースの前部に前記出力軸と一体回転するフロントPTO軸を軸装し、該ケースの外部には、3点リンク機構のトップリンクを取り付けるブラケットと、左右のロワリンクを取り付ける支持パイプを設けた作業車両のフロントPTO装置が提案されている。
【0005】
また、従来においては、フロント側PTO軸を具備しないトラクターに対して、フロント側に除雪機等を装着した除雪作業機も提案されている。即ち、特許文献2(特開2004−19174号公報)では、除雪作業をより簡単かつ良好になし得るようにするべく、トラクター車体の前側に除雪機を取付け、トラクター車体の後方側にパワーユニットを設け、パワーユニットの油圧で、除雪機を駆動するようにし、またトラクター車体に装着されたフロントローダの先端側に除雪機を取付け、トラクター車体の後方側にパワーユニットを設け、パワーユニットの油圧で、除雪機を駆動するようにした除雪作業機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−26223号公報
【特許文献2】特開2004−19174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、従前においてもトラクターの前部にフロントPTO軸を設けた作業車両は存在するが、標準仕様のトラクターにはフロントPTO軸は設けられていないのが実情である。また当該フロントPTO軸は予め作業車両に設けたクラッチや変速機構等の機構によって、リアPTO軸と並列的に取り出されることから、後から追加する事は困難であった。
【0008】
そこで本発明は、フロント側にPTO軸の取り出し部が設けられていない仕様のトラクターに於いても、作業車両のフロント側にリアPTO軸の動力を取り出す事のできる動力伝達装置、および当該動力伝達装置を備えた作業車両を提供する事を第一の課題とする。
【0009】
また従前においては、別途設けたパワーユニットの油圧を利用して、作業車両のフロンの側に設けた除雪機を駆動する事が提案されている。しかしながら、このパワーユニットは、作業車両の後部から取り出したPTO軸の動力を利用して油圧ポンプを駆動させ、除雪機の油圧モーターを回転駆動するように構成されており、エネルギー変換効率において未だ改善の余地があった。また作業車両に対する配管が面倒である上、油漏れの問題も生じる。更に除雪機を駆動させる時期は冬季であって、外気温も低い環境である事から、作動油が固くなり油圧システムの動作も悪くなる。この為、大きなトルクが要求される雪を掻き集めるオーガを駆動させる上では、油圧システムの利用は未だ改良の余地がある。
【0010】
そこで本発明は、作業車両のリア側のPTO軸から取り出される動力を、効率的にフロント側に伝える事ができ、且つ低い温度環境下でも効率よく動作する事のできる動力伝達装置、および当該動力伝達装置を備えた作業車両を提供する事を第二の課題とする。
【0011】
更に、作業車両に設けられているリアPTO軸の動力を、作業車両のフロント側に伝える為の動力伝達装置を設けた場合であっても、当該作業車両は農耕用とでも使用可能である必要がある。例えば冬季以外に於いては作業車両のリア側に設けられたヒッチに対して農耕用等の作業機を取り付け、これをリアPTO軸の動力で駆動させる必要がある。
【0012】
そこで本発明は、作業車両のリア側のPTO軸の動力も使用できるように、当該リア側PTO軸の動力をフロント側に伝達する為の構成要素を着脱自在に設けるか、或いは当該構成要素の全て又は一部を設置したままでも作業車両のリア側のPTO軸から動力を取り出すことができるようにした動力伝達装置、および当該動力伝達装置を備えた作業車両を提供する事を第三の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題の少なくとも何れかを解決する為、本発明では作業車両のリア側に設けられているPTO軸の動力を、作業車両のフロント側に取出すことのできる動力伝達装置、および当該動力伝達装置を備えた作業車両と、この作業車両のフロント側にロータリー除雪機を設けたロータリー除雪車両を提供する。
【0014】
即ち、本発明に於いては、少なくともリア側にPTO軸が設けられている作業車両に設置されるPTO軸の動力伝達装置であって、作業車両の前後方向に設けられるシャフト部材と、当該シャフト部材を作業車両に対して軸周り自在に保持するシャフト保持部材と、前記シャフト部材に対して作業車両のPTO軸の動力を伝える動力伝達部材とからなる事を特徴とする作業車両のリアPTO軸の動力伝達装置を提供する。
【0015】
かかる動力伝達装置によれば、リアPTO軸の動力を効率的に作業車両のフロント側に取出すことができる。より具体的には、リアPTO軸の動力(回転動力)は、動力伝達部材を介してシャフト部材に伝えられ、当該シャフト部材によって車両のフロント側まで回転力として伝導される。この様な構成に於いてはエネルギー変換が行われない事から、エネルギー変換に伴うエネルギー損失を大幅に減らす事ができる。また少なくとも動力伝達部材を取り外せば、従前のリアPTO軸として使用できるので、フロント側に動力を要しない場合には、従前の作業機、例えば農耕用トラクターとしても使用する事ができる。
【0016】
上記作業車両は、少なくともリア側にPTO軸が設けられていれば良く、更に車両のフロント側やサイド側にPTO軸が設けられていても良い。車両のフロント側にもPTO軸が設けられている作業車両の場合には、本発明に係る動力伝達装置を設置する事により、フロント側において2つの動力を取り出すことができる。
【0017】
またシャフト部材は、作業車両の前後方向に延伸して設けられ、望ましくは車両のリアPTO軸の先端部分に基端が存在し、作業車両の前部近傍に先端部分が存在する長さで形成される事が望ましい。またこのシャフト部材は1本の軸によって形成する他、ユニバーサルジョイント等を介在させる事もできる。車両の底面の凹凸に沿うようにする為である。更に、このシャフト部材には、必要に応じてクラッチや、変速装置等を介在させる事もできる。但し、これらクラッチや、変速装置は、後述する動力伝達装置に設けても良い。
【0018】
またシャフト保持部材は、作業車両に対してシャフト部材を保持する為の構成要素であり、各種の軸受け、例えばユニットベアリング等を使用する事ができる。かかるシャフト保持部材は、前記シャフト部材を作業車両に保持できる限りに於いて、設置個数や間隔を調整する事ができる。
【0019】
また動力伝達部材は、前記シャフト部材に対して作業車両のPTO軸の動力、特に回転力を伝える為の構成要素である。かかる動力伝達部材は、複数のギアを組み合わせてなるギアボックスとして形成する他、ベルトとプーリー、チェーンとスプロケット等、PTO軸の回転をシャフト部材に伝える為の構成要素で形成する事ができる。中でもPTO軸の回転力をより確実にシャフト部材に伝える上では、当該動力伝達部材は、複数のギアを用いて形成する事が望ましい。
【0020】
即ち、前記動力伝達部材は、少なくとも2つ以上のギアによって構成されており、前記作業車両のPTO軸に取り付けられて、当該PTO軸と共に軸周りに回転する第1ギアと、前記シャフト部材に設けられて、当該シャフト部材と共に軸周りに回転する第2ギアとを具備し、当該第1ギアと第2ギアとは、相互に逆向きに回転する様に組み合わされている動力伝達装置とする事ができる。
【0021】
上記第1ギアと第2ギアとの間には、他のギアを介在させても良く、またギアの組み合わせにより、PTO軸との関係に於けるシャフト部材の回転速度やトルク、或いは回転方向等を変化させる事もできる。更に、当該ギアの組み合わせによりシャフト部材の回転速度やトルク等を任意に変化させる変速装置や、シャフト部材に対する回転力の伝達と遮断を任意に行うクラッチ等を設ける事ができる。
【0022】
そして当該動力伝達部材が複数のギアを用いて形成される場合、これら複数のギアをボックス内に収容したギアボックスとして形成する事が望ましい。作業車両に対する着脱の容易性や安全性を向上させる為である。そして係るギアボックスは、作業車両の車体フレームに直接溶接する他、作業車両の車体フレームに溶接した固定枠(固定フレーム)に対して、ボルトその他の連結構造により、着脱自在に取り付ける事ができる。また、当該ギアボックスは、一般的な作業車両に設けられている三点ヒッチに固定する事もできる。
【0023】
そして本発明では前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、少なくともリア側にPTO軸が設けられている作業車両であって、当該PTO軸には、前記本発明に係る動力伝達装置が設けられており、前記作業車両のリア側に設けられたPTO軸の動力が、前記シャフト部材を介して作業車両のフロント側に伝導されている動力伝達装置付作業車両を提供する。
【0024】
かかる作業車両は、少なくとも車両のリア側にPTO軸が設けられていれば良く、車両の側面、底面或いはフロント側に、別途PTO軸が取り出されていても構わない。リア側にPTO軸が設けられている作業車両において、上記本発明に係る動力伝達装置を具備する事で、除雪作業のみならず、様々な農耕作業、或いは土木作業等に於いて、車両のフロント側に作業機を設置する事ができる。よって、当該動力伝達装置を設ける事により、例えば農耕用のトラクターであっても、除雪、土木などの様々な用途に於いて使用する事ができる。
【0025】
特に、動力伝達装置における動力伝達部材が、リア側PTO軸と逆向きにシャフト部材を回転させるように構成した場合、車両のフロント側に於いては、前記リア側PTO軸と同じ向きの動力を取り出すことができる。例えば車両の後側から見てリア側PTO軸が時計回りに回転する場合にシャフト部材を反時計回りに回動させるとすると、当該シャフト部材は車両の前側から見ると時計回りに回転することになる。よって前記リア側PTO軸と同じ動作を行う事ができる。なお、当該シャフト部材は、多くの場合、作業車両の下を通すように設ける事ができるが、その他の場所、例えば車両の側方を通して設置することもできる。
【0026】
また、上記本発明に係る動力伝達装置付作業車両には、更に除雪機、特に望ましくはロータリー除雪装置を設置して、ロータリー除雪車両とする事ができる。
【0027】
即ち、上記本発明に係る動力伝達装置付作業車両と、作業車両のフロント側に設けられるロータリー除雪装置と、当該ロータリー除雪装置を上下昇降させる昇降装置とからなり、当該ロータリー除雪装置は、前記動力伝達装置を介したリアPTO軸の動力により稼働するロータリー除雪車両である。
【0028】
かかるロータリー除雪車両にあっては、前記本発明に係る動力伝達装置付作業車両、即ち動力伝達装置によって、リア側のPTO軸の回転動力を作業車両のフロント側に取出すことができる。その結果、ロータリー除雪装置を車両の前部に設置する事ができ、車両が前進する向きで除雪作業を行う事ができる。
【0029】
上記、本発明に係るロータリー除雪車両において、昇降装置はロータリー除雪装置を上下昇降させる為の構成要素であり、これはモーター等の動力を使用する他、油圧システムを利用する事もできる。特に油圧システムを利用する場合には、作業車両側に追加して設置した油圧システムを利用する事ができる。また、作業車両が農業用トラクターの様に三点リンクを備える場合には、当該油圧システムの動力として、三点リンクの動作により作動油に圧力を加えるように構成する事もできる。この場合、三点リンクの動作により作動油に圧力を加え、これを車両のフロント側に設置したピストンなどで取り出すように構成する事ができる。
【0030】
そして上記昇降装置は、当然のことながら油圧やモーターの動作によってロータリー除雪装置を上下昇降させる為のリンク機構を伴う事ができる。係るリンク機構については、当該昇降装置を構成する動力源の力に応じて、適宜設計する事ができる。
【発明の効果】
【0031】
上記本発明に係る動力伝達装置によれば、フロントPTO軸が設けられていない仕様のトラクターに於いても、作業車両のリア側等にPTO軸があれば、その動力を作業車両のフロント側に取り出す事ができる。また、この動力伝達装置を設置した作業車両に於いては、車両のフロント側に各種の作業機を設置して、これを駆動させる事が可能になる。
【0032】
即ち、本発明に係る動力伝達装置によれば、大幅な改造を伴うことなく、簡易に車両のフロント側にPTO軸の動力を取り出すことが可能になる。この時、フロント側に取出した動力は、リア側PTO軸の動作によって制御される事から、リア側PTO軸の動作をコントロールするだけで、フロント側に取出した動力の単位時間当たりの回転数(rpm)やトルク等を調整する事ができる。
【0033】
また、本発明に係る動力伝達装置は、リア側PTO軸の回転動力を、エネルギー変換を伴うことなく回転動力としてフロント側に取出すことができるので、リア側PTO軸の回転動力を、ほぼそのままの力でフロント側に取出すことができる。また、動力伝達部材としてギアなどを組み合わせて構成した場合には、外気温の影響を殆ど受けることなく動作させる事ができる事から、例えば冬季に於いても作業車両本来の動力を取り出すことができる。
【0034】
即ち本発明によれば、作業車両のリア側のPTO軸から取り出される動力を、効率的にフロント側に伝える事ができ、且つ低い温度環境下でも効率よく動作する事のできる動力伝達装置、および此れを備えた作業車両並びにロータリー除雪車両を提供することができる。
【0035】
更に、本発明に係る動力伝達装置は、これを作業車両に対して着脱自在に設ける事により、車両のフロント側に動力を取り出す必要が無い場合には、これを取り外すように構成する事もできる。この為、例えば畝立てなどの農耕用とで使用する場合には、動力伝達装置、少なくともギアボックスなどで構成される動力伝達部材を取り外し、作業車両のリア側に作業機を取り付ける事により、本来の農業用トラクターとしても使用する事ができる。
【0036】
よって本発明によれば、作業車両のリア側のPTO軸の動力も使用できるように、当該リア側PTO軸の動力をフロント側に伝達する為の構成要素を着脱自在に設けるか、或いは動力伝達装置の構成要素の全て又は一部を設置したままでも、作業車両のリア側のPTO軸から動力を取り出すことができるようにした動力伝達装置、および此れを備えた作業車両並びにロータリー除雪車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本実施の形態に係るロータリー除雪車両を示す要部透視側面図
図2】本実施の形態に係る動力伝達装置を示す平面図
図3】本実施の形態に係るロータリー除雪車両を示す背面図
図4】ロータリー除雪装置を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る動力伝達装置、および此れを備えた作業車両並びにロータリー除雪車両を具体的に説明する。特に本実施の形態では作業車両として農業用トラクター(以下、単に「トラクター」とも云う)を使用した実施の形態であって、そのフロント側にロータリー除雪装置を設置した例を示している。
【0039】
図1は本実施の形態に係るロータリー除雪車両を示す要部透視側面図であり、図2は本実施の形態に係る動力伝達装置を示す平面図である。
【0040】
この実施の形態に示すロータリー除雪車両は、動力伝達装置を設置した作業車両であるトラクターと、このトラクターのフロント部分に設けられた除雪装置とから構成されている。この除雪装置は、トラクターの前部に設けた昇降装置に取り付けられており、当該昇降装置の動作により上下昇降自在に設置されている。
【0041】
本実施の形態に於いて、作業車両であるトラクターは、既存の車両を使用する事ができ、少なくともリア側にPTO軸が設けられているトラクターを使用している。本実施の形態に係るロータリー除雪車両を構成する上では、当該リア側のPTO軸があれば十分であるが、更に三点リンク等の構成を伴っていても良い。但し、このトラクターに対しては、その後方に、後述する動力伝達部材としてのギアボックスを着脱自在に保持する為の固定フレームを設ける事が望ましい。
【0042】
係る固定フレームは、図3の背面図に示すように、トラクターの車体フレームに対して、溶接やボルトなどによって固定することができ、少なくともギアボックスが脱落する事の無い強度の金属等を用いて形成する事ができる。このような固定フレームをトラクターの背面に設ける事により、ギアボックスを任意の場所に設置する事ができ、即ち、大きさや形状が異なる様々なトラクターに対して、ギアボックスを、所定の位置に確実に固定する事が可能になる。但し、前記ギアボックス自体をトラクターの車体フレームに着脱一体に設ける事もでき、この場合には当該固定フレームを省略する事ができる。
【0043】
そしてこのギアボックス内には、図3に示すように、トラクターのリア側PTO軸に固定される第1ギアと、この第1ギアと噛み合う第2ギアとを収容する。但し、第1ギアから第2ギアまでの距離が長い場合等には、必要に応じて、第1ギアと第2ギアとの間に更に他のギア(第3ギアや第4ギアなど)を設ける事もできる。またギアボックス内には、第1ギアから第2ギアへの回転力の伝達と遮断を任意に行うクラッチ等を設ける事もできる。更に第1ギアと第2ギアとのギア比を変更したり、他のギアを用いた変速機構を設けても良い。
【0044】
図1〜3に示すように、上記第2ギアの回転力は、当該第2ギアが取り付けられているシャフト部材に伝えられる。このシャフト部材は、本実施の形態ではトラクターの底面側に設けられており、当該トラクターの底面形状に合致する形状で延伸する様に、ユニバーサルジョイントが設けられている。また、このシャフト部材はユニバーサルベアリング等によって、トラクター車体の底面に、軸周りに回転自在に保持されている。その結果、第1ギアの回転力を受けた第2ギアの回転により当該シャフト部材が回転し、このシャフト部材の先端まで、第2ギアの回転力を伝える事ができる。本実施の形態に示すように、シャフト部材をトラクターの底面に設けた場合であっても、当該シャフトまでの地上高は、約30cm程度を確保する事ができる為、除雪用途で使用した場合であっても何ら不都合は生じない。
【0045】
また車両のフロント側には、本実施の形態では油圧で動作する昇降装置を設け、この昇降装置には図4に示す様なロータリー除雪装置を設置する。本実施の形態に係る昇降装置では、トラクターのオプションとして設置した油圧取り出しキットの油圧により動作する油圧シリンダーを使用しており、当該油圧シリンダーはトラクター車体の前部に立設させた支軸の上方に揺動自在に取り付けられた上部リンクアームを昇降させるように取り付けられている。またトラクターの前部には下部リンクアームを設け、前記上部リンクアームの先端、及び下部リンクアームの先端に、前記ロータリー除雪装置を設置している。係る構成により、トラクターに設置した油圧取り出しキットの油圧によって油圧リンダが動作すると、これに応じてロータリー除雪装置も上下方向に昇降する事ができる。ただし、この昇降装置は、本実施の形態に示すような油圧取り出しキットの油圧により動作する物に限らず、例えば車両のリア側に設けられている三点リンクの動作による油圧を利用したり、三点リンクの動作をリンク機構により車両フロント側に伝えたり、或いは油圧以外の動力、例えばモーター等を利用する事もできる。

【0046】
そして、この様にしてトラクターの前部に設けられたロータリー除雪装置に対して、前記シャフト部材によってフロント側に取出されたリア側PTO軸の回転動力が取り入れられる。即ち、雪を送出するスノーブロアと雪を掻き集めるオーガの動力源としてリア側PTO軸の回転動力を使用する。この為、シャフト部材の先端は、当該ロータリー除雪装置に接続されている。但し、当該ロータリー除雪装置は上下昇降自在に取り付けられている事から、前記シャフト部材にはユニバーサルジョイント等を介在させて、ロータリー除雪装置の上下昇降に追従できるように接続する事が望ましい。
【0047】
以上のように構成したロータリー除雪車両によれば、単にリア側にしかPTO軸が存在しないトラクターであっても、その動力をフロント側に取出すことができ、車両のフロント側に設置した作業機、本実施の形態ではロータリー除雪車両を駆動させる事ができる。これにより、トラクターの前進方向に向かって除雪作業を実施する事ができ、除雪作業を容易に行う事ができると共に、作業の安全性を高める事ができる。
【0048】
更に、除雪作業を行わない時期・季節等に於いては、当該動力伝達装置、少なくともギアボックスを取り外す事により、通常の農作業用のトラクターとしても使用できることから、機械設備の為の投資を大幅に減じる事ができる。
【0049】
なお、上記実施の形態は、本発明に係る1つの実施の形態を示したに過ぎず、車両のフロント側に設置する作業機は、必ずしもロータリー除雪装置に限られるものでは無く、各種の作業機を設置する事もできる。また当該作業機の昇降装置に関しても、トラクターにオプションで設置した油圧取り出しキットを利用するだけに限られるものでは無く、例えばトラクターのリアに設置されている3点リンク機構の動作を利用した油圧システムを利用したり、或いは3点リンク機構の動作をワイヤーなどによって車両のフロント側に伝え、この動作を利用して作業機の昇降動作を行う事も可能である。更に、当該作業機の昇降動作を行う為のモーター等を別途設置する事可能である。
【0050】
よって本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲に於いて任意に変更して実施する事が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る動力伝達装置は、トラクターなどの作業車両においてリア側に取出されるPTO軸の動力をフロント側に伝達させる為に使用する事ができ、各種の作業機における用途を大幅に広げる事ができる。
【0052】
即ち、本発明に係る動力伝達装置、および当該動力伝達装置を備えたトラクターは、農業に限らず、除雪用途、その他多くの分野に於いて実施する事ができる。
【符号の説明】
【0053】
10:農業用トラクター、 12:PTO軸、 13:車両フロント側、
14:車両リア側、 20:動力伝達装置、 21:固定フレーム、
22:ギアボックス、 22a:第1ギア、 22b:第2ギア、
23:ユニバーサルジョイント、 24:ユニットベアリング、 25:シャフト部材、
30:昇降装置、 31:上部リンクアーム、 32:油圧シリンダー、
33:下部リンクアーム、 34:フレーム取付ブラケット、 35:オイルホース、
36:油圧取出キット、 40:ロータリー除雪装置、 50:ロータリー除雪車両
図1
図2
図3
図4