特許第6154122号(P6154122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154122
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】多板積層式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   F28F3/08 301Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-270913(P2012-270913)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-115048(P2014-115048A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】株式会社マーレ フィルターシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】若松 匠造
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−180077(JP,A)
【文献】 特開平02−306097(JP,A)
【文献】 特開平05−157481(JP,A)
【文献】 特開平08−303983(JP,A)
【文献】 特開平10−185462(JP,A)
【文献】 特開2002−168591(JP,A)
【文献】 特開2008−309378(JP,A)
【文献】 米国特許第02814469(US,A)
【文献】 米国特許第06182746(US,B1)
【文献】 実開平07−002775(JP,U)
【文献】 特開平06−074672(JP,A)
【文献】 特表2002−506196(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2267391(EP,A2)
【文献】 特開2011−007341(JP,A)
【文献】 特開2006−183945(JP,A)
【文献】 特開2011−007412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部の周縁部に外周側に拡がったテーパ状をなす外周テーパ部が設けられた多数のコアプレートを積層し、隣接するコアプレートの外周テーパ部同士をロー付けにより接合することによって、隣接するコアプレートの基部の間に熱交換用流路を形成してなる多板積層式熱交換器において、
上記コアプレートは、基材の表面にロー材層を被覆したクラッド材からなり、
上記外周テーパ部は、その外周面及び内周面が断面直線状のストレート形状をなしており、
かつ、上記外周テーパ部の先端部の内周面に、外周面側へ向かって窪んだ凹部が形成されており、
この凹部は、断面形状において、外周テーパ部の傾斜方向に沿う方向の寸法よりも板厚方向の寸法が短く、
隣接するコアプレートの凹部同士が、上記外周テーパ部の傾斜方向に関して互いに離間するように構成されている、
ことを特徴とする多板積層式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のコアプレートを積層する多板積層式熱交換器に関し、特に、コアプレートの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、自動車用オイルクーラには多板積層式熱交換器が用いられる。この熱交換器は、基部の周縁部に外周側に拡がったテーパ状の外周テーパ部が設けられた多数のコアプレートが積層され、隣接するコアプレートの外周テーパ部同士をロー付けにより接合することによって、隣接するコアプレートの基部の間に熱交換用流路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,182,746B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コアプレートの外周テーパ部が断面直線状のストレート形状である場合、コアプレートを積み重ねたときに、外周テーパ部の寸法が出ていないと、プレート同士が上手く積層されないおそれがある。
【0005】
一方、上記特許文献1に記載のように、外周テーパ部が先端へ向かうに従って外周側へ拡がる、いわゆるラッパ状の形状である場合、外周テーパ部においてストレート部分が少なくなるために、コアプレート同士が重なり合う部分が少なくなって、強度が低下する懸念がある。また、このように外周テーパ部がラッパ状の形状のものでは、先端部の形状成形性が低下する。つまり、先端部を拡げた形に加工する際に、コアプレートの素材自体のスプリングバック(復元力)によって個々のコアプレートの拡がり方に個体差を生じ易い。このため、先端の拡がりが大きいものや狭いものが混在し、製品としての品質が低下する。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、組付け性に優れ、かつ、組付け後の品質の向上を図ることができる新規な多板積層式熱交換器及びそのコアプレートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基部の周縁部に外周側に拡がったテーパ状をなす外周テーパ部が設けられた多数のコアプレートを積層し、隣接するコアプレートの外周テーパ部同士をロー付けにより接合することによって、隣接するコアプレートの基部の間に熱交換用流路を形成してなる多板積層式熱交換器及びそのコアプレートに関する。
【0008】
上記コアプレートは、基材の表面にロー材層を被覆したクラッド材からなる。上記外周テーパ部は、その外周面及び内周面が断面直線状のストレート形状をなしている。そして、上記外周テーパ部の先端部における内周面に、外周面側へ向かって窪んだ凹部が形成されている。この凹部は、断面形状において、外周テーパ部の傾斜方向に沿う方向の寸法よりも板厚方向の寸法が短い。
【0009】
このように外周テーパ部の先端部の内周面に凹部が形成されているために、コアプレートをプレート積層方向に積み重ねたときに、プレート同士を上手く積層することができ、組付け性が向上するとともに、組付後の品質向上を図ることができる。
【0010】
また、凹部を外周テーパ部の内周面側のみに設け、外周面側は断面直線状のストレート形状としているために、上記ラッパ形状の場合に比して成形も容易であり、個体差を生じ難いことから、品質が向上する。しかも、コアプレートを積み重ねた際にも先端部の拡がりが抑えられるために、強度低下のおそれがない。
積層されたコアプレートは、クラッド材のロー材層におけるロー材によってロー付けされる。このロー付けの際に、上記凹部内にもロー材が侵入し、隣り合うコアプレート同士を確実にロー付けすることができる。
【0011】
好ましくは、隣接するコアプレートの凹部同士が、上記外周テーパ部の傾斜方向に関して互いに離間するように構成されている。これによって、隣り合うコアプレートの内周面と外周面とが直接的に接合する区間を確保し、十分な強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、多板積層式熱交換器のコアプレートを改良することによって、組付け性が向上するとともに、組付後の品質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施例に係るオイルクーラ(多板積層式熱交換器)の要部を示す断面図。
図2】上記第1実施例に係るオイルクーラを示す一部破断側面図。
図3】上記第1実施例に係るオイルクーラを示す上面図。
図4】第1実施例のコアプレートを積み重ねた状態を示す説明図であり、(A)はロー付け前、(B)はロー付け後の状態を示す説明図。
図5】本発明の第2実施例に係るコアプレートの凹部を示す説明図。
図6】本発明の第3実施例に係るコアプレートの凹部を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示実施例により本発明を説明する。先ず図1図4を参照して、本発明の第1実施例に係る多板積層式熱交換器としての自動車用のオイルクーラについて説明する。
【0015】
このオイルクーラ10は、熱交換用流体としてのオイルと冷却水との熱交換を行うコア部11と、このコア部11の上面に取り付けられる比較的厚肉の頂部プレート12と、コア部11の下面に取り付けられる底部プレート13,14と、を有している。
【0016】
上記のコア部11は、基本的な形状が共通の多数の第1のコアプレート15A(15)と第2のコアプレート15B(15)とを交互に積層し、各コアプレート15の間に、熱交換流路としてしのオイル流路17と冷却水流路18とを交互に構成したものである。図示例では、第1のコアプレート15Aの下面と第2のコアプレート15Bの上面との間にオイル流路17が構成され、第2のコアプレート15Bの下面と第1のコアプレート15Aの上面との間に冷却水流路18が構成される。各オイル流路17には、それぞれ略矩形のフィンプレート16が挟み込まれている。なお、図1におけるフィンプレート16は、模式的に描かれたものであり、実際は全体がいわゆるフィン形状に形成されている。
【0017】
また、図示していないが、コア部11の内部には、その対角線上の2箇所にオイル縦流路が形成されるとともに、異なる対角線上の2箇所に冷却水縦流路が形成され、かつ、中央部に中央オイル縦流路が形成されている。これらの縦流路は、多数のコアプレート15に形成された孔の周囲のボス部が互いに接合することによって構成されており、多数のコアプレート15を貫通してプレート積層方向L1に延びている。オイル縦流路と中央オイル縦流路とは複数のオイル流路17に連通し、冷却水縦流路は複数の冷却水流路18に連通している。
【0018】
上記の第1のコアプレート15Aおよび第2のコアプレート15Bは、アルミニウム合金の薄い母材をプレス成形したものであって、全体として略矩形をなしている。各コアプレート15は、薄板状をなす基部30を有するとともに、この基部30の周縁部には、外側に拡がったテーパ状をなす外周テーパ部31が一体的に形成されている。各コアプレート15を積層した状態では、各外周テーパ部31が互いに密に接するようになっている。
【0019】
また、第1のコアプレート15Aの基部30には多数の突起部32が設けられており、これら突起部32が隣接する第2のコアプレート15Bに接合することによって、流路17,18となる空間を確保するための強度・剛性が与えられている。
【0020】
コア部11の最上部には、さらに上記の頂部プレート12が積層されている。この頂部プレート12は、コア部11の一対の冷却水縦流路の一方に連通する冷却水導入管21と他方に連通する冷却水排出管22とを備えている。また、頂部プレート12は、一方の対角線に沿った膨出部23を有し、この膨出部23によって、コア部11の一方のオイル縦流路と中央オイル縦流路の上端とを互いに連通する連通路(図示せず)が構成されている。
【0021】
コア部11の下部には、上述したように、十分な剛性を有する比較的厚肉の底部プレート13,14が積層されている。これらの底部プレート13,14は、図示していないが、コア部11のオイル縦流路の一方に連通するオイル入口と、中央オイル縦流路に連通するオイル出口と、が開口形成されており、ボルト孔20(図3参照)を挿通するボルトによって、シリンダブロック等に適宜なガスケットを介して液密に取り付けられるようになっている。
【0022】
従って、オイルの流れとしては、内燃機関の各部を潤滑して高温となったオイルが、底部プレート13,14のオイル入口からコア部11のそれぞれのオイル流路17へ導入され、隣接する冷却水流路18を流れる冷却水と熱交換して冷却された上で、頂部プレート12の膨出部23による連通路を経由して中央オイル縦流路へと流れ、最終的に、底部プレート13,14のオイル出口から内燃機関側へ戻される。なお、オイルの流れを逆にして、高温のオイルを中央オイル縦流路に導入し、コア部11で熱交換した後に最下部のオイル縦流路から内燃機関へ戻すように構成することも可能である。また、冷却水は、冷却水導入管21から冷却水縦流路を通して各冷却水流路18へ分配され、最終的に冷却水排出管22へと流れ出る。
【0023】
上述した多数のコアプレート15、フィンプレート16、頂部プレート12、および底部プレート13,14は、ロー(鑞)付けによって互いに接合され一体化されている。詳しくは、これらの各部品は、アルミニウム合金の基材の表面にロー材層を被覆したいわゆるクラッド材を用いて形成されており、各部を所定の位置に仮組付した状態で炉内で加熱することにより、一体にロー付けされる。なお、コア部11の最上部および最下部に位置するコアプレート15は、頂部プレート12や底部プレート13,14との関係から、コア部11の中間部に位置する一般的なコアプレート15とは多少異なる構成を有している。
【0024】
次に、本実施例の要部であるコアプレート15の外周テーパ部31の構造について説明する。外周テーパ部31は、基部30の周縁部から所定角度αで外側に傾斜しつつ立ち上がっており、適宜な曲率で湾曲する基部30との付け根部分を除いて、その外周面及び内周面(但し、後述する凹部33により切り欠かれた部分を除く)ともに断面直線状に延びるストレート形状とされている。
【0025】
そして、この外周テーパ部31の先端部の内周面に、外周面側へ向けて窪んだ凹部33が形成されている。凹部33は、この第1実施例では、板厚方向の寸法が外周テーパ部31の傾斜方向L2に沿う方向の寸法よりも大幅に短い断面直方形状をなしており、外周テーパ部31の先端において開放している。従って、外周テーパ部31は、凹部33によって先端部の内周面側が部分的に窪んでおり、この先端部の板厚が局所的に薄い形状となっている。
【0026】
また、凹部33は、コアプレート15を積層した組付状態で、隣接するコアプレート15の凹部33同士が、外周テーパ部31の傾斜方向L2に関して重ならないように、言い換えると、隣り合うコアプレート15の凹部33の間に傾斜方向L2に関して所定の間隙(区間ΔD)を確保するように、傾斜方向L2の寸法が比較的短く設定されている。
【0027】
このような本実施例によれば、コアプレート15を積層する際に、コアプレート15の外周テーパ部31の先端部の内周面側に凹部33を設けているために、外周テーパ部31の先端部の内周面側が他のコアプレート15と干渉することを効果的に抑制・回避することができる。つまり、凹部33がコアプレート15を積み重ねる際の誘い込み形状として機能するために、組付け性が大幅に向上し、組付け後の品質の向上を図ることができる。
【0028】
また、凹部33を外周テーパ部31の内周面側のみに設け、この凹部33が形成された内周面の一部を除く外周テーパ部31の内・外周面を断面直線状のストレート形状としているために、外周テーパ部を先端へ向けて徐々に拡がるラッパ形状とする場合に比して、成形・加工も容易であり、個体差を生じ難いことから、品質が向上する。しかも、ストレート形状であるために、コアプレート15を積み重ねた際にも先端部の拡がりが抑えられ、強度低下のおそれがない。
【0029】
更に、凹部33を設けることで、図4(B)にも示すように、ロー付けの際に凹部33内にもロー材34が侵入する形となり、隣り合うコアプレート15同士を確実にロー付けすることができるために、接合強度が向上する。なお、図4(A)はコアプレート15を積み重ねたロー付け直前の状態を示し、図4(B)はロー付け後の状態を示している。また、図1ではロー材を省略して描いているが、実際には図4(B)に示すようにロー材34が凹部33内に入り込んでいる。
【0030】
但し、凹部33が傾斜方向L2に長くなり過ぎると、隣り合うコアプレート15の内周面と外周面とが直接的に接合する区間ΔDが短くなり、強度低下が懸念される。そこで本実施例では、隣り合うコアプレート15の凹部33同士をプレート積層方向L1に離間して配置しており、両者15の間に、隣り合うコアプレート15の内周面と外周面とが直接的に接合する区間ΔDを確保しているために、十分な強度を確保することができる。
【0031】
なお、凹部33の形状は上記実施例のものに限らず、例えば図5及び図6に示す第2,第3実施例のように様々な形状を採用することができる。図5に示す第5実施例の凹部33Aは、反先端側のコーナー部35の形状が湾曲する湾曲面形状とされている。なお、凹部全体を湾曲面形状としても良い。
【0032】
図6に示す第実施例では、凹部33Bが先端へ向かうに従って拡がるテーパ形状とされている。つまり、先端へ向かうに従って凹部33Bの板厚方向の寸法が大きくなり、ひいては先端へ向かうに従って板厚が薄くなるように、内周面に対して所定の角度を持った傾斜面36により凹部33Bが形成されている。この第実施例の凹部33Bによれば、先端へ向かうに従って隣り合うコアプレート15との距離が拡大することから、コアプレート15を積み重ねる際に、コアプレート15同士の干渉をより確実に抑制・回避することが可能で、組付け性が更に向上する。
【符号の説明】
【0033】
10…オイルクーラ
11…コア部
15…コアプレート
17…オイル流路(熱交換流路)
18…冷却水流路(熱交換流路)
30…基部
31…外周フランジ部
33,33A,33B…凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6