(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のラジエータでは、ラジエータの熱交換部分に十分に熱媒体が溜まることなく熱交換部分から排出されていく場合がある。このような場合には、熱媒体が熱交換部分を通過する瞬間だけ熱交換が行われることになり、熱交換の効率が悪くなる。
【0005】
またラジエータの熱交換部分は通常、熱媒体を通すための多数のチューブで構成されている。そのチューブの中を熱媒体が流れる場合、熱媒体の流れ(流速)はどのチューブにおいても一定で可能な限り同一であることが望ましい。チューブ内における熱媒体の流速が個々のチューブごとに異なり不均一になると、熱交換も不均一となり熱交換器の熱交換効率が著しく低下するからである。
【0006】
しかしながら、従来のラジエータなどの熱交換器においては、熱媒体の流速が個々のチューブごとに不均一な場合があり、かかる場合に熱交換の効率が悪くなる。特に大容量の熱媒体が熱交換器内を流れる場合、チューブの数も多くなり、また流量も大きいため、各細管内の熱媒体の流れが不均一な流れになりやすい。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で、かつ大容量の液媒体が熱交換器内に流れる場合でも高い熱交換効率を有する空気調和システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気調和システムは、第1の熱交換器と、第1の配管とを備えている。第1の熱交換器は、液冷媒を通す経路を内部に有しており、第1の上部タンクと、第1の下部タンクと、複数の第1のチューブと、第1のフィンとを含んでいる。第1の下部タンクは第1の上部タンクの下側に配置されている。複数の第1のチューブのそれぞれは、第1の上部タンクおよび第1の下部タンクをつなぎ、かつ第1の上部タンクから第1の下部タンクへ向かう方向に延びている。第1のフィンは第1のチューブに取り付けられている。第1の配管は第1の下部タンクに接続されている。第1の配管は、第1の上部タンクの第1のチューブが接続された位置以上の高さに位置する部分を有している。
【0009】
本発明の空気調和システムによれば、第1の配管は、第1の上部タンクの第1のチューブが接続された位置以上の高さに位置する部分を有している。これにより、第1の熱交換器の熱交換部分(第1のフィンが取り付けられた第1のチューブの部分)の全体を液冷媒で満たすことが容易となる。このため、第1の配管の配置を変えるという簡易な構成で、液冷媒を用いた熱交換の効率を向上させることが可能となる。
【0010】
また第1のチューブは第1の上部タンクから第1の下部タンクに向かう方向に延びている。このため、第1のチューブ内における抵抗を極力少なくすることができ、第1のチューブが左右に折り曲がったり、上下に折り返されている場合よりも個々の第1のチューブ内における熱媒体の流速を均一化することが容易である。よって、この点からも熱交換の効率を向上させることが可能となる。
【0011】
上記より個々の第1のチューブ内における液冷媒の流速を均一化することが容易であるため、大容量の熱媒体を流した場合でも熱交換を均一化することが容易で、熱交換効率を向上させることができる。
【0012】
上記の空気調和システムにおいて、第1の熱交換器に接続されたポンプがさらに備えられている。
【0013】
ポンプの第1の熱交換器への送液動作が脈動をなす場合、液冷媒が第1のチューブ内を通過する瞬間だけ熱交換が行われて熱交換の効率が悪くなる。しかし上記の空気調和システムにおいては、上記のように第1の配管が構成されているため第1の熱交換器の熱交換部分の全体を液冷媒で満たすことが容易となる。このため、第1の配管の配置を変えるという簡易な構成で、液冷媒を用いた熱交換の効率を向上させることが可能となる。
【0014】
上記の空気調和システムにおいて、ポンプは第1の熱交換器の第1の上部タンク側に接続されている。これにより、第1の上部タンクから第1の下部タンクへ重力に従って液冷媒を第1のチューブ内で流すことができる。このため、重力に逆らって液冷媒を流す場合と比較して、液冷媒の流れに生じる重力抵抗を抑制できる。よって、第1のチューブ内の液冷媒の流速が個々の第1のチューブごとに不均一になることが抑制できる。
【0015】
上記の空気調和システムにおいて、第2の熱交換器と、第2の配管とがさらに備えられている。第2の熱交換器は第1の熱交換器に接続されており、第2の上部タンクと、第2の下部タンクと、複数の第2のチューブと、第2のフィンとを含んでいる。第2の上部タンクは第1の配管に接続されている。第2の下部タンクは第2の上部タンクの下側に配置されている。複数の第2のチューブのそれぞれは、第2の上部タンクおよび第2の下部タンクをつなぎ、かつ第2の上部タンクから第2の下部タンクへ向かう方向に延びている。第2のフィンは第2のチューブに取り付けられている。第2の配管は、第2の下部タンクに接続されており、かつ第2の下部タンクから第2の上部タンク側へ延びて、第2の上部タンクの第2のチューブが接続された位置以上の高さに位置する部分を有している。
【0016】
これにより第1の熱交換器と同様に、第2の熱交換器の熱交換部分の全体を液冷媒で満たすことが容易となる。このため、第2の配管の配置を変えるという簡易な構成で、液冷媒を用いた熱交換の効率を向上させることが可能となる。また第2のチューブは第2の上部タンクから第2の下部タンクに向かう方向に延びている。このため、第1の熱交換器と同様に、第2のチューブ内における抵抗を極力少なくすることができるため、この点からも熱交換の効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、簡易な構成で、かつ大容量の液媒体が熱交換器内に流れる場合でも高い熱交換効率を有する空気調和システムを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
まず本発明の一実施の形態における空気調和システムの構成について
図1〜
図7を用いて説明する。
【0020】
図1を参照して、本実施の形態の空気調和システム1は、熱媒体供給源9から供給される熱媒体を用いて室2の内部(室内)2aの空気を調和するための空気調和システムである。この熱媒体供給源9から供給される熱媒体は、たとえば天然の地下水であってもよく、また工場設備の排熱により冷却・加熱された熱媒体であってもよく、またこれらの双方であってもよい。
【0021】
つまり本実施の形態の空気調和システム1は、熱媒体が予め有している熱エネルギー(地下水の冷熱、工場設備から排出される温熱など)を利用して室内2aの空気を調和するものである。この空気調和システム1は、第1ダクト3と、熱交換装置4と、送風機5と、第2ダクト6と、ポンプ7と、貯槽8と、配管10a、10bとを主に有している。
【0022】
第1ダクト3は、室2の外部(室外)2bに配置されている。この第1ダクト3は、室内2aに通じる複数の吸気口3aと、複数の排気口3bと、内部経路3cとを有している。この内部経路3cにより、複数の吸気口3aと複数の排気口3bとは互いにつながっている。
【0023】
熱交換装置4は、内部に熱媒体を通すための通路(図示せず)を有し、かつその通路内の熱媒体と第1ダクト3内の空気との間で熱交換するように配置されている。具体的には熱交換装置4は、第1ダクト3の内部経路3c内に配置されている。
【0024】
ただし熱交換装置4の配置位置は第1ダクト3の内部経路3c内に限定されず、第1ダクト3の外部に配置されていてもよい。また熱交換装置4は、第1ダクト3の外部に配置されながら、その一部のみが第1ダクト3の内部経路3cに露出するように配置されていてもよい。
【0025】
送風機5は第1ダクト3内の空気を吸気口側3aから排気口3b側へ送るように配置されている。この送風機5によって、熱交換装置4で熱交換された第1ダクト3内の空気を排気口3bを通じて室内2aへ送り出すことが可能となる。
【0026】
送風機5は、第1ダクト3の内部経路3c内に配置されている。ただし送風機5の配置位置は第1ダクト3の内部経路3c内に限定されない。送風機5は第1ダクト3の内部経路3cにおいて吸気口3a側から排気口3b側への空気を送ることができれば第1ダクト3外に配置されていてもよい。
【0027】
この送風機5は、シロッコファン(多翼ファン)、プロペラファン(軸流ファン)、ラジアルファン、ターボファン(後向きファン)などのいずれであってもよく、またこれ以外の空気を送る機能を有するものでもよい。
【0028】
第2ダクト6は、室外2bに通じる開口6aを有し、かつ第1ダクト3に接続されている。第2ダクト6は、第1ダクト3に対する熱交換装置4の配置位置よりも吸気口3a側の位置において第1ダクト3に接続されている。これにより第2ダクト6は室外の空気を第1ダクト3の内部経路3c内に導入することが可能である。
【0029】
熱媒体供給用の配管10aは、熱媒体供給源9から延びて熱交換器4aの内部の通路に接続されている。ポンプ7は、この熱媒体供給用の配管10aに接続されている。このポンプ7は、熱媒体供給源9から供給される熱媒体を熱交換装置4内部の通路に送るためのものである。
【0030】
貯槽8は、熱交換装置4から排出された熱媒体を貯蔵するためのものである。熱媒体排出用の配管10bは、熱交換装置4の内部の通路に接続され、かつ貯槽8の内部に達するように延びている。これにより熱媒体排出用の配管10bから排出された熱媒体を貯槽8の内部に貯蔵することが可能となる。
【0031】
上記の熱交換装置4は複数(たとえば4個)の熱交換器4aを含んでいてもよい。複数の熱交換器4aは、第1ダクト3の内部経路3c内に配置されており、かつ互いに直列かつ並列に接続されていることが好ましい。つまり、直列に接続された複数(たとえば2個)の熱交換器4aを1組としたとき、複数組(たとえば2組)の熱交換器4aが互いに並列に接続されていることが好ましい。
【0032】
図2を参照して、複数の熱交換器4aの各々は、上部タンク41と、下部タンク42と、複数のチューブ(細管)43と、複数のフィン44とを主に有している。上部タンク41にはエアー抜き管57が接続されている。下部タンク42は上部タンク41の下方に配置されている。複数のチューブ43の各々は、上部タンク41から下部タンク42へ向かってたとえば直線状に一方向に延びることにより、上部タンク41と下部タンク42とを接続している。複数のフィン44は、複数のチューブ43のそれぞれの外周に取り付けられている。
【0033】
複数のチューブ43の各々の径(熱媒体の流れる方向に垂直な断面における径)は、上部タンク41および下部タンク42の各々の径よりも小さく設定されている。これにより熱媒体がチューブ43と接する面積が大きく確保されている。
【0034】
この複数の熱交換器4aの各々は、上部タンク41が鉛直方向上側に、かつ下部タンク42が鉛直方向下側に位置するように配置されている。複数の熱交換器4aの各々は、作業車両(たとえばショベル、ブルドーザ、ホイールローダ)に用いられるラジエータであってもよい。
【0035】
図3を参照して、直列に接続された複数の熱交換器4aは、第1ダクト3の内部経路3c内において排気口3b側に配置された熱交換器4aから吸気口3a側に配置された熱交換器4aへ熱媒体を順次流すように構成されていることが好ましい。
【0036】
排気口3b側に配置された熱交換器4aの上部タンク41には熱媒体供給用の配管10aが接続されている。また排気口3b側に配置された熱交換器4aの下部タンク42には熱交換器接続用の配管51の一方端51aが接続されている。
【0037】
この熱交換器接続用の配管51は、排気口3b側に配置された熱交換器4aの下部タンク42から排気口3b側に配置された熱交換器4aの上部タンク41側へ上方に延びて、その上部タンク41の底部の高さ位置(破線A1−A1)以上の高さに位置する部分を有していることが好ましい。ここで上部タンク41の底部の高さ位置(破線A1−A1)は、上部タンク41に複数のチューブ43が接続された箇所の位置である。これにより熱媒体が液冷媒の場合に、排気口3b側に配置された熱交換器4aの熱交換部(フィン44が取り付けられたチューブ43の部分)の全体を液冷媒で満たすことが可能である。
【0038】
熱交換器接続用の配管51の他方端51bは、吸気口3a側に配置された熱交換器4aの上部タンク41に接続されている。また吸気口3a側に配置された熱交換器4aの下部タンク42には熱媒体排出用の配管10bが接続されている。
【0039】
この熱媒体排出用の配管10bは、U字管10cの部分を有している。つまり熱媒体排出用の配管10bは、下部タンク42から吸気口3a側に配置された熱交換器4aの上部タンク41側へ上方に延びて頂部10dに達した後に湾曲して下方に延びることで逆U字の形状となる部分10cを有している。
【0040】
この熱媒体排出用の配管10bの逆U字形状の頂部10dは、吸気口3a側に配置された熱交換器4aの上部タンク41の底部の高さ位置(破線A2−A2)以上の高さに位置していることが好ましい。これにより熱媒体が液冷媒の場合に、吸気口3a側に配置された熱交換器4aの熱交換部(フィン44が取り付けられたチューブ43の部分)の全体を液冷媒で満たすことが可能である。このU字管10cの頂部10dよりも下流側において下方に延びる箇所に排水受けロート52が配置されていてもよい。なお上部タンク41の底部の高さ位置(破線A2−A2)は、上部タンク41に複数のチューブ43が接続された箇所の位置である。
【0041】
また排気口3b側に配置された熱交換器4aの上部タンク41と、吸気口3a側に配置された熱交換器4aの上部タンク41との各々には、エアー抜き管57が接続されている。
【0042】
また各配管10a、10b、57には適宜、バルブ61〜64が設けられている。熱媒体供給用の配管10aには電動バルブ61が接続されている。この電動バルブ61は、弁体に開閉動作の駆動力を与えるモータ61aを有し、かつ送風機5と連動するように構成されている。また熱媒体供給用の配管10aには、電動バルブ61の下流側において流量調整バルブ62が接続されている。また熱媒体排出用の配管10bには、U字管10cの上流側にバルブ63が接続されている。またエアー抜き管57には、エアー抜き管57の開閉を制御することで各熱交換器4a内のエアーの排出を制御するためのバルブ64が接続されている。
【0043】
図1を参照して、第1ダクト3はドレン配管31を有していることが好ましい。このドレン配管31は、熱交換器4aの間をつなぐ熱交換器接続用の配管51や熱交換器4aのチューブ43、フィン44で生じた結露を排出するためのものである。
【0044】
本実施の形態において第2ダクト6は、熱交換装置4から排出された熱媒体に接するように配置されている。具体的には、第2ダクト6は、第2ダクト6の少なくとも一部が貯槽8内に位置するように配置されている。これにより第2ダクト6の少なくとも一部を、貯槽8内に貯めた熱媒体11内を通すことができ、かつその熱媒体11内に浸からせることが可能である。
【0045】
また第2ダクト6は、熱媒体排出用の配管10bの排出口の真下に位置するように配置されている。これにより、
図4に示すように熱媒体排出用の配管10bの排出口から排出された熱媒体を第2ダクト6の少なくとも一部に掛け流すことが可能となる。なお第2ダクト6に掛け流された後の熱媒体は、
図1に示すように貯槽8の内部に貯めることができる。
【0046】
熱交換装置4から排出された熱媒体を第2ダクト6に接触させる構成は上記に限定されるものではなく、たとえば
図5および
図6に示すような他の構成が用いられてもよい。
【0047】
図5を参照して、熱交換装置4から排出された熱媒体を通すための溝11a
1を有する溝部材11aが設けられ、その溝11a
1内を流れる熱媒体に第2ダクト6の少なくとも一部が浸かるように、溝部材11aの溝11a
1内に第2ダクト6の少なくとも一部が配置されていてもよい。
【0048】
図6を参照して、熱交換装置4内から熱媒体を排出するための配管11bと第2ダクト6とが2重管を構成していてもよい。2重管を構成する場合、熱媒体を排出するための配管11bが第2ダクト6の長さ方向の全体もしくは一部において外周を取り囲むように配置されていてもよく、また第2ダクト6の長さ方向の全体もしくは一部において内周側に配置されていてもよい。
【0049】
図7を参照して、この機能ブロック図に示すように第1ダクト3の内部経路3c内であって排気口3b付近には、室内2aへの送風温度を測定するための温度センサ21が設けられている。また室内2aには、室内2aの温度を測定するための温度センサ23が設けられている。また送風機5に駆動力を与えるための動力源(たとえばモータ)22が設けられている。これらの温度センサ21、23、動力源22およびポンプ7は制御部24に接続されており、制御部24によって管理・制御されている。
【0050】
次に、本実施の形態の空気調和システムの動作および制御方法について説明する。
図7を参照して、空気調和システム1の動作が開始すると、制御部24により送風機5を駆動させるための動力源22およびポンプ7が作動させられるとともに、このポンプ7の動作に連動して
図3に示す電動バルブ61が開状態となる。
【0051】
図1を参照して、送風機5の作動により、室内2aの空気が複数の吸気口3aから第1ダクト3の内部経路3c内に吸入される。また室外2bの空気が第2ダクト6の開口6aから第2ダクト6内に吸入される。室内2aからの空気と室外2bからの空気とは、熱交換装置4の上流側で互いに混ざり合う。この混ざり合った空気が熱交換装置4を通過する。
【0052】
なお空気の流れる方向に垂直な断面における径において、第2ダクト6の径は第1ダクト3の径よりも小さくなるように設計されている。これにより第2ダクト6の開口6aから吸入された室外2bの空気は、第1ダクト3の吸気口3aから室内2aに入りことはなく、送風機5の送風により熱交換装置4側へ送られる。
【0053】
一方、上記のポンプ7の作動により熱媒体供給源9から熱媒体供給用の配管10aを通じて熱媒体が熱交換装置4へ送られる。
【0054】
図3を参照して、熱媒体供給用の配管10aを通じて熱交換装置4に送られた熱媒体は、まず排気口3b側に配置された熱交換器4aの上部タンク41に導入される。熱媒体は上部タンク41から複数のチューブ43内を通って下部タンク42へ入る。この際、熱交換器接続用の配管51が上部タンク41の底部の高さ位置(破線A1−A1)以上にまで延びているため、下部タンク42およびチューブ43内に熱媒体が溜まる。そして熱媒体は複数のチューブ43内においてフィン44から吸熱または放熱することにより、第1ダクト3の内部経路3c内の空気と熱交換をする。
【0055】
排気口3b側に配置された熱交換器4aの下部タンク42から出た熱媒体は、熱交換器接続用の配管51を通じて、吸気口3a側に配置された熱交換器4aの上部タンク41に導入される。熱媒体は上部タンク41から複数のチューブ43内を通って下部タンク42へ入る。この際、熱媒体排出用の配管10bのU字管10cの頂部10dが上部タンク41の底部の高さ位置(破線A2−A2)以上の高さに位置しているため、下部タンク42およびチューブ43内に熱媒体が溜まる。そして熱媒体は複数のチューブ43内においてフィン44から吸熱または放熱することにより、第1ダクト3の内部経路3c内の空気と熱交換をする。
【0056】
図1を参照して、上記の熱交換装置4により熱交換されて冷却または加熱された空気は、送風機5により複数の排気口3bから室内2aに供給される。これにより室内2aの温度が調整される。
【0057】
吸気口3a側に配置された熱交換器4aの下部タンク42から出た熱媒体は熱媒体排出用の配管10bを通じて貯槽8内に排出される。この際、その配管10bから排出された熱媒体は第2ダクト6に掛け流された後、貯槽8内に貯蔵される。そして貯槽8内に貯蔵された熱媒体11によって第2ダクトの少なくとも一部が浸される。これにより熱交換装置4から排出された熱媒体の残存熱エネルギーを用いて第2ダクト6で導入される外気の温度を調整することができる。
【0058】
上記の空気調和システムの動作においては、送風温度、室温などが自動で検知されて、その検知した結果に基づいて熱交換装置4内に流す熱媒体の流量と送風量とが自動で制御されることが好ましい。
【0059】
図7を参照して、具体的には制御部24にて送風機5の動力源22を制御することにより送風機5による送風量が一定とされ、温度センサ23により測定された室内2aの温度に基づいて制御部24にてポンプ7の動作を制御することにより熱交換装置4内に流す熱媒体の流量が制御されてもよい。
【0060】
また制御部24にてポンプ7の動作を制御することにより熱交換装置4内に流す熱媒体の流量が一定とされ、温度センサ23により測定された室内2aの温度に基づいて制御部24にて送風機5の動力源22を制御することにより送風機5による送風量が制御されてもよい。
【0061】
また温度センサ23により測定された室内2aの温度に基づいて、制御部24にて、ポンプ7の動作を制御することにより熱交換装置4内に流す熱媒体の流量が制御されるとともに、送風機5の動力源22を制御することにより送風機5による送風量が制御されてもよい。
【0062】
なお上記の制御においては、温度センサ23により測定された室内2aの温度が用いられているが、その温度に代えて、温度センサ21により測定された空気の送風温度が用いられてもよく、また温度センサ21、23の双方の温度が用いられてもよい。
【0063】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
図2を参照して、熱媒体が液冷媒の場合、通常、ポンプ7の熱交換器4aへの送液動作は周期的に寸断されることにより脈動をなしている。このため仮に熱交換器4aの下部タンク42に接続された配管51が下部タンク42と同じ高さ位置または下部タンク42よりも低い高さ位置に延びている場合、上部タンク41から下部タンク42に達した熱媒体は下部タンク42やチューブ43内に溜まることなく熱交換器4aから配管51を通じて排出されていく。よって、熱媒体がチューブ内を通過する瞬間だけ熱交換が行われることになり、熱交換の効率が悪くなる。
【0064】
これに対して本実施の形態においては、
図3に示すように熱交換器接続用の配管51は、排気口3b側に配置された熱交換器4aの下部タンク42から排気口3b側に配置された熱交換器4aの上部タンク41側へ延びて、その上部タンク41の底部の高さ位置(破線A1−A1)以上の高さに位置する部分を有している。このため、ポンプ7による送液動作が脈動をなしている場合においても熱媒体は下部タンク42およびチューブ43内の全体に溜まることになる。これにより排気口3b側に配置された熱交換器4aの熱交換部(フィン44が取り付けられたチューブ43の部分)の全体を液冷媒で満たすことが可能である。このため、液冷媒を用いた熱交換の効率を向上させることができる。
【0065】
また熱媒体排出用の配管10bは、吸気口3a側に配置された熱交換器4aの下部タンク42から吸気口3a側に配置された熱交換器4aの上部タンク41側へ延びて、その上部タンク41の底部の高さ位置(破線A2−A2)以上の高さに位置する部分を有している。これにより吸気口3a側に配置された熱交換器4aの場合も上記と同様に、熱交換部(フィン44が取り付けられたチューブ43の部分)の全体を液冷媒で満たすことが可能であるため、液冷媒を用いた熱交換の効率を向上させることができる。
【0066】
また
図2に示す本実施の形態の熱交換器4aにおいては、大容量の熱媒体を流す空気調和システムに適している。以下、そのことを説明する。
【0067】
熱交換器の熱交換部分は通常、多数の細管(チューブ)で構成されている。その細管の中を熱媒体が流れる場合、熱媒体の流れ(流速)はどの細管においても一定で可能な限り同一であることが望ましい。細管内における熱媒体の流速が個々の細管ごとに異なり不均一になると、熱交換も不均一となり熱交換器の熱交換効率が著しく低下するからである。
【0068】
一方、たとえば熱媒体を熱交換器の下部から上部へ流した場合、熱媒体の流れは重力に逆らって流れることになり、細管内の抵抗だけでなく重力抵抗も加わるため、細管内における熱媒体の流速は個々の細管ごとにより不均一になりやすい。特に大容量の熱媒体が熱交換器内を流れる場合、細管の数も多くなり、また流量も大きいため、各細管内の熱媒体の流れが不均一な流れになりやすい。この点からも、重力抵抗などは排除することが望ましい。
【0069】
また1個の熱交換器において細管の延びる方向を左右に折り曲げたり、上下に折り返した場合は、なおさら個々の細管内における熱媒体の流速が不均一となりやすい。
【0070】
これに対して本実施の形態の熱交換器4aにおいては、
図2に示すようにポンプ7が上部タンク41側に接続され、かつチューブ43が上部タンク41側から下部タンク42側へ熱媒体を流すように構成されている。このように鉛直方向上側から下側に向けて熱媒体を流すことができるため、重力抵抗を低減することができ、チューブ43内における熱媒体の流速を均一化することが容易である。
【0071】
また本実施の形態の熱交換器4aにおいては、
図2に示すようにチューブ43は上部タンク41から下部タンク42に向かって直線状に一方向に延びている。このため、細管内における抵抗も極力少なくすることができ、左右に折り曲げたり、上下に折り返したりした場合よりも個々のチューブ43内における熱媒体の流速を均一化することが容易である。
【0072】
このように本実施の形態における熱交換器4aでは個々のチューブ43内における熱媒体の流速を均一化することが容易であるため、大容量の熱媒体を流した場合でも熱交換を均一化することが容易で熱交換効率も向上させることができる。
【0073】
また
図3に示す吸気口3a側の熱交換器4aも、排気口3b側の熱交換器4aと同様、大容量の熱媒体を流す空気調和システムに適している。
【0074】
また本実施の形態によれば、熱冷媒としてたとえば天然の地下水や、工場設備の排熱により冷却・加熱された熱媒体が用いられ、それらの熱媒体が予め有する冷熱もしくは温熱エネルギーが利用されるため、圧縮機を用いて熱媒体を圧縮する必要がない。よって、圧縮機が不要になるとともに、圧縮機による電気消費量を節約することができる。よって簡易な構成で、かつ面積の大きなスペースの空気調和を低消費電力で行なうことが可能となる。
【0075】
また
図1に示すように第2ダクト6は室外2bに通じる開口6aを有しているため、室2に設置された窓などの外気取り入れ部を開放することなく、第2ダクト6からフレッシュな外気を室内2aに導入することが可能となる。
【0076】
また第2ダクト6は熱交換装置4の配置位置よりも吸気口3a側の位置において第1ダクト3に接続されている。このため第2ダクト6から導入された外気は熱交換装置4により熱交換された後に室内2aに導入される。よって、外気が室内2aに直接導入される場合よりも、空調効果を高めることができる。
【0077】
つまり空調時に窓などの外気取り入れ部を開放すると空調の効果が低下する。しかし本実施の形態では空調時に窓などの外気取り入れ部を開放することなく第2ダクト6からフレッシュな外気を室内2aに導入することが可能である。さらにそのフレッシュな外気を熱交換装置4で熱交換した後に室内2aに供給できるため、空調の効果を高く維持することができる。
【0078】
また第2ダクト6は、熱交換装置4から排出された熱媒体に接するように構成されている。これにより熱交換装置4から排出された熱媒体に残っている残存熱エネルギを用いて第2ダクト6で導入される外気の温度を調整することができる。このように熱媒体の残存熱エネルギを有効活用することにより、簡易な構成で、かつ低消費電力で室内の空気を調和することが可能となる。
【0079】
また貯槽8内に貯められた熱媒体11に第2ダクト6の少なくとも一部が浸かるように、貯槽8内に第2ダクト6の少なくとも一部が配置されている。このため、貯槽8内に熱媒体を貯めることができるとともに、貯槽8内で熱媒体が第2ダクト6に接する状態にすることができる。これにより、熱交換装置4から排出された熱媒体に残っている残存熱エネルギを用いて第2ダクト6で導入される外気の温度を調整することができ、熱媒体の残存熱エネルギを有効活用することができる。
【0080】
図3に示すように、複数の熱交換器4aは、排気口3b側に配置された熱交換器4a側から吸気口3a側に配置された熱交換器4a側へ熱媒体を順次流すように構成されている。これにより室内2a側から離れた吸気口3a側の熱交換器4aよりも室内2a側に近い排気口3b側の熱交換器4aに先に熱媒体が流されるため、熱交換により得られた熱をより効果的に室内2aに送ることが可能となる。
【0081】
図1に示すように、第1ダクト3は、複数の熱交換器4aの間をつなぐ熱交換器接続用の配管51や熱交換器4aのチューブ43、フィン44で生じた結露を排出するためのドレン配管31を有している。これにより特に室内2aへの冷風送風時の湿度を低下させることができ、冷房の快適性を向上させることができる。
【0082】
図1に示すように上記の空気調和システムにおいて、熱媒体は、天然の地下水と工場設備の排熱により冷却・加熱された熱媒体との少なくともいずれかを含む。これにより、電気消費量を節約することができる。
【0083】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。