(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る傾斜磁場電源及び磁気共鳴イメージング装置について添付図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る傾斜磁場電源を備えた磁気共鳴イメージング装置の構成図である。
【0012】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内側に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23及びRFコイル24を備えている。
【0013】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31及びコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35及び記憶装置36が備えられる。
【0014】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0015】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0016】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内側において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24にはガントリに内蔵されたRF信号の送受信用の全身用コイル(WBC: whole body coil)や寝台37や被検体P近傍に設けられるRF信号の受信用の局所コイルなどがある。
【0017】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0018】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0019】
RFコイル24は、送信器29及び受信器30の少なくとも一方と接続される。送信用のRFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能を有し、受信用のRFコイル24は、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0020】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gz及びRF信号を発生させる機能を有する。
【0021】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波及びA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0022】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0023】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムの少なくとも一部に代えて、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
【0024】
具体的には、コンピュータ32は、入力装置33からの指示情報に基づいて設定されたパルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ31に出力する機能、シーケンスコントローラ31から取得したMR信号に対する画像再構成処理を含む画像処理によってMR画像データを生成する機能を備えている。
【0025】
次に傾斜磁場電源27の詳細構成について説明する。
【0026】
図2は
図1に示す傾斜磁場電源27の詳細構成図である。
【0027】
傾斜磁場電源27は、筐体40の内部に、高圧発生回路41、出力増幅部42、空冷用ファン43、熱交換器44及び制御部45を設けて構成される。高圧発生回路41は、AC/DC (Alternating Current/Direct Current)コンバータ41Aの出力側にDC/DCコンバータ41Bを接続して構成される。また、出力増幅部42は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zをそれぞれ構成するX軸用増幅器42X、Y軸用増幅器42Y及びZ軸用増幅器42Zで構成される。
【0028】
高圧発生回路41を構成するAC/DCコンバータ41Aの入力側は、商用交流電源46と接続される。一方、DC/DCコンバータ41Bの出力側は、X軸用増幅器42X、Y軸用増幅器42Y及びZ軸用増幅器42Zの入力側と接続される。そして、X軸用増幅器42X、Y軸用増幅器42Y及びZ軸用増幅器42Zの出力側が、それぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zと接続される。
【0029】
そして、高圧発生回路41は、商用交流電源46から供給されるAC電流を所定の電圧のDC電流に変換して出力増幅部42に出力するように構成される。一方、出力増幅部42は、高圧発生回路41から供給されるDC電流を増幅して傾斜磁場コイル23に出力するように構成されている。
【0030】
空冷用ファン43は、筐体40の内部において空気の流れを形成することによって筐体40内の雰囲気を空冷するためのファンである。
【0031】
熱交換器44は、出力増幅部42等が設けられる筐体40内における空気と冷却水との間において熱交換を行う装置である。換言すれば、熱交換器44は、筐体40内における雰囲気の熱を冷却水に伝えることによって筐体40内の雰囲気を水冷するための冷却装置である。従って、筐体40は、内部と外部との熱交換が抑制されるように密閉構造又は準密閉構造とすることが望ましい。
【0032】
また、筐体40には、X軸用増幅器42X、Y軸用増幅器42Y、Z軸用増幅器42Z、AC/DCコンバータ41A、DC/DCコンバータ41B及び熱交換器44を水冷するための冷却系47が設けられる。冷却系47は、冷却水供給系51、冷却水の循環路を形成する配管48、第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50を設けて構成される。
【0033】
配管48は、傾斜磁場電源27の外部に設けられる冷却水供給系51と接続され、かつ各水冷対象を経由する位置に敷設される。従って、配管48は、冷却水供給系51から各水冷対象に向かって分岐する配管48となる。そして、配管48を通じて熱交換器44及び出力増幅部42を含む冷却対象に冷却水を供給することができる。
【0034】
図示された例では、一端が冷却水供給系51に接続された配管48の他端が分岐し、一方が熱交換器44に導かれている。また、分岐した他方が更に5つの配管48に分岐して出力増幅部42の各X軸用増幅器42X、Y軸用増幅器42Y及びZ軸用増幅器42Z並びに高圧発生回路41のAC/DCコンバータ41A及びDC/DCコンバータ41Bに導かれている。
【0035】
このように、冷却系47は、冷却水供給系51から供給された冷却水が配管48を通って筐体40内の水冷対象となる各機器に導かれ、各機器において熱を受け取った冷却水が再び冷却水供給系51に回収されるように構成されている。尚、冷却水の温度は、10℃から20℃とすることが実用的である。
【0036】
冷却系47の第1の電磁弁49は熱交換器44の入口に設けられる。一方、第2の電磁弁50は、熱交換器44以外の水冷対象に向かう共通の配管48上に設けられる。このため、第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50の開閉によって熱交換器44に供給される冷却水の供給タイミングと、他の水冷対象に供給される冷却水の供給タイミングとを互いに独立して制御することができる。
【0037】
制御部45は、シーケンスコントローラ31による制御下において、第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50を含む筐体40内の電子機器を制御する装置である。特に、制御部45は、熱交換器44以外の少なくとも出力増幅部42を含む冷却対象における結露の発生を防止するための条件で、配管48に設けられた第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50を制御する機能を有している。
【0038】
より具体的には、制御部45は、熱交換器44以外の水冷対象に向かう配管48上に結露が生じない条件となるように、第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50の開閉制御によって熱交換器44に供給される冷却水の供給タイミングと、他の水冷対象に供給される冷却水の供給タイミングとを制御するように構成されている。熱交換器44以外の水冷対象における結露を防止するための第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50の制御条件は、出力増幅部42の起動時及び停止時についてそれぞれ決定することができる。
【0039】
例えば、出力増幅部42の起動時であれば、熱交換器44において結露が発生する条件で第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50を制御することができる。これにより、熱交換器44以外の水冷対象では、結露を防止することができる。
【0040】
熱交換器44において結露が発生する条件としては、少なくとも出力増幅部42の起動前において、熱交換器44に冷却水を供給するための配管48に設けられる第1の電磁弁49を一定時間開いた後に、熱交換器44以外の冷却対象に冷却水を供給するための配管48に設けられる第2の電磁弁50を開く弁の制御方法が挙げられる。この場合、出力増幅部42の起動を指示するシーケンスコントローラ31からの制御信号又は手動操作によって入力される指示信号等の出力増幅部42の起動直前に制御部45に入力される信号をトリガとして第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50の開閉制御を行うことができる。従って、第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50を開く制御は、出力増幅部42の起動指示信号又は水冷開始指示信号等のトリガが制御部45に入力されてから出力増幅部42が実際に起動するまでの間に実行されることとなる。
【0041】
一方、出力増幅部42の停止時には、出力増幅部42が停止する前後に亘って冷却水が出力増幅部42等の水冷対象に供給されないように第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50を制御することができる。この場合、出力増幅部42の停止を指示するシーケンスコントローラ31からの制御信号又は手動操作によって入力される指示信号等の出力増幅部42の停止直前に制御部45に入力される信号をトリガとして第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50の開閉制御を行うことができる。従って、第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50を閉じる制御は、出力増幅部42の停止指示信号又は水冷開始指示信号等のトリガが制御部45に入力されてから出力増幅部42が実際に停止するまでの間に実行されることとなる。
【0042】
次に
図2に示す傾斜磁場電源27を備えた磁気共鳴イメージング装置20の動作及び作用について説明する。
【0043】
図3は、
図2に示す傾斜磁場電源27の電源をON状態に切換えた後、磁気共鳴イメージング装置20によりMRイメージングを行う際の流れを示すフローチャートである。
【0044】
まず予め磁気共鳴イメージング装置20の基幹システム及び傾斜磁場電源27内の各機器の電源がOFF状態とされる。このため、傾斜磁場電源27がOFF状態となっている間に外部から筐体40内に多湿の空気が流入し得る。その場合、傾斜磁場電源27を起動した際に冷却系47の配管48に結露が発生する可能性がある。仮に高圧発生回路41や出力増幅部42の近傍に結露が生じると、傾斜磁場電源27の故障に繋がる。そこで、傾斜磁場電源27の筐体40内における各電磁弁が閉じられる。
【0045】
そして、ステップS1において、磁気共鳴イメージング装置20の基幹システム及び傾斜磁場電源27内の制御部45が起動される。すなわち、コンピュータ32等の基幹システムが起動し、基幹システムからの制御信号によって傾斜磁場電源27の制御部45が起動する。
【0046】
次に、ステップS2において、傾斜磁場電源27の制御部45から熱交換器44の入口に設けられた第1の電磁弁49に制御信号が出力される。これにより、第1の電磁弁49が開かれる。
【0047】
次に、ステップS3において、制御部45から空冷用ファン43に制御信号が出力される。これにより、空冷用ファン43が駆動する。
【0048】
次に、ステップS4において、冷却水供給系51から配管48を通じて筐体40内に冷却水が供給される。但し、熱交換器44の入口における第1の電磁弁49が開かれているのに対して他の水冷対象に向かう配管48上の第2の電磁弁50は閉じられている。従って、冷却水は熱交換器44のみに供給され、熱交換器44のみが水冷される。
【0049】
このため、仮に筐体40内の湿度が高い場合、筐体40内における雰囲気の温度と冷却水の温度との差によって熱交換器44周辺において結露が生じる。但し、高圧発生回路41や出力増幅部42等の他の水冷対象となる機器には冷却水が供給されないため、熱交換器44の周辺を除き結露は発生しない。また、熱交換器44における空気と冷却水との熱交換によって筐体40内における空気の温度が低下する。
【0050】
次に、ステップS5において、一定時間経過後に、制御部45から第2の電磁弁50に制御信号が出力される。これにより、高圧発生回路41や出力増幅部42等の熱交換器44以外の水冷対象への入口における第2の電磁弁50が開かれる。この結果、熱交換器44、高圧発生回路41及び出力増幅部42を含む全ての水冷対象が、冷却水によって冷却される。
【0051】
第1の電磁弁49を開いてから第2の電磁弁50が開かれるまでの一定時間は、少なくとも筐体40内雰囲気中における水分を熱交換器44周辺において結露として十分に回収するために必要な時間に決定される。この時間は、シミュレーション等によって理論的に決定することもできるし、試験によって経験的に決定することもできる。
【0052】
従って、筐体40内における湿度が低下し、高圧発生回路41及び出力増幅部42を冷却水で水冷したとしても、高圧発生回路41及び出力増幅部42の周辺にはもはや結露が生じない。
【0053】
次に、ステップS6において、制御部45からの制御信号によって高圧発生回路41及び出力増幅部42が起動する。これにより、磁気共鳴イメージング装置20に備えられる静磁場用磁石21、傾斜磁場コイル23、RF信号の送信用のRFコイル24であるWBC、MR信号の受信用のRFコイル24等で構成されるMRイメージングを行うための撮影システムにより、傾斜磁場電源27を用いた被検体のMRイメージングを行うことが可能なスタンバイ状態となる。
【0054】
次に、ステップS7において、必要な回数だけイメージングスキャンが実行される。すなわち、撮影システムにより、傾斜磁場電源27を用いた被検体のMRイメージングが行われる。
【0055】
具体的には、寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0056】
そして、入力装置33からコンピュータ32にスキャン開始指示が与えられると、パルスシーケンスを含む撮像条件がコンピュータ32からシーケンスコントローラ31に出力される。そうすると、シーケンスコントローラ31は、撮像条件に従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
【0057】
このため、被検体Pの内部における磁気共鳴により生じたMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、MR信号に対する所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをコンピュータ32に出力する。そして、コンピュータ32における画像再構成処理によってMR画像データが生成される。
【0058】
全てのイメージングが完了すると、ステップS8において、傾斜磁場電源27及び磁気共鳴イメージング装置20の基幹システムがOFF状態に切換えられる。このとき、傾斜磁場電源27の制御部45は、傾斜磁場電源27に備えられる水冷対象の停止と同時又は停止の直前に第1の電磁弁49及び第2の電磁弁50を閉じる制御を行う。これにより、傾斜磁場電源27の筐体40内における水冷対象に向かう冷却水の供給が断たれる。この結果、傾斜磁場電源27内の高圧発生回路41及び出力増幅部42等の水冷対象を経由する配管48の温度の低下に伴う結露の発生を防止することができる。
【0059】
つまり以上のような傾斜磁場電源27は、筐体40内の熱交換器44及び出力増幅部42を含む冷却対象に冷却水を供給するための配管48に電磁弁を設け、傾斜磁場電源27の起動時及び停止時において、熱交換器44以外の出力増幅部42を含む冷却対象における結露の発生を防止するための条件で電磁弁を制御するようにしたものである。具体的には、傾斜磁場電源27は、熱交換器44の周辺において積極的に結露を発生させることにより、熱交換器44以外の水冷対象となる電子機器では結露が生じないようにしたものである。
【0060】
このため、傾斜磁場電源27によれば、高温多湿環境下において内部の電子機器を水冷する場合であっても、筐体40内の高圧発生回路41や出力増幅部42に備えられるパワー素子における結露を防止することができる。その結果、結露に依る傾斜磁場電源27の故障を防止することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
図4は本発明の第2の実施形態に係る傾斜磁場電源の構成図である。
【0062】
図4に示された第2の実施形態における傾斜磁場電源27Aでは、熱交換器44周辺において結露により生じた水を回収するための容器60を筐体40内に設けた点が
図1に示す第1の実施形態における傾斜磁場電源27と相違する。他の構成および作用については
図1に示す傾斜磁場電源27と実質的に異ならないため傾斜磁場電源27Aのみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0063】
上述したように、傾斜磁場電源27Aの筐体40内には、熱交換器44における結露により生じた水を回収するための容器60が設置される。図示された例では、特に熱交換器44の底部付近において結露で発生した水を受けるための容器60が熱交換器44の下に配置されている。容器60は、例えば、板金加工によって製造することができる。更に、容器60の内部には吸水材61が設けられる。
【0064】
このため、第2の実施形態における傾斜磁場電源27Aでは、熱交換器44において発生する結露により生じた水が筐体40内の他の電子機器に流れ込むことを防止することができる。また、吸水材61を定期的に交換することによって結露により生じた水を傾斜磁場電源27Aから回収することができる。
【0065】
尚、容器60及び吸水材61の一方を省略してもよい。また、容器60や吸水材61に限らず配管48等の様々な水の回収手段を傾斜磁場電源27Aに設けることができる。
【0066】
(第3の実施形態)
図5は本発明の第3の実施形態に係る傾斜磁場電源の構成図である。
【0067】
図5に示された第3の実施形態における傾斜磁場電源27Bでは、筐体40内に除湿機70を設けた点及び筐体40内における電子機器の配置が
図1に示す第1の実施形態における傾斜磁場電源27と相違する。他の構成および作用については
図1に示す傾斜磁場電源27と実質的に異ならないため傾斜磁場電源27Bのみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0068】
傾斜磁場電源27Bの筐体40内には、除湿機70が設けられる。また、制御部45は除湿機70の動作を制御できるように構成されている。更に、傾斜磁場電源27Bでは、熱交換器44が筐体40内の底付近に配置される一方、高圧発生回路41及び出力増幅部42を含む電子機器が熱交換器44よりも上方に配置されている。
【0069】
次に
図5に示す傾斜磁場電源27Bを備えた磁気共鳴イメージング装置の動作及び作用について説明する。
【0070】
図6は、
図5に示す傾斜磁場電源27Bの電源をON状態に切換えた後、磁気共鳴イメージング装置によりMRイメージングを行う際の流れを示すフローチャートである。尚、
図3に示すフローチャートのステップと同様なステップには同符号を付して説明を省略する。
【0071】
傾斜磁場電源27Bを備えた磁気共鳴イメージング装置では、基幹システム及び傾斜磁場電源27Bの制御部45の起動後のステップS10において、制御部45による制御により除湿機70及び空冷用ファン43が駆動する。これにより筐体40内の空気が一定期間除湿される。
【0072】
そして、一定期間が経過するとステップS2において熱交換器44の入口に設けられた第1の電磁弁49が開かれる。その後、
図3に示す流れと同様な流れで機器の動作が実行される。
【0073】
つまり、第3の実施形態における傾斜磁場電源27Bは、筐体40内における空気の除湿を行うための除湿機70を設け、傾斜磁場電源27Bの起動時において空冷用ファン43とともに除湿機70を駆動させるようにしたものである。このため、傾斜磁場電源27Bによれば、筐体40内における除湿効率を向上させることができる。
【0074】
また、傾斜磁場電源27Bでは、熱交換器44が、出力増幅部42及び高圧発生回路41よりも下方に配置されている。このため、熱交換器44における結露により生じた水が流れ落ちて高圧発生回路41及び出力増幅部42等の電子機器に浸入することを防止することができる。
【0075】
(第4の実施形態)
図7は本発明の第4の実施形態に係る傾斜磁場電源の構成図である。
【0076】
図7に示された第4の実施形態における傾斜磁場電源27Cでは、筐体40内に2系統の冷却水循環路を設けた点が
図1に示す第1の実施形態における傾斜磁場電源27と相違する。他の構成および作用については
図1に示す傾斜磁場電源27と実質的に異ならないため傾斜磁場電源27Cのみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0077】
傾斜磁場電源27Cの筐体40内には、冷却水を循環させるための第1の配管系統80及び第2の配管系統81が設けられる。第1の配管系統80は、熱交換器44のみに第1の冷却水を供給するための配管80Aに第3の電磁弁80Bを設けて構成される。一方、第2の配管系統81は、熱交換器44、出力増幅部42及び高圧発生回路41を含む冷却対象に第1の冷却水よりも温度が高い第2の冷却水を供給するための配管81Aに第4の電磁弁81Bを設けて構成される。例えば、第1の冷却水の温度は、10℃程度とし、第2の冷却水の温度は20℃程度とすることができる。
【0078】
更に3方向電磁弁82が第1の配管系統80及び第2の配管系統81に跨って設けられる。3方向電磁弁82は、第1の配管系統80の上流側と下流側との間における開閉並びに第1の配管系統80と第2の配管系統81との間における開閉を行うことができるように配置される。
【0079】
一方、制御部45は、第1の実施形態と同様に、熱交換器44以外の少なくとも出力増幅部42を含む冷却対象における結露の発生を防止するための条件で、第1の配管系統80及び第2の配管系統81に設けられた第3の電磁弁80B、第4の電磁弁81B及び3方向電磁弁82を制御する機能を有している。
【0080】
例えば、出力増幅部42の起動時であれば、熱交換器44において結露が発生する条件で第3の電磁弁80B、第4の電磁弁81B及び3方向電磁弁82を制御することができる。これにより、熱交換器44以外の水冷対象では、結露を防止することができる。
【0081】
熱交換器44において結露が発生する条件としては、少なくとも出力増幅部42の起動前において、第1の配管系統80に設けられる第3の電磁弁80Bを一定時間開くことによって水温の低い第1の冷却水を熱交換器44に供給した後に、第2の配管系統81に設けられる第4の電磁弁81B及び3方向電磁弁82を開くことによって水温の高い第2の冷却水を熱交換器44及び出力増幅部42を含む冷却対象に供給する弁の制御方法が挙げられる。
【0082】
次に
図7に示す傾斜磁場電源27Cを備えた磁気共鳴イメージング装置の動作及び作用について説明する。
【0083】
図8は、
図7に示す傾斜磁場電源27Cの電源をON状態に切換えた後、磁気共鳴イメージング装置によりMRイメージングを行う際の流れを示すフローチャートである。尚、
図3又は
図6に示すフローチャートのステップと同様なステップには同符号を付して説明を省略する。
【0084】
傾斜磁場電源27Cを備えた磁気共鳴イメージング装置では、基幹システム及び傾斜磁場電源27Cの制御部45の起動後のステップS20において、熱交換器44側の第1の配管系統80に設けられた第3の電磁弁80Bが制御部45の制御により開かれる。次に、ステップS3において、空冷用ファン43が駆動する。
【0085】
次に、ステップS21において、冷却水供給系51から第1の配管系統80に水温の低い第1の冷却水が供給される。但し、熱交換器44の入口における第3の電磁弁80Bが開かれているのに対して3方向電磁弁82は閉じられている。従って、水温の低い第1の冷却水は熱交換器44のみに供給され、熱交換器44のみが水冷される。
【0086】
このため、仮に筐体40内の湿度が高い場合、筐体40内における雰囲気の温度と第1の冷却水の温度との差によって熱交換器44周辺において結露が生じる。但し、高圧発生回路41や出力増幅部42等の他の水冷対象となる機器には第1の冷却水が供給されないため、熱交換器44の周辺を除き結露は発生しない。また、熱交換器44における空気と第1の冷却水との熱交換によって筐体40内における空気の温度が低下する。
【0087】
次に、ステップS22において、一定時間経過後に、熱交換器44、出力増幅部42及び高圧発生回路41を含む全ての冷却対象用の第2の配管系統81に設けられた第4の電磁弁81Bが制御部45の制御により開かれる。次に、ステップS23において、熱交換器44側の第1の配管系統80に設けられた第3の電磁弁80Bが制御部45の制御により閉じられる。次に、ステップS24において、3方向電磁弁82が制御部45の制御により開かれる。
【0088】
次に、ステップS25において、冷却水供給系51から第2の配管系統81に水温の高い第2の冷却水が供給される。このとき第2の配管系統81における第3の電磁弁80Bが閉じられているのに対して第2の配管系統81の第4の電磁弁81B及び3方向電磁弁82が開かれている。従って、水温の高い第2の冷却水が、熱交換器44、出力増幅部42及び高圧発生回路41を含む冷却対象に供給される。これにより、全ての水冷対象が水冷される。
【0089】
このとき筐体40内の空気に含まれる水分は、既に第1の冷却水との熱交換の際に結露として熱交換器44周辺において回収されている。従って、筐体40内における湿度は低下しており、高圧発生回路41及び出力増幅部42を第2の冷却水で水冷したとしても、高圧発生回路41及び出力増幅部42の周辺にはもはや結露が生じない。
【0090】
次に、ステップS6において、制御部45からの制御信号によって高圧発生回路41及び出力増幅部42が起動する。これにより、ステップS7においてイメージングを繰返すことができる。そして全てのイメージングが終了すると、ステップS26において、第4の電磁弁81B及び3方向電磁弁82が閉じられた後、傾斜磁場電源27及び磁気共鳴イメージング装置20の基幹システムがOFF状態に切換えられる。
【0091】
以上のような第4の実施形態における傾斜磁場電源27Cは、筐体40内に2系統の冷却水の循環系を設け、起動時において室温に比べて十分に低い温度の第1の冷却水で熱交換器44を一定時間水冷した後に、出力増幅部42等の電子機器を第1の冷却水よりも温度が高い第2の冷却水で水冷するようにしたものである。
【0092】
このため、第4の実施形態では、第1の実施形態に比べて、熱交換器44周辺における結露の発生量を増やすことができる。この結果、熱交換器44周辺において筐体40内における水分を一層多く抽出し、筐体40内の湿度を下げることができる。そして、出力増幅部42等の電子機器周辺における結露の発生をより確実に防止することができる。
【0093】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【0094】
例えば、各実施形態では、各傾斜磁場電源27、27A、27B、27Cの制御部45が空冷用ファン43の駆動制御及び各電磁弁49、50、80B、81B、82の開閉制御を行う例を示したが、磁気共鳴イメージング装置20に備えられるコンピュータ32等の各傾斜磁場電源27、27A、27B、27Cの外部に備えられる基幹システムによって制御を行うようにしてもよい。その場合には、各傾斜磁場電源27、27A、27B、27Cの筐体40内の配管48、80A、81Aに、熱交換器44以外の少なくとも出力増幅部42を含む冷却対象における結露の発生を防止するための条件で外部から開閉制御を行うことが可能な電磁弁49、50、80B、81B、82が設けられることとなる。また、その場合には、制御部45を高圧発生回路41及び出力増幅部42の起動直前に起動するようにしてもよい。
【0095】
また、電磁弁以外の空気圧弁や油圧弁等の弁を用いたり、冷却水以外の冷却媒体を用いることも可能である。冷却媒体の経路を制御する弁は、傾斜磁場電源27、27A、27B、27Cの筐体40の外部に設けるようにしてもよい。或いは、冷却水供給系51に備えられる開閉弁の制御によって冷却媒体の供給先を切換えるようにしてもよい。その場合には、傾斜磁場電源の筐体40内おける弁は必須の構成要素ではなくなる。そして、熱交換器44のみに第1の冷却媒体を供給するための第1の配管系統80と、出力増幅部42を含む冷却対象に第2の冷却媒体を供給するための第2の配管系統81とが、傾斜磁場電源の筐体40内に設けられることとなる。
【0096】
上記の第2の配管系統81は、冷却媒体の供給タイミングに応じて熱交換器44を経由するようにしても良いし、熱交換器44を経由しない配置としてもよい。すなわち、第2の配管系統81が熱交換器44を経由するのであれば、第2の冷却媒体の供給時において第1の配管系統80を用いた第1の冷却媒体の供給を停止することができる。一方、第2の配管系統81が熱交換器44を経由しないのであれば、第1の配管系統80を用いた第1の冷却媒体の供給を継続する制御を行うようにすればよい。
【0097】
また、第1の冷却媒体の温度を第2の冷却媒体の温度とを同等としてもよいが、第1の冷却媒体の温度を第2の冷却媒体の温度よりも低くすれば、第4の実施形態と同様な効果を得ることができる。すなわち、熱交換器44周辺における結露の発生量を増やすことができる。
【0098】
以上のような各実施形態における構成要素や特徴は、互いに組合わせることができる。例えば、除湿機70を筐体40内に設ける特徴、水分を回収するための容器60や吸水材61を筐体40内に設ける特徴、熱交換器44を電子機器よりも下方に設ける特徴を、当該実施形態以外の実施形態に適用することができる。