(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リバースドリブンギヤ及びリバースドライブギヤの両方と同時に噛合うリバースアイドルギヤによって、該リバースドライブギヤからリバースドリブンギヤへの後進動力の伝動を行う走行変速装置であって、
リバースアイドルギヤを回転可能且つ軸方向にスライド可能に支持するリバースシャフトと、
リバースアイドルギヤを、リバースドライブ及びリバースドリブンギヤの何れとも噛合わない離脱位置と、リバースドライブギヤからリバースドリブンギヤに後進動力を伝動可能な程度の噛合い量で両ギヤと噛合うリバース位置との間で、リバースシャフトの軸方向にスライドさせるシフト部材と、
シフト部材と機械的に連係されて前記リバースアイドルギヤをスライド操作する手動操作具と、
リバース位置よりも離脱位置側に位置し且つリバースドライブギヤ及びリバースドリブンギヤの両方と噛合い始めるリバースアイドルギヤのスライド位置である両側噛合位置において、該リバースアイドルギヤをリバース位置側に弾性的に付勢する弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、両側噛合位置よりも離脱位置寄りのスライド位置と、両側噛合位置よりもリバース位置寄りのスライド位置との間で、前記リバースアイドルギヤを、リバース位置側に弾性的に付勢するように構成され、
前記弾性部材は、離脱位置と両側噛合位置との間に設定されたリバースアイドルギヤのスライド位置である切換位置での支点越え作動によって該リバースアイドルギヤへの付勢方向が切換えられるように構成され、
該弾性部材によって、切換位置と両側噛合位置との間にスライドされたリバースアイドルギヤを、リバース位置側に付勢する
ことを特徴とする走行変速装置。
リバースドリブンギヤ又はリバースドライブギヤの何れか一方のみと噛合い始めるリバースアイドルギヤのスライド位置である一方側噛合位置を、離脱位置と両側噛合位置の間に設定し、
上記切換位置を、一方側噛合位置と離脱位置との間に設定した
請求項1または2のうちのいずれかに記載の走行変速装置。
リバースドリブンギヤ又はリバースドライブギヤの何れか一方のみと噛合い始めるリバースアイドルギヤのスライド位置である一方側噛合位置を、離脱位置と両側噛合位置の間に設定し、
上記切換位置を、一方側噛合位置と両側噛合位置との間に設定した
請求項1または2のうちのいずれかに記載の走行変速装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明を適用したトランスミッションの構成を示す断面図である。トランスミッション(走行伝動装置)1は、ミッションケース(変速機ケース)1aと、内燃機関であるエンジン(図示しない)の動力が主クラッチ(図示しない)を介して断続伝動され且つミッションケース1a内に回転自在に軸支された入力軸(伝動軸)2と、入力軸2と平行に2列で並べられ且つミッションケース1a内に回転自在に軸支されたカウンタ軸(伝動軸)3と、該入力軸2と同軸軸心となってミッションケース1a内の動力をミッションケース1a外に出力するように該ミッションケース1a内に回転自在に軸支された出力軸(伝動軸)4と、ミッションケース1a内に配設されて入力軸2の動力を変速して出力軸4に伝動する変速機構6とを備えている。
【0019】
上記入力軸2の一端側は、ミッションケース1a外のエンジン側に突出し、他端寄り部分はミッションケース1a内に位置した筒状部2aになる。この筒状部2aの開放された端部からは、出力軸4の一端部が挿入されている。
【0020】
上記カウンタ軸3の筒状部2aと隣接する側の端部には、入力軸2の筒状部2aの外周側に一体的に形成され且つ該入力軸2と一体回転する入力軸側伝動ギヤ7と常時噛合うカウンタ軸側伝動ギヤ8が、該カウンタ軸8と同調回転(具体的には、一体回転可能)するように設けられている。
【0021】
上記出力軸4の一端は、上記した通り、入力軸2の筒状部2aにフリーな状態で挿入される一方で、他端部は、ミッションケース1a外に突出し、ミッションケース1a内の動力を外部に出力させる。出力軸4からミッションケース1a外に出力された動力は、車両の前輪及び後輪の一方又は両方に伝動され、車両を走行駆動させる。
【0022】
上記変速機構6は、カウンタ軸3に同調回転(具体的には一体回転)するように設けられた第1入力ギヤ9A、第2入力ギヤ9B及び第3入力ギヤ9Cと、カウンタ軸3のカウンタ軸側伝動ギヤ8と反対側の端部に相対回転可能(具体的には遊転自在)に支持された第5入力ギヤ9Eと、出力軸4に相対回転可能(具体的には遊転自在)に支持され且つ上記第1入力ギヤ9Aと常時噛合う第1出力ギヤ11Aと、出力軸4に相対回転可能(具体的には遊転自在)に支持され且つ上記第2入力ギヤ9Bと常時噛合う第2出力ギヤ11Bと、出力軸4に相対回転可能(具体的には遊転自在)に支持され且つ上記第3入力ギヤ9Cと常時噛合う第3出力ギヤ11Cと、出力軸4に同調回転(具体的には一体回転)するように支持され且つ上記第5入力ギヤ9Eと常時噛合う第5出力ギヤ11Eと、後進走行用の動力(後進動力)を伝動するリバースシフト装置12とを備えている。
【0023】
第1〜第3入力ギヤ9A,9B,9Cは、カウンタ側軸伝動軸8の反対側から該カウンタ軸側伝動軸8に向かって、この順序で配置され、この順序で次第に径が大きく且つ歯数も多くなるように設定されている。一方、これに対応して、第1〜第3出力ギヤ11A,11B,11Cは、筒状部2a側に向かって、この順序で配置され、この順序で次第に径が小さく且つ歯数も少なくなるように設定されている。
【0024】
また、第5入力ギヤ9Eは、第3入力ギヤ9Cよりもさらに大径で歯数も多く設定され、これに対応して、第5出力ギヤ11Eは、第3出力ギヤ11Cよりもさらに小径で歯数も少なく設定される。そして、入力軸2→カウンタ軸3→第5入力ギヤ9E→第5出力ギヤ11E→出力軸4の動力伝動では、入力軸2よりも高速で出力軸4が回転駆動されることになる。
【0025】
さらに、出力軸4上における第1出力ギヤ11Aと第2出力ギヤ11Bとの間には、同期噛合式のクラッチである低速側スリーブ13が設けられ、出力軸4上における第3出力ギヤ11Cと入力軸側伝動ギヤ7との間には、同期噛合式のクラッチである中速側スリーブ14が設けられ、カウンタ軸側伝動ギヤ8側と反対側の端部に同調回転(具体的には、一体回転)するように設けられた回転部材16と、第5入力ギヤ9Eとの間におけるカウンタ軸4上には、同期噛合式のクラッチである高速側スリーブ17が設けられ、この3つの各スリーブ13,14,17の外周には、スリーブの周面に沿うC形状のシフトフォーク(シフト部材)18,19,21が凹凸嵌合した状態で係合されている。
【0026】
低速側スリーブ13は、出力軸4の軸方向にスライド自在且つ出力軸4と同調回転(具体的には一体回転)するように構成されている。この低速側スリーブ13を、中立位置から低速側である第1出力ギヤ11A側にスライド作動させると、第1出力ギヤ11Aと低速側スリーブ13とが、互いの間に設けられた同期手段13aにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、出力軸9が、第1出力ギヤ11A及び低速側スリーブ13と共に同調回転(具体的には一体回転)する状態(第1状態)になる。
【0027】
一方、この低速側スリーブ13を、中立位置から高速側である第2出力ギヤ11B側にスライド作動させると、第2出力ギヤ11Bと低速側スリーブ13とが、互いの間に設けられた同期手段13bにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、出力軸9が、第2出力ギヤ11B及び低速側スリーブ13と共に同調回転(具体的には一体回転)する状態(第2状態)になる。
【0028】
なお、この低速側スリーブ13の中立位置からの高速側及び低速側へのスライド操作は、該スリーブ13に係合された上述のシフトフォークである低速側シフトフォーク18によって行われる。
【0029】
中速側スリーブ14は、出力軸4の軸方向にスライド自在且つ出力軸4と同調回転(具体的には一体回転)するように構成されている。この中速側スリーブ21を、中立位置から低速側である第3出力ギヤ11C側にスライド作動させると、第3出力ギヤ11Cと中速側スリーブ14とが、互いの間に設けられた同期手段14aにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、出力軸4が第3出力ギヤ11C及び中速側スリーブ14と共に同調回転(具体的には一体回転)する状態(第3状態)になる。
【0030】
一方、この中速側スリーブ14を、中立位置から高速側である入力軸側伝動ギヤ7側にスライド作動させると、入力軸側伝動ギヤ7と中速側スリーブ14とが、互いの間に設けられた同期手段14bにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、出力軸4は、入力軸2、入力軸側伝動ギヤ7及び中速側スリーブ21と共に同調回転(具体的には一体回転)する状態(第4状態)になる。言換えると、この第4状態では、入力軸2と出力軸4とが同一速度で一体的に回転する。
【0031】
なお、この中速側スリーブ14の中立位置からの高速側及び低速側へのスライド操作は、該スリーブ14に係合された上述のシフトフォークである中速側シフトフォーク19によって行われる。
【0032】
高速側スリーブ17は、カウンタ軸3の軸方向にスライド自在且つ第5入力ギヤ9Eと同調回転(具体的には一体回転)するように構成されている。この高速側スリーブ17を、中立位置から低速側である回転部材16側にスライド作動させると、第5入力ギヤ9Eと回転部材16とが、互いの間に設けられた同期手段17aにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、第5入力ギヤ9E及び高速側スリーブ17が、カウンタ軸3及び回転部材16と共に同調回転(具体的には一体回転)する状態(第5状態)になる。この第5状態では、第5入力ギヤ9Eに常時噛合う第5出力ギヤ11Eによって、出力軸4側に高速回転動力が伝動される。
【0033】
なお、この高速側スリーブ17の中立位置からのスライド操作は、該スリーブ17に係合された上述のシフトフォークである高速側シフトフォーク21によって行われる。
【0034】
このような構成によって、入力軸2、カウンタ軸3及び出力軸4の軸方向がシフト方向に設定され、シフト方向の高速側は、入力軸2がミッションケース1a外に突出している側になる一方で、シフト方向の低速側は、出力軸4がミッションケース1a外に突出している側になり、上述した3つのスリーブ13,14,17によって、前進走行用の動力である前進動力が、第1状態〜第5状態の計5段階で変速切換えされる。ちなみに、上述した構成によって、第1状態→第2状態→第3状態→第4状態→第5状態の順に入力軸2から出力軸4に伝動される動力の回転速度が高速になる。
【0035】
図2(A)はリバースシフト装置の構成を示す側面図であり、(B)はリバースシフト装置の噛合状態を説明する説明図であり、
図3は、リバースシフト装置及びシフト作動機構の構成を示す正面図である。リバースシフト装置12は、カウンタ軸3の中途部に同調回転(具体的には、一体回転)するように設けられた後進動力入力ギヤであるリバースドライブギヤ22と、出力軸4の中途部側に該出力軸4と同調回転(具体的には、一体回転)するように設けられた後進動力出力ギヤであるリバースドリブンギヤ23と、出力軸4及びカウンタ軸3と平行な伝動軸であるリバースシャフト24と、該リバースシャフト24によって回転自在且つリバースシャフト24の軸方向のスライド自在に支持された後進動力伝動ギヤであるリバースアイドルギヤ26とを備えている。ちなみに、リバースドライブギヤ22は、具体的には、低速側スリーブ13の外周側に一体形成されて該スリーブ13の一部を構成している。
【0036】
まず、リバースドライブギヤ22及びリバースドリブンギヤ23の何れとも噛合わない離脱位置X1にあるリバースアイドルギヤ26を、リバースシャフト24の軸方向における上記高速側にスライド移動させると、まず、このリバースアイドルギヤ26がリバースドライブギヤ22又はリバースドリブンギヤ23の何れか一方のみ(図示する例では、リバースドライブギヤ22)と噛合い始める一方側噛合位置X2に到達する。
【0037】
続いて、一方側噛合位置X2にあるリバースアイドルギヤ26を、さらに高速側にスライド移動させると、次は、このリバースアイドルギヤ26がリバースドライブギヤ22及びリバースドリブンギヤ23の両方と噛合う両側噛合位置X3に達する。
【0038】
続いて、両側噛合位置X3にあるリバースアイドルギヤ26を、さらに高速側にスライド移動させると、このリバースアイドルギヤ26がリバースドライブギヤ22及びリバースドリブンギヤ23の両方と十分な噛合い量で噛合って、リバースドライブギヤ22からリバースドリブンギヤ23に動力が伝動される伝動位置(リバース位置)X4に達する。ちなみに、この際には、リバースアイドルギヤ26によって、回転方向が反転された動力が、リバースドリブンギヤ23と一体回転する出力軸4に伝動されるため、この動力は後進走行を行うための後進動力になる。
【0039】
上記リバースアイドルギヤ26は、外周に歯が形成された本体部27と、本体部27よりも小径な円柱状の連結部28とを一体的に有し、この連結部28の外周には、係合溝28aが周方向全体に亘り環状に凹設されている。また、リバーアイドルギヤ26と、リバースドライブギヤ22及びリバースドリブンギヤ23とが噛合い始める際に互いに接する側の各端部には、楔状のチャンファ26a,22a,23aが形成され、噛合う歯同士を互いに押し退けることにより、歯と歯がスムーズに噛合う。
【0040】
ちなみに、リバースドライブギヤ22又はリバースドリブンギヤ23の内、リバースアイドルギヤ26と先の噛合い始める側のチャンファ22aの基端と、該リバースアイドルギヤ26のチャンファ26aの基端とがシフト方向で一致した時に、このリバースアイドルギヤ26のチャンファ26aの先端が位置するポジションが一方側噛合位置X2となり、同様に、リバースドライブギヤ22又はリバースドリブンギヤ23の内、リバースアイドルギヤ26と後に噛合い始める側のチャンファ23aの基端と、該リバースアイドルギヤ26のチャンファ26aの基端とがシフト方向で一致した時に、このリバースアイドルギヤ26のチャンファ26aの先端が位置するポジションが両側噛合位置X3となる。
【0041】
このようにして、リバースアイドルギヤ26の離脱位置X1と伝動位置X4との間でのスライド移動によって、後進走行用の動力である後進動力を、出力軸4に伝動するか否かの切換を行う。具体的には、リバースアイドルギヤ26が伝動位置X4にスライドされている場合に出力軸4に後進動力が伝動される後進状態となる。
【0042】
ちなみに、本トランスミッション1は、該リバースアイドルギヤ26及び前記シフトフォーク18,19,21を作動させるシフト作動機構29を備えている。このシフト作動機構29は、図示しない変速レバー(手動操作具)の揺動操作によって各シフトフォーク18,19,21がシフト方向に作動するように、該変速レバーと、各シフトフォーク18,19,21とを機械的に連係させるとともに、高速側シフトフォーク21がシフト方向にスライド作動したことに連動して、リバースアイドルギヤ26がリバースシャフト24の軸方向にスライドするように高速側シフトフォーク21とリバースアイドルギヤ26とを機械的に連係させる。
【0043】
この高速側シフトフォーク21とリバースアイドルギヤ26との連係により、高速側スリーブ21の中立位置から高速側へのスライドに連動して、リバースアイドルギヤ26が離脱位置X1から伝動位置X4にスライド作動される一方で、高速側スリーブ21の高速側から中立位置へのスライドに連動して、リバースアイドルギヤ26が伝動位置X4から離脱位置X1にスライド移動させる。また、このシフト作動機構29は、高速側スリーブ21が中立位置から低速側である回転部材16側にスライドされている状態では、リバースアイドルギヤ26を離脱位置X1で保持させる。
【0044】
以上のように構成によれば、3つのシフトフォーク18,19,21によって、第1状態と、第2状態と、第3状態と、第4状態と、第5状態と、後進状態と、ニュートラル状態との何れかに切換えられる。具体的には、各シフトフォーク18,19,21がシフト方向に延びるフォークシャフト21aを一体的に有し、このフォークシャフト21aが上述したシフト作動機構29の一部を構成している(高速側シフトフォーク21のフォークシャフトである高速側フォークシャフト21a以外のフォークシャフトは図示しない)。
【0045】
そして、全てのスリーブ13,14,17が中立位置にスライドされている状態では、シフト方向におけるニュートラル位置に変速レバーが位置し、この状態では、変速レバーを、上記シフト方向と交差(具体的には直交)する方向に揺動する選択操作が可能になり、この選択操作によって、何れかのシフトフォーク18,19,21のフォークシャフト21aが選択される。言換えると、何れかのスリーブ13,14,17が中立位置以外の位置にスライドされている場合、上記選択操作は規制(具体的には、禁止)される。
【0046】
続いて、変速レバーを、ニュートラル位置から、シフト方向の高速側又は低速側に揺動するシフト操作によって、該選択されたシフトフォーク18,19,21に係合されたスリーブ13,14,17は、中立位置から高速側又は低速側にスライドされ、上記ニュートラル状態から、ニュートラル状態以外の何れかの状態(具体的には、第1〜第5状態又は後進状態の何れかの状態)への切換が行われる。
【0047】
変速レバーを、ニュートラル位置に揺動するシフト操作によって、上記スリーブ13,14,17が再び中立位置にスライドされ、ニュートラル状態に切換わる。このニュートラル状態への切換によって、再び、変速レバーの選択操作が可能な状態になる。
【0048】
ところで、離脱位置X1と一方側噛合位置X2との間において、リバースアイドルギヤ26と、リバースドライブギヤ22又はリバースドリブンギヤ23とのチャンファ26a,22a,23a同士が有効部分で接している場合には、チャンファ22a,23a,26aの作用によって、リバースアイドルギヤ26が離脱位置X1側に押し戻されるため、噛合不良が発生することが抑制される。
【0049】
一方、両側噛合位置X3でリバースアイドルギヤ26のスライドが停止されると、チャンファ22a,23a,26aが作用せず、噛合不良が生じ、この状態で動力が伝動されると、ギヤ破損が発生する可能性がある。
【0050】
なお、一方側噛合位置X2と両側噛合位置X3との間では、上述した通り、戻し作用があるため、上述の場合よりは可能性は低いものの、リバースアイドルギヤ26とリバースドライブギヤ22又はリバースドリブンギヤ23との噛合不良が発生する可能性もある。
【0051】
このため、リバースアイドルギヤ26を、少なくても両側噛合位置X3において、伝動位置X4側(高速側)に付勢する手段が、上述のシフト作動機構29に設けられ、これによって、上記噛合不良が効率的に防止される。
【0052】
次に、
図2乃至
図7に基づいて、シフト作動機構29の構成を説明する。
図4は、シフト作動機構の要部構成を示す平面図である。シフト作動機構29は、ブラケット31を介してミッションケース1aの内壁側に前後揺動自在に支持され且つ先端部がリバースアイドルギヤ26の上記係合溝28aに係合されたリバースアーム(シフト部材)32と、上述した各シフトフォーク18,19,21のフォークシャフト21aと、上記変速レバーの揺動操作によって各シフトフォーク18,19,21が上記の通り作動するように各フォークシャフト21aを変速レバーに機械的に連係させる連係機構(図示しない)と、高速側シフトフォーク21aが挿通される支持孔33aを有し且つ支持孔33aへの高速側フォークシャフト21aの挿入によって該高速側フォークシャフト21aの軸方向にスライド移動自在となるリバースフォーク33と、高速側フォークシャフト21aと平行に隣接する固定シャフト34と、固定シャフト34と高速側フォークシャフト21aとの間に設置されてデテント機構36と、リバースアーム32(リバースアイドルギヤ26)を所定方向に付勢する弾性部材であるトーションバネ37とを備えている。
【0053】
上記ブラケット31は、ミッションケース1aの内壁に沿って板状に形成されて該ミッションケース1aにボルト固定される基部31aと、基部31aの一端側から垂直又は略垂直に延出される支持部31bと、基部31aの他端側から垂直又は略垂直に延出される連結部31cとを一体的に有している。
【0054】
上記リバースアーム32は、ブラケット31の支持部31bに取付けられた上下斜め方向の支持軸38を支点として前後揺動自在に該ブラケット31に支持されている。このリバースアーム32の形状は、支持部31b側からリバースアイドルギヤ26側に突出して先端側半部が湾曲又は屈曲された正面視L字状をなし、このリバースアーム32の基端部には前記支持軸38が挿通される一方で、先端部はリバースアイドルギヤ26の係合溝28aに沿うように円弧状に湾曲形成されている。リバースアーム32の支持軸38を支点とした前後揺動によって、上記リバースアイドルギヤ26が離脱位置X1と伝動位置X4との間で、リバースシャフト24の軸方向にスライド操作される。
【0055】
上記リバースフォーク33は、高速側フォークシャフト21a側からリバースアーム32の基端側部分に突出形成され、その突出端側には、リバースアーム32に挿入される連結ピン39が一体的に形成されている。リバースアーム32の基端寄り部分には、長孔状の連結孔32aを穿設され、この連結孔32aに上記連結ピン39が挿通されている。この際、連結ピン39の外周と、連結孔32aの周縁との間には、隙間が形成され、この隙間によって、連結ピン39の連結孔32a内での移動が許容される。
【0056】
高速側スリーブ17が中立位置から高速側にスライドするように高速側シフトフォーク21を操作すると、リバースフォーク33もシフト方向の高速側にスライド移動し、リバースフォーク33にピン連結されたリバースアーム32が、リバースアイドルギヤ26を離脱位置X1から伝動位置X4にスライド移動させる方向に揺動される。
【0057】
一方、高速側スリーブ17が高速側から中立位置にスライドするように高速側シフトフォーク21を低速側に操作すると、リバースフォーク33もシフト方向の低速側にスライド移動し、リバースアーム32が、リバースアイドルギヤ26を伝動位置X4から離脱位置X1にスライド移動させる方向に揺動される。
【0058】
上記デテント機構36は、リバースアイドルギヤ26を離脱位置X1に位置させる箇所と、リバースアイドルギヤ26を伝動位置X4に位置させる箇所の計2箇所で、リバースフォーク33を係脱自在に位置決め係止させる。
【0059】
上記トーションバネ37は、互いが離間・近接する方向に揺動される一対の作動アーム37a,37bを有し、この一対の作動アーム37a,37bによって、弾性力を作用させる。このトーションバネ37の一方側作動アーム37bをリバースアーム32の中途部に回動自在に連結するとともに、他方側作動アーム37aをブラケット31の連結部31cに回動自在に連結している。ちなみに、各作動アーム37a,37bの回動軸S1,S2は、上記支持軸38と平行な方向に向けられている。
【0060】
該構成のシフト作動機構によれば、リバースアイドルギヤ26におけるリバースシャフト24の軸方向でのスライド位置(ストローク量)は、リバースフォーク33における高速側フォークシャフト21aの軸方向でのスライド位置(ストローク量)に依存することになる。
【0061】
図5は、リバースフォークのストローク量とリバースアイドルギヤのストローク量との相関関係を示すグラフであり、
図6(A)乃至(E)は、リバースアイドルギヤを離脱位置から伝動位置にスライドさせた場合のシフト作動機構の状態遷移を示す説明図である。高速側シフトフォーク21を選択した状態で、変速レバーを中立位置から高速側に揺動させた場合、リバースフォーク33は、初期位置(
図5のグラフの原点)→位置s1→位置s3→位置s4→位置s5の順にスライドされる。ちなみに、リバースフォーク33が初期位置に揺動されている状態は
図6(A)に示す状態である。
【0062】
まず、リバースフォーク33が初期位置から位置s1にスライドされると、このスライドの最中は、連結ピン39が連結孔32a内を移動し、リバースフォーク33が位置S1に達した時点で、連結ピン39が連結孔32aの周縁の一方側部分に接当し(
図6(B)に示す状態)、この間は、リバースアーム32は揺動されず、リバースアイドルギヤ26も離脱位置X1(
図5のグラフの原点)で保持される。
【0063】
続いて、リバースフォーク33を、位置s1から位置s3にスライドさせると、このスライドの最中は、トーションバネ37による低速側(離脱位置X1側)への弾性付勢力によって、連結ピン39が連結孔32aの周縁の上記一方側部分に接当した状態が保持され、リバースアーム32が、トーションバネ37による上記弾性付勢力に抗して、リバースアイドルギヤ26を高速側にスライドさせ、リバースフォーク33が位置S3に達した時点で、リバースアイドルギヤ26が位置g2にスライドされる(
図6(C)に実線で示された状態)。
【0064】
この位置g2は、トーションバネ37が支点越え作動して、トーションバネ37の付勢力が、低速側から高速側(伝動位置X4側)に反転して切換わる作用点であり、この付勢力の反転によって、リバースフォーク33が位置s3に位置したままの状態で、リバースアイドルギヤ33が位置g2から位置g3に一気に移動され、連結ピン39も連結孔32aの周縁の上記一方側部分の反対側である他方側部分に接当する状態になる(
図6(C)に仮想線で示された状態)。
【0065】
すなわち、この位置g2は、トーションバネ37が支点越えして、付勢力が切換えられるリバースアイドルギヤ26のスライド位置である切換位置X5になり、リバースアイドルギヤ26における位置g2から位置g3への移動は、連結ピン39が連結孔32aを移動する範囲内で、トーションバネ37の付勢力によって行われる。
【0066】
続いて、リバースフォーク33を、位置s3→位置s4→位置s5の順次スライドさせると、このスライドの最中は、トーションバネ37による高速側への弾性付勢力によって、連結ピン39が連結孔32aの周縁の上記他方側部分に接当した状態が保持され、リバースアーム32が、トーションバネ37による上記弾性力にサポートされて、リバースアイドルギヤ26を高速側にスライドさせ、リバースフォーク33が位置s4に達した時点で、リバースアイドルギヤ26が位置g4にスライドされ(
図6(D)に示す状態)、リバースフォーク33が位置S5に達した時点で、リバースアイドルギヤ26が位置g5にスライドされる(
図6(E)に示す状態)。位置g5は、上述した伝動位置X4であり、これによってニュートラル状態から後進状態への切換が完了する。
【0067】
図7(A)乃至(E)は、リバースアイドルギヤを伝動位置から離脱位置にスライドさせた場合のシフト作動機構の状態遷移を示す説明図である。変速レバーを高速側から中立位置に揺動させた場合、リバースフォーク33は、位置s5→位置s4→位置s2→初期位置の順にスライドされる。
【0068】
まず、リバースフォーク33が位置s5→位置s4→位置s2にスライドされると、このスライドの最中は、トーションバネ37による高速側への弾性付勢力によって、連結ピン39が連結孔32aの周縁の上記他方側部分に接当した状態が保持され、リバースアーム32が、トーションバネ37による上記弾性力に抗して、リバースアイドルギヤ26を低速側にスライドさせ、リバースフォーク33が位置s4に達した時点で、リバースアイドルギヤ26が位置g4にスライドされ(
図7(B)に示す状態)、リバースフォーク33が位置s2に達した時点で、リバースアイドルギヤ26が位置g2にスライドされる(
図7(C)に実線で示す状態)。
【0069】
上述した通り、この位置g2は、トーションバネ37が支点越え作動して、トーションバネ37の付勢力が反転する作用点であり、これによって高速側から低速側に付勢方向が反転して切換わる。この付勢力の反転によって、リバースフォーク33が位置s2に位置したままの状態で、リバースアイドルギヤ33が位置g2から位置g1に一気に移動され、連結ピン39も連結孔32aの周縁の上記他方側部分から上記一方側部分に接当する状態になる(
図7(C)に実線で示す状態)。
【0070】
続いて、リバースフォーク33を、位置s2から位置s1にスライドさせると、このスライドの最中は、トーションバネ37による低速側への弾性付勢力によって、連結ピン39が連結孔32aの周縁の上記一方側部分に接当した状態が保持され、リバースアーム32が、トーションバネ37による上記弾性付勢力にサポートされて、リバースアイドルギヤ26を低速側にスライドさせ、リバースフォーク33が位置s1に達した時点で、リバースアイドルギヤ26が離脱位置X1にスライドされる(
図7(D)に示した状態)。
【0071】
続いて、リバースフォーク33を、位置s1から初期位置にスライドさせると、このスライドの最中は、トーションバネ37の付勢力が解除され、このスライドの最中は、連結ピン39が連結孔32a内を移動し、この間は、リバースアーム32は揺動されず、リバースアイドルギヤ26も初期位置(離脱位置X1)で保持される(
図7(E)に示した状態)。
【0072】
以上のように、支点越え作動するリバースフォーク33のスライド位置が、高速側へのスライド時と、低速側へのスライド時とで異なっている。また、切換位置X5(位置g2)の調整は、トーションバネ37の一対の作動アーム37a,37bの取付位置を変更することで可能になる。
【0073】
上述した通り、両方側噛合位置X3において、高速側への弾性付勢力を作用させるため、切換位置X5を、離脱位置X1と両側噛合位置X3との間に設定する。さらに具体的には、この切換位置X5を、一方側噛合置X2と、両側噛合位置X3との間に設定してもよいし、或いは、該切換位置X5を、離脱位置X1と、一方側噛合置X2との間に設定してもよい。
【0074】
何れの場合でも、上記トーションバネ37が、両側噛合位置X3よりも離脱位置X1寄りのスライド位置と、両側噛合位置X3よりもリバース位置寄りのスライド位置との間の範囲で、前記リバースアイドルギヤ26を、高速側に弾性的に付勢し、上述したような噛合不良を効率的に防止する。
【0075】
また、切換位置X5を、離脱位置X1と、一方側噛合置X2との間に設定した場合、リバースアイドルギヤ26が、リバースドライブギヤ22又はリバースドリブンギヤ23の何れか一方と噛合った状態で停止されることも防止できるため、噛合不良をより効率的に防止できる。
【0076】
一方、切換位置X5を、一方側噛合置X2と、両側噛合位置X3との間に設定した場合でも、両側噛合位置X3の十分に手前側からトーションバネ37の高速側の付勢力が作用するため、噛合不良の防止可能は十分に期待できる。
【0077】
ちなみに、変速レバーによる後進切換操作時に両方側噛合位置X3で作用させる高速側への弾性力は、上述した例では1N以上に設定され、これによって変速レバーによる後進切換操作時に適切な吸込み力を作用させ、操作性が良好になるとともに、噛合不良も確実に防止される。