(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154152
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】光コネクタ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20170619BHJP
G02B 6/36 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/36
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-24797(P2013-24797)
(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公開番号】特開2014-153624(P2014-153624A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】島倉 恵太
【審査官】
野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−078644(JP,A)
【文献】
特開2010−026345(JP,A)
【文献】
特開2006−154788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255−6/27
6/30−6/34
6/36−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側の光コネクタが嵌合され、複数の圧入孔が設けられたハウジングと、複数のレンズ体を有し、複数の前記レンズ体が連結部を介して連結された光学部品とを備え、
前記各レンズ体が前記各圧入孔に圧入されることによって固定される光コネクタであって、
前記連結部は、弾性変形によって前記各レンズ体の位置を可変でき、
前記ハウジングには、複数の前記圧入孔の間の位置に一対の凸部が設けられ、前記各凸部を基準として前記圧入孔に圧入される前記レンズ体の固定位置が設定され、
前記各レンズ体に対向する位置に光トランシーバがそれぞれ設けられた光パッケージを備え、
前記光パッケージには、前記光トランシーバの間の位置に一対の位置決め孔が設けられ、
前記ハウジングの各凸部に前記光パッケージの前記位置決め孔が嵌合されることによって、前記ハウジングと前記光パッケージ間を位置決めすると共に前記位置決め孔を基準として前記光トランシーバの固定位置が設定されたことを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の光コネクタであって、
前記連結部は、隣り合う前記レンズ体の一端側同士を連結し、前記連結部の撓み変形によって前記各レンズ体の位置を可変することを特徴とする光コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レセプタクルタイプの光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の光コネクタとして、特許文献1に開示されたものがある。この光コネクタ100は、レセプタクルタイプのものであって、
図5及び
図6に示すように、相手側光コネクタ(図示せず)が嵌合され、複数の圧入孔101a,101bが設けられたハウジング102と、複数のレンズ体103a,103bを有し、複数の前記レンズ体103a,103bが連結部104を介して連結された光学部品105とを備えている。前記各レンズ体103a,103bが前記各圧入孔101a,101bに圧入されることによって固定される。
【0003】
ハウジング102には、前記レンズ体103a,103bに対向する位置に光トランシーバ106a,106bが設けられた光パッケージ107a,107bが固定される。また、ハウジング102には、電磁シールド対策を施すシールドケース108が装着される。レンズ体103a,103b間にはスリット109が介設され、このスリット109に、圧入孔101a,101b間に介設される遮光壁110が挿入される。スリット109の幅寸法Aは、遮光壁110の厚みに合わせて設定されている。
【0004】
上記構成では、ハウジング102に光学部品105を組み付ける際、ハウジング102の遮光壁110を光学部品105のスリット109に挿入しながら、レンズ体103a,103bをそれぞれハウジング102の圧入孔101a,101bに圧入することにより、光学部品105が位置決め固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−26345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の光コネクタ100では、複数のレンズ体103a,103bが連結部104を介して連結された光学部品105が撓み変形できない構造であるので、ハウジング102の2つの圧入孔101a,101bと光学部品105の2つのレンズ体103a,103bの位置が完全に同じでない場合、レンズ体103a,103bを圧入孔101a,101bに圧入できないという問題がある。もし仮にレンズ体103a,103bを圧入できたとしても、レンズ体103a,103b自体が変形した状態で圧入されるので、ハウジング102の圧入孔101a,101bの光軸と圧入されたレンズ体103a,103bの各光軸がずれた状態となる。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、ハウジングの圧入孔と複数のレンズ体の各位置がずれていても、高光軸精度な光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、相手側の光コネクタが嵌合され、複数の圧入孔が設けられたハウジングと、複数のレンズ体を有し、複数の前記レンズ体が連結部を介して連結された光学部品とを備え、前記各レンズ体が前記各圧入孔に圧入されることによって固定される光コネクタであって、前記連結部は、弾性変形によって前記各レンズ体の位置を可変でき
、前記ハウジングには、複数の前記圧入孔の間の位置に一対の凸部が設けられ、前記各凸部を基準として前記圧入孔に圧入される前記レンズ体の固定位置が設定され、前記各レンズ体に対向する位置に光トランシーバがそれぞれ設けられた光パッケージを備え、前記光パッケージには、前記光トランシーバの間の位置に一対の位置決め孔が設けられ、前記ハウジングの各凸部に前記光パッケージの前記位置決め孔が嵌合されることによって、前記ハウジングと前記光パッケージ間を位置決めすると共に前記位置決め孔を基準として前記光トランシーバの固定位置が設定されたことを特徴とする。
【0009】
前記連結部は、隣り合う前記レンズ体の一端側同士を連結し、前記連結部の撓み変形によって前記各レンズ体の位置を可変することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハウジングに光学部品を組み付ける際、複数のレンズ体を連結する連結部が弾性変形し、ハウジングの各圧入孔に合わせて各レンズ体の位置が変位するので、ハウジングの圧入孔と複数のレンズ体の各位置が完全に一致すると共に、各レンズ体自体が変形した状態で圧入されることを防止できる。これにより、ハウジングの圧入孔と複数のレンズ体の各位置がずれていても、高光軸精度な光コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態を示し、光コネクタ(シールドカバーを除く)を後方から見た組立斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態を示し、光コネクタを後方から見た分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態を示し、ハウジング及び光学部品を後方から見た斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態を示し、(a)は光学部品の正面図、(b)はハウジング及びハウジングに固定した光学部品の正面図である。
【
図5】一従来例を示し、光コネクタを後方から見た分解斜視図である。
【
図6】一従来例を示し、(a)はハウジング及びハウジングに固定した光学部品の正面図、(b)は光学部品の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1〜
図4は本発明の一実施形態を示す。
図1〜
図4に示す本実施形態の光コネクタ1は、レセプタクルタイプのものであって、プラグインタイプの相手側光コネクタ(図示せず)が連結される樹脂製のハウジング2と、このハウジング2に装着され、左右一対のレンズ体31a,31bを有する光学部品3と、ハウジング2に固定される光パッケージ4と、この光パッケージ4を覆うように設けられるシールドカバー5とを備えている。
【0014】
ハウジング2には、前方に開口し、相手側光コネクタが嵌合するコネクタ嵌合部(図示せず)と、左右一対のレンズ体31a,31bがそれぞれ圧入される圧入孔21a,21bが設けられている。
【0015】
ハウジング2の後壁部22には、レンズ体31a,31b間に介設され、光パッケージ4側に突設される板状の突設部23が設けられている。この突設部23には、相手側光コネクタが嵌合する方向にそれぞれ延びる上下一対の凸部24a,24bが設けられ、この一対の凸部24a,24bを基準としてレンズ体31a,31bの固定位置が設定されている。
【0016】
光学部品3は、光透過性を有する合成樹脂より一体に形成されている。光学部品3の隣り合うレンズ体31a,31bの一端側同士は、連結部32を介して連結されている。この連結部32より下部には、上下方向に延びるスリット33が形成されている。このスリット33には、ハウジング2の突設部23が挿入可能であり、スリット33の幅寸法は、突設部23の厚みに合わせて設定されている。
【0017】
レンズ体31a,31bは、前記相手側光コネクタで保持される一対の光ファイバ(図示せず)と一対の光トランシーバ(図示せず)の間で光信号を伝達する。また、各レンズ体31a,31bは、ハウジング2の各圧入孔21a,21bに挿入されるスリーブ34a,34b(図示せず)が一体に設けられている。
【0018】
連結部32は、薄肉で容易に弾性変形(撓み変形、伸縮変形)に形成されている。連結部32の弾性変形によって一対のレンズ体31a,31bの相対的位置を可変できる。
【0019】
光パッケージ4には、フレーム41と、このフレーム41に搭載され、レンズ体31a,31bに対向する位置に配置される一対の前記光トランシーバとが設けられている。前記相手側光コネクタを前方よりハウジング2のコネクタ嵌合部に差し込んで嵌合すると、相手側光コネクタの一対のフェルール(図示せず)がレンズ体31a,31bの光軸上に位置決めに接続される。レンズ体31a,31bと光トランシーバは、その各一方が発光側であり、各他方が受光側である。
【0020】
上記構成では、ハウジング2に光学部品3を組み付けるとき、光学部品3のスリット33にハウジング2の突設部23を挿入しながら、レンズ体31a,31bをそれぞれハウジング2の圧入孔21a,21bに圧入することにより、光学部品3を位置決め状態で固定する。その際、ハウジング2の圧入孔21a,21bと2つのレンズ体31a,31bの各位置がずれていても、複数のレンズ体31a,31bを連結する連結部32が撓み変形し、各レンズ体31a,31bが各圧入孔21a,21bに圧入される。従って、ハウジング2の圧入孔21a,21bとレンズ体31a,31bの各位置が完全に一致すると共に、各レンズ体31a,31b自体が変形した状態で圧入されることを防止できる。
【0021】
次いで、光パッケージ4をハウジング2に組み付ける際、光トランシーバがそれぞれレンズ体31a,31bに対向するようにフレーム41を配置し、ハウジング2の一方の凸部24a,24bをそれぞれ光パッケージ4の位置決め孔42a,42bに挿入し、光パッケージ4の後面がハウジング2に組み付けられた光学部品3に当接するまで光パッケージ4を押し込み、凸部24a,24bを位置決め孔42a,42bに嵌合させることにより、ハウジング2と光パッケージ4間を位置決めすると共に、位置決め孔42a,42bを基準として光トランシーバの固定位置を設定する。
【0022】
上記のようにしてハウジング2に光学部品3及び光パッケージ4を組み付けた後に、シールドカバー5を装着する。
【0023】
以上説明したように、ハウジング2に光学部品3を組み付けるとき、ハウジング2の圧入孔21a,21bと2つのレンズ体31a,31bの各位置がずれていても、ハウジング2の圧入孔21a,21bとレンズ体31a,31bの各位置が完全に一致すると共に、各レンズ体31a,31bが変形した状態で圧入されることを防止できる。つまり、連結部32は弾性変形するが、各レンズ体31a,31b自体は弾性変形しないため、光学部品3の樹脂成型時の寸法公差、例えば、±数十μmの寸法公差を吸収することができ、レンズ体31a,31bとハウジング2の光軸が高精度で一致する。以上より、光コネクタ1は、高光軸精度のものとなる。
【0024】
連結部32は、2つの隣り合うレンズ体31a,31bの一端側同士を連結し、撓み変形によって2つの各レンズ体31a,31bの相対的位置を可変する。連結部32は、撓み変形によって2つの各レンズ体31a,31bの相対的位置を可変するため、伸縮変形の場合よりも変位量が大きく、位置ずれ量が大きい場合にも対応できる。
【0025】
光パッケージ4の後面がハウジング2に組み付けられた光学部品3に当接するまで光パッケージ4を押し込むことによって、ハウジング2の突設部23が光トランシーバ間の漏れた光を遮るので、互いに干渉しないように光トランシーバ間のクロストークを抑制できる。
【0026】
上記実施形態では、連結部32は、薄肉で容易に弾性変形(撓み変形、伸縮変形)に形成されているが、幅細に形成して容易に弾性変形(撓み変形、伸縮変形)できるようにしても良く、又、薄肉で、且つ、幅細に形成して容易に弾性変形(撓み変形、伸縮変形)できるようにしても良い。
【0027】
上記実施形態では、受光経路用と発光経路用の2つのレンズ体31a,31bを設けた場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、2つの受光経路用であっても、2つの発光経路用であっても良い。また、複数のレンズ体は3っつ以上であっても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 光コネクタ
2 ハウジング
3 光学部品
21a,21b 圧入孔
31a,31b レンズ体
32 連結部