【実施例1】
【0016】
(第1実施例)
図1は、駆動装置100に工作機械120を取り付けた状態を示している。工作機械120は、被回転部材の一例である。駆動装置100は、ベースシャフト104に対して回転する出力部材110に固定されている。駆動装置100の全体が、ベースシャフト104に対して、回転軸106の周りに回転する。駆動装置100は、工作機械120を回転軸160の周りに回転させる。なお、工作機械120は、本体122と、本体122対して回転するヘッド部124を備えている。ヘッド部124には、工具(図示省略)が取り付けられる。
【0017】
駆動装置100は、固定部材102と第1減速機30aと第2減速機30bを備えている。固定部材102は、工作機械120の回転軸106方向の位置決めを行う。固定部材102は、第1フレーム102aと第2フレーム102bと連結フレーム102cを備えている。第1フレーム102aは、工作機械120の回転軸160方向の一方に延びている。第2フレーム102bは、工作機械120の回転軸160方向の他方に延びている。すなわち、第2フレーム102bは、工作機械120に対して、第1フレーム102aと反対方向に延びている。連結フレーム102cは、第1フレーム102aと第2フレーム102bを連結しており、出力部材110に固定されている。工作機械120は、第1フレーム102aと第2フレーム102bの間に配置される。第1減速機30aが第1フレーム102aに固定されており、第2減速機30bが第2フレーム102bに固定されている。第1減速機30aは第1支持部材の一例であり、第2減速機30bは第2支持部材の一例である。
【0018】
第1減速機30aは、第1フレーム102aと工作機械120の間に配置されている。第1減速機30aは、第1ケース62aと第1支持シャフト56aを備えている。第1支持シャフト56aは、第1ケース62aに回転可能に支持されている。第1ケース62aが工作機械120の本体122に固定されており、第1支持シャフト56aが第1フレーム102aに固定されている。第2減速機30bは、第2フレーム102bと工作機械120の間に配置されている。第2減速機30bは、第2ケース62bと第2支持シャフト56bを備えている。第2ケース62bが工作機械120の本体122に固定されており、第2支持シャフト56bが第2フレーム102bに固定されている。第2支持シャフト56bは、第2ケース62bに回転可能に支持されている。上記回転軸160は、第1減速機30a及び第2減速機30bの出力部(ケース62a,62b)の回転軸に相当する。そのため、工作機械120は、固定部材102に対して、回転軸160の周りに回転する。
【0019】
第1モータケース132aが、第1フレーム102aに固定されている。第1モータケース132a内には、第1減速機30aを駆動するモータ(図示省略)が収容されている。第1カバー133aが、第1フレーム102aに固定されている。第1カバー133aは、第1モータケース132aが駆動装置100の外部に露出することを防止している。第2モータケース132bが、第2フレーム102bに固定されている。第2モータケース132b内には、第2減速機30bを駆動するモータが収容されている。第2カバー133bが、第2フレーム102bに固定されており、第2モータケース132bが駆動装置100の外部に露出することを防止している。
【0020】
図2を参照し、駆動装置100について詳細に説明する。なお、第1減速機30aと第2減速機30bは実質的に同じ構造を備えている。以下では、第1減速機30aについて詳細に説明する。第2減速機30bについては、第1減速機30aと同じ参照番号又は下二桁の数字が同じ参照番号を付すことにより説明を省略することがある。
【0021】
第1ケース62aが、第1接続部材140aを介して、工作機械120の本体122に固定されている。第1ケース62aは、第1貫通孔58aを備えている。第1支持シャフト56aが、第1貫通孔58aを通過している。第1支持シャフト56aは、第1モータケース132aを介して第1フレーム102a(固定部材102)に固定されている。第1軸受64aが、第1ケース62aと第1支持シャフト56aの間に配置されている。第1軸受64aは、アンギュラ玉軸受である。
【0022】
第1減速機30aは、第1内歯歯車6aと第1支持シャフト56aと第1クランクシャフト12aと2個の外歯歯車(第1外歯歯車8a,第3外歯歯車4a)を備えている。第1内歯歯車6aは、第1ケース62aの第1貫通孔58aの壁面に形成されている。回転軸160は、第1内歯歯車6aと第1支持シャフト56aの回転軸に相当する。第1クランクシャフト12aが、第1支持シャフト56aに支持されている。回転軸20aが、第1クランクシャフト12aの回転軸である(以下、第1回転軸20aと称することがある)。第1回転軸20aは、回転軸160と平行である。すなわち、第1クランクシャフト12aは、回転軸160からオフセットした位置で、回転軸160に平行に延びている。なお、第1減速機30aは、3個の第1クランクシャフト12aを備えている。各々の第1クランクシャフト12aは、回転軸160の周りに等間隔に配置されている。
【0023】
第1クランクシャフト12aは、2個の偏心体(第1偏心体10a,第3偏心体2a)を備えている。第1回転軸20a方向において、第1偏心体10aは、第3偏心体2aよりも工作機械120側に配置されている。第1偏心体10aと第3偏心体2aは、第1回転軸20aに対して対称に偏心している。第1外歯歯車8aが第1偏心体10aに係合しており、第3外歯歯車4aが第3偏心体2aに係合している。回転軸160方向において、第1外歯歯車8aは、第3外歯歯車4aよりも工作機械120側に配置されている。第1外歯歯車8aと第3外歯歯車4aの歯数は等しい。回転軸160方向において、第1軸受64aは、第1外歯歯車8a及び第3外歯歯車4aよりも第1モータケース132a側(第1フレーム102a側)に配置されている。第1軸受64aは、第1ケース62aと第1支持シャフト56aの間に1個だけ配置されている。
【0024】
第2ケース62bが、第2接続部材140bを介して、工作機械120の本体122に固定されている。第2ケース62bは、第2貫通孔58bを備えている。第2支持シャフト56bが、第2貫通孔58bを通過している。第2支持シャフト56bは、第2モータケース132bを介して第2フレーム102bに固定されている。第2軸受64bが、第2ケース62bと第2支持シャフト56bの間に配置されている。第2軸受64bは、アンギュラ玉軸受である。
【0025】
第2減速機30bは、第2内歯歯車6bと第2支持シャフト56bと第2クランクシャフト12bと2個の外歯歯車(第2外歯歯車8b,第4外歯歯車4b)を備えている。回転軸160は、第2内歯歯車6bと第2支持シャフト56bの回転軸にも相当する。回転軸20bは、第2クランクシャフト12bの回転軸である(以下、第2回転軸20bと称することがある)。第2回転軸20bは、第1回転軸20aと同軸である。すなわち、第2クランクシャフト12bは、第1クランクシャフト12aと同軸である。第2クランクシャフト12bも、回転軸160に平行に延びている。
【0026】
第2クランクシャフト12bは、2個の偏心体(第2偏心体10b,第4偏心体2b)を備えている。第2回転軸20b方向において、第2偏心体10bは、第4偏心体2bよりも工作機械120側に配置されている。第2偏心体10bと第4偏心体2bは、第2回転軸20bに対して対称に偏心している。第2外歯歯車8bが第2偏心体10bに係合しており、第4外歯歯車4bが第4偏心体2bに係合している。回転軸160方向において、第2外歯歯車8bは、第4外歯歯車4bよりも工作機械120側に配置されている。回転軸160方向において、第2軸受64bは、第2外歯歯車8b及び第4外歯歯車4bよりも第2モータケース132a側(第2フレーム102b側)に配置されている。第2軸受64bは、第2ケース62bと第2支持シャフト56bの間に1個だけ配置されている。
【0027】
図3を参照し、第1減速機30aの構造についてより詳細に説明する。上記したように、第1減速機30aと第2減速機30bは実質的に同じ構造を備えている。そのため、第1減速機30aの構造についてのみ説明し、第2減速機30bの構造については説明を省略する。
【0028】
第1内歯歯車6aは、第1貫通孔58aの壁面に、内歯ピン5aを周方向に並べることにより形成されている。回転軸160方向において、第1内歯歯車6aは、第1ケース62aの中間に形成されている。第1支持シャフト56aは、第1プレート50aと第2プレート54aを備えている。第2プレート54aは、柱状部52aを備えている。柱状部52aが、第2プレート54aから第1プレート50aに向けて延びており、柱状部52aと第1プレート50aが固定されている。回転軸160方向において、第1プレート50aが工作機械120側に位置しており、第2プレート54aがモータケース132a側(第1フレーム102a側)に位置している。第2プレート54aと第1ケース62aの間に、第1軸受64aが配置されている。第1プレート50aと第1ケース62aの間には、軸受が配置されていない。すなわち、工作機械120から離れた位置で、第1軸受64aによって、第1支持シャフト56aが第1ケース62aに支持されている。
【0029】
第1クランクシャフト12aは、一対の軸受14aによって、第1支持シャフト56aに支持されている。一対の軸受14aは、円錐ころ軸受である。一対の軸受14aによって、第1クランクシャフト12aが、第1支持シャフト56aに対してアキシャル方向及びラジアル方向へ移動することが規制されている。第1偏心体10aが工作機械120側に位置しており、第3偏心体2aがモータケース132a側(第1フレーム102a側)に位置している。
【0030】
第1外歯歯車8aには、第1中央貫通孔34a,第1支持シャフト用貫通孔36a,第1クランクシャフト用貫通孔24aが形成されている。第3外歯歯車4aには、第3中央貫通孔32a,第3支持シャフト用貫通孔38a,第3クランクシャフト用貫通孔26aが形成されている。円筒部材28aが、第1中央貫通孔34a及び第3中央貫通孔32aを通過している。円筒部材28aは、第1プレート50aと第2プレート54aに固定されている。柱状部52aが、第1支持シャフト用貫通孔36aと第3支持シャフト用貫通孔38aを通過している。柱状部52aと、第1支持シャフト用貫通孔36aと第3支持シャフト用貫通孔38aとの間には、隙間が設けられている。第1偏心体10aが、円筒ころ軸受22aを介して第1クランクシャフト用貫通孔24aに係合している。第3偏心体2aが、円筒ころ軸受18aを介して第3クランクシャフト用貫通孔26aに係合している。
【0031】
第1ケース62aと第1プレート50aの間にオイルシール40aが配置されており、第1ケース62aと第2プレート54aの間にオイルシール7aが配置されており、第1プレート52aと第1クランクシャフト12aの間にオイルシール16aが配置されており、第2プレート54aと第1クランクシャフト12aの間にオイルシール9aが配置されている。オイルシール40a,7a,16a及び9aにより、第1減速機30a内の潤滑剤(オイル)が第1減速機30aの外部に漏れることを防止している。
【0032】
第1モータケース132a内には、第1減速機30aを駆動するモータ(図示省略)が収容されている。モータのトルクは、第1クランクシャフト12aに伝達される。第1クランクシャフト12aが回転すると、第1偏心体10a及び第3偏心体2aが、第1回転軸20aの周りを偏心回転する。偏心体10a,2aの偏心回転に伴って、第1外歯歯車8a及び第3外歯歯車4aが、第1内歯歯車6aと噛み合いながら偏心回転する。第1外歯歯車8aと第3外歯歯車4aの偏心方向は、回転軸160に対して対称である。
【0033】
第1内歯歯車6aの歯数と外歯歯車8a,4aの歯数は異なる。そのため、外歯歯車8a,4aが偏心回転すると、外歯歯車8a,4aが、第1内歯歯車6aに対して相対的に回転する。外歯歯車8a,4aは、第1減速機30aの偏心回転歯車ということもできる。第1内歯歯車6aは、第1減速機30aの自転歯車ということもできる。外歯歯車8a,4aは、第1クランクシャフト12aを介して、第1支持シャフト56aに支持されている。よって、外歯歯車8a,4aが偏心回転すると、第1支持シャフト56aが、第1内歯歯車6aに対して相対的に回転する。第1内歯歯車6a(第1ケース62a)は、接続部材140aを介して、工作機械120の本体122に固定されている。また、第1支持シャフト56aは、第1モータケース132aを介して、固定部材102(第1フレーム102a)固定されている。そのため、外歯歯車8a,4aが偏心回転すると、工作機械120が固定部材102に対して回転軸160の周りを回転する。第1減速機30aの駆動と第2減速機30bの駆動は同時に行われる。そのため、第2減速機30bも、第1減速機30aと同様の動きを行う。なお、外歯歯車8b,4bは、第2減速機30bの偏心回転歯車ということもできる。第2内歯歯車6bは、第2減速機30bの自転歯車ということもできる。駆動装置100は、工作機械120を両持ち支持して、ヘッド部124に取り付ける工具(図示省略)の位置をチルトすることができる。
【0034】
駆動装置100の特徴を説明する。上記したように、第1ケース62a及び第2ケース62bが、工作機械120に固定される。また、第1支持シャフト56a及び第2支持シャフト56bが、固定部材102に固定されている。工作機械120を駆動装置100に取り付けると、第1ケース62a,第2ケース62b及び工作機械120が一体となり、第1支持シャフト56a,第2支持シャフト56b及び固定部材102が一体となる。第1ケース62a,第2ケース62b及び工作機械120の一体物が、第1支持シャフト56a,第2支持シャフト56b及び固定部材102の一体物に対して、一対の軸受(第1軸受64a及び第2軸受64b)によって支持されている。工作機械120が固定部材102に対して両持ち支持されているということができる。そのため、工作機械120の回転軸160周りの位置を高精度に制御することができる。
【0035】
なお、従来の駆動装置は、各々の減速機について、ケースとシャフトの間に一対の軸受を配置する。シャフトがケースに両持ち支持されるので、各々の減速機においてシャフトとケースの相対的な位置が安定する。しかしながら、1個の被回転部材(たとえば工作機械)を2個の減速機で両持ち支持する場合、減速機を被回転部材に取り付ける際に組み付け誤差が生じると、シャフトとケースの間に相対的に位置ずれをおこす力がかかる。その結果、シャフトとケースの間に配置した一対の軸受に力が加わり、軸受の寿命が低下することがある。そのような不具合を避けるため、従来の駆動装置では、2個の減速機を、被回転部材に高精度に取り付けることが要求される。
【0036】
本明細書で開示する駆動装置は、各々の減速機において、シャフトとケースの間に軸受を1個だけ配置する。そのため、工作機械に2個の減速機を取り付ける際に組み付け誤差が生じても、シャフトとケースの相対的な位置ずれが可能である。その結果、軸受に過大な力が加わることを抑制することができる。すなわち、本明細書で開示する技術は、各々の減速機において、敢えて、シャフトをケースにしっかりと支持させない。それにより、耐久性の高い(寿命が長い)駆動装置を実現することができる。
【0037】
駆動装置100の他の特徴を説明する。上記したように、第1クランクシャフト12aの第1回転軸20aと、第2クランクシャフト12bの第2回転軸20bが同軸である。そして、第1回転軸20a方向の一方から観察したときに、第1偏心体10aと第2偏心体10bの偏心方向が同じである。そのため、第1外歯歯車8aの偏心回転の動きと、第2外歯歯車8bの偏心回転の動きとが、工作機械120の両側で等しくなる。その結果、駆動装置100を駆動する際に、第1外歯歯車8aから第1内歯歯車6aに加わる力の方向と、第2外歯歯車8bから第2内歯歯車6bに加わる力の方向が等しくなる。工作機械120が振動することを抑制することができる。なお、第1回転軸20a方向の一方から観察したときに、第3偏心体2aと第4偏心体2bの偏心方向が同じである。第3外歯歯車4aの偏心回転の動きと、第4外歯歯車4bの偏心回転の動きとが、工作機械120の両側で等しくなる。
【0038】
また、上記したように、第1減速機30aにおいて、第1回転軸20aに対する第1偏心体10aの偏心方向が、第3偏心体2aの偏心方向と対称である。そのため、第1減速機30aを駆動しているときに、第1外歯歯車8aと第3外歯歯車4aの位置が、回転軸160対して常に対称である。そのため、第1クランクシャフト12aの回転バランスを良好にすることができる。この特徴は、第2減速機30bでも得られる。
【0039】
なお、本実施例では、第1回転軸20aと第2回転軸20bが同軸であり、第1偏心体10aと第2偏心体10bが回転軸20a,20bに対して同じ方向に偏心している形態を説明した。しかしながら、第1外歯歯車8aの偏心回転の動きと第2外歯歯車8bの偏心回転の動きが工作機械120の両側で等しい形態であれば、第1回転軸20aと第2回転軸20bは同軸でなくてもよい。すなわち、第1減速機30aの第1外歯歯車8aと、第2減速機30bの第2外歯歯車8bが、回転軸160に対して同じ方向に偏心していればよい。例えば、第1クランクシャフト12aと第2クランクシャフト12bを回転軸160に対して対称に配置し、第1回転軸20a(又は第2回転軸20b)方向の一方から観察したときに、第1偏心体10aの偏心方向と第2偏心体10bの偏心方向が同じである形態でもよい。
【0040】
また、本実施例では、第1支持部材及び第2支持部材として減速機を用いる例を説明した。しかしながら、本実施例の第1減速機30a及び/又は第2減速機30bに代えて、減速構造を有しない支持部材を用いてもよい。この場合でも、ケースとシャフトの間に軸受を1個だけ配置する。減速構造を有しない支持部材を用いる場合、ケース又はシャフトにモータを取り付けることにより、工作機械120を回転軸160の周りに回転させることができる。また、第1支持部材及び/又は第2支持部材として、内歯歯車が偏心回転する減速機を用いることもできる。重要なことは、工作機械120の両側に配置する2個の支持部材(第1支持部材及び第2支持部材)の各々がケースとシャフトを備えており、各々のケースとシャフトの間に軸受が1個だけ配置されていることである。以下の実施例においても同様である。
【0041】
(第2実施例)
駆動装置200について説明する。駆動装置200は、駆動装置100の変形例である。具体的には、駆動装置200は、支持部材(減速機)の構造が駆動装置100と異なるだけである。そのため、駆動装置100と同じ部材には、駆動装置100と同じ参照番号又は下二桁の数字が同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。また、第1減速機230aの構造について説明し、第2減速機230bの構造については説明を省略することがある。
【0042】
図4から
図6に示すように、第1減速機230aの第1クランクシャフト212aには、第1偏心体210aが1個だけ設けられている。同様に、第2減速機230bの第2クランクシャフト212bには、第2偏心体210bが1個だけ設けられている。第1クランクシャフト212aの第1回転軸220aと、第2クランクシャフト212bの第2回転軸220bは同軸である。第1回転軸220a方向の一方から観察すると、第1回転軸220aに対する第1偏心体210aの偏心方向と、第2偏心体210bの偏心方向は反対である。すなわち、第1偏心体210aの中心と第2偏心体210bの中心は、第1回転軸220aに対して対称である。第1偏心体210aに第1外歯歯車208aが係合しており、第2偏心体210bに第2外歯歯車208bが係合している。そのため、回転軸260方向の一方から観察したときに、第1外歯歯車208aと第2外歯歯車208bは反対方向(回転軸260に対して対称)に偏心している。
【0043】
図5及び
図6に示すように、第1減速機230aでは、第1プレート250aと第1ケース262aの間に、第1軸受264aが配置されている。第2プレート254aと第1ケース262aの間には、軸受が配置されていない。第1外歯歯車208aよりも工作機械120側で、第1軸受264aによって、第1支持シャフト256aが第1ケース262aに支持されている。換言すると、回転軸260方向において、第1軸受264aが、第1外歯歯車208aよりも工作機械120側に配置されている。
【0044】
第2減速機230bも同様に、第2外歯歯車208bよりも工作機械120側で、第2軸受264bによって、第2支持シャフト256bが第2ケース262bに支持されている。すなわち、回転軸260方向において、第2軸受264bが、第2外歯歯車208bよりも工作機械120側に配置されている。
【0045】
駆動装置200の特徴を説明する。上記したように、駆動装置200では、第1減速機230aと第2減速機230bの各々が、外歯歯車を1個だけ備えている(第1外歯歯車208a,第2外歯歯車208b)。そのため、複数の外歯歯車を備える減速機(たとえば、実施例1の減速機30a,30b)と比べ、各々の減速機の軸方向長さを短くすることができる。すなわち、本実施例で開示する技術によると、コンパクトな駆動装置を実現することができる。
【0046】
また、第1外歯歯車208aと第2外歯歯車208bは、回転軸260に対して対称に偏心している。そのため、第1ケース262aと工作機械120と第2ケース262bを合わせた一体物に対して、2個の外歯歯車(第1外歯歯車208a,第2外歯歯車208b)から加わる力がバランスする。
【0047】
第1減速機230aと第2減速機230bは、2個の外歯歯車を備える減速機の一部を分割して、工作機械120の両側に配置したと捉えることもできる。たとえば、第1実施例の駆動装置100の場合、第1減速機30aが、回転軸160に対して対称に偏心している2個の外歯歯車8a,4aを備えている。本実施例の駆動装置200は、第1実施例の駆動装置100の2個の外歯歯車8a,4aを分割し、一方の外歯歯車を工作機械120を挟んで他方外歯歯車の反対側に配置した形態と捉えることができる。
【0048】
駆動装置200では、第1軸受264a及び第2軸受264bの各々を第1外歯歯車208a及び第2外歯歯車208bよりも工作機械120側に配置している。すなわち、第1外歯歯車208a及び第2外歯歯車208bは、一対の軸受(第1軸受264a,第2軸受264b)がケース262a,262b及び工作機械120の一体物を支持している範囲よりも外側に配置されている。そのため、外歯歯車208a,208bからケース262a,262bに加えられる力によって工作機械120が振動することを抑制することができる。
【0049】
なお、本実施例では、第1回転軸220aと第2回転軸220bが同軸であり、第1偏心体210aと第2偏心体210bが第1回転軸220aに対して対称に偏心している形態を説明した。しかしながら、重要なことは、第1外歯歯車208aと第2外歯歯車208bが、回転軸260に対して反対方向に偏心した状態で偏心回転することである。そのような形態であれば、第1偏心体210aと第2偏心体210bが第1回転軸220a(第2回転軸220b)に対して対称に偏心していなくてもよい。例えば、第1クランクシャフト212aと第2クランクシャフト212bを回転軸260に対して対称に配置し、第1回転軸220a(又は第2回転軸220b)方向の一方から観察したときに、第1偏心体210aの偏心方向と第2偏心体210bの偏心方向が反対であるような形態であってもよい。
【0050】
(第3実施例)
駆動装置300について説明する。駆動装置300は、駆動装置200の変形例である。具体的には、駆動装置300は、減速機330a及び330bの形態が駆動装置200と異なるだけでる。そのため、駆動装置200と同じ部材には、駆動装置200と同じ参照番号又は下二桁の数字が同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。また、第1減速機330aの構造について説明し、第2減速機330bの構造については説明を省略することがある。
【0051】
図7から
図9に示すように、駆動装置300では、第1クランクシャフト312a及び第2クランクシャフト312bが、回転軸360と同軸に配置されている。すなわち、第1減速機330a及び第2減速機330bの出力部の回転軸360上に、クランクシャフト312a,312bが配置されている。第1クランクシャフト312aは第1偏心体310aを1個だけ備えており、第2クランクシャフト312bは第2偏心体310bを1個だけ備えている。第1偏心体310aと第2偏心体310bの偏心方向は、回転軸360に対して対称である。
【0052】
図8に示すように、第1減速機330aは、第1従動クランクシャフト370aを備えている。第1減速機330aは、3個の第1従動クランクシャフト370aを備えている。各々の第1従動クランクシャフト370aは、回転軸360の周りに等間隔に配置されている。各々の第1従動クランクシャフト370aは、第1従動偏心体372aを1個だけ備えている。第2減速機330bは、第2従動クランクシャフト370bを備えている。第2減速機330bは、3個の第2従動クランクシャフト370bを備えている。各々の第2従動クランクシャフト370bは、回転軸360の周りに等間隔に配置されている。第1従動クランクシャフト370aの回転軸380aと、第2従動クランクシャフト370bの回転軸380bは同軸である。各々の第2従動クランクシャフト370bは、第2従動偏心体372bを1個だけ備えている。回転軸380a方向の一方から観察すると、回転軸380aに対して、第1従動偏心体372aの偏心方向と第2従動偏心体372bの偏心方向は反対である。
【0053】
第1従動クランクシャフト370a及び第2従動クランクシャフト370bには、モータ(図示省略)のトルクが直接伝達されない。第1従動クランクシャフト370a及び第2従動クランクシャフト370bは、外歯歯車308a,308bの偏心回転に伴って回転する。第1減速機330a及び第2減速機330bの各々は、第1従動クランクシャフト370a及び第2従動クランクシャフト370bを備えているので、第1外歯歯車308a及び第2外歯歯車308bがスムーズに回転する。
【0054】
図9に示すように、第1クランクシャフト312aは、一対の軸受314aによって、第1支持シャフト356aに支持されている。一対の軸受314aは、深溝玉軸受である。第1従動クランクシャフト370aは、一対の軸受384aによって、第1支持シャフト356aに支持されている。一対の軸受384aは、円錐ころ軸受である。第1従動クランクシャフト370aは、円錐ころ軸受384aによって、アキシャル方向及びラジアル方向への移動が規制されている。
【0055】
第1外歯歯車308aは、クランクシャフト用貫通孔324aと、従動クランクシャフト用貫通孔386aと、支持シャフト用貫通孔336aを備えている。クランクシャフト用貫通孔324aは、第1外歯歯車308aの中央に形成されている。従動クランクシャフト用貫通孔386aと支持シャフト用貫通孔336aは、第1外歯歯車308aの周方向に交互に形成されている。第1偏心体310aが、円筒ころ軸受322aを介してクランクシャフト用貫通孔324aに係合している。第1従動偏心体372aが、円筒ころ軸受374aを介して従動クランクシャフト用貫通孔386aに係合している。第1支持シャフト356aの柱状部352aが、支持シャフト用貫通孔336aを通っている。第1従動クランクシャフト370aと第1プレート350aの間にオイルシール382aが配置されており、第1従動クランクシャフト370aと第2プレート354aの間にオイルシール388aが配置されている。
【0056】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。