特許第6154169号(P6154169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154169
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20170619BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20170619BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170619BHJP
【FI】
   F21S8/12 121
   F21S8/12 123
   F21S8/12 150
   F21W101:10
   F21Y115:10
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-73206(P2013-73206)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-197505(P2014-197505A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 剛彦
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−073431(JP,A)
【文献】 特開2010−153259(JP,A)
【文献】 特開2010−129322(JP,A)
【文献】 特開2013−045681(JP,A)
【文献】 特開2013−051031(JP,A)
【文献】 特開2010−123473(JP,A)
【文献】 特開昭62−202401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
F21W 101/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる光軸を有する投影レンズと、前記投影レンズの後方側焦点よりも後方に配置された光源と、前記光源からの直接光を前記投影レンズに向けて反射させるリフレクタと、前記投影レンズと前記光源との間に配置されて前記リフレクタからの反射光の一部を遮蔽して配光パターンのカットオフラインを形成するシェードと、を備えた車両用前照灯であって、
前記リフレクタよりも前方に設けられ、前記光源からの直接光の一部を前記シェードの前方へ向けて下方に反射する第一反射面と、前記シェードの前方且つ前記投影レンズの後方側焦点より下方に設けられ、前記第一反射面からの反射光を前記投影レンズに直接入射させる第二反射面と、を備えると共に、
前記第一反射面は、前方側第一反射面と、前記前方側第一反射面よりも後方に設けられた後方側第一反射面とを備え、
前記前方側第一反射面から前記第二反射面に入射して前記第二反射面で反射された反射光は、前記後方側第一反射面から前記第二反射面に入射して前記第二反射面で反射された反射光よりも、上方を照らすように灯具前方に照射される、車両用前照灯。
【請求項2】
前記第二反射面は前記シェードの上面の前端部と連続するように形成されている、請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記第二反射面は、上方側第二反射面と、前記上方側第二反射面より下方に形成された下方側第二反射面を備え、
前記上方側第二反射面は、前記後方側第一反射面からの反射光を反射し、
前記下方側第二反射面は、前記前方側第一反射面からの反射光を反射する、請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記第二反射面は前記シェードに沿った凹面形状である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記後方側第一反射面と前記リフレクタとの接続面は、光源からの直射光が入射しない形状とされている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記後側第一反射面から前記第二反射面に入射して前記第二反射面で反射された反射光の一部はロービーム配光パターンとラップする、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
ロービーム配光パターンの上方に、OHS(Over Head Sign)配光パターンを形成可能な車両用灯具が特許文献1などにより知られている。この灯具は、夜間でも路面より上方に位置する標識などを照らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−108727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両用灯具では、ロービーム配光パターンのすぐ上部の領域がロービーム配光パターンより極端に暗くなり、ロービーム配光パターンとの明暗視差が大きいので、該領域の視認性が十分ではないことに本発明者らは気がついた。
【0005】
そこで本発明は、視認性の高い配光パターンを形成可能な車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の車両用前照灯は、
前後方向に延びる光軸を有する投影レンズと、前記投影レンズの後方側焦点よりも後方に配置された光源と、前記光源からの直接光を前記投影レンズに向けて反射させるリフレクタと、前記投影レンズと前記光源との間に配置されて前記リフレクタからの反射光の一部を遮蔽して配光パターンのカットオフラインを形成するシェードと、を備えた車両用前照灯であって、
前記リフレクタよりも前方に設けられ、前記光源からの直接光の一部を前記シェードの前方へ向けて下方に反射する第一反射面と、前記シェードの前方且つ前記投影レンズの後方側焦点より下方に設けられ、前記第一反射面からの反射光を前記投影レンズに向けて反射させる第二反射面と、を備えると共に、
前記第一反射面は、前方側第一反射面と、前記前方側第一反射面よりも後方に設けられた後方側第一反射面とを備え、
前記前方側第一反射面から前記第二反射面に入射して前記第二反射面で反射された反射光は、前記後方側第一反射面から前記第二反射面に入射して前記第二反射面で反射された反射光よりも、上方を照らすように灯具前方に照射される。
【0007】
本発明に係る車両用前照灯によれば、光源から遠い位置に設けられた前方側第一反射面からの光が上方を照らし、光源から近い位置に設けられた後方側第一反射面からの光が下方を照らすので、下方から上方に向かって順に暗くなるOHS配光パターンが得られる。さらに、OHS配光パターンより下方に、OHS配光パターンより明るいロービーム配光パターンが形成される。これにより、視認性の高い配光パターンを形成可能な車両用前照灯が得られる。
【0008】
上記本発明に係る車両用前照灯において、
前記第二反射面は前記シェードと連続するように形成されていてもよい。
本発明に係る車両用前照灯によれば、OHS配光パターンとロービーム配光パターンとを近づけて形成することができるので、ロービーム配光パターンのすぐ上方の領域の視認性をさらに高めることができる。
【0009】
上記本発明に係る車両用前照灯において、
前記第二反射面は、上方側第二反射面と、前記上方側第二反射面より下方に形成された下方側第二反射面を備え、
前記上方側第二反射面は、前記後方側第一反射面からの反射光を反射し、
前記下方側第二反射面は、前記前方側第一反射面からの反射光を反射してもよい。
本発明に係る車両用前照灯によれば、前方側第一反射面からの光を後方側第一反射面からの光よりも上方に照射する光学系の設計の自由度が高い。
【0010】
上記本発明に係る車両用前照灯において、前記第二反射面を前記シェードに沿った凹面形状としてもよい。
本発明に係る車両用前照灯によれば、第二反射面をシェードに沿った形状とすることにより、灯具前方から見たときの車両用前照灯の見栄えを高められる。
【0011】
上記本発明に係る車両用前照灯において、
前記後方側第一反射面と前記リフレクタとの接続面は、光源からの直射光が入射しない形状とされていてもよい。
本発明に係る車両用前照灯によれば、光源からの直接光が後方側第一反射面とリフレクタとの境界で反射されないので、対向車の運転者などにグレアを与えることがない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、視認性の高い配光パターンを形成可能な車両用前照灯が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る車両用前照灯の側断面図である。
図2図1に示したシェードの上面図である。
図3図1の部分拡大図である。
図4図3の部分拡大図である。
図5】配光パターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<全体構成>
以下、本発明の一実施形態に係る車両用前照灯について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る車両用前照灯の側断面図である。
【0015】
本実施形態に係る車両用前照灯100は、ロービーム配光パターンとOHS配光パターンとを同時に形成可能な前照灯である。車両用前照灯100は、素通し状のアウタカバー11と、ランプボディ12と、灯具ユニット20とを備えている。灯具ユニット20は、アウタカバー11とランプボディ12により形成される灯室内に配置されている。
【0016】
灯具ユニット20は、投影レンズ21と、光源22と、リフレクタ23と、ホルダ24と、ヒートシンク25とを備えている。これら投影レンズ21、光源22、リフレクタ23、ホルダ24、ヒートシンク25は一体的に組み立てられてユニット化されている。
【0017】
投影レンズ21は、車両の前後方向に延びる光軸Axを有する平凸レンズである。投影レンズ21は、後方側に後方側焦点Fを有している。
【0018】
光源22は、投影レンズ21の後方側焦点Fよりも後方に配置されている。本実施形態において、光源22はLED(Laser Emitting Diode)であり、その発光面が上方に向けられている。なお、LED以外の半導体発光素子や、ハロゲンバルブ、放電バルブなどを光源に採用しても良い。
【0019】
リフレクタ23は、楕円面を基調とした曲面の反射面である。リフレクタ23は、光源22の上方を覆うように設けられている。リフレクタ23は、その第一焦点が光源22に位置し、第二焦点が投影レンズ21の後方側焦点Fの近傍となるように、設けられている。これにより、リフレクタ23は、光源22からの直接光を投影レンズ21に向けて反射させる。
【0020】
ヒートシンク25は、光源22の発光面の反対側に取り付けられている。ヒートシンク25は、光源22の発光時に生じる熱を灯室内に放熱する。また、ヒートシンク25にリフレクタ23が取り付けられている。
【0021】
ホルダ24は、ヒートシンク25と投影レンズ21との間に設けられている。ホルダ24にヒートシンク25および投影レンズ21が取り付けられている。ホルダ24の上面は、光軸Axに沿った水平面とされている。
【0022】
また、ホルダ24の上面のうち、投影レンズ21と光源22との間には、シェード26が形成されている。より具体的には、シェード26は後方側焦点Fの近傍に設けられている。シェード26の前端部は、ホルダ24の上面と前面(第二反射面40)の稜線として形成されている。この稜線の形状は、後述するロービーム配光パターンのカットオフラインに対応する形状とされている。また、この稜線は車両用前照灯100の左右方向(図1の紙面垂直方向)に沿って後方側に凹むように湾曲している。
【0023】
光源22から出射した直接光は、リフレクタ23によって投影レンズ21に向けて反射される。このリフレクタ23からの反射光の一部は、シェード26によって遮られ、ロービーム配光パターンのカットオフラインを形成する。
【0024】
(第一反射面)
リフレクタ23よりも前方には、リフレクタ23と一体的に第一反射面30が形成されている。この第一反射面30は、光源22からの直接光の一部をシェード26の前方へ向けて下方に反射させる。第一反射面30は、リフレクタ23の先端に設けられた後方側第一反射面31と、後方側第一反射面31よりも前方に設けられた前方側第一反射面32とを備えている。
【0025】
後方側第一反射面31は、第一焦点が光源22、第二焦点が第二反射面40の近傍に設定された、楕円面を基調とする曲面である。また、前方側第一反射面32も、第一焦点が光源22、第二焦点が第二反射面40の近傍に設定された、楕円面を基調とする曲面である。前方側第一反射面32の第二焦点は、後方側第一反射面31の第二焦点よりも前方側に位置するように設定されている。
【0026】
リフレクタ23も楕円曲面であり、後方側第一反射面31も楕円曲面であり、それぞれの焦点位置は異なっている。このため、後方側第一反射面31とリフレクタ23とを隣接させて形成すると、段差が生じてしまう。そこで本実施形態においては、後方側第一反射面31とリフレクタ23とは、接続面33を介して接続されている。この接続面33は傾斜面とされている。接続面33の傾斜角度は、光源22からの直接光が接続面33に入射しない角度に設定されている。
【0027】
(第二反射面)
シェード26の前方側かつ投影レンズ21の後方側焦点Fより下方側には、第二反射面40が設けられている。第二反射面40は、第一反射面30からの反射光を投影レンズ21に向けて反射させる。この第二反射面40は、シェード26の下方かつ前方に延びるホルダ24の前面に、シェード26から連続するように形成されている。第二反射面40は、図示したように垂直断面において光軸Axから凹んだ曲線形状に形成されている。
【0028】
第二反射面40は、シェード26に隣接して形成された上方側第二反射面41と、上方側第二反射面41より下方かつ前方に形成された下方側第二反射面42を有している。
【0029】
図2は、シェード26の上面図である。図2に示したように第二反射面40は、水平方向において、後方に向かって凹んだ曲面形状とされている。この第二反射面40の曲面は、左右方向に沿って湾曲して延びるシェード26の前端部(稜線)の形状に対応する形状とされている。これにより、第二反射面40がシェード26に沿った形状となっているので、車両用前照灯100を前方から見たときの見栄えがよい。
【0030】
<作用>
次に、上述のように構成される車両用前照灯100における光の経路を説明する。図3は灯具ユニット20を拡大して示す図1の部分拡大図である。
図3に示したように、光源22から出射した直接光のうち、リフレクタ23で反射された光L1は投影レンズ21に向けて反射される。光L1は後方側焦点Fを通過し、投影レンズ21から灯具前方に向かって出射され、灯具前方にロービーム配光パターンを形成する。このときリフレクタ23の反射光L1の一部がシェード26によって遮られることにより、ロービーム配光パターン中にカットオフラインが形成される。
【0031】
光源22から出射した直接光のうち、第一反射面30に入射した光L2,L3は、第二反射面40に向けて反射される。第二反射面40は、この光L2,L3を投影レンズ21に向けて反射させる。投影レンズ21から灯具前方に向かって上向きに照射されるL2,L3が、OHS配光パターンを形成する。
【0032】
次に、より詳しく光L2,L3の経路を説明する。
光源22から出射した直接光のうち、光源22に近い側の後方側第一反射面31に入射した光L2は、後方側第一反射面31によって上方側第二反射面41に向けて反射される。上方側第二反射面41はこの光L2を投影レンズ21に向けて反射し、投影レンズ21は光L2を灯具前方に向かって上向きに出射する。
【0033】
光源22から出射した直接光のうち、光源22から遠い側の前方側第一反射面32に入射した光L3は、前方側第一反射面32によって下方側第二反射面42に向けて反射される。下方側第二反射面42はこの光L3を投影レンズ21に向けて反射し、投影レンズ21は光L3を灯具前方に向かって上向きに出射する。
【0034】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、第一反射面30および第二反射面40は、投影レンズ21を介して光L2,L3を灯具前方に照射するとき、光L3が光L2よりも上方を照らすように設定されている。すなわち、前方側第一反射面32から第二反射面40に入射して第二反射面40で反射された反射光L3は、後方側第一反射面31から第二反射面40に入射して第二反射面40で反射された反射光L2よりも、上方を照らすように照射される。
【0035】
なお、図3に示したように、リフレクタ23、後方側第一反射面31および前方側第一反射面32は、この順で光源22に近い場所に位置している。光源22から出射される直接光は放射状に広がるため、光源22から遠ざかるほどその光の強度が低下する。このため、リフレクタ23の反射光L1の光の強度が最も大きく、前方側第一反射面32の反射光L3の光の強度が最も小さい。後方側第一反射面31の反射光L2の光の強度は、反射光L1の光の強度よりも小さく、反射光L3の光の強度よりも大きくなる。
【0036】
図4は、第一反射面30および第二反射面40近傍を拡大して示した図3の部分拡大図である。図4において、符号FAは、投影レンズ21の後方側焦点Fを通って投影レンズ21の光軸Axに垂直な焦点面である。投影レンズ21は、焦点面FA上に形成される像を、上下左右を反転して灯具前方に投影する。すなわち、投影レンズ21は、焦点面FA上で光軸Axより下方に位置する点から発せられた光を、灯具の前方に光軸Axより上方に出射させる。また、この点が下方に位置するほど、投影レンズ21は該点から発せられた光を灯具前方の上方に照射する。
【0037】
ここで、上方側第二反射面41からの反射光L2を焦点面FA上まで延長した線分が焦点面FAと交わる交点をP2とする。さらに下方側第二反射面42からの反射光L3を焦点面FA上まで延長した線分が焦点面FAと交わる交点をP3とする。
すると本実施形態に係る車両用前照灯100においては、図4に示したように、交点P2,P3ともに光軸Axよりも下方に位置されている。このため、反射光L2,L3は灯具前方において光軸Axよりも上方を照らす。また、交点P3は交点P2よりも下方に位置されている。このため、反射光L3は、投影レンズ21を介して灯具前方に照射されると、反射光L2よりも上方を照らす。
【0038】
上述したように、本実施形態に係る車両用前照灯100は、反射光L1によりロービーム配光パターン、反射光L2,L3によりOHS配光パターンを形成する。
図5は、本実施形態に係る車両用前照灯100が形成する配光パターンを示す模式図である。図5は、灯具の25m前方に設けられた鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを灯具側から観察した図である。
【0039】
図5に示すように、灯具前方の最も下方には、リフレクタ23からの反射光L1によって、カットオフラインCLを備えたロービーム配光パターンLoが形成される。このロービーム配光パターンLoの上方に、第二反射面40からの反射光L2,L3によってOHS配光パターンOが形成される。なお、図5では互いの配光パターンLo,Oそれぞれ離間して描かれているが、それぞれの配光パターンLo,O特定の照度以上の領域を囲んで描いたものであり、実際にはそれぞれが連続しているように見える。
【0040】
このOHS配光パターンOは、上側OHS配光パターンOUと、上側OHS配光パターンOUよりも下方に位置する下側OHS配光パターンOLとから構成されている。
上側OHS配光パターンOUは、第二反射面40からの反射光L2,L3のうち、反射光L2より上方に向けて照射される反射光L3によって形成される。下側OHS配光パターンOLは第二反射面40からの反射光L2,L3のうち、反射光L3より下方に向けて照射される反射光L2によって形成される。
【0041】
ここで先述したように、リフレクタ23の反射光L1の光の強度が最も大きく、前方側第一反射面32の反射光L3の光の強度が最も小さく、後方側第一反射面31の反射光L2の光の強度は両者の中間である。このため、灯具前方に形成される配光パターンについて、ロービーム配光パターンLoの照度が最も大きく、上側OHS配光パターンOUの照度が最も小さく、下側OHS配光パターンOLの照度が両者の中間である。
【0042】
すなわち、ロービーム配光パターンLoとOHS配光パターンOとを含む全体の配光パターンの照度は、下方から上方にかけて順に低下していく。このため上下に隣接する配光パターンの境界、つまり、ロービーム配光パターンLoと下側OHS配光パターンOLとの境界、あるいは、下側OHS配光パターンOLと上側OHS配光パターンとの境界において、大きな照度変化が生じない。
【0043】
これとは異なり、特許文献1に記載の車両用灯具では、前方側第一反射面は光源からの直接光を上方側第二反射面に向けて反射し、さらに、上方側第二反射面はこの光を反射してOHS配光パターンの下部を形成している。また、後方側第一反射面は光源からの直接光を下方側第二反射面に向けて反射し、さらに、下方側第二反射面はこの光を、上方側第二反射面による反射光よりも上方に反射させ、OHS配光パターンの上部を形成している。
このため、特許文献1の車両用灯具では、最も明るいロービーム配光パターンに隣接するの上方の領域に、最も暗い前方側第一反射面からの反射光が照射されてしまう。このため、ロービーム配光パターンのすぐ上方に大きな照度変化が生じてしまい、ロービーム配光パターンのすぐ上方の領域は、視認性が悪かった。また、最も上方の領域と最も下方の領域が明るく、その中間の領域が暗く、不自然な見え方となっていた。
【0044】
本実施形態に係る車両用前照灯100によれば、ロービーム配光パターンLoに隣接する上方の領域に、後方側第一反射面31からの反射光L2を照射している。このため、その境界における照度変化が緩やかであり、ロービーム配光パターンLoに隣接する上方領域の視認性が高い。
【0045】
また、車両用前照灯100が形成する配光パターンの全体についても、下方から上方に向かって照度が低下するので、運転者に違和感を与えない自然な見え方となる。
【0046】
ところで、前述したように、焦点面FA上に形成される像が、投影レンズ21によって上下左右反転されて灯具の前方に投影される。このため、下側OHS配光パターンOLを形成する反射光L2と焦点面FAとの交点P2が光軸Axに近いほど、下側OHS配光パターンOLの中心位置がロービーム配光パターンLoに近くなる。
本実施形態に係る車両用前照灯100によれば、図4に示したように、第二反射面40はシェード26と連続するように形成されている。このため、後方側第一反射面31からの反射光L2を、第二反射面40のうちのシェード26に近い位置に入射させることができる。すると交点P2を光軸Axに近づけることができ、下側OHS配光パターンOLをロービーム配光パターンLoの近くに形成することができる。これにより、ロービーム配光パターンLoと下側OHS配光パターンOLとが連続的に見え、また、ロービーム配光パターンLoに隣接する上方の領域とロービーム配光パターンLoとの照度差が小さくなり、視認性が向上する。
【0047】
さらに本実施形態に係る車両用前照灯100によれば、第二反射面40が、上方側第二反射面41と下方側第二反射面42とを備えている。それぞれを独立した反射面として形成することにより、上方側第二反射面41の反射光L2で形成する下側OHS配光パターンOL、および下方側第二反射面42の反射光L3で形成する上側OHS配光パターンOUの形成位置を制御しやすくされている。
【0048】
さらに本実施形態に係る車両用前照灯100によれば、上方側第二反射面41は、後方側第一反射面31からの反射光L2を反射し、下方側第二反射面42は、前方側第一反射面32からの反射光L3を反射する。それぞれの反射面31,32,41,42をそれぞれ独立して設計することができるため、設計の自由度が高い。また、後方側第一反射面31からの反射光L2を上方側第二反射面41に入射させる構成としたので、後方側第一反射面31を光軸Axに対して急な角度で形成する必要が無く、効率よく上方側第二反射面41に光を入射させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る車両用前照灯100によれば、第二反射面40はシェード26に沿った凹面形状とされている。これにより、第二反射面40とシェード26とが統一感のあるデザインとなり、車両用前照灯100を前方から見たときの見栄えがよい。
【0050】
また、本実施形態に係る車両用前照灯100によれば、後方側第一反射面31とリフレクタ23との接続面33は、光源22からの直射光が入射しない形状とされている。これにより、接続面33には光源22からの直接光が入射しないため、接続面33に入射した光によって対向車の運転者などに意図せずグレアなどを与えることがない。
特に後方側第一反射面31をリフレクタ23よりも窪んだ形状とする場合に大きな段差が生じやすい。しかし、光源22からの直接光が入射しない接続面33で後方側第一反射面31とリフレクタ23とを接続したことにより、対向車の運転者などにグレアを与えることがない。
【0051】
なお、本発明の車両用前照灯は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【0052】
例えば、上述した実施形態においては、第一反射面30をリフレクタ23と一体的に形成した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。第一反射面30を、リフレクタ23とは別体の部材により構成してもよい。
【0053】
また図5では自車両が左側を走行する地域において形成する配光パターンを図示して説明したが、自車両が右側を走行する地域においては図5を左右逆転させた配光パターンを形成するように、本発明に係る車両用前照灯を構成してもよい。
【0054】
また図5ではOHS配光パターンOの形状が中心線Vから左右方向に広がり、OHS配光パターンが車両前方の全域に亘って形成される例を挙げて説明したが、これに限られない。例えば中心線Vの左側部分や、中心線Vの右側部分など、特定の領域を照射するようにOHS配光パターンを形成してもよい。この場合、例えば、左右方向について光軸Axより他車線側(自車線側の配光を形成する部位)のみに第二反射面40を形成すると、自車線側配光(左側部分)の上方部のみにOHS配光パターンOを形成することができる。
【符号の説明】
【0055】
11:アウタカバー
12:ランプボディ
20:灯具ユニット
21:投影レンズ
22:光源
23:リフレクタ
24:ホルダ
25:ヒートシンク
26:シェード
30:第一反射面
31:後方側第一反射面
32:前方側第一反射面
33:接続面
40:第二反射面
41:上方側第二反射面
42:下方側第二反射面
Lo:ロービーム配光パターン
O:OHS配光パターン
OL:下側OHS配光パターン
OU:上側OHS配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5