(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154174
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20170619BHJP
B65D 47/42 20060101ALI20170619BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
B65D83/00 J
B65D47/42 300
A61M35/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-78316(P2013-78316)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-201332(P2014-201332A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190068
【氏名又は名称】伸晃化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】多田 香織
(72)【発明者】
【氏名】山田 秀樹
【審査官】
小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−178421(JP,A)
【文献】
特開2005−186997(JP,A)
【文献】
特開2009−292507(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0014625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
A61M 35/00
B65D 47/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、該容器の口部に装着する中栓と、該中栓の上部の保持部に保持する塗布体とを備えてなり、前記保持部は、前記容器内に連通する連通孔を底面に形成するとともに、中間部を外側に滑らかに膨出させて上端部の内径を下端部の内径より小さくし、前記塗布体は、前記保持部に水平回転可能、上下移動可能に収納して抜止めする膨出部と、前記保持部の上方に突出する塗布部とを一体に形成し、前記容器を倒立させ、前記塗布部を皮膚に押し付けて全体を皮膚に沿って移動させると、前記保持部内の前記膨出部が上昇して傾き、前記塗布部の外面に沿って薬液が流下して皮膚に塗布することができることを特徴とする塗布容器。
【請求項2】
前記塗布体は、軸対称の前記膨出部の外面と、軸対称の前記保持部の内面との間に隙間を形成することを特徴とする請求項1記載の塗布容器。
【請求項3】
前記中栓は、前記保持部の底面にリング状のシールリブを形成し、該シールリブは、前記連通孔を内側に含み、前記塗布体の下面に対応することを特徴とする請求項1または請求項2記載の塗布容器。
【請求項4】
前記容器には、前記中栓、塗布体を覆う着脱可能なキャップを付設し、該キャップは、閉状態において、前記中栓上の前記塗布体をセンタリングして下向きに押圧することを特徴とする請求項3記載の塗布容器。
【請求項5】
前記中栓は、上向きのガイド筒を前記保持部の底面の中心部に形成し、前記塗布体は、前記ガイド筒内に垂下する下向きのガイドロッドを形成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の塗布容器。
【請求項6】
前記中栓は、上向きのガイドロッドを前記保持部の底面の中心部に立設し、前記塗布体は、前記ガイドロッドを挿入する下向きのガイド筒を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば水虫薬、湿疹薬、養毛剤などの薬液を皮膚に塗布して施用するための塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布容器は、スポンジ状の塗布体を用いる形式の他、塗布ボールを用いる形式が知られている(たとえば特許文献1)。
【0003】
塗布ボールを用いる塗布容器は、容器の口部に装着する中栓と、中栓の保持筒を介して保持する塗布ボールとを備えている。塗布ボールの下側の一部は、中栓に形成する連通孔を介して容器の内部に露出しており、塗布ボールの上側の一部は、保持筒の上方に突出している。塗布ボールは、保持筒内において、自在に回転可能であり、しかも上下に僅かに相対移動可能である。そこで、容器を倒立させ、塗布ボールを皮膚に押し付けて移動させると、塗布ボールが上下方向に回転して容器内の薬液を皮膚に連続的に塗布することができる。なお、塗布ボールは、スポンジ状の塗布体のような多孔性でないから、有害な目詰りを生じるおそれがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−186997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、塗布ボールは、皮膚に接触した表面が上下方向の回転により容器内の薬液に直接接することになるため、容器内の薬液が汚染されてしまうおそれがあるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、上下方向に回転することがない塗布体を採用することによって、塗布ボールの利点を喪失することなく、容器内の薬液を汚染するおそれがない塗布容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、容器と、容器の口部に装着する中栓と、中栓の上部の保持部に保持する塗布体とを備えてなり、保持部は、容器内に連通する連通孔を底面に形成するとともに、中間部を外側に滑らかに膨出させて上端部の内径を下端部の内径より小さくし、塗布体は、保持部に水平回転可能、上下移動可能に収納して抜止めする膨出部と、保持部の上方に突出する塗布部とを一体に形成し、容器を倒立させ、塗布部を皮膚に押し付けて全体を皮膚に沿って移動させると、保持部内の膨出部が上昇して傾き、塗布部の外面に沿って薬液が流下して皮膚に塗布することができることをその要旨とする。
【0008】
なお、塗布体は、軸対称の膨出部の外面と、軸対称の保持部の内面との間に隙間を形成することができる。
【0009】
また、中栓は、保持部の底面にリング状のシールリブを形成し、シールリブは、連通孔を内側に含み、塗布体の下面に対応してもよく、容器には、中栓、塗布体を覆う着脱可能なキャップを付設し、キャップは、閉状態において、中栓上の塗布体をセンタリングして下向きに押圧してもよい。
【0010】
さらに、中栓は、上向きのガイド筒を保持部の底面の中心部に形成し、塗布体は、ガイド筒内に垂下する下向きのガイドロッドを形成してもよく、中栓は、上向きのガイドロッドを保持部の底面の中心部に立設し、塗布体は、ガイドロッドを挿入する下向きのガイド筒を形成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
かかる発明の構成によるときは、塗布体は、中栓の保持部に膨出部を水平回転可能かつ上下移動可能に収納して保持され、保持部の上方に塗布部を突出させている。また、保持部の底面には、容器内に連通する連通孔が形成されている。そこで、容器を倒立させると、容器内の薬液が保持部内の膨出部の内外に流出し、その後、塗布部を皮膚に押し付けてそのまま全体を移動させると、膨出部が上昇して傾くことにより薬液が塗布部に沿って流下し、塗布部を介して薬液を皮膚に連続的に塗布することができる。なお、このようにして薬液を塗布するとき、塗布体は、水平回転することがあっても上下方向に回転することがなく、したがって、容器内の薬液を汚染したり、毛髪などの体毛を巻き込んだりするおそれがない。また、塗布体は、スポンジ状の多孔性とする必要がないため、目詰りを生じるおそれもない。
【0012】
塗布体は、軸対称の膨出部の外面と、軸対称の保持部の内面との間に隙間を形成することにより、膨出部を保持部に水平回転可能かつ上下移動可能に収納して保持することができる。なお、膨出部と一体の塗布部は、たとえばドーム状、棒状などの他、任意の形態に形成可能である。
【0013】
中栓の保持部の底面に形成するリング状のシールリブは、連通孔を内側に含み、塗布体の下面に対応することにより、容器の正立状態において、塗布体を介して容器の内外を区分して分離し、連通孔を通して容器の外部に流出した薬液が容器内に戻ることを阻止して容器内の薬液の汚染のおそれを一層少なくすることができる。また、容器に付設するキャップは、閉状態において、中栓上の塗布体をセンタリングして下向きに押圧することにより、塗布体とシールリブとを介して容器を確実に密封することができる。
【0014】
中栓側の上向きのガイド筒は、塗布体を中栓と一体に組み立てる際に、塗布体側のガイドロッドを挿入することにより、中栓と塗布体との相対位置を適切に規制し、両者の組立工程を容易にすることができる。ただし、中栓側に上向きのガイドロッドを形成し、塗布体側に下向きのガイド筒を形成しても、同等に作用させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0017】
塗布容器は、容器10、中栓20、塗布体30を備えてなる(
図1、
図2)。なお、容器10には、ねじ式のキャップ40が付設されている。
【0018】
容器10は、有底円筒状の胴部11の上端に上向きの口部12を形成して構成されている。口部12の外周には、キャップ40の着脱用の雄ねじ13が形成されており、口部12の上端外周には、リング状の係合突条14が形成されている。なお、胴部11の全体形状は、円筒状以外の任意の形態であってもよい。
【0019】
中栓20は、下向きのスカート部21、係合部22と、上向きの保持部23、ガイド筒24とを一体に軸対称に形成して構成されている。スカート部21は、外周下半部を滑らかに縮径して容器10の口部12に圧入可能である。また、スカート部21より短い大径の係合部22の下端内周には、容器10側の係合突条14に対応する内向きのリング状の係合突条22aが形成されている。中栓20は、スカート部21を容器10の口部12に圧入し、係合突条22a、14を係合させて抜止めすることができる。
【0020】
上向きの保持部23は、中間部が外側に滑らかに膨出するとともに、上端部の内径が下端部の内径より僅かに小径になるように径方向に滑らかに絞られている。また、上向きのガイド筒24は、保持部23の底面の中心部において、保持部23の底面を形成する基板25の下方にまで延長され、全体として有底円筒状に仕上げられている。ガイド筒24の上端は、保持部23の上端より低く、内周上端部は、テーパ状に開拡されている。また、ガイド筒24の内部の全体形状は、下向きに僅かにテーパ状に縮径するコップ状である。
【0021】
保持部23の底面には、円弧状に湾曲する長孔状の連通孔26、26…がガイド筒24の外側に円形に等配して配列されている(
図2、
図3)。各連通孔26は、基板25を上下に貫通しており、中栓20を容器10の口部12に装着すると、容器10の内部に連通する。ただし、
図3(A)〜(D)は、それぞれ中栓20の半断面正面図、上面図、下面図、同図(A)の要部拡大図である。
【0022】
保持部23の底面には、リング状のシールリブ27が形成されている。シールリブ27は、断面山形に形成され、連通孔26、26…を内側に含むようにして、ガイド筒24と同心円状に配列されている。
【0023】
塗布体30は、軸対称の膨出部31の上方にドーム状の塗布部32を一体に形成し(
図1、
図2)、塗布部32の頂部下面の中央部からガイドロッド33を軸方向に垂設して構成されている。膨出部31の外形は、中栓20の保持部23の内面の形状に対し、ほぼ相似形にして僅かに小さく形成されている。また、膨出部31、塗布部32の内部は、ガイドロッド33用の下端開放の空洞部34となっている。ガイドロッド33は、下向きに僅かにテーパ状に縮径されている。
【0024】
塗布体30は、膨出部31、保持部23の双方を弾性変形させながら膨出部31を保持部23に強制的に押し込むことにより、膨出部31を保持部23に収納して抜止めすることができる(
図2、
図4の二点鎖線)。なお、このとき、塗布部32は、保持部23の上方に突出する。また、膨出部31を保持部23に収納するに際し、塗布体30のガイドロッド33は、中栓20のガイド筒24に挿入され、中栓20に対して塗布体30を正しく位置決めしてガイドすることができる。ただし、中栓20は、たとえばポリエチレンのような適切な弾性のプラスチック材料により一体成形されており、塗布体30は、たとえばポリプロピレンのようなプラスチック材料の他、熱伝導性の金属材料、複合材料などにより一体成形されている。
【0025】
また、このようにして塗布体30を中栓20に組み合わせると、軸対称の膨出部31の外面と、軸対称の保持部23の内面との間にほぼ一様な隙間Gが形成され、膨出部31は、保持部23内において、水平回転可能かつ上下移動可能である。なお、膨出部31の環状の下面は、保持部23の底面のシールリブ27上に着地し、したがって、シールリブ27は、塗布体30の下面に対応している。また、ガイドロッド33は、ほぼ全長がガイド筒24内に垂下し、保持部23の底面から突出するガイド筒24の上半部は、膨出部31、塗布部32内の空洞部34に収納される。
【0026】
キャップ40は、容器10に装着することにより、中栓20、塗布体30を覆うことができる(
図1、
図2)。
【0027】
キャップ40は、下半部のスカート部41の上方をドーム状の頂部42によって閉じている。下向きに僅かに開拡するスカート部41の外面には、下端のリング状の突条41bの上方に縦方向の滑り止め41a、41a…が形成されており、各滑り止め41aは、内側に僅かに湾曲する浅い樋状に形成されている。スカート部41の内面には、容器10側の雄ねじ13に適合する雌ねじ43が形成されている。また、頂部42の内面には、中間の水平の段部42aの上下に、それぞれ塗布体30の塗布部32、中栓20の保持部23の外面に斜めに摺接する斜面部42b、42cが形成されている。ただし、段部42aは、キャップ40の装着工程の終了時点において、中栓20の保持部23の上端面の直近上方に位置し、斜面部42b、42cは、塗布部32、保持部23の外面を押圧してキャップ40のねじ込み限界を規定するものとする。
【0028】
そこで、キャップ40は、雄ねじ13、雌ねじ43を介して容器10の口部12に装着すると、斜面部42bを介して塗布体30をセンタリングして下向きに押圧し、中栓20のシールリブ27を介して連通孔26、26…の外側をシールし、容器10の口部12を封止することができる。なお、キャップ40、容器10は、それぞれたとえばポリプロピレンなどのプラスチック材料により一体成形されている。
【0029】
かかる塗布容器の作動は、次のとおりである。
【0030】
全体を正立状態にして、容器10からキャップ40を取り外すと、中栓20上の塗布体30は、自重によりシールリブ27上に正しく着地し、シールリブ27を介して容器10の封止状態を維持することができる。
【0031】
そこで、全体を皮膚Fから離して倒立させると(
図5(A))、塗布体30は、自重により中栓20の保持部23内で下降し、保持部23内の隙間Gの下端を塞ぐ。このとき、連通孔26、26…を介して容器10内の薬液が保持部23内の膨出部31の内外に流下するが、保持部23の外部に垂れることがない。
【0032】
つづいて、塗布体30の塗布部32を皮膚Fに押し付け(
図5(B))、皮膚Fに沿って全体を移動させると(同図の矢印方向)、保持部23内の膨出部31が上昇して傾くことにより保持部23内の隙間Gの下端が開き、塗布部32の外面に沿って薬液が流下する。そこで、塗布部32を介して薬液を皮膚Fに塗布することができる。
【0033】
また、全体を倒立させたまま皮膚Fに押し付けると(
図6の矢印方向)、塗布体30が上昇し、中栓20のシールリブ27を介して連通孔26、26…を封止するため、容器10からの薬液が皮膚F上に過大に流出することがない。
【0034】
塗布体30は、ガイドロッド33を省略するとともに、空洞部34に代えて下向きのガイド筒35を形成し(
図7(A)、(B))、中栓20は、ガイド筒35に挿入する上向きのガイドロッド28を保持部23の底面の中心部に立設することができる。なお、ガイド筒35、ガイドロッド28の頂部は、それぞれドーム状に形成してもよく(
図7(A))、水平の平面状に形成してもよい(同図(B))。
【0035】
また、塗布体30の塗布部32は、ドーム状とするに代えて、単一の長い棒状としてもよく(
図7(B))、膨出部31の平板状の上面に立設する短い棒状の複数本の集合体としてもよい(同図(C))。
図7(B)の塗布部32は、たとえば足指の間などの狭少な部位に薬液を塗布する用途に好適であり、同図(C)の塗布部32、32…は、皮膚Fに押し付けて薬液を塗布する際に、一種のマッサージ効果や指圧効果を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、水虫薬、湿疹薬、養毛剤などの皮膚に塗布して施用する薬液の塗布用として好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
G…隙間
10…容器
12…口部
20…中栓
23…保持部
24…ガイド筒
26…連通孔
27…シールリブ
28…ガイドロッド
30…塗布体
31…膨出部
32…塗布部
33…ガイドロッド
35…ガイド筒
40…キャップ
特許出願人 伸晃化学株式会社