【実施例】
【0029】
(実施例1)
1.塗料組成物の製造
樹脂固形分35質量%の数平均分子量が18000でガラス転移温度が60℃のポリエステル樹脂のシクロヘキサノンおよびキシレンの質量比が1:1の混合溶液(荒川化学工業株式会社製KA−2092C−47)200質量部(樹脂固形分70質量部)と、硬化剤として41質量%のブチルエーテル化フェノール樹脂のブチルセロソルブおよびノルマルブタノールの質量比が1:1の混合溶液(昭和電工株式会社製CKS−3898)50質量部(樹脂固形分20.5質量部)と、触媒として2−エチルヘキサン酸スズ(日本化学産業株式会社製ニッカオクチックス錫)1質量部とを添加して混合し、固形分が30質量%になるまでシクロヘキサノンおよびキシレンの質量比が1:1の混合溶剤を添加混合して塗料組成物を得た。
【0030】
2.塗装金属板の製造
厚さ0.25mmのブリキ板の一主面上に上記で得られた塗料組成物を厚さが8μmとなるようにバーコータで塗布し、250℃で30秒間加熱することにより焼き付けて塗装金属板を得た。
【0031】
3.塗装金属板および塗料組成物の評価
上記で得られた塗装金属板の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性、耐レトルト性および経時安定性、ならびに上記で得られた塗料組成物の経時安定性を以下のようにして評価した。
【0032】
塗装金属板の塗膜の硬化性は、JIS K5600−3−3:1999に基づいて、塗装表面に2ポンドハンマーにメチルエチルケトンを浸したガーゼ(白十字株式会社製ガーゼ)を16枚重ねにしたものを当てて往復50回擦った。その後の塗装表面の状態を観察し、塗膜にキズがなく光沢に変化が無かったものを良、塗膜に細かなキズが生じ光沢が低下したものを可、塗膜が溶解し下地の金属板が露出したものを不可、と評価した。
【0033】
塗装金属板の塗膜の密着性は、JIS K5600−5−6:1999に基づいて、塗装表面を1mm角の碁盤目状にカッターナイフで傷をつけて粘着テープで剥離試験を行ない、剥離箇所が無かったものを良、剥離箇所が10%未満であったものを可、剥離箇所が10%以上であったものを不可、と評価した。
【0034】
塗装金属板の塗膜の耐衝撃性は、JIS K5600−5−3:1999に基づいて、デュポン式により衝撃試験を行ない、塗膜に割れやクラックが見られないものを良、塗膜割れはないがわずかにクラックが見られるものを可、塗膜に割れが見られるものを不可、と評価した。
【0035】
塗装金属板の塗膜の耐レトルト性は、JIS K5600−6−2:1999に基づいて、130℃の加圧水蒸気雰囲気下30分間経過後における塗膜の白化の程度を観察し、異常がないものを良、わずかに白化がみられるものを可、白化がみられるものを不可、と評価した。
【0036】
塗装金属板の塗膜の経時安定性は、上記で得られた塗装金属板を、38℃の恒温槽中で2ヵ月間放置した後、放置後の塗装金属板の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性の4つの特性を、上記と同様にして評価して、これらの4つの特性の放置前の評価と放置後の評価とを比較して、評価ランクの延べ変化数が0のもの(すなわち、評価ランクが変化しなかったもの)を良、評価ランクの延べ変化数が1のものを可、評価ランクの延べ変化数が2以上のものを不可、と評価した。ここで、評価ランクの延べ変化数とは、上記4つの特性について、良、可、および不可の評価ランクが変化した数の延べ数をいう。すなわち、いずれかの特性において、評価ランクがそのままのものを変化数が0、評価ランクが良から可または可から不可に変化したものを変化数が1、評価ランクが良から不可に変化したものを変化数が2として、これらの変化数の上記4つの特性値についての延べ数をいう。
【0037】
塗料組成物の経時安定性は、JIS K5600−2−2:1999に基づいて、フローカップNo.4を用いた25℃におけるフローカップ粘度が60秒になるように塗料組成物をシクロヘキサンおよびキシレンの質量比が1:1の混合溶剤で希釈した塗料溶液をガラス瓶に入れて密封し、38℃の恒温槽中に3ヶ月間保存した後開封して再度フローカップ粘度を測定して、保存前後における粘度の変化が10秒以内のものを良、10秒を超え30秒以内のものを可、30秒を超えるものを不可、と評価した。
【0038】
実施例1の塗装金属板の上記放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性、塗装金属板の塗膜の経時安定性、ならびに塗料組成物の経時安定性の評価結果を表1にまとめた。表1に示すように、実施例1の塗装金属板の上記の放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性はいずれも良であった。したがって、実施例1の塗装金属板の塗膜の経時安定性は良であった。また、実施例1の塗料組成物の経時安定性も良であった。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例2)
1.塗料組成物の製造
触媒として2−エチルヘキサン酸亜鉛(日本化学産業株式会社製ニッカオクチックス亜鉛)1質量部を添加したこと以外は実施例1と同様にして塗料組成物を得た。
【0041】
2.塗装金属板の製造
上記の塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、塗装金属板を得た。
【0042】
3.塗装金属板および塗料組成物の評価
実施例2の塗装金属板の上記放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性、塗装金属板の塗膜の経時安定性、ならびに塗料組成物の経時安定性の評価結果を表1にまとめた。表1に示すように、実施例2の塗装金属板の上記の放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性はいずれも良であった。したがって、実施例2の塗装金属板の塗膜の経時安定性は良であった。また、実施例2の塗料組成物の経時安定性も良であった。
【0043】
(実施例3)
1.塗料組成物の製造
ポリエステル樹脂溶液として数平均分子量が23000でガラス転移温度が47℃のポリエステル樹脂(東洋紡株式会社製バイロンRV−103)70質量部を、シクロヘキサノン130質量部に溶解したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして塗料組成物を得た。
【0044】
2.塗装金属板の製造
上記の塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、塗装金属板を得た。
【0045】
3.塗装金属板および塗料組成物の評価
実施例3の塗装金属板の上記放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性、塗装金属板の塗膜の経時安定性、ならびに塗料組成物の経時安定性の評価結果を表1にまとめた。表1に示すように、実施例3の塗装金属板の上記の放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性はいずれも良であった。したがって、実施例3の塗装金属板の塗膜の経時安定性は良であった。また、実施例3の塗料組成物の経時安定性も良であった。
【0046】
(実施例4)
1.塗料組成物の製造
ポリエステル樹脂溶液として数平均分子量が18000でガラス転移温度が70℃のポリエステル樹脂(エボニック・デグサ株式会社製ダイナポールL952)70質量部を、シクロヘキサノン130質量部に溶解したものを用いたこと以外は実施例2と同様にして塗料組成物を得た。
【0047】
2.塗装金属板の製造
上記の塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、塗装金属板を得た。
【0048】
3.塗装金属板および塗料組成物の評価
実施例4の塗装金属板の上記放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性、塗装金属板の塗膜の経時安定性、ならびに塗料組成物の経時安定性の評価結果を表1にまとめた。表1に示すように、実施例4の塗装金属板の上記の放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性はいずれも良であった。したがって、実施例4の塗装金属板の塗膜の経時安定性は良であった。また、実施例4の塗料組成物の経時安定性も良であった。
【0049】
(実施例5)
1.塗料組成物の製造
硬化剤としてベンゾグアナミン(日本サイテックインダストリーズ株式会社製M−136)26.6質量部(樹脂固形分20.5質量部)を添加したこと、および触媒として2−エチルヘキサン酸スズ(日本化学産業株式会社製ニッカオクチックス錫)1質量部を添加したこと以外は、実施例4と同様にして塗料組成物を得た。
【0050】
2.塗装金属板の製造
上記の塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、塗装金属板を得た。
【0051】
3.塗装金属板および塗料組成物の評価
実施例5の塗装金属板の上記放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性、塗装金属板の塗膜の経時安定性、ならびに塗料組成物の経時安定性の評価結果を表1にまとめた。表1に示すように、実施例5の塗装金属板の上記の放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性はいずれも良であった。したがって、実施例5の塗装金属板の塗膜の経時安定性は良であった。また、実施例5の塗料組成物の経時安定性も良であった。
【0052】
(実施例6)
1.塗料組成物の製造
ポリエステル樹脂溶液として数平均分子量が17000でガラス転移温度が16℃のポリエステル樹脂(東洋紡株式会社製バイロンGK−330)70質量部を、シクロヘキサノン130質量部に溶解したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして塗料組成物を得た。
【0053】
2.塗装金属板の製造
上記の塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、塗装金属板を得た。
【0054】
3.塗装金属板および塗料組成物の評価
実施例6の塗装金属板の上記放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性、塗装金属板の塗膜の経時安定性、ならびに塗料組成物の経時安定性の評価結果を表1にまとめた。表1に示すように、実施例6の塗装金属板の上記の放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性はいずれも良であった。したがって、実施例6の塗装金属板の塗膜の経時安定性は良であった。また、実施例6の塗料組成物の経時安定性も良であった。
【0055】
(比較例1)
1.塗料組成物の製造
触媒を添加しなかったこと以外は、実施例6と同様にして塗料組成物を得た。
【0056】
2.塗装金属板の製造
上記の塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、塗装金属板を得た。
【0057】
3.塗装金属板および塗料組成物の評価
比較例1の塗装金属板の上記放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性、塗装金属板の塗膜の経時安定性、ならびに塗料組成物の経時安定性の評価結果を表1にまとめた。表1に示すように、比較例1の塗装金属板の上記放置前の塗膜の硬化性は不可であり、密着性は良であり、耐衝撃性は可であり、耐レトルト性は不可であった。また、比較例1の塗装金属板の上記放置後の塗膜の硬化性は不可であり、密着性は良であり、耐衝撃性は不可であり、耐レトルト性は不可であった。したがって、比較例1の塗装金属板の塗膜の経時安定性は可であった。また、比較例1の塗料組成物の経時安定性は良であった。しかしながら、比較例1の塗料組成物は、塗膜の硬化性の評価が不可であることから、塗料として好ましくない。
【0058】
(比較例2)
1.塗料組成物の製造
触媒として85質量%のリン酸(三井化学株式会社製精製リン酸85%)0.59質量部(酸有効成分0.5質量部)を添加したこと以外は実施例4と同様にして塗料組成物を得た。
【0059】
2.塗装金属板の製造
上記の塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、塗装金属板を得た。
【0060】
3.塗装金属板および塗料組成物の評価
比較例2の塗装金属板の上記放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性、塗装金属板の塗膜の経時安定性、ならびに塗料組成物の経時安定性の評価結果を表1にまとめた。表1に示すように、比較例2の塗装金属板の上記放置前の塗膜の硬化性は良であり、密着性は良であり、耐衝撃性は良であり、耐レトルト性は可であった。また、比較例2の塗装金属板の上記放置後の塗膜の硬化性は良であり、密着性は良であり、耐衝撃性は不可であり、耐レトルト性は不可であった。したがって、比較例2の塗装金属板の塗膜の経時安定性は不可であった。また、比較例2の塗料組成物の経時安定性は不可であった。
【0061】
(比較例3)
1.塗料組成物の製造
触媒として40質量%のドデシルベンゼンスルホン酸(DIC株式会社製C−6000)1.25質量部(酸有効分0.5質量部)を添加したこと以外は実施例4と同様にして塗料組成物を得た。
【0062】
2.塗装金属板の製造
上記の塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、塗装金属板を得た。
【0063】
3.塗装金属板および塗料組成物の評価
比較例3の塗装金属板の上記放置前後の塗膜の硬化性、密着性、耐衝撃性および耐レトルト性、塗装金属板の塗膜の経時安定性、ならびに塗料組成物の経時安定性の評価結果を表1にまとめた。表1に示すように、比較例3の塗装金属板の上記放置前の塗膜の硬化性は良であり、密着性は良であり、耐衝撃性は良であり、耐レトルト性は良であった。また、比較例3の塗装金属板の上記放置後の塗膜の硬化性は良であり、密着性は可であり、耐衝撃性は不可であり、耐レトルト性は可であった。したがって、比較例3の塗装金属板の塗膜の経時安定性は不可であった。また、比較例3の塗料組成物の経時安定性は不可であった。
【0064】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。