(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の照明用LED電源回路において、前記全波整流器の各出力端と前記第1コンデンサの端子との間に挿入される前記コイルのインダクタンスが、3μH以上、100μH以下であることを特徴とする照明用LED電源回路。
請求項4記載の照明用LED電源回路において、前記全波整流器の各出力端と前記第1コンデンサの端子との間に挿入される前記抵抗の大きさが、1Ω以上、30Ω以下であることを特徴とする照明用LED電源回路。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDの光学性能が高くなってきており、LEDを用いた照明器具は寿命が長いなどの理由によって、従来の光源から置き換えられる状態にある。今後LEDの性能がますます向上していけば、さらに汎用の照明器具分野で採用されると考えられる。
【0003】
同時に、LED用の電源回路については、照明器具として高効率化を達成することが強く求められている。そのため、照明用LED電源回路には特にスイッチング素子を用いたスイッチング電源方式の定電流型が採用されてきており、今後もそのような傾向が続く可能性が高い。一般的な回路構成の例として、
図15に示すように、フィルタ回路2、全波整流器DB、DBの出力端間に接続された第1コンデンサC1、第1コンデンサの端子間電力の供給を受けるスイッチング電源回路部4、電源回路部4の出力端間に接続された第2コンデンサC2からなるものがある。LED素子列は、第2コンデンサC2とともに、スイッチング電源回路部4の出力端間に並列に接続されている。
【0004】
数十マイクロ秒(μsec)オーダーの変動
上記のスイッチング電源回路部を伴ったLED電源回路における課題として、LEDの「ちらつき」の問題がある。LEDは、電流又は電圧の極短時間での変動(高調波成分など)に敏感に反応する特性を有し、それがちらつきの原因の一つと考えられる。
【0005】
放電灯の点灯制御装置においても、ちらつき問題があり、様々な対策が講じられているが、LEDにおいては多少事情が異なっており、同様の対策では十分な解決が得られない場合がある。例えば、放電灯では、数ミリ秒〜数十ミリ秒のオーダーの変動に反応すると言われているが、LEDでは、数十マイクロ秒(μsec)オーダーの変動に反応し、放電灯と比べて、LEDでは100分の1程度の変動にも敏感に反応する。一般的な制御回路のスイッチング素子のオンオフ動作によれば、前者の数ミリ秒〜数十ミリ秒のオーダーの変動が照明負荷へ伝搬することを防止できる。しかし、後者の数十マイクロ秒オーダーの変動には、制御回路の動作が追いつかず、その変動が照明負荷であるLEDに伝搬すると、ちらつきが生じてしまう。
【0006】
このような数十マイクロ秒(μsec)オーダーの変動(パルス性のノイズ、インパルス)は、フィルタ回路2を潜り抜けて、交流電源から侵入する。LED電源回路においては、制御回路の動作スピードが追い付かず、LEDのちらつきの原因となり易い数十マイクロ秒(μsec)オーダーの高調波が、LED素子列まで伝播しないように何等かの方法で防止する必要がある。
【0007】
第1コンデンサC1に起因する高調波成分を低減させるために、第1コンデンサの容量を小さくするという内容の先行文献がある(特許文献1、2)。特許文献1では、第1コンデンサの容量を1μF未満に規定しており、特許文献2では、さらに第1コンデンサの容量を第2コンデンサの百分の一(1/100)以下に規定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1、2のように第1コンデンサの容量を小さくすると、商用交流電源からの入力電流の高調波成分を低減させるという効果が認められるが、逆に、第1コンデンサの後段に設けられたスイッチング電源回路からのスイッチングノイズを低減しにくくなるという問題が生じる。理由としては、
図15に示すような従来の第1コンデンサC1は、スイッチング素子のスイッチング動作に起因する高周波電流(以下、スイッチングノイズと呼ぶ。)のバイパスの役目をするからである。第1コンデンサが大容量である方が、コンデンサのインピーダンスが低下して、バイパスの動作が強化される。そして、スイッチングノイズの発生源(スイッチング電源回路)からフィルタ回路へ漏れるノイズが低減し、このような高周波電流の流れる回路面積が小さくなって、外部へ出て行く高周波ノイズを防止できるので、第1コンデンサの容量が大きい方が好ましい。
【0010】
このように、第1コンデンサに起因する高調波成分対策のために第1コンデンサを小容量化すること、スイッチングノイズの流出防止のために第1コンデンサを大容量化することが、相反してしまう。
【0011】
また、第1コンデンサの容量が大きいと、電源投入時の突入電流が大きくなるという問題が生じる。このような突入電流は、トライアック位相調光の誤動作の原因にもなるので、これを防ぐために何らかの対策を要することになってしまう。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、商用交流電源からの入力電流の高調波成分の低減機能、および、スイッチングノイズのバイパス機能を、同時に実現する照明用LED電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、発明者は、特許文献1、2に示されるような第1コンデンサの容量を小さくするという消極的な方法を採らず、全波整流器と第1コンデンサ間の電力線上に、抵抗、または、チョークコイルを挿入するという積極的な方法を採った。
【0014】
すなわち、本発明に係る照明用LED電源回路は、
交流電源を全波整流する全波整流器と、
前記全波整流器の出力端間に接続される
100μF以上、1000μF未満の第1コンデンサと、
前記第1コンデンサの端子間電力をスイッチング素子の駆動により点灯電力に変換するスイッチング電源回路部と、
前記スイッチング電源回路部の出力端間に接続されるLED発光部と、を備え、
前記全波整流器の正極側出力端とこれに接続する前記第1コンデンサの端子との間に、抵抗およびコイルの少なくとも一方が挿入されることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記全波整流器のグランド側出力端とこれに接続する前記第1コンデンサの端子との間に、抵抗およびコイルの少なくとも一方が挿入されることが好ましい。
また、挿入された2つの前記抵抗または挿入された2つの前記コイルのそれぞれの前記全波整流器側の端子間がコンデンサによって接続されていないことが好ましい。
また、前記全波整流器の出力端とこれに接続する前記第1コンデンサの端子との間に挿入された前記抵抗および前記コイルが、直列に接続されていることが好ましい。
【0016】
なお、前記全波整流器の正極側出力端と前記第1コンデンサの端子との間に、前記抵抗が挿入される場合は、前記抵抗の大きさが、1Ω以上、30Ω以下であることが好ましい。さらには、前記第1コンデンサの容量をC1(μF)として、前記抵抗R1の大きさをR1(Ω)とした場合に、コンデンサ容量C1に対する適切な抵抗値R1は、次式で示す範囲内であるとよい。
[数1]
R1=48.8e
−0.00583C1±6 …(1)
一方、前記全波整流器の正極側出力端と前記第1コンデンサの端子との間に、前記コイルが挿入される場合は、前記コイルのインダクタンスが、3μH以上、100μH以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、全波整流器と第1コンデンサとの間に抵抗(若しくはコイル、又は、抵抗とコイルの両方)を挿入することによって、例えば1μF未満というような第1コンデンサの小容量化という制約を受けることなく、入力電流の高調波成分の侵入を減少させることができる。つまり、実質的に第1コンデンサを小容量化した場合の入力電流の高調波対策と同等の効果が得られる。特に、LEDのちらつきの原因となり易い数十マイクロ秒(μsec)オーダーの高調波の侵入を防止できるので、高調波によるちらつきを低減したLED照明を実現できる。
【0018】
同時に、本発明によれば、第1コンデンサについて所望の大きさの容量を確保できるので、第1コンデンサによるスイッチングノイズのバイパスの動作が強化されて、スイッチング電源回路から全波整流器側へ漏れるスイッチングノイズが抑制される効果があり、高周波ノイズの拡散防止を実現できる。
【0019】
このように、第1コンデンサと、その前段に挿入する抵抗(若しくはコイル、又は、抵抗とコイルの両方)との組み合せによって、商用交流電源からの入力電流の高調波成分の低減機能、および、スイッチングノイズのバイパス機能を低下させることなく、これらの機能を同時に実現する照明用LED電源回路を提供することができる。
【0020】
さらに、本発明によれば、全波整流器と第1コンデンサ間に抵抗(又はコイル)を加えたので、電源側から侵入する突入電流も弱くなり、特に、トライアック位相調光による調光制御が突入電流によって誤動作することも防止でき、良好な調光制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。
【
図4】本発明の第4実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。
【
図5】本発明の第5実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。
【
図6】本発明の第6実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。
【
図7】本発明を適用可能なLED電源回路の具体例を示す回路図である。
【
図8】本発明を適用可能なLED電源回路の他の具体例を示す回路図である。
【
図10】実施例1に係るシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図11】比較例1に係るシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図12】比較例2に係るシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図13】比較例3に係るシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図14】本発明に係る第1コンデンサと第1抵抗の好適な相関を示すグラフ。
【
図15】従来の代表的なLED電源回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1実施形態
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は第1実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。LED照明器具は、LED素子列からなるLED発光部と、このLED素子列に直流電源を供給するLED電源回路10とを有して構成されている。なお、LED電源回路には商用交流電源Vsが供給される。
【0023】
LED電源回路10は、交流電力に含まれるノーマルモードまたはコモンモードのノイズを除去するためのフィルタ回路部2と、フィルタ回路部2の出力を全波整流する全波整流器DBと、全波整流器DBの出力端同士を結ぶ第1コンデンサとしてのバイパスコンデンサC1と、このコンデンサC1の端子間電力を供給されるスイッチング電源回路部4と、この電源回路部4の出力端同士を結ぶ第2コンデンサとしての電解コンデンサC2とを備え、電解コンデンサC2に蓄積された直流エネルギーがLED素子列に印加されるように構成されている。
【0024】
スイッチング電源回路部4は、バイパスコンデンサC1の端子間からの入力電力を所望の点灯電力に変換し、これを電解コンデンサC2およびLED素子列に供給する。そのため、電源回路部4は、MOSFETなどの半導体スイッチング素子を内蔵し、スイッチング素子をオンオフ駆動制御する。
【0025】
本発明に特徴的な第1抵抗R1は、全波整流器DBの正極側出力端と、これに接続されるバイパスコンデンサC1の端子との間に、挿入されている。つまり、整流電流はすべて抵抗R1を通ってからバイパスコンデンサC1およびスイッチング電源回路部4に流れる。そして、抵抗R1は、LED電源回路の外部から侵入するインパルス状のノイズ、または、突入電流をブロックするように接続されている。
【0026】
また、バイパスコンデンサC1は、第1抵抗R1を通過した整流電流を部分平滑するため、および、スイッチング電源回路部4のスイッチング素子のオンオフ駆動により断続された電流の影響がフィルタ回路部2側に及ぶことを防止するバイパスとして設けられている。
【0027】
このように本実施形態では、バイパスコンデンサC1と、全波整流器DBおよびコンデンサC1間の正極側電力線に挿入された第1抵抗R1と、の組合せ回路を設けたため、商用交流電源からの入力電流の高調波成分が正極側電力線から侵入することを低減させることができる。特に、LEDのちらつきの原因となり易い数十マイクロ秒(μsec)オーダーの高調波の侵入を防止できるので、高調波によるちらつきを低減したLED照明を実現できる。
【0028】
同時に、第1コンデンサC1について所望の大きさの容量を確保できるので、第1コンデンサC1によるスイッチングノイズのバイパスの動作が強化されて、スイッチング電源回路部4から全波整流器DB側へ漏れるスイッチングノイズが抑制される。
【0029】
さらに、全波整流器DBと第1コンデンサC1間に第1抵抗R1を加えたので、電源側から侵入する突入電流も弱くなり、特に、トライアック位相調光による調光制御が突入電流によって誤動作することも防止でき、良好な調光制御を実現できる。
【0030】
第2実施形態
図2は第2実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。本実施形態の特徴は、
第1実施形態の抵抗R1に加えて、2つ目の抵抗R2をグランド側電力線に挿入した点にある。この抵抗R2は、全波整流器DBのグランド側出力端とこれに接続されるバイパスコンデンサC1の端子との間に挿入されている。
【0031】
このように本実施形態では、バイパスコンデンサC1、抵抗R1および抵抗R2の組合せ回路を設けたため、第1実施形態の効果に加え、コモンモードのインパルス状のノイズや突入電流が、グランド側の電力線を通ってLED素子列側に侵入することを防止できる。
【0032】
第3実施形態
図3は第3実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。本実施形態の特徴は、
第1実施形態の抵抗R1に換えて、同じ位置にチョークコイルL1を挿入した点にある。つまり、チョークコイルL1は、全波整流器DBの正極側出力端と、これに接続されるバイパスコンデンサC1の端子との間に挿入されている。
【0033】
このように本実施形態では、バイパスコンデンサC1とチョークコイルL1との組合せ回路を設けたため、第1実施形態と同様の効果を回路損失が無い状態で得ることができる。特に、チョークコイルL1のコアー材料を磁気飽和しにくいドラムコアーにすると良い。更には、スペースに余裕のある場合は、磁気飽和することがない空芯コイルを採用するのが良い。
【0034】
第4実施形態
図4は第4実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。本実施形態の特徴は、第3実施形態のチョークコイルL1に加えて、2つ目のチョークコイルL2をグランド側電力線に挿入した点にある。このチョークコイルL2は、全波整流器DBのグランド側出力端と、これに接続されるバイパスコンデンサC1の端子との間に挿入されている。
【0035】
このように本実施形態では、バイパスコンデンサC1、チョークコイルL1およびチョークコイルL2の組合せ回路を設けたため、第1および第3実施形態の効果に加え、コモンモードのインパルス状のノイズや突入電流が、グランド側の電力線を通ってLED素子列側に侵入することを、回路損失が無い状態で防止することができる。
【0036】
第5実施形態
図5は第5実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。本実施形態の特徴は、
第1実施形態の抵抗R1に換えて、同じ位置に、チョークコイルL1と抵抗R1の直列接続回路を挿入した点にある。つまり、L1とR1の直列接続回路が、全波整流器DBの正極側出力端と、これに接続されるバイパスコンデンサC1の端子との間に挿入されている。
【0037】
このように本実施形態では、バイパスコンデンサC1と、L1とR1の直列接続回路とを組み合わせた回路構成にしたため、低い周波数成分の外部ノイズは、抵抗R1が主に対応し、高い周波数成分の外部ノイズは、チョークコイルL1が主に受け持つという、役割分担が可能になる。
【0038】
第6実施形態
図6は第6実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。本実施形態の特徴は、第5実施形態のL1とR1の直列接続回路に加えて、2つ目の直列接続回路をグランド側電力線に挿入した点にある。つまり、L2とR2の直列接続回路が、全波整流器DBのグランド側出力端とこれに接続されるバイパスコンデンサC1の端子との間に挿入されている。
【0039】
このように本実施形態では、バイパスコンデンサC1と、正極側およびグランド側の両電力線に挿入された直列接続回路とを組み合わせた回路構成にしたため、第1実施形態の効果に加え、コモンモードのインパルス状のノイズや突入電流が、グランド側の電力線を通ってLED素子列側に侵入することを防止することができ、かつ、周波数の低いノイズを抵抗R1,R2が、周波数の高いノイズをチョークコイルL1,L2がそれぞれ受け持つという役割分担が可能になる。
【0040】
以上の第1実施形態から第6実施形態で説明した照明用LED電源回路10〜60について、具体的な回路例を2例挙げて、説明する。
【0041】
1つ目の例は、
図7に示すフライバック・コンバータを利用した電源回路110である。フィルタ回路部2には、1対のノイズ防止用コンデンサC0,C0’と、チョークコイルを有する。チョークコイルは1対のコイルT1からなる。2つのコイルT1は、交流電源Vsからの各ラインに1つずつ挿入されている。また、第1のノイズ防止用コンデンサC0は1対のコイルT1の交流電源側の各端子を結び、第2のノイズ防止用コンデンサC0’は1対のコイルT1の全波整流器側の各端子を結んでいる。これにより、交流電力に含まれるノーマルモードのノイズがノイズ防止用コンデンサC0,C0’で除去され、コモンモードのノイズの変換部への進入が1対のコイルT1により阻止される。しかし、一般的に、コイルT1は、内部で発生する微弱な高周波ノイズの外部への流出を防ぐ目的で
挿入されており、コストの関係もあり、その電流容量は最小限で設計されている。外部から侵入するインパルス状のノイズに対しては、コイルT1のコアー材料が磁気飽和し、スルーで通過してしまうので、本発明が非常に有効となるのである。
【0042】
スイッチング電源回路部4は、バイパスコンデンサC1の端子間電力が供給されるように接続されたフライバック・コンバータである。この電源回路部4の機能は、全波整流器DBからの整流電流を電力変換して、出力端子間に接続された電解コンデンサC2を充電することである。また、電源回路部4の出力端子に対して電解コンデンサC2とともに並列接続されたLED素子列へ、電解コンデンサC2に蓄えられたエネルギーを用いて、所定の大きさの連続する直流電流を供給することである。さらに、電源回路部4は、力率改善回路としても機能し、全波整流器DBに入力される交流電流を歪みのない正弦波に整形できる。
【0043】
電源回路部4の具体的構成は以下の通りである。電源回路部4は、フライバック・トランスT2と、スイッチング素子Q1と、2次側ダイオードD2と、スイッチング素子Q1を制御する制御回路14とを有する。トランスT2は、全波整流後の整流電圧を一次電圧として用いて二次電圧を電解コンデンサC2に印加する。
【0044】
スイッチング素子Q1とトランスT2の一次巻線T2aとの直列回路は、全波整流器DBの出力端子間に接続されている。スイッチング素子Q1のドレイン側端子は、一次巻線T2aに接続され、Q1のソース側端子は、全波整流器DBのグランドラインに接続されている。スイッチング素子Q1にはNチャネルのエンハンスメント形のMOSFETを使用する。制御回路14に設けられている駆動回路からスイッチング素子Q1のゲートに駆動電流が供給されてゲート電圧が生じると、ドレイン−ソース間に電流が流れる。この状態をスイッチング素子Q1のオン状態という。一方、ゲートに駆動電流が供給されず、ドレイン電流が流れない状態をオフ状態という。そして、スイッチング素子Q1のオンオフ駆動により二次巻線T2bに二次電圧が誘起される。
【0045】
二次巻線T2bの端子間には、二次側ダイオードD2と電解コンデンサC2とが直列に接続される。二次側ダイオードD2は、発生した二次電流を整流する。整流後の二次電流は、電解コンデンサC2の正極に供給され、これを充電する。なお、LED素子列2と抵抗R6の直列回路が、電解コンデンサC2の両端子間を結んでいる。
【0046】
電源回路部4にはノイズ除去回路(D1,C3,R5)が設けられている。ノイズ除去回路は、一次側ダイオードD1およびノイズ除去コンデンサC3の直列回路と、抵抗R5とを有している。D1とC3の直列回路は、トランスの一次巻線T2aの両端子を結ぶように接続されている。つまり、一次側ダイオードD1のアノード側端子は、一次巻線T2aとスイッチング素子Q1の接続点につながれ、カソード側端子はノイズ除去コンデンサC3に接続される。ノイズ除去コンデンサC3および抵抗R5は並列回路を形成している。このノイズ除去回路は、スイッチング素子Q1がオフ状態である時に、一次巻線T2aに蓄えられたエネルギーを開放して、スイッチング駆動に伴うノイズを低減させるために設けられている。また、スイッチング素子(FET)Q1のドレインに印加される電圧を低減させる効果もあり、安価FETの採用が可能になる。
【0047】
2つ目の例は、
図8に示す降圧チョッパー回路を利用した電源回路210である。
【0048】
全波整流器DBの出力端間に接続されたコンデンサは、全波整流出力によって充電される電解コンデンサC1であり、本発明の第1コンデンサに相当する。
【0049】
スイッチング電源回路部24は、降圧チョッパー回路であり、電解コンデンサC1からの入力電力を変換して、出力端子間に接続されたLED素子列に所定の大きさの連続する直流電流を供給する。
【0050】
具体的には電源回路部24は、スイッチング素子Q1と、インダクタL3と、ダイオードD1と、スイッチング素子Q1のオンオフを制御する制御回路16とで構成される。電源回路部の出力端間には平滑コンデンサC2が接続される。平滑コンデンサC2の両端にLED素子列と抵抗R6が直列接続される。この平滑コンデンサC2は、本発明の第2コンデンサに相当する。電解コンデンサC1の正極側端子にスイッチング素子Q1の一端を接続し、電解コンデンサC1のグランド側端子とスイッチング素子Q1の他端の間にインダクタL3および平滑コンデンサC2が直列に接続されている。スイッチング素子Q1をオンにして電解コンデンサC1の充電電力によってインダクタL3に磁気エネルギーを蓄積させ、スイッチング素子Q1をオンからオフに切り替えた際、磁気エネルギーの放出によるインダクタL3からの電流をLED素子列経由で再びインダクタL3に戻すように、インダクタL3およびLED素子列の直列回路の両端間を、インダクタL3に戻る方向のみ電流を流すダイオードD1で接続することによって構成されている。
【実施例1】
【0051】
以下、本発明の効果を分かりやすく説明するために、
図9のシミュレーション回路に基づく、入力電流の高調波成分のシミュレーション試験結果について説明する。シミュレーションは、市販品の回路シミュレーションソフトを用いた。また、本発明に係る第1抵抗R1と第1コンデンサC1の好適な相関関係について説明する。
【0052】
図9の回路構成では、交流電源V1に
1μFのノイズ除去用コンデンサC0が接続され、このコンデンサC0の端子間に全波整流器(D1〜D4)が接続されている。全波整流器の正極側出力端に、30Ωの第1抵抗R1および100μFの第1コンデンサC1が直列接続され、第1コンデンサC1の端子間に負荷抵抗として4000Ωの抵抗R3が接続されている。
【0053】
ここでは、第1抵抗R1の大きさ、および、第1コンデンサC1の容量の設定値を、表1のように変更してシミュレーションを実施した。R1=0.1Ωは、短絡と同等であることを意味する。
【0054】
(表1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
抵抗R1 第1コンデンサC1 試験結果
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 30Ω 100μF
図10
比較例1 0.1Ω 100μF
図11
比較例2 30Ω 1μF
図12
比較例3 0.1Ω 1μF
図13
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0055】
図10〜13の各(A)、(B)は、交流電源V1(実効値100V)を印加直後の各ポイントでの動作波形である。(A)は、第1コンデンサC1の電圧波形を示し、縦軸に電圧値v(OUT)(V)をとり、横軸に経過時間T(msec)をとった。(B)は、抵抗R1を流れる電流波形を示し、縦軸に電圧値i(R1)(A)をとり、横軸に経過時間T(msec)をとった。シミュレーションの都合上、電流波形がマイナス値を示しているが、これをプラス値と見なす。また、出力電力を5Wと仮定した。各(C)は、抵抗R1に流れる入力電流の高周波成分の分布を示し、縦軸に信号強度Harm(i(R1))をとり、横軸に周波数F(kHz)をとった。
【0056】
実施例1と比較例1では、一般的な低力率の電源回路として第1コンデンサを100μFに設定した。いずれの場合も、第1コンデンサが平滑コンデンサとして動作し、
図10、11の各(A)のように、全波整流器DBの出力電圧が第1コンデンサC1によって平滑化される。
【0057】
しかし、比較例1のように抵抗R1を短絡状態と同等まで小さくした場合は、第1コンデンサC1の容量が大きいため、
図9のシミュレーション回路は低力率として動作する。その結果、
図11(B)のように、略10msec毎に流れる電流波形は鋭いピーク状となり、
図11(C)に示すように、広帯域の高調波成分が発生する。
これに対して、実施例1では30Ωの抵抗R1を挿入したため、第1コンデンサC1の容量は同じであっても、
図10(B)のように、略10msec毎に流れる電流波形は比較的緩やかなピーク状になり、
図10(C)に示すように、比較例1よりも高調波成分が全帯域に渡って減少した。これは、挿入した抵抗R1の効果が良く出たと言える。
【0058】
一方、比較例2と3の結果から分かるように、第1コンデンサC1の容量を1μFと小さく設定すると、原理的には、抵抗R1の効果の差が表れるはずであるが、シミュレーション結果では、ほとんど区別がつかなかった。これは、第1コンデンサC1の容量が小さく、DBの出力電圧は平滑化されずに、ほぼ全波の脈流電圧として負荷抵抗に印加されるからと言える。しかし、比較例2、3の場合は、第1コンデンサC1の容量が小さいため、スイッチングノイズのバイパス機能が弱くなってしまうという問題を抱えている。
【0059】
これらのシミュレーションの結果、第1コンデンサC1を100μFのように大容量に設定した場合には、抵抗R1の挿入による高調波成分の低減効果がより明確になった。また、第1コンデンサC1の容量が大きければ、後段の各種スイッチング電源からのスイッチングノイズの低減効果も大きくなる。従って、このシミュレーションからも、高調波成分の低減効果と、スイッチングノイズの低減効果とを同時に実現できることが言える。
【0060】
次に、第1コンデンサC1(μF)と抵抗R1(Ω)との良好な相関関係の一例を求め、その結果を
図14のグラフに実線にて示す。なお、
図7のフィルタ回路部のコンデンサC0’を一般的な容量である1μFに仮定した。また、交流電源として実効値100Vの電圧を印加することにした。この相関関係の導出においては、スイッチング電源回路部4のスイッチング周波数を一般的な周波数である50KHzに設定した。ここで、第1コンデンサC1を1000μF程度の大容量に設定すれば、第1コンデンサC1のスイッチングノイズのバイパス機能が最大限に発揮されるとみなすことができ、挿入する抵抗R1は不要とした。そして、第1コンデンサC1を1000μFの大容量から100μFまで順次減少させていった場合に、フィルタ回路部2へのスイッチングノイズの漏れの程度が低下しないで同等に維持できるような抵抗R1の大きさを順次算出した。
【0061】
図14に示すカーブを指数関数でフィッティングしたところ、次式の近似関数が得られた。
[数2]
R1=48.8e
−0.00583C1 …(2)
【0062】
図14に示すように、良好な抵抗R1の大きさは、1Ω以上、30Ω以下程度である。また、
図14に2本の破線によって挟まれた範囲は、第1コンデンサC1の容量に対する適切な抵抗R1の大きさの範囲を表している。この範囲を数式で示すと、次式になる。
[数3]
R1=48.8e
−0.00583C1±6 …(1)
【0063】
一方、抵抗R1の代わりに、チョークコイルを使用する場合の良好なコイルL1のインダクタンスは、3μH以上、100μH以下程度である。