特許第6154196号(P6154196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154196
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】潤滑油ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 13/00 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   F16N13/00
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-107651(P2013-107651)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-228050(P2014-228050A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195100
【氏名又は名称】株式会社 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大鷹 英雄
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−183857(JP,A)
【文献】 特開2011−99424(JP,A)
【文献】 特開2011−169334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入ポートから供給される潤滑油をポンプによって吐出ポートへと圧送する送油回路と、上記送油回路内に係る圧力を脱圧する脱圧回路と、上記脱圧回路を開閉する脱圧弁とを有する潤滑油ポンプにおいて、
上記脱圧弁は、上記送油回路と上記脱圧回路とに連通する脱圧シリンダと、上記脱圧シリンダ内を往復的に摺動し、上記送油回路と上記脱圧回路との連通を開閉するスライドピンと、上記スライドピンをスライドさせる駆動部と、上記スライドピンを脱圧の開位置および非脱圧の閉位置で係止する弁開閉切替手段とを有し、
上記弁開閉切替手段は、上記脱圧シリンダ内に固定された円筒状のカム本体と、上記スライドピンに対して摺動不能かつ回転不能に取り付けられ、上記スライドピンの摺動に伴って上記カム本体から出没するノックリングと、所定の付勢手段によって上記ノックリングに向かって常に付勢され、上記スライドピンに摺動可能かつ回転可能に取り付けられるラチェットリングとを有し、上記ノックリングの上記ラチェットリングと対向する端面には、山部と谷部とが交互に配置されそれらの間に傾斜面を有する円筒カムが形成されており、上記ラチェットリングは、上記傾斜面上を摺動するカムフォロワ面を有する爪部が設けられており、上記カム本体には、上記爪部を上記閉位置に対応する位置に係止する第1カム面と、上記爪部を上記開位置に対応する位置に係止する第2カム面とが形成されており、上記スライドピンの前進、後退を1サイクルとして、各サイクルごとに、上記爪部と上記円筒カムの傾斜面とにより上記ラチェットリングが所定角度回転し、上記爪部が上記カム本体の上記第1カム面と上記第2カム面とに交互に係止されるオルタネイト型の切替スイッチであり、
上記駆動部がソレノイドバルブで、上記スライドピンの一端側には、上記ソレノイドバルブの鉄心が一体的に取り付けられ、上記爪部が上記第1カム面もしくは上記第2カム面にて係止されているとき、上記ソレノイドバルブへの通電がオフとされることを特徴とする潤滑油ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油を所定の注油ポイントに向けて圧送するための潤滑油ポンプ装置に関し、さらに詳しく言えば、脱圧機構を有する潤滑油ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グリースなどの潤滑油を注油ポイントに注油する潤滑油ポンプ装置の1つとして、例えば特許文献1に記載されている潤滑システムがある。この潤滑システムは、配管の先端側に設けられた単一定量バルブ(単管式分配器とも言う)に潤滑油を潤滑油ポンプによって圧送し、潤滑油の加圧および脱圧を繰り返すことで、単一定量バルブによって潤滑油が1ショットずつ計量されて吐出するようになっている。
【0003】
この潤滑システムには、潤滑油の加圧および脱圧によって単一定量バルブが作動して潤滑油を吐出する関係上、脱圧機構が必須となる。そこで、特許文献1では、送油回路と脱圧回路とが弁切替バルブを介して切り替えるようになっている。
【0004】
通常、切替バルブはソレノイドバルブで構成され、ソレノイドバルブがオン状態(通電状態)のとき、脱圧回路は閉状態となり、これにより送油回路内は加圧されて潤滑油が吐出ポートから吐出される。オン状態からソレノイドバルブをオフ状態(非通電状態)とすると、送油回路は脱圧回路と連通することで脱圧され、単一定量バルブによって潤滑油が1ショット分ずつ計量される。
【0005】
ところで、切替バルブとしてのソレノイドバルブは、通電により発熱するが、安全上、温度ヒューズが設けられており、ある一定の温度以上になると通電が遮断されるようになっている。
【0006】
そのため、潤滑システムの配管長や注油スポットを増やす(単一定量バルブの数を増やす)と、潤滑油を末端まで行き渡らせるためには、ソレノイドバルブの通電時間が長くなり、温度が上昇して、温度ヒューズが作動し強制的に停止してしまう。その結果、温度ヒューズが常温に戻るまでの間は、潤滑システムを停止せざるを得ないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4272876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、ソレノイドバルブへの通電時間を短くして発熱を抑え、消費電力も少ない潤滑油ポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、注入ポートから供給される潤滑油をポンプによって吐出ポートへと圧送する送油回路と、上記送油回路内に係る圧力を脱圧する脱圧回路と、上記脱圧回路を開閉する脱圧弁とを有する潤滑油ポンプにおいて、
上記脱圧弁は、上記送油回路と上記脱圧回路とに連通する脱圧シリンダと、上記脱圧シリンダ内を往復的に摺動し、上記送油回路と上記脱圧回路との連通を開閉するスライドピンと、上記スライドピンをスライドさせる駆動部と、上記スライドピンを脱圧の開位置および非脱圧の閉位置で係止する弁開閉切替手段とを有し、
上記弁開閉切替手段は、上記脱圧シリンダ内に固定された円筒状のカム本体と、上記スライドピンに対して摺動不能かつ回転不能に取り付けられ、上記スライドピンの摺動に伴って上記カム本体から出没するノックリングと、所定の付勢手段によって上記ノックリングに向かって常に付勢され、上記スライドピンに摺動可能かつ回転可能に取り付けられるラチェットリングとを有し、上記ノックリングの上記ラチェットリングと対向する端面には、山部と谷部とが交互に配置されそれらの間に傾斜面を有する円筒カムが形成されており、上記ラチェットリングは、上記傾斜面上を摺動するカムフォロワ面を有する爪部が設けられており、上記カム本体には、上記爪部を上記閉位置に対応する位置に係止する第1カム面と、上記爪部を上記開位置に対応する位置に係止する第2カム面とが形成されており、上記スライドピンの前進、後退を1サイクルとして、各サイクルごとに、上記爪部と上記円筒カムの傾斜面とにより上記ラチェットリングが所定角度回転し、上記爪部が上記カム本体の上記第1カム面と上記第2カム面とに交互に係止されるオルタネイト型の切替スイッチであり、
上記駆動部がソレノイドバルブで、上記スライドピンの一端側には、上記ソレノイドバルブの鉄心が一体的に取り付けられ、上記爪部が上記第1カム面もしくは上記第2カム面にて係止されているとき、上記ソレノイドバルブへの通電がオフとされることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
これによれば、送油回路と脱圧回路とを切り替えるスライドピンにオルタネイト型の弁開閉切替手段を設けたことにより、ソレノイドバルブの通電時間を短くすることができ、ソレノイドバルブの発熱を心配することなく、長時間にわたって加圧と脱圧を繰り返すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る潤滑油ポンプ装置の正面図
図2図1のケーシングのA−A線断面図。
図3】上記潤滑油ポンプ装置のスライドピンと弁開閉切替手段の分解斜視図。
図4】上記スライドピンと上記弁開閉切替手段の組立状態を示す要部断面図。
図5】上記弁開閉切替手段のラチェットリングの(a)背面側斜視図,(b)正面図および(c)左側面図。
図6】上記弁開閉切替手段のノックリングの(a)前面側斜視図,(b)正面図および(c)右側面図。
図7】上記弁開閉切替手段のカムシリンダの(a)前面側斜視図,(b)正面図および(c)右側面図。
図8】(a)ラチェットリングがカムシリンダの第1係止部に係止した状態の模式図、(b)ラチェットリングがカムシリンダの第2係止部に係止した状態の模式図。
図9】カムシリンダとノックリングとの位置を説明するための説明図。
図10】(a)〜(d)弁開閉手段の一連の動作を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1および図2に示すように、この潤滑油ポンプ装置1は、内部にポンプ部2と脱圧弁3とが一体的に組み込まれたケーシング10を備えている。ケーシング10の上部には、潤滑油が貯留されるタンク11と、ポンプ部2を駆動するモータ12とが設けられている。ケーシング10の下面側には、潤滑油を吐出する吐出ポート13が設けられている。
【0015】
ケーシング10内には、タンク11から供給される潤滑油を吐出ポート13へと送り出すための送油回路OLと、送油回路OLに係る圧力を脱圧するための脱圧回路RLとが設けられている。
【0016】
送油回路OLは、タンク11からポンプ部2を介して直下に設けられた吐出ポート13へと繋がっている。脱圧回路RLは、脱圧弁3を介してポンプ部2のタンク11に接続されており、脱圧時に潤滑油の一部が、脱圧弁3および脱圧回路RLを経由してタンク11に戻されるようになっている。この実施形態において、潤滑油ポンプ装置1は、単管式分配用であって、送油回路OLの一部には所定圧で作動するリリーフ弁5が設けられている。
【0017】
ポンプ部2は、モータ12の図示しない回転軸に取り付けられたロータリーカム21と、ロータリーカム21によって駆動されるポンプピストン22とを備えている。ポンプピストン22は、図示しないバネ手段により常にロータリーカム21側に向かうように付勢されている。
【0018】
これによれば、ロータリーカム21の回転動作に追従してポンプピストン22が往
復動することにより、タンク11から送り込まれた潤滑油が送油回路OLを経由して吐出ポート13に圧送される。本発明において、ポンプ部2の具体的な構成は任意事項であってよい。なお、図示は省略されているが、ポンプ2の吐出側にはチェック弁が設けられている。
【0019】
脱圧弁3は、ケーシング10の内部に形成された脱圧シリンダ31と、脱圧シリンダ31に沿って往復的に摺動し、送油回路OLと脱圧回路RLとの連通を開閉するスライドピン32と、スライドピン32をスライドさせる駆動部33と、スライドピン32を常に一定方向(この例では図2右方向)にバネ付勢するコイルバネ34と、同コイルバネ34を収納するバネケース35とを備えている。
【0020】
脱圧シリンダ31は、ケーシング10内に形成されたシリンダホール14に沿って同軸的に差し込まれた円筒体からなり、その一部には送油回路OLと脱圧回路RLとを連通する図示しない連通溝が設けられており、上記連通溝がスライドピン32によって開閉される。
【0021】
図3を併せて参照して、スライドピン32は、一端側(図3右端側)が脱圧シリンダ31の中に挿通される棒体からなり、他端側(図3左端側)には駆動部33の鉄心332が一体的に取り付けられている。スライドピン32は、脱圧シリンダ31の内周面に沿って左右に往復動するようになっている。
【0022】
スライドピン32の先端側には、スライドピン32を前後にスライドさせた際に、送油回路OLと脱圧回路RLとの開閉を切り替えるための3つの切欠溝321〜323が環状に設けられている。
【0023】
各切欠溝321〜323のうち、切欠溝322および切欠溝323の2箇所にはそれぞれ脱圧孔324,325が設けられている。脱圧孔324,325は、スライドピン32の内部に設けられた図示しない連通手段を介して互いに連通されている。これに対して、切欠溝321は孤立した溝で、隣接する切欠溝322とは非連通である。
【0024】
これによれば、スライドピン32を前方(図3では右側)に移動させることにより、切欠溝322と切欠溝323とが送油回路OLと脱圧回路RLと合致して送油回路OLが脱圧され、スライドピン32を後方(図3では左側)に移動させると、送油回路OLと脱圧回路RLとが非連通となる。
【0025】
スライドピン32にはさらに、後述する弁開閉切替手段4のノックリング42の他端側を支持するストッパーリング326が設けられている。ストッパーリング326は、スライドピン32の外周よりも大きい外径のフランジ状に形成されており、スライドピン32のほぼ中央に設けられている。この実施形態において、ストッパーリング326はEリングが用いられている。
【0026】
駆動部33は、いわゆるソレノイドバルブ33からなり、図示しない制御部により通電制御されるソレノイド本体331と、ソレノイド本体331への通電のオンオフによってソレノイド本体331の内部から出没する鉄心332とを備えている。
【0027】
鉄心332は、スライドピン32の一端側に同軸的に取り付けられている。この例において、ソレノイドバルブ33への通電時に、鉄心332がソレノイド本体331の中に引き込まれるようになっている。
【0028】
図4を併せて参照して、バネケース35は円筒状であって、シリンダホール14の内に脱圧シリンダ31とともに固定されている。バネケース35の一端側には、スライドピン32が挿通される挿通孔352が設けられており、この挿通孔352を通って引き出されたスライドピン32の他端側(図4では左端側)に鉄心332が取り付けられている。
【0029】
コイルバネ34は、スライドピン32に沿って同軸的に取り付けられた圧縮バネであって、その一端(図4では左端)がバネケース35の底部353に当接し、他端(図4では右端)が、後述する弁開閉切替手段4のラチェットリング41の他端面(爪部412が設けられていない側の面)に沿って当接するように設けられている。
【0030】
これによれば、コイルバネ34の弾性復元力によって、ラチェットリング41が常にノックリング42を押圧する方向にバネ付勢され、その結果、スライドピン32が常に右方向(ソレノイドバルブ33から離反する方向)に押し出されるようになっている。
【0031】
脱圧弁3には、スライドピン32を脱圧位置(弁開位置)および非脱圧位置(弁閉位置)で保持した状態を維持するための弁開閉切替手段4が設けられている。本発明において、弁開閉切替手段4は、オルタネイト型の切替スイッチが用いられている。
【0032】
図3および図4を参照して、弁開閉切替手段4は、スライドピン32の外周に沿って回転自在かつ摺動可能に取り付けられるラチェットリング41と、一端側がストッパーリング326によって支持され、スライドピン32に固定されるノックリング42と、脱圧シリンダ31の内周面に沿って固定されるカムシリンダ(カム本体)43とを備えている。
【0033】
図5を併せて参照して、ラチェットリング41は、スライドピン32に沿って挿通される挿通孔411を有する円筒状に形成されており、挿通孔411は、スライドピン32の外径よりも若干大径に形成されている。
【0034】
ラチェットリング41の先端側(図5(c)では右端側)には、ラチェットリング41を回転させるための爪部412が設けられている。爪部412は、ラチェットリング41の一端から突設されており、その先端は垂直面413と傾斜面414を含む三角形状に形成されている。この実施形態において、爪部412は、120°間隔で3箇所に設けられている。
【0035】
図5(b)に示すように、各爪部412はさらに、その外周面の一部がラチェットリング41の外周面よりも外側に張り出すように形成されている。この外周面側に張り出された部分が後述するカムシリンダ43の一部に係止されるようになっている。
【0036】
次に、図6を併せて参照して、ノックリング42は、中央にスライドピン32を挿入するための挿入孔421を有する円筒状に形成され、一端側(図6(c)では左端側)には山切り状に形成されたノック面422が形成されている。
【0037】
ノック面422は、軸線方向の外側に突出された頂部423と、軸線方向の内側に凹まされた谷部424とが円周方向に沿って、この例では30°間隔で交互に形成されており、それら頂部423と谷部424とが傾斜面425を介して連続的に繋がった、いわゆる山切り状に形成されている。
【0038】
ノックリング42は、挿入孔421をスライドピン32の一端側から差し込み、ストッパーリング326に当接する位置まで圧入することにより、スライドピン32に固定されるようになっている。
【0039】
ノックリング42は、スライドピン32に対し圧入によって固定されているが、スライドピン32に対してノックリング42が回転不能かつ摺動不能に固定されるのであれば、これ以外の固定方法であってもよい。
【0040】
図7を併せて参照して、カム本体としてのカムシリンダ43は、中央にラチェットリング41およびノックリング42が挿通可能なガイド孔431を有する円筒状を呈し、その外径が脱圧シリンダ31の内周面に沿って密着するように固定される。
【0041】
カムシリンダ43の一端側(図7(c)では左端側)には、カム面432が形成されている。カム面432は、ラチェットリング41の爪部412を第1の係止位置に保持する第1カム面433と、ラチェットリング41の爪部412を第2の係止位置に保持する第2カム面434とを有し、それらが円周方向に沿って交互に形成されている。
【0042】
第1カム面433は、カムシリンダ43の一端から軸線方向に沿って所定の傾斜角で傾斜する第1傾斜面435と、第1傾斜面435の終端からカムシリンダ43の先端に向かってほぼ垂直に形成される第1係止面436とを備えている。
【0043】
第2カム面434は、第1カム面433の第1係止面436の一端から軸線方向に沿って所定の角度で傾斜する第2傾斜面437と、第2傾斜面437の終端からほぼ垂直に軸線方向に沿って切り欠かれた第2係止溝438と、第2係止溝438の底部から第1カム面433の第1傾斜面435の始端までほぼ垂直に形成される第2係止面439とを備えている。
【0044】
この実施形態において、第1カム面433と第2カム面434とは、それぞれ円周方向に沿って120°間隔で3箇所設けられている。カムシリンダ43は、その肉厚がラチェットリング41の爪部412の外周方向への張り出し量を許容可能な厚さを有している。
【0045】
これによれば、カムシリンダ43の内側にラチェットリング41が挿入されると、第1カム面433と爪部412とが係止する位置では、図8(a)に示すように、爪部412の外周部が、第1カム面433の第1係止面436に当接することで、ラチェットリング41が浅い位置で拘束され、その結果、スライドピン32が非脱圧位置(弁閉位置)となる位置で保持される。
【0046】
第2カム面434と爪部412とが係止する位置では、図8(b)に示すように、爪部412の外周部が、第2カム面434の第2係止面438に当接することで、ラチェットリング41が深い位置で拘束され、その結果、スライドピン32が脱圧位置(弁開位置)となる位置で保持される。
【0047】
次に、図9を参照して、ノックリング42とカムシリンダ43は、ノックリング42の頂部423が第2係止溝438の中心から所定角度ずらされた位置、この例では15°ずれた位置に配置されている。
【0048】
すなわち、ノックリング42に設けられた各傾斜面425のうち、回転方向(図9では反時計回り)に沿って下るように傾斜する傾斜面425aと、カムシリンダ43のカム面432の第1傾斜面435および第2傾斜面437の一部(破線矢印部)がオーバーラップするように配置されるため、ラチェットリング42が反時計回りに回転する回転力を連続的に得ることができる。
【0049】
次に、この弁開閉切替手段4の動作手順の一例について、図10を参照しながら説明するが、この実施形態においては、図10(a)に示すように、爪部412が第1カム面433の第1係止面436に係止された状態(脱圧弁3が閉じた位置)を初期状態として説明する。
【0050】
図示しない制御部からソレノイド本体331に通電されると、鉄心332がソレノイド本体331の内側に(図10(a)では左側)に引き込まれる。これに伴い、スライドピン32もコイルバネ34の圧縮力に抗しながら、左側に移動する。
【0051】
図10(b)に示すように、スライドピン32が左側に移動すると、ラチェットリング41とノックリング42がカムシリンダ43から引き抜かれる。その際、ノックリング42は、その頂部423がカムシリンダ43の第1係止面436に対して所定角度ずれるように配置されているため、ノックリング42の傾斜面425の一部に、ラチェットリング41の傾斜面414が合致する。
【0052】
傾斜面414と傾斜面425とが合致した状態で、ラチェットリング41とノックリング42とがカムシリンダ43から引き抜かれると、ラチェットリング41は、爪部412が傾斜面414に沿って滑り落ちてゆき、谷部424に当接して停止する。
【0053】
この状態で、制御部がソレノイドバルブ33への通電を停止すると、ラチェットリング41は、コイルバネ34の弾性復元力によって再びカムシリンダ43に向けて移動を開始する。その際、谷部424の一部が、カムシリンダ43の第2カム面434の第2傾斜面437とオーバーラップしていることにより、爪部412の外周面に向かって張り出された部分が、カムシリンダ43の第2傾斜面437に沿って当接する。
【0054】
その位置で爪部412は、第2傾斜面437に沿って回転しながら滑り落ちてゆき、第2係止溝438の入口から底部に落ちて停止する。これにより、図10(c)に示すように、スライドピン32が右端まで移動することで、脱圧弁3が開いた状態(弁開位置)となり、送油回路OLと脱圧回路RLとが連通して、送油回路OLが脱圧される。
【0055】
図10(d)に示すように、脱圧が完了し、所定時間が経過すると、制御手段は再びソレノイド本体331に通電して、鉄心332がソレノイド本体331内に引き込まれる。これに伴い、スライドピン32もラチェットリング41とノックリング42とともにソレノイド本体331側に移動する。
【0056】
その際、ラチェットリング31の爪部412は、ノックリング42の傾斜面424に当接しているため、カムシリンダ43から引き抜かれると同時に、傾斜面425に沿って滑り落ち、谷部424に当接して停止する。
【0057】
この状態で、制御部は、ソレノイドバルブ33への通電を停止することで、再びスライドピン32がカムシリンダ43側に向かって移動する。そのとき、爪部412の外周面は、カムシリンダ43の第1カム面433の第1傾斜面435に沿って滑り落ちてゆき、第1係止面436に当接して停止する。これにより、再び図10(a)の弁閉位置となる。
【0058】
以上のソレノイドバルブ33への通電を繰り返すことにより、脱圧弁3が開閉を繰り返すことができる。これによれば、弁動作の合間のみソレノイドバルブ33へ通電するだけでよいため、通電時間を大幅に減らすことができ、その結果、長時間にわたって加圧と脱圧を繰り返すことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 潤滑油ポンプ装置
2 ポンプ部
3 脱圧弁
31 脱圧シリンダ
32 スライドピン
33 ソレノイドバルブ
34 コイルバネ
35 バネケース
4 弁開閉切替手段
41 ラチェットリング
42 ノックリング
43 カムシリンダ
10 ケーシング
11 タンク
12 モータ
OL 送油回路
RL 脱圧回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10