(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワイヤハーネス固定部を前記三角クランプの各頂点に形成されたワイヤハーネス嵌挿孔で実現したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のワイヤハーネス保持具。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−11231号公報
【特許文献2】特開平11−18257号公報
【特許文献3】特開2006−180623号公報
【0004】
〈特許文献1記載のワイヤハーネス保持具〉
図3は特許文献1記載のワイヤハーネス保持具の斜視図で、(A)は使用前、(B)は使用中のそれぞれ斜視図である。
特許文献1記載のワイヤハーネス保持具30は、
図3に示すように、第一保持具31と内側筒部32とから成り、第一保持具31は平板状のテープ巻き固定部31Aと外側筒部31Bとテープ巻き固定部31Aおよび外側筒部31Bを連結する連結部31Cとから成り、内側筒部32は内部にワイヤハーネスWHを貫通させることのできる円環状の筒部であり、内側筒部32の外径は外側筒部31Bの内径よりも僅かに小さく形成されており、これにより内側筒部32は第一保持具31の外側筒部31B内にスライド自在に内嵌するものである。
このワイヤハーネス保持具30は、第一保持具31のテープ巻き固定部31AをワイヤハーネスWHの余長部WHa(
図3(B))の一部と共にテープTで巻回固定させ、外側筒部31B内の空洞にワイヤハーネスWHを先端から貫通させて引き出して、最終的に内側筒部32が外側筒部31B内に内嵌状態とすることで、ワイヤハーネスWH(
図3(B))の余長部WHaをループに形成している。ワイヤハーネスWHの余長部WHaの前方および後方のワイヤハーネスWH部位はそれぞれ例えばエンジンおよび車体ボディに固定されている。
そこで、例えばワイヤハーネスWHに引っ張り力Xが作用すると、内側筒部32が外側筒部31B内をスライドして移動して、余長部XHaの径を小さくして、ワイヤハーネスWHを伸ばすことにより、引っ張り力Xを吸収する。
一方、ワイヤハーネスに反引っ張り力X(圧縮力)が作用すると、余長部の径を大きくする方向に内側筒部32が外側筒部31B内を移動してワイヤハーネスを縮めることにより、上記圧縮力を吸収する。これによりエンジン振動によってワイヤハーネスに与えられる伸縮力を吸収することができる。
このように、内側筒部32が第一保持具31の外側筒部内31Bを移動するだけでワイヤハーネス自体は他部と摺動することがないため、ワイヤハーネスの外周面が損傷することがない。
【0005】
〈特許文献2記載のワイヤハーネス保持具〉
図4は特許文献2記載のワイヤハーネス保持具の図で、(1)は使用中の斜視図、(2)はワイヤハーネスに外力が作用したときのワイヤハーネス保持具の変形状態を示す図で、(A)は外力がないとき、(B)は引っ張り力が作用したとき、(C)は圧縮力が作用したときのそれぞれの平面図である。
特許文献2記載のワイヤハーネス保持具40は、楕円形の環状部41と、この環状部41の長辺側の外面の一端より延在する平板状の第一テープ巻固定部42と、環状部41の対向する外面の他端より反対方向に延在する平板状の第二テープ巻固定部43とからなり、これらをゴムの弾性体より一体成形で形成している。
環状部41は偏平形状に伸びた後に、拡径する原状に復帰する弾性を持たせている。さらに、原状よりもワイヤハーネスを縮める方向に力が作用した場合には、環状部41が内側に撓んで変形するようにしている。
図4(1)に示すように、ワイヤハーネス保持具40の第一テープ巻固定部42にはワイヤハーネスWHの余長部WHaの一端をテープTで巻き付けて固定し、ワイヤハーネスWHの余長部WHaを一回転させた後に余長部WHaの他端をテープTで巻着付けて固定している。ワイヤハーネスWHに引っ張り力が作用した時、第一テープ巻固定部41と第二テープ巻固定部42とに反対方向の引っ張り力が作用する。この引っ張り力に応じて、
図4(2)(B)に示すように、環状部41が偏平化し、これら第一テープ巻固定部42と第二のテープ巻固定部43との間の寸法を延ばして、ワイヤハーネスWHを引っ張り力に追従させる。また、ワイヤハーネスWHに作用していた引っ張り力がなくなるとワイヤハーネス保持具40の環状部41は弾性力により原状の
図4(2)(A)に示す位置に復帰する。
また、ワイヤハーネスWHを縮める方向に力が作用すると、
図4(2)(C)に示すように、環状部41の対抗する長辺が内側に撓んで、第一テープ巻固定部42と第二のテープ巻固定部43とが近接する方向に変形する。この時、ワイヤハーネスWHの余長部WHaの一巻部は大径化しながら追従する。このように第一テープ巻固定部42と第二のテープ巻固定部43との間の寸法を、ワイヤハーネスに負荷される力に応じて追従させることができ、その結果、ワイヤハーネスWHに大きな力を作用させないためワイヤハーネスに損傷を発生させない。
【0006】
〈特許文献3記載のワイヤハーネス保持具〉
特許文献3記載のワイヤハーネス保持具は、特に図示しないが、板バネを用いるもので、ワイヤハーネスの余長部を同じくループ状に1回巻回し、板バネを同じくループ状に丸めて余長部のループ状のワイヤハーネスの内側にあてがい、その板バネの一端をワイヤハーネス側に固定し、板バネの他端を固定部(ベース部)に固定するようにしたものである。そこで、ワイヤハーネスに引っ張り力が作用すると、弾性の板バネが縮径してワイヤハーネスを送り出すように作用し、引っ張り力がなくなると弾性の板バネが元のループ状に原状復帰する。
一方、ワイヤハーネスを縮める方向に力が作用すると、弾性の板バネが拡径してワイヤハーネスが大きなループになるように大径化しながら追従し、縮める方向の力がなくなると弾性の板バネが元のループ状に原状復帰する。
このようにワイヤハーネスに負荷される力の大きさと方向に応じて板バネのループの径が変化するので、これに応じてワイヤハーネスもループの大きさを変化させることができ、その結果、ワイヤハーネスに大きな力を作用させないためワイヤハーネスに損傷を発生させない。
【0007】
〈特許文献1および2記載のワイヤハーネス保持具の改良すべき点〉
ワイヤハーネスWHの余長部で形成されるワイヤハーネスループ部の自由度が大きすぎるため、ワイヤハーネスループ部のクリアランス確保が必要となるなど、他の部品への影響が大きくなってしまうという改良点がある。
【0008】
〈特許文献3記載のワイヤハーネス保持具の改良すべき点〉
構造部品の点数が多くなり、複雑なユニットとなってしまうという改良点、さらに、ワイヤハーネスの供給方向がワイヤハーネスの長手方向のみに絞られてしまうという改良点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記改良点を解決するためになされたもので、ワイヤハーネスループ部の自由度を抑えることのできる、かつ、構造部品の点数が少なく、簡単で頑丈な、しかも、ワイヤハーネスの供給方向がワイヤハーネスの長手方向以外にも可能となるワイヤハーネス保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題は、下記の本件発明(1)〜(4)の構成のワイヤハーネス保持具により達成される。
(1)弾性部材でそれぞれ形成された
3本のクランプ辺が三角形を構成するように連結されて成る三角クランプと、前記三角クランプの各頂点に形成されたワイヤハーネス固定部と
、を備え、
1本のワイヤハーネスの一部をループ状に周回して得られたループ部における、前記ワイヤハーネスが交差するそれぞれの部分と、前記交差する部分とは径方向反対側の部分と、を3つの前記ワイヤハーネス固定部のそれぞれに固定することによって、前記ワイヤハーネスを保持すること。
(2)
弾性部材でそれぞれ形成された3クランプ辺から成る三角クランプと、前記三角クランプの各頂点に形成されたワイヤハーネス固定部とで構成し、
前記3クランプ辺の少なくとも1クランプ辺を長さ方向に伸縮可能としたこと。
(3)上記発明(2)において、前記1クランプ辺が、長さ方向に変形可能な長尺状弾性薄板であること。
(4)上記発明(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記固定部を前記三角クランプの各頂点に形成されたワイヤハーネス嵌挿孔で実現したこと。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、上記発明(1)によれば、ワイヤハーネスの一端に外力が作用しても、クランプ辺はワイヤハーネス固定部を支点として傾斜して引っ張り力に応じるため、ワイヤハーネスに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
また、ワイヤハーネスの余長部であるワイヤハーネスのループ部の交差側と直径方向反対側の自由端が三角クランプのワイヤハーネス固定部で固定されるので自由に遊動することがなく、したがって、ワイヤハーネスのループ部側にある他の部材との間に、大きなクリアランスを設ける必要がなくなる。
さらに、ワイヤハーネス保持具の主たる構成は弾性材料で作られた単なる三角クランプであるので、構造部品の点数が少なく複雑なユニットとならないため、故障することもない。
各クランプ辺が弾性材料でできているので、弾性変形が可能であり、ワイヤハーネスの供給方向がワイヤハーネスの長手方向以外の場合にも対処できる。
上記発明(2)によれば、3つのワイヤハーネス固定部のうちワイヤハーネスのループが交差する側にある2つのワイヤハーネス固定部の間に伸び縮みする方向の外力が作用しても、クランプ辺が長さ方向に伸縮可能となっているので、クランプ辺は外力の方向に追従するため、ワイヤハーネスに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
上記発明(3)によれば、簡単でかつ頑丈な、長さ方向に伸縮可能なクランプ辺を得ることができる。
上記発明(4)によれば、ワイヤハーネスの取り付けに他の部材(接着テープなど)を必要とせず、取り付けが簡単でかつ頑丈な固定をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ワイヤハーネスループ部の自由度を抑えることのできる、かつ、構造部品の点数が少なく、簡単で頑丈な、しかも、ワイヤハーネスの供給方向がワイヤハーネスの長手方向以外にも可能となるワイヤハーネス保持具について、本発明の実施形態1を
図1に基づいて、および本発明の実施形態2を
図2に基づいて、それぞれ説明する。
【0014】
〈本発明の実施形態1に係るワイヤハーネス保持具10〉
図1は本発明の実施形態1に係るワイヤハーネス保持具を説明する図である。
図1(A)において、本発明の実施形態1に係るワイヤハーネス保持具10は、弾性のある合成樹脂・金属・ゴム等で形成された3辺から成る三角クランプで、三角クランプの各頂点にはワイヤハーネスWHが嵌挿できる嵌挿孔を有するワイヤハーネス固定部10C(余長ループ部位)、ワイヤハーネス固定部10B(基部)、ワイヤハーネス固定部10T(頂部)が形成されている。
ワイヤハーネス固定部10Cと10Bを結ぶクランプ辺を10BC、ワイヤハーネス固定部10Bと10Tを結ぶクランプ辺を10BT、ワイヤハーネス固定部10Cと10Tを結ぶクランプ辺を10CTとしている。
クランプ辺10BCの長さは、ワイヤハーネスWHの想定される最大余長部によって作られるループの直径にほぼ一致している。
クランプ辺10BTの長さは、ワイヤハーネスWHに作用する引っ張り力の想定される最大引っ張り力によって余長部が水平方向に移動する距離よりも若干長くなっている。
【0015】
〈ワイヤハーネス保持具10の使用法〉
三角クランプから成るワイヤハーネス保持具10のワイヤハーネス固定部10B(基部)の嵌挿孔にワイヤハーネスWHの先端を嵌挿し、想定される余長部長さで作られるループの直径位置にあるワイヤハーネス固定部10C(ループ部位)の嵌挿孔にワイヤハーネスWHの先端を嵌挿して通過させ、さらに、ワイヤハーネス固定部10T(頂部)の嵌挿孔にワイヤハーネスWHの先端を嵌挿し、その後、ワイヤハーネスWHの先端を目的物(エンジン、車体ボデイ等)まで敷設する。ワイヤハーネスWHの先端側の所定箇所を対象物に固定し、ワイヤハーネスWHの後端側の所定箇所を別の対象物に固定する。
【0016】
〈ワイヤハーネス保持具10の動作〉
このような状態において、ワイヤハーネスWHに外力が作用していないとき、外力が作用したときのワイヤハーネス保持具10の動作について、それぞれ説明する。
【0017】
《ワイヤハーネスWHに外力が作用していないとき》
このような状態において、ワイヤハーネスWHに外力が作用していないときは、
図1(2)(A)の各図(イ)〜(ハ)のようになっている。
すなわち、(イ)では、クランプ辺10BTはワイヤハーネス固定部10Bから垂直にワイヤハーネス固定部10Tに延びている(すなわち、変形(変位)していない)。
(ロ)では、クランプ辺10CTはワイヤハーネス固定部10Cから垂直にワイヤハーネス固定部10Tに延びている(すなわち、変形(変位)していない)。
(ハ)では、クランプ辺10BCはワイヤハーネス固定部10Cから垂直にワイヤハーネス固定部10Bに延びている(すなわち、変形(変位)していない)。
【0018】
《ワイヤハーネスWHの一端に外力F1が作用したとき》
ワイヤハーネスWHの一端に
図1(2)(B)の外力F1方向に引っ張り力が作用すると、(イ)において、ワイヤハーネスWHを嵌通させているワイヤハーネス固定部10TがF1方向に引っぱられ、三角クランプは本発明により弾性材料で作られているので、クランプ辺10BTはワイヤハーネス固定部10Bを支点として図で左方向に傾斜して引っ張り力に応じるため、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
F1方向の引っ張り力が大きくなれば、それに応じてクランプ辺10BTはワイヤハーネス固定部10Bを支点として大きく傾斜することで、引っ張り力の大小に対応している。
また、三角クランプの他のクランプ辺10CTも、図(B)(ロ)のようにワイヤハーネス固定部10Cを支点として図で左方向に傾斜して引っ張り力に応じるため、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
F1方向の引っ張り力が大きくなれば、それに応じてクランプ辺10CTはワイヤハーネス固定部10Cを支点として大きく傾斜することで、引っ張り力の大小に対応している。
【0019】
《ワイヤハーネスWHの前記一端に反対方向の外力F1が作用したとき》
なお、ワイヤハーネスWHを縮める方向に力(収縮力)が作用すると、すなわち、ワイヤハーネスWHの前記一端に外力F1の向きと反対方向に外力F1が作用すると、上記のワイヤハーネス固定部10Tが反対方向に移動することになるが、三角クランプは本発明により弾性材料で作られているので、クランプ辺10BTはワイヤハーネス固定部10Bを支点として今度は図で右方向に傾斜して収縮力に応じるため、この場合も、同じく、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
また、クランプ辺10CTの動作もこれと同じであり、クランプ辺10CTはワイヤハーネス固定部10Cを支点として今度は図でに右方向に傾斜して収縮力に応じるため、この場合も、同じく、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
【0020】
《ワイヤハーネスWHの他端に外力F2が作用したとき》
ワイヤハーネスWHの他端に
図1(2)(C)の外力F2方向に引っ張り力が作用したときも、本発明によれば同様に引っ張り力を吸収することができる。
図(2)(C)(イ)において、ワイヤハーネスWHの他端にF2方向に引っ張り力が作用すると、ワイヤハーネスWHを嵌通させているワイヤハーネス固定部10BがF2方向に引っぱられ、三角クランプは弾性材料で作られているので、クランプ辺10BTはワイヤハーネス固定部10Tを支点として図で右方向に傾斜して引っ張り力に応じるため、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
F2方向の引っ張り力が大きくなれば、それに応じてクランプ辺10BTはワイヤハーネス固定部10Tを支点として大きく傾斜することで、引っ張り力の大小に対応している。
また、三角クランプの他のクランプ辺10BCも、図(C)(ハ)のようにワイヤハーネス固定部10Cを支点として図で右方向に傾斜して引っ張り力に応じるため、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
F2方向の引っ張り力が大きくなれば、それに応じてクランプ辺10BCはワイヤハーネス固定部10Cを支点として大きく傾斜することで、引っ張り力の大小に対応している。
【0021】
《ワイヤハーネスWHの前記他端に反対方向の外力F2が作用したとき》
なお、前記他端にワイヤハーネスWHを縮める方向に力(収縮力)が作用すると、すなわち、ワイヤハーネスWHの前記他端に外力F2の向きと反対方向に外力F2が作用すると、上記のワイヤハーネス固定部10Bが反対方向に移動することになるが、三角クランプは本発明により弾性材料で作られているので、クランプ辺10BTはワイヤハーネス固定部10Tを支点として今度は図で左方向に傾斜して収縮力に応じるため、この場合も、同じく、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
また、クランプ辺10BCの動作もこれと同じであり、クランプ辺10BCはワイヤハーネス固定部10Cを支点として今度は図でに左方向に傾斜して収縮力に応じるため、この場合も、同じく、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
【0022】
〈ワイヤハーネス保持具10の効果〉
このように、三角クランプは本発明により弾性材料で作られているので、ワイヤハーネスWHの一端にどちら方向に外力が作用しても、クランプ辺はワイヤハーネス固定部を支点として傾斜してその外力に応じるため、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
また、ワイヤハーネス余長部WCであるワイヤハーネスのループ部の交差側と直径方向反対側の自由端が三角クランプのワイヤハーネス固定部で固定されるので自由に遊動することがなく、したがって、ワイヤハーネスのループ部側にある他の部材との間に、大きなクリアランスを設ける必要がなくなる。
さらに、ワイヤハーネス保持具の主たる構成は弾性材料で作られた単なる三角クランプであるので、構造部品の点数が少なく複雑なユニットとならないため、故障することもない。
また、ループ部の交差側と直径方向反対側の自由端もワイヤハーネス固定部で固定されるので、ばたつきがなくなり、ループ部の打音防止が期待できるため、周辺部品の設計自由度が上がる。
このワイヤハーネス保持具10はクランプ辺が撓む(変形する)ことにより、自動車足回りやドアヒンジ回りなどの可動する際に必要なワイヤハーネス長さを供給することが可能となる。
なお、以上の説明では、ワイヤハーネス固定部として、三角クランプの各頂点に形成されたワイヤハーネス嵌挿孔の実施例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の固定方法(例えば、係止溝、引っ掛け鉤、接着テープによる固定)でもよい。
【0023】
〈本発明の実施形態2に係るワイヤハーネス保持具20〉
図2は本発明の実施形態2に係るワイヤハーネス保持具を説明する図である。
図2(A)において、本発明の実施形態2に係るワイヤハーネス保持具20は、実施形態1(
図1)と同じく弾性のある合成樹脂・金属・ゴム等で形成された2辺と、実施形態2で新たに採用された長さ方向に伸縮可能な弾性のある1辺とから成る三角クランプで、三角クランプの各頂点には、実施形態1(
図1)と同じくワイヤハーネスWHが嵌挿できる嵌挿孔を有するワイヤハーネス固定部20C(余長ループ部位)、ワイヤハーネス固定部20B(基部)、ワイヤハーネス固定部20T(頂部)が形成されている。
ワイヤハーネス固定部20Cと20Bを結ぶクランプ辺を20BC、ワイヤハーネス固定部20Bと20Tを結ぶクランプ辺を20BT、ワイヤハーネス固定部20Cと20Tを結ぶクランプ辺を20CTとしている。
実施形態1においてワイヤハーネス保持具10の
図1(2)の(A)〜(C)の動作は、実施形態2のワイヤハーネス保持具20も同じく
図1(2)の(A)〜(C)の動作ができるので、ワイヤハーネス保持具20についての
図1(2)の(A)〜(C)の動作の説明は割愛する。
本発明の実施形態2に係るワイヤハーネス保持具20が実施形態1に係るワイヤハーネス保持具10(
図1)と異なるのは、実施形態1に係るクランプ辺の1つが、さらに、長さ方向に伸縮可能となっている点である。その他はすべて実施形態1に同じである。
【0024】
〈ワイヤハーネス保持具20の長さ方向に伸縮可能なクランプ辺20BT〉
図2(1)において、ワイヤハーネス保持具20のワイヤハーネス固定部20B(基部)とワイヤハーネス固定部20T(頂部)とを連結するクランプ辺20BTは、例えば、弾性のある長尺状金属板に長さ方向に波形を形成して長さ方向に伸縮可能としている(
図2の(2)(A)参照)。
クランプ辺20BTに引っ張り方向や圧縮方向に力が加わると、これに応じてクランプ辺20BTは伸縮するようになる。
図2の(2)(A)は外力が加わっていない状態を示している。
そこで、ワイヤハーネスWHに、クランプ辺20BTを引っ張る方向(
図2の(2)(B)参照)に引っ張り力F5が作用すると、ワイヤハーネス固定部20Tが上昇移動することになるが、クランプ辺20BTは実施形態2によって長さ方向に伸縮可能となっているので、クランプ辺20BTはワイヤハーネス固定部20Bを支点として伸長することで上昇移動して、この引っ張り力に追従するため、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
また、ワイヤハーネスWHに、クランプ辺20BTを圧縮する方向(
図2の(2)(C)参照)に圧縮力F6が作用すると、ワイヤハーネス固定部20Tが下降移動することになるが、クランプ辺20BTは実施形態2によって長さ方向に伸縮可能となっているので、クランプ辺20BTはワイヤハーネス固定部20Bを支点として圧縮することで下降移動して、この圧縮力に追従するため、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
なお、上記の実施例では、長尺状金属板に長さ方向に波形を形成して長さ方向に伸縮可能としたが、本発明ではこれに限定されるものではなく、長さ方向に波形を形成した合成樹脂でも、長さ方向に伸縮可能な長尺状ゴム板でもよい。
【0025】
〈実施形態2に係るワイヤハーネス保持具20の効果〉
このように、ワイヤハーネス保持具20は本発明により弾性材料で作られているので、ワイヤハーネスWHの一端にどちら方向に外力が作用しても、クランプ辺はワイヤハーネス固定部を支点として傾斜して引っ張り力に応じるため、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
さらに、ワイヤハーネスの長さ方向だけではなく、余長の上下方向にもワイヤハーネス供給と吸収が可能となる。ワイヤハーネス固定部に上下方向の外力が作用しても、クランプ辺は実施形態2によって長さ方向に伸縮可能となっているので、クランプ辺は外力の方向に追従するため、ワイヤハーネスWHに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
【0026】
〈三角クランプの変形例〉
以上の実施形態1および2では、三角クランプを用いた3点支持のワイヤハーネス保持具について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ワイヤハーネスがそれほど重量のない場合やクランプ材料の耐性が大きい場合であれば、三角クランプの1クランプ辺(例えば、10CT、20CT)を除去したタイプの3点支持のワイヤハーネス保持具を用いると、使える自由空間が広くなるので好適である。
【0027】
〈2点の固定のワイヤハーネス保持具〉
以上の実施形態1および2では、3点支持のワイヤハーネス保持具について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ワイヤハーネスが重量があって移動しにくい場合には、三角クランプの1クランプ辺(例えば、10ST、20BT)だけによる2点支持のワイヤハーネス保持具を用いると、使える自由空間がさらに広くなるのでより好適である。
【0028】
〈まとめ〉
以上、本発明によれば、ワイヤハーネスの一端に外力が作用しても、クランプ辺はワイヤハーネス固定部を支点として傾斜して引っ張り力に応じるため、ワイヤハーネスに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。
また、ワイヤハーネスの余長部であるワイヤハーネスのループ部の交差側と直径方向反対側の自由端が三角クランプのワイヤハーネス固定部で固定されるので自由に遊動することがなく、したがって、ワイヤハーネスのループ部側にある他の部材との間に、大きなクリアランスを設ける必要がなくなる。
さらに、ワイヤハーネス保持具の主たる構成は弾性材料で作られた単なる三角クランプであるので、構造部品の点数が少なく複雑なユニットとならないため、故障することもない。
各クランプ辺が弾性材料でできているので、弾性変形が可能であり、ワイヤハーネスの供給方向がワイヤハーネスの長手方向以外の場合にも対処できる。
また、実施形態2によれば、3つのワイヤハーネス固定部のうちワイヤハーネスのループが交差する側にある2つのワイヤハーネス固定部の間に伸び縮みする方向の外力が作用しても、クランプ辺が長さ方向に伸縮可能となっているので、クランプ辺は外力の方向に追従するため、ワイヤハーネスに無理な大きな力を作用させなくなり、ワイヤハーネスが損傷を受けることがない。