(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154237
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】噴射容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20170619BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
B65D83/00 G
B05B9/04
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-159275(P2013-159275)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-30472(P2015-30472A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 敏嗣
(72)【発明者】
【氏名】中藤 登
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−162274(JP,A)
【文献】
実開平02−150062(JP,U)
【文献】
特開平11−091784(JP,A)
【文献】
特開2007−112478(JP,A)
【文献】
特開2012−111527(JP,A)
【文献】
実開昭52−091078(JP,U)
【文献】
実開平02−070751(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 83/14−83/76
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも気体もしくは液体を含む封入物を外圧より高圧で充填し、バルブを開けることにより、充填されていた前記封入物を外部に噴射できる噴射容器であって、
前記封入物を充填可能であって弾性的に伸縮する伸縮袋体と、
前記伸縮袋体の外側を覆う容器本体と、
を備え、
前記容器本体は、前記伸縮袋体の伸縮に応じて、その長さ方向に伸縮可能な構成を備え、前記伸縮袋体の一部を、前記容器本体の底部に固定して成ることを特徴とする噴射容器。
【請求項2】
前記容器本体は、2以上の筒体を備え、一方の筒体の内径よりも当該一方の筒体と隣接する他方の筒体の外径を小さく構成し、前記他方の筒体の少なくとも一部を前記一方の筒体の内方に収納可能とすることを特徴とする請求項1に記載の噴射容器。
【請求項3】
前記一方の筒体と前記他方の筒体とを互いに異なる色にすることを特徴とする請求項2に記載の噴射容器。
【請求項4】
前記容器本体に、その内部に格納される前記伸縮袋体を目視可能な窓部を備え、
前記窓部は、前記一方の筒体に形成される第一窓部と、前記他方の筒体に形成される第二窓部とを少なくとも含み、
前記第一窓部および前記第二窓部は、前記容器本体の収縮時に互いに重なり合うように、前記一方の筒体および前記他方の筒体にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の噴射容器。
【請求項5】
前記容器本体は、さらに、外部から光を入れるための明かり窓を備えることを特徴とする請求項4に記載の噴射容器。
【請求項6】
前記伸縮袋体は、その内部に芯材を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の噴射容器。
【請求項7】
前記伸縮袋体は、シリコーンゴムから主に構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の噴射容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封入物を噴射する噴射容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、殺虫・防虫剤、化粧料、消火剤などの封入物を噴霧させるスプレー式の容器として、容器内に圧縮気体によって加圧された液剤を細い管を通して外部に噴射させる、いわゆるエアゾール製品が知られている。かかる従来から公知のエアゾール製品の主流は、耐圧構造を持つ金属缶を用いたものであることから、封入物の目視での確認は困難である。このため、金属缶を持ち上げあるいは振るなどして、封入物の残量を推測するのが一般的である。
【0003】
一方、耐圧構造を有する金属缶を用いずに、伸縮自在な袋体に封入物を充填し、当該袋体を容器内に入れたものも知られている(例えば、特許文献1を参照)。この容器は、側面に窓を備え、窓を通して容器内の袋体の大きさを確認することにより、封入物の残量を推測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−102566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示される容器には、次のような問題がある。封入物が少なくなるに伴い容器内の袋体が収縮して小さくなると、袋体が容器の内壁から離れるため、窓を通じて袋体の大きさを目視で確認することが困難になる。このため、封入物の残量を推測することが難しくなる。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、容器を耐圧構造とする必要が無いことを前提に、封入物の残量を外部から容易に目視で確認可能な噴射容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一形態は、少なくとも気体もしくは液体を含む封入物を外圧より高圧で充填し、バルブを開けることにより、充填されていた封入物を外部に噴射できる噴射容器であって、封入物を充填可能であって弾性的に伸縮する伸縮袋体と、その伸縮袋体の外側を覆う容器本体とを備え、容器本体を、伸縮袋体の伸縮に応じて、その長さ方向に伸縮可能な構成とする噴射容器である。
【0008】
本発明の別の形態は、さらに、容器本体には、2以上の筒体を備え、一方の筒体の内径よりも当該一方の筒体と隣接する他方の筒体の外径を小さく構成し、他方の筒体の少なくとも一部を一方の筒体の内方に収納可能とする噴射容器である。
【0009】
本発明の別の形態は、さらに、一方の筒体と他方の筒体とを互いに異なる色とした噴射容器である。
【0010】
本発明の別の形態は、さらに、容器本体に、その内部に格納される伸縮袋体を目視可能な窓部を備え、窓部に、一方の筒体に形成される第一窓部と、他方の筒体に形成される第二窓部とを少なくとも含み、第一窓部および第二窓部を、容器本体の収縮時に互いに重なり合うように、一方の筒体および他方の筒体にそれぞれ形成した噴射容器である。
【0011】
本発明の別の形態は、さらに、容器本体に、外部から光を入れるための明かり窓を備える噴射容器である。
【0012】
本発明の別の形態は、また、伸縮袋体の一部を、容器本体の底部に固定して成る噴射容器である。
【0013】
本発明の別の形態は、また、伸縮袋体の内部に芯材を備える噴射容器である。
【0014】
本発明の別の形態は、また、伸縮袋体を、シリコーンゴムから主に構成した噴射容器である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容器を耐圧構造とする必要が無いことを前提として、封入物の残量を容易に目視で確認可能な噴射容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る噴射容器の斜視図(1A)および封入物を充填した状態の噴射容器を面Sによってその高さ方向に切断した際の縦断面斜視図(1B)をそれぞれ示す。
【
図2】
図2は、
図1の(1B)に示す状態から封入物を噴射し終えた状態の噴射容器の縦断面斜視図を示す。
【
図3】
図3は、第二実施形態に係る噴射容器に封入物を充填した状態の斜視図(3A)および同噴射容器から封入物を噴射した状態の斜視図(3B)をそれぞれ示す。
【
図4】
図4は、
図3に示す噴射容器の変形例であって、封入物を充填した状態の斜視図(4A)および同噴射容器から封入物を噴射した状態の斜視図(4B)をそれぞれ示す。
【
図5】
図5は、第三実施形態に係る噴射容器に封入物を充填した状態の斜視図(5A)および同噴射容器から封入物を噴射した状態の斜視図(5B)をそれぞれ示す。
【
図6】
図6は、
図5に示す噴射容器の変形例であって、封入物を充填した状態の斜視図(6A)および同噴射容器から封入物を噴射した状態の斜視図(6B)をそれぞれ示す。
【
図7】
図7は、第四実施形態に係る噴射容器に封入物を充填する前の状態であって、
図1の面Sと同様の面によって切断した縦断面斜視図を示す。
【
図8】
図8は、
図7の噴射容器内に封入物を充填した状態の同縦断面斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る噴射容器の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係る噴射容器の斜視図(1A)および封入物を充填した状態の噴射容器を面Sによってその高さ方向に切断した際の縦断面斜視図(1B)をそれぞれ示す。
図2は、
図1の(1B)に示す状態から封入物を噴射し終えた状態の噴射容器の縦断面斜視図を示す。
【0019】
この実施形態に係る噴射容器1は、少なくとも気体もしくは液体を含む封入物15を外圧より高圧で充填し、後述のバルブ6を開けることにより、充填されていた封入物15を外部に噴射できる容器である。封入物15としては、気体のみ、液体のみ、気体と液体の混合物、気体と固体の混合物、液体と固体の混合物、気体と液体と固体の混合物のいずれかであれば特に制限無く、消火剤、防虫剤、殺虫剤、塗料、消臭剤、潤滑剤(例えば、防錆用のもの)、人体用消臭剤、制汗剤、医薬品、シェービングクリーム、ボディソープ、化粧料、食用油、液体調味料、頭髪用品、香水などを例示できる。噴射容器1は、封入物15を充填可能であって弾性的に伸縮する伸縮袋体10と、その伸縮袋体10の外側を覆う容器本体2と、を備える。容器本体2は、伸縮袋体10の伸縮に応じて、その長さ方向に伸縮可能な構成を有する。より具体的には、容器本体2は、2以上の筒体であって、一方の筒体(「上筒体」という)2aと、当該上筒体2aと隣接する筒体であって上筒体2aの内径より外径の小さな他方の筒体(「下筒体」という)2bと、を備える。
【0020】
蓋部材3は、好適に、容器本体2側に窪む凹部を有し、その凹部の略中央部に、上方に向かって突出する突出部4を有する。突出部4は、その上方に、容器本体2側に向かって押し込み可能なアクチュエーター5を備える。アクチュエーター5は、その底部にバルブ6を有しており、そのバルブ6が突出部4の天面に形成された開口部を開閉できるように、突出部4の内部に挿入する形態にて突出部4の上部に配置されている。アクチュエーター5は、その上方の側面に形成される噴射口7を備える。噴射口7は、アクチュエーター5の内部に形成される経路8から突出部4の内部を経て、容器本体2の内部空間9に配置された伸縮袋体10の内部へとつながっている。
【0021】
容器本体2は、略円筒形状の容器であり、その長さ方向に2分割されている。容器本体2の一つは、蓋部材3に接続され、下方に開口する上筒体2aである。容器本体2のもう一つは、上筒体2aの内方に上方の大部分を収納可能であって、容器本体2の底部を備える下筒体2bである。(1B)の部位Aを拡大して示すように、上筒体2aは、その下周端に、内側に延出する内側フランジ21を有する。また、下筒体2bは、その上周端に、外側に延出する外側フランジ22を有する。上筒体2aは、内側フランジ21と外側フランジ22を噛み合わせるように、下筒体2bを挿入している。このため、下筒体2bは、上筒体2aから外れない。下筒体2bは、その底部に、2つの貫通孔30を備える。このため、容器本体2の内部空間9において、伸縮袋体10が膨張しても、内部空間9の内圧が高くならずに、外部の圧力と同じ圧力を維持できる。
【0022】
容器本体2は、樹脂(ゴムも含むように広義に解釈する)、ガラス、金属などの如何なる材料から構成されていても良いが、後述のように、直接、高圧の気体と接することがないため、必ずしも高い耐圧性を要しない。よって、容器本体2は、SUSなどの剛性の高い金属で構成される必要は無く、樹脂、あるいは金属であっても薄肉のアルミニウムなどの材料にて好適に構成される。
【0023】
伸縮袋体10は、容器本体2の内部に配置されると共に封入物15を充填するための袋体であって、封入物15の出入りに伴い弾性的に伸縮可能である。この実施形態では、伸縮袋体10は、一方を開口し、その反対側を湾曲状に閉塞させた略円筒形状の袋である。伸縮袋体10は、その開口部12を、蓋部材3の裏側の内壁と環状の固定具11との間で挟持するように固定され、容器本体2の内部空間9に吊り下げられた状態で配置されている。容器本体2と伸縮袋体10とは、別々の空間を形成しており、互いにつながっていない。伸縮袋体10は、その底部に突出部13を備え、当該突出部13を、容器本体2の底に形成された貫通孔14に貫通させて固定する。このため、封入物15を伸縮袋体10から外部に噴射させるに伴い伸縮袋体10が収縮すると、下筒体2bは、伸縮袋体10と共に上昇可能である。ただし、伸縮袋体10の底部に突出部13を形成することは必須ではなく、伸縮袋体10の底部を下筒体2bの内底面に接着しても良い。すなわち、伸縮袋体10の一部を、容器本体2の底部に固定して成る限り、突出部13および貫通孔14の存否は問わない。さらには、伸縮袋体10と下筒体2bとを固定しなくても良い。その場合、下筒体2bは、伸縮袋体10が収縮していく際に、伸縮袋体10から引っ張られないが、重力の作用を受けて、上筒体2aの内方に入っていくようにしても良い。
【0024】
伸縮袋体10は、伸縮性に富む樹脂材料、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴムあるいはスチレンブタジエンゴム等の熱硬化性エラストマー、ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系あるいはフッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等などから構成される。また、伸縮袋体10は、封入物15と接触しても容易に変性しないように、耐酸性若しくは耐アルカリ性、耐油性、耐溶剤性等の高い樹脂材料にて構成されるのが好ましく、例えば、フッ素系のゴムから好適に構成される。ただし、伸縮袋体10の内部表面に、フッ素コーティングを施し、伸縮袋体10自体の主材には、フッ素系のゴムよりも耐変性の低い材料、例えば、シリコーンゴムを用いても良い。また、封入物15の化学的作用が弱いなどの場合には、弾力性に富むシリコーンゴムを伸縮袋体10の材料に用いるのが好ましい。
【0025】
図2に示すように、伸縮袋体10の内部から封入物15を外部に向けて噴射すると、伸縮袋体10が収縮し、その収縮に伴い、下筒体2bが上筒体2aの内方に入りこみ、容器本体2の長さが短くなる。このため、容器本体2を不透明な材料で構成されていても、外部から容器本体2の長さを見ただけで、封入物15の減少を把握できる。また、上筒体2aの色と下筒体2bの色とを互いに異なる色とすると、封入物15の減少を外部からより把握しやすくなる。
【0026】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る噴射容器について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0027】
図3は、第二実施形態に係る噴射容器に封入物を充填した状態の斜視図(3A)および同噴射容器から封入物を噴射した状態の斜視図(3B)をそれぞれ示す。
【0028】
第二実施形態に係る噴射容器1aは、第一実施形態に係る噴射容器1と同じ伸縮袋体10を備えるが、容器本体2の表面状態において相違する。具体的には、噴射容器1aは、下筒体2bの表面に、目盛40を有する。目盛40は、下筒体2bの下から上に向かって、E(エンプティを意味する)からF(フルを意味する)までを複数に分けて表示する。容器本体2中の伸縮袋体10から封入物15が減るに従って、伸縮袋体10がその長さ方向に収縮し、これによって、下筒体2bが上筒体2aの内方に入っていく。この結果、目盛40の上の一部が上筒体2aに隠れる。かかる目盛40の構成によって、使用者は、目盛40の内の下方の部分を目視することで、封入物15の残量を間接的に把握できる。
【0029】
図4は、
図3に示す噴射容器の変形例であって、封入物を充填した状態の斜視図(4A)および同噴射容器から封入物を噴射した状態の斜視図(4B)をそれぞれ示す。
【0030】
図4に示す変形例としての噴射容器1bは、先に説明した噴射容器1aと異なり、伸縮袋体10の収縮に伴い、上筒体2cが下筒体2dの内方に入っていく構造の容器本体2を有する。容器本体2中の構造は、噴射容器1aと同一である。噴射容器1bは、上筒体2cの表面に、目盛40を有する。目盛40は、上筒体2cの下から上に向かって、FからEまでを複数に分けて表示する。このように、伸縮袋体10の収縮に伴い外部に露出する部分が減る上筒体2cに目盛40を示すことで、使用者は、目盛40の外部に見えている部分から、封入物15の残量を間接的に把握できる。
【0031】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態に係る噴射容器について説明する。第三実施形態において、第一実施形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0032】
図5は、第三実施形態に係る噴射容器に封入物を充填した状態の斜視図(5A)および同噴射容器から封入物を噴射した状態の斜視図(5B)をそれぞれ示す。
【0033】
第三実施形態に係る噴射容器1cは、第一実施形態に係る噴射容器1と同じ伸縮袋体10を備えるが、容器本体2を構成する上筒体2aおよび下筒体2bに、それぞれ第一窓部51および第二窓部52を備えると共に、それぞれ第一明かり窓53および第二明かり窓54を備える点において相違する。第一窓部51および第二窓部52は、容器本体2の内部に格納される伸縮袋体10を目視可能な窓部の一例であり、容器本体2の収縮時に互いに重なり合うように、上筒体2aおよび下筒体2bにそれぞれ形成されている。第一窓部51および第二窓部52は、それぞれ、上筒体2aおよび下筒体2bの側面を内外方向に貫通し、そこに透明な板を嵌め込んだ構造を有する。ただし、第一窓部51および第二窓部52は、単なる貫通領域とし、そこに透明な板を備えていなくても良い。
【0034】
第一明かり窓53および第二明かり窓54は、容器本体2の外部から伸縮袋体10に光を入れるための明かり窓の一例であり、容器本体2の収縮時に互いに重なり合うように、上筒体2aおよび下筒体2bにそれぞれ形成されている。第一明かり窓53および第二明かり窓54も、第一窓部51および第二窓部52と同様、透明な板を嵌め込んだ構造を有するが、単なる貫通領域としても良い。第一明かり窓53および第二明かり窓54は、第一窓部51および第二窓部52から伸縮袋体10をより見やすくするために、好適には、第一窓部51および第二窓部52に対して容器本体2の周囲180度反対側に形成される。ただし、第一明かり窓53および第二明かり窓54を、第一窓部51および第二窓部52に対して容器本体2の周囲180度未満の角度を成す位置に形成されていても良い。また、明かり窓を1つのみ、例えば、第一明かり窓53のみを容器本体2に形成しても良い。
【0035】
容器本体2の収縮時に、第一窓部51と第二窓部52とが重なり合うためには、上筒体2aと下筒体2bとを互いに回転自在にしないのが好ましい。上筒体2aと下筒体2bが略円筒形状である場合には、何らの回転防止機構を設けなければ、上筒体2aの第一窓部51と下筒体2bの第二窓部52とがずれる可能性がある。そこで、上容器2aの内側面および下容器2bの外側面に縦溝を形成して、互いの凹凸の係合によって、上容器2aと下容器2bとが相対的に回転しないようにするのが好ましい。回転防止機構は、上記の縦溝に限定されない。例えば、第一窓部51と第二窓部52の両側に互いに嵌め込み可能な凹凸ラインを形成し、上筒体2aと下筒体2bとが互いに周方向に回転しないようになっていても良い。一方、上筒体2aと下筒体2bが略多角形の筒形状である場合には、互いに回転しにくいので、このような縦溝を形成する必要はない。
【0036】
図6は、
図5に示す噴射容器の変形例であって、封入物を充填した状態の斜視図(6A)および同噴射容器から封入物を噴射した状態の斜視図(6B)をそれぞれ示す。
【0037】
図5に示す変形例としての噴射容器1dは、先に説明した噴射容器1cと、窓部の形状および明かり窓を形成していない点で異なる。噴射容器1dは、容器本体2を構成する上筒体2aおよび下筒体2bに、それぞれ略H形状の第一窓部61および第二窓部62を備える。この実施形態では、第一窓部61および第二窓部62共に、透明な板を嵌め込んだ構造を有する。ただし、上筒体2aおよび下筒体2bの各一部を切り取らないように第一窓部61および第二窓部62を形成する限り、透明な板を嵌め込むことなく、単なる貫通領域としても良い。
【0038】
第一窓部61は、縦方向の2本の細長領域と、それらを繋ぐ横方向の1本の細長領域61aとを有する。第二窓部62も、同様に、縦方向の2本の細長領域と、それらを繋ぐ横方向の1本の細長領域62aとを有する。細長領域61aと細長領域62aとは、好適には、上筒体2aと下筒体2bがどのような重なり合いの状態であっても、細長領域61aおよび細長領域62aの少なくともいずれか一方を通じて、容器本体2の内部空間9にある伸縮袋体10を視認可能に配置される。すなわち、細長領域61aおよび細長領域62aの両方が上筒体2aおよび下筒体2bによって覆われないようにするのが好ましい。この実施形態では、容器本体2が最も長い状態および最も短い状態のときに、細長領域61aとおよび細長領域62aの両方から伸縮袋体10を視認でき、両状態以外のときには、できるだけ、細長領域61aから伸縮袋体10を視認できるようにしている。このような状況を実現する上では、細長領域62aを下筒体2bの高さ方向のできるだけ上方に形成し、細長領域61aが下筒体2bによって閉鎖される状況をできるだけ避けるようにするのが好ましい。なお、第一窓部61および第二窓部62の各形状および各大きさは、適宜変更しても良い。また、明かり窓を、別途、形成しても良い。
【0039】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態に係る噴射容器について説明する。第四実施形態において、第一実施形態と共通する部分については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0040】
図7は、第四実施形態に係る噴射容器に封入物を充填する前の状態であって、
図1の面Sと同様の面によって切断した縦断面斜視図を示す。
図8は、
図7の噴射容器内に封入物を充填した状態の同縦断面斜視図を示す。
【0041】
第四実施形態に係る噴射容器1eは、伸縮袋体10の内部に芯材70を配置している点において、第一実施形態に係る噴射容器1と異なる。芯材70は、
図8に示すように、伸縮袋体10が膨張しても、その位置を変えないように、好適には、蓋部材3の裏側に固定されている。芯材70は、伸縮袋体10から封入物15を噴射し終わった段階で、伸縮袋体10の内面と密着できるような形状を備える。ただし、芯材70は、上記段階において、伸縮袋体10の内面との間に隙間を有するように、少し小さく構成されていても良い。芯材70は、伸縮袋体10の内外に封入物15を出し入れするための流路73を有する。この実施形態では、流路73は、芯材70の上面71から側面72まで貫通する貫通路の形態を有する。ただし、流路73は、芯材70の内部を上下方向に貫く貫通路の形態であっても良い。また、流路73は、芯材70の外表面に形成される溝であっても良い。
【0042】
この実施形態では、芯材70は、封入物15を噴射し終わった状態の伸縮袋体10の容積よりも少し大きく構成されているため、封入物15を噴射し終わると、伸縮袋体10は、芯材70を圧縮する方向に力を及ぼす。これにより、封入物15の噴射力を最後まで維持でき、かつ封入物15の残留もより低減できる。
【0043】
<その他の実施形態>
以上、本発明の噴射容器の各実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されず、種々の変形を施すことができる。
【0044】
容器本体2は、その底部に、外部と連通する2個の貫通孔30を備えるが、貫通孔30の個数あるいは配置箇所は問わない。また、容器本体2に貫通孔30を形成せずに、蓋部材3に貫通孔を形成し、容器本体2の内部空間9と外部とをつなげるようにしても良い。さらには、容器本体2に貫通孔30を設けずに、その内部空間9が多少加圧された状態になるようにしても良い。
【0045】
容器本体2は、伸縮袋体10の伸縮に応じて、その長さ方向に伸縮可能な構成を備える限り、上筒体2a,2cおよび下筒体2b,2dから構成される形態に限定されない。例えば、容器本体2を、その長さ方向の一部に弾性ゴムから成る蛇腹を有する熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂製の容器とし、伸縮袋体10の伸縮に応じて蛇腹部分を伸縮させ、その容器の長さを変えられるものでも良い。また、容器本体2を、径の大きさの異なる3以上の筒体から構成し、隣接する筒体同士を収納可能な構成としても良い。
【0046】
本発明の各実施形態は、互いに組み合わせることのできる範囲で、各構成部を組み合わせることもできる。例えば、噴射容器1bの上筒体2cおよび下筒体2dを、第三または第四実施形態に採用しても良い。第四実施形態に係る噴射容器1eの芯材70を、第二または第三実施形態に採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば、消火剤、防虫剤、殺虫剤、塗料、消臭剤、潤滑剤(例えば、防錆用のもの)、人体用消臭剤、制汗剤、医薬品、シェービングクリーム、ボディソープ、化粧料、食用油、液体調味料、頭髪用品、香水などを充填可能な弾性的に伸縮可能な袋体、およびそれを備える容器として利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1,1a,1b,1c,1d,1e 噴射容器
2 容器本体
2a,2c 上筒体(筒体)
2b,2d 下筒体(筒体)
6 バルブ
10 伸縮袋体
15 封入物
51 第一窓部(窓部)
52 第二窓部(窓部)
53 第一明かり窓(明かり窓)
54 第二明かり窓(明かり窓)
61 第一窓部(窓部)
62 第二窓部(窓部)
70 芯材