(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2エンドキャップとの間で分配流路を形成しつつ、前記外筒の一端に接合している外筒キャップを、前記外筒口が貫通しており、前記分配流路が、前記外筒口と前記外流路溝とを繋いでいることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のフィルターユニット。
前記外筒、前記第1エンドキャップ及び/又は前記第2エンドキャップを貫通し、前記外流路溝及び/又は前記内流路溝に繋がっているエアベントを、少なくとも1つ有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のフィルターユニット。
【背景技術】
【0002】
フィルターは、水、燃料、塗料、オイル等の液体を濾過する際に用いられる。フィルターは、プリーツ折りされたり、巻かれたりしているシート状の不織布等の端部が固定されているものである。このようなフィルターは、筒形状をなしている。このフィルターの外周面から内空に向って、又はその逆に被濾過液を流して濾過し、濾過済液を得る。
【0003】
フィルターを樹脂製や金属製の容器であるカプセルに収容し、このカプセルごと交換可能なフィルターユニットが知られている。このフィルターユニットは、カプセル内のフィルターに触れることなく交換作業をすることができる。使用済のフィルターユニットは、分解されることなく、そのまま廃棄される。
【0004】
特許文献1に、ハウジングに収容されたフィルターの内空と、ハウジングの底部と、フィルターの側面とに液体の流路を設け、この順で被濾過液を流すフィルターユニットが開示されている。
【0005】
図12に示す従来のフィルターユニット70は、多孔のカバー72に覆われ、かつ内空にコア75が挿入されているフィルター73がカプセル71内に収納されているものである。カプセル71とカバー72との間の空間は、被濾過液流路74である。液体は矢印方向に流れフィルター73を通過して濾過される。
【0006】
特許文献1に開示されているフィルターユニットや、従来のフィルターユニット70は、比較的容積の大きい流路を有している。そのため、廃棄されるフィルターユニットの流路や従来のフィルターユニット70の流路に液体が残存しており、そのまま廃棄されていた。
【0007】
フィルターユニットの流路や、フィルターユニットの流路に残存した液体の中でも、貴金属を含んでいるもの、及びコストの高い精製を経ているもののように高価な液体や、少量しか用意できない液体は、フィルターユニットとともに廃棄されず、回収されることがある。特に高粘度の液体の場合、フィルターユニットを振盪したり、被濾過液の流入口や濾過済液の流出口から掻き出したりしても、流路に残存する液体を取り出して回収することは困難である。
【0008】
流路に残存する液体を回収するのに、流入口から圧縮ガスを送り込んで流出口から被濾過液を押し出す方法がある。しかし、高圧力の圧縮ガスがフィルターを変形させてしまい、取り除かれるべき不要な粒子が回収した濾過済液に混入してしまうことがあった。また、フィルターが高いバブルポイントを有する精密濾過膜で形成されている場合、フィルター73を通過する圧縮ガスの圧力がカプセル71やコア75の耐圧限界を超えてしまう。このような場合、この方法を用いることができなかった。
【0009】
さらに、フィルター交換の都度、流路に残存した液体が廃棄されるので、フィルターの交換頻度の高い液体の場合、交換頻度の低い場合に比較して、廃棄される液体の量が多くなっていた。
【0010】
フィルターユニットは、廃棄されるフィルターユニットの流路に残存する液量の少ないものが望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、廃棄されるフィルターユニット内に残存する液量を少なくすることができるフィルターユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたフィルターユニットは、液体を濾過する筒状のフィルターと、前記フィルターに取り囲まれて
おり、内空を有していないコアと、前記フィルターの外周側面を取り囲んでいる外筒と、前記フィルターの一端に接合している環状の第1エンドキャップ及びその他端に接合している第2エンドキャップとを有するフィルターユニットであって、前記外筒の内空でフィルターの外周側面を取り巻いている外流路溝と、前記外流路溝に繋がっていることにより、前記液体を流入出させる外筒口と、前記コアの外周側面で窪み、前記第1エンドキャップの環内空を経て、前記液体を流入出させる内周口に繋がっている内流路溝とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載されたフィルターユニットは、請求項1に記載のフィルターユニットであって、前記外流路溝及び/又は前記内流路溝が、螺旋状、直線状、井桁格子状、斜方格子状及び/又は屈曲状をなして
延び、前記外流路溝が前記外筒口に及び前記内流路溝が前記内周口に夫々繋がっていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載されたフィルターユニットは、請求項1又は2に記載のフィルターユニットであって、前記外流路溝が、前記外筒の内壁面で窪んでいるものであることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載されたフィルターユニットは、請求項1又は2に記載のフィルターユニットであって、筒状の流路部材の側壁を前記外流路溝が貫通しており、前記流路部材が前記外筒に挿入されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載されたフィルターユニットは、請求項1又は2に記載のフィルターユニットであって、分割された内筒の内壁面で前記外流路溝が窪んでおり、前記内筒が前記外筒に挿入されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載されたフィルターユニットは、請求項1から5のいずれかに記載のフィルターユニットであって、前記外筒口が、前記外筒の側壁を貫通し、前記外流路溝に繋がっていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載されたフィルターユニットは、請求項1から6のいずれかに記載のフィルターユニットであって、前記第2エンドキャップとの間で分配流路を形成しつつ、前記外筒の一端に接合している外筒キャップを、前記外筒口が貫通しており、前記分配流路が、前記外筒口と前記外流路溝とを繋いでいることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載されたフィルターユニットは、請求項1から7のいずれかに記載のフィルターユニットであって、前記外筒口及び/又は前記内周口が、複数設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載されたフィルターユニットは、請求項1から8のいずれかに記載のフィルターユニットであって、前記外流路溝及び/又は前記内流路溝が、複数設けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項10に記載されたフィルターユニットは、請求項1から9のいずれかに記載のフィルターユニットであって、前記外筒、前記第1エンドキャップ及び/又は前記第2エンドキャップを貫通し、前記外流路溝及び/又は前記内流路溝に繋がっているエアベントを、少なくとも1つ有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のフィルターユニットは、小さい容積の外流路溝及び内流路溝を有している。そのため廃棄されるフィルターユニット内に残存する液量を少なくすることができる。また、部品点数を少なくすることで、材料コストや組立コストを低減したフィルターユニットを得ることができる。さらに、フィルターユニットの外形を小型にできるので、浄水器のような機器に容易に組み込むことができる。
【0024】
このフィルターユニットは、外流路溝及び/又は内流路溝が螺旋状、直線状、井桁格子状、斜方格子状及び/又は屈曲状をなしていると、フィルターに万遍なく被濾過液を浸入させることができる。それによって、被濾過液と濾過済液との圧力差を低減させるとともに、フィルターが早期に目詰まってしまうことを防止している。このことは、1つのフィルターユニットが濾過できる被濾過液量を増加させる。
【0025】
このフィルターユニットは、外周口及び内周口、並びにエアベントを複数有していると、圧縮ガスによって、各流路溝に残存する液体を容易にかつ確実に回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0028】
本発明のフィルターユニット10の一形態の断面図を
図1に示す。フィルターユニット10は、筒状のフィルター40と、そのフィルター40に取り囲まれているコア50と、フィルター40の外周側面を取り囲んでいる外筒20と、フィルター40の上端に接合されている第1エンドキャップ33と、フィルター40の下端に接合されている第2エンドキャップ34とを有している。
【0029】
外筒20は、略円筒形状をなし、その内壁面で窪んだ溝である外流路溝21を有している。外流路溝21は、外筒20の内壁面に沿った螺旋状をなしている。外流路溝21は、濾過される前の液体である被濾過液が流れるものである。外筒20の内壁面で出っ張った外筒凸部22は、フィルター40の外周側面に当接している。被濾過液が流入する外筒口23は、外筒20の壁面を貫通していることによって、外流路溝21と外筒20の外部とを連通させている。外筒口23は、流入コネクタ24に流入配管62が接続され、液体を外流路溝21に流入させるものである。外流路溝21は、螺旋状であることによって、フィルター40の外周側面を、等間隔に取り巻いている。被濾過液は、フィルター40の外周側面に沿って流れ、濾過作用を有しない各エンドキャップ33,34の周囲に流れない。
【0030】
フィルター40の外周側面に、外筒凸部22が当接している。フィルターユニット10を流れる液体の流れを止めた直後や、液体を律動的に流したときに逆流する液体の圧力によってフィルター40が膨らまないように、外筒凸部22は、フィルター40を支持している。それによって外筒凸部22は、外流路溝21が塞がれたり、フィルター40を形成している不織布の破断・変形等に起因して除粒子性能のような濾過性能が劣化したりすることを、防止している。このように、従来のフィルターユニット70におけるカプセル71とカバー72(
図12参照)とが夫々有している機能を、外筒20は、単独で有している。そのため、フィルターユニット10は、被濾過液流路74が不要であるので、フィルター40の表面積である濾過面積を減じることなく、従来のフィルターユニット70に比較してその外形を小型にすることができる。
【0031】
コア50は、略円柱形状をなし、その外周側面で窪んだ内流路溝51を有している。内流路溝51は、コア50の外周側面に沿った螺旋状をなしている。内流路溝51は、フィルター40を通過して濾過された液体である濾過済液が流れるものである。コア50の外周側面で出っ張ったコア凸部52は、フィルター40の内周面に当接している。それによりコア凸部52は、外流路溝21を流れる液体の圧力でフィルター40が内周方向に潰れないように、フィルター40を支持している。その結果、フィルター40を形成している不織布の破断・変形等に起因する濾過性能の劣化や、フィルター40による内流路溝51の閉塞が防止されている。
【0032】
コア50の上端の突起53は、円錐形をなしている。突起53は、第1エンドキャップ33の環内空部33aに位置している。環内空部33aとコア50の上端との間の空間は、内流路溝51と、フィルターユニット10の上方に開けられた内周口31とを繋ぐ流路である。突起53は、環内空部33aの容積を小さくしていることによって、環内空部33aに残存する液体の量を減じている。
【0033】
このように外筒20及びコア50は、液体を流す機能を有している各流路溝21,51と、フィルター40の外周側面及び内周側面を支持する機能を有している各凸部22,52とを有していることによって、これらの異なる2つの機能を両立させている。
【0034】
各流路溝21,51は、フィルター40の外内周側面に等間隔に接していることによって流路の容積を減じ、フィルターユニット10に残存する液体の量を、従来のフィルターユニット70に比較して少なくしている。さらに各流路溝21,51は、フィルター40の外内周側面に等間隔に接しているので、フィルター40に万遍なく被濾過液を浸入させることができる。それによって、被濾過液の圧力が急激に上昇することを防止している。
【0035】
またフィルター40は、コア50が内空を有していないので、外流路溝21を流れる被濾過液の圧力を受けても容易に潰れることがなく、耐圧性に優れている。
【0036】
外流路溝21及び内流路溝51は、その断面が略半円形状をなし、壁面が滑らかで角を有していないものである。それによって、液体がそれら流路を流れる際に生じる抵抗を減じ、液体の流れをスムーズにしている。
【0037】
フィルターユニット10は、液体の粘度が1000〜10000cPの高粘度である場合、好適に用いられる。液体が高粘度であると、低粘度である場合に比較して流動速度が遅い。フィルターユニット10は、流路溝の容積が小さいので、液体の流動速度が遅くても短時間で流路溝を満たし、フィルター40を十分に濡らすことができる。
【0038】
第1エンドキャップ33は、環形状をなしている。第1エンドキャップ33は、フィルター40の上端面に接合されていることにより、フィルター40と一体化している。それによって、外流路溝21と、内流路溝51とが隔離され、被濾過液と濾過済液とが混ざり合うことが防止されている。さらに、第1エンドキャップ33が外筒20の上端面にも接合されていることにより、液体はフィルターユニット10の外部へ漏れない。
【0039】
第2エンドキャップ34は、円板形状をなし、フィルター40及びコア50の夫々の下端面に接合され、フィルター40と一体化している。それによって、外流路溝21と内流路溝51とが隔離され、被濾過液と濾過済液とが混ざり合うことが防止されている。さらに、第2エンドキャップ34が外筒20の下端面にも接合されていることにより、液体はフィルターユニット10の外部へ漏れない。
【0040】
フィルターユニット10は、製造途中を示す分解斜視図である
図2を参照しながら説明すると、次のようにして製造される。先ず、外筒20、第1エンドキャップ33、第2エンドキャップ34及びコア50を射出成形によって成型する。このとき、外流路溝21が螺旋状をなしているため、外筒20の内壁面で外流路溝21を形取る雄型金型を、外筒20及び/又は雄型金型を回転させることによって抜く。シート状の不織布である濾材をプリーツ折りし、円筒状に成形してから端部同士を貼り合わせてフィルター40を成形する。このフィルター40を外筒20に挿入してから、フィルター40の内周にコア50を挿し込む。これの上端面と、下端面とに夫々第1エンドキャップ33及び第2エンドキャップ34を接合し、フィルターユニット10が完成する。フィルターユニット10は、包装袋に封入されて搬送に供される。
【0041】
各部材の接合及び濾材の貼り合わせは、接合部をヒーター等で加熱することで溶融させて接合する熱溶着によって行うことができる。熱溶着の他にもレーザー照射、赤外線照射又は超音波振動で、接合部を加熱溶融させることによって接合してもよいし、接着剤によって接着して接合してもよい。この場合の接着剤として、エチレン−酢酸ビニル、ポリプロピレン、又はポリアミドのような樹脂を熱溶融させて塗布するホットメルト接着剤が好適に用いられる。また、各部材同士は嵌合や螺合によって接合されていてもよい。それによれば、簡易にフィルターユニット10を製造することができる。
【0042】
各部材を、射出成形の他、ブロー成形や切削加工によって成形してもよい。
【0043】
なお、外筒20と第1エンドキャップ33とを一体として成型してもよい。また、第2エンドキャップ34とコア50とを一体として成型してもよい。それらによれば、フィルターユニット10を構成する部材の数が少なくなるため、組立てに要するコストを減じることができる。また、流入コネクタ24及び流出コネクタ32を別体として成型してから外筒20及び第1エンドキャップ33に夫々接合してもよい。それにより、外筒20を成型する金型を簡素な形状にすることができる。
【0044】
フィルター40は、プリーツフィルターの他、不織布等が巻かれたロールフィルター、糸等が巻かれた糸巻フィルターであってもよい。フィルターの種類は、被濾過液の種類・粘度・温度、取り除く粒子や不純物の種類・性状等に応じて、適宜選択される。
【0045】
フィルターユニット10は、次のようにセットされた後に使用される。外筒20の外周をクランプ(不図示)で挟み、第1エンドキャップ33側が上面となる向きに、フィルターユニット10を固定する。流出コネクタ32を上方へ向けることによって、フィルターユニット10内に溜まっていた空気が、液体とともに排出され易くなる。流入コネクタ24に流入配管62が接続され、流出コネクタ32に流出配管61が接続される。
【0046】
被濾過液である液体は、ポンプ(不図示)や圧縮ガスにより加圧されて流入配管62を流れる。液体は、外筒口23から外流路溝21へ流れると、圧力によって、フィルター40の外周側面からそれの内部に浸入し、内流路溝51へ向かって移動する。被濾過液は、フィルター40を通過することによって濾過され、濾過済液となる。濾過済液は、内流路溝51を流れて、環内空部33aを経て内周口31より排出される。使用済のフィルターユニット10は、流入配管62及び流出配管61が外され、クランプから外された後、廃棄される。
【0047】
フィルターユニット10は、
図3に示すように被濾過液を、内周口31に流入させて、フィルター40の内周面から浸入させ、その外周面へ向かって流し、外筒口23から濾過済液を排出させてもよい(同図の矢印方向)。この場合、第1エンドキャップ33に設けられた流入コネクタ24に流入配管62を接続し、外筒20に設けられた流出コネクタ32に流出配管61を接続する。内流路溝51は、外流路溝21よりも容積が小さいので、速やかに被濾過液で満たされる。その結果、フィルター40の内周面を、より短時間でかつ万遍なく濡らすことができる。
【0048】
外筒20の内壁面で窪んだ外流路溝21は、フィルター40の外周側面を1周以上取り巻いていることが好ましい。
図4(a)に、螺旋状の外流路溝21が、2本平行に設けられているフィルターユニット10の一部切欠き分解斜視図を示す。外筒20の下端周縁は、外流路溝21が外筒20の下端まで延びていることによって、対称の位置で窪んでいる。
【0049】
フィルターユニット10が2本の外流路溝21を有している場合、すべての外流路溝21は、外筒口23に繋がっている必要がある。そのため、環形状で外筒口23が下面で突き出している外筒キャップ35が、外筒20の下端面に接合されている。外筒口23は、外筒キャップ35の上面で窪んだ分配流路35aに繋がっている。2本の分配流路35aは、夫々外筒キャップ35の半径方向に伸び、その先端が外筒20の下端周縁の窪みに重なることによって、外流路溝21の夫々に繋がっている。それによって液体は、2本の外流路溝21の夫々に分かれて流れる。1本の外流路溝の行程と、2本の外流路溝の行程の合計とが等しい場合、後者の外流路溝1本当たりの行程は、前者の行程よりも短い。そのため液体は、速やかに外流路溝21を満たして、フィルター40に浸入することができる。特に高粘度であるため流動性が低い液体であっても、このフィルターユニット10によれば、速やかに濾過することができる。さらに、液体がフィルター40に万遍なく浸入するので、フィルター40は、局所的な目詰まりを生じない。その結果、フィルターが目詰まりして使用不能と判断されるまでの時間、所謂フィルター寿命を長くすることができる。
【0050】
図4(b)にフィルターユニット10を組立てた後の断面図を示す。フィルター40及びコア50の夫々の下端面に第2エンドキャップ34が接合されている。第2エンドキャップ34は、分配流路35aと、フィルター40の下端面とを仕切るものである。それにより第2エンドキャップ34は、外流路溝21と内流路溝51とを確実に隔離して、被濾過液と濾過済液とが混ざらないようにしている。この第2エンドキャップ34の中心部で、円錐形状の突起34aが突き出している。突起34aは、外筒口23と分配流路35aとを繋ぐ流路の容積を小さくすることによって、そこに残存する液体の量を減じている。
【0051】
なお内流路溝51の本数は、外流路溝21の本数に関わらず、1本であっても、複数本であってもよい。
【0052】
図5にフィルターユニット10に用いられるコア50の別な実施形態を示す。
図5(a)に示すコア50は、コア50の中心軸方向に沿って窪んだ複数の内流路溝51を有するものである。この内流路溝51は、直線状であることと、すべて環内空部33aに繋がっていることとによって、濾過された液体をスムーズに流すことができるものである。同図(b)に示すコア50は、コア50の中心軸からずれて斜めに窪んだ斜歯歯車状の内流路溝51を有するものである。プリーツ折りされたフィルター40の内周の山折り部が内流路溝51に嵌まり込むことを防止している。同図(c)に示すコア50は、コア50の円周方向に沿って複数箇所が窪んだ溝が、コア50の中心軸から若干ずれて斜めに窪んだ溝で連結されている内流路溝51を有するものである。この円周方向に沿った溝を連結している溝は、夫々対称の位置で交互に設けられている。プリーツ折りされたフィルター40の内周の山折り部に垂直で当接するコア凸部52によって、確りとフィルター40を支持することができる。同図(d)に示すコア50は、格子状をなす内流路溝51を有するものである。縦横に廻る内流路溝51は、被濾過液をスムーズに環内空部33aに導くことができる。なお突起53の形状は、円錐形に限られず、多角錐形、円柱形、又は多角柱形であってもよい。またコア50は、突起53を有していなくてもよい。
【0053】
図6にフィルターユニット10に用いられる外流路溝21の別な実施形態を示す。同図(a)に示す外筒20は、その内周面で外流路溝21及び外筒凸部22を有していない。流路部材25は、略円筒形状であって、その側壁で螺旋状の外流路溝21が貫通しているものである。流路部材25は、外筒20に挿入されて、外筒20の内壁面に熱溶着や接着剤等により固定される。フィルター40は、流路部材25の内周に挿入される。それによりフィルター40の外周側面は、外流路溝21に取り巻かれる。
【0054】
図6(b)に示す内筒26は、半円筒形状に2分割されており、それらの内壁面同士を対向させて組み合わされることによって、全体として円筒形状をなすものである。内筒26の内壁面で外流路溝21が窪んでいる。外流路溝21は、2つの内筒26が組み合わされることによって、1本の螺旋状に繋がるように設けられている。組み合わされた内筒26の外径は、外筒20の内径よりもわずかに小さい。内筒26は、組み合わされた状態で外筒20に挿入されて、外筒20の内壁面に熱溶着や接着剤等により固定される。フィルター40は、内筒26の内周に挿入される。それにより外流路溝21は、フィルター40の外周側面を取り巻いている。なお内筒26は、2分割に限られず、3分割以上であってもよい。
【0055】
フィルターユニット10が、
図6に示す流路部材25又は内筒26を有していると、外筒20の成型時、雄型金型を抜く際、外筒20及び/又は雄型金型を回転させる必要がないのでフィルターユニット10を速やかに製造することができる。また、外流路溝21を形成するのに、金型の構造を簡素にできるので、フィルターユニット10を安価に製造することができる。さらに、流路部材25又は内筒26に固定することによって、フィルターユニット10内を流れる液体の圧力に十分耐え得る強度を、フィルターユニット10に付与することができる。
【0056】
流路部材25又は内筒26と、外筒20との固定は、熱溶着や接着剤による他、
図7に示すように、これらの嵌め合わせによってなされていてもよい。同図に示す内筒26は、樹脂で成形されていることにより、わずかの可撓性を有している。外筒20の内壁面の上端で嵌合部20a、下端で係止部20bが夫々窪んでいる。外筒20は、嵌合部20a及び係止部20bを、対称の位置に夫々2つずつ有している。内筒26の外壁面の上端で当接部26a、下端で爪26bが夫々出っ張っている。爪26bは、外筒20の下端から上端に向って漸次高くなる傾斜を有している。2つが組み合わされた内筒26は、それの可撓性によってわずかに撓みつつ、外筒20に挿入される。このとき内筒26は、爪26bの傾斜によって、外筒20の上端開口周縁に引っ掛ることなく、スムーズに挿入される。内筒26が外筒20にすべて挿入されると、爪26bが係止部20bの側壁に引っ掛ると同時に、当接部26aと嵌合部20aとの側壁同士が当接する。これらによって、内筒26は、外筒20に嵌まって、外筒20に固定される。内筒26がこのような嵌め合わせによって外筒20に固定されていると、溶着工程や接着工程が不要であるので、製造工程を簡素なものとすることができる。なお、同図に内筒26を示したが、流路部材25もこれと同様に固定することができる。
【0057】
図8に内筒26の内壁面で窪んだ外流路溝21の別な実施形態を示す。同図は、半円筒形状である内筒26の一方のみを示し、これに組み合わされる同形状の他方を省略している。螺旋状の外流路溝21は、同図(a)に示すように斜歯歯車状であってもよい。外流路溝21の形状は、螺旋状の他に同図(b)に示す直線状、同図(c)に示す井桁格子状、(d)に示す斜方格子状、(e)に示す屈曲状を挙げることができる。
【0058】
外流路溝21は、
図8(a)〜(e)に示した夫々の全部又は一部が組み合わされた形状であってもよい。外流路溝21の形状は、流す液体の種類や粘度、含有する粒子の性状や粒径、フィルター40の材質や目の粗さのような種々の要素から適宜設定される。また外流路溝21の形状と、内流路溝51の形状とは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
図9に外筒20の別な実施形態を示す。同図(a)は外筒20の斜視図であり、同図(b)は同図(a)の外筒20を反対側から見た切欠き斜視図である。同図に示す流入コネクタ24は、外筒20の側壁の接線方向に延びている。外筒口23は、外流路溝21の接線方向に沿って延び、接点で外流路溝21に繋がっている。接線方向に延びた外筒口23は、外流路溝21の接線に対して垂直方向に延びた外筒口に比較して、液体を外流路溝21へスムーズに流入させることができる。このようにフィルターユニット10は、液体が外流路溝21に流入する箇所における動圧を抑制することによって、被濾過液と濾過済液との圧力差である濾過差圧の上昇を抑えている。さらに外筒口23近傍のフィルター40が局所的に目詰まってしまうことを防止している。
【0060】
図10にフィルターユニット10の別な実施形態を示す。矢印は液体の流れを示している。このフィルターユニット10は、複数の外筒口23及び内周口31が設けられているものである。外筒20の側壁を貫通している2つの外筒口23が、外筒20の上下端近傍で、点対称に設けられている。さらに、第2エンドキャップ34は、第1エンドキャップ33と同一形状をなしていることによって、液体が流出する内周口31を有している。コア50は、突起53の側面で突き出した薄い板状で複数の支持脚53aが環内空部33aの内壁面に当接していることによって、フィルター40の内空内に支持されている。支持脚53aの厚さ方向は、内流路溝51及びフィルター40の内周面上端から環内空部33aへ向かう液体の流れ方向に対して略垂直に向いている。そのため液体は、流れが妨げられず、環内空部33aをスムーズに流れる。
【0061】
外筒口23と内周口31とが夫々複数設けられていると、液体は、外筒口23の近くに位置する内周口31に向って流れる。そのため外筒口23と内周口31とが夫々1つずつ設けられている場合に比較して、液体の流れる行程は、短くなる。その結果、フィルターユニット10は、濾過の処理速度を向上させることができる。また、各流路溝21,51を流れる液体に生じる抵抗が減じられるので、フィルターユニット10は、濾過差圧を小さくすることができる。これらの効果は、特に高粘度の液体を流す場合に、顕著に発現する。
図10に示すように、複数の外筒口23同士が離れた位置に設けられていると、液体は、夫々の方向からフィルター40へ浸入する。そのためフィルター40は、偏りなく液体で濡らされるので、一層目詰まりを引き起こし難くなる。それにより、フィルターユニット10は、外筒口23及び内周口31が夫々一つである場合に比較して、フィルター寿命を長くすることができる。
【0062】
図10に示すフィルターユニット10は、一方の外周口23及び内周口31から圧縮ガスが送り込まれることにより、各流路溝21,51に残存している液体を押し流して、他方の外周口23及び内周口31から排出できるものである。それによって、フィルターユニット10は、フィルター40が精密濾過膜のような高いバブルポイントを有していても、低圧力の圧縮ガスで、容易に、かつ確実に残存する液体を押し出して回収することができる。また、被濾過液と濾過済液とを別々に回収することができるので、濾過済液中に不要な粒子が混入しない。なお、圧縮ガスとして窒素ガス、希ガス及び空気のように、液体に対して不活性なガスを用いることができる。
【0063】
図10に示す支持脚53aは、液体の流れを妨げない向きで形成されていればよい。具体的に、支持脚53aの厚さ方向が、上記略垂直な角度から内流路溝51の仰角に平行な角度の範囲内であることが好ましい。なお支持脚53aは、環内空部33aの壁面で突き出してコア50を支持するものであってもよい。
【0064】
支持脚53aは、コア50の末端面がコア50の中心軸方向に延びた筒形状をなしているものであってもよい。筒形状の支持脚53aは、各エンドキャップ33,34に当接し、又は接合される。それによって、コア50は、フィルター40の内空内に支持される。この場合、液体の流れを妨げないように、筒状の支持脚53aの側壁を、穴、切欠き又はスリットが貫通している。
【0065】
また
図10に示すフィルターユニット10は、支持脚53aを有していなくてもよい。この場合、コア50は、フィルター40と略等しい長さに形成されている。コア50の末端面の少なくとも一部が各エンドキャップ33,34に当接することによって、コア50はフィルター40の内空内に支持される。
【0066】
図11にフィルターユニット10の別な実施形態を示す。フィルターユニット10は、外筒20の側壁を貫通した外エアベント27と、第1エンドキャップ33を貫通した内エアベント36とを有するものである。外エアベント27は、外流路溝21に繋がって、これとフィルターユニット10の外部とを連通させている。内エアベント36は、内流路溝51に繋がって、これとフィルターユニット10の外部とを連通させている。各エアベント27,36にベントプラグ28が螺合されている。各エアベント27,36は、夫々外流路溝21及び内流路溝51内に溜まった空気を排出するものである。使用前の各流路溝21,51は、空気で満たされている。液体が流れ始めると、この空気の殆どは、液体に押されて液体とともに内周口31から排出されるが、各流路溝21,51内にわずかに留まった空気は、フィルター40が液体で濡れることを阻害する。この空気は、濾過に使用されるフィルターの表面積である濾過面積を減少させ、フィルター寿命の短縮、濾過差圧の増大、及び液体中への気泡の混入のような不利益を招く。また液体中に気泡が混入すると、空気との接触によって、液体が酸化やゲル化のような性状の変化を生じることがある。ベントプラグ28を緩めて、溜まった空気を各エアベント27,36から排出することにより、これらの不利益を生じさせない。なお、各エアベント27,36を夫々複数設けてもよい。
【0067】
図11に示すフィルターユニット10は、
図10に示したものと同様に、各エアベント27,36又は外周口23及び内周口31から圧縮ガスを送り込むことによって各流路溝21,51に残存している液体を、回収することができる。
【0068】
フィルターユニット10によって濾過できる液体は、例えば水・飲料のような水系液体、食用油・灯油・ガソリン・潤滑油・有機溶剤・樹脂バインダー・熱硬化性樹脂・レジストのような有機系液体、スラリー、リンス液、レジスト、金属ペースト、ガラスペーストが挙げられる。
【0069】
外筒20、ベントプラグ28、各エンドキャップ33,34、外筒キャップ35、及びコア50の材料は、被濾過液への耐性や用途に応じて選択される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体のようなフッ素樹脂;ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル;ポリメタクリル酸メチルのようなアクリル樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリフェニルエーテルサルフォン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアセタール;ポリビニルアルコール;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアミドが挙げられる。
【0070】
フィルター40の濾材として好適に用いられる不織布は、スパンボンド、メルトブローン、サーマルボンド、又はスパンレースによって形成される。濾材は、不織布の他、織布、成形されたネット、撚糸・不撚糸のような糸、多孔膜・活性炭・珪藻土・ゼオライト・セラミックのような多孔体、パーライトのような発泡体、粒状活性炭・イオン交換樹脂のような粒状体、金属、焼結体を用いることができる。不織布、織布、多孔膜、ネット、撚糸、及び不撚糸の材料は、上記の材料と同様のものを挙げることができるが、その他に、ガラス、ステンレスが挙げられる。