【実施例】
【0011】
以下、本発明を適用した車体前部構造の実施例について説明する。
図1は、実施例の車体前部構造を車幅方向中央部で切って見た断面図である。
図1に示すように、実施例の車体前部構造1は、バンパビーム10、エネルギ吸収(EA)フォーム20、バンパフェイス30、フロントグリル40、フード50(
図1には図示しない。
図3を参照。)等を有して構成されている。
【0012】
バンパビーム10は、図示しない左右のフロントサイドフレームの前端部の間にわたして設けられ、車幅方向にほぼ沿って延びた梁状の部材である。
バンパビーム10は、他車両との衝突時等に、他車両等から受けた荷重を、フロントサイドフレームを介して車両後方側へ伝達する荷重伝達部材である。
バンパビーム10は、例えば、鋼板をプレス成型して形成されたフロントパネル11及びリアパネル12を、スポット溶接等で接合することによって、中空の梁状に形成されている。
リアパネル12は、
図1に示すように、車幅方向から見た断面形状が、前方が開いたコの字状に形成されている。
フロントパネル11は、リアパネル12前端の開放箇所を実質的に閉塞するように配置されている。
また、フロントパネル11の上端には、リアパネル12の上面部よりも上方側に突き出したフランジ部11aが形成されている。
フランジ部11aの上端部(突端部)は、バンパビーム10全体としても上端部となっている。
【0013】
EAフォーム20は、フォーム系の可撓性を有する材料によって形成され、衝突時に変形することによって衝撃を吸収するエネルギ吸収部材である。
EAフォーム20は、フロントパネル11の前面部に取り付けられ、バンパビーム10の前方側へ突き出して配置されている。
【0014】
バンパフェイス30は、バンパビーム10及びEAフォーム20の前方側に設けられる外装部材である。
バンパフェイス30は、車両の前端部を構成する前面部31の上端部、下端部から、それぞれ後方側へ突き出した上面部32、下面部33を有する。
前面部31は、EAフォーム20の前端部と車両前後方向に間隔を隔てて配置されている。
上面部32、下面部33は、EAフォーム20の前端部のそれぞれ上方、下方に配置されている。
上面部32の後端部には、フロントグリル40の下端部と係合する係合部34が形成されている。
バンパフェイス30は、例えばPP樹脂等によって実質的に一体に形成されている。
【0015】
フロントグリル40は、バンパフェイス30の上面部32の上方に配置された外装部材である。
フロントグリル40は、例えばPP樹脂等によって実質的に一体に形成されている。
フロントグリル40は、図示しない左右の前照灯ユニットの間隔に配置されるとともに、高さ方向における中間部には、冷却用等として用いられる走行風を導入する開口部41が形成されている。
開口部41から導入された走行風は、図示しないラジエータコア、エアコンディショナのコンデンサ等の熱交換器等に案内される。
【0016】
フロントグリル40には、リブ42が開口部41の枠体等を含む本体部と一体に形成されている。
リブ42は、開口部41の枠体の下端部近傍におけるフロントグリル40の後面部から、車両後方側に突き出して形成され、実質的に水平方向に沿って配置された平板状の部分である。
リブ42は、フロントグリル40の開口部41の実質的に全幅にわたって形成されている。
リブ42の後端部は、バンパビーム10のフランジ部11aの上端部よりも前方側かつ上方側に配置されている。
リブ42の後端部は、歩行者脚部との衝突時に、フロントグリル40がバンパビーム10に対して相対的に後退した際に、フランジ部11aの上端部の上方を通り抜け可能であるようにその位置を設定されている。
【0017】
フード50は、図示しないエンジンルームの上部開口に設けられた開閉式のリッドである。
フード50は、例えば、鋼やアルミニウム系合金の板材をプレス成型したパネルを有して構成されている。
閉状態におけるフード50の前端部は、フロントグリル40の上端部に隣接して配置されている。
【0018】
以下、上述した実施例の効果を、以下説明する本発明の比較例と対比して説明する。
比較例の説明において、上述した実施例と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図2は、比較例の車体前部構造における歩行者脚部との衝突時の状態を示す模式図である。
図2(a)は、歩行者脚部を模した柱状のインパクタIとの衝突直後の状態を示し、
図2(b)は、インパクタIの衝撃吸収後(ストローク後)の状態を示している(
図3において同じ)。
比較例の車体前部構造は、実施例の車体前部構造から、フロントグリル40のリブ42を省略したものである。
【0019】
図2(b)に示すように、歩行者がフード50の上面に倒れこむ挙動を示すと、フロントグリル40はフード50に押されて下降しつつ、車体の他部に対して車両後方側へ相対的に後退する。
このため、フロントグリル40はバンパビーム10に対して下降しつつ後退し、その結果、フロントグリル40の開口部41の枠体の下端部と、バンパビーム10のフランジ部11aとが干渉し、フロントグリル40のさらなる後退を阻害してインパクタIのエネルギ吸収に必要なストロークを確保することが困難となってしまう。
仮に、このような構成により、十分な衝撃吸収ストロークを得ようとした場合、車両のフロントオーバーハングを著しく延長する必要が生じる。
【0020】
図3は、実施例の車体前部構造における歩行者脚部との衝突時の状態を示す模式図である。
図3に示す比較例においても、
図2に示す比較例と同様に、衝突時にはフロントグリル40が斜め下方に移動するが、リブ42の下面がフランジ部11aの上端部と当接すると、リブ42の下面がフランジ部11aの上面部と摺動して滑りながらバンパビーム10に対して車両後方側に移動する。これによって、フロントグリル40のバンパビーム10に対する後退は阻害されることがなく、インパクタIの衝撃吸収に十分なストロークを確保して歩行者脚部保護性能を確保することができる。
また、リブ42を、フロントグリル41の開口部の全幅にわたって形成することによって、車幅方向のどの位置に歩行者脚部が衝突した場合であっても上述した効果を得ることができる。
さらに、リブ42をフロントグリル40の開口部41と同一の材料によって一体に形成し、同等の硬度を有するようにしたことによって、リブ42の変形や破損を抑制し、上述した効果をより確実に得ることができる。
【0021】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
車体前部構造を構成する各部材の形状、構造、材質、製法、数量等は、上述した実施例に限らず、適宜変更することができる。
例えば、実施例においては、リブの後端部がバンパビーム上端部の前方側かつ上方側に配置されているが、衝突前から既にリブの後端部がバンパビーム上端部よりも後方側に配置された構成としてもよい。
また、実施例では、リブはフロントグリルの他部と一体に形成されているが、フロントグリルの本体部とは別部品からなる突出部を設けてもよい。この場合、フロントグリルの本体部を構成する材質と同等以上の硬度を有する材質によって突出部を形成することが好ましい。