(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154255
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】トルクロッド及びその製法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20170619BHJP
B60K 5/12 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
F16F15/08 T
F16F15/08 K
B60K5/12 Z
B60K5/12 E
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-185764(P2013-185764)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-52359(P2015-52359A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤洋輔
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−057679(JP,A)
【文献】
特開2012−057677(JP,A)
【文献】
特開2007−333029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
B60K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(12)へ連結される小玉部(20)と、車体(14)へ連結される大玉部(30)と、これら小玉部(20)と大玉部(30)を連結するロッド部(40)とを備え、
小玉部(20)は、ロッド部(40)と連結される外側部材(21)と、エンジン(12)へ連結される内側部材(22)と、これらを連結する弾性部材(23)とを備え、
大玉部(30)は、ロッド部(40)と連結される外側部材(31)と、車体(14)へ連結される内側部材(32)と、これらを連結する弾性部材(33)とを備え、
大玉部(30)から車体(14)側へ伝達される伝達力の大きさに関する大玉伝達特性が、ピーク値を100N/mm未満とするフラット特性のトルクロッドにおいて、
小玉部(20)の小玉弾性部材(23)に加えられる捩り時のバネである小玉捩りバネ(Kr)と、
大玉弾性部材(33)におけるロッド部(40)の軸方向バネに対する内側部材(32)の軸方向バネの比である大玉バネ比(R)との組み合わせが、
予めロッド長と小玉捩りバネと大玉バネ比及び大玉バネ値をパラメータとして決定されるトルクロッドの伝達特性をマッピングして得られる伝達特性マップにおける伝達特性を100N/mm未満とすることを特徴とするトルクロッド。
【請求項2】
前記大玉部(30)の内側部材(32)がパイプ製であることを特徴とする請求項1のトルクロッド。
【請求項3】
前記大玉部(30)の内側部材(32)が丸パイプ製であることを特徴とする請求項2のトルクロッド。
【請求項4】
前記大玉弾性部材(33)における弾性中心と、内側部材(32)の車体に対する締結中心との距離である大玉弾性中心距離(A)と前記大玉バネ比(R)とが、予め実験によって定められた所定のパイプゾーン(60)内にあることを特徴とする請求項2又は3のトルクロッド。
【請求項5】
前記パイプゾーンは、大玉弾性中心距離(A)を縦軸、大玉バネ比(R)を横軸としたグラフにおいて、大玉バネ比R=0.2〜1.0と、直線A=−23R+21及びこれと平行な直線とで囲まれた範囲であることを特徴とする請求項4のトルクロッド。
【請求項6】
前記小玉部の外側部材(21)と大玉部の外側部材(31)がロッド部(40)と一体に樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載されたトルクロッド。
【請求項7】
エンジンの下方に配置され、エンジンの振動によって大玉部(30)の外側部材(31)が、内側部材(32)に対して相対的に前方へ移動するように力を受けるロアーマウントとして用いられ、前記大玉弾性部材(33)は、前記内側部材(32)と一体でかつ略V字状に前方へ突出する形状をなしていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載されたトルクロッド。
【請求項8】
小玉部(20)の中心軸(C1)と大玉部(30)の中心軸(C2)とが90°傾いていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載されたトルクロッド。
【請求項9】
エンジン(12)へ連結される小玉部(20)と、車体(14)へ連結される大玉部(30)と、これら小玉部(20)と大玉部(30)を連結するロッド部(40)とを備え、
小玉部(20)は、ロッド部(40)と連結される外側部材(21)と、エンジン(12)へ連結される小玉内側部材(22)と、これらを連結する小玉弾性部材(23)とを備え、
大玉部(30)は、ロッド部(40)と連結される外側部材(31)と、車体(14)へ連結される内側部材(32)と、これらを連結する大玉弾性部材(33)とを備え、
大玉部(30)から車体(14)側へ伝達される伝達力の大きさに関する大玉伝達特性が、ピーク値を100N/mm未満とするフラット特性のトルクロッドを製造する方法において、
小玉部(20)の小玉弾性部材(23)に加えられる捩り時のバネを小玉捩りバネ(Kr)とし、
大玉弾性部材(33)におけるロッド部(40)の軸方向バネに対する内側部材(32)の軸方向バネの比を大玉バネ比(R)としたとき、
ロッド長、小玉捩りバネ、大玉バネ及び大玉バネ比をパラメータとしてトルクロッドを設計するとともに、
まず、特定のロッド長及び大玉バネを決定し、
次に、予めロッド長毎及び大玉バネ毎に定められた小玉捩りバネ及び大玉バネ比の変化に応じたトルクロッドの伝達特性からなる伝達特性マップに基づいて、
前記特定のロッド長及び大玉バネにおける前記伝達特性マップの伝達特性が100N/mm未満となる、小玉捩りバネと大玉バネ比の組み合わせから、小玉捩りバネと大玉バネ比を決定することを特徴とするトルクロッドの製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のエンジンと車体とを防振連結するためのトルクロッド及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1及び
図2は本願発明に係るトルクロッドを示すが、全体的な構成は一般的なトルクロッドの構成を模式的に示してある。
図1の(A)はトルクロッドの斜視図であり、(B)はエンジンの防振支持を模式的に示す図である。
図2の(A)はトルクロッドの平面図、
図2の(B)は正面図を示す。
なお、本願において、前後・左右・上下の各方向は、車両搭載状態における車両の各方向をいうものとする。また、特に、大玉部においては前後方向は、小玉部側を前方とする。
【0003】
一般的なトルクロッド10は、
図1の(B)に示すように、エンジン12の下方に配置されてエンジン12の下部と車体を連結するロアーマウントとして使用されている。
エンジン12は横置き配置され、上下をアッパーマウント50及びトルクロッド10で支持し、車幅方向へ延びる慣性主軸の左右両側をサイドマウント(いずれも不図示)で支持することにより、慣性主軸を中心にピッチングするエンジン12をこれらの各種エンジンマウントで支持するペンデュラム形式の支持構造をなす。
【0004】
ロアーマウントとして機能するトルクロッド10はピッチングを抑制するために設けられ、ピッチング時には、前方へ引っ張られるように荷重が入力される。
このトルクロッド10は、棒状などの長手部材からなるロッド部40と、その長手方向両端に設けられた小玉部20及び大玉部30を有し、小玉部20はエンジン12へ連結され、大玉部30は車体14へ連結される。
【0005】
図1(A)に示すように、小玉部20は、ロッド部40と連結される円筒状の外側部材21と、エンジン12へ連結される円筒状の小玉内側部材22と、これらを連結するゴム等からなる小玉弾性部材23とを備える。
【0006】
大玉部30は、ロッド部40と連結される円筒状の大玉外側部材31と、車体14へ連結される円筒状の大玉内側部材32と、これらを連結するゴム等からなる大玉弾性部材33とを備える。
ここで小玉内側部材22の中心軸をC1、大玉内側部材32の中心軸をC2、ロッド部40の中心線をC3とすれば、それぞれが直交し、C1を車両の左右方向Y、C2を上下方向Z、C3を前後方向Xに合わせて配置するものとする。
【0007】
トルクロッド10は小玉部20の小玉内側部材22と大玉部30の内側部材32がロッド部40の軸方向C3回りに90°傾いた(ねじれた)、ねじり形式のものとなっている。
【0008】
このトルクロッド10は、本来、エンジン12の振動を車体14へ伝達しにくくするための防振装置であるが、トルクロッド10の剛体共振により、車体14を共振させて耳障りなノイズ(こもり音)を発生させることが知られている。
これは、車体14に所定の車体共振周波数域が存在し、トルクロッド10の剛体共振がこの車体共振周波数域で発生することにより、トルクロッド10の剛体共振が大玉部30から車体14へ伝達されて車体14を共振させるためである。
【0009】
そこで、トルクロッド10の剛体共振に基づく車体側のノイズを低減することが望まれるようになり、車体共振周波数域において、トルクロッド10の大玉部30から車体14への振動伝達を低減させる手法が検討された。
このような手法の一例として、大玉部30の外側部材31にウエイトを設ける等して、トルクロッドの重心を、小玉部20と大玉部30の中心を結ぶ直線からオフセットさせることにより、バウンス方向及びピッチ方向の振動を、ロール方向の振動で相殺させるようにしたものがある(手法1;特許文献1参照)。
【0010】
また、大玉部30から車体へ伝達される方向における剛体共振のピーク(
図7のP1・P2参照)を、車体共振周波数域からずらすように変化させることも知られている(手法2)。
【0011】
しかし、上記手法1では、ウエイトの共振系における共振ピークを車体共振周波数域と重なるように調整しなければならなかった。すなわち機種別の仕様であって、機種が異なり、エンジンと車体の組合せが変わる毎に、ウエイトの調整をしなければならないので、汎用性に乏しいものであった。
【0012】
また、手法2では、
図7に示すように、剛体共振のピークを車体共振周波数域のP1から低周波数側のP2になるように平行移動させただけであるから、機種が異なることにより車体の構造等が変化して、車体共振周波数域がP2の位置へ変化すれば、再び共振ピークがずれるようにトルクロッドの設計を変更しなければならず、やはり汎用性に乏しいものであった。
【0013】
この汎用性を獲得するには、エンジンの燃焼に伴う振動一次成分である、30〜200Hzの周波数域において、大玉部30の内側部材32から車体14へ振動を伝達しにくくすることが考えられる。具体的には、共振ピークにおける振動伝達の能力である伝達特性を100N/mm未満にすれば実現できることが知られている。なお、共振ピークの伝達特性が100N/mm未満となる共振をフラット特性ということにする。
【0014】
このようなフラット特性のトルクロッドは公知である。
図8に示すものは、このようなトルクロッドの従来例における大玉部130であり、内側部材132の取付軸方向から示す図である。この大玉部130は外側部材131と内側部材132とを大玉弾性部材133で弾性的に連結している。内側部材132は略三角形の特殊形状(異形形状)をなす金属の鋳造品である。
【0015】
内側部材132は取付軸であるボルトで車体側へ連結され、その中心を締結中心CT1とする。また、大玉弾性部材133における前後バネの中心を弾性中心CT2とし、締結中心CT1と弾性中心CT2の距離を大玉弾性中心距離Aとする(弾性中心CT2が締結中心CT1より後方にある場合を正とする)。
【0016】
このようにすると、締結中心CT1と弾性中心CT2が近接して大玉弾性中心距離が小さくなり、大玉弾性中心距離及び大玉バネ比Rを、後述する
図6の鋳造ゾーン61内に入るような比較的小さなものにすることができる。このため、後述する小玉部の著しく弱くした捩りバネとの組合せも相まって、100N/mm未満という小さな伝達特性を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2009−185883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、伝達特性を低減することを考えた場合、ねじり形式のトルクロッド10においては、エンジン12から車体14へ振動が伝達されるとき、小玉部20において小玉内側部材22を中心に捩れ、この捩れが大玉部30へ伝達されるから、小玉部20の小玉弾性部材23における捩りバネKrを小さくすることが考えられる。
【0019】
さらに、トルクロッド10へ伝達された振動は、大玉部30の内側部材32から車体14へ伝達されるから、内側部材32の軸方向における大玉弾性部材33のバネ(以下、上下バネという)を小さくすることが考えられる。大玉弾性部材33はロッド部40の軸方向におけるバネ(以下、前後バネという、なおロッド部の軸方向バネともいう)を大きくする必要があるので、上下バネ/前後バネを大玉バネ比Rとするとき、この大玉バネ比Rをできるだけ小さくすることになる。
【0020】
上記
図8に示した従来例は、小玉弾性部材における捩りバネKrを1.0よりも小さな極めて弱いバネにするとともに、大玉部130の内側部材132を異形形状とすることにより比較的小さな大玉バネ比を実現して、上記100N/mm未満の小さな伝達特性を実現している。また、内側部材132を異形形状とすることにより、小さな大玉弾性中心距離を実現している。
【0021】
ところで、大玉弾性部材のバネをあまり小さくし過ぎたり、大玉バネ比とのバランスを調整しないと、小玉弾性部材及び大玉弾性部材133が破断し易くなって、耐久性を損ないやすくなる。したがって、小玉弾性部材及び大玉弾性部材の耐久性を高めるため、小玉弾性部材における捩りバネKrをある程度大きなものとしつつ、大玉バネ比Rを適正な範囲とすることにより、上記100N/mm未満の小さな伝達特性を実現できる構成が望まれる。
【0022】
そのうえ、このような異形形状の内側部材132を用いると、内側部材132が大型化して重量が増大するとともに、鋳造による製造のため大幅にコストがアップする。したがって、ありふれた市販品として入手できるような安価で軽量な金属製の丸パイプ製の内側部材を使用することが望まれる。しかし、このような丸パイプ製の内側部材を使用すると、締結中心CT1と弾性中心CT2が大きく離れる。
【0023】
例えば、内側部材を丸パイプ製とし、
図8の従来例と同様の大玉バネ比R及び大玉弾性中心距離Aを実現しようとすると、
図9に示すように、大玉部130Aは、略V字状の大玉弾性部材133Aとその中心となる突部133B近傍に位置する丸パイプ製の内側部材132Aからなり、丸パイプ製の内側部材132Aは、従来例と同様な大玉弾性中心距離Aを実現するため、突部133Bから後方(
図9の下方)へ飛び出したものとなる。このような状態では、内側部材132Aが大玉弾性部材133Aを弾性変形させるものとして実質上機能せず、大玉部130Aはその形状が成立しなくなる。
【0024】
したがって、丸パイプ製の内側部材を用いても、大玉バネ比と大玉弾性中心距離を適正にすることにより、100N/mm未満の小さな伝達特性を実現しつつ、さらに軽量化とコストダウンを実現することも望まれる。本願発明はこのような要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するため請求項1に係るトルクロッドは、エンジン(12)へ連結される小玉部(20)と、車体(14)へ連結される大玉部(30)と、これら小玉部(20)と大玉部(30)を連結するロッド部(40)とを備え、
小玉部(20)は、ロッド部(40)と連結される外側部材(21)と、エンジン(12)へ連結される小玉内側部材(22)と、これらを連結する小玉弾性部材(23)とを備え、
大玉部(30)は、ロッド部(40)と連結される外側部材(31)と、車体(14)へ連結される内側部材(32)と、これらを連結する大玉弾性部材(33)とを備え、
大玉部(30)から車体(14)側へ伝達される伝達力の大きさに関する大玉伝達特性が、ピーク値を100N/mm未満とするフラット特性のトルクロッドにおいて、
小玉部(20)の小玉弾性部材(23)に加えられる捩り時のバネである小玉捩りバネと、
大玉弾性部材(33)におけるロッド部(40)の軸方向バネに対する内側部材(32)の軸方向バネの比である大玉バネ比との組み合わせが、
予めロッド長と小玉捩りバネと大玉バネ比及び大玉バネ値をパラメータとして決定されるトルクロッドの伝達特性をマッピングして得られる伝達特性マップにおける伝達特性を100N/mm未満とすることを特徴とする。
【0026】
請求項2に記載した発明は、上記請求項1において、前記大玉部(30)の内側部材(32)がパイプ製であることを特徴とする。
【0027】
請求項3に記載した発明は、上記請求項2において、前記大玉部(30)の内側部材(32)が丸パイプ製であることを特徴とする。
【0028】
請求項4に記載した発明は、上記請求項2又は3において、前記大玉弾性部材(33)における弾性中心と、内側部材(32)の車体に対する締結中心との距離である大玉弾性中心距離と前記大玉バネ比とが、予め実験によって定められた所定のパイプゾーン(60)内にあることを特徴とする。
【0029】
請求項5に記載した発明は、上記請求項4において、前記パイプゾーンは、大玉弾性中心距離(A)を縦軸、大玉バネ比(R)を横軸としたグラフにおいて、大玉バネ比R=0.2〜1.0と、直線A=−23R+21及びこれと平行な直線とで囲まれた範囲であることを特徴とする。
【0030】
請求項6に記載した発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項において、前記小玉部の外側部材(21)と大玉部の外側部材(31)がロッド部(40)と一体に樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0031】
請求項7に記載した発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項において、エンジンの下方に配置され、エンジンの振動によって大玉部(30)の外側部材(31)が、内側部材(32)に対して相対的に前方へ移動するように力を受けるロアーマウントとして用いられ、前記大玉弾性部材(33)は、前記内側部材(32)と一体でかつ略V字状に前方へ突出する形状をなしていることを特徴とする。
【0032】
請求項8に記載した発明は、上記請求項1〜7のいずれか1項において、小玉部(20)の中心軸(C1)と大玉部(30)の中心軸(C2)とが90°傾いていることを特徴とする。
【0033】
請求項9に係るトルクロッドの製法は、エンジン(12)へ連結される小玉部(20)と、車体(14)へ連結される大玉部(30)と、これら小玉部(20)と大玉部(30)を連結するロッド部(40)とを備え、
小玉部(20)は、ロッド部(40)と連結される外側部材(21)と、エンジン(12)へ連結される小玉内側部材(22)と、これらを連結する小玉弾性部材(23)とを備え、
大玉部(30)は、ロッド部(40)と連結される外側部材(31)と、車体(14)へ連結される内側部材(32)と、これらを連結する大玉弾性部材(33)とを備え、
大玉部(30)から車体(14)側へ伝達される伝達力の大きさに関する大玉伝達特性が、ピーク値を100N/mm未満とするフラット特性のトルクロッドを製造する方法において、
小玉部(20)の小玉弾性部材(23)に加えられる捩り時のバネを小玉捩りバネとし、
大玉弾性部材(33)におけるロッド部(40)の軸方向バネに対する内側部材(32)の軸方向バネの比を大玉バネ比としたとき、
ロッド長、小玉捩りバネ、大玉バネ及び大玉バネ比をパラメータとしてトルクロッドを設計するとともに、
まず、特定のロッド長及び大玉バネを決定し、
次に、予めロッド長毎及び大玉バネ毎に定められた小玉捩りバネ及び大玉バネ比の変化に応じたトルクロッドの伝達特性からなる伝達特性マップに基づいて、
前記特定のロッド長及び大玉バネにおける前記伝達特性マップの伝達特性が100N/mm未満となる、小玉捩りバネと大玉バネ比の組み合わせから、小玉捩りバネと大玉バネ比を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
請求項1の発明によれば、伝達特性マップにおける伝達特性が100N/mm未満とする小玉捩りバネと大玉バネ比の組み合わせを選択することにより、耐久性がありかつ伝達特性のピーク値が100N/mm未満となるフラット特性のトルクロッドを実現できる。しかも、パラメータである小玉捩りバネと大玉バネ比を容易に決定することができる。
【0035】
請求項2の発明によれば、大玉部(30)の内側部材(32)をパイプ製としたので、特殊な異形形状の内側部材を不要にできる。このため、耐久性がありかつフラット特性を有するにもかかわらず、コストを下げることができる。
【0036】
請求項3の発明によれば、大玉部(30)の内側部材(32)として安価な丸パイプ製部材を使用することにより、コストを一層下げることができる。
【0037】
請求項4によれば、大玉弾性中心距離を所定のパイプゾーン内に入るように設定することにより、パイプ製内側部材(丸パイプ製を含む)の使用が可能になった。
【0038】
請求項5によれば、大玉弾性中心距離Aを縦軸、大玉バネ比Rを横軸としたグラフにおいて、大玉バネ比R=0.2〜1.0と、直線A=−23R+21及びこれと平行な直線とで囲まれた範囲をパイプゾーンとして設定できる。
【0039】
請求項6によれば、小玉部(20)及び大玉部(30)の各外側部材(21)及び(31)とロッド部(40)とが一体に樹脂で形成されているので、これらを別々に形成した場合と比べて製造が容易になるとともに、大玉部(30)における外側部材(31)の形状に関する自由度を高くすることができる。
【0040】
請求項7によれば、エンジンの下方にロアーマウントとして設けられ、エンジンの振動によって大玉部(30)の外側部材(31)が、内側部材(32)に対して相対的に前方へ移動するように力を受けるが、大玉弾性部材(33)が略V字状に前方へ突出しているので、引っ張り方向へ弾性変形することになり、耐久性が向上する。このため、ロアーマウントに好適なものとなる。
【0041】
請求項8の発明によれば、小玉部(20)の中心軸(C1)と大玉部(30)の中心軸(C2)とが90°傾いているので、ねじり形式のトルクロッドになり、小玉部(20)の小玉捩りバネによる振動の吸収を大きくすることができる。
【0042】
請求項9の発明によれば、ロッド長、小玉捩りバネ、大玉バネ及び大玉バネ比をパラメータとし、予めロッド長及び大玉バネ毎に定められている伝達特性マップを用いて、まずロッド長及び大玉バネを決定することにより、これらロッド長及び大玉バネに対応する伝達特性マップから、伝達特性が100N/mm未満となる小玉捩りバネ及び大玉バネ比の組み合わせを決定できるので、ロッド長、小玉捩りバネ、大玉バネ及び大玉バネ比をパラメータとしてトルクロッドを設計するとき、耐久性のあるフラット特性を実現するための、小玉捩りバネ及び大玉バネ比を容易かつ迅速に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図2】上記トルクロッドの平面図(A)及び正面図(B)を示す図
【
図4】小玉ねじりバネ及び大玉バネ比の設定を説明する図
【
図6】丸パイプ製内側部材使用時の大玉バネ比Rと大玉弾性中心距離Aの相関図
【
図8】従来例の大玉部を内側部材の軸方向から示す図
【
図9】丸パイプを用いたときの形状不成立状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1及び
図2により、本願発明に係るトルクロッド10の概要をまず説明する。但し、外観構成においては上記背景技術にて説明したものと同じであり、伝達特性や大玉バネ比及び大玉弾性中心距離等の主要パラメータにおける値が異なるだけである。したがって、外観構成における共通部に関する説明は省略し、以下、詳細事項及び特徴点を説明する。
【0045】
外側部材21、31及びロッド部40は、アルミニウムの比重より小さな合成樹脂等の適宜な軽量材料で一体に形成されている。この製法は、例えば、小玉内側部材22と小玉弾性部材23及び大玉部の内側部材32と大玉弾性部材33を予め加硫成形等で一体に形成したものを金型内へ配置し、その周囲へ合成樹脂を射出成型して外側部材21及び外側部材31を一体化する公知方法による。
【0046】
大玉弾性部材33は、後ストッパ34、主ばね部35及び前ストッパ36を備え、後ストッパ34と主ばね部35及び主ばね部35と前ストッパ36の間に空間37、38が形成されている。主ばね部35は、エンジン12からの振動入力により、大玉部30が上下振動するとき、大玉部30から車体14への振動伝達における防振作用の主体となるばね部分である。
【0047】
ロアーマウントタイプのトルクロッド10において、主ばね部35はV字状に前方へ突出する配置をなす。エンジン12のピッチングにより、トルクロッド10に前方へ引っ張る方向の荷重が入力されるため、外側部材31が前方へ移動しようとし、内側部材32は外側部材31に対して後方へ相対移動する。このため、主ばね部35は圧縮変形を主体として変形し、大きなバネを発揮することができる。したがって、主ばね部35がV字状に前方へ突出する形状は、ペンデュラム形式の支持構造におけるロアーマウントタイプのトルクロッド10に好適な形状になる。なお、主ばね部35はV字状のみならず、種々な形状にすることができる。
【0048】
なお、エンジン12及び車体14は簡略化して示した。また、小玉部20及び大玉部30において、外側部材21・31及び内側部材22・32はそれぞれ軸直交断面が円形をなす丸パイプを長さ方向所定寸法で軸直交方向にカットした丸パイプ製であるが、これらは円筒形ではなくてもよく、軸直交断面が多角形を含む非円筒形など適宜形状にできる。
ここで、パイプとは、肉厚が一定の長尺中空体であり、引き抜き、電縫、切削等によって製作されるものである。このパイプ製とはパイプから製作されたものを意味する。
【0049】
次に、トルクロッドの設計において必要となる主要パラメータの設定を説明する。
トルクロッドは、要求される仕様に応じて、ロッド長、重量、小玉バネ、小玉捩りバネ、大玉バネ、大玉バネ比、大玉弾性中心距離等をパラメータとして種々変化させることにより決定される。
【0050】
図3はこのトルクロッド10における伝達特性を計算するための簡易モデルを示す。
また、このトルクロッド10を設計するに際して必要となる主要なパラメータを図中に定義する。
【0051】
伝達特性は、小玉部20の小玉内側部材22に対して加振機により±1mmの強制変位を与えることにより、大玉部30の内側部材32に伝達される中心軸C2方向(上下方向)の伝達力として測定される。このとき、小玉部20の小玉内側部材22を加振すると、加振荷重は、小玉弾性部材23を介してロッド部40へ伝達され、さらに大玉部30において大玉弾性部材33を介して内側部材32に伝達される。
【0052】
この振動伝達経路において、加振荷重はまず小玉弾性部材23に吸収され、さらに大玉弾性部材33で吸収される。
小玉弾性部材23の変形は、ロッド部40の回動による捩りが主体になる。このため、小玉バネKk及び小玉捩りバネKrが重要になる。
【0053】
大玉弾性部材33では、ロッド部40の回動による外側部材31の捩りにより、前後方向及び上下方向の変形が主体になる。このため、大玉バネKo及び大玉バネ比Rが重要になる。大玉バネ比Rは、大玉弾性部材33における上下バネと前後バネの比であり、上下バネ/前後バネと定義される。
【0054】
伝達力はロッド部40から大玉部30へ加えられるモーメントJのうち、中心軸C2方向すなわち上下方向成分が大玉弾性部材33の上下バネで吸収されてから内側部材32へ伝達される力であるから、上下バネが小さいほど伝達力が小さくなる。単位変位当たりの伝達力が伝達特性である。
【0055】
また、モーメントJは、大玉重心距離L1及びロッド重量Mに関連するため、伝達特性にはロッド長Lも重要な因子となる。ここで大玉重心距離L1は大玉部30の締結中心CT1(a)と重心WC間の距離である。小玉重心距離L2は小玉部20の締結中心CT1(b)と重心WC間の距離である。なお、図中の符号CT2は 弾性中心である。また、CT1は締結中心を示すが、ここでは(a)及び(b)を付して大玉側と小玉側を区別する。
【0056】
これらの主要なパラメータは、車種毎の仕様により種々に異なるものであるが、そのうちの多くは車体側の具体的な仕様が定まると、伝達特性に関係なく自動的に定まる。このようなものとして、ロッド長L、ロッド重量M、重心WC、大玉重心距離L1、小玉重心距離L2、モーメントJ、大玉バネKo及び小玉バネKkがある。
【0057】
一方、特定の伝達特性を実現するためのパラメータである伝達特性パラメータとしては、小玉捩りバネKr及び大玉バネ比Rがある。また、小玉捩りバネKrと大玉バネ比Rは伝達特性に関してロッド長Lの影響を大きく受けるので、ロッド長Lも伝達特性パラメータとなる。さらに、上記した丸パイプ製の内側部材を使用可能にするためには、大玉弾性中心距離Aも伝達特性パラメータに含まれる。
【0058】
そこで、具体的に伝達特性パラメータを設定するためには、まず、伝達特性パラメータ以外の主要パラメータを設計初期値に設定する。設計初期値は、多くのトルクロッドが採用する平均的な値を設計当初に採用する値としたものであり、これを基にして、後述する伝達特性マップを作成する。
【0059】
次に、伝達特性100N/mm未満を実現するための伝達特性パラメータを設定する方法を説明する。まず、主要パラメータのうち、ロッド長Lは車両の仕様に対する依存性が強く、車両の仕様が決まれば、概ね所定の数値に決定される。これにともなって、重量M、重心WC、大玉重心距離L1、小玉重心距離L2及びモーメントJが定まる。
そこで、まず、これらのパラメータを設計初期値に固定する。また、大玉バネKo、小玉バネKkも設計初期値に固定する。(STEP1)
【0060】
この状態では、小玉捩りバネKr及び大玉バネ比R並びに大玉弾性中心距離Aが未定のまま残るが、大玉弾性中心距離Aは内側部材を丸パイプにする場合に必要となるものなので、とりあえずは任意の値に固定し、小玉捩りバネKr及び大玉バネ比Rを設定する。
【0061】
まず、小玉捩りバネKr及び大玉バネ比Rの耐久性要件を検討して、これらを一定範囲内に絞り込む(STEP2)。
小玉捩りバネKrは、
図4の(A)に示すように、伝達特性との間に相関がある。すなわち、大玉バネ比Rを適当な値に固定したとき、小玉捩りバネKrが大きくなるほど伝達特性も大きくなる傾向がある。したがって、小玉捩りバネKrを小さくすれば、それだけ伝達特性を小さくできる。
【0062】
しかし、小玉捩りバネKrを無制限に小さくすることはできず、1×N・m/deg未満では耐久性が低下してしまい実用性がない。また、4×N・m/deg超えでは耐久性を満たすが伝達特性が100N/mm以上になってしまう。したがって、小玉捩りバネKrは、1×N・m/deg≦Kr≦4×N・m/degの範囲にする必要がある。
【0063】
大玉バネ比Rと耐久性の関係について考察すると、耐久性のあるモデルは、
図4の(B)(大玉バネ比R最大=1.0)及び
図4の(C)(大玉バネ比R最小=0.2)が考えられ、耐久性のある大玉バネ比Rは、0.2≦R≦1の範囲になる。ここで、
図4の(B)は、大玉弾性部材33を左右方向へ一文字状に形成し、この中心に丸パイプ製の内側部材32を位置させたものであり、前後方向バネは最小となって大玉バネ比Rは1.0となり、大玉弾性中心距離Aが0になる。
【0064】
図4の(C)は、大玉弾性部材33を中心の内側部材32から後方へ一直線状に配置したものであり、前後方向バネは最大となって大玉バネ比Rは0.2、大玉弾性中心距離Aは例えば18mm(大玉弾性部材33の自由長が36mmの場合)になる。
したがって、まず、小玉捩りバネKrと大玉バネ比Rを耐久性等の観点からこの範囲へ絞り込む。
【0065】
次に、小玉捩りバネKr及び大玉バネ比Rについて、それぞれが上記耐久性のある範囲において、伝達特性100N/mm未満を実現する組合せを決定する(STEP3)。
これは、予め作成されている伝達特性マップに基づいて決定される。
伝達特性マップは、ロッド長及び大玉バネ毎に、小玉捩りバネKr及び大玉バネ比Rを変化させたときの伝達特性をマッピングしたものである。このマッピングは、試作実験等の経験、電子的なシミュレーションもしくは特定のモデル数式による演算等により可能であり、普遍的なものとして予め定めておくことができる。
小玉捩りバネKr及び大玉バネ比Rはそれぞれ上記STEP2によって絞り込まれた範囲内である。
【0066】
図5はこの伝達特性マップを示し、この例では、ある一定の大玉バネ(例えば、105N/mm)において、ロッド長が、100〜225mmの範囲で、25mm間隔で6種類の伝達特性マップが示されている。各伝達特性マップは、縦方向に大玉バネ比Rを変化させ、横方向に小玉捩りバネKrを変化させたものであり、その組み合わせた各欄が伝達特性である。この欄の表示は、伝達特性が100N/mm未満となるもののみにハッチングを付し、100N/mm以上のものは空欄としてある。なお、この伝達特性マップは、大玉バネ毎に作成され、ある大玉バネに対してさらにロッド長毎に作成される。
【0067】
したがって、大玉バネとロッド長を決定すれば、この大玉バネとロッド長に対応する伝達特性マップが選択され、さらにこの選択された伝達特性マップより、小玉捩りバネKrと大玉バネ比Rの可能な組み合わせが得られる。例えば、ロッド長が225mmの場合は、大玉バネ比Rが0.2、小玉捩りバネKrが1×N・m/degの組み合わせからなる欄がハッチングの付されたものとなり、この組み合わせの伝達特性が100N/mm未満になることを示す。したがって、この数値の組み合わせとしたき、耐久性があり、かつ伝達特性が100N/mm未満のフラット特性を有するトルクロッドを得ることができる。
【0068】
なお、小玉捩りバネKr及び大玉バネ比Rを他の数値とした組み合わせは、いずれも空白の欄になり、伝達特性が100N/mm以上となることを意味するので、このような組み合わせは不適となる。
他のロッド長を選択した場合には、そのロッド長で決定されている伝達特性マップにおいて、伝達特性が100N/mm未満となる小玉捩りバネKrと大玉バネ比Rの組み合わせを選択する。
【0069】
このようにすると、大玉バネ及びロッド長毎に作成された伝達特性マップを用いることにより、耐久性があるフラット特性を有するトルクロッドを容易に得ることができ、ロッド長、小玉捩りバネ、大玉バネ及び大玉バネ比をパラメータとしてトルクロッドを設計するとき、これらのパラメータを容易に決定することができる。
【0070】
次に、内側部材32を丸パイプ製にするための設定を説明する。大玉バネ比Rと大玉弾性中心距離Aを除き、上記により伝達特性100N/mm未満を実現するようにした設定において、内側部材32を丸パイプにして、
図4の(B)から(C)の間で大玉バネ比Rと大玉弾性中心距離Aを変化させ、大玉バネ比Rと大玉弾性中心距離Aをプロットしたものが
図6である。
図6中の黒丸で示すものが、伝達特性100N/mm未満を実現すると同時に内側部材32を丸パイプ製にしたものにおける大玉バネ比Rと大玉弾性中心距離Aの実測値である。
【0071】
図6において、縦軸を大玉弾性中心距離A、横軸を大玉バネ比Rとしてあり、大玉バネ比Rと大玉弾性中心距離Aに相関が見られる。
すなわち、黒丸は概ね、大玉バネ比Rが0.2〜1.0の範囲で、A=−23R+21の直線に沿って分布し、これと平行な直線A=−23R+20及びA=−23R+26で囲まれたパイプゾーン60(ハッチングで示す領域)にすべての黒丸が入る。したがって、このパイプゾーン60内にあれば、丸パイプ製内側部材32を使用しても、大玉弾性中心距離Aを形状として成立性のある範囲にすることができ、丸パイプ製内側部材32の使用を可能にする。なお、
図6は丸パイプ製内側部材の例を示すが、角パイプ製でも同様になる。
【0072】
したがって、パイプゾーン60において、STEP3により定まった大玉バネ比Rに対応する大玉弾性中心距離Aを選択する(STEP4)。
これにより、丸パイプ製の部材を内側部材32に使用するとともに形状として成立したフラット特性のトルクロッドを得ることができ、しかも、このトルクロッドは耐久性に優れかつ安価なものとなる。
【0073】
なお、
図6中に示す鋳造ゾーン61は、
図8の従来例における大玉弾性中心距離A及び大玉バネ比Rの範囲であり、パイプゾーン60から離れており、大玉弾性中心距離A及び大玉バネ比Rがともに小さくなる領域にある。
この鋳造ゾーン61は、大玉弾性中心距離A=2.3mm、大玉バネ比R=0.35を中心とする所定の円形範囲であり、
図8における従来例の構造を有するものの大玉弾性中心距離A及び大玉バネ比Rが属する範囲である。
【0074】
図7は伝達特性図である。上記各STEPにより、パラメータを設定した場合、本願発明に係る剛体共振のピークP3は伝達特性100N/mm未満のかなり低いものになる。このフラット特性により車体のこもり音を著しく低減できるとともに、車体の共振点が仕様によって変化した場合でも、この仕様変化に応じてトルクロッド側の共振をチューニングする必要がないので、汎用性に富んだものとなる。
【0075】
しかも、フラット特性を実現するために重要であるが決定することが困難なパラメータである、小玉捩りバネKrと大玉バネ比Rの組み合わせを、伝達特性マップを用いることにより容易に決定できる。そのうえ、フラット特性を有しかつ耐久性のあるものを得ることができる。
【0076】
また、パイプゾーン60内に入る大玉弾性中心距離Aと大玉バネ比Rの組み合わせを選択することにより、丸パイプ製内側部材32を使用可能とし、フラット特性を有し、耐久性に優れかつ軽量で安価なトルクロッドを容易に得ることができる。丸パイプ製以外の例えば、角パイプ製の内側部材を使用した場合も同様になる。
【符号の説明】
【0077】
10:トルクロッド、 20:小玉部、30:大玉部、31:大玉外側部材、32:大玉内側部材、33:大玉弾性部材、40:ロッド部、60:パイプゾーン、A:大玉弾性中心距離、CT1:締結中心、CT2:弾性中心、R:大玉バネ比