特許第6154304号(P6154304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154304
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】スクレーパ付回転機械
(51)【国際特許分類】
   B02C 4/06 20060101AFI20170619BHJP
   B02C 4/32 20060101ALI20170619BHJP
   B02C 4/02 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   B02C4/06 Z
   B02C4/32
   B02C4/02
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-250346(P2013-250346)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-107447(P2015-107447A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2015年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 淳
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−189821(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第01566869(GB,A)
【文献】 特開昭61−074653(JP,A)
【文献】 特開2005−238079(JP,A)
【文献】 特開2004−058007(JP,A)
【文献】 実開昭50−011172(JP,U)
【文献】 特開昭47−015303(JP,A)
【文献】 特公昭53−009909(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00 − 7/18
15/00 − 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に同じ形状の溝が等間隔に並んだ一対のロールと、各ロールの表面付着物を取り除くスクレーパとを備えたスクレーパ付回転機械において、
上記一対のロールのうち少なくとも一方が、他方に対して移動可能に構成され、
上記移動可能に構成されたロールに対応するスクレーパは、該ロールの表面の溝形状に合わせて軸方向長さにわたって凹凸形状が形成され、該スクレーパの先端の凸部が該ロールの表面の溝の凹部に隙間を空けて嵌まり込む状態を保ったまま該ロールと共に移動するように構成されており、
上記スクレーパは、移動可能に構成された上記ロールの中心軸を支持する軸支持部と共に移動可能に構成され、且つ上記隙間の大きさを調整可能に該軸支持部に対して長孔を介して締結されている
ことを特徴とするスクレーパ付回転機械。
【請求項2】
請求項1に記載のスクレーパ付回転機械において、
駆動装置を備え、
上記一対のロールの一方が上記駆動装置に駆動される駆動側ロールであり、
上記一対のロールの他方が上記駆動側ロールに連結した伝達手段により駆動される従動側ロールであり、
上記スクレーパは、上記従動側ロールの軸方向両端にそれぞれ設けられた軸支持部を連結する連結棒に設けられている
ことを特徴とするスクレーパ付回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のロールと、各ロールの表面付着物を取り除くスクレーパとを備えたスクレーパ付回転機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な固形物を粉砕する場合や凝集物をほぐす場合に、平行に並べた一対のロールを互いに内側に回転させる回転機械を用いることが知られている。このような回転機械では、処理物の物性によっては、処理物がロールの表面に付着することがある。この付着は、処理量の低下、収率の低下等の効率悪化の一因となる。
【0003】
そこで、付着した処理物をスクレーパと呼ばれる掻き取り板を用いることで、ロールの表面付着物を掻き取るロール破砕装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このロール破砕装置は、処理物の供給サイズに合わせ、一対のロール間の距離を調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特昭61−74653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転体であるロールに対し、スクレーパはケーシング等の固定体に固定される必要がある。
【0006】
また、スクレーパ先端がロール表面に接触すると、ロールの回転が阻害される。一方で、スクレーパ先端とロール表面との間の隙間が大きすぎると、効率的に表面付着物を掻き取ることができない。このため、スクレーパ先端とロール表面との間の隙間は、正確に調整できる必要がある。
【0007】
一方で、一対のロール間の距離も、処理物に合わせて調整する必要があり、一対のロール間の距離を調整すると、それに合わせてスクレーパの位置調整をしなければならず、調整作業が大変である。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一対のロール間の距離の調整と、スクレーパの位置調整とを簡単に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、ロールの移動構造にスクレーパを固定するようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明では、表面に同じ形状の溝が等間隔に並んだ一対のロールと、各ロールの表面付着物を取り除くスクレーパとを備えたスクレーパ付回転機械において、
上記一対のロールのうち少なくとも一方が、他方に対して移動可能に構成され、
上記移動可能に構成されたロールに対応するスクレーパは、該ロールの表面の溝形状に合わせて軸方向長さにわたって凹凸形状が形成され、該スクレーパの先端の凸部が該ロールの表面の溝の凹部に隙間を空けて嵌まり込む状態を保ったまま該ロールと共に移動するように構成されている。
【0011】
上記の構成によると、処理物の供給サイズに合わせて一対のロール間の距離を調整しても、スクレーパが移動可能なロールと共にスクレーパの先端とロールの表面との距離を保ったまま移動するので、ロールとは別にスクレーパ自体を移動させてロール表面との間の距離を調整する必要がない。このため、手間が省けると共に、スクレーパ先端とロール表面との間の距離を一定に保ちやすい。また、表面の付着物をそぎ落としながらもロールの回転を阻害しない。
【0012】
そして、第1の発明において、
上記スクレーパは、移動可能に構成された上記ロールの中心軸を支持する軸支持部と共に、移動可能に構成され、且つ上記隙間の大きさを調整可能に該軸支持部に対して長孔を介して締結されている。
【0013】
上記の構成によると、ロールの中心軸を支持する軸支持部と共にスクレーパが移動するので、スクレーパ先端とロール表面との間の距離を確実に一定に保つことができる。そして、長孔の締結位置でも隙間の大きさの微調整が可能となっている。
【0014】
の発明では、第1の発明において、
駆動装置を備え、
上記一対のロールの一方が上記駆動装置に駆動される駆動側ロールであり、
上記一対のロールの他方が上記駆動側ロールに連結した伝達手段により駆動される従動側ロールであり、
上記スクレーパは、上記従動側ロールの軸方向両端にそれぞれ設けられた軸支持部を連結する連結棒に設けられている。
【0015】
上記の構成によると、従動側ロールのみを移動させることで、駆動側ロールと駆動装置との位置関係が変わらず、駆動手段との調整の必要がない。従動側ロールを移動させたときには、伝達手段で対応すればよい。スクレーパは、従動側ロールの軸支持部を連結する連結棒に設けているので、従動側ロールを移動させても、スクレーパ先端とロール表面との間の距離を確実に一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、スクレーパを移動可能に構成されたロールと共に移動させるようにしたので、一対のロール間の距離の調整と、スクレーパの位置調整とを簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図2のI−I線拡大断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るスクレーパ付回転機械を示す平面図である。
図3図4のIII−III線拡大断面図である。
図4図2のIV方向から見た矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図2図4は、本発明の実施形態のスクレーパ付回転機械としてのロール破砕機1を示し、このロール破砕機1は、溝形鋼等を組み合わせたベース2を有し、このベース2上に駆動装置としての電動モータ3が設けられている。なお、駆動装置は、油圧モータなど他の駆動手段でもよい。
【0020】
電動モータ3の出力軸には、駆動側プーリ3aが設けられている。ベース2上には、箱形のケーシング2aが設けられ、このケーシング2a内には、電動モータ3と平行に一対のロール4,5が回転可能に設けられている。一対のロール4,5は、それぞれ軸支持部6,7でケーシング2aに支持されている。一対のロール4,5の表面には、例えば断面が鋸の歯状に同じ形状の溝が等間隔に並んでいる。この表面形状は、処理する材料に合わせ、溝ピッチを変えたり、溝深さを変えたりすればよい。溝形状も特に限定されず、溝のない平坦な表面としてもよい。図1及び図2に示すように、ケーシング2aの上面には、矩形状の材料投入口2bが開口し、底面には、材料排出口2cが開口している。
【0021】
一対のロール4,5のうち、駆動側ロール4の中心軸4aの一端には、従動プーリ4bが回転一体に連結され、この従動プーリ4bが駆動側プーリ3aに駆動される伝動ベルト3bに掛けられることで、電動モータ3の回転力により、駆動側ロール4が回転されるようになっている。
【0022】
駆動側ロール4の中心軸4aの他端には、伝達手段としての駆動側歯車4cが回転一体に連結されている。この駆動側歯車4cは、他方の従動側ロール5の中心軸5aに回転一体に連結した従動側歯車5bに噛み合っている。このことで、従動側ロール5が駆動側ロール4と同じ回転速度で互いに内側へ回転するようになっている。
【0023】
駆動側ロール4の中心軸4aは、図示しない軸受等を内蔵する駆動側軸支持部6に回転可能に支持されている。従動側ロール5の中心軸5aは、軸受等を内蔵する従動側軸支持部7に回転可能に支持されている。本実施形態では、駆動側軸支持部6は、ケーシング2aに固定されているが、従動側軸支持部7は、ケーシング2aに対してスライド移動可能に構成されている。
【0024】
具体的には、一対の従動側軸支持部7(すなわち従動側ロール5)は、移動機構8を介して移動可能にケーシング2aに取り付けられている。図4に示すように、ケーシング2aの対向する側壁には、上下に間隔を空けて、例えば丸棒よりなるレール部材9がそれぞれ固定されている。このレール部材9は、従動側軸支持部7に形成した例えば円形の貫通孔7aに挿通されている。従動側軸支持部7は、ケーシング2aに取り付けた回転ハンドル10の先端が、接続部7bによって従動側軸支持部7に連結されている。このことで、回転ハンドル10を回転させると、従動側軸支持部7がレール部材9に沿って水平にスライド移動するようになっている。回転ハンドル10は、一対の従動側軸支持部7にそれぞれ連結されており、一対の回転ハンドル10をそれぞれ回転させ、連結された従動側軸支持部7をそれぞれスライド移動させて一対のロール4,5間の距離を調整可能となっている。なお、駆動側歯車4cと従動側歯車5bとの噛み合いは、従動側ロール5を移動させても滑らないように保たれるようにするとよい。
【0025】
図3に示すように、一対の従動側軸支持部7の下側は、中心軸5aに沿って延びる連結棒11で結合されている。連結棒11は、例えば、連結棒取付ボルト11aで従動側軸支持部7の下側に脱着可能に取り付けられている。
【0026】
そして、図1に示すように、この連結棒11の上面には、従動側スクレーパ12が取り付けられている。従動側スクレーパ12の先端は、従動側ロール5の表面の溝形状に合わせた軸方向長さにわたって凹凸形状が形成され、その凸部が従動側ロール5の表面の溝の凹部に隙間を空けて嵌まり込むような位置関係となっている。従動側スクレーパ12の先端と従動側ロール5の表面との距離は、近すぎず遠すぎない適度な距離に設定される。それにより、表面の付着物をそぎ落としながらも従動側ロール5の回転を阻害しないようになっている。従動側スクレーパ12は、スクレーパ取付ボルト13をその長孔12aに通して連結棒11に脱着可能となっており、長孔12aの締結位置でも微調整が可能となっている。従動側スクレーパ12は、連結棒11の上面に固定されているので、連結棒11が、回転ハンドル10の操作に伴って移動すれば、連結棒11と共に移動するようになっている。本実施形態では、連結棒11は、例えば断面矩形状の金属製棒材よりなり、剛性が高くなっている。
【0027】
一方、駆動側ロール4に対応する駆動側スクレーパ14は、ケーシング2aの材料排出口2cの周縁にスクレーパ取付ボルト13により固定されている。駆動側スクレーパ14は、従動側スクレーパ12とほぼ同じ形状であるが、駆動側ロール4の表面の溝形状に嵌まり込むような構成となっている。また、駆動側スクレーパ14も、スクレーパ取付ボルト13をその長孔14aに通してケーシング2aの底面に脱着可能となっており、長孔14aの締結位置でのみ位置の微調整が可能となっている。
【0028】
このように構成することにより、処理物の供給サイズに合わせて一対のロール4,5間の距離を調整しても、従動側スクレーパ12が移動可能な従動側ロール5と共に従動側スクレーパ12と従動側ロール5の表面との距離を保ったまま移動するので、従動側スクレーパ12自体を移動させて従動側ロール5表面との間の距離を調整する必要がなく、手間が省けると共に、従動側スクレーパ12先端と従動側ロール5表面との間の距離を一定に保つことができる。
【0029】
従動側の従動側ロール5のみを移動させることで、駆動側ロール4と電動モータ3との位置関係が変わらず、伝動ベルト3bの調整の必要がない。従動側ロール5を移動させたときには、駆動側歯車4cと従動側歯車5bとが噛み合う範囲であれば特に噛み合い等の調整の必要はない。
【0030】
従動側スクレーパ12は、従動側ロール5の軸支持部7を連結する比較的剛性の高い連結棒11に設けているので、従動側ロール5を移動させても、従動側スクレーパ12の先端と従動側ロール5の表面との間の距離を確実に一定に保つことができる。
【0031】
したがって、本実施形態に係るロール破砕機1によると、従動側スクレーパ12を移動可能に構成された従動側ロール5と共に移動させるようにしたので、一対のロール4,5間の距離の調整と、従動側スクレーパ12の位置調整とを同時に簡単に行うことができる。
【0032】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0033】
すなわち、上記実施形態では、従動側ロール5のみを移動可能としたが、駆動側ロール4も移動可能としてもよい。その場合には、駆動側ロール4の下側にも連結棒11を設け、その連結棒11に駆動側スクレーパ14を取り付ければよい。
【0034】
また、上記実施形態では、スクレーパ付回転機械は、ロール破砕機1としたが、一対のロールが回転して供給材料を破砕、粉砕、整粒等行うものであってロール表面の付着物を取り除くスクレーパを設ける破砕機、粉砕機、整粒機等であれば、特に限定されない。
【0035】
また、上記実施形態では、一対のロール4,5を有するロール破砕機1について説明したが、溝形状や、ロール間距離の異なる複数対のロールを多段に設けて材料を処理するようにしてもよい。
【0036】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 ロール破砕機(スクレーパ付回転機械)
2 ベース
2a ケーシング
2b 材料投入口
2c 材料排出口
3 電動モータ(駆動装置)
3a 駆動側プーリ
3b 伝動ベルト
4 駆動側ロール
4a 中心軸
4b 従動プーリ
4c 駆動側歯車(伝達手段)
5 従動側ロール
5a 中心軸
5b 従動側歯車
6 駆動側軸支持部
7 従動側軸支持部
7a 貫通孔
7b 接続部
8 移動機構
9 レール部材
10 回転ハンドル
11 連結棒
11a 連結棒取付ボルト
12 従動側スクレーパ
12a 長孔
13 スクレーパ取付ボルト
14 駆動側スクレーパ
14a 長孔
図1
図2
図3
図4