(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、固体電解質体と絶縁部材との境界領域における段差がより大きくなると、これに併せてリード部の厚さ寸法もより大きくする必要がある。
このため、リード部の材料使用量を低減する際の低減量に限界があるという問題がある。
【0008】
また、ガスセンサ素子には、セルを複数備えるものがあり、そのような構成においては各セルにおいてリード部を備える必要があるため、セルが複数になることに伴いリード部の材料使用量が増加する。特に、セルを複数備えるものにおいて、それぞれの基準側の電極を同電位にするガスセンサ素子も知られているが、このようなガスセンサ素子においても、それぞれリード部を形成しており、リード部の材料使用量が増加する。
【0009】
そこで、本発明は、複数のセルを備えるとともに、固体電解質体が絶縁部材の貫通孔に備えられるセルを少なくとも1個備えるガスセンサ素子において、リード部の材料使用量を低減しつつ、固体電解質体と絶縁部材との境界領域におけるリード部の断線を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の局面におけるガスセンサ素子は、長手方向に延びると共に、先端側が測定対象ガス中に晒されるガスセンサ素子であって、ガスセンサ素子は、板型の固体電解質体と、固体電解質体の外面に形成される一対の電極部と、電極部に接続されると共に長手方向に沿って延びる一対のリード部と、を有するセルを複数備えている。
【0011】
また、複数のセルのうち少なくとも2個のセルは、板型形状の中間層を介して積層されており、中間層を介して積層される2個のセルのうち少なくとも1個のセルは、板型形状の絶縁部材に設けた積層方向に貫通する貫通孔内に固体電解質体が埋設されてなる第1第1埋設型セルである。
【0012】
また、第1埋設型セルの一対のリード部のうち、少なくとも中間層側に配置された第1リード部は、固体電解質体と絶縁部材との境界領域まで延びると共に、境界領域にて第1リード部に接続されるリード接続部を介して、2個のセルのうち第1埋設型セルとは別のセルが備える第2リード部に電気的に接続されて、第2リード部と同電位とされる。そして、第1リード部および第2リード部のうちいずれか一方のみが、リード接続部よりも長手方向の後端側に向かって延びる延出リード部に接続される。
【0013】
このような構成のガスセンサ素子では、セルを複数備えるにあたり、第1リード部および第2リード部をリード接続部にて接続すると共に、第1リード部および第2リード部のうちいずれか一方のみが、リード接続部よりも長手方向の後端側に向かって延びる延出リード部に接続されている。このため、第1リード部および第2リード部を同電位にしつつ、且つ両リード部に延出リード部を介して電気導通させることが可能となる。よって、第1リード部および第2リード部の両方に延出リード部を設ける必要がない。これにより、リード部としての材料使用量を低減できる。
【0014】
その上、このような構成のガスセンサ素子では、第1埋設型セルのうち中間層側に配置された第1リード部は、リード接続部との接続部位が、固体電解質体と絶縁部材との境界領域に形成される。これにより、この境界領域において固体電解質体と絶縁部材との段差が大きくなった場合でも、境界領域に形成されたリード接続部により第1リード部が断線すること無く、第1リード部とリード接続部とを電気的に繋がった状態とすることができる。このため、このガスセンサ素子では、固体電解質体と絶縁部材との境界領域でリード部(第1リード部)が断線することを抑制できる。
【0015】
また、リード接続部を、第1リード部および第2リード部に接続することで、リード部(第1リード部あるいは第2リード部)と延出リード部との断線を抑制することができる。
【0016】
よって、このガスセンサ素子によれば、リード部の材料使用量を低減できるととともに、埋設型セルにおける固体電解質体と絶縁部材との境界領域におけるリード部の断線を抑制できる。
【0017】
本発明の他の局面のガスセンサ素子においては、別のセルは、板型形状の絶縁部材に設けた積層方向に貫通する貫通孔内に固体電解質体が埋設されてなる第2埋設型セルであり、第2埋設型セルの第2リード部は、固体電解質体の形成領域においてリード接続部に接続されている。そして、第1埋設型セルの第1リード部は、延出リード部に接続されている。
【0018】
このガスセンサ素子においては、別のセルが第2埋設型セルとなっており、且つ第2埋設型セルは、第2リード部が、絶縁部材の形成領域や固体電解質体と絶縁部材との境界領域ではなく、固体電解質体の形成領域においてリード接続部と接続される。これにより、第2埋設型セルでは、この第2リード部が固体電解質体と絶縁部材との境界領域まで延びるような構成とならないため、境界領域の段差に起因してリード部が断線することはない。
【0019】
そのうえ、境界領域にてリード接続部と接続する第1リード部が延出リード部に接続されているため、第2リード部と延出リード部が接続される場合に生じる、境界領域における固体電解質体と絶縁部材との段差による断線が抑制でき、第1リード部および第2リード部と延出リード部とが電気的に繋がった状態となる。
【0020】
よって、このガスセンサ素子によれば、2個の埋設型セルのそれぞれにおいて、固体電解質体と絶縁部材との境界領域におけるリード部の断線を抑制できる。
本発明のさらに別の局面のガスセンサ素子においては、リード接続部の幅寸法は、第1リード部の幅寸法よりも大きく形成されている。
【0021】
このようにリード接続部の幅寸法が第1リード部の幅寸法よりも大きく形成されることで、埋込型セルの固体電解質体と絶縁部材との境界領域において、リード接続部と第1リード部とが重なり合う面積を大きく確保できる。
【0022】
これにより、個体差による寸法誤差が生じた場合であっても、リード接続部と第1リード部とが接続できる可能性を高めることができ、リード接続部と第1リード部との断線を抑制できる。
【0023】
よって、このガスセンサ素子によれば、リード接続部と第1リード部との間で断線が生じることを抑制できる。
本発明のさらに別の局面のガスセンサ素子においては、ガスセンサ素子は、自身の長手方向の後端側の外表面に設けられると共に、延出リード部に電気的に接続される電極パッドをさらに備え、2個のセルのうち延出リード部に接続するリード部を有するセルが、積層方向において電極パッドに近い側に配置される。
【0024】
このガスセンサ素子であれば、電極パッドと延出リード部とを接続する電気経路の経路長を相対的に短くすることができ、この経路を形成する材料の使用量を低減できる。
本発明のさらに別の局面のガスセンサは、測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子と、ガスセンサ素子を保持する主体金具と、を備えるガスセンサであって、ガスセンサ素子として、上述のいずれかのガスセンサ素子を備える。
【0025】
このように、上述のいずれかのガスセンサ素子を備えるガスセンサは、リード部の材料使用量を低減できるととともに、埋設型セルにおける固体電解質体と絶縁部材との境界領域におけるリード部の断線を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、複数のセルを備えるとともに、固体電解質体が絶縁部材の貫通孔に備えられるセルを少なくとも1個備えるガスセンサ素子において、リード部の材料使用量を低減しつつ、固体電解質体と絶縁部材との境界領域におけるリード部の断線を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
なお、以下に示す実施形態では、ガスセンサの一種である酸素センサのうち全領域空燃比センサ(以下単に、空燃比センサともいう)を例に挙げる。具体的には、自動車や各種内燃機関における空燃比フィードバック制御に使用するために、測定対象となる排ガス中の特定ガス(酸素)を検出するガスセンサ素子(検出素子)が組み付けられるとともに、内燃機関の排気管に装着される空燃比センサを例に挙げて説明する。
【0029】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
本実施形態のガスセンサ素子が使用される空燃比センサの全体の構成について、
図1に基づいて説明する。
図1は、空燃比センサの内部構成を表す断面図である。
【0030】
図1に示す様に、本実施形態における空燃比センサ1は、排気管に固定するためのネジ部3が外表面に形成された筒状の主体金具5と、軸線O方向(空燃比センサ1の長手方向:
図1の上下方向)に延びる板状形状のガスセンサ素子7と、ガスセンサ素子7の径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ9と、軸線O方向に貫通する挿通孔11の内壁面がガスセンサ素子7の後端部の周囲を取り囲む状態で配置される絶縁コンタクト部材13(セパレータ13)と、ガスセンサ素子7とセパレータ13との間に配置される5個(
図1には2個のみ図示)の接続端子15と、を備えている。
【0031】
ガスセンサ素子7は、後に詳述する様に、長手方向に伸びる直方体形状の素子本体部70と、素子本体部70の先端側を覆う多孔質の保護層17と、を備える。素子本体部70は、その先端側に、測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出する検知部90を備える。また、ガスセンサ素子7は、後端側(
図1の上方:長手方向後端部)の外表面のうち表裏の位置関係となる第1主面21および第2主面23に、電極パッド25,27,29,31,33(詳細は、
図2,
図3参照)が形成されている。
【0032】
接続端子15は、ガスセンサ素子7の電極パッド25,27,29,31,33にそれぞれ電気的に接続されるとともに、外部からセンサの内部に配設されるリード線35にも電気的に接続されており、リード線35が接続される外部機器と電極パッド25,27,29,31,33との間に流れる電流の電流経路を形成する。
【0033】
主体金具5は、軸線O方向に貫通する貫通孔37を有し、貫通孔37の径方向内側に突出する棚部39を有する略筒状形状に構成されている。この主体金具5は、検知部90を貫通孔37の先端よりも先端側に配置し、電極パッド25,27,29,31,33を貫通孔37の後端よりも後端側に配置する状態で、貫通孔37に挿通されたガスセンサ素子7を保持するよう構成されている。
【0034】
また、主体金具5の貫通孔37の内部には、ガスセンサ素子7の径方向周囲を取り囲む状態で、環状形状のセラミックホルダ41、滑石リング43、滑石リング45、及び上述のセラミックスリーブ9が、この順に先端側から後端側にかけて積層されている。
【0035】
このセラミックスリーブ9と主体金具5の後端部47との間には、加締パッキン49が配置され、一方、セラミックホルダ41と主体金具5の棚部39との間には、滑石リング43やセラミックホルダ41を保持するための金属ホルダ51が配置されている。なお、主体金具5の後端部47は、加締パッキン49を介してセラミックスリーブ9を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0036】
更に、主体金具5の先端部53の外周には、ガスセンサ素子7の突出部分を覆う金属製(例えば、ステンレスなど)の二重構造とされたプロテクタ55が溶接等によって取り付けられている。
【0037】
一方、主体金具5の後端側外周には、外筒57が固定されている。また、外筒57の後端側の開口部には、各電極パッド25,27,29,31,33とそれぞれ電気的に接続される5本のリード線35(
図1では3本が図示)が挿通されるリード線挿通孔59が形成されたグロメット61が配置されている。
【0038】
なお、セパレータ13の外周には、鍔部63が形成されており、鍔部63は、保持部材65を介して外筒57に固定されている。
[1−2.ガスセンサ素子の構成]
次に、本実施形態の要部であるガスセンサ素子7の構成について、
図2〜
図5に基づいて詳細に説明する。
【0039】
図2は、ガスセンサ素子7の外観を表す斜視図である。
図2に示す様に、ガスセンサ素子7は、長手方向(Y軸方向)に延びる長尺の板材である。なお、
図2において、長手方向がガスセンサの軸線O方向に沿う形態となる。また
図2のZ軸方向は、長手方向に垂直な積層方向であり、X軸方向は、長手方向及び積層方向に垂直な幅方向である。
【0040】
ガスセンサ素子7は、長手方向に伸びる直方体形状の素子本体部70と、素子本体部70の先端側(
図2における下側)を覆う多孔質の保護層17と、を備える。素子本体部70は、長手方向に伸びる板状の素子部71と、同じく長手方向に延びる板状のヒータ73と、が積層されて構成されている。素子本体部70は、その先端側に、測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出する検知部90を備える。保護層17は、多孔質状のアルミナで構成されており、少なくとも検知部90を覆うように、素子本体部70の先端面127及び側面(第1主面21,第2主面23,第1側面111、第2側面113)上に設けられる。
【0041】
図3に、ガスセンサ素子7を分解した斜視図を示す。なお、
図3では、保護層17、および後述する第1長辺面取り部121,第2長辺面取り部122,第3長辺面取り部123,第4長辺面取り部の図示を省略している。
【0042】
ガスセンサ素子7の素子本体部70は、
図3に分解して示す様に、積層方向の一方の側(
図3の上側)に配置されて、長手方向に伸びる板状の素子部71と、素子部71の反対側(裏側)に配置されて、同じく長手方向に延びる板状のヒータ73と、を備える。
【0043】
このうち、素子部71は、酸素濃淡電池セル81と、酸素ポンプセル89と、絶縁スペーサ93と、絶縁基板97と、を備えて構成される。
酸素濃淡電池セル81は、絶縁部材76と、固体電解質体75と、多孔質電極77と、リード部77aと、多孔質電極79と、リード部79aと、を備える。
【0044】
絶縁部材76は、アルミナを主体とした板型形状の部材であり、厚さ方向に貫通する貫通孔76aを備える。固体電解質体75は、絶縁部材76の貫通孔76aに配置される。一対の多孔質電極77、79は、固体電解質体75を挟み込むように、固体電解質体75の表面および裏面に配置される。
【0045】
リード部77aは、一端が多孔質電極77に接続されると共に、ガスセンサ素子7(素子本体部70)の長手方向(
図3では、左右方向)に延びるように配置される。リード部79aは、一端が多孔質電極79に接続されると共に、ガスセンサ素子7(素子本体部70)の長手方向(
図3では、左右方向)に延びるように配置される。
【0046】
酸素ポンプセル89は、絶縁部材84と、固体電解質体83と、多孔質電極85と、リード部85aと、多孔質電極87と、リード部87aと、延出リード部87bと、を備える。
【0047】
絶縁部材84は、アルミナを主体とした板型形状の部材であり、厚さ方向に貫通する貫通孔84aを備える。固体電解質体83は、絶縁部材84の貫通孔84aに配置される。一対の多孔質電極85、87は、固体電解質体83を挟み込むように、固体電解質体83の表面および裏面に配置される。
【0048】
リード部85aは、一端が多孔質電極85に接続されると共に、ガスセンサ素子7(素子本体部70)の長手方向(
図3では、左右方向)に延びるように配置される。リード部87aは、一端が多孔質電極87に接続されると共に、ガスセンサ素子7(素子本体部70)の長手方向(
図3では、左右方向)に延びるように配置される。延出リード部87bは、一端がリード部87aに接続されると共に、ガスセンサ素子7(素子本体部70)の長手方向(
図3では、左右方向)に延びるように配置される。
【0049】
固体電解質体75,83は、イットリアを安定化剤として固溶させたジルコニアで形成されている。なお、固体電解質体75は、積層方向に垂直な平面における断面積が、固体電解質体83よりも大きい構成である。
【0050】
多孔質電極77,79,85,87およびリード部77a,79a,85a,87aおよび延出リード部87bは、Ptを主体に形成されている。
絶縁スペーサ93は、アルミナを主体とした板型形状の部材であり、中空のガス測定室91を備える。絶縁スペーサ93は、酸素濃淡電池セル81と酸素ポンプセル89との間に積層される。ガス測定室91の内側には、酸素濃淡電池セル81の一方の多孔質電極77と、酸素ポンプセル89の一方の多孔質電極87と、が露出するように配置されている。
【0051】
素子部71の側面(絶縁スペーサ93の側面)には、排ガス(測定対象ガス)の取り込み口となる2つのガス導入部94が形成されており、ガス導入部94は、ガス測定室91に連通している。2つのガス導入部94からガス測定室91までの各経路には、拡散律速部95が形成されている。拡散律速部95は、例えば、アルミナ等からなる多孔質体で構成されており、測定対象ガスがガス測定室91へ流入する際の律速を行う。拡散律速部95は、その一部がガス導入部94から露出する状態で備えられている。
【0052】
つまり、このガスセンサ素子7においては、ガス導入部94は、素子本体部70の最外面において異なる2方向に向けて形成されており、拡散律速部95は、異なる2方向に向けて露出している。
【0053】
絶縁基板97は、アルミナを主体とした板型形状の部材であり、厚さ方向に貫通する空間部97aを備える。この絶縁基板97の空間部97aには、拡散律速部95と同様の多孔質体で構成された通気部99が埋設されている。この通気部99は、酸素ポンプセル89の多孔質電極85を測定対象ガスに晒している。
【0054】
なお、ガス測定室91は、素子本体部70(詳細には、素子部71)のうち先端側(
図3における左側)に位置するように形成されている。素子部71の長手方向のうち、ガス測定室91の形成領域およびガス測定室91よりも先端側となる領域は、酸素を検知するための検知部90として備えられる。
【0055】
一方、ヒータ73は、アルミナを主体とする絶縁基板101、103の間に、Ptを主体とする発熱抵抗体パターン105が挟み込まれて形成されている。
このようなガスセンサ素子7では、第1主面21の後端側(
図3における右側)に3個の電極パッド25,27,29が形成され、第2主面23の後端側に2個の電極パッド31、33が形成されている。
【0056】
このうち、第1主面21の1つの電極パッド29(
図2の右側電極パッド)は、
図3に示すように、絶縁基板97に設けられるスルーホール161、固体電解質体83に設けられるスルーホール165、延出リード部87b、リード部87a、リード接続部82、リード部77aを介して、酸素濃淡電池セル81の多孔質電極77に電気的に接続される。また、この電極パッド29は、絶縁基板97に設けられるスルーホール161、固体電解質体83に設けられるスルーホール165、延出リード部87b、リード部87aを介して、酸素ポンプセル89の多孔質電極87にも電気的に接続される。よって、多孔質電極77と多孔質電極87とは、同電位で電気的に接続される。
【0057】
リード接続部82は、白金を主体として構成されており、絶縁スペーサ93のスルーホール86に埋設される。このリード接続部82は、多孔質電極77のリード部77aと多孔質電極87のリード部87aとを電気的に接続している。なお、
図3においては、スルーホール86に設けられたリード接続部82のみ図示しているが、その他のスルーホール(例えば、スルーホール161,165等)についても、スルーホール86と同様に内壁面に導体が形成されている。
【0058】
リード接続部82によるリード部77aとリード部87aとの接続構造の詳細については、後述する。
また、他の電極パッド27(
図2の中央電極パッド)は、
図3に示すように、絶縁基板97に設けられるスルーホール162、固体電解質体83に設けられるスルーホール166、絶縁スペーサ93に設けられるスルーホール172、固体電解質体75に設けられるスルーホール176、リード部79aを介して、酸素濃淡電池セル81の多孔質電極79と電気的に接続される。更に他の電極パッド25(
図2の左側電極パッド)は、
図3に示すように、絶縁基板97に設けられるスルーホール163、リード部85aを介して、酸素ポンプセル89の多孔質電極85と電気的に接続されている。
【0059】
また、電極パッド31、33は、
図3に示すように、絶縁基板103に設けられたスルーホール181,182を介して、発熱抵抗体パターン105の両端に、各々電気的に接続されている。
【0060】
図2に戻り、上述した構成のガスセンサ素子7は、長尺の略直方体形状の板材であるので、その径方向の外周側の角部には、その長手方向(
図2のY方向)に沿って伸びる4つの辺(長手稜線)H1、H2、H3、H4を備えている。
【0061】
詳しくは、ガスセンサ素子7は、ガスセンサ素子7の長手方向に沿って延びる4つの外周壁として、第1主面21および第2主面23と、第1主面21および第2主面23に連接された第1側面111および第2側面113と、を備えている。また、第1主面21と第1側面111との間の稜線である第1辺H1と、第1主面21と第2側面113との間の稜線である第2辺H2と、第2主面23と第2側面113との間の稜線である第3辺H3と、第2主面23と第1側面111との間の稜線である第4辺H4とを備えている。
【0062】
第1辺H1,第2辺H2,第3辺H3,第4辺H4には、それぞれC面取り量0.2mmのC面取りが施されて形成された第1長辺面取り部121,第2長辺面取り部122,第3長辺面取り部123,第4長辺面取り部が設けられている。なお、
図2では、第4長辺面取り部が現れないため、第4長辺面取り部についての符号による図示は省略している。
【0063】
ガスセンサ素子7の後端側(
図2の上方)は、その中央に(長手方向と垂直な)後端面129を残す様にして、後端面129の周囲の四方の稜線に対してC面取りを施すことで、後端側C面取り部131が形成されている。
【0064】
[1−3.ガスセンサ素子の先端側における内部構造]
次に、ガスセンサ素子7の先端側における内部構造について説明する。
図4に、ガスセンサ素子7の先端側における内部構造の断面図を示す。なお、
図4では、保護層17の図示を省略している。
【0065】
図4に示すように、ガスセンサ素子7は、2つのセル(酸素濃淡電池セル81、酸素ポンプセル89)を備えており、これら2つのセルが、絶縁スペーサ93を介して積層される構成である。
【0066】
酸素濃淡電池セル81は、貫通孔76aを有する絶縁部材76を備えており、貫通孔76aに固体電解質体75が埋設される埋設型セルである。酸素濃淡電池セル81では、一対の多孔質電極77および多孔質電極79が固体電解質体75の表面および裏面にそれぞれ形成されている。
【0067】
酸素ポンプセル89は、貫通孔84aを有する絶縁部材84を備えており、貫通孔84aに固体電解質体83が埋設される埋設型セルである。酸素ポンプセル89では、一対の多孔質電極85および多孔質電極87が固体電解質体83の表面および裏面にそれぞれ形成されている。
【0068】
酸素ポンプセル89のうち絶縁スペーサ93側に配置されたリード部87aは、固体電解質体83と絶縁部材84との境界領域80において、絶縁スペーサ93を貫通するリード接続部82に接続される。なお、リード接続部82は、絶縁スペーサ93を貫通するよう形成されるスルーホール86に配置されている。
【0069】
さらに、リード接続部82は、酸素濃淡電池セル81のうち、絶縁スペーサ93側に配置されたリード部77aに接続される。
つまり、ガスセンサ素子7は、リード接続部82を介して互いに接続される2つのリード部77a,リード部87aが同電位となる構成である。
【0070】
ここで、
図5に、ガスセンサ素子7のうちリード接続部82の配置領域における内部構造を表した拡大断面図を示す。なお、
図5では、絶縁基板97、通気部99、多孔質電極85、リード部85a、固体電解質体75、絶縁部材76、多孔質電極79、リード部79a、絶縁基板101,103などの図示を省略している。
【0071】
図5に示すように、酸素ポンプセル89のうち固体電解質体83と絶縁部材84とは互いの厚さ寸法が異なるため、これらの境界領域80において段差が生じている。酸素ポンプセル89のリード部87aは、ガスセンサ素子7の長手方向に延びるように配置されており、境界領域80まで延びるように配置されている。
【0072】
また、ガスセンサ素子7では、酸素ポンプセル89のうち絶縁スペーサ93側に配置されたリード部87aは、リード接続部82との接続部位が、固体電解質体83と絶縁部材84との境界領域80に形成される。さらに、リード接続部82は、酸素濃淡電池セル81のリード部77aと接続している。そして、リード部87aのみが延出リード部87bに接続している。
【0073】
これにより、リード部87aおよびリード部77aを同電位にしつつ、且つ両リード部87a,77aに延出リード部87bを介して電気導通させることが可能である。よって、リード部87aおよびリード部77aの両方に延出リード部を設ける必要がない。これにより、リード部としての材料使用量を低減できる。
【0074】
その上、境界領域80において固体電解質体83と絶縁部材84との段差が大きくなった場合でも、境界領域80に形成されたリード接続部82によりリード部87aが断線することなく、リード部87aとリード接続部82とを電気的に繋がった状態とすることができる。このため、境界領域80でリード部87aが断線することを抑制できる。
【0075】
また、リード接続部82を、リード部87aおよびリード部77aに接続することで、リード部87aと延出リード部87bとの断線、あるいはリード部77aと延出リード部87bとの断線を抑制することができる。
【0076】
さらに、ガスセンサ素子7においては、絶縁スペーサ93を介して積層される2個のセル(酸素濃淡電池セル81、酸素ポンプセル89)がいずれも埋設型セルである。
その上、酸素濃淡電池セル81では、絶縁スペーサ93側に配置されるリード部77aが、固体電解質体75と絶縁部材76との境界領域ではなく、固体電解質体75の形成領域においてリード接続部82と接続される。これにより、酸素濃淡電池セル81では、このリード部77aが固体電解質体75と絶縁部材76との境界領域まで延びるような構成とならないため、境界領域の段差に起因してリード部77aが断線することはない。
【0077】
また、リード部87aが延出リード部87bと接続しているため、リード部77aと延出リードとを接続する場合に生じる、固体電解質体75と絶縁部材76との段差による断線を抑制でき、リード部87aとリード部77aと延出リード部87bとが電気的に繋がった状態となる。
【0078】
さらに、ガスセンサ素子7は、絶縁スペーサ93を介して積層される2個のセル(酸素濃淡電池セル81、酸素ポンプセル89)において、延出リード部87bに接続するリード部87aを有する酸素ポンプセル89が、積層方向において電極パッド29に近い側に配置される。これにより、電極パッド29と延出リード部87bとを接続する電気経路(スルーホール161,165)の経路長を相対的に短くすることができ、この経路を形成する材料の使用量を低減できる。
【0079】
また、リード接続部82の幅寸法は、0.9[μm]であり、リード部87aの幅寸法は、0.8[μm]である。なお、ここでの幅寸法とは、積層方向に垂直な平面のうちリード部87aの延設方向に垂直な方向(
図2でのX軸方向)の最大寸法を意味している。これにより、個体差による寸法誤差が生じた場合であっても、リード接続部82とリード部87aとが接続できる可能性を高めることができ、リード接続部82とリード部87aとの断線を抑制できる。
【0080】
[1−4.ガスセンサの製造方法]
本実施形態の空燃比センサ1の製造方法について、
図6〜
図7に基づいて説明する。
図6は、ガスセンサ素子の成形体141の製造方法に関する説明図であり、
図7は、ガスセンサ素子の製造途中段階を示す説明図である。
【0081】
ガスセンサ素子7を製造する場合、まず、公知のガスセンサ素子7の材料となる各種積層材料、即ち、素子部71の固体電解質体75、83となる未焼成固体電解質シートや、素子部71の絶縁部材76や絶縁部材84や絶縁基板97となる未焼成絶縁シートや、ヒータ73の絶縁基板101、103となる未焼成絶縁シートなどを積層状態とし、未圧着積層体を得る。なお、この未圧着積層体には、電極パッド25,27,29,31,33となる未焼成電極パッドなどが形成されている。
【0082】
これらのうち、例えば、未焼成固体電解質シートを形成する場合、まず、ジルコニアを主体とするセラミック粉末に対して、アルミナ粉末やブチラール樹脂などを加えて、さらに混合溶媒(トルエン及びメチルエチルケトン)を混合して、スラリーを生成する。そして、このスラリーをドクターブレード法によりシート状とし、混合溶媒を揮発させることで未焼成固体電解質シートが作製される。
【0083】
また、未焼成絶縁シートを形成する場合、まず、アルミナを主体とするセラミック粉末に対して、ブチラール樹脂とジブチルフタレートとを加えて、更に混合溶媒(トルエン及びメチルエチルケトン)を混合して、スラリーを生成する。そして、このスラリーをドクターブレード法によりシート状とし、混合溶媒を揮発させることで未焼成絶縁シートが作製される。
【0084】
さらに、未焼成の拡散律速部を形成する場合、まず、アルミナ粉末100質量%、加熱焼失材(例えば、カーボンなど)及び可塑剤を湿式混合により分散したスラリーを生成する。可塑剤はブチラール樹脂及びDBPを有する。このスラリーを用い、焼成後に拡散律速部95や通気部99となる部位に、未焼成の拡散律速部を形成する。
【0085】
そして、この未圧着積層体を1MPaで加圧することにより、
図6に示す様な圧着された成形体141を得る。なお、加圧前の未圧着積層体を得るまでの製造方法については、公知のガスセンサ素子の製造方法と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0086】
そして、加圧により得られた成形体141を、所定の大きさで切断することにより、ガスセンサ素子7の素子部71およびヒータ73と大きさが略一致する複数(例えば10個)の未焼成積層体を得る。
【0087】
その後、この未焼成積層体を樹脂抜きし、さらに焼成温度1500℃にて、1時間で本焼成して、
図7に示す様な焼成積層体143を得る。
次に、この焼成積層体143の長手方向に伸びる4辺(第1辺H1,第2辺H2,第3辺H3,第4辺H4)に対して面取りを行い、第1長辺面取り部121,第2長辺面取り部122,第3長辺面取り部123,第4長辺面取り部を形成する(
図2参照)。具体的には、焼成積層体143の長手方向に伸びる4辺(第1辺H1,第2辺H2,第3辺H3,第4辺H4)を回転砥石に当接して、周知のC面取りを行う。これにより、素子本体部70を得る。
【0088】
このようにして素子本体部70を得た後、この素子本体部70の先端側の周囲に、焼成後に保護層17(
図2参照)となる未焼成保護層を形成する。
その後、未焼成保護層の熱処理を行う。具体的には、未焼成保護層が形成された素子本体部70を、熱処理温度1000℃、熱処理時間3時間で熱処理を行い、保護層17が形成されたガスセンサ素子7を得る。
【0089】
このようにしてガスセンサ素子7を得た後、ガスセンサ素子7を主体金具5に組み付ける組付工程を行う。
即ち、この工程では、上記製造方法で作製されたガスセンサ素子7を金属ホルダ51に挿入し、さらにガスセンサ素子7をセラミックホルダ41、滑石リング43で固定し、組み立て体を作製する。その後、この組み立て体を主体金具5に固定し、ガスセンサ素子7の軸線O方向後端部側を滑石リング45、セラミックスリーブ9に挿通させつつ、これらを主体金具5に挿入する。
【0090】
そして、主体金具5の後端部47にてセラミックスリーブ9を加締め、下部組立体を作製する。なお、下部組立体には、あらかじめプロテクタ55が取付けられている。
一方、外筒57、セパレータ13、グロメット61などを組みつけ、上部組立体を作製する。そして、下部組立体と上部組立体とを接合し、空燃比センサ1を得る。
【0091】
[1−5.効果]
以上説明したように、本実施形態の空燃比センサ1におけるガスセンサ素子7は、酸素ポンプセル89のリード部87aが境界領域80においてリード接続部82に接続される。さらに、リード接続部82は、酸素濃淡電池セル81のリード部77aと接続している。そして、リード部87aのみが延出リード部87bに接続している。
【0092】
これにより、リード部87aおよびリード部77aを同電位にしつつ、且つ両リード部87a,77aに延出リード部87bを介して電気導通させることが可能である。よって、リード部87aおよびリード部77aの両方に延出リード部を設ける必要がない。これにより、リード部としての材料使用量を低減できる。
【0093】
その上、境界領域80において固体電解質体83と絶縁部材84との段差が大きくなった場合でも、境界領域80に形成されたリード接続部82によってリード部87aが断線することなく、リード部87aとリード接続部82とを繋がった状態とすることができる。このため、境界領域80でリード部87aが断線することを抑制できる。
【0094】
また、リード接続部82を、リード部87aおよびリード部77aに接続することで、リード部87aと延出リード部87bとの断線、あるいはリード部77aと延出リード部87bとの断線を抑制することができる。
【0095】
よって、ガスセンサ素子7によれば、リード部77aの材料使用量を低減できるととともに、酸素ポンプセル89における固体電解質体83と絶縁部材84との境界領域80におけるリード部87aの断線を抑制できる。
【0096】
また、酸素濃淡電池セル81では、絶縁スペーサ93側に配置されるリード部77aが、固体電解質体75と絶縁部材76との境界領域ではなく、固体電解質体75の形成領域においてリード接続部82と接続される。これにより、酸素濃淡電池セル81では、このリード部77aが固体電解質体75と絶縁部材76との境界領域まで延びるような構成とならないため、境界領域の段差に起因してリード部77aが断線することはない。
【0097】
また、リード部87aが延出リード部87bと接続しているため、リード部77aと延出リード部87bとを接続する場合に生じる、固体電解質体75と絶縁部材76との段差による断線を抑制でき、リード部87aとリード部77aと延出リード部87bとが電気的に繋がった状態となる。
【0098】
よって、ガスセンサ素子7によれば、2個のセル(酸素濃淡電池セル81、酸素ポンプセル89)のそれぞれにおいて、固体電解質体75と絶縁部材76との境界領域におけるリード部77aの断線、および固体電解質体83と絶縁部材84との境界領域80におけるリード部87aの断線をそれぞれ抑制できる。
【0099】
次に、ガスセンサ素子7においては、リード接続部82の幅寸法は、リード部87aの幅寸法よりも大きく形成されている。
このようにリード接続部82の幅寸法がリード部87aの幅寸法よりも大きく形成されることで、酸素ポンプセル89の固体電解質体83と絶縁部材84との境界領域80において、リード接続部82とリード部87aとが重なり合う面積を大きく確保できる。
【0100】
これにより、個体差による寸法誤差が生じた場合であっても、リード接続部82とリード部87aとが接続できる可能性を高めることができ、リード接続部82とリード部87aとの断線を抑制できる。
【0101】
よって、ガスセンサ素子7によれば、リード接続部82とリード部87aとの間で断線が生じることを抑制できる。
次に、ガスセンサ素子7は、絶縁スペーサ93を介して積層される2個のセル(酸素濃淡電池セル81、酸素ポンプセル89)において、延出リード部87bに接続するリード部87aを有する酸素ポンプセル89が、積層方向において電極パッド29に近い側に配置される。
【0102】
これにより、電極パッド29と延出リード部87bとを接続する電気経路(スルーホール161,165)の経路長を相対的に短くすることができ、この経路を形成する材料の使用量を低減できる。
【0103】
次に、ガスセンサ素子7では、リード接続部82がガス測定室91から離れたスルーホール86に配置されている。これにより、リード接続部82が、ガス測定室91に存在するガスと反応することがなくなり、ガス検出精度に影響が及ぶことを抑制できる。
【0104】
また、このようなガスセンサ素子7を備える空燃比センサ1は、リード部77aの材料使用量を低減できるとともに、酸素濃淡電池セル81における固体電解質体75と絶縁部材76との境界領域におけるリード部77aの断線や、酸素ポンプセル89における固体電解質体83と絶縁部材84との境界領域80におけるリード部87aの断線を抑制できる。
【0105】
[1−6.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
空燃比センサ1がガスセンサの一例に相当し、酸素濃淡電池セル81および酸素ポンプセル89が2個のセルの一例に相当すると共に、それぞれ埋設型セルの一例に相当し、酸素ポンプセル89が第1埋設型セルの一例に相当し、酸素濃淡電池セル81が第2埋設型セルの一例に相当し、絶縁スペーサ93が中間層の一例に相当する。
【0106】
多孔質電極77および多孔質電極79が一対の電極部の一例に相当し、リード部77aおよびリード部79a一対のリード部の一例に相当し、多孔質電極85および多孔質電極87が一対の電極部の一例に相当し、リード部85aおよびリード部87aが一対のリード部の一例に相当する。また、リード部77aが第2リード部の一例に相当し、リード部87aが第1リード部の一例に相当し、延出リード部87bが延出リード部に相当する。さらに、絶縁部材76および絶縁部材84がそれぞれ絶縁部材の一例に相当する。
【0107】
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0108】
例えば、上記実施形態では、酸素濃淡電池セル81および酸素ポンプセル89が共に埋設型セル(固体電解質体が絶縁部材の貫通孔に配置される構成のセル)として形成されているが、ガスセンサ素子に備えられる全てのセルが埋設型セルに限られることはない。
【0109】
具体的には、
図8に示す第2ガスセンサ素子207のように、第2酸素濃淡電池セル281の第2固体電解質体275が絶縁スペーサ93と同等の大きさの板型部材として備えられる構成を採ることができる。なお、第2ガスセンサ素子207のうち、第1実施形態のガスセンサ素子7と同一の構成については、同一符号を付して表している。
【0110】
この第2ガスセンサ素子207においては、2つのセル(第2酸素濃淡電池セル281および酸素ポンプセル89)のうち第2酸素濃淡電池セル281は、埋設型セルではないため、埋設型セルのような段差が生じる虞がない。
【0111】
そして、第2酸素濃淡電池セル281であっても、絶縁スペーサ93側に配置されたリード部77aが、第2固体電解質体275と絶縁部材との境界領域ではなく、第2固体電解質体275の形成領域においてリード接続部82と接続される。これにより、第2酸素濃淡電池セル281では、このリード部77aが第2固体電解質体275と絶縁部材との境界領域まで延びるような構成とならないため、境界領域の段差に起因してリード部77aが断線することはない。
【0112】
また、第2ガスセンサ素子207においては、2つのセル(第2酸素濃淡電池セル281および酸素ポンプセル89)のうち酸素ポンプセル89が埋設型セルであるが、第1実施形態と同様に、酸素ポンプセル89のリード部87aが境界領域80においてリード接続部82に接続される。このため、境界領域80において固体電解質体83と絶縁部材84との段差が生じた場合でも、リード接続部82によって固体電解質体83上のリード部87aと絶縁部材84上のリード部87aとが繋がるため、境界領域80でリード部87aが断線することを抑制できる。
【0113】
なお、第2ガスセンサ素子207は、長手方向に伸びる直方体形状の第2素子本体部270と、第2素子本体部270の先端側を覆う多孔質の保護層と、を備えるが、
図8では、保護層の図示は省略している。また、第2素子本体部270は、長手方向に伸びる板状の第2素子部271と、同じく長手方向に延びる板状のヒータ73と、が積層されて構成されている。さらに、第2ガスセンサ素子207においては、第2酸素濃淡電池セル281および酸素ポンプセル89が2個のセルの一例に相当する。
【0114】
次に、上記の第1実施形態では、酸素濃淡電池セル81の固体電解質体75は、積層方向に垂直な平面における断面積が、酸素ポンプセル89の固体電解質体83よりも大きい構成であるが、本発明はこのような構成に限られることはない。
【0115】
例えば、
図9に示す第3ガスセンサ素子307のように、第3酸素濃淡電池セル381の貫通孔376aに埋設される第3固体電解質体375が、酸素ポンプセル89の固体電解質体83と比べて、積層方向に垂直な平面における断面積が同等の大きさに形成される構成としても良い。
【0116】
この第3ガスセンサ素子307では、第3酸素濃淡電池セル381のうち絶縁スペーサ93側に配置されるリード部77aは、第3固体電解質体375と第3絶縁部材376との境界領域380において、リード接続部82に接続される。これにより、境界領域380において第3固体電解質体375と第3絶縁部材376との段差が生じた場合でも、リード部77aとリード接続部82との接続を維持できる。
【0117】
また、リード接続部82は、第3酸素濃淡電池セル381の境界領域380でリード部77aに接続されるとともに、酸素ポンプセル89の境界領域80でリード部87aに接続される。
【0118】
これにより、境界領域80において固体電解質体83と絶縁部材84との段差が生じた場合、あるいは境界領域380において第3固体電解質体375と第3絶縁部材376との段差が生じた場合でも、第3酸素濃淡電池セル381のリード部77aと酸素ポンプセル89のリード部87aとがリード接続部82を介して電気的接続を維持できる。
【0119】
よって、第3ガスセンサ素子307では、第3酸素濃淡電池セル381の境界領域380におけるリード部77aの断線を抑制できると共に、酸素ポンプセル89の境界領域80におけるリード部87aの断線を抑制できる。
【0120】
なお、第3ガスセンサ素子307は、長手方向に伸びる直方体形状の第3素子本体部370と、第3素子本体部370の先端側を覆う多孔質の保護層と、を備えるが、
図9では、保護層の図示は省略している。また、第3素子本体部370は、長手方向に伸びる板状の第3素子部371と、同じく長手方向に延びる板状のヒータ73と、が積層されて構成されている。また、第3ガスセンサ素子307においては、第3酸素濃淡電池セル381および酸素ポンプセル89が2個のセルの一例に相当する。
【0121】
なお、第3ガスセンサ素子307の変形例としては、第3酸素濃淡電池セル381のリード部77aから境界領域380よりも後端に向けて延設された延出リード部を配置するとともに、延出リード部87bが配置されない構成を挙げることができる。
【0122】
次に、上記の第1実施形態では、ガス測定室91を備える絶縁スペーサ93は、アルミナを主体とした板型形状の部材であったが、本発明はこのような構成に限られることはない。例えば、酸素濃淡電池セルと酸素ポンプセルとの間に積層されるスペーサが、貫通孔を有する絶縁スペーサに導電性スペーサが埋設される構成であり、導電性スペーサによって酸素濃淡電池セルと酸素ポンプセルとを導通する構成としても良い。