(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和装置は、ガスエンジンを駆動源としたエンジン駆動式圧縮機を含んで構成される室外機ユニットを備えたGHP(ガスヒートポンプエアコン)と、電動機を駆動源とした電気駆動式圧縮機を含んで構成される室外機ユニットを備えたEHP(電気式ヒートポンプエアコン)とに大別される。
【0003】
EHPは、ガスエンジンを備えないため、GHPに必要なエンジンオイルの補充や交換、オイルフィルタの交換、点火プラグの点検や交換等のメンテナンスを行う必要がなく、メンテナンスに要するコストがかからない。
【0004】
一方、GHPは、ヒートポンプによる暖房(室内空気の加熱)に加えて、ガスエンジンの排熱を回収して空気を加熱することができるため、EHPと比較して効率的に室内を暖めることが可能となる。また、GHPは、ほとんど電力を消費しないため、EHPと比較して、消費電力を大幅に削減することができるという利点がある。
【0005】
このように、GHPとEHPとはそれぞれ異なる利点を有している。そこで、それぞれの利点を活かすために、1筐体で構成される室外機ユニットに、エンジン駆動式圧縮機と、電気駆動式圧縮機と、室外熱交換器と、各種センサとを収容し、双方の圧縮機を並行して駆動させる空気調和装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したエンジン駆動式圧縮機と電気駆動式圧縮機とが一体的に構成される室外機ユニットでは、エンジン駆動式圧縮機と電気駆動式圧縮機とでセンサや制御機構を共用しているため、センサや制御機構といった共用部が故障した場合、室外機ユニット全体が利用できなくなり、空気調和装置の運転が不可能となる。
【0008】
さらに、停電時においては、電気駆動式圧縮機を駆動できないのはもちろんのこと、室内機ユニットも運転できなくなるので、仮にエンジン駆動式圧縮機を駆動できたとしても空気調和装置の運転が不可能となってしまう。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、エンジン駆動式圧縮機と、電気駆動式圧縮機とを双方とも備え、停電時においても運転させることが可能な空気調和装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の空気調和装置は、施設に設置される空気調和装置であって、冷媒が循環する連続した循環路と、循環路に設けられ、ガスエンジンと、ガスエンジンを駆動源として発電する発電機と、発電機によって発電された電力を蓄電するバッテリと、ガスエンジンを駆動源として冷媒を圧縮するエンジン駆動式圧縮機と、冷媒と室外の空気とで熱交換を行うGHP室外熱交換器とを有するGHPユニットと、GHPユニットとは独立して構成され、循環路に設けられ、商用電
源から供給された電力で駆動される電動機を駆動源として冷媒を圧縮する電気駆動式圧縮機と、冷媒と室外の空気とで熱交換を行うEHP室外熱交換器とを有するEHPユニットと、循環路に設けられ、冷媒を減圧する減圧部と、冷媒と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、電力で駆動され室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、商用電源が停電しているか否かを判定する停電判定部と、
第1の電力線を介して商用電源およびEHPユニットに接続された第1入力端子と、第2の電力線を介して発電機に接続された第2入力端子と、第3の電力線を介してGHPユニットおよび室内機ユニットに接続された出力端子とを有し、商用電源が停電していないと判定された場合には、
第1入力端子と出力端子とを接続して、GHPユニットおよび室内機ユニットに供給する電力の電力源を商用電源に切り換え、商用電源が停電していると判定された場合には、
第2入力端子と出力端子とを接続して、GHPユニットおよび室内機ユニットに供給する電力の電力源を発電機に切り換える電力系統切換部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジン駆動式圧縮機と、電気駆動式圧縮機とを双方とも備え、停電時においても運転させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(空気調和装置100)
図1は、本実施形態にかかる空気調和装置100の構成を説明するための図である。空気調和装置100は、ビルや学校等の施設に設置され、室外機ユニットとして機能するGHPユニット110と、当該GHPユニット110とは別体であり室外機ユニットとして機能するEHPユニット150と、1または複数の室内機ユニット200と、GHPユニット110、EHPユニット150、室内機ユニット200に冷媒を循環させるための冷媒管230と、GHPユニット110、EHPユニット150、室内機ユニット200を制御する運転制御部250と、停電判定部260と、電力系統切換部270とを含んで構成される。なお、
図1中、電力の流れを実線の矢印で、信号線を二点破線で、冷房時の冷媒の流れを一点鎖線の矢印で示す。
【0015】
GHPユニット110は、ガスエンジン112と、発電機114と、インバータ116と、バッテリ118と、エンジン駆動式圧縮機120と、四方弁122と、冷媒と室外の空気とで熱交換を行うGHP室外熱交換器130と、GHP室外熱交換器130に空気を送り熱交換を促進させるGHP送風部132と、GHP制御部140とを含んで構成される。
【0016】
ガスエンジン112は、商用電源から供給された電力、または、後述するバッテリ118から供給された電力で起動される。発電機114は、ガスエンジン112を駆動源として発電する。インバータ116は、発電機114によって発電された電力を50Hzまたは60Hzに周波数変換する。バッテリ118は、商用電源から供給された電力、または、発電機114によって発電された電力を蓄電する。エンジン駆動式圧縮機120は、ガスエンジン112を駆動源として冷媒を圧縮する。
【0017】
エンジン駆動式圧縮機120の出口は、冷媒管230によって四方弁122の第1ポートに接続され、エンジン駆動式圧縮機120の入口は、冷媒管230によって四方弁122の第3ポートに接続される。また、GHP室外熱交換器130の一端側は、冷媒管230によって四方弁122の第2ポートに接続される。GHP室外熱交換器130の他端側は、冷媒管230によって後述する室内機ユニット200の減圧部210に接続される。四方弁122の第4ポートは、冷媒管230によって後述する室内機ユニット200の室内熱交換器220の一端側に接続される。GHP制御部140は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、後述する運転制御部250からの制御指令に基づいて、GHPユニット110全体(例えば、ガスエンジン112、発電機114、インバータ116、GHP送風部132、各種センサ等)を制御する。
【0018】
EHPユニット150は、GHPユニット110とは独立して構成され、商用電源から供給された電力で駆動される電動機152と、電動機152を駆動源とする電気駆動式圧縮機154と、四方弁160と、冷媒と室外の空気とで熱交換を行うEHP室外熱交換器170と、EHP室外熱交換器170に空気を送り熱交換を促進させるEHP送風部172と、EHP制御部180とを含んで構成される。電気駆動式圧縮機154の出口は、冷媒管230によって四方弁160の第1ポートに接続され、電気駆動式圧縮機154の入口は、冷媒管230によって四方弁160の第3ポートに接続される。また、EHP室外熱交換器170の一端側は、冷媒管230によって四方弁160の第2ポートに接続される。EHP室外熱交換器170の他端側は、冷媒管230によって室内機ユニット200の減圧部210に接続される。四方弁160の第4ポートは、冷媒管230によって室内機ユニット200の室内熱交換器220の一端側に接続される。EHP制御部180は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、運転制御部250からの制御指令に基づいて、EHPユニット150全体(例えば、電動機152、EHP送風部172、各種センサ等)を制御する。
【0019】
本実施形態において、空気調和装置100は、2つの室内機ユニット200(
図1中、200a、200bで示す)を備えている。室内機ユニット200は、冷媒を減圧する減圧部210(膨張弁)と、冷媒管230によって減圧部210に接続され冷媒と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器220と、室内熱交換器220に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部222とを含んで構成される。上述したように、減圧部210の一端側は、冷媒管230によってGHP室外熱交換器130、EHP室外熱交換器170の他端側に接続され、減圧部210の他端側は冷媒管230によって室内熱交換器220の他端側に接続され、室内熱交換器220の一端側は冷媒管230によって四方弁122、160の第4ポートに接続されている。
【0020】
したがって、エンジン駆動式圧縮機120や電気駆動式圧縮機154が駆動されると、冷媒は、冷媒管230を循環することとなり、冷媒管230によって一連の循環路が形成される。また、本実施形態において、冷媒が循環する一連の循環路は、GHPユニット110、EHPユニット150、室内機ユニット200aを通る循環路と、GHPユニット110、EHPユニット150、室内機ユニット200bを通る循環路とに分岐されている。
【0021】
なお、室内機ユニット200を冷房として機能させる場合、四方弁122の第1ポートと第2ポートとを接続し、第4ポートと第3ポートとを接続するとともに、四方弁160の第1ポートと第2ポートとを接続し、第4ポートと第3ポートとを接続することで、
図1中一点鎖線の矢印で示す方向に冷媒を流通させて、圧縮された冷媒をGHP室外熱交換器130、EHP室外熱交換器170に送出する。一方、室内機ユニット200を暖房として機能させる場合、四方弁122の第1ポートと第4ポートとを接続し、第2ポートと第3ポートとを接続するとともに、四方弁160の第1ポートと第4ポートとを接続し、第2ポートと第3ポートとを接続することで、
図1中一点鎖線の矢印で示す方向とは逆の方向に冷媒を流通させて、圧縮された冷媒を室内熱交換器220に送出する。
【0022】
運転制御部250は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して空気調和装置100全体を管理および制御する。運転制御部250は、ユーザによる操作部(例えば、リモートコントローラ)への操作入力に応じて、冷媒の循環方向を切り換え、室内機ユニット200の機能を冷房または暖房に切り換える。
【0023】
停電判定部260は、商用電源が停電しているか否かを判定し、停電していると判定した場合に、GHPユニット110および室内機ユニット200に供給する電力の電力源を、商用電源から発電機114に切り換える切り換え信号を電力系統切換部270に出力する。本実施形態において、停電判定部260は、商用電源の電圧値を測定しており、当該電圧値が所定の値未満となると、商用電源が停電していると判定する。
【0024】
電力系統切換部270は、GHPユニット110および室内機ユニット200に供給する電力の電力源を、商用電源または発電機114に切り換える。なお、停電判定部260および電力系統切換部270は、商用電源から電力を取得してもよいし、発電機114から電力を取得してもよい。以下、電力系統切換部270の処理について詳述する。
【0025】
図2、
図3は、電力系統切換部270の処理を説明するための図であり、
図2は、商用電源が停電していない通常時の電力系統を、
図3は、商用電源が停電している停電時の電力系統を示す。なお、
図2、
図3中、接続されている電力線を実線の矢印で示し、非接続の電力線を破線の矢印で示す。
【0026】
図2、
図3に示すように、商用電源は、電力線300を介して、EHPユニット150、停電判定部260、電力系統切換部270の第1入力端子272aに接続されている。また、電力系統切換部270の第2入力端子272bは、電力線310を介して、GHPユニット110のインバータ116に接続されている。また、電力系統切換部270の出力端子274は、電力線320を介して、GHPユニット110、運転制御部250、室内機ユニット200a、200bに接続されている。
【0027】
停電判定部260による切り換え信号の入力がなされない場合、
図2に示すように、電力系統切換部270は、第1入力端子272aと出力端子274とが接続されるように切り換える。なお、すでに、第1入力端子272aと出力端子274とが接続されている場合、電力系統切換部270は接続を切り換えない。
【0028】
したがって、商用電源が停電していない通常時において、EHPユニット150には、電力線300を介して商用電源から直接電力が供給され、当該供給された電力で、電動機152の駆動、EHP送風部172の駆動、四方弁160の切り換え等が実行されることとなる。また、運転制御部250には、電力線320を介して商用電源から電力が供給され、各種制御処理が実行されることとなる。さらに、室内機ユニット200には、電力線320を介して商用電源から電力が供給され、室内送風部222の駆動等が実行されることとなる。
【0029】
また、通常時において、GHPユニット110には、電力線320を介して商用電源から電力が供給される。そして、GHPユニット110のガスエンジン112は、商用電源から供給された電力、または、バッテリ118に蓄電された電力で起動される。そうすると、ガスエンジン112が運転することで発電機114が駆動されることとなる。そして、発電機114が駆動されると、発電機114によって発電されインバータ116によって周波数変換された電力によって、バッテリ118の充電、GHP送風部132の駆動、四方弁122の切り換え等が実行されることとなる。また、一旦発電機114が駆動されると、発電機114によって発電されインバータ116によって周波数変換された電力は、電力線320を通じて、運転制御部250、室内機ユニット200に供給されることとなる。
【0030】
一方、停電判定部260による切り換え信号の入力がなされた場合、
図3に示すように、電力系統切換部270は、第2入力端子272bと出力端子274とが接続されるように切り換える。なお、すでに、第2入力端子272bと出力端子274とが接続されている場合、電力系統切換部270は接続を切り換えない。
【0031】
したがって、商用電源が停電している停電時において、EHPユニット150には、電力が供給されないため、電動機152の駆動、EHP送風部172の駆動、四方弁160の切り換え等は実行されず、EHPユニット150の運転はできないこととなる。したがって、EHPユニット150を通る循環路において冷媒の循環は実行されない。
【0032】
一方、停電時であってもGHPユニット110においては、ガスエンジン112が、バッテリ118から供給された電力で起動される。したがって、ガスエンジン112が駆動することによって発電機114で発電することが可能となる。そして、GHPユニット110においては、発電機114によって発電された電力で、GHP送風部132の駆動、四方弁122の切り換え等の実行を維持することが可能となる。
【0033】
また、発電機114で発電された電力は、バッテリ118に蓄電されるとともに、インバータ116で周波数変換され、第2入力端子272bを通じて出力端子274から送電されることとなる。
【0034】
そうすると、発電機114によって発電された電力は、電力線310、第2入力端子272b、出力端子274、電力線320を介して運転制御部250に供給されるため、運転制御部250において各種制御処理を実行することができる。さらに、発電機114によって発電された電力は、電力線320を介して室内機ユニット200に供給されるため、室内送風部222等の駆動を実行することが可能となる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態にかかる空気調和装置100によれば、ガスエンジン112を起動するための電力を蓄電するバッテリ118、および、ガスエンジン112の駆動によって発電する発電機114を含んで構成されるGHPユニット110を備える構成により、停電時であっても、GHPユニット110、室内機ユニット200、運転制御部250を運転させることが可能となる。これにより、停電時であっても、空気調和装置100自体の運転が停止してしまうという事態を回避することができ、室内環境の快適性の低下を抑制することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態にかかる空気調和装置100は、GHPユニット110とEHPユニット150とを独立して構成している。これにより、通常時において、GHPユニット110およびEHPユニット150のいずれか一方の室外機ユニットが故障したとしても、他方の室外機ユニットを駆動させて、室内熱交換器220に冷媒を循環させることができ、空気調和装置100自体の運転が停止してしまうという事態を回避することが可能となる。これにより、停電時同様、室内環境の快適性の低下を抑制することができる。
【0037】
(変形例)
図4は、変形例にかかる空気調和装置400の構成を説明するための図である。
図4に示すように、空気調和装置400は、上記実施形態において説明した空気調和装置100と、EHPユニット150に接続された電力線の位置のみが異なり、他の構成は実質的に同一である。具体的に説明すると、
図4に示すように、EHPユニット150には、電力線320を介して、出力端子274が接続される。かかる構成により、停電時であっても、EHPユニット150に保持電流を供給することが可能となる。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0039】
例えば、上記実施形態において、通常時において、発電機114によって発電された電力が、GHPユニット110を構成する部材のみならず、運転制御部250、室内機ユニット200にも供給される構成について説明した。しかし、通常時において、発電機114によって発電された電力は、GHPユニット110のバッテリ118、GHP送風部132、四方弁122等、GHPユニット110を構成する部材のみに供給されてもよい。