特許第6154384号(P6154384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154384
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】乾燥サンプルカード用固相抽出デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20170619BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20170619BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20170619BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20170619BHJP
   G01N 33/48 20060101ALN20170619BHJP
【FI】
   G01N1/10 C
   G01N30/06 Z
   G01N30/88 E
   G01N1/28 J
   !G01N33/48 B
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-531899(P2014-531899)
(86)(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公表番号】特表2014-526710(P2014-526710A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】US2012055853
(87)【国際公開番号】WO2013043562
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年9月17日
(31)【優先権主張番号】61/538,224
(32)【優先日】2011年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131764
【氏名又は名称】ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラスミシュ,ダリル・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】イラネタ,パメラ・シー
(72)【発明者】
【氏名】チェインバース,エリン・イー
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ムン・チョル
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/067221(WO,A1)
【文献】 特表2002−531258(JP,A)
【文献】 特開平10−104226(JP,A)
【文献】 国際公開第00/014532(WO,A1)
【文献】 特開2002−243726(JP,A)
【文献】 特開2001−116749(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/067309(WO,A1)
【文献】 特開昭63−171337(JP,A)
【文献】 特表2005−521041(JP,A)
【文献】 特表2013−513097(JP,A)
【文献】 特表2013−513100(JP,A)
【文献】 特開2010−078371(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0129940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44、30/00〜30/96、33/48〜33/98、35/00〜37/00、A61B5/06〜5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体液の乾燥サンプルの固相抽出用デバイスであって、
生体液の複数の乾燥サンプルを有する乾燥サンプルカードを受ける第1の側を有する支持構造物であって、支持構造物は第1の側の反対の第2の側を有し、第1の側と第2の側との間の複数の孔を有し、支持構造物は、受けられた乾燥サンプルカードを各乾燥サンプルが孔のうちの1つに隣接する位置に位置合わせし固定するように構成されている、支持構造物と、
各々が支持構造物の第2の側の孔のうちの1つにおいて入口端部を有し、出口端部を有する複数のウェルと、
ウェルのうち少なくとも1つの中に配置されたサンプル調製材料と
を備える、デバイス。
【請求項2】
サンプル調製材料がクロマトグラフィー吸着剤である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
間にサンプル調製材料が配置された1対の多孔フィルタを、サンプル調製材料を有する各ウェルにさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
支持構造物のサンプル側から延び、乾燥サンプルカードの位置合わせ穴と係合するように構成されている少なくとも1つの位置合わせピンをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
支持構造物の第1の側に取り付けられるカードホルダであって、乾燥サンプルカードを受ける第1の側と、支持構造物の第1の側に隣接する第2の側を有するカードホルダをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
カードホルダを支持構造物の第1の側に取り付けるように構成されている少なくとも1つの留め具をさらに備える、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
支持構造物の第1の側から延びてカードホルダの開口部と係合する少なくとも1つの位置合わせピンをさらに備える、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
生体液の乾燥サンプルの固相抽出の方法であって、
生体液の複数の乾燥サンプルを有する乾燥サンプルカードを固相抽出デバイスに固定することと、
固相抽出デバイスは
生体液の複数の乾燥サンプルを有する乾燥サンプルカードを受ける第1の側を有する支持構造物であって、支持構造物は第1の側の反対の第2の側を有し、第1の側と第2の側との間の複数の孔を有し、支持構造物は、受けられた乾燥サンプルカードを、各乾燥サンプルが孔のうちの1つに隣接する位置に位置合わせし固定するように構成されている、支持構造物、
各々が支持構造物の第2の側の孔のうちの1つにおいて入口端部を有し、出口端部を有する複数のウェル、および
各ウェルに配置されたサンプル調製材料を含み、
各乾燥サンプルおよび個々のウェルについて、抽出溶媒を乾燥サンプルを通してウェル内に流し込むことで抽出サンプルを生成することと、
各抽出サンプルについて、抽出サンプルをウェル内のサンプル調製材料に通して抽出サンプルから少なくとも1つの成分を除去することと
を含む、方法。
【請求項9】
抽出溶媒を流すことが、固相抽出デバイス全体に差圧をかけることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生体液の乾燥サンプルの固相抽出の方法であって、
生体液の複数の乾燥サンプルを有する乾燥サンプルカードを固相抽出デバイスに固定することと、固相抽出デバイスは
生体液の複数の乾燥サンプルを有する乾燥サンプルカードを受ける第1の側を有する支持構造物であって、支持構造物は第1の側の反対の第2の側を有し、第1の側と第2の側との間の複数の孔を有し、支持構造物は、受けられた乾燥サンプルカードを、各乾燥サンプルが孔のうちの1つに隣接する位置に位置合わせし固定するように構成されている、支持構造物、
各々が支持構造物の第2の側の孔のうちの1つにおいて入口端部を有し、出口端部を有する複数のウェル、および
各ウェルに配置されたサンプル調製材料を含み、
乾燥サンプルカードの部分を乾燥サンプルカードの残りの部分から分離して、各乾燥サンプルがウェルのうちの1つの中に配置されるようにすることと、
抽出溶媒を各ウェルに供給することで抽出サンプルを生成することと、
各抽出サンプルについて、抽出サンプルをウェル内のサンプル調製材料に通して抽出サンプルから少なくとも1つの成分を除去することと
を含む、方法。
【請求項11】
抽出溶媒が、分離された部分が形成された場所で乾燥サンプルカードの開口部を通じて供給される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「Solid Phase Extraction Device For Dried Sample Cards(乾燥サンプルカード用固相抽出デバイス)」という名称で2011年9月23日に出願された米国仮特許出願シリアル番号第61/538,224号の出願日の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は一般に、乾燥生体液の分析に関する。より具体的には、本発明は、乾燥血液スポットカードなどの採取媒体またはサンプル担体上の乾燥血液スポットなどの乾燥サンプルスポットから再構成されたサンプルの分析を容易にするデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
全血、血漿および血清などの生体液中の投与された薬物の濃度および薬物の代謝物を測定することは、薬物の有効性と毒性作用を理解するのに重要である。典型的な臨床試験は、多数の生体液サンプルを細心の注意を払いつつ低温で取扱い処理することを要する。乾燥スポットサンプリングは、乾燥スポットとしての少量(例えば、数マイクロリットル以下)の生体液の採取に基づく代替的なプラクティスである。例えば、乾燥血液スポット(DBS)サンプリングは、少量の血液を担持媒体上に採取することを含む。サンプルは後に、抽出工程の間適切な溶媒を用いて乾燥スポットから再構成される。再構成されたサンプルは、例えば、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)アッセイにおいて分析され得る。多くの場合、再構成されたサンプルの分析は、サンプルマトリックス中の干渉要素の存在により有害な影響を受ける。
【0004】
固相抽出(SPE)は、定量分析を実行する前にサンプルを調製するクロマトグラフィー手法であり、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)を用いる。SPEのゴールは、定量分析の実行能に負の影響を及ぼし得る望まない干渉物を含む混合体のサンプルマトリックスから標的アナライトを単離することである。単離された標的アナライトは、定量分析と適合性のある溶液中で回収される。標的化合物を含む溶液は直接分析に用いることができる。あるいは、例えば、蒸発と、別のより少量の溶液を用いての再構成により、標的化合物をさらに濃縮して検出と測定をしやすくするなどのさらなる処理が実行され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は生体液の乾燥サンプルの固相抽出用のデバイスに関する。デバイスは、生体液の複数の乾燥サンプルを有する乾燥サンプルカードを受ける第1の側を有する支持構造物を含む。支持構造物は、第1の側の反対の第2の側も有し、複数の孔を第1の側と第2の側との間に有する。支持構造物は、受けられた乾燥サンプルカードを、各乾燥サンプルが孔のうちの1つに隣接する位置に保持するように構成されている。デバイスは複数のウェルも有し、各々が支持構造物の第2の側の孔のうちの1つと連通している入口端部を有し、各々が出口端部を有する。デバイスは、少なくとも1つのウェル内に配置されたサンプル調製材料をさらに含む。
【0006】
別の態様では、本発明は、生体液の乾燥サンプルの固相抽出の方法に関する。方法は、生体液の複数の乾燥サンプルを有する乾燥サンプルカードを固相抽出デバイスに固定することを含む。固相抽出デバイスは、生体液の複数の乾燥サンプルを有する乾燥サンプルカードを受ける第1の側を有する支持構造物を含む。支持構造物は、第1の側の反対の第2の側と、第1の側と第2の側との間の複数の孔を含む。支持構造物は、受けられた乾燥サンプルカードを、各乾燥サンプルが孔のうちの1つに隣接する位置に保持するように構成されている。固相抽出デバイスは複数のウェルも含み、各々が支持構造物の抽出側の孔のうちの1つと連通している入口端部を有し、各々が出口端部を有する。固相抽出デバイスは、各ウェル内に配置されたサンプル調製材料をさらに含む。各乾燥サンプルと個々のウェルに対し抽出溶媒を乾燥サンプルを通してウェルの中に注ぎ込むことで、抽出サンプルを生成する。各抽出サンプルはウェルのサンプル調製材料を通過し、抽出サンプルから少なくとも1つの成分が除去される。
【0007】
さらに別の態様では、本発明は、生体液の乾燥サンプルの固相抽出の方法に関する。方法は、生体液の複数の乾燥サンプルを有する乾燥サンプルカードを固相抽出デバイスに固定することを含む。固相抽出デバイスは、生体液の複数の乾燥サンプルを有する乾燥サンプルカードを受ける第1の側を有する支持構造物を含む。支持構造物は、第1の側の反対の第2の側と、第1の側と第2の側との間の複数の孔を有する。支持構造物は、受けられた乾燥サンプルカードを、各乾燥サンプルが孔のうちの1つに隣接する位置に保持するように構成されている。固相抽出デバイスは複数のウェルも含み、各々が支持構造物の第2の側の孔のうちの1つと連通している入口端部を有し、各々が出口端部を有する。固相抽出デバイスは、各ウェル内に配置されたサンプル調製材料をさらに含む。乾燥サンプルカードの部分は乾燥サンプルカードの残りの部分から分離され、各乾燥サンプルが1つのウェル内に配置されるようになっている。抽出溶媒が各ウェルに供給されることで抽出サンプルを生成する。各抽出サンプルはウェルのサンプル調製材料を通過し、抽出サンプルから少なくとも1つの成分が除去される。
【0008】
本発明の上述のおよびさらなる利点は、添付の図面との関連で以下の説明を参照することにより、よりよく理解され得る。図面では、類似の参照番号は様々な図における類似の要素および特徴を表す。明瞭にするため、全ての図において全ての要素が標識されているわけではない。図面は尺度通りとは限らず、代わりに本発明の原理の説明に際し強調が施されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明によるSPEデバイスの実施形態とともに使用され得る血液乾燥サンプルの保存に適したDBSカードの一実施形態の上面図である。
図1B】本発明によるSPEデバイスの実施形態とともに使用され得る血液乾燥サンプルの保存に適したDBSカードの一実施形態の側面断面図である。
図2A】本発明によるSPEデバイスの一実施形態の斜視図である。
図2B】本発明によるSPEデバイスの一実施形態の上面図である。
図2C】本発明によるSPEデバイスの一実施形態の側面断面図である。
図3】本発明による抽出サンプルを生成するためのパンチ工程を利用するSPEデバイスおよびパンチヘッドの一実施形態の部分断面図である。
図4】本発明による抽出サンプルを生成するためのパンチ工程を利用するSPEデバイスおよびパンチヘッドの別の実施形態の部分断面図である。
図5】SPEデバイスの別の実施形態の断面図である。
図6】抽出サンプルを生成するためのフロースルー工程を利用するSPEデバイスの一実施形態の部分断面図である。
図7】本発明による複数の乾燥サンプルカードをロードされたSPEデバイスの一実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における「1つの実施形態」または「一実施形態」への参照は、その実施形態と関連して記載される部分の要素、構造または特徴が、本教示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書における特定の実施形態の参照は全て同じ実施形態を参照するとは限らない。
【0011】
本教示は、次に、添付の図面に示されるような例示的実施形態を参照しながらより詳細に記載される。本教示は様々な実施形態と例との関連で記載されるが、本教示はそのような実施形態に制限されないことが意図される。一方で、本教示は、当業者には理解されようが、様々な代替物、変形および等価物を包含する。本教示を利用する機会を有する当業者であれば、追加の具現、変形および実施形態、ならびに他の使用分野を認識しようし、これらは本明細書に記載されるように本開示の範囲内である。
【0012】
簡潔な概要では、本発明の実施形態は、生体液の乾燥サンプルの固相抽出用デバイスを含む。いくつかの実施形態では、デバイスは、乾燥サンプルカードを受ける第1の側を有するプレートまたは支持ブロックなどの支持構造物を含む。支持構造物は、第1の側の反対の第2の側と、第1の側と第2の側との間に延びるある数の孔も有する。受けられた乾燥サンプルカード上の各乾燥サンプルは、孔またはチャネルのうちの1つと位置合わせされる。デバイスは、ある数のウェルを含み、各々が入口端部と出口端部を有する。各ウェルは、クロマトグラフィー吸着剤などのサンプル調製材料を含む。各ウェルの入口端部は、支持構造物の第2の側で各孔と連通している。
【0013】
有利なことに、SPEデバイスは、サンプリング時の乾燥サンプルカードの使いやすさと、カードの廉価な輸送費を維持する。試験場所において、乾燥サンプルカードはデバイス内に固定され、サンプル抽出およびサンプル調製またはリン脂質を血液サンプルから除去するなどの精製が便利に行える。例えば、デバイスのいくつかの実施形態は、ピストン機構を利用して全スポットのパンチングを実行する。サンプル抽出および調製は、パンチングされたサンプルを用いて実行できる。デバイスの代替実施形態は、端面シール溶出による便利なインラインサンプル抽出とそれに続くサンプル調製を可能にする。各ウェルの入口端部で受けられた抽出サンプルは、ウェルから出る前にウェル内に配置されたクロマトグラフィー吸着剤を通過することで、抽出サンプルの1つまたは複数の成分が除去される。ウェルの出口端部の抽出サンプルはさらに処理されるか直接定量分析に使用され得る。このデバイスにより行われる自動的な抽出とサンプル調製により、従来の抽出および調製手法と比べて改善された再現性が得られる。
【0014】
乾燥スポットのサンプリングは、適切な担持媒体上に乾燥スポットとして少量の生体液を採取することに基づく。図1Aおよび図1Bは、本発明によるSPEデバイスの実施形態と共に使用できる、血液の乾燥サンプルの保存に適したDBSカード10の実施形態のそれぞれ上面図と側面断面図を示す。以下の例では、DBSカード10は、「Apparatus and Methods for Preparation and Analsis of Dried Samples of a Biological Fluid(生体液乾燥サンプルを調製および分析する装置および方法)」という名称の国際公開第2011/153122号パンフレットに記載の原理に従い作製されるが、当業者であれば、SPEデバイスは、あらゆるサイズとフォーマットの他の種類の乾燥サンプルカードと共に使用するようにできることを認識するであろう。
【0015】
例示のDBSカード10は、不透過領域16に囲まれた4つの採取領域14を有する担持媒体を露出する矩形の開口部を有するフレーム12を含むが、他の実施形態では、採取領域14は不透過材料で含浸された領域に囲まれていない。フレーム12は、好ましくは、採取領域14内のサンプルを汚染または妨害することなくDBSカード10を保持する手段を提供するボール紙などの剛性構造である。フレーム12は、バーコード18、マトリックスバーコードまたは他の視認可能な特定スキームを含んでもよく、それにより特定のDBSカードが同定される。フレーム12は、4つの角の付近にそれぞれ位置合わせ穴20を含む。担持媒体は、濾紙または生体液を吸収できる他の材料である。不透過領域16は、例えば、採取領域14を画定する所定のパターンで、インクまたは他の物質を担持媒体に印刷することで作製される。印刷された物質は濾紙の細孔を埋め、パターンの区域内で液が吸収されるのを回避する。したがって、採取領域14に加えられたサンプルは、周囲の不透過領域16へと拡散するのを回避される。各採取領域14内に含まれる液量は、正確に規定でき、領域14の寸法(例えば、厚みと直径)および担持媒体の物理特性(例えば、多孔度)に基づく。例として、インクまたは印刷可能な物質は、ろう、光レジスト、ゾルゲル前駆物質またはポリマー前駆体であり得る。いくつかの実施形態では、水性生体液に不透過性の疎水性インクを使用して担持媒体に不透過パターンを作る。
【0016】
図2A図2Bおよび図2Cは、本発明の原理によるSPEデバイス22の一実施形態の、それぞれ斜視図、上面図および側面断面図である。SPEデバイス22は、支持構造物をプレート24の形態で含み、直列構成に配置された4つのウェル26も含む。各ウェル26は、プレートの孔28と連通している入口端部と、ウェル26を通って適切な採取容器(図示せず)に入る液体を配向する出口端部を有する。例示された実施形態では、各ウェル26の壁は先細になり、入口端部の直径が出口端部の直径よりも大きくなっているが、これは要件ではない。
【0017】
各ウェル26は、クロマトグラフィー吸着剤などのサンプル調製材料25を含む。吸着剤25は、ウェル26内に配置された1対の多孔フィルタ27の間に含まれてもよい。吸着剤は、少なくとも1つの標的物質または干渉物質に吸着される特定の物質(例えば、充填された粒子ベッド)を含み得る。あるいは、吸着剤は、多孔フィルタ間に備えられていてもよく、または備えられていなくてもよい一体構造であり得る。
【0018】
例示のSPEデバイス22は、図1のDBSカード10を受け、採取領域14がプレートの孔28上で中心にくるように、プレート24に対向して所定位置に固定するようにされている。採取領域14の孔28に対する適切な横方向の位置合わせは、プレート24から上方に伸びてDBSカード10の位置合わせ穴20と係合または貫通する4本の位置合わせピン30を用いて得られる。各孔28は、好ましくは、プレート24に対するDBSカード10の位置決め公差があまり厳密ではないように、採取領域14の直径よりも十分に大きい直径を有する。
【0019】
別の実施形態では、SPEデバイスは、プレート24に取り付けられるカードホルダをさらに含み、取付けは、例えば、カードホルダの1つまたは複数の開口部と、プレート24上の位置合わせピン30などの1つまたは複数の要素の間での締め付けまたは締り嵌めによる。この実施形態では、DBSカードをプレート24に直接固定する代わりに、DBSカードはカードホルダに固定され、カードホルダはプレート24に取り付けられる。例として、カードホルダは1つまたは複数の留め具を用いてプレート24に取り付けられ得る。カードホルダは、DBSカードの採取領域およびプレート24に取り付けられた際はプレートの孔28と適切に位置合わせするように構成された孔を含む。
【0020】
図1の乾燥サンプルカード10に関して上述したが、他の実施形態では、SPEデバイスは、他の種類およびフォーマットの乾燥サンプルカードを受け、保持するように構成されている。例えば、SPEデバイスは、担持媒体がサンプルの採取領域を画定する不透過領域を含まない従来のDBSカードと共に使用され得る。SPEデバイスの様々な実施形態は、異なる形、サンプル位置、サンプル数および位置合わせ手段を有する乾燥サンプルカードと共に使用できるようにされている。さらに、乾燥サンプルカードは、尿、唾液、血漿、血清および脳脊髄液などの他の生体液の乾燥サンプルを含み得る。
【0021】
図3は、抽出される乾燥液体サンプルを含むパンチディスクを生成するパンチ工程を利用するSPEデバイスの一実施形態の部分断面図である。図は、1つの垂直方向チャネル29と、DBSカード32の対応するDBS44に限定したデバイスの領域を示すが、デバイスは、他のチャネル29の周りに画定された1つまたは複数の他の領域を含むことが認識され得る。デバイスは、切刃38およびディスク解放ピストン42と組み合わせて使用される支持ブロック34を含む。切刃38は筒形状であり、DBSカード32に隣接する鋭利端40を有する。デバイスは、例えば図2Aおよび図2Cに示すように、チャネル29の下にウェル26も含む。代替実施形態では、デバイスは支持ブロック34またはウェルを有する類似の構造物の上に配置されるカードホルダを含み、チャネル29がウェルと位置合わせするようになっている。
【0022】
乾燥液体サンプルを含むパンチディスクを生成するために、切刃38は下方向に延ばされ、DBSカード32の担持媒体を貫通する。鋭くされた端が担持媒体を貫いてDBS44のディスク形の領域をDBSカード32から分離するように、十分な力がかけられる。代替実施形態では、切刃38の直径が異なり得る。いくつかの実施形態では、直径は十分に大きいので、分離されたディスクはDBS44の公称径よりも大きい直径を有する。チャネル29の直径は、分離されたディスクの直径よりも小さいので、ディスクは支持ブロック34に支持され、DBSカード32の所定位置に留まる。続いて、ディスク解放ピストン42がDBSカード32を通って下方に延び、したがってディスクはDBSカード32から押し出されチャネル29の中へまたはチャネル29を通ってウェル内に入る。抽出溶媒がチャネル29内に導入され、解放されたディスクを保持するウェル内へと通る。
【0023】
図4は、1つのチャネル29とDBSカード46の採取領域50に関する領域を示す、SPEデバイスの代替実施形態の断面図である。デバイスは、ディスク解放ピストン42とピストンガイド46と組み合わせて使用される支持ブロック34を含む。再び、SPEデバイスは、図3について記載したように、パンチ工程を使用してパンチディスクを作製するが、DBSカード46の構造は異なる。より具体的には、採取領域50は、周りの担持媒体54の円形溝内に保持される、前もって切断されたディスク形の領域である。有利には、前もって切断された採取領域50は、全スポットサンプリングにおいて誤差を減少または排除することを可能にする、明確な体積を有する。
【0024】
抽出サンプルは、ディスク解放ピストン42をピストンガイド46の基部から延ばし、したがって前もって切断された採取領域50が周囲の不透過領域54から押し出され垂直方向のチャネル29の中へ、またはチャネル29を通ってウェルに入ることで、生成される。次いで、クロマトグラフィー溶媒がチャネル29内に導入され、パンチングされた採取領域を含むウェルへと通る。
【0025】
例示のSPEデバイスは、他の種類のDBSカードと共に使用され得る。一例では、採取領域は、担持媒体と一体であってもよい。例えば、DBSカードは、各採取領域を囲む円形パターンを予めつけられている。パンチ工程の間、各ディスク解放ピストン42は、ピストンガイド46から下方に移動してDBSカードを貫通し、DBSを含む予めつけられた領域を解放する。
【0026】
図5は、乾燥サンプルカード用のSPEデバイス58の別の実施形態の断面図である。デバイス58は、SPEカートリッジブロック62と上部プレート66(すなわちキャップ)を含む。SPEカートリッジブロック62は、DBSカードを受け、ブロック62を貫いて延びる垂直方向チャネル74を採取領域と位置合わせさせる働きをするくぼみ領域72を含む。好ましくは、くぼみ領域72は、DBSカードの厚みと同等かまたはそれより大きい深さdと、DBSカードの長さと幅よりもわずかに大きい長さ(図示せず)と幅wを有する。例示のデバイス58は、ウェル78を含む。様々な実施形態において、各ウェル78は、1対の多孔フィルタ27間に配置されたクロマトグラフィー吸着剤などのサンプル調製材料を含む。
【0027】
ユーザーは、DBSカードをくぼみ領域72に配置し、そっと下方に押すことでカードをデバイス58に固定する。所望により、DBSカードは、例えば、薄い道具を乾燥サンプルカード端部とくぼみ領域72の底面の間に挿入して乾燥サンプルカードをブロック62から上方向にこじることにより、カートリッジブロック62から取り外され得る。SPEデバイスの一代替実施形態では、DBSカードが挿入されるスロットがSPEカートリッジブロックに設けられる。スロットの2つの側壁と端壁がDBSカードをSPEカートリッジブロックに対し所望の位置に固定する。
【0028】
例示の実施形態では、上部プレート66は、1つまたは複数の孔または開口部68をその上部表面と下部表面の間に含む。DBSカードがくぼみ領域72に挿入されると、上部プレート66は、1つまたは複数の開口部68がDBSカードの採取領域を露出するようにSPEカートリッジブロック62上に固定される。具体的な例として、上部プレート66は、1つまたは複数の押さえまたは留め具を用いて、または上部プレート66またはブロック62の1つまたは複数の要素との締り嵌めを用いてブロック62にスナップ留めすることにより、SPEカートリッジブロック62に固定され得る。代替実施形態では、上部プレート66は、上部プレート66がDBSカードを覆う閉じた位置へと旋回することと、所望により、くぼみ領域72からDBSカードが回収できる開いた位置まで旋回することを可能にする、1つまたは複数のヒンジを用いてSPEカートリッジブロック62に取り付けられる。
【0029】
抽出工程を開始するには、DBSカードがSPEカートリッジブロック62において所定位置に固定され、次いで上部プレート66がブロック62上部の所定位置に固定される。ディスク解放ピストンがウェル78およびDBSカードの採取領域と位置合わせされるように、別のピストンブロック(図示せず)が上部プレート66上部または付近に配置され得る。次いでピストンは図3または図4のデバイスについて記載したのと同様の態様で操作される。ピストンは上部プレート66の1つまたは複数の開口部68を貫通し、DBSカードのパンチ領域をウェル78内へと解放する。
【0030】
抽出工程は、上部プレート66の1つまたは複数の開口部と、パンチ工程によりDBSカードに作られた開口部に抽出溶媒を通すことにより続く。溶媒は各ウェル78へと通り、ここでパンチ領域から抽出サンプルを生成する、すなわち液体サンプルを再構成するのに使用される。代替工程では、上部プレート66とパンチされたDBSカードは、パンチディスクを含むウェル78に溶媒を入れる前にSPEカートリッジブロック62から取り外され得る。再構成されたサンプルはそれぞれウェル78のクロマトグラフィー吸着剤25を通過し、ここで抽出サンプルの1つまたは複数の成分の除去が生じる。ウェルの出口端部に到達すると、これらの成分はさらに処理されるか、または直接定量分析に用いられる。
【0031】
抽出サンプルを生成するための様々なフロースルー抽出手法が知られている。例えば、国際公開第2011/153122号パンフレット(上記参照)は、乾燥サンプルカードから抽出サンプルを作製するのに使用され得るフロースルー抽出モジュールと工程を記載している。図6は、固相抽出処理においてそのようなフロースルー手法を活用できるSPEデバイス92の一実施形態の部分断面図である。図は、1つのチャネル29に対応するSPEデバイス92の領域と、DBSカード32上の対応するDBS44を示す。デバイス92は、中に複数の垂直方向のチャネル29を有する支持ブロック34、溶媒貯蔵ブロック86および所望により湿潤バリア膜88を含む。例として、膜88は、環境条件下では液体を通さないが十分な圧力下では液体に膜88を貫通させるテフロン(登録商標)膜であり得る。各々が溶媒を保持するようにされた複数のウェル90が溶媒貯蔵ブロック86内に形成され、サンプル抽出工程が開始する前にDBSカードの採取領域の各DBS44または採取領域と位置合わせされる。
【0032】
抽出サンプルを生成するために、抽出溶媒が各溶媒ウェル90内に分注される。続いて、正圧マニホルドがデバイスに連結されて、膜88およびDBS44を通って流れる抽出溶媒に十分な圧勾配を生成する。あるいは、デバイス92は、抽出溶媒が膜88およびDBS44を通って流れるのに十分な圧力を生成する真空デバイスまたは遠心分離モジュールに連結され得る。続いて、各抽出サンプルはクロマトグラフィー溶媒などのサンプル調製材料を通過し、少なくとも1つの成分が抽出サンプルから除去される。
【0033】
各アナライトは特定の抽出溶媒により異なる可溶性を有するので、典型的なDBS工程は、方法開発ステップの間、複数の抽出条件を伴う実験を含む。さらに、分析感度を高めるためには最低限の量の抽出溶媒を用いるのが望ましい。アナライトの抽出に大量の溶媒が使用される場合、抽出サンプルの量を減ずる追加の工程、例えば、蒸発手法を用いてのアナライト濃度の増加が、LC−MS分析の前にしばしば実行される。これらの煩雑さに対処するため、上述の実施形態で使用された抽出溶媒は異なる形態であり得る。例えば、抽出溶媒は、液体に類似の高溶媒能をもつ超臨界流体であり得る。あるいは、抽出溶媒は、高CO濃度を有する亜臨界流体または溶媒であり得る。高速相間移動能は、LC−MS分析前にアナライトを吸着剤上または液体内に捕集し、効率的なサンプル濃縮に有用である。
【0034】
上述の実施形態では、各SPEデバイスは1枚の乾燥サンプルカードを受ける。代替実施形態では、SPEデバイスは、複数の乾燥サンプルカードを受けるように構成されている。例として、SPEデバイス96は、1×4の配置の乾燥サンプルを各々が有する24枚の乾燥サンプルカード10を許容するように構成され得るので、乾燥サンプルカード10は、図7に示されるように、12段の2列として配置されて8×12の乾燥サンプルのアレイを作製する。SPEデバイス用の様々な他の複数のカードの構成が可能であることを認識すべきである。
【0035】
本発明を特定の実施形態を参照して示し記載してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の精神と範囲から逸脱することなく、それら実施形態に様々な形態および詳細の変化が加えられ得ることを理解すべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7