特許第6154401号(P6154401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154401
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】高分解能アブソリュート・エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20170619BHJP
   G01D 5/249 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   G01D5/244 H
   G01D5/249 C
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-549628(P2014-549628)
(86)(22)【出願日】2012年4月30日
(65)【公表番号】特表2015-503748(P2015-503748A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】IL2012000172
(87)【国際公開番号】WO2013098803
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】61/580,668
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514151487
【氏名又は名称】サーヴォセンス (エスエムシー) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラレット イヴ
【審査官】 居島 一仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−167675(JP,A)
【文献】 特表昭59−501227(JP,A)
【文献】 特開昭62−110113(JP,A)
【文献】 特開2011−226965(JP,A)
【文献】 米国特許第07091883(US,B1)
【文献】 米国特許第05029304(US,A)
【文献】 米国特許第04998105(US,A)
【文献】 米国特許第05852413(US,A)
【文献】 米国特許第06111402(US,A)
【文献】 米国特許第05519393(US,A)
【文献】 米国特許第05004910(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D5/00−5/252
G01D5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転エレメントの角度位置を測定する高分解能アブソリュート・エンコーダ・デバイスであって、
a)前記回転エレメントに固定された回転ディスクであって、所定のパターンに従って第1の特性のセクションおよび第2の特性のセクションを有する円形トラックを含む、回転ディスクと、
b)前記円形トラックに近接して配置される複数の固定センサであって、各センサは、前記第1の特性の前記円形トラックのセクションに近接しているときに最大値を有し、また、前記第2の特性の前記円形トラックのセクションに近接しているときに最小値を有し、また、前記第1または前記第2の特性のセクションに前記センサが近接している位置から他の特性のセクションに前記センサが近接している位置まで前記回転ディスクが回転するとき、前記最大値と前記最小値の間で連続的かつ単調に変化する中間値をとる電気信号を出力する、固定センサと、
c)予め記録されるエンコーダ特性を格納するメモリと、
d)前記センサの前記電気信号の値を処理する処理手段と、
を備え、
第1の処理ステップにおいて、それぞれのセンサの前記電気信号と前記メモリに格納された予め規定された閾値との比較の結果として各センサについて1つのビットが設定され、全てのセンサの全てのビットが、1ワードになるよう組み合わされ、前記ワードの値がコードを規定し、前記コードは、各回転方向が、変化する前記ワードの1つのビットを規定することにより、2つのビットおよびそれぞれの電気信号を、各回転方向につき1つずつ、各コード値に関連付けたグレイ・コードであり、
第2の処理ステップにおいて、前記コードに関連付けられた前記2つの電気信号が比較され、前記2つの選択された電気信号のうちの、前記閾値に近い方の値を有する1つの電気信号が選択され、
第3の処理ステップにおいて、前記回転ディスクの高分解能角度位置が、現在のコードおよび前記選択された電気信号から推測される、
前記デバイス。
【請求項2】
前記第1および第2の特性セクタのセクションは、2つの異なる方向に磁界を発生させる永久磁石を含み、前記センサは磁界方向に敏感である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
回転ディスクの前記円形トラックは、内側および外側の半径方向に磁界を生成する永久磁石の2つの同心列を含み、前記センサは、前記2つの同心列の間の中央線に配置される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記センサは、静止部品の外周上に均等に分配され、前記回転ディスクは、前記複数のセンサが、前記複数のセンサに近接する前記トラックのセクションの前記特性を検知するように配置され、前記センサは、アナログ出力を提供し、前記メモリは、前記エンコーダ・デバイスの特性を格納し、前記処理手段は、各センサのアナログ出力信号を処理する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記センサからの前記アナログ出力の信号をデジタル化し、次に、前記デジタル化されたアナログ出力信号を前記処理手段に転送するアナログ−デジタル変換器ユニット、をさらに備える、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記センサからの前記アナログ出力信号をデジタル化し、次に、前記デジタル化されたアナログ出力信号を前記処理手段に転送するアナログ−デジタル変換器ユニット、をさらに備える、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記センサは、前記環状トラック上に均等に分配される、請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記センサの異なるセンサの出力信号は、それぞれ、前記環状トラック上の前記センサの相対的位置を示す値だけ偏移した類似の形状を有する、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記センサの異なるセンサの出力信号は、それぞれ、前記環状トラック上の前記センサの相対的位置を示す値だけ偏移した類似の形状を有する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項10】
前記センサの異なるセンサの出力信号は、それぞれ、前記環状トラック上の前記センサの相対的位置を示す値だけ偏移した類似の形状を有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項11】
前記回転ディスクは、永久磁石の環状リング間で半径方向磁界を発生する、永久磁石の環状リングを備え、前記センサは、永久磁石の前記環状リング間の円形ライン上に配置されるホール効果センサを備える、請求項4に記載のデバイス。
【請求項12】
前記回転ディスクは、永久磁石の環状リング間で半径方向磁界を発生する、永久磁石の環状リングを備え、前記センサは、永久磁石の前記環状リング間の円形ライン上に配置されるホール効果センサを備える、請求項5に記載のデバイス。
【請求項13】
前記回転ディスクは、永久磁石の環状リング間で半径方向磁界を発生する、永久磁石の環状リングを備え、前記センサは、永久磁石の前記環状リング間の円形ライン上に配置されるホール効果センサを備える、請求項6に記載のデバイス。
【請求項14】
前記回転ディスクは、永久磁石の環状リング間で半径方向磁界を発生する、永久磁石の環状リングを備え、前記センサは、永久磁石の前記環状リング間の円形ライン上に配置されるホール効果センサを備える、請求項9に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年12月28日に出願された米国仮出願第61/580,668号の利益を主張する非仮実用特許出願であり、その開示を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、可動体の変位量および位置を決定するためのデバイスに関し、特に、エンコーダ・デバイス(エンコーダ)に関する。
【背景技術】
【0003】
エンコーダは、回転エレメントの角度位置または摺動エレメントの相対的変位を測定するために使用される。エンコーダは、通常、モーション・コントローラが可動エレメントに精密な所望の経路を追従させるために使用されるサーボ・システムと呼ばれることが多い制御システムにおいて使用される。その目的のために、エンコーダ・デバイスは、モーション・コントローラに対するエンコーダ・デバイスの接続を可能にする電子インタフェースを含む。
【0004】
エンコーダは、2つのタイプ、すなわち、ロータリとリニアでありうる。ロータリ・エンコーダは、モータまたは任意の回転デバイスのシャフトのような、回転エレメントの角度位置を測定するように設計される。リニア・エンコーダは、2つの摺動エレメント、たとえば、静止ベースに対するリニア軸受上に搭載される摺動キャリッジの相対的移動を測定するように設計される。
【0005】
一般的な用途では、ロータリ・エンコーダは、後端において電気モータ・シャフト上に搭載され、シャフト回転角度に関する位置情報を電気モータ・コントローラに提供する。モータ・コントローラは、その後、適切な電流をモータに出力して、所望の位置に向かってモータを回転させることになる。
【0006】
別の一般的な用途では、リニア・エンコーダは、リニア・モータの可動エレメント上に搭載され、リニア・モータ・モーション・コントローラに接続される。
【0007】
本特許出願全体を通して、用語「エンコーダ・デバイス(encoder device)」は、ロータリ・エンコーダとリニア・エンコーダの両方を指すものとする。
【0008】
自動機械では、可動エレメントが、非常に高い精度でかつ高速度で経路に追従することが必要とされることが多い。これを達成するために、エンコーダ・デバイスは、高い精度を有するべきであり、また、高いレートで位置情報を転送できるべきである。例として、市販のロータリ・エンコーダは、モーション・コントローラへの回転角度データの転送レートが、通常、8,000〜30,000データ転送/秒であるときに0.01°より良好な精度を提供しうる。
【0009】
エンコーダ・デバイスから要求される別の品質はその分解能である。分解能は、エンコーダ・デバイスが1回転でまたは1単位長で測定できる位置の数を示す。分解能は、通常、精度より高く、出力される位置の値が、ある誤差だけ実際の位置と異なる場合でも、精度について要求されるよりも多くの有意デジットを有する位置データをエンコーダ・デバイスが提供できることを意味しており、この誤差は、エンコーダに特有の精度によって規定される誤差より劣る。高分解能は、サーボ・コントローラとも呼ばれるモーション・コントローラが、厳格でかつスムーズな可動エレメントの制御を達成することを可能にする。
【0010】
エンコーダ・デバイスは、アブソリュートまたはインクリメンタルでありうる。アブソリュート・エンコーダ・デバイスは、固定基準位置に対する角度位置またはリニア位置を測定することができ、一方、インクリメンタル・エンコーダ・デバイスは、その動作の開始からの角度変位またはリニア変位を測定することが可能である。そのため、インクリメンタル・エンコーダ・デバイスが自動機械において使用されるとき、機械の動作のそれぞれの開始時に、基準位置についての探索を実行することが一般的である。この探索は、基準位置に設置されたリミット・スイッチまたは他のデバイスが作動されるまで、所定の方向にゆっくりした速度で行われる。この探索プロシージャは、システムに複雑さを追加し、機械の最初の動作を遅延させる。この欠点があるにもかかわらず、インクリメンタル・エンコーダは、その単純さおよびその低コストのために一般に使用される。多くの場合、機械メーカは、アブソリュート・エンコーダを使用することを好むが、現在のところ入手可能なアブソリュート・エンコーダの高いコストのために、インクリメンタル・エンコーダを利用する。
【0011】
アブソリュート・エンコーダ・デバイスの絶対分解能は、センサの数によって制限される。n個のセンサを使用するエンコーダは、2の最大絶対分解能を有しうる。たとえば、8センサ・ロータリ・エンコーダは、256の絶対分解能を提供できない。より高い分解能を得るため、アブソリュート・エンコーダ・デバイスは、通常、高分解能インクリメンタル・エンコーダ・デバイスと組み合わされて、高い絶対分解能エンコーダ・デバイスを提供する。これは、デバイスのより高い複雑さ、より大きなサイズ、およびより高いコストをもたらす。
【0012】
したがって、製作が簡単で、かつ、より低いコストで高い精度および分解能を依然として提供するアブソリュート・エンコーダ・デバイスを提供することが望ましい。
【0013】
Villaret(特許文献1)において、絶対位置情報を提供できる単純な構造のアブソリュート・エンコーダ・デバイスが記載されている。デバイスは、静止部品の外周上に均等に分配された複数のセンサを利用する。環状トラック上の交互の特性のセクションを有する回転ディスクは、センサが、近接するトラックのセクションの特性を検知するように配置される。ディスク回転中、回転ディスクの異なるセクションは各センサに近接するようになる。各センサの電気信号はデジタル化されて、ビット値1または0を提供する。全てのセンサのビット値は、その後、1デジタル・ワードになるよう組み合わされて、各回転ディスク角度範囲位置について一意のコード値を生成する。Villaretの利点は、デバイスの単純さである。センサが円形ライン上に均等に分配されるため、センサ間の距離が比較的大きく、通常サイズの市販のセンサが使用されうる。
【0014】
本明細書の特許出願では、絶対分解能またはNは、エンコーダ・ディスクを1回転だけ回転させる間に生成されるコード値の数である。「セクタ(Sector)」は、エンコーダ回転ディスク円形トラックの同じサイズの角度部分であるとして規定される。セクタの数は、N、つまり、エンコーダ絶対分解能に等しい。前記トラックの各セクタは、予め規定されたパターンに従って第1の特性または第2の特性を有する材料で作られる。
【0015】
エンコーダは、ディスク円形トラックに近接して配置され、トラックの最も近いセクタの特性に敏感であるセンサを含む。たとえば、多くの光学エンコーダは、透明セクタおよび不透明セクタを含む円形トラックを有する。光エミッタが回転ディスクの一方の面上に配置され、光センサが他の面上に配置され、それにより、透明セクタを通過する光が光センサによって検知される。光がセンサによって検知されるときはいつでも、このセンサは、透明セクタを示すデジタル値1によって表される信号を出力し、検知される光が存在しないときはいつでも、センサは、デジタル値0によって表される信号を出力することになる。
【0016】
従来技術を理解するために、比較的低い分解能を有する従来技術のエンコーダ実施形態を述べる。これらの説明のために、セクタの数Nおよびセンサの数Sの特定の値が使用される。NおよびSの他の値が使用されうることが理解されなければならない。
【0017】
Ohno(特許文献2)は、増分位置を測定するための第1のパターン化トラックおよび絶対位置を測定するための第2のパターン化トラックを使用するアブソリュート・エンコーダを述べる。
【0018】
本明細書の図1では、32の絶対位置分解能を提供する第1の従来技術の実施形態に従って構築されたエンコーダが示される。回転ディスク101は、回転シャフト102上に搭載され、破線107で示す円形トラックを含む。円形トラック107は、全て同じサイズである数N=32のセクタ、たとえば103からなる。各セクタは、規定されたパターンに従って第1の特性または第2の特性を有する。たとえば、第1の特性のセクタは透明であるとすることができ、第2の特性のセクタは不透明であるとすることができる。
【0019】
数S=5のセンサ、105a〜105eは、固定され、回転ディスク円形トラックに近接して円形経路上に配設され、それにより、センサ105a〜105eは、最も近いセクタの特性を検知し、最も近いセクタ特性に従って値0または1を示すS個のデジタル信号b0〜b4を出力する。これらのS個のデジタル信号は、その後、1つのデジタル・ワード106になるよう組み合わされ、その値は、回転ディスク101の角度位置に特有である。
【0020】
本特許出願によれば、回転ディスクの角度位置を示すために、用語「セクタ位置(sector position)」が使用される。回転ディスクが、回転ディスク円形トラック101のセクタ番号pが基準センサ、たとえばセンサ105aに最も近くなるような角度位置になるとき、回転ディスクはセクタ位置pにある。したがって、回転ディスクについて、N個の考えられるセクタ位置が存在する。
【0021】
セクタの特性のパターンは、所定のセクタ位置で取得されるワード106の各値が、回転ディスクの異なるセクタ位置で決して取得されないように設計される。Nagase(特許文献3)は、こうしたパターンを設計する方法を述べる。
【0022】
この従来技術の実施形態の第1の欠点は、絶対位置を測定するために使用されるセンサが、セクタの角度サイズに等しい角度距離に配置されなければならないという要件である。これは、センサがセクタより小さなサイズであるべきであることを要求する。たとえば、回転ディスク径が30mmであり、必要とされる絶対分解能が256である場合、各センサは0.36mmより小さくあるべきである。その場合、市販のセンサは使用されることができず、1チップ上に集積されたカスタム・センサが使用されなければならない。
【0023】
通常、これは、光学検知デバイスを使用して行われることができ、いくつかのセンサが1つの半導体デバイス上に実装される。この実装は、高いコストおよびモジュール性の欠如のために実用的でない。各エンコーダのサイズについて、異なる集積デバイスが設計されるべきである。磁気センサが考えられる場合、小さなサイズの集積デバイスの設計は、さらに複雑でかつ費用がかかる。
【0024】
この従来技術の実施形態の第2の欠点は、分解能が制限されることである。センサのサイズおよびセクタのサイズに関する実際の考慮事項によって、セクタの数、したがって同様に、エンコーダ分解能が制限される。高分解能が必要とされるときはいつでも、たとえばImai(特許文献4)において述べられるように、アブソリュート・エンコーダは、通常、インクリメンタル・エンコーダと組み合わされる。これは、エンコーダの複雑さおよびコストの増加をもたらす。
【0025】
Villaret(特許文献1)は、第1の上述した欠点をなくす改良を提供する。本明細書の図2を参照すると、Villaretによれば、回転シャフト203に固定された回転ディスク201は、202aおよび202bのような、数N=20のセクタに分割された円形トラックを含む。各セクタは、第1の特性または第2の特性を有する。図2では、黒セクタ202aは第1の特性を表し、白セクタ202bは第2の特性を表す。数S=5のセンサ205a〜205eは、円形トラックの上で近接して固定エレメント上に配置され、デジタル信号(ビット)B0〜B4を出力する。S=5ビットは、N=20のデジタル値の中から1つの値を選択する1デジタル・ワード206になるよう組み合わされる。S個のセンサは、外周上に均等に分配されるため、市販のデバイスの通常サイズであることができ、したがって、エンコーダ設計を単純にし、そのコストを低減する。
【0026】
しかし、Villaretは、上述した第1の欠点をなくすが、セクタのサイズにおける実用上の制限によって分解能の制限を依然として受ける。セクタが小さくなるときはいつでも、センサが最も近いセクタだけに敏感であるように回転ディスクの円形トラックから非常に短い距離にセンサを配置することが必要である。大き過ぎるN個のセクタが使用された場合、この距離が、エンコーダ部品の機械公差より小さくなり、したがって、エンコーダ部品を動作不能にする。
【0027】
したがって、より単純な構造で、サイズがより小さく、より低コストのアブソリュート・エンコーダ・デバイスを提供することが望ましい。市販のセンサが使用され、さらなるパターン化トラックが必要とされない、高い絶対分解能を有するアブソリュート・エンコーダを提供することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0140463号
【特許文献2】米国特許第5,068,529号
【特許文献3】米国特許第5,117,105号
【特許文献4】米国特許第5,252,825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
したがって、より単純な構造で、サイズがより小さく、より低コストであるが、高い絶対分解能を有し、市販のセンサが使用されることができ、さらなるパターン化トラックが必要とされない、アブソリュート・エンコーダ・デバイスを提供することが本発明の目的である。
【0030】
本発明の目的は、市販のセンサが使用されるように、円形ライン上に均等に分配されたセンサを有する高分解能エンコーダ・デバイスを提供することである。新しいエンコーダ・デバイスは、アナログ出力を提供するセンサを利用し、センサの数によって制限されない高い絶対分解能を取得するためにメモリおよび処理手段を含む。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、好ましくは外周上に均等に分配された複数のセンサを利用する。環状トラック上の2つの異なる特性のいくつかのセクションを有する回転ディスクは、これら複数のセンサがこれらセンサに近接するトラックのセクションの特性を検知するように配置される。ディスク回転中、回転ディスクの異なるセクションが各センサに近接するようになる。本発明によれば、センサの信号は、第1の特性の回転ディスク・セクションに近接しているときの最小値から第2の特性の回転ディスク・セクションに近接しているときの最大値まで変動するアナログ値であって、回転ディスク上の遷移位置に近接しているときには中間値である、アナログ値を連続してとる。
【0032】
エンコーダの初期動作の前に、前処理ステップにおいて、エンコーダの特性が、計算され、測定され、エンコーダ・メモリに格納される。これらの特性は、回転ディスク・トラック特性に対するセンサの応答を規定する、値および予め規定されたコードの表の形態である。
【0033】
第1の処理ステップにおいて、各センサ信号のアナログ値が正規化される。Anはセンサ番号nのアナログ信号値を示し、Hnはセンサ信号nの最大値を示し、Lnはセンサ信号nの最小値を示す。正規化信号NAnは、たとえば、以下の式によって計算される。
NAn=[An−(Hn+Ln)/2]/(Hn−Ln)
この正規化プロシージャが使用されて、特定のセンサ特性の変動の影響を最小にする。
【0034】
第2の処理ステップにおいて、各センサの正規化信号が閾値と比較される。閾値は、たとえば、正規化信号の最大値と最小値との間の中央値であり、各センサについてビット値「0」または「1」が、比較結果に従って設定される。その後、全てのビットが1デジタル・ワードになるよう組み合わされて、回転ディスクの位置に特有のコード番号を生成する。その後、取得される絶対分解能は、エンコーダ回転ディスクの1回転について生成されるコードの数によって規定される。たとえば、Villaretによって記載される配置構成では、98個のコードが、7個のセンサによって取得されうる。
【0035】
回転ディスク・セクションの特性のパターンは、生成される一連のコードが、隣接するセクタの2つのコードがそれについてわずかに1ビットだけ異なるグレイ・コードを形成するように設計される。これは、ディスク回転中に、1つのコードから次のコードへの移行が、わずかに1つのセンサを必要とする、すなわち、1つのセンサの正規化信号だけが、閾値より大きい/小さい値から閾値より小さい/大きい値に移行することを意味する。このよく知られているグレイ・コード技法は、ディスク回転中の測定位置の誤差および不連続性を回避する。
【0036】
所定の位置で取得される各コードに対して、その所定の位置から時計方向へのまた反時計方向へのディスク回転についての最初の変化ビットの2つの番号が関連付けられる。各ビット値がセンサのアナログ値と予め規定された閾値との比較によって決定されるため、関連付けられるビット番号はまた、2つの関連するセンサを規定する。
【0037】
用語「ゼロ交差(zero crossing)」位置は、アナログ信号が、閾値より小さいかまたは大きい値から閾値よりそれぞれ大きいかまたは小さい値へ移行する回転ディスク位置を指す。
【0038】
前処理ステップ中、同様に、回転ディスク位置の関数として、関連するセンサの正規化信号値の、ゼロ交差位置の周りの変動を表す2つの関数が各コードについて記録される。用語「センサ関数(sensor function)」は、この記録される関数を指す。
【0039】
エンコーダ・センサおよび回転ディスク・セクション特性は、正規化信号の最小値から最大値への移行が、1セクタより大きい回転ディスク位置の範囲にわたって延在するように設計される。したがって、1セクタ・サイズ以内で、センサ関数は、単調であり、したがって可逆的である。すなわち、絶対回転ディスク位置が、正規化信号のアナログ値から決定されうる。センサ関数は、理論またはシミュレーションによって計算されるかまたは基準エンコーダによって測定される、高分解能の値の表の形態で記録されうる。これらの関数はまた、正規化信号値を近似するパラメトリック数学関数によって表されることができ、またこの場合、これらの数学関数のパラメータは、値の表内に記録される。
【0040】
最後の処理ステップでは、見出されたコードに関連付けられる2つのセンサの2つの正規化信号値が比較され、閾値に最も近い値を有する正規化信号が選択される。したがって、選択された正規化値に適用される逆センサ関数は、回転ディスクの高い絶対分解能の位置の値を提供する。
【0041】
したがって、単純な配置構成の高分解能絶対エンコーダが得られる。エンコーダが、さらなるインクリメンタル・エンコーダと組み合わされる必要がなく、また、カスタム半導体チップを設計する必要なしで、既製の低コスト・コンポーネントによって実装されうるからである。
【0042】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、図面および特許請求の範囲と連携して以下の詳細な説明を読むと明らかになるであろう。
【0043】
本発明、その動作、およびそのユーザによって得られる特定の目的をよりよく理解するために、本発明の好ましい実施形態を示す添付図面および説明的事項を参照すべきである。
【0044】
本発明は、本発明がより完全に理解されるように、以下の例証的な図を参照して、ある好ましい実施形態に関連して述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】隣接するセクタを覆う1つの集積デバイス内にセンサが配設される第1の従来技術のアブソリュート・エンコーダを示す図である。
図2】センサが、円形経路上に均等に分配され、デジタル信号を提供するVillaret(特許文献1)による第2の従来技術のアブソリュート・エンコーダを示す図である。
図3】本発明による好ましい実施形態を示す図であり、センサは、円形経路上に均等に分配され、アナログ信号を出力し、高分解能絶対位置を計算する処理手段が設けられる。
図4】アナログ信号Anおよび対応する正規化信号Nanの変動を示すグラフである。
図5】5個のセンサが使用される本発明によるアブソリュート・エンコーダについての正規化信号の、回転ディスクの1回転についての変動を示すグラフである。
図6図5の拡大図である。
図7】高分解能回転ディスク絶対位置を計算するために使用される処理ステップのシーケンスを示し要約するブロック図である。
図8】本発明によるエンコーダの特性をエンコーダ・メモリに格納するために使用されうる表の例を示す図である。
図9】永久磁石と磁気センサを使用する、本発明によるエンコーダの好ましい実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が述べられる。しかし、本発明がこれらの特定の詳細なしで実施されることができることが当業者によって理解されるであろう。他の事例では、よく知られている方法、プロシージャ、およびコンポーネントは、本発明を曖昧にしないために詳細に述べられていない。
【0047】
図3では、Villaretに対する改良を提供する、本発明によるエンコーダ配置構成が示され、デジタル信号を提供する図2のS=5のセンサ205a〜205eは、S=5のアナログ・センサ305a〜305eによって置換され、S=5のアナログ・センサはアナログ信号A0〜A4を生成する。これらのアナログ信号は、その後、アナログ−デジタル変換器ユニット306によってデジタル化され、その後、プロセッサ・ユニット307に転送される。この新しい配置構成が、さらなるインクリメンタル・エンコーダの必要なしで高分解能を提供することが示される。
【0048】
図4では、回転ディスクの角度位置の関数としてセンサ番号nによって出力される、連続ライン曲線Anとして示される、図3のセンサ305a〜305eの1つのセンサによって生成される1つのアナログ信号の変動を示すグラフが示される。水平軸は、セクタ角度サイズのセクタ単位で測定される回転角度である。図面に示す特定の構成では、回転ディスク角度位置が、セクタ角度サイズ単位で測定される0〜20に延在するように20個のセクタが存在する。アナログ信号Anは、第1の特性のセクタに近接しているときに最大値Hnを、また、第2の特性のセクタに近接しているときに最小値Lnを有する。回転ディスクの回転中に、異なる特性のセクタは、センサに近づくかまたはセンサから離れ、それにより、センサによって生成されるアナログ出力は、異なる回転ディスク・セクタからのその距離に応じて、また、良好な近似では、2つの最も近いセクタからのその距離に応じて中間値をとる。
【0049】
センサが円形トラック上に均等に分配されるため、全てのセンサの全ての信号Snは、同様の形状を有し、円形トラック上のセンサの相対位置を示す値だけ水平軸上で偏移(shift)される。これは、図5に示され、矢印501〜505で示す5つのセンサ正規化信号NA1〜NA5が、同じグラフ上にプロットされる。
【0050】
図6は、図5の拡大図を示す。
【0051】
図7は、回転ディスクの高分解能絶対位置を計算するために使用される処理ステップのシーケンスを示す。
【0052】
ブロックに示す第1のステップ701では、センサによって発せられるN個の電気信号が測定され、それらのアナログ値が、図3のアナログ−デジタル変換器306によってCPU(図3の307)に転送される。
【0053】
ステップ(702)では、これらのアナログ信号が、それらの最大値Hnおよび最小値Lnを参照して正規化される。図4を参照すると、1つのアナログ信号のアナログ値は、セクタ単位で測定され、水平軸(411)に沿ってプロットされた回転ディスク位置の関数として垂直軸(410)に沿ってプロットされた。図4に示す特定の例の場合、正規化信号NAn(破線)は、以下の式によってアナログ信号An(実線)から計算された。
NAn=[An−(Hn+Ln)/2]/(Hn−Ln)
最大値Hnおよび最小値Lnは、前処理ステップにおいて、たとえばエンコーダ製造中にエンコーダ・メモリ(図3の308)に記録されている。正規化信号の目的は、センサの感度に無関係であると共に、設計の公称値からのセンサの距離のわずかな偏差をもたらすエンコーダ作製における公差に無関係に、信号値を取得することである。そして、この特定の正規化式による正規化信号NAnは、値[−1,+1]の範囲にある。信号NAnは、ここで、セクタの特性に対するセンサの感度の物理的法則だけに依存して、非常に良好な近似状態にある。
【0054】
種々の正規化公式が使用されることができ、ここで述べる特定の関数が一例に過ぎないことが理解されなければならない。
【0055】
再び図4を参照して、正規化信号NAn(破線)の変動を表す関数は、複数のゼロ交差値を有する。ここで述べる特定の実施形態では、ラベル405〜408で図4に示すセクタ位置1、3、10、および16において4つのゼロ交差が存在する。ここで、ゼロ交差回転ディスク位置から1セクタ角度サイズ内の回転ディスク位置の値の全ての範囲について回転ディスク位置に関する信号変動を表す関数を考える。さらに以下で、用語「関心範囲(range of interest))」(または「ROI」)は、回転ディスク位置の値の範囲を指すものとする。そのため、ROIは、セクタのサイズの少なくとも2倍である角度サイズを有する。
【0056】
例証のために、図4に示す正規化信号によって規定されるROIは、マーク付けされ、破線の長方形内に含まれ、401〜404でラベル付けされる。ここで、NAnのゼロ交差位置を囲むROI内の正規化信号Nanを表す関数を考えると、この関数が、単調である、すなわち連続的に増加するかまたは減少することが見てわかる。これは、図6を見るとより詳細にわかり、センサ番号4の信号NA4(504)が、セクタS10およびS11にわたって延在するROI601内で単調であることが見てわかる。この特性は、設計によって保証され、センサを、回転ディスクから十分な距離にセットする。
【0057】
各セクタ位置について、2つの最も近いゼロ交差を囲む2つのROIおよびゼロ交差がそれについて起こる2つの正規化信号を関連付けることが可能である。これは、図5を見るとわかり、N=5の正規化信号が同じグラフ上にプロットされる。信号の振幅は、水平軸(512)に沿ってプロットされるセクタ位置の関数として垂直軸(511)の方向にプロットされる。たとえば、セクタ位置が破線およびラベル510で示される場合、センサ番号5および3の信号から計算される正規化信号NA5(505)およびNA3(503)のゼロ交差を囲む2つのROI508および509が関連付けられる。
【0058】
図7の処理ステップ(703)では、所定の回転ディスク位置について、回転ディスクのセクタ位置に特有のコード番号(またはコード)が計算される。このコード番号を生成するために、N=5の正規化信号が、好ましくはこれらの信号の最大値と最小値との間の中央値である閾値と比較される。図5に示す正規化信号501〜505の場合、この閾値はゼロ値に設定されている。信号値NAnが閾値より大きいときはいつでも、値1がビットBnに設定され、そうでなければ、値0が設定される。その後、N個のビットBnが1ワードになるよう組み合わされ、回転ディスクのセクタ位置に特有のコードを生成する。これは、以下に表に示され、破線およびラベル510で示す回転ディスク位置についてのコードが計算される。
【0059】
【表1】
【0060】
回転ディスク・セクタ特性のパターンは、各コードが1つの一意のセクタに特有であるように設計される。そのパターンは、Villaret特許出願に従って見出されうる。コード値は、ビット値が変化するたびに、したがって、正規化信号のゼロ交差が起こるたびに変化し、それにより、各セクタは、正規化信号のゼロ交差が起こる2つの位置によって境界指定される(delimit)回転ディスク位置の範囲内に延在する。これらのセクタは、S1〜S20ラベルによって図5に示される。各回転ディスク位置について、ビット値B1〜Bnが評価され、対応するコードが計算される。
【0061】
先に述べたように、回転ディスク位置に対するセンサの応答の特性は、エンコーダ・メモリ(図3の308)に記録される。これらの特性は、エンコーダ設計中に実行される前処理ステップで計算または測定され、エンコーダ製造中に較正されることができる。
【0062】
これらの特性は、各コードに関連するROI内の2つのセンサ番号および2つのセンサ関数を含む。センサ関数は、対応するセクタに関連する2つのROI内の回転ディスク位置の関数としてのセンサの正規化アナログ信号の変動を表す。好ましくは、センサ関数は、逆数をとる形態で格納され、それにより、逆数をとったセンサ関数は、回転ディスク位置を正規化信号値の各値に関連付けることになる。
【0063】
逆数をとったセンサ関数は、値の表内に記録されることができ、正規化信号値と回転ディスク位置との間の対応が、知られている補間技法によって計算されうる。
【0064】
逆数をとったセンサ関数はまた、数学関数によって近似されることができ、この場合、この関数のパラメータが、実際の値の代わりに前処理ステップにおいて記録される。
【0065】
さらに、各センサの最大値Hnおよび最小値Lnが、前処理ステップ中にエンコーダ・メモリ(図3の308)に記録される。
【0066】
図8では、本発明による、エンコーダの特性をエンコーダ・メモリに格納するために使用されうる表の例が示される。
【0067】
表801は、各アナログ信号の最大値および最小値のレコードである。この表は、図7のステップ703における正規化信号の計算のために使用される。
【0068】
表802は、2つのセンサおよび2つのセンサ関数を各コードに関連付ける表である。CCWまたはCWゼロ交差センサは、回転ディスクが反時計方向または時計方向にそれぞれ回転した場合に、正規化信号のゼロ交差がそれについて起こる第1のセンサの番号を指す。CCWまたはCWセンサ関数は、対応するセンサ関数について記録される値の表に対するポインタを指す。見てわかるように、5個のセンサと20個のセクタを有する図3の実施形態の場合、逆数をとったセンサ関数を表す40個の表が、前記前処理ステップにおいて記録され、エンコーダ・メモリ308に格納される。
【0069】
図7の処理ステップ704では、処理ステップ703で見出されたコードに関連付けられる、2つのセンサ番号n1およびn2ならびに2つの関連する逆数をとったセンサ関数IF1およびIF2が、前もって記録された特性を使用して、たとえば図8の表802を使用して見出される。たとえば、見出されるコードが6である場合、関連する2つのセンサは、値n1=3、n2=5を有するCCWゼロ交差センサ番号およびCCWゼロ交差センサ番号の縦列において見出され、2つの逆数をとった関数IF1およびIF2は、CCWセンサ関数ポインタおよびCWセンサ関数ポインタの縦列において見出されるポインタPt1_6およびPt2_6によって指示される。
【0070】
図7の処理ステップ705では、センサn1およびn2の正規化信号の2つの値NAn1およびNAn2が閾値と比較される。閾値に最も近い値を有する信号NAn(n=n1またはn=n2)が、比較結果に応じて選択される。CCWまたはCWゼロ交差センサ番号がそれぞれ選択された場合、CCWまたはCWセンサ関数縦列のポインタによって指示される逆数をとった1つのセンサ関数IFn(IFn1またはIFn2)が選択される。
【0071】
最終処理ステップ706において、高分解能回転ディスク位置アルファは、その後、記録された逆数をとったセンサ関数IFnを正規化信号NAnに適用することによって見出される。すなわち、アルファ=IFn(NAn)である。
【0072】
見出された高分解能回転ディスク位置は、その後、外部コントローラによって使用されるために送信されうる。
【0073】
処理ステップ701〜706は、矢印ライン707で示すように無限ループにおいて高レートで実行される。
【0074】
本発明の高分解能アブソリュート・エンコーダは、センサのタイプおよび回転ディスク材料特性に依存しない。高分解能アブソリュート・エンコーダは、エンコーダ特性が透明または不透明である光学エンコーダとして実装されうる、または、高分解能アブソリュート・エンコーダは、異なる配向の永久磁石が回転ディスクに固定され、ホール効果センサなどの磁界センサが使用される磁気エンコーダとして実装されうる。
【0075】
磁気特性および磁気センサ(ホール効果センサ)を使用する好ましい実施形態の断面が図9に示される。この実施形態は、回転ディスクの搭載精度に対して低感度を有する特性を有する。その断面は、回転軸を含む平面内にある。
【0076】
エンコーダは、シャフト904を回転させるモータ(図示せず)のフランジ908上に搭載される。
【0077】
回転ディスクは、構造ディスク907および構造ディスク907に固定された永久磁石の2つの環状リング901aおよび901bを含む。永久磁石の2つの磁石リング901a、901bは、磁石リング901aと901bとの間に半径方向磁界を生成する。これらの磁石リングの種々の角度セクションは、予め規定されたパターンに従って、内側または外側の異なる磁界方向を生成する。回転ディスクは、その構造ディスク907によってシャフト904に固定される。
【0078】
909および910のようなN個のホール効果センサは、静止し、2つの磁石リングの間の円形ライン上に配置される。この円形ラインは、2つの磁石リングの間の厳密な中央線であるように設計される。同様に、この円形ラインの軸方向位置は、磁石リングの中間高さに厳密にセットされる。N個のホール効果センサが、この円形ライン上で等角度距離に分配され、プリント回路基板905に固定される。プリント回路基板905は、円柱部品906によってモータ・フランジ908に固定される。CPUチップ902およびメモリ・チップ903が、プリント回路基板905上にはんだ付けされているのが示される。エンコーダの電子機能に必要な他の電子コンポーネントもまた、プリント回路基板にはんだ付けされる。
【0079】
この配置構成では、ホール効果センサは、磁界の振幅に比例し、磁界の内側または外側の配向に応じた符号を有する電気信号を出力する。回転ディスクが回転すると、内側/外側に配向したリング・セクションから外側/内側に配向したセクションへ回転ディスクが移動するにつれて、磁界が、徐々に方向を変化させる。変化レートは、設計、磁石リングの幾何学的寸法を設定することによって較正されうる。先に説明したように、このレートは、ホール・センサ信号が、1セクタより大きい角度範囲にわたって最小値/最大値から最大値/最小値まで徐々に変化するように設定される。
【0080】
ここで述べる好ましい実施形態は、エンコーダの搭載精度に敏感でないという利点を有する。これは、ホール・センサの中央位置のせいであり、ホール・センサの中央位置について、空間座標の関数として磁界強度を表す関数は、局所的極値(最大または最小)、したがって、ゼロ勾配を有する。
【0081】
本発明が、先の例証的な実施形態の詳細に限定されないこと、および、本発明が、本発明の精神および本質的な属性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されることができることが当業者に明らかである。したがって、本実施形態は、全ての点で、例証的であり制限的でないとして考えられ、本発明の範囲は、先の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の均等性の意味および範囲内に入る全ての変更が、したがって、特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9