(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154402
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】高速通信用ジャック
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6474 20110101AFI20170619BHJP
H01R 13/6477 20110101ALI20170619BHJP
H01R 13/66 20060101ALI20170619BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
H01R13/6474
H01R13/6477
H01R13/66
H01R43/00 B
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-556564(P2014-556564)
(86)(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公表番号】特表2015-512120(P2015-512120A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】US2013022919
(87)【国際公開番号】WO2013122727
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】61/598,288
(32)【優先日】2012年2月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514200844
【氏名又は名称】センティネル コネクター システムズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SENTINEL CONNECTOR SYSTEMS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140969
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ブレット,ディー
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−208872(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0104933(US,A1)
【文献】
米国特許第7402085(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/646 − 13/6599
H01R 13/66
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグを受け入れ、該プラグの対応する信号線にそれぞれ接続される複数のピンを有するポートを有するハウジングと、
前記ハウジングを囲むシールドケースと、
前記シールドケースと前記ハウジングとの間のフレキシブル回路板であって、
基板と、
各ビアが前記ハウジング上のピンを収容するように構成され、前記基板を貫通する複数のビアと、
各トレースが前記複数のビアのうちの対応する1つから延びる、前記基板の第1の面上の複数のトレースと、
前記基板の前記第1の面とは反対側の該基板の第2の面上のシールド面と、
を有する、フレキシブル回路板と、
を備える、高速通信用ジャック。
【請求項2】
励起されるとき、前記複数のトレースの各トレースが、前記複数のトレースの隣接する第2のトレースに差動的に整合する、請求項1に記載のジャック。
【請求項3】
整合対のトレースにおける第1のトレースのインピーダンス値が、前記整合対のトレースにおける前記第2のトレースのインピーダンス値に略等しいように調整される、請求項2に記載のジャック。
【請求項4】
トレース層と、誘電層に埋め込まれている戻り信号層とによって、コンデンサーが各ビアに形成される、請求項1に記載のジャック。
【請求項5】
前記戻り信号層と前記トレース層との間の距離が、前記コンデンサーがおよそ1pf〜およそ5pfの値を有するように調整される、請求項4に記載のジャック。
【請求項6】
整合組のトレースにおける各トレースの幅、高さ、又は長さが、前記第1のトレースのインピーダンスが前記第2のトレースのインピーダンスと整合するように調整される、請求項3に記載のジャック。
【請求項7】
第2のコンデンサーを形成するために、第2の戻り信号層が前記第1の戻り信号層の下方の前記誘電層に形成される、請求項4に記載のジャック。
【請求項8】
前記第2のコンデンサーの値を1pf〜5pfに調整するために、前記第1の戻り信号層と前記第2の戻り信号層との間の距離が調整される、請求項7に記載のジャック。
【請求項9】
前記第1のトレース及び前記第2のトレースのインピーダンスは、第1の信号が前記第1のトレース上に送信され、第2の信号が前記第2のトレース上に送信されるとき、前記トレースが整合するように調整される、請求項3に記載のジャック。
【請求項10】
前記コンデンサーと、前記トレースと、前記戻り信号層とが、整合組のトレースに対するコモンモードフィルターを形成する、請求項4に記載のジャック。
【請求項11】
前記コンデンサーの値は、前記コモンモードフィルターが前記整合するトレースからの信号の反射を防止するように調整される、請求項10に記載のジャック。
【請求項12】
前記基板の前記第1のシールドとは反対側に第2のシールドタブを備える、請求項11に記載のジャック。
【請求項13】
前記トレースは金でめっきされる、請求項1に記載のジャック。
【請求項14】
前記基板は3.0よりも大きい誘電率を有する誘電性材料を含む、請求項1に記載のジャック。
【請求項15】
プラグを受け入れ、該プラグの対応する信号線に接続される複数のピンを有するポートを有する標準RJ45ハウジングを備える高速通信用ジャックであって、該ジャックは、
前記ハウジングを囲むシールドケースと、
前記シールドケースと前記ハウジングとの間のフレキシブル回路板であって、
基板と、
各ビアが前記ハウジング上のピンを収容するように構成され、前記基板を貫通する複数のビアと、
各トレースが前記複数のビアのうちの対応する1つから延びる、前記基板の第1の面上の複数のトレースと、
前記基板の前記第1の面とは反対側の該基板の第2の面上のシールド面と、
を有する、フレキシブル回路板と、
を備える、高速通信用ジャック。
【請求項16】
前面と、後面と、上面と、下面と、右面と、左面とを有する標準RJ45ハウジングを用いて高速通信用ジャックを製造する方法であって、前記ハウジングは、前記プラグの対応する信号線にそれぞれ接続される複数のピンを有し、該方法は、
フレキシブル回路板を形成するステップであって、前記フレキシブル回路板は、基板と、各ビアが前記ハウジング上のピンを収容するように構成され、前記基板を貫通する複数のビアと、各トレースが前記複数のビアのうちの対応する1つから延びる、前記基板の第1の面上の複数のトレースと、前記基板の前記第1の面とは反対側の該基板の第2の面上のシールド面と、前記フレキシブル回路板の反対端上にあり、シールドトレースによって該電気回路板に接続される少なくとも2つのシールドタブとを有する、形成するステップと、
前記フレキシブル回路板における各ビアを前記ハウジングの対応するピンに挿入するステップと、
前記ビアを有する前記フレキシブル回路板の一部が、前記ハウジングの前記下面上にあるとともに、前記ハウジングの前記後部上にある前記シールド面を有する前記フレキシブル回路板の一部に対して直交するように、前記フレキシブル回路板を屈曲させるステップと、
1つのシールドタブが前記ハウジングの前記左側面に接触し、1つのシールドタブが前記右側面に接触するように、各シールドタブを屈曲させるステップと、
シールドケースが前記シールドタブのそれぞれに接触するように、前記フレキシブル回路板及び前記ハウジング上に前記シールドケースを形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項17】
プラグを受け入れ、該プラグの対応する信号線にそれぞれ接続される複数のピンを有するポートを有するハウジングと、
前記ハウジングを囲むシールドケースと、
前記シールドケースと前記ハウジングとの間の多層フレキシブル回路板であって、
複数のトレースを有する第1の層と、
前記第1の層の前記トレースとは反対側にある誘電性材料の第2の層と、
前記第2の層の前記第1の層とは反対側にあるとともに導電性材料から作成される戻り面を有する第3の層と、
前記第3の層の前記第2の層とは反対側にあるとともに誘電性材料から作成される第4の層と、
前記第4の層の前記第3の層とは反対側にあるとともに導電性材料から作成される第5の層と、
各ビアが前記ハウジング上のピンを収容するように構成され、前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層、前記第4の層、及び前記第5の層を貫通する複数のビアと、
を有する、多層フレキシブル回路板と、
を備える、高速通信用ジャック。
【請求項18】
前記第1の層、前記第2の層、及び前記第3の層上の前記複数のトレースのうちの1つの組合せによって、コンデンサーが各ビアに形成される、請求項17に記載のジャック。
【請求項19】
前記第2の層の深さは、各ビアにおける前記コンデンサーがおよそ1pf〜およそ5pfの値を有するように調整される、請求項18に記載のジャック。
【請求項20】
前記第4の層と第5の層との間に形成され、導電性材料で作成される第6の層と、
前記第6の層と前記第5の層との間に形成され、誘電性材料で作成される第7の層と、
を備える、請求項17に記載のジャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネットワークケーブルを装置に接続するように用いるネットワーク接続用ジャックに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本開示は、2012年2月13日に出願された「HIGH SPEED JACK(高速用ジャック)」という名称の米国仮特許出願第61/598288号に対する優先権を主張する。この米国仮特許出願は、引用することにより、その全体が本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0003】
電気通信機器及び電気通信機器の関連アプリケーションがより精巧かつ強力になるにつれ、電気通信機器の、情報を収集するとともに他の機器と情報を共有する能力もより重要になる。これらのインテリジェントなネットワーク間機器の普及により、これらの機器が接続されるネットワーク上のデータ処理能力を増大させ、この要求を満たすのに必要な向上したデータレートを提供することが必要となっている。結果として、既存の通信プロトコル標準が絶えず改良されるか、又は新しい標準がつくられている。これらの標準の略全ては、直接的又は間接的に、有線ネットワークを介する高品位信号の通信を必要とするか、又はそのような通信から著しく利益を受ける。これらの高品位信号の伝送は、より高い帯域幅及び相応してより高い周波数要件を有する場合があり、一貫した様式でサポートされる必要がある。しかし、種々の標準のより新しいバージョンが理論上はより高いデータレート又はデータ速度を提供するとしても、これらの高品位信号は、依然として或る特定の物理構成要素の現行の設計によって速度制限を受ける。残念ながら、このような物理構成要素の設計は、マルチギガヘルツ及びより高い周波数における一貫した信号品質を達成するのに必要であるものが理解されていないことにより、困難に直面している。
【0004】
例えば、通信機器と、通信されるデータを表す電気信号を送受信するのに用いられるケーブルを接続又は連結する装置とにおいて、通信用ジャックが用いられる。レジスタードジャック(RJ)は、電気通信及びデータ装置を接続するのに用いる標準化物理インターフェースである。RJ標準化物理インターフェースは、ジャック構造部と配線パターンとの双方を有する。データ装置に一般的に用いられるRJ標準化物理インターフェースは、RJ45ジャックとも呼ばれるRJ45物理ネットワークインターフェースである。RJ45ジャックは、電気電子技術者協会(IEEE)802.3イーサネット(登録商標)プロトコルを実施するネットワーク等のローカルエリアネットワークに広く用いられる。RJ45ジャックは、ANSI/TIA−1096−Aにおいて米国国家規格協会(ANSI)/米国電気通信工業会(TIA)によって発布された標準を含む種々の標準に記載されている。
【0005】
RJ45ジャックを含むケーブル及びジャック等の全ての電気インターフェース構成要素は、電流の初期流に抵抗するだけでなく、いかなる電流の変化にも逆らう。この特性はリアクタンスと呼ばれる。リアクタンスの2つの関連タイプは、誘導性リアクタンス及び容量性リアクタンスである。誘導性リアクタンスは、例えば、抵抗を生じるケーブルを流れる電流の動きに基づき発生する場合があり、ケーブルにおいて或る電圧を誘導する磁場を引き起こす。一方、容量性リアクタンスは、2つの対向する表面からの電子が互いに近づいたときに現れる帯電によって発生する。
【0006】
送信される信号のいかなる劣化も低減又は回避するように、通信回路の種々の構成要素は、整合インピーダンスを有することが好ましい。そうでなければ、1つのインピーダンス値を有する負荷が、異なるインピーダンスレベルを有するケーブルによって運ばれている信号の一部を反射又は反響し、信号故障が引き起こされる。この理由で、ケーブル配線業者等のデータ通信機器の設計者及び製造業者は、ケーブルのインピーダンス値並びに抵抗レベル及び静電容量レベルが或る特定の性能パラメーターを満たすことを検証するために、自身のケーブルを設計及び試験する。また、RJ45ジャックは略全ての通信回路において重要な構成要素であるが、ジャックの製造業者はジャックの性能に対して同程度の注意を払ってきていない。このように、既存のRJ45ジャックに関する問題が試験において十分に立証され、高周波数信号線に対する既存のRJ45ジャックの悪影響が理解されているが、当業界は、物理層のこの重要な構成要素に関する問題への対処に意欲的ではないようである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
その結果として、改善された高速通信用ジャックが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの例において、高速通信用ジャックが、プラグを受け入れるポートを有するハウジングを備えてもよい。前記ポートは、該プラグの対応する信号線にそれぞれ接続される複数のピンと、前記ハウジングを囲むシールドケースと、前記シールドケースと前記ハウジングとの間のフレキシブル回路板とを有してもよい。前記フレキシブル回路板は、
基板と、
各ビアが前記ハウジング上のピンを収容するように構成され、前記基板を貫通する複数のビアと、
各トレースが前記複数のビアのうちの対応する1つから延びる、前記基板の第1の面上の複数のトレースと、
前記基板の前記第1の面とは反対側の該基板の第2の面上のシールド面と、
を有してもよい。
【0009】
別の例において、励起されるとき、各トレースが、隣接する第2のトレースに差動的に整合してもよい。
【0010】
別の例において、整合対のトレースにおける第1のトレースのインピーダンス値が、前記整合対のトレースにおける前記第2のトレースのインピーダンス値に略等しくなるように調整されてもよい。
【0011】
別の例において、トレース層と、誘電層に埋め込まれている戻り信号層とによって、コンデンサーが各ビアに形成されてもよい。
【0012】
別の例において、前記戻り信号層と前記トレース層との間の距離が、前記コンデンサーがおよそ1pf〜およそ5pfの値を有するように調整されてもよい。
【0013】
別の例において、整合組のトレースにおける各トレースの幅、高さ、又は長さが、前記第1のトレースのインピーダンスが前記第2のトレースのインピーダンスと整合するように調整されてもよい。
【0014】
別の例において、第2のコンデンサーを形成するように、第2の戻り信号層が前記第1の戻り信号層の下方の前記誘電層に形成されてもよい。
【0015】
別の例において、前記第1の
戻り信号層と前記第2の
戻り信号層との間の距離は、前記第2のコンデンサーの値を1pf〜5pfに調整するように調整されてもよい。
【0016】
別の例において、前記第1のトレース及び前記第2のトレースのインピーダンスは、第1の信号が前記第1のトレース上に送信され、第2の信号が前記第2のトレース上に送信されるとき、前記トレースが整合するように調整されてもよい。
【0017】
別の例において、前記コンデンサーと、前記トレースと、前記戻り信号層とが、整合組のトレースに対するコモンモードフィルターを形成してもよい。
【0018】
別の例において、前記コンデンサーの値は、前記コモンモードフィルターが前記整合するトレースからの信号の反射を防止するように調整されてもよい。
【0019】
別の例において、前記基板の前記第1のシールドとは反対側に第2のシールドタブを形成してもよい。
【0020】
別の例において、前記トレースは金にめっきされてもよい。
【0021】
別の例として、プラグを受け入れ、該プラグの対応する信号線にそれぞれ接続される複数のピンを有するポートを有する標準RJ45ハウジングを備える高速通信用ジャックを挙げることができる。該ジャックは、
前記ハウジングを囲むシールドケースと、
前記シールドケースと前記ハウジングとの間のフレキシブル回路板と、
を備えてもよい。前記フレキシブル回路板は、
基板と、
各ビアが前記ハウジング上のピンを収容するように構成され、前記基板を貫通する複数のビアと、
各トレースが前記複数のビアのうちの対応する1つから延びる、前記基板の第1の面上の複数のトレースと、
前記基板の前記第1の面とは反対側の該基板の第2の面上のシールド面と、
を有してもよい。
【0022】
別の例として、前面と、後面と、上面と、下面と、右面と、左面とを有する標準RJ45ハウジングを用いて高速通信用ジャックを製造する方法を挙げることができる。前記ハウジングは、前記プラグの対応する信号線にそれぞれ接続される複数のピンを有する。該方法は、
フレキシブル回路板を形成するステップであって、前記フレキシブル回路板は、基板と、各ビアが前記ハウジング上のピンを収容するように構成され、前記基板を貫通する複数のビアと、各トレースが前記複数のビアのうちの対応する1つから延びる、前記基板の第1の面上の複数のトレースと、前記基板の前記第1の面とは反対側の該基板の第2の面上のシールド面と、前記フレキシブル回路板の反対端上にあり、シールドトレースによって該電気回路板に接続される少なくとも2つのシールドタブとを有する、形成するステップと、
前記フレキシブル回路板における各ビアを前記ハウジングの対応するピンに挿入するステップと、
前記ビアを有する前記フレキシブル回路板の一部が、前記ハウジングの前記下面上にあるとともに、前記ハウジングの前記後部上にある前記シールド面を有する前記フレキシブル回路板の一部に対して直交するように、前記フレキシブル回路板を屈曲させるステップと、
1つのシールドタブが前記ハウジングの前記左側面に接触し、1つのシールドタブが前記右側面に接触するように、各シールドタブを屈曲させるステップと、
シールドケースが前記シールドタブのそれぞれに接触するように、前記フレキシブル回路板及び前記ハウジング上に前記シールドケースを形成するステップと、
を含んでもよい。
【0023】
別の例として、
プラグを受け入れ、該プラグの対応する信号線にそれぞれ接続される複数のピンを有するポートを有するハウジングと、
前記ハウジングを囲むシールドケースと、
前記シールドケースと前記ハウジングとの間の多層フレキシブル回路板と、
を備える高速通信用ジャックを挙げることができる。前記多層フレキシブル回路板は、
各トレースが複数のビアのうちの対応する1つから延びる複数のトレースを有する第1の層と、
前記第1の層の前記トレースとは反対側にある誘電性材料の第2の層と、
前記第2の層の前記第1の層とは反対側にあるとともに導電性材料から作成される戻り面を有する第3の層と、
前記第3の層の前記第2の層とは反対側にあるとともに誘電性材料からで作成される第4の層と、
前記第4の層の前記第3の層とは反対側にあるとともに導電性材料からで作成される第5の層と、
を有してもよい。
各ビアが前記ハウジング上のピンを収容するように構成される複数のビアが、前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層、前記第4の層、及び前記第5の層を貫通してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の種々の態様の1つの実施形態に従って構成された、RJ45ジャックを備える高速通信用ジャックを示す図である。
【
図2】
図1のRJ45ジャックの左側部の下面斜視部の図である。
【
図3】
図1のRJ45ジャック及びフレキシブルプリント回路板用のシールドを提供するジャックシールドの下面及び右側面図である。
【
図4】
図1のプリント回路板の前面の平面概略図である。
【
図5】
図4のプリント回路板の後面の平面概略図である。
【
図6A】線BBに沿った
図4のプリント回路板の基板の断面図である。
【
図6B】
図4のプリント回路板におけるビアの断面図である。
【
図6C】
図4のプリント回路板におけるビアの別の例の断面図である。
【
図7】互いに整合及び均衡する送信ケーブル及び受信ケーブル対を有するRJ45ジャックの概略図である。
【
図8】差動的に均衡される1対の信号線の概略図である。
【
図9】第1の信号及び第2の信号に基づき、
図4における2つのトレースを差動的に均衡させるのに用いるプロセスの概略図である。
【
図10】シールドが除去された
図1のRJ45ジャックの後面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本開示の種々の態様の1つの実施形態に従って構成された高速通信用ジャックを示している。この高速通信用ジャックは、RJ45ジャック110と、フレキシブルプリント回路板(PCB)120と、ジャックシールド130とを備える。本明細書に記載するように、本開示の種々の態様によれば、フレキシブルPCB120は、RJ45ジャック110の各ピンに直接はんだ付けされてもよい平衡型無線周波数同調回路を提供する。その一方で、ジャックシールド130は、RJ45ジャック110及びフレキシブルPCB120用のシールドと、筐体接地としての機能とを提供する。RJ45ジャック110と、フレキシブルPCB120と、ジャックシールド130とは、組み合わされると、同調導波路、及び、通信信号が送信されるときに通過してもよい管と同様の機能を提供してもよい。この場合、通信信号のエネルギー部は管の外側でジャックシールド130を通して伝わり、通信信号の情報部は、管内の非抵抗性金線に沿って伝わる。それにより、高速データ信号速度を得ることが可能になる。例えば、40ギガビット(Gbs)以上のデータ速度をサポートできることが想定される。
【0026】
RJ45通信用ジャックが以下で用いられるが、本通信用ジャックは、RJ45通信用ジャックに限定されず、任意のタイプの高速通信用ジャックにおいて用いてもよい。高速通信用ジャックとしては、全てのクラスのモジュラーRJタイプコネクタ、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタ及びジャック、ファイヤーワイヤー(1394)コネクタ及びジャック、HDMI(高品位マルチメディアインターフェース)コネクタ及びジャック、Dサブミニアチュアタイプコネクタ及びジャック、リボンタイプコネクタ若しくはジャック、又は、高速通信信号を受信する任意の他のコネクタ若しくはジャックが挙げられる。
【0027】
本開示の種々の態様において、本明細書に開示される種々のピン及びトレースは、金、銀、若しくは銅、又は合金などの好適な導電性元素及び任意の好適な導電性元素の組合せから構成されてもよい。例えば、RJ45ジャック110の1組のピン及びプラグ接点は金めっき銅ピン又は銅線を含んでもよい。一方で、フレキシブルPCB120の1組のトレースは金めっき銅路(copper paths)を含んでもよい。金めっきは、通常は酸化し易い材料である銅に耐腐食導電層を付けるために用いられる。代替的には、金めっきを施す前に、ニッケル等の好適な障壁金属層を銅基板上に堆積してもよい。ニッケル層は、金層に対して機械的なバッキングを提供することにより、金めっきの耐摩耗性を向上させる場合がある。また、ニッケル層は、金層に存在する場合がある細孔の影響を低減する場合がある。より高い周波数において、金めっきは、信号損失を低減させる場合があるだけでなく、導体の外側縁上で電流密度が最も高くなる表皮効果により、帯域幅を増大させる場合もある。対照的に、ニッケルを単独で使用すると、同効果に起因して、より高い周波数において信号劣化が生じる。したがって、ニッケルめっきを単独で用いるRJ45ジャックではより高い速度は達成されない場合がある。例えば、ニッケルのみでめっきされたピン又はトレースは、信号がGHz範囲に入ると、それ自体の有効な信号長が3倍ほど短縮される場合がある。銅製の経路の表面上に金めっきを用いることのいくつかの利益が本明細書に記載されているが、他の導電性元素を、銅製の経路をめっきするように用いてもよい。例えば、金の代わりに、同様に非抵抗性であるが良好な導体であるプラチナを、銅路をめっきするように用いてもよい。
【0028】
高速通信用ジャックの主要な構成要素のそれぞれ、すなわち、RJ45ジャック110と、フレキシブルプリント回路板(PCB)120と、ジャックシールド130とが、これらの構成要素が高速通信のサポートを達成するのにどのように連携するかの議論を提供する前に、本明細書で簡潔に記載される。
【0029】
図2は、
図1のRJ45ジャック110の前部の下面斜視図を示している。ここで、プラグ(図示せず)を挿入するプラグ開口230が設けられているのを見て取ることができる。プラグ開口230は、プラグを受けて、プラグ上の接点を、RJ45ジャック110にある1組のプラグ接点212に結合するように構成してもよい。プラグはRJ45 8極8芯(8P8C)モジュラープラグとしてもよい。1組のプラグ接点212は、回路板上の通信回路に取り付けられるように構成される1組のピン210へと形成される。例えば、RJ45ジャック110は、1対のポスト220の使用によってネットワークスイッチ装置の回路板に取り付けてもよい。その後、1組のピン210を、装置の回路板上のそれぞれの接点パッドにはんだ付けしてもよい。
図2に示されているようなRJ45ジャック110と同様のジャックは単独で、RJ45ケーブルのプラグと、ジャックが一体化される装置の回路板との間に基本的な接続性をもたらす。しかし、そのジャックは、高速通信に必要な通信周波数を処理するように設計されていない。本明細書に記載の開示される手法の種々の態様に従って構成されるRJ45ジャック110は、ジャックシールド130及びフレキシブルPCB120等の他の構成要素と一体化されてもよく、それにより、RJ45ジャック110を用いて、遷移信号から干渉されることなく、より高い速度で通信することができる。
【0030】
図3は、RJ45ジャック110及びフレキシブルPCB120用のシールドを提供するジャックシールドの下面及び右側面図を示している。ジャックシールド130は、上部302と、下部304と、後部306と、前部308と、左側部(図示しないが、右側部と略同一である)と、右側部310とを有する。所望のシールド特性をもたらすために、本開示の1つの実施形態において、ジャックシールド130は、限定はしないが、鋼、銅、又は任意の他の導電性材料等の導電性材料を含んでもよい。ジャックシールド130の右側310及び左側(図示せず)の双方上で、下部304の近くにある1対のタブ320を用いて、ジャックシールド130を接地するとともに装置(図示せず)内の回路板に固定してもよい。例えば、ジャックシールド130上の1対のタブ320は、回路板上の1対の整合する取付け穴に挿入して、回路板にはんだ付けしてもよい。
【0031】
図4はRJ45ジャックのPCB120の前面の平面概略図を示している。PCB120は誘電性材料から作成される多層基板402を含む。基板402の縁は保護層404によって囲まれる。保護層404は、限定はしないが、プラスチック又はフレキシブルはんだマスク等の非導電性材料から作成される。基板402の前面は、基板402を通して作成される複数のビア406、408、410、412、414、416、418、及び420を有する。各ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420は、基板402を通過し、ピン210を収容するサイズである。各ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420を囲む領域は金等の導電性材料でコートされる。
【0032】
複数のトレース422、424、426、428、430、432、434、及び436は、各ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420からPCB120の端に向かって延びる。各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436は、銅又は金を含む導電性材料から作成される。1つの実施形態において、ニッケル層が基板402上に形成され、金層がニッケル層上に形成され、各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436を形成する。各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436は、トレース422、424、426、428、430、432、434、又は436が、ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420とは反対側のPCB120の縁の近くにあるシールドトレース層490に達するまで、PCB120の後端に向かって延びる。各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436は、第1の部分454、456、458、460、462、464、466、及び468を有し、第1の部分は、第2の部分470、472、474、476、478、480、482、及び484に隣接する。各第2の部分470、472、474、476、478、480、482、及び484は、シールドトレース層490に接触することなくシールドトレース層490に延びる。各第1の部分454、456、458、460、462、464、466、及び468は、それぞれの第2の部分470、472、474、476、478、480、482、及び484からそれぞれのビア406、408、410、412、414、416、418、又は420に向かって次第に細くなる。各第2の部分470、472、474、476、478、480、482、及び484は、トレース422、424、426、428、430、432、434、又は436に応じて変化する長さを有する。
【0033】
2つのシールドタブ486及び488は、PCB120の互いに反対側の縁上に位置決めされる。各シールドタブ486及び488は、導電性材料、例えば、金又は銅で被覆される基板から作成される。シールドタブ486及び488は、基板402上のシールドトレース層490によって電気的に接続される。シールドトレース層490は、シールドタブ486と488との間に延び、各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436の第2の部分470、472、474、476、478、480、482、及び484と、ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420とは反対側のPCB120の縁との間に位置決めされる。
【0034】
図5は、
図4のプリント回路板の後面の平面概略図を示している。後面は、ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420と、シールドタブ486及び488と、各シールドタブ486と488との後面との間に延びるシールドトレース層502とを有する。シールドトレース層502は、PCB120の後面の、シールドタブ486と488との間の部分を被覆する。シールドタブ486及び488は、基板402を通してシールドトレース層490とシールドトレース層502とを接続する戻りビア(return vias)504、506、508、510、512、514、516、及び518を有する。
【0035】
図6Aは、
図4の線BBに沿った、PCB120の多層基板402の断面図を示している。多層基板402の第1の層602は、PSR9000FSTフレキシブルはんだマスク等の材料から作成されるはんだマスク部を有する。第2の層604は、最上層の下方に形成され、トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436の各々を有する。各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436は、長さ(L)と高さ(H)と幅(W)とを有し、隣接するトレースから距離(S)だけ離間している。各トレースの長さ(L)は、トレースが、フレキシブル回路板120の表面に沿って、フレキシブル回路板120のそれぞれのビア406、408、410、412、414、416、418、及び420の縁からシールドトレース層490まで延びる長さである。
【0036】
各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436は、各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436がフレキシブルはんだマスクによって被覆されないように、第1の層602を通して延びる。また、シールドトレース層490が、第2の層604の一部分の上に形成され、シールドトレース層490は第1の層602を通して延びる。第3の誘電層606が第2の層604の下方に形成される。第3の層606は、およそ0.002ミル〜およそ0.005ミルの深さ(D)を有し、3.0を上回る誘電率を有する材料から作成される。この材料は、限定はしないが、Rogerson MaterialのRO XT8100、又は、高周波数電気信号を隔離することが可能な任意の他の材料等である。
【0037】
第4の層608が第3の層606の下方に形成される。第4の層608は信号戻り部及びシールドトレース部502を含む。信号戻り部及びシールドトレース部502の双方は、導電性材料、好ましくは金又は銅から作成される。第5の層610が、第4の層608上に形成される。第5の層610は、フレキシブルはんだマスク部及びシールドトレース層502部を有する。フレキシブルはんだマスク部は、第1の層602のフレキシブルはんだマスク部と同じ材料から作成される。代替的な一例において、フレキシブルはんだマスク部は、第1の層602のフレキシブルはんだマスクとは異なる材料から作成される。代替的な一例において、第2の信号戻り層(図示せず)は誘電性材料に位置決めしてもよい。
【0038】
隣接するトレースによって生じるクロストークを排除するように、各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436は、隣接するトレース422、424、426、428、430、432、434、及び436に電気的に結合される。例示的な一例として、トレース422をトレース424に結合してもよい。動作中、第1の信号が第1のトレースに沿って送信され、逆極性を有する同一の信号が整合するトレースに沿って送信され、それにより、トレースがともに差動的に結合される。トレースがともに差動的に結合されるため、各トレースのインピーダンスは、トレースがどのように駆動されるかを決める。それに応じて、各組の整合するトレースのインピーダンスは略等しいものとする。
【0039】
整合組のトレースにおける各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436の物理特性は、各トレースを介して送信される送信信号及び戻り信号のために、整合するトレース間でインピーダンスを均衡させるように調整される。各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436のインピーダンスは、各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436を通して送信される各信号のために、各トレースの長さ(L)、幅(W)、高さ(H)、及び整合するトレース間の間隔(S)のうちの任意の1つ又は組合せを調整することにより調整される。各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436の高さ(H)は、およそ2ミル〜およそ6ミルとしてもよく、隣接するトレース422、424、426、428、430、432、434、及び436間の間隔(S)はおよそ3ミル〜およそ10ミルとしてもよい。
【0040】
図4に戻ると、各トレースは、第1の部分454、456、458、460、462、464、466、及び468における可変の幅と、第2の部分470、472、474、476、478、480、及び482における略一定の幅とを有する。それに応じて、各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436の幅は、第1の部分454、456、458、460、462、464、466、及び468か第2の部分470、472、474、476、478、480、及び482のどちらかにおいて、又は、第1の部分454、456、458、460、462、464、466、及び468並びに第2の部分470、472、474、476、478、480、及び482の双方において、トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436の高さ(H)とともに調整される。それにより、整合組における各トレースは、整合するトレースが距離(S)だけ離間するとき、略同じインピーダンスを有する。
【0041】
製造及び材料の非一貫性に起因して、各組の差動的に整合するトレース422、424、426、428、430、432、434、及び436を通して駆動される信号は同一でない場合があるが、それにより、信号の一部が反射して戻り、コモンモード干渉が引き起こされる。いかなるコモンモード干渉も排除するように、整合組のトレースにおける各トレース422、424、426、428、430、432、434、又は436は、整合組におけるいかなるコモンモード干渉も排除するように調節されるコモンモードフィルターを有する。各フィルターは、各トレース422、424、426、428、430、432、434、又は436のビア406、408、410、412、414、416、418、又は420と、多層基板402の第4の層608とによって形成されるコンデンサーから構成される。各ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420は、ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420の周縁の回りで基板402の第2の層604及び第4の層608の上に形成される、金又は銅等の導電性材料層を有する。第1の層602上の導電性材料は、ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420に対応するトレース422、424、426、428、430、432、434、又は436に接続され、第4の層608上の導電性材料は、第4の層608の信号戻り部に接続される。各コンデンサーのサイズは、第2の層604及び第4の層608上の導電性材料間の距離によって決まる。それに応じて、ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420上の導電性材料に対して第3の層606の深さを調整することにより、各ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420の静電容量効果を調整することが可能になる。ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420と、第4の層608の戻り部とによって作り出されるコンデンサーは、およそ1ピコファラッド(pf)〜およそ5pfのサイズである。基板402の上面及び下面は、回路の動作を更に向上させるように、プラスチック絶縁層に被覆されてもよい。
【0042】
各ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420において作り出されるコンデンサーと、信号戻り層の特徴的なインダクタンスとの組合せにより、各トレース422、424、426、428、430、432、434、又は436のためのコモンモードフィルターが作り出される。トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436のインピーダンスに基づき、各コンデンサーの静電容量値を調整することにより、コモンモードノイズが大幅に低減し、それにより各トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436上での信号処理が向上する。
【0043】
図6Bは、ビア406、408、410、412、414、416、418、又は420の断面概略図を示している。各ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420は、第1の層602、第2の層604、第3の層606、第4の層608、及び第5の層610を通して形成される。第2の層604は、金又は銅等の導電性材料から作成されるとともに、各ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420の外周を囲む。また、第2の層604は、各ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420を第2の層604のそれぞれのトレース422、424、426、428、430、432、434、又は436に接続する。第3の層606は
図6Aに記載するように誘電層として機能する。第4の層608は、第3の層606に形成されるとともに、信号戻り層として機能する。第5の層610も、同様に銅又は金等の導電性材料から作成されるとともに、第2の層602と同じようにビアの外周を同様に囲む。シール層(図示せず)も第5の層610上に形成してもよい。
【0044】
第4の層608は、第2の層604から距離D1だけ、かつ第5の層610から第2の距離D2だけ離間する。第2の層604と、第3の誘電層606と、第4の戻り信号層608との組合せにより、およそ1pf〜5pfの静電容量値を有するコンデンサーが作り出される。第2の層604に対する第4の層608の距離D1を調整することにより、ビアコンデンサーの静電容量値が調整される。ビアがそれ自体の関連トレースを第4の戻り信号層608に接続するため、第2の層604と、第3の誘電層606と、第4の戻り信号層608との組合せによりコモンモードフィルターが形成される。このコモンモードフィルターは、製造プロセスの不全から生じる信号反射によって生じるいかなる干渉も除去する。ビアコンデンサーの静電容量値を調整することにより、コモンモードフィルターは、送信信号又は戻り信号の反射によって引き起こされる略全ての信号ノイズを排除するように調節してもよい。
【0045】
図6Cは、ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420の断面図の別の例を示している。第2の戻り信号層612が、第1の戻り信号層608と第5の層610との間の第3の層606に付加される。第2の戻り信号層612は、第1の信号層608に対して平行に延び、コモンモードフィルターのフィルター処理効果を向上させる。第1の戻り信号層608と第2の戻り信号層612との間の距離D3を調整することにより、第1の戻り信号層608と、第3の層606と、第2の戻り信号層612とによって形成される第2のコンデンサーがビアに作り出される。距離D3を調整することにより、第2のビアコンデンサーの値を、コモンモードフィルターの動作を向上させるように調整してもよい。さらに、本発明者らが突き止めたところでは、ビアに第2のコンデンサーを形成することにより、PCB102の離間した端上でトレースを整合させることが可能になる。例示的な一例として、トレース422をトレース436に整合させてもよい。それに応じて、第2のコンデンサーを形成することにより、RJ45標準に従って位置決めされた複数対の信号線を実現することができる。
【0046】
図7は、整合する送信トレース及び受信トレースを有するRJ45ジャックの概略図を示している。各トレース422、424、426、428、430、432、434、又は436の高さ(H)、幅(W)、及び長さ(L)を調整することにより、送信線及び受信線をインピーダンス整合させることができる。ジャックの動作を向上させるように、逆極性を有する同一の高周波数信号が各対に沿って送信される。整合するトレースはシールドを介して結合されるため、これらの対は互いのコモンモードフィルターとして機能する。また1つの信号を伝達することができない場合も、対応する逆の信号線は同一の信号を伝達する。整合するトレースがシールドに結合されたフィルターとして機能するため、高帯域幅伝送によって生じるノイズが信号からフィルターを通して除去される。さらに、送信線は受信線と整合するため、信号のフィルター処理はより高い正確性を伴って実行される。なぜなら、フィルターの基準点は、接地接続であるのではなく、信号自体であるからである。
【0047】
図8は、差動的に均衡された対の信号線の概略図を示している。図が示すように、各トレースの特性は、前述した方法を用いて、第1のトレースのインピーダンスを第2のトレースのインピーダンスに整合させるように調整される。さらに、各ビアに形成されたコンデンサーは、戻り信号線がPCB120に埋め込まれているコモンモードフィルターを形成する。送信信号及び応答信号の双方の送信中に2つのトレースを差動的に均衡させることにより、十分に均衡された双方向通信用回路が達成される。
【0048】
図9は、送信信号及び戻り信号のために整合するトレースを均衡させる方法の概略図を示している。ステップ902において、整合対のトレースにおける各トレースの物理特性をトレースのインピーダンスが略等しくなるように調整する。この物理特性は、各トレースの高さ、長さ、及び幅、並びに、整合組のトレースにおける各トレースを隔離する距離を含んでもよい。ステップ904において、第1の極性を有する第1の信号を整合組のトレースにおける第1のトレースに沿って送信する。第1の信号は、10ギガヘルツ(「GHz」)よりも高い周波数において動作する高周波数通信信号としてもよい。ステップ906において、第1の信号と略同一であるとともに第1の信号の極性とは逆の極性を有する第2の信号を、第1の信号と同時に、整合組のトレースの第2のトレース上に送信する。ステップ908において、第1の信号をトレースの始端及び終端において測定し、これらの2つの測定値を比較して、トレースの長さに沿って損失したデータ量を判定する。ステップ910において、測定した信号損失量に基づき、第1のトレース又は第2のトレースの少なくとも1つの物理特性を調整する。このプロセスは、信号損失量がおよそ10デシベル(「db」)未満になるまでステップ904に戻ってもよい。
【0049】
ステップ912において、第3の信号を整合組のトレースの第2のトレース上に送信する。ステップ914において、第3の信号と略同一であるが第3の信号とは逆の極性を有する第4の信号を、第1のトレース上に送信する。ステップ916において、第3の信号をトレースの始端及び終端において測定し、これらの2つの測定値を比較して、トレースの長さに沿って損失したデータ量を判定する。ステップ918において、測定した信号損失量に基づき、第1のトレース又は第2のトレースの少なくとも1つの物理特性を調整する。このプロセスは、信号損失量がおよそ10デシベル(「db」)未満になるまでステップ912に戻ってもよい。別の例において、このプロセスは、第1の信号の信号損失が第3の信号損失に応じて行われる調整によって影響されないことを確実にするようにステップ904に戻ってもよい。
【0050】
図10は、ジャック110に位置決めされているPCB120を示している。PCB120の基板402は、PCB120の第1の部分がおよそ90度の角度でPCB120の第2の部分に向くことを可能にする可撓性材料から作成される。それに応じて、PCB120は、ビア406、408、410、412、414、416、418、及び420がジャックのピン210上に位置決めされ、トレース422、424、426、428、430、432、434、及び436がビア406、408、410、412、414、416、418、及び420からジャック用の接点パッドまで延びるように屈曲される。シールドタブ486及び488は、PCB120に対しておよそ90度の角度にあるように屈曲される。シールドタブ486及び488は、ジャックのジャックシールド130がシールドタブ486及び488に係合するようにジャックの側面に沿って位置決めされる。
【0051】
フレキシブルPCB120は、フレキシブルPCB120の屈曲を可能にする任意のフレキシブルプラスチック基板を用いて実施してもよい。本明細書に記載するように、フレキシブルPCB120は、撓むか又は屈曲して、RJ45ジャック110の既存のフォームファクターに適合されるとともにジャックシールド130によってシールドされてもよい。例えば、フレキシブルPCB120は、RJ45ジャック110とジャックシールド130との間に配置して、RJ45ジャック110に取り付けてもよい。フレキシブルPCB120のシールドタブ486及び488は、フレキシブルPCB120上のフレックス回路に共通接続をもたらすようにジャックシールド130に取り付けてもよい。その場合、RJ45ジャック110の1組のピン210は、RJ45ジャック110が用いられる装置の回路板に電気的に結合されてもよい。
【0052】
フレキシブルPCB120は、ジャックシールド130等の既存のエンクロージャーに対してより良好に嵌入するように、折り曲げられてRJ45ジャック110の形状に適合するように構成されてもよい。例えば、開示される手法の1つの態様において、フレキシブルPCB120は、およそ90度の角度でフレキシブルPCB120の中間セクションに向かって屈曲し、折り曲げられてジャックシールド130に入る。フレキシブルPCB120のシールドタブ486及び488は、ジャックシールド130上に折り曲げられて接触することになり、はんだ付けして、フレキシブルPCB120をジャックシールド130に固定してもよい。当業者であれば、ジャックシールド130内でのRJ45ジャック110に対するフレキシブルPCB120の向きが本開示の種々の態様によって変化してもよいことを認識する。例えば、フレキシブルPCB120は、撓んで折り曲げられてジャックシールド130の他方の側面に入るように十分薄くてもよい。フレキシブルPCB120は、ジャックシールド130の下セクション304に全体的に沿うような形状にしてもよい。このとき、撓んで又は屈曲してジャックシールド130に入ることは必要とされない。
【0053】
前述の詳細な説明は、単に、本開示のいくつかの例及び実施形態であり、開示された実施形態に対する数多くの変更を、本明細書における本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく本開示に従って行うことができる。したがって、前述の記載は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、過度の負担を伴わずに当業者が本発明を実施するのに十分な開示を提供することを意図している。