【課題を解決するための手段】
【0009】
キャッチデバイス、特に、落石、土砂崩れ、土流、地滑り、または、倒木用のキャッチデバイス内で運動エネルギーを吸収するための本願発明にかかる破壊エレメントは、第1および第1固定ポイントを含むベースボディを有し、それらの固定ポイント間で破壊エレメントに作用する張力がテンションエレメントによって適用されるように、テンションエレメントが第1および第2固定ポイントの各々に配置される。第1および第2固定ポイントは張力に沿って互いに離隔されている。本願発明にかかる破壊エレメントは、張力が所定の量を超えたとき、固定ポイント間の距離が、破壊ラインに沿ったベース本体の連続的な破壊および変形によって増加するように、設計される。言い換えれば、それに取り付けられたテンションエレメントを有する固定ポイントは、ベース本体の破壊および変形により、所定の破壊ラインまたは形状に沿って互いに関して移動する。テンションエレメントは固定ポイント間での増加した距離にわたって張力に屈することが可能であり、したがって、テンションエレメントのオーバーロードが防止される。こうして、ロープおよび保護システム全体内の力が必要な値に制限可能となる。
【0010】
特に本願発明に従うキャッチデバイスは、しばしば落石用に使用される安全ネットである。しかし、原理的にこの安全ネットは他の移動する塊および減速すべき塊に対しても使用可能である。例えば、建設現場の安全ネットとして、道路の側面、または、空中ケーブル、クレーンまたはエレベータに使用されてもよい。第1および第2固定ポイントは特に小穴、複数の小穴、一つ以上の固定フックまたは一つ以上の類似の固定エレメントまたは一つ以上の固定エレメント用の予備セットアップによって形成されてもよい。それを通じて、ベース本体はひとつのテンションエレメントと結合され、その結果、第1テンションエレメントに作用する張力はベース本体を通じて第2テンションエレメントに伝達される。固定デバイスの代わりに、テンションエレメントが取り付けられる位置のみが決定されてもよい。例えば、その場合、テンションエレメントは安全ネット用の保持ロープの一部であり、それは安全ネットが荷重されたときに張力にさらされる。この張力はその後破壊エレメントのベース本体に伝達される。
【0011】
本願発明に従う、所定の破壊ラインに沿ったベース本体の連続破壊および変形は、2つの固定ポイント間の距離の増加がベース本体のさらなる破壊および変形に関連することを意味する。この場合、この連続的な破壊および変形は、段階的な破壊および変形を構成する。いわば、連続的破壊および変形が次々に複数の断続的ステップで生じる。しかし、連続した破壊および変形は、所定の破壊ポイントで一回の破壊が生じ、さらなる破壊が生じることなく、変形のみがつづくものと区別されるべきである。
【0012】
それに沿って破壊エレメントが破壊かつ変形するベース本体の破壊ラインは、所定の破壊ポイント構成によって有利に予め決定される。この所定の破壊ポイント構成は特に、減少した断面の一つ以上の材料ブリッジ、一つ以上の穴開け、一つ以上のノッチまたは一つ以上のドリル止まり穴のウエブを有する。所定の破壊ポイント構成は、互いから離隔された一つ以上の溶接ポイントによって形成されてもよい。所定の破壊ポイント構成は、所定の張力を超えたときそれに沿ってベース本体が破壊される所定の破壊ラインを画定する。こうして、破壊および変形の開始の閾値の観点から、および、それに沿ってベース本体が破壊される形状の観点から、所望のシステムを形成することができる。したがって、これは、破壊エレメントがそれに取り付けられたテンションエレメント用に与える破壊パスも決定する。
【0013】
所定の破壊ポイント構成の材料ブリッジが破壊されるとき、破壊エレメントによって消散されるべき運動エネルギーはすでに実質的な程度まで変換されている。また、破壊エレメントの変形は付加的なエネルギーを消散させ、その結果、本願発明に従う破壊エレメントは大きな空間または多くの材料を必要せず、運動エネルギーを消散させるのに特に効果的である。好適に、所定の破壊ポイント構成はせん孔を有し、それは、表面のみ、または、厚さ方向に貫通してもよい。言い換えれば、せん孔は、ベース本体を完全に貫通するか、所定の破壊ポイントの所望の領域から表面の一部を除去するのみかのいずれかである。それにより、減少した断面の材料ブリッジが形成される。
【0014】
好適実施形態において、所定の破壊ポイント構成は、曲線をなす。曲線の所定の破壊ポイント構成により、破壊エレメントの破壊および変形のために、ベース本体の材料を最適に利用することができる。曲線の所定の破壊ポイント構成により、ベース本体は最初の変形前に曲線形状を有する所定の破壊ポイント構成に沿って破壊される。この曲線をなすベース本体部分は、荷重がかかったときベース本体の2つの固定ポイント間の距離が最大となるようにさらに伸ばされる。それは、さらに変形エネルギーを要求し、したがって、付加的な運動エネルギーを消散させることができる。
【0015】
破壊ライン、特に、所定の破壊ポイント構成は、好適には、ベース本体に二重螺旋を形成し、その一端において第1固定ポイントが配置され、他端において第2固定ポイントが配置される。両方の固定ポイントは螺旋の外側領域に配置される。したがって、張力が所定の値を超えれば、螺旋はベース本体の連続的な破壊および変形により展開される。破壊ライン、特に所定の破壊ポイント構成の螺旋形状は、破壊パスにより予め定められた所定の破壊パス、特に所定の破壊ポイント構成が外側、すなわち、エッジでの固定ポイントから始まるように設計されている。この目的のために、破壊ラインは二重螺旋形状を有する。
【0016】
好適実施形態に関連して、(二重)螺旋は特にフラット(二重)螺旋、すなわち、実質的に2次元(二重)螺旋であると理解できる。二次元平面で広がる距離は、実質的にこれと垂直方向の長さに比べ大きい(少なくとも10倍)。しかし、(二重)螺旋は本質的に曲面内にあってもよい。他の実施形態において(二重)螺旋はヘリックスとして設計されてもよい。破壊ライン、特に所定の破壊ポイント構成は、破壊または変形可能であるように、円柱または円錐の表面にわたって延在する。円柱または円錐のベース本体は、2つの固定ポイント間の距離を増加させるために、変形するだけでなく、破壊されなければならない。
【0017】
こうして、張力が所定量を超えたとき、(二重)螺旋形状の破壊ライン、特に所定の破壊ポイント構成が、螺旋形状に沿って展開、変形、破壊されるベース本体を生成する、コンパクトなベース本体を有するコンパクトな破壊エレメントを与えることができる。(二重)螺旋のそれぞれの端部に第1および第2固定ポイントを配置することにより、展開されたとき、テンションエレメント上で張力を削ぐように、換言すれば破壊パスとして機能するように、(二重)螺旋の全長を使用することができる。また、(二重)螺旋は部分的に変形されるのみ、好適には破壊および変形するように引き伸ばされてもよい。破壊エレメントは、固定ポイントの領域において(二重)螺旋を展開させながら、ベース本体が最初に変形し、好適には破壊されかつ変形するように設計されてもよい。
【0018】
二重螺旋は、互いに反対方向に伸長しかつ合体する2つの螺旋からなる。これにより、ベース本体は、連続的に変形し、好適に破壊および変形する。これは、効率的に長い破壊パスが生成されると同時に、特にコンパクトな破壊エレメントの構成が可能となることを意味する。したがって、外側端部から二重螺旋の2つの部分が同時に展開することにより、二重螺旋の2つの部分の同じ方向への回転が生じる。
【0019】
ここで破壊エレメントおよびテンションエレメントとの間に回転移動が生じないので、二重螺旋が好ましい。その回転運動は、単一螺旋においてカウンタ手段を必要とする。
【0020】
付加的に、破壊ラインは、せん孔が、直線、線形、好適には中心に配置されたスチール製のストリップであってよい。それは、ジッパーのように、破壊されて開口し変形される。他の代替例は、破壊ラインとして蛇行せん孔を有するベース本体のようなシート状金属のディスクである。特に、上記した実施形態において、破壊ラインの破壊、したがって、材料ブリッジの破壊は、せん断によって生じる。例えば、破壊は材料ブリッジを切断する楔によって生じる。その楔は、破壊エレメントの固定ポイントのひとつに結合されている。
【0021】
円柱シェル形状のベース本体に関して、円柱の表面全体にわたる破壊ラインのヘリカル構成も可能である。ヘリカル破壊ラインによって、伸長状態で円柱シェル形状のベース本体はベース本体の材料の実質的に伸長したストリップとなる。
【0022】
破壊エレメントのベース本体は円盤状であるのが有利である。ディスクの直径および厚みは、保護システムの要求に応じて任意に変更可能であり、それに適応可能である。より厚いディスクには、ベース本体の変形にはより大きなエネルギーが必要になるという効果がある。破壊するだけに必要なエネルギーは所定の破壊ポイント構成を適応することによって設定可能であり、ディスクの厚さによって大きな影響を受けない。したがって、破壊エレメントは、破壊のために必要なエネルギーを設定することによって吸収が期待されかつ必要とされる異なる量のエネルギーに比較的容易に適用可能である。
【0023】
ベース本体の直径は、完全な伸長状態の破壊エレメントの長さに影響を与える。この長さは、引き伸ばされたベース本体の幅と関連している。同じ長さに対して、より広い幅のストレッチベース本体はより大きいディスク直径を要求する。
【0024】
この場合、円盤状または板状の形状は、二次元の広がりがそれに垂直な厚さより実質的に大きいことを意味する。したがって、円盤または板状のベース本体は実質的に平坦な、二次元エレメントであり、その厚さは平面の広がりよりも少なくとも10分の1だけ小さい。平坦エレメントは曲線をなすが、曲がっていないのが好ましい。円盤状のベース本体は実質的に円または楕円であるのが好ましい。円または楕円のベース本体によって、破壊ラインの特に効果的な構成、特に二重螺旋形状の所定の破壊ポイント構成が可能になる。破壊ラインのこの構成または所定の破壊ポイント構成は特に有利であることが証明された。ここで、固定ポイントとして、ベース本体の小穴または他の構成はベース本体の円または楕円形状を前提とするものではなく、これらの固定ポイントのためにベース本体の外部輪郭のみが円または楕円からずれるが、円または楕円形状に関連している。
【0025】
好適実施形態において、ベース本体は互いに平行に重なって配置された複数のディスクを有する。このディスクはサンドイッチ構造で互いに平行に結合されるか、置かれるか、分離される。有利には、ベース本体の個々のディスクは固定ポイントの領域において互いに結合され、その結果固定ポイント間に作用する張力は平行に重ねられた複数のディスクに均一に伝達され、ベース本体の複数の部分の均一な破壊および変形を生じさせる。
【0026】
有利には、ベース本体は金属、特にスチール、または、複合材料から形成される。この材料は、所定の破壊ポイント構成としてその特定の弱体化およびそのプラスチック変形性の観点で調節しやすい。その結果、ベース本体の破壊性および変形性は材料の選択によって影響される。これに関して、サンドイッチ構造で使用されるベース本体はまた異なる材料から形成されてもよく、それは異なる厚さの層を有するか、または、異なる処理が施されたものであってもよい。鋳造によって破壊エレメントを形成することがより好ましい。これにより、破壊エレメントは非常に効率的に製造することができる。
【0027】
好適に、破壊エレメントは破壊エレメントの有効な残りの長さを示すマーキングを有する。このマーキングは特に、図形要素であり、例えば、刻印またはノッチである。それは、破壊エレメントがこれまでに使用された程度を示す。したがって、破壊ラインが使用されていなければ、新たな負荷によってエレメントが再利用可能であることを容易に知ることができ、破壊エレメントの残りの負荷容量に対する不安がなくなる。したがって、破壊エレメントは安全性のリスクが生じることなく、複数回にわたって使用可能である。
【0028】
好適実施形態において、破壊エレメントはベース本体の破壊および/または変形を検出するための変形センサを有する。この変形センサは、例えば、特定の位置、例えばマーキングの位置で、所定の破壊ポイント構成の破壊を検出するセンサである。この種のセンサは電子的エレメントであり、それにより、破壊エレメントが特定の寸法にわたって変形したことの情報を電子的に処理することができる。
【0029】
特に好適には、破壊エレメントは、変形センサによって検出されたベース本体の破壊および/または変形を受信機に送信するための送信機をさらに有する。例えば、これは責任者またはメンテナンスサービスに対するアラーム信号であってもよい。彼らは、その後、破壊エレメントをチェックし交換することができる。こうして、例えば、雪崩警告を発す得ることが可能である。
【0030】
有利には、二重螺旋形状の所定の破壊ポイント構成は中心を有する。そこで2つの対向する螺旋が合体する。この中心は2つの螺旋が互いに結合する位置であり、通常は破壊エレメントの中心に配置されて、二重螺旋を形成する2つの螺旋が対称的に配置可能となる。この中心は、長円穴の形状で、2つの所定の破壊エレメントによって画定され、このスロット形状の所定の破壊ポイントが中心の周りの領域に配置されてもよい。このスロット形状の所定の破壊ポイントは好適には、2つのスロット形状のせん孔、ノッチまたは貫通孔によって形成され、例えば、“Taji”または“Hotu”YinおよびYang記号を形成して、二重螺旋の中心の周りに配置される。所定の破壊ポイントによって、それは破壊エレメントの中心の周りに配置され、破壊エレメントは完全に伸びるまで画定された方向に展開し、大きな負荷に抵抗する。破壊エレメントの展開方向に影響される、中心に配置された所定の破壊ポイントの好適構成は、ベース本体の明確に画定された伸長を容易にする。それは、伸長状態においてベース本体を弱体化させる、中心のすぐ周りの領域内でのベース本体の破壊を防止する。したがって、所定の破壊ポイントの好適構成は、大きい負荷に対抗する破壊エレメントを形成するのに役立つ。
【0031】
本願発明に従う破壊エレメントによれば、特定の要求に対する破壊パスまたは破壊距離およびエネルギー吸収容量を簡単に調節可能である。これは、例えば、所定の破壊ポイント構成に沿ったベース本体の弱体化の程度、ベース本体のサイズ、ベース本体用の材料の選択、および、破壊ライン特に所定の破壊ポイント構成のパターンを通じて達成される。
【0032】
本願発明に従うキャッチデバイス、特に、落石、土砂崩れ、土流、地滑り、または、倒木用のキャッチデバイスは、上記に従う破壊エレメントを有する。この破壊エレメントによって、特定の破壊衝撃に対してキャッチデバイスを保護することが可能になる。その結果、本願発明に従うキャッチデバイスは、強い衝撃にさらされた場合でも信頼性が向上する。
【0033】
使用される保持ロープの負荷容量を超える大きな衝撃に対して改良された、小型で広く応用可能なキャッチデバイスを与えるという本願発明の他の目的が達成される。
【0034】
破壊エレメントは、第1固定ポイントがバリア特に安全ネットによって動作的に結合され、第2固定ポイントがキャッチデバイスのアンカーによって動作的に結合されるように、好適に配置される。こうして、破壊エレメントはバリアとアンカーとの間で張力に沿って配置され、その結果、バリアに達する運動エネルギーに効率的に作用する。
【0035】
キャッチデバイスに複数の平行な破壊エレメントを使用することも可能である。この場合、破壊エレメントは、その抵抗および破壊長さの観点から互いに配列され、すなわち、同じか、または、故意に異なる値を有する。
【0036】
本願発明はさらに上記した実施形態に従う破壊エレメントを製造するための方法に関する。当該方法において板状のベース本体は、非機械的技術、特に、レーザカッティングまたは水圧カッティングを使った所定の破壊ポイント構成を具備する。破壊エレメントを製造するための本発明にかかる代替的な方法において、板状ベース本体はマシニング技術、特に、のこ盤またはボール盤を使った所定の破壊ポイント構成を具備する。
【0037】
ベース本体が単一のディスクである場合、本願発明に従う方法を使って大きな破壊エレメントを作成することができる。したがって、固定ポイントがすでにベース本体上に設けられていれば、破壊エレメントは追加的なフィニッシュ処理が不要である。
【0038】
破壊エレメントを製造する他の方法は、溝として形成された破壊ラインに沿って材料ブリッジを作成することを有する。当該材料ブリッジは溝に沿った個々の溶接または溶接ポイントによって作成される。この溶接ポイントは、所定の量の負荷にさらされたとき溝に沿って破壊され、それによってベース本体が変形するように形成される。
【0039】
上述した破壊エレメントは、上記した本発明の目的を達成し、かつ、従来技術の欠点を克服する。特にコンパクトで、テンションロープへのダメージを防止する破壊エレメントを与えることができ、たとえ破壊エレメントがすでに最初の負荷に晒されていても破壊エレメントの残りの負荷容量の信頼できる評価を可能にする。その動作モードは摩擦がなく移動部品がないため、破壊エレメントはドリフトによって全く影響をうけない。
【0040】
本願発明の他の有利な特徴および効果は以下の図面を使った説明および特許請求の範囲の全体から明らかとなる。