特許第6154476号(P6154476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファイファー イソファー アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許6154476破壊エレメント、キャッチデバイス、および、破壊エレメントの製造方法
<>
  • 特許6154476-破壊エレメント、キャッチデバイス、および、破壊エレメントの製造方法 図000002
  • 特許6154476-破壊エレメント、キャッチデバイス、および、破壊エレメントの製造方法 図000003
  • 特許6154476-破壊エレメント、キャッチデバイス、および、破壊エレメントの製造方法 図000004
  • 特許6154476-破壊エレメント、キャッチデバイス、および、破壊エレメントの製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154476
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】破壊エレメント、キャッチデバイス、および、破壊エレメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   E01F7/04
【請求項の数】25
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-542190(P2015-542190)
(86)(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公表番号】特表2015-535041(P2015-535041A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2013057989
(87)【国際公開番号】WO2014075817
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2015年10月15日
(31)【優先権主張番号】202012010932.4
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515129559
【氏名又は名称】ファイファー イソファー アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】PFEIFER ISOFER AG
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】フルダ,マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,マルクス
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−248117(JP,A)
【文献】 特開2003−321808(JP,A)
【文献】 特開2001−248675(JP,A)
【文献】 米国特許第05799760(US,A)
【文献】 特開2002−227898(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0125613(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 3/00−8/02
F16F 7/00−7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
落石、土砂崩れ、土流、地滑り、または、倒木用のキャッチデバイス内の運動エネルギーを吸収するための破壊エレメントであって、
第1および第2固定ポイントを有するベース本体であって、前記第1および第2固定ポイント間の破壊エレメントに作用する張力がテンションエレメントによって印加されるように、前記テンションエレメントが前記第1および第2固定ポイントの各々に配置される、ベース本体を備え、
前記第1および第2固定ポイントは前記張力に沿って互いに所与の距離だけ離隔され、 前記破壊エレメントは、前記張力が所定量を超えた場合に、前記第1および第2固定ポイント間の前記所与の距離が前記ベース本体の破壊ラインに沿った連続的な破壊および変形によって増加するように設計されており、前記破壊ラインは、所定の破壊ポイント構成によって前記ベース本体に予め定められている、ことを特徴とする破壊エレメント。
【請求項2】
前記破壊ラインは、前記所与の距離の方向と交わるように、所定の破壊ポイント構成によって前記ベース本体に予め定められている、ことを特徴とする請求1に記載の破壊エレメント。
【請求項3】
前記破壊ポイント構成は、溝、および、前記ベース本体が変形するように前記溝に沿って設けられたひとつ以上の材料ブリッジを有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の破壊エレメント。
【請求項4】
前記材料ブリッジは、溶接ポイントにより形成される、ことを特徴とする請求項に記載の破壊エレメント。
【請求項5】
前記所定の破壊ポイント構成は、ひとつ以上のせん孔、ノッチおよび/またはドリル止まり穴を有する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の破壊エレメント。
【請求項6】
前記所定の破壊ポイント構成は曲線をなす、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の破壊エレメント。
【請求項7】
前記破壊ラインは、2つの螺旋からなる二重螺旋を形成し、それは伸長し互いに合体するか、直線または蛇行ラインを形成する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の破壊エレメント。
【請求項8】
前記ベース本体が円柱シェル形状の場合には、前記破壊ラインは前記ベース本体にヘリカルプロファイルを形成する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の破壊エレメント。
【請求項9】
前記第1固定ポイントは二重螺旋として形成された前記破壊ラインの第1端部に配置され、前記第2固定ポイントは、二重螺旋として形成された前記破壊ラインの第2端部に配置される、ことを特徴とする請求項に記載の破壊エレメント。
【請求項10】
前記破壊ラインは、前記張力が所定量を超えると、前記ベース本体の連続的な破壊および変形により展開する、ことを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の破壊エレメント。
【請求項11】
前記破壊ラインは二重螺旋として形成される、ことを特徴とする請求項10に記載の破壊エレメント。
【請求項12】
前記ベース本体は円盤である、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の破壊エレメント。
【請求項13】
前記円盤は、互いに平行に重ねて配置された複数のディスクを有する、ことを特徴とする請求項12に記載の破壊エレメント。
【請求項14】
前記ベース本体は金属、または、複合材料から作成される、ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の破壊エレメント。
【請求項15】
前記ベース本体は、スチールから作成される、ことを特徴とする請求項14に記載の破壊エレメント。
【請求項16】
前記ベース本体は、鋳造により形成される、ことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の破壊エレメント。
【請求項17】
前記破壊エレメントの残りの有効長さを示すマーキング、をさらに備える、請求項1から16のいずれか一項に記載の破壊エレメント。
【請求項18】
前記ベース本体の破壊および/または変形を検出する変形センサをさらに備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の破壊エレメント。
【請求項19】
前記変形センサによって検出された前記ベース本体の破壊および/または変形を受信機に送信するための送信機をさらに備える、ことを特徴とする請求項18に記載の破壊エレメント。
【請求項20】
前記二重螺旋は前記2つの螺旋がそこで合体する中心点を有し、前記中心点は2つのスロット形状の所定の破壊ポイントによって画成される、ことを特徴とする請求項7、9または11に記載の破壊エレメント。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の破壊エレメントを備える、落石、土砂崩れ、土流、地滑り、または、倒木用のキャッチデバイス。
【請求項22】
前記破壊エレメントは、前記第1固定ポイントがバリアと動作的に結合され、前記第2固定ポイントが前記キャッチデバイスのアンカーと動作的に結合される、ことを特徴とする請求項21に記載のキャッチデバイス。
【請求項23】
前記バリアは、安全ネットである、ことを特徴とする請求項22に記載のキャッチデバイス。
【請求項24】
請求項1から20のいずれか一項に記載の破壊エレメントを製造する方法であって、
板状または円筒シェル形状としてベース本体を形成する段階と、
前記板状または前記円筒シェル形状の前記ベース本体に、画定された破壊ラインを設ける段階と、
を備える方法。
【請求項25】
前記所定の破壊ポイント構成は、レーザビームカッティングまたは水圧ジェットカッティングを含む非機械的技術によって、のこ盤または旋盤を含むマシニングによって、または、互いにある距離だけ離隔した別個の位置に溶接することによって作成される、ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、キャッチデバイス、特に、落石、土砂崩れ、土流、地滑り、または、倒木用のキャッチデバイス内の運動エネルギーを吸収するための破壊エレメントに関する。破壊エレメントは、第1および第2固定位置を有するベース本体を有し、固定ポイント間で破壊エレメントに作用する張力がテンションエレメントによって適用されるように、テンションエレメントが第1および第2固定ポイントの各々に配置され、第1および第2固定ポイントが張力に沿って互いに距離を有する。
【0002】
本願発明は、さらに、その破壊エレメントを有するキャッチデバイスおよび、その破壊エレメントを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
上述したキャッチデバイスのような、塊を移動するためのキャッチデバイス用の破壊エレメントが周知である。それは、塊が移動することによる突然の衝撃に対してキャッチデバイスの抵抗を増加させるように作用する。特に、破壊エレメントは、引張荷重にさらされるエレメント、例えば、保持ロープまたはアンカーが本体によって強い衝撃にさらされたときに壊れないことを本質的に保証する。破壊エレメントは、衝撃によってキャッチデバイスに伝達される運動エネルギーを連続的に減少させる。このためのさまざまなシステムが従来技術として周知である。この破壊エレメントの形状は、運動エネルギーを変形エネルギーに変換し、それによってエネルギーの連続的な減少を達成するように設計される。例として、欧州特許第1156158号B1および欧州特許第1302595号A1が公知である。これらのシステムにおいて、保持/ガイロープは、保持ロープの方向と実質的に直交して延在し、保持ロープにかかる張力が所定の量を超えたとき圧縮されるかまたは破壊される破壊エレメントを通じて導入される。これらのデバイスのひとつの欠点は、それが比較的大きな体積を有することである。両方の例において、破壊デバイスにとって、所望の破壊パスの長さを半分にすることが必要であり、本願発明に従う破壊パスは保持ロープの非負荷状態に対して、それによって、ロープが与えられる破壊エレメントを通じて出されるロープの長さに対応する。これらのデバイスはロープが破壊エレメント内に挿入され、かつ、比較的小さい曲率半径を通じて破壊エレメントを通過させる。これは、ロープに鋭利な欠陥を作り、その結果負荷が生じた時にダメージを受けるかまたはオーバーロードになる。
【0004】
国際公開第2009/137951号A1は、例えば落石防止用ロープ構造のショック吸収デバイスを開示する。好適には、複数のストラップまたはロープが大きな負荷の下で衝撃エネルギーの一部を吸収するために、たわみメカニズムによって伸ばされる。また、プロファイルに大きな負荷が作用した場合、大きな負荷の下で、実質的に直交ロールプロファイルが実質的に線形プロファイルに変形される。
【0005】
これらの両方のデバイスは、デバイスの不可避的汚れが摩耗を生じさせるという問題を有する。それは、変形能力を大きく損ない、かつ、ストラップもしくはロープ、または、ロールセクションの変形の予測可能性を大きく損なう。これらのデバイスは、したがって、適正に機能することを保証するためにコンスタントに洗浄しなければならない。
【0006】
欧州特許第14690130号A1に記載の破壊エレメントは、螺旋形状のプラスチック製変形可能材料が使用され、大きな引張負荷の下で変形し、それによって、塊からキャッチデバイスに伝達された運動エネルギーを変形エネルギーに変換する。しかし、このデバイスの欠点は、比較的大きな空間を占め、かつ、一般的に応用可能ではない。エネルギー減衰は上に屈曲しかつ反り返ることによってのみ生じるため、螺旋形状体は異なる量のエネルギー入力に満足のいくように順応することができない。また、すでにどれだけ荷重されたか、さらにどれだけの負荷に耐えられるかを、螺旋形状体自身で見分けることは容易ではない。言い換えれば、たとえその負荷容量が消耗されなくても、キャッチデバイスが再び荷重される際に、十分な運動エネルギーを吸収しつづけることを保証するためには、螺旋形状体を交換しなければならない。したがって、螺旋形状体を信頼して再利用することは不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の背景に鑑みて、本願発明の目的は、上記した技術分野において、メンテナンスフリーで、規模が小さく、ロープにやさしい破壊エレメントを与えることである。また、非消耗負荷に続いて、信頼して連続的に使用する可能性を提供する破壊エレメントを与えることである。本願発明の他の目的は、破壊エレメントによって吸収されるべき異なるレベルの運動エネルギーに対して単純に応用可能な破壊エレメントを与えることである。
【0008】
この目的は、請求項1にかかる破壊エレメントによって達成される。破壊エレメントのさらなる利点は従属項から得られる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
キャッチデバイス、特に、落石、土砂崩れ、土流、地滑り、または、倒木用のキャッチデバイス内で運動エネルギーを吸収するための本願発明にかかる破壊エレメントは、第1および第1固定ポイントを含むベースボディを有し、それらの固定ポイント間で破壊エレメントに作用する張力がテンションエレメントによって適用されるように、テンションエレメントが第1および第2固定ポイントの各々に配置される。第1および第2固定ポイントは張力に沿って互いに離隔されている。本願発明にかかる破壊エレメントは、張力が所定の量を超えたとき、固定ポイント間の距離が、破壊ラインに沿ったベース本体の連続的な破壊および変形によって増加するように、設計される。言い換えれば、それに取り付けられたテンションエレメントを有する固定ポイントは、ベース本体の破壊および変形により、所定の破壊ラインまたは形状に沿って互いに関して移動する。テンションエレメントは固定ポイント間での増加した距離にわたって張力に屈することが可能であり、したがって、テンションエレメントのオーバーロードが防止される。こうして、ロープおよび保護システム全体内の力が必要な値に制限可能となる。
【0010】
特に本願発明に従うキャッチデバイスは、しばしば落石用に使用される安全ネットである。しかし、原理的にこの安全ネットは他の移動する塊および減速すべき塊に対しても使用可能である。例えば、建設現場の安全ネットとして、道路の側面、または、空中ケーブル、クレーンまたはエレベータに使用されてもよい。第1および第2固定ポイントは特に小穴、複数の小穴、一つ以上の固定フックまたは一つ以上の類似の固定エレメントまたは一つ以上の固定エレメント用の予備セットアップによって形成されてもよい。それを通じて、ベース本体はひとつのテンションエレメントと結合され、その結果、第1テンションエレメントに作用する張力はベース本体を通じて第2テンションエレメントに伝達される。固定デバイスの代わりに、テンションエレメントが取り付けられる位置のみが決定されてもよい。例えば、その場合、テンションエレメントは安全ネット用の保持ロープの一部であり、それは安全ネットが荷重されたときに張力にさらされる。この張力はその後破壊エレメントのベース本体に伝達される。
【0011】
本願発明に従う、所定の破壊ラインに沿ったベース本体の連続破壊および変形は、2つの固定ポイント間の距離の増加がベース本体のさらなる破壊および変形に関連することを意味する。この場合、この連続的な破壊および変形は、段階的な破壊および変形を構成する。いわば、連続的破壊および変形が次々に複数の断続的ステップで生じる。しかし、連続した破壊および変形は、所定の破壊ポイントで一回の破壊が生じ、さらなる破壊が生じることなく、変形のみがつづくものと区別されるべきである。
【0012】
それに沿って破壊エレメントが破壊かつ変形するベース本体の破壊ラインは、所定の破壊ポイント構成によって有利に予め決定される。この所定の破壊ポイント構成は特に、減少した断面の一つ以上の材料ブリッジ、一つ以上の穴開け、一つ以上のノッチまたは一つ以上のドリル止まり穴のウエブを有する。所定の破壊ポイント構成は、互いから離隔された一つ以上の溶接ポイントによって形成されてもよい。所定の破壊ポイント構成は、所定の張力を超えたときそれに沿ってベース本体が破壊される所定の破壊ラインを画定する。こうして、破壊および変形の開始の閾値の観点から、および、それに沿ってベース本体が破壊される形状の観点から、所望のシステムを形成することができる。したがって、これは、破壊エレメントがそれに取り付けられたテンションエレメント用に与える破壊パスも決定する。
【0013】
所定の破壊ポイント構成の材料ブリッジが破壊されるとき、破壊エレメントによって消散されるべき運動エネルギーはすでに実質的な程度まで変換されている。また、破壊エレメントの変形は付加的なエネルギーを消散させ、その結果、本願発明に従う破壊エレメントは大きな空間または多くの材料を必要せず、運動エネルギーを消散させるのに特に効果的である。好適に、所定の破壊ポイント構成はせん孔を有し、それは、表面のみ、または、厚さ方向に貫通してもよい。言い換えれば、せん孔は、ベース本体を完全に貫通するか、所定の破壊ポイントの所望の領域から表面の一部を除去するのみかのいずれかである。それにより、減少した断面の材料ブリッジが形成される。
【0014】
好適実施形態において、所定の破壊ポイント構成は、曲線をなす。曲線の所定の破壊ポイント構成により、破壊エレメントの破壊および変形のために、ベース本体の材料を最適に利用することができる。曲線の所定の破壊ポイント構成により、ベース本体は最初の変形前に曲線形状を有する所定の破壊ポイント構成に沿って破壊される。この曲線をなすベース本体部分は、荷重がかかったときベース本体の2つの固定ポイント間の距離が最大となるようにさらに伸ばされる。それは、さらに変形エネルギーを要求し、したがって、付加的な運動エネルギーを消散させることができる。
【0015】
破壊ライン、特に、所定の破壊ポイント構成は、好適には、ベース本体に二重螺旋を形成し、その一端において第1固定ポイントが配置され、他端において第2固定ポイントが配置される。両方の固定ポイントは螺旋の外側領域に配置される。したがって、張力が所定の値を超えれば、螺旋はベース本体の連続的な破壊および変形により展開される。破壊ライン、特に所定の破壊ポイント構成の螺旋形状は、破壊パスにより予め定められた所定の破壊パス、特に所定の破壊ポイント構成が外側、すなわち、エッジでの固定ポイントから始まるように設計されている。この目的のために、破壊ラインは二重螺旋形状を有する。
【0016】
好適実施形態に関連して、(二重)螺旋は特にフラット(二重)螺旋、すなわち、実質的に2次元(二重)螺旋であると理解できる。二次元平面で広がる距離は、実質的にこれと垂直方向の長さに比べ大きい(少なくとも10倍)。しかし、(二重)螺旋は本質的に曲面内にあってもよい。他の実施形態において(二重)螺旋はヘリックスとして設計されてもよい。破壊ライン、特に所定の破壊ポイント構成は、破壊または変形可能であるように、円柱または円錐の表面にわたって延在する。円柱または円錐のベース本体は、2つの固定ポイント間の距離を増加させるために、変形するだけでなく、破壊されなければならない。
【0017】
こうして、張力が所定量を超えたとき、(二重)螺旋形状の破壊ライン、特に所定の破壊ポイント構成が、螺旋形状に沿って展開、変形、破壊されるベース本体を生成する、コンパクトなベース本体を有するコンパクトな破壊エレメントを与えることができる。(二重)螺旋のそれぞれの端部に第1および第2固定ポイントを配置することにより、展開されたとき、テンションエレメント上で張力を削ぐように、換言すれば破壊パスとして機能するように、(二重)螺旋の全長を使用することができる。また、(二重)螺旋は部分的に変形されるのみ、好適には破壊および変形するように引き伸ばされてもよい。破壊エレメントは、固定ポイントの領域において(二重)螺旋を展開させながら、ベース本体が最初に変形し、好適には破壊されかつ変形するように設計されてもよい。
【0018】
二重螺旋は、互いに反対方向に伸長しかつ合体する2つの螺旋からなる。これにより、ベース本体は、連続的に変形し、好適に破壊および変形する。これは、効率的に長い破壊パスが生成されると同時に、特にコンパクトな破壊エレメントの構成が可能となることを意味する。したがって、外側端部から二重螺旋の2つの部分が同時に展開することにより、二重螺旋の2つの部分の同じ方向への回転が生じる。
【0019】
ここで破壊エレメントおよびテンションエレメントとの間に回転移動が生じないので、二重螺旋が好ましい。その回転運動は、単一螺旋においてカウンタ手段を必要とする。
【0020】
付加的に、破壊ラインは、せん孔が、直線、線形、好適には中心に配置されたスチール製のストリップであってよい。それは、ジッパーのように、破壊されて開口し変形される。他の代替例は、破壊ラインとして蛇行せん孔を有するベース本体のようなシート状金属のディスクである。特に、上記した実施形態において、破壊ラインの破壊、したがって、材料ブリッジの破壊は、せん断によって生じる。例えば、破壊は材料ブリッジを切断する楔によって生じる。その楔は、破壊エレメントの固定ポイントのひとつに結合されている。
【0021】
円柱シェル形状のベース本体に関して、円柱の表面全体にわたる破壊ラインのヘリカル構成も可能である。ヘリカル破壊ラインによって、伸長状態で円柱シェル形状のベース本体はベース本体の材料の実質的に伸長したストリップとなる。
【0022】
破壊エレメントのベース本体は円盤状であるのが有利である。ディスクの直径および厚みは、保護システムの要求に応じて任意に変更可能であり、それに適応可能である。より厚いディスクには、ベース本体の変形にはより大きなエネルギーが必要になるという効果がある。破壊するだけに必要なエネルギーは所定の破壊ポイント構成を適応することによって設定可能であり、ディスクの厚さによって大きな影響を受けない。したがって、破壊エレメントは、破壊のために必要なエネルギーを設定することによって吸収が期待されかつ必要とされる異なる量のエネルギーに比較的容易に適用可能である。
【0023】
ベース本体の直径は、完全な伸長状態の破壊エレメントの長さに影響を与える。この長さは、引き伸ばされたベース本体の幅と関連している。同じ長さに対して、より広い幅のストレッチベース本体はより大きいディスク直径を要求する。
【0024】
この場合、円盤状または板状の形状は、二次元の広がりがそれに垂直な厚さより実質的に大きいことを意味する。したがって、円盤または板状のベース本体は実質的に平坦な、二次元エレメントであり、その厚さは平面の広がりよりも少なくとも10分の1だけ小さい。平坦エレメントは曲線をなすが、曲がっていないのが好ましい。円盤状のベース本体は実質的に円または楕円であるのが好ましい。円または楕円のベース本体によって、破壊ラインの特に効果的な構成、特に二重螺旋形状の所定の破壊ポイント構成が可能になる。破壊ラインのこの構成または所定の破壊ポイント構成は特に有利であることが証明された。ここで、固定ポイントとして、ベース本体の小穴または他の構成はベース本体の円または楕円形状を前提とするものではなく、これらの固定ポイントのためにベース本体の外部輪郭のみが円または楕円からずれるが、円または楕円形状に関連している。
【0025】
好適実施形態において、ベース本体は互いに平行に重なって配置された複数のディスクを有する。このディスクはサンドイッチ構造で互いに平行に結合されるか、置かれるか、分離される。有利には、ベース本体の個々のディスクは固定ポイントの領域において互いに結合され、その結果固定ポイント間に作用する張力は平行に重ねられた複数のディスクに均一に伝達され、ベース本体の複数の部分の均一な破壊および変形を生じさせる。
【0026】
有利には、ベース本体は金属、特にスチール、または、複合材料から形成される。この材料は、所定の破壊ポイント構成としてその特定の弱体化およびそのプラスチック変形性の観点で調節しやすい。その結果、ベース本体の破壊性および変形性は材料の選択によって影響される。これに関して、サンドイッチ構造で使用されるベース本体はまた異なる材料から形成されてもよく、それは異なる厚さの層を有するか、または、異なる処理が施されたものであってもよい。鋳造によって破壊エレメントを形成することがより好ましい。これにより、破壊エレメントは非常に効率的に製造することができる。
【0027】
好適に、破壊エレメントは破壊エレメントの有効な残りの長さを示すマーキングを有する。このマーキングは特に、図形要素であり、例えば、刻印またはノッチである。それは、破壊エレメントがこれまでに使用された程度を示す。したがって、破壊ラインが使用されていなければ、新たな負荷によってエレメントが再利用可能であることを容易に知ることができ、破壊エレメントの残りの負荷容量に対する不安がなくなる。したがって、破壊エレメントは安全性のリスクが生じることなく、複数回にわたって使用可能である。
【0028】
好適実施形態において、破壊エレメントはベース本体の破壊および/または変形を検出するための変形センサを有する。この変形センサは、例えば、特定の位置、例えばマーキングの位置で、所定の破壊ポイント構成の破壊を検出するセンサである。この種のセンサは電子的エレメントであり、それにより、破壊エレメントが特定の寸法にわたって変形したことの情報を電子的に処理することができる。
【0029】
特に好適には、破壊エレメントは、変形センサによって検出されたベース本体の破壊および/または変形を受信機に送信するための送信機をさらに有する。例えば、これは責任者またはメンテナンスサービスに対するアラーム信号であってもよい。彼らは、その後、破壊エレメントをチェックし交換することができる。こうして、例えば、雪崩警告を発す得ることが可能である。
【0030】
有利には、二重螺旋形状の所定の破壊ポイント構成は中心を有する。そこで2つの対向する螺旋が合体する。この中心は2つの螺旋が互いに結合する位置であり、通常は破壊エレメントの中心に配置されて、二重螺旋を形成する2つの螺旋が対称的に配置可能となる。この中心は、長円穴の形状で、2つの所定の破壊エレメントによって画定され、このスロット形状の所定の破壊ポイントが中心の周りの領域に配置されてもよい。このスロット形状の所定の破壊ポイントは好適には、2つのスロット形状のせん孔、ノッチまたは貫通孔によって形成され、例えば、“Taji”または“Hotu”YinおよびYang記号を形成して、二重螺旋の中心の周りに配置される。所定の破壊ポイントによって、それは破壊エレメントの中心の周りに配置され、破壊エレメントは完全に伸びるまで画定された方向に展開し、大きな負荷に抵抗する。破壊エレメントの展開方向に影響される、中心に配置された所定の破壊ポイントの好適構成は、ベース本体の明確に画定された伸長を容易にする。それは、伸長状態においてベース本体を弱体化させる、中心のすぐ周りの領域内でのベース本体の破壊を防止する。したがって、所定の破壊ポイントの好適構成は、大きい負荷に対抗する破壊エレメントを形成するのに役立つ。
【0031】
本願発明に従う破壊エレメントによれば、特定の要求に対する破壊パスまたは破壊距離およびエネルギー吸収容量を簡単に調節可能である。これは、例えば、所定の破壊ポイント構成に沿ったベース本体の弱体化の程度、ベース本体のサイズ、ベース本体用の材料の選択、および、破壊ライン特に所定の破壊ポイント構成のパターンを通じて達成される。
【0032】
本願発明に従うキャッチデバイス、特に、落石、土砂崩れ、土流、地滑り、または、倒木用のキャッチデバイスは、上記に従う破壊エレメントを有する。この破壊エレメントによって、特定の破壊衝撃に対してキャッチデバイスを保護することが可能になる。その結果、本願発明に従うキャッチデバイスは、強い衝撃にさらされた場合でも信頼性が向上する。
【0033】
使用される保持ロープの負荷容量を超える大きな衝撃に対して改良された、小型で広く応用可能なキャッチデバイスを与えるという本願発明の他の目的が達成される。
【0034】
破壊エレメントは、第1固定ポイントがバリア特に安全ネットによって動作的に結合され、第2固定ポイントがキャッチデバイスのアンカーによって動作的に結合されるように、好適に配置される。こうして、破壊エレメントはバリアとアンカーとの間で張力に沿って配置され、その結果、バリアに達する運動エネルギーに効率的に作用する。
【0035】
キャッチデバイスに複数の平行な破壊エレメントを使用することも可能である。この場合、破壊エレメントは、その抵抗および破壊長さの観点から互いに配列され、すなわち、同じか、または、故意に異なる値を有する。
【0036】
本願発明はさらに上記した実施形態に従う破壊エレメントを製造するための方法に関する。当該方法において板状のベース本体は、非機械的技術、特に、レーザカッティングまたは水圧カッティングを使った所定の破壊ポイント構成を具備する。破壊エレメントを製造するための本発明にかかる代替的な方法において、板状ベース本体はマシニング技術、特に、のこ盤またはボール盤を使った所定の破壊ポイント構成を具備する。
【0037】
ベース本体が単一のディスクである場合、本願発明に従う方法を使って大きな破壊エレメントを作成することができる。したがって、固定ポイントがすでにベース本体上に設けられていれば、破壊エレメントは追加的なフィニッシュ処理が不要である。
【0038】
破壊エレメントを製造する他の方法は、溝として形成された破壊ラインに沿って材料ブリッジを作成することを有する。当該材料ブリッジは溝に沿った個々の溶接または溶接ポイントによって作成される。この溶接ポイントは、所定の量の負荷にさらされたとき溝に沿って破壊され、それによってベース本体が変形するように形成される。
【0039】
上述した破壊エレメントは、上記した本発明の目的を達成し、かつ、従来技術の欠点を克服する。特にコンパクトで、テンションロープへのダメージを防止する破壊エレメントを与えることができ、たとえ破壊エレメントがすでに最初の負荷に晒されていても破壊エレメントの残りの負荷容量の信頼できる評価を可能にする。その動作モードは摩擦がなく移動部品がないため、破壊エレメントはドリフトによって全く影響をうけない。
【0040】
本願発明の他の有利な特徴および効果は以下の図面を使った説明および特許請求の範囲の全体から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、好適な第1実施形態に従う破壊エレメントを示す。
図2図2は、好適な第2実施形態に従う破壊エレメントを示す。
図3図3は、好適な第3実施形態に従う破壊エレメントを示す。
図4図4は、好適な第4実施形態に従う破壊エレメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、好適な第1実施形態に従う破壊エレメント10を示す。破壊エレメント10は、円盤状のベース本体12を有する。それは実質的に円形であり、反対側に第1の固定ポイント14および第2の固定ポイントを有する。本実施形態において、固定ポイント14、16は小穴によって形成されている。それはテンションロープ、テンションロッドまたは類似のテンションエレメントを受設するように設計されている。例えば、テンションエレメントはシャックルまたは類似の固定デバイスによって固定ポイント14、16に取り付け可能である。
【0043】
固定ポイント14、16は、2つの固定ポイント14、16を直線で結ぶ最短経路に沿って計測した距離Aだけ、互いに離隔されている。この距離Aは、固定ポイント14、16に取り付けられたテンションエレメント14、16が互いに張力に晒された場合に、固ポイント14、16間に作用する張力の方向に沿っている。この場合、張力は、固定ポイント14、16が互いに離れようとするがベース本体12の材料の強度によって妨げられるという効果を有する。
【0044】
ベース本体12は所定の破壊ポイント構成18を有する。図1に示す本実施形態において、それは、複数のノッチ形式の減少した断面の材料ブリッジのウエブによって形成されている。図1に示す実施形態において、所定の破壊ポイント構成18は螺旋22で形成されている。ここで、図1に示す実施形態の螺旋22は第1螺旋24および第2螺旋26からなる二重螺旋を形成する。負荷が加えられたとき、ベース本体が固定ポイント14、16の領域で壊れ始め、この破壊がベース本体12を変形しながら内側に続くように、本実施形態に従う螺旋22は構成される。
【0045】
所定の破壊ポイント構成18のために、固定ポイント14、16間で、所定の破壊ポイント構成18に沿った張力が所定の量を超えたときに、ベース本体12が螺旋形状を破壊する。同時に、ベース本体12の材料は変形され、所定の破壊ポイント構成18によって画定された螺旋22が展開される。すなわち、材料はベース本体12の破壊および変形の効果の下で張力に沿って引き伸ばされる。こうして、固定ポイント14、16に印加される張力が所定の量を超えるとすぐに、固定ポイント14、16間の距離Aは、ベース本体12の連続する破壊および変形によって増加する。
【0046】
張力が保持された状態で、螺旋22が完全に展開されかつベース本体12が完全に引き伸ばされるまで、ベース本体12はベース本体12を破壊および変形することにより展開される。この状態で、破壊エレメント10は最長となる。破壊エレメント10は、破壊エレメント10に取り付けられたテンションエレメントが与えられるように設計される。ここで、固定エレメント14、16間の距離にわたって対応する張力の印加を増加させる破壊長さまたは破壊パスが、完全に展開した状態の螺旋の長さ全体と、図1に示す通常状態の固定ポイント14、16の距離Aとの差によって画定される。この破壊長さは、通常状態でのベース本体12の広がりに比べて非常に長い。したがって、コンパクトな構造の破壊エレメントが可能となると同時に、破壊エレメント10が設置されたキャッチデバイスに作用する大きな運動エネルギーを吸収することができる。
【0047】
ベース本体12の部分的な破壊および変形に対してマーキング28が与えられる。当該マーキングは、図1に示す例では所定の破壊ポイント構成18のいずれかの側面上で対向する三角形として示されている。破壊エレメント10が使用されてベース本体12がすでに部分的に破壊され変形している場合、マーキング28は、破壊エレメント10が次に荷重されたとき、破壊エレメント10は上述した方法でどのくらいの運動エネルギーを変形エネルギーに変換することができるかを示す。図1に示すマーキング28は一例に過ぎず、所定の破壊ポイント構成に沿った任意の位置に設けることが可能である。破壊エレメント10によってすでに変換された運動エネルギーのより正確な表示を与えるように複数のマーキングを設けることも可能である。例えば、変形センサとして使用可能な接触センサがマーキング28の位置、または他の複数の位置に配置されてよい。これらの電子エレメントによって、破壊エレメントの破壊または変形の状態を遠隔的にチェックすることも可能である。
【0048】
図2は、破壊エレメント10の他の実施形態を示す。ここで、破壊エレメント10のほとんどが図1に示す実施形態に対応している。以下の説明において同じエレメントは、同じ符号で示す。
【0049】
図1に示す実施形態と異なり、図2に示す実施形態の所定の破壊ポイント構成20は、複数のドリル止まり穴により形成されたせん孔により形成される。代替的に、所定の破壊ポイント構成20のドリル止まり穴は貫通孔であってもよい。この例において、所定の破壊ポイント構成20は所定の破壊ポイント構成の所望の破壊ラインに沿って配置された貫通孔によって形成される。
【0050】
図2に記載の実施形態と異なり、図3に記載の破壊エレメント10は、2つのスロット形状の所定の破壊ポイント30を有する。それは、螺旋22の中心を包囲する。この所定の破壊ポイント30は、ベース本体12の中心領域が未展開となることを容易にする。したがって、特に大きな荷重に対する破壊エレメント10の抵抗が増加する。それ以外は、図3に示す実施形態は、図2に示すものと同じである。
【0051】
図4に示す実施形態は、第1および第2固定ポイント14、16の構成の観点で、図3の実施形態と異なる。図1から3に示す実施形態は第1固定ポイント14および第2固定ポイント16としてひとつの小穴を有するが、図4に示す実施形態は第1の固定ポイント14として2つの小穴14.1、14.2を使用し、第2の固定ポイント16として2つの小穴16.1、16.2を使用する。これにより、図1から3に示すような単一小穴の場合よりもより大きな負荷を破壊エレメントに伝達することができる。それ以外は、図4に示す実施形態は、図3に示すものと同じである。
【0052】
図1に示す所定の破壊ポイント構成18のノッチ、および、図2、3、4に示す所定の破壊ポイント構成20のドリル止まり穴またはせん孔は、これらのエレメントに沿ってベース本体12の目標の弱体化を生じさせる。これにより、ベース本体12は所定の破壊ポイント構成18、20によって予め定められるこの破壊ラインに沿って破壊される。それにより、ベース本体12の材料の特に効果的な使用が可能となる。例えば、ベース本体12が所定の螺旋形状で展開し、それによって、コンパクトな通常状態とともに、破壊エレメントの比較的長い破壊長さが与えられる。
【0053】
しかし、ベース本体12は、図1から4に示す実施形態と異なる形状を有してよい。所定の破壊ポイント構成18、20は螺旋以外の形状を有してもよい。特に、ベース本体12に対して、固定ポイント14、16に作用する張力が対応して増加する場合に、ベース本体の連続的破壊および変形により固定ポイント間の距離を増加させるために、故意に弱体化させた材料を挿入するか、所定の破壊ラインに沿ってジオメトリックに弱体化することにより、破壊可能な矩形形状を有することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】欧州特許第1156158号明細書
【特許文献2】欧州特許第1302595号明細書
【特許文献3】国際公開第2009/137951号公報
【特許文献4】欧州特許第14690130号明細書
図1
図2
図3
図4