(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持体の前記主面と反対側の前記支持体の裏面に設けられた励起光吸収層をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の放射線像変換パネル。
前記輝尽性蛍光体層は、前記柱状結晶が螺旋状に積層した螺旋構造を前記支持体側に有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の放射線像変換パネル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、放射線像変換パネルが例えば歯科用イメージングプレートとして用いられる場合、放射線像変換パネルは患者の口腔内に挿入される。口腔は立体的であるので、詳細な情報を画像として取得するためには、撮影ごとに患者の口腔の形状に合わせて放射線像変換パネルが湾曲される必要がある。
【0006】
しかしながら、上述の放射線像変換パネルでは、損傷を低減するために保護膜の硬度について検討されているが、放射線像変換パネルとしての可撓性に着目されていない。したがって、放射線像変換パネルが十分な可撓性を有しない場合、放射線像変換パネルは患者の口腔の形状に合わせて変形できないので、撮影のセッティングが困難である。また、十分な可撓性を有しない放射線像変換パネルが湾曲されて使用されると、蛍光体層にクラックが生じたり、保護膜に破断が生じたりするおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スキャナ装置での読み取り及びハンドリングなどの使用による損傷を低減可能であるとともに、湾曲した状態での使用が可能な構造を有する放射線像変換パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る放射線像変換パネルは、可撓性を有する支持体と、支持体の主面上に設けられ、複数の柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層と、輝尽性蛍光体層上に設けられた第1保護膜と、第1保護膜上に設けられた第2保護膜と、を備え、輝尽性蛍光体層は、EuをドープしたCsBrを含む輝尽性蛍光体から構成され、第1保護膜は、輝尽性蛍光体層の上面及び側面を覆い、第2保護膜の鉛筆硬度は、第1保護膜の鉛筆硬度以下であり、曲げ半径が最小で15mmまで湾曲させても第2保護膜の破断が生じない可撓性を有する。
【0009】
この放射線像変換パネルにおいては、可撓性を有する支持体と、支持体の主面上に設けられ、複数の柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層と、輝尽性蛍光体層の上面及び側面を覆うとともに複数の柱状結晶の間隙を埋めるように設けられた第1保護膜とを備えている。さらに、放射線像変換パネルは、第1保護膜上に設けられた第2保護膜を備えている。これにより、使用による損傷を低減することができる。また、第2保護膜の鉛筆硬度は、第1保護膜の鉛筆硬度以下である。これにより、第2保護膜の可撓性(伸び率)は第1保護膜の可撓性(伸び率)以上となり、第2保護膜は、第1保護膜の湾曲に対して追従可能となる。このため、放射線像変換パネルを曲げ半径が15mmまで湾曲させて使用した場合に第2保護膜が破断することを抑制できる。このように、放射線像変換パネルは、使用による損傷を低減可能であるとともに、湾曲した状態での使用が可能となる。
【0010】
第1保護膜は、輝尽性蛍光体層において複数の柱状結晶の間隙を埋めるように設けられてもよい。これにより、第1保護膜によって複数の柱状結晶間の隙間が埋められるので、放射線像変換パネルが湾曲された際に、破断の起点をなくすことができる。また、複数の柱状結晶が第1保護膜を介して一体化することにより、支持体の湾曲に対して輝尽性蛍光体層が追従できるようになる。
【0011】
支持体は、樹脂フィルムから構成されてもよい。また、支持体は、ポリイミドから構成されてもよい。ポリイミドなどの樹脂フィルムから構成される支持体は、可撓性に優れるので、放射線像変換パネルの可撓性を向上できる。
【0012】
第1保護膜は、耐湿性の保護膜であってもよい。第1保護膜によって輝尽性蛍光体層の上面及び側面が覆われることにより、耐湿性を向上することができ、輝尽性蛍光体層が空気中の水蒸気を吸湿するのを抑制できる。その結果、輝尽性蛍光体層が潮解するのを防止できる。
【0013】
第1保護膜は、ポリパラキシリレンから構成されてもよい。ポリパラキシリレンは耐湿性に優れるので、ポリパラキシリレンから構成される第1保護膜によって輝尽性蛍光体層の上面及び側面が覆われることにより、耐湿性を向上することができ、輝尽性蛍光体層が空気中の水蒸気を吸湿するのを抑制できる。その結果、輝尽性蛍光体層が潮解するのを防止できる。
【0014】
第2保護膜は、耐擦傷性の保護膜であってもよい。第2保護膜が設けられることにより、使用による損傷を低減できる。また、第2保護膜は、ウレタンアクリル系樹脂から構成されてもよい。ウレタンアクリル系樹脂は、耐擦傷性及び可撓性に優れ、鉛筆硬度が小さいので、ウレタンアクリル系樹脂から構成される第2保護膜は、使用による損傷をさらに低減でき、第1保護膜の湾曲に対する追従性をさらに向上できる。このため、放射線像変換パネルの使用による損傷をさらに低減可能とするとともに、湾曲した状態での使用による第2保護膜の破断を抑制できる。
【0015】
支持体の主面と反対側の支持体の裏面に設けられた励起光吸収層をさらに備えてもよい。この構成によれば、輝尽性蛍光体層を透過した励起光を、励起光吸収層により吸収することができる。このため、輝尽性蛍光体層及び支持体を透過した励起光を吸収することができるので、励起光の散乱及び反射によってコントラストが低下するのを軽減できる。
【0016】
輝尽性蛍光体層は、柱状結晶が螺旋状に積層した螺旋構造を支持体側に有してもよい。この構成によれば、柱状結晶の螺旋構造により反射層が形成される。このため、輝尽性蛍光体層に励起光が照射されることにより輝尽性蛍光体層において放出された光のうち、支持体側に導光された光を螺旋構造によって反射できるので、反射層を設けることなく、輝尽性蛍光体層の上面から出射される光の光量を増加することが可能となる。また、複数の柱状結晶はそれぞれ、螺旋構造を有している。このため、柱状結晶において放出された光は、その柱状結晶が有する螺旋構造によって反射されるので、輝尽性蛍光体層と反射層との間において散乱することなく、輝尽性蛍光体層の上面から出射される光の光量を増加することができる。
【0017】
支持体と輝尽性蛍光体層との間に設けられた輝尽発光反射層をさらに備えてもよい。この構成によれば、輝尽性蛍光体層に励起光が照射されることにより輝尽性蛍光体層において放出された光のうち、支持体側に導光された光を輝尽発光反射層によって反射し、輝尽性蛍光体層の上面側に出射される光の光量を増加することができる。
【0018】
第1保護膜は、支持体の側面上まで延びていてもよい。また、第1保護膜は、支持体及び輝尽性蛍光体層の全体を覆うように設けられてもよい。この構成によれば、第1保護層によって支持体及び輝尽性蛍光体層の全体が覆われるので、耐湿性をさらに向上でき、輝尽性蛍光体層の潮解をさらに防止できる。
【0019】
第2保護膜は、第1保護膜を覆うように設けられてもよい。この構成によれば、第1保護膜における損傷を低減することができる。
【0020】
支持体の主面と反対側の支持体の裏面に設けられた第3保護膜をさらに備えてもよく、第3保護膜は耐擦傷性の保護膜であってもよい。この構成によれば、支持体の裏面における損傷を低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スキャナ装置での読み取り及びハンドリングなどの使用による損傷を低減可能であるとともに、湾曲した状態で使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る放射線像変換パネルの実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る放射線像変換パネルの構成を示す概略側断面図である。
図1に示されるように、放射線像変換パネル10は、入射したX線などの放射線Rを光に変換して検出するためのパネルであって、例えば矩形板形状を呈している。放射線像変換パネル10の長さは100mm程度、幅は100mm程度、厚さは0.4mm程度である。放射線像変換パネル10は、例えば歯科用のイメージングプレートとして用いられる。また、放射線像変換パネル10は、不図示のHeNeレーザ及びPMT(Photomultiplier Tube;光電子増倍管)などと組み合わせることによって、放射線イメージセンサとして用いられる。この放射線像変換パネル10は、支持体1と、輝尽性蛍光体層2と、第1保護膜3と、第2保護膜4と、を備えている。
【0025】
支持体1は、可撓性を有する基材であり、例えば矩形状を呈している。支持体1は、例えばポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、LCP(液晶ポリマー)、PA(ポリアミド)、PES(ポリエーテルサルフォン)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、厚さ200μm以下の薄板ガラス、厚さ100μm以下のSUS箔から構成されている。支持体1の厚さは例えば10μm以上であり、例えば500μm以下である。この支持体1は、一定の可撓性を有するものであればよく、樹脂フィルムが好ましい。
【0026】
輝尽性蛍光体層2は、入射した放射線Rを吸収して蓄積し、励起光が照射されることによって蓄積している放射線Rのエネルギーに応じた光Lを放出する層である。輝尽性蛍光体層2は、支持体1の表面1a(主面)上に設けられ、その厚さは例えば80μm以上であり、例えば600μm以下である。この輝尽性蛍光体層2は、例えばEu(ユウロピウム)をドープしたCsBr(臭化セシウム)(以下、「CsBr:Eu」という。)から構成され、複数の柱状結晶25(針状結晶ともいう。)が林立した構造を有する。なお、CsBr:Euは吸湿性が高く、露出した状態では空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまう。また、輝尽性蛍光体層2に照射される励起光の波長範囲は、550〜800nm程度であり、輝尽性蛍光体層2によって放出される光Lの波長範囲は、350〜500nm程度である。
【0027】
第1保護膜3は、耐湿性の保護膜であり、輝尽性蛍光体層2が空気中の水蒸気を吸湿するのを抑制するための防湿膜である。第1保護膜3は、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2cを覆い、かつ、輝尽性蛍光体層2の複数の柱状結晶25の間隙を埋めるように設けられている。第1実施形態では、第1保護膜3は、支持体1及び輝尽性蛍光体層2の全体を覆うように設けられている。換言すると、第1保護膜3は、支持体1の表面1a、裏面1b及び側面1c上、並びに、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2c上に設けられ、支持体1及び輝尽性蛍光体層2の全体を包み込んでいる。第1保護膜3の厚さは例えば2μm以上であり、例えば20μm以下である。また、第1保護膜3の旧JIS K5400に準拠した鉛筆硬度(以下、単に「鉛筆硬度」という。)は、2H程度である。この第1保護膜3は、例えばポリパラキシリレン及びポリ尿素などの有機膜、又は、上記有機膜上に窒化膜(例えばSiN、SiON)及び炭化膜(例えばSiC)などを積層した有機膜と無機膜との混合膜から構成されている。有機膜上に無機膜を形成することで耐湿性をより向上させることができる。
【0028】
第2保護膜4は、耐擦傷性の保護膜であり、ハンドリング及びスキャナ装置による読み取り時に受ける損傷を防止するための保護膜である。第2保護膜4は、第1保護膜3上に設けられている。第1実施形態では、第2保護膜4は、第1保護膜3の全体を覆うように設けられている。換言すると、第2保護膜4は、支持体1の表面1a、裏面1b及び側面1c上に設けられ、支持体1、輝尽性蛍光体層2及び第1保護膜3の全体を包み込んでいる。第2保護膜4の厚さは例えば2μm以上であり、例えば20μm以下である。また、第2保護膜4の鉛筆硬度は、第1保護膜3の鉛筆硬度以下であり、例えば2H以下である。この第2保護膜4は、例えばウレタンアクリル系樹脂から構成されており、耐擦傷性及び可撓性に優れている。第2保護膜4として、例えばイサム塗料株式会社のアクセルスピカクリヤーT及び関西ペイント株式会社のスーパーダイヤモンドクリヤーQなどが用いられる。
【0029】
以上のように構成された放射線像変換パネル10では、第2保護膜4及び第1保護膜3を介して放射線R(放射線像)が入射すると、入射した放射線Rが輝尽性蛍光体層2によって吸収され蓄積される。その後、励起光として赤色レーザ光などが輝尽性蛍光体層2に照射されると、輝尽性蛍光体層2によって蓄積されている放射線Rのエネルギーに応じた光Lが柱状結晶25に導光されて、先端から放出される。そして、輝尽性蛍光体層2から放出された光Lは、第1保護膜3及び第2保護膜4を順に透過して出射する。
【0030】
ここで、放射線像変換パネル10の製造方法の一例を説明する。まず、支持体1の表面1aに、CsBr:Euの柱状結晶25を真空蒸着法などの気相堆積法によって成長させ、輝尽性蛍光体層2を形成する。輝尽性蛍光体層2は、塗布でなく気相堆積法によって形成されることにより、複数の柱状結晶25を有する構造となる。次に、CVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法などの気相堆積法によって、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2cを覆うように第1保護膜3を形成する。すなわち、輝尽性蛍光体層2が形成された支持体1をCVD装置に格納し、第1保護膜3を10μm程度の厚さで成膜する。このとき、第1保護膜3は、塗布でなく気相堆積法によって形成されるので、輝尽性蛍光体層2の複数の柱状結晶25の間隙にも形成される。その後、塗装機を用いて第1保護膜3上に例えばアクリルウレタン系の樹脂を塗布し、塗布した樹脂を硬化させることにより第2保護膜4を形成する。以上のようにして、放射線像変換パネル10が作製される。
【0031】
図2の(a)は放射線像変換パネル10の曲げた状態を示す図、(b)は比較例の放射線像変換パネル100の曲げた状態を示す図である。放射線像変換パネル100は、支持体101と、複数の柱状結晶を有する輝尽性蛍光体層102とを備える放射線像変換パネルであって、第1保護層及び第2保護層を有しない点で放射線像変換パネル10と相違する。輝尽性蛍光体層2及び輝尽性蛍光体層102は、いずれも複数の柱状結晶からなり、その複数の柱状結晶の間には間隙を有する。
【0032】
放射線像変換パネル100は、保護層を有しないので、支持体101の裏面側に曲げられた際に輝尽性蛍光体層102の柱状結晶が開いて、柱状結晶間の間隙を起点として、輝尽性蛍光体層102にクラックが生じてしまう。一方、放射線像変換パネル10では、輝尽性蛍光体層2の柱状結晶25の間隙に第1保護膜3が設けられているので、支持体1の裏面1b側に曲げられた場合でも柱状結晶25の開きが抑えられ、輝尽性蛍光体層2にクラックが生じることを抑制できる。
【0033】
図3は、スキャナ通過試験及び曲げ試験の試験結果を示す図である。スキャナ通過試験は、スキャナ装置を用いて各試料を100回通過させることにより、第2保護膜4の割れが生じたか否かを確認する試験である。曲げ試験は、各試料を曲げ半径15mmで曲げ伸ばしすることにより、第2保護膜4の割れが生じたか否かを確認する試験である。図中の「○」は第2保護膜4の割れが発生しなかったことを意味し、「×」は第2保護膜4の割れが発生したことを意味する。
【0034】
試料A〜試料Dはいずれも放射線像変換パネルであって、第2保護膜4のみが異なる。試料Aは、熱硬化により形成され、鉛筆硬度がHBの第2保護膜4(関西ペイント株式会社 スーパーダイヤモンドクリヤーQ)を用いた放射線像変換パネルである。試料Bは、熱硬化により形成され、鉛筆硬度が2Hの第2保護膜4(JUJO APインキ)を用いた放射線像変換パネルである。試料Cは、UV硬化により形成され、鉛筆硬度が3Hの第2保護膜4(出光興産株式会社 X−AHC−010 UV硬化品)を用いた放射線像変換パネルである。試料Dは、湿気硬化により形成され、鉛筆硬度が7Hの第2保護膜4(Nittobo SSGコート)を用いた放射線像変換パネルである。なお、試料A〜試料Dの支持体1は、ポリイミドからなり、その厚さは125μmである。試料A〜試料Dの輝尽性蛍光体層2は、CsBr:Euから構成され、その厚さは180μmである。試料A〜試料Dの第1保護膜3は、ポリパラキシリレンから構成され、鉛筆硬度は2Hで、厚さは15μmである。
【0035】
図3に示されるように、試料C及び試料Dでは、スキャナ通過試験及び曲げ試験の結果、第2保護膜4に割れが生じた。このように、鉛筆硬度が高い膜を第2保護膜4として用いた場合、可撓性が損なわれるので第2保護膜4が破断する可能性が高くなる。
【0036】
一方、試料A及び試料Bでは、スキャナ通過試験及び曲げ試験の結果、第2保護膜4に割れが生じなかった。試料A及び試料Bの第2保護膜4の鉛筆硬度は、第1保護膜3の鉛筆硬度以下であるので、第2保護膜4の可撓性(伸び率)は第1保護膜3の可撓性(伸び率)以上となり、第2保護膜4は第1保護膜3の湾曲に対して追従可能である。このため、試料A及び試料Bをスキャナ装置に複数回通過させ、試料A及び試料Bを曲げ半径が15mmで曲げ伸ばした場合でも、第2保護膜4の破断が抑制された。
【0037】
以上説明したように、放射線像変換パネル10は、可撓性を有する支持体1と、支持体1の表面1a上に設けられ、複数の柱状結晶25からなる輝尽性蛍光体層2と、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2cを覆うとともに柱状結晶25の間隙を埋めるように設けられた第1保護膜3とを備えている。これにより、第1保護膜3によって複数の柱状結晶25間の隙間が埋められるので、放射線像変換パネル10が湾曲された際に、破断の起点をなくすことができる。また、複数の柱状結晶25が第1保護膜3を介して一体化することにより、支持体1の湾曲に対して輝尽性蛍光体層2が追従できるようになる。また、第1保護膜3によって輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2cが覆われることにより、耐湿性を向上することができ、輝尽性蛍光体層2が潮解するのを防止できる。
【0038】
さらに、放射線像変換パネル10は、第1保護膜3上に設けられた第2保護膜4を備えている。これにより、使用による損傷を低減することができる。また、第2保護膜4の鉛筆硬度は、第1保護膜3の鉛筆硬度以下である。この場合、第2保護膜4の可撓性(伸び率)は第1保護膜3の可撓性(伸び率)以上となり、第2保護膜4は、第1保護膜3の湾曲に対して追従可能となる。このため、放射線像変換パネル10を曲げ半径が15mmまで湾曲させて使用した場合に第2保護膜4が破断することを抑制できる。放射線像変換パネル10が例えば歯科用イメージングプレートとして用いられる場合、放射線像変換パネル10は口腔内の形状に追従することが可能となり、撮影時のセッティングを容易化できる。その結果、口腔内の詳細な画像を取得することが可能となる。
【0039】
また、放射線像変換パネル10の厚さは、既存のGOS:TbやCsI:Tlなどの瞬時発光性蛍光体とCCD(Charge Coupled Device)又はFPD(Flat Panel Detector)とを組み合わせて形成されている放射線検出器と比べて薄いので、放射線像変換パネル10を口腔内に入れて湾曲させて撮影対象部位に接触させる際における患者の負担の軽減が可能である。
【0040】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る放射線像変換パネルの構成を示す概略側断面図である。
図4に示されるように、第2実施形態の放射線像変換パネル10は、第2保護膜4が覆う領域において、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と相違している。
【0041】
第2実施形態の放射線像変換パネル10では、第1保護膜3は、支持体1の表面1a、裏面1b及び側面1c上、並びに、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2c上に設けられ、支持体1及び輝尽性蛍光体層2の全体を包み込んでいる。第2保護膜4は、支持体1の表面1a及び側面1cを覆うように第1保護膜3上に設けられ、支持体1の裏面1bの上には設けられない。換言すれば、第2保護膜4は、支持体1の裏面1b上に開口4dを有している。
【0042】
以上の第2実施形態の放射線像変換パネル10によっても、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と同様の効果が奏される。
【0043】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態に係る放射線像変換パネルの構成を示す概略側断面図である。
図5に示されるように、第3実施形態の放射線像変換パネル10は、第1保護膜3が覆う領域において、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と相違している。
【0044】
第3実施形態の放射線像変換パネル10では、第1保護膜3は、支持体1の表面1a及び側面1c、並びに、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2cを覆うように輝尽性蛍光体層2上に設けられ、支持体1の裏面1bの上には設けられない。換言すれば、第1保護膜3は、支持体1の裏面1b上に開口3dを有している。また、第2保護膜4は、支持体1の表面1a、裏面1b及び側面1cを覆うように第1保護膜3上に設けられ、支持体1、輝尽性蛍光体層2及び第1保護膜3の全体を包み込んでいる。また、第2保護膜4は、開口3dを介して支持体1の裏面1bに接触を成している。
【0045】
以上の第3実施形態の放射線像変換パネル10によっても、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と同様の効果が奏される。
【0046】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態に係る放射線像変換パネルの構成を示す概略側断面図である。
図6に示されるように、第4実施形態の放射線像変換パネル10は、第1保護膜3及び第2保護膜4が覆う領域において、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と相違している。
【0047】
第4実施形態の放射線像変換パネル10では、第1保護膜3は、支持体1の表面1a及び側面1c、並びに、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2cを覆うように輝尽性蛍光体層2上に設けられ、支持体1の裏面1bの上には設けられない。第2保護膜4は、支持体1の表面1a及び側面1cを覆うように第1保護膜3上に設けられ、支持体1の裏面1bの上には設けられない。換言すれば、第1保護膜3は、支持体1の裏面1b上に開口3dを有し、第2保護膜4は、支持体1の裏面1b上に開口4dを有している。このため、支持体1の裏面1bは、保護膜で覆われておらず、露出している。
【0048】
以上の第4実施形態の放射線像変換パネル10によっても、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と同様の効果が奏される。
【0049】
[第5実施形態]
図7は、第5実施形態に係る放射線像変換パネルの構成を示す概略側断面図である。
図7に示されるように、第5実施形態の放射線像変換パネル10は、第2保護膜4が覆う領域及び第3保護膜6を備える点において、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と相違している。
【0050】
第5実施形態の放射線像変換パネル10では、第1保護膜3は、支持体1の表面1a、裏面1b及び側面1c上、並びに、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2c上に設けられ、支持体1及び輝尽性蛍光体層2の全体を包み込んでいる。第2保護膜4は、支持体1の表面1aを覆うように第1保護膜3上に設けられ、支持体1の裏面1b及び側面1cの上には設けられない。また、第3保護膜6は、支持体1の裏面1bを覆うように第1保護膜3上に設けられている。第3保護膜6は、第2保護膜4と同様に、耐擦傷性の保護膜であり、放射線Rの照射後の読み取り過程における表面保護のための保護膜である。第3保護膜6の厚さは例えば2μm以上であり、例えば20μm以下である。また、第3保護膜6の鉛筆硬度は、第2保護膜4の鉛筆硬度と同等であって、第1保護膜3の鉛筆硬度以下である。第3保護膜6は、第2保護膜4と同じ材料で構成されてもよい。
【0051】
以上の第5実施形態の放射線像変換パネル10によっても、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と同様の効果が奏される。
【0052】
[第6実施形態]
図8は、第6実施形態に係る放射線像変換パネルの構成を示す概略側断面図である。
図8に示されるように、第6実施形態の放射線像変換パネル10は、第1保護膜3が覆う領域において、上述した第5実施形態の放射線像変換パネル10と相違している。
【0053】
第6実施形態の放射線像変換パネル10では、第1保護膜3は、支持体1の表面1a上、並びに、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2c上に設けられ、支持体1の裏面1b及び側面1cの上には設けられない。第2保護膜4は、支持体1の表面1aを覆うように第1保護膜3上に設けられ、支持体1の裏面1b及び側面1cの上には設けられない。また、第3保護膜6は、支持体1の裏面1bを覆うように裏面1b上に設けられている。このため、支持体1の側面1cは、保護膜で覆われておらず、露出している。
【0054】
以上の第6実施形態の放射線像変換パネル10によっても、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と同様の効果が奏される。
【0055】
[第7実施形態]
図9は、第7実施形態に係る放射線像変換パネルの構成を示す概略側断面図である。
図9に示されるように、第7実施形態の放射線像変換パネル10は、第2保護膜4が覆う領域において、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と相違している。
【0056】
第7実施形態の放射線像変換パネル10では、第1保護膜3は、支持体1の表面1a、裏面1b及び側面1c上、並びに、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2c上に設けられ、支持体1及び輝尽性蛍光体層2の全体を包み込んでいる。第2保護膜4は、支持体1の表面1aを覆うように第1保護膜3上に設けられ、支持体1の裏面1b及び側面1cの上には設けられない。
【0057】
以上の第7実施形態の放射線像変換パネル10によっても、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と同様の効果が奏される。
【0058】
[第8実施形態]
図10は、第8実施形態に係る放射線像変換パネルの構成を示す概略側断面図である。
図10に示されるように、第8実施形態の放射線像変換パネル10は、第1保護膜3が覆う領域において、上述した第5実施形態の放射線像変換パネル10と相違している。
【0059】
第8実施形態の放射線像変換パネル10では、第1保護膜3は、支持体1の表面1a及び側面1c、並びに、輝尽性蛍光体層2の上面2a及び側面2cを覆うように輝尽性蛍光体層2上に設けられ、支持体1の裏面1bの上には設けられない。第2保護膜4は、支持体1の表面1aを覆うように第1保護膜3上に設けられ、支持体1の裏面1b及び側面1cの上には設けられない。また、第3保護膜6は、支持体1の裏面1bを覆うように裏面1b上に設けられている。換言すれば、第1保護膜3は、支持体1の裏面1b上に開口3dを有し、第3保護膜6は、開口3dを介して支持体1の裏面1bに接触を成している。
【0060】
以上の第8実施形態の放射線像変換パネル10によっても、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と同様の効果が奏される。
【0061】
[第9実施形態]
図11は、第9実施形態に係る放射線像変換パネルの構成を示す概略側断面図である。
図11に示されるように、第9実施形態の放射線像変換パネル10は、輝尽性蛍光体層2の構成において、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と相違している。すなわち、第9実施形態の放射線像変換パネル10では、輝尽性蛍光体層2は、複数の柱状結晶25が林立した構造を有し、この複数の柱状結晶25によって構成された反射層21及び柱状層22を有している。輝尽性蛍光体層2の厚さは、例えば50μm〜1000μm程度で、反射層21はそのうちの約1%〜10%程度を占める厚さで、約5μm〜約50μm程度の厚さを有している。
【0062】
柱状結晶25は輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)の結晶を成長させて得たもので、支持体1側の根元部分が螺旋構造部23となり、螺旋構造部23よりも上側(上面2a側)の部分が柱状部24となっている。各柱状結晶25において、螺旋構造部23と柱状部24とは、輝尽性蛍光体の結晶が連続して積層することにより一体的に形成されている。なお、柱状結晶25は、螺旋構造部23の外径よりも柱状部24の外径が小さく、先端側(支持体1と反対側)に行くほど太くなるテーパー状に形成されている。そして、最先端部は尖頭状になっているので、尖頭部分を除いた柱状部24がテーパー状に形成される。
【0063】
螺旋構造部23は、輝尽性蛍光体の結晶が支持体1の表面1aから螺旋状に積層されて構成されたもので、中心軸Xの回り1周分の部分(螺旋ループ)が表面1aと直交する方向にほぼ規則的に形成された螺旋構造を有している。
図12では、23a,23bで示された範囲が1つ1つの螺旋ループを構成している。表面1aと直交する方向の螺旋ループの寸法(以下「螺旋ピッチ」ともいう)は、約0.5μm〜約15μm程度であり、ほぼ同様の螺旋ループが複数(例えば5個〜約15個程度)積み重なって螺旋構造部23を構成している。
【0064】
また、螺旋構造部23は、
図12に示されたような支持体1の表面1aに直交する方向(法線軸方向)の断面において、輝尽性蛍光体の結晶が中心軸Xを挟んで左右に繰り返しほぼ規則的に屈曲し、複数のV字状部分23a,23bがつながって得られる屈曲構造を有している。各V字状部分23a,23bは、
図12において右側に最も突出する部分が折返部23cとなり、それぞれのつながる部分が接続部23dとなっている。
【0065】
柱状部24はストレート部として螺旋構造部23に続いて形成され、輝尽性蛍光体の結晶が表面1aに交差する方向に沿ってほぼ真っ直ぐに伸びて形成された柱状構造を有している。そして、螺旋構造部23と柱状部24とは、蒸着により連続して一体形成されている。
【0066】
なお、柱状結晶25は、入射放射線Rに応じた放射線情報が蓄積記録され、励起光として赤色レーザ光などが照射されると、蓄積情報に応じた光が柱状部24を導光されて先端側(支持体1と反対側)から放出される。反射層21は、柱状結晶25を導光される光のうち、反射層21側に導光される光を反射して、先端側から放出する光量を増加させる。
【0067】
そして、柱状結晶25は、
図13の(a)に示されるように、両隣の柱状結晶26,27との関係において、一方における上下に離れた部分の間に、もう一方が入り込んだ入込構造を有している。すなわち、
図13の(a)を拡大した
図13の(b)に示されように、隣接している柱状結晶26,27について、柱状結晶25の接続部23dの右側の、V字状部分23a,23bの間に形成される間隙23eに、柱状結晶26の接続部23dが入り込んだ入込構造を有している。
【0068】
この入込構造により、柱状結晶25の螺旋構造部23における柱状結晶26側の部分と、柱状結晶26の螺旋構造部23における柱状結晶25側の部分とが、支持体1の表面1aと垂直な方向から見て重なり合っている。より具体的には、柱状結晶25の折返部23cと柱状結晶26の接続部23dとが上側から見て重なり合っている。そして、柱状結晶25の螺旋構造部23と柱状結晶26の螺旋構造部23との間隙は、支持体1の表面1aと平行な方向(支持体1の側面1c側)から見て波線状となっている。
【0069】
以上のような構造を有する柱状結晶25のうち、螺旋構造部23によって反射層21が構成され、柱状部24によって柱状層22が構成されている。反射層21は、光Lが入射したときにその光Lを不規則に反射させることによって散乱させるため、光Lの反射機能を有している。
【0070】
以上の第9実施形態の放射線像変換パネル10によっても、上述した第1実施形態の放射線像変換パネル10と同様の効果が奏される。また、第9実施形態の放射線像変換パネル10は、反射率を高めるための金属膜などの光反射膜を有していなくも良好な光反射特性を発揮し、上面2aからの発光量を増加させることができるから、放射線を検出する感度を高くすることができる。そして、第9実施形態の放射線像変換パネル10は、放射線を検出する感度を高めるのに金属膜を形成していないから、金属膜に起因した腐食のおそれがないものとなっている。
【0071】
しかも、第9実施形態の放射線像変換パネル10では、反射層21が柱状結晶25のうちの螺旋構造部23によって構成されている。前述したとおり、柱状結晶25は螺旋構造部23において隣接しているもの同士が入り込む入込構造を形成しているから、螺旋構造部23では、輝尽性蛍光体の結晶の存在しない空間を極めて小さくすることができる。そのため、反射層21における輝尽性蛍光体の結晶の密度が高くなっているため、高い反射率を発揮するようになっている。
【0072】
そして、上述したように、多少の間隙が形成される入込構造を螺旋構造部23に適用することで、螺旋構造部23が接触した場合に螺旋構造部23で反射した光が隣接する柱状結晶25に導光されてコントラストが低下するのを防止することができる。さらに、螺旋構造部23においてもパネル面内の形成密度を高くして反射率を向上させることができる。なお、コントラストを高めるためには、パネル面内において全ての柱状結晶25が螺旋構造部23を含めて1本1本の柱状結晶25に分離されていることが望ましい。柱状結晶25は蒸着により形成されるので、全ての柱状結晶25を完璧に分離することは困難であるが、凡そ分離されるように形成すれば、良好な放射線像変換パネル10が得られる。
【0073】
なお、本発明に係る放射線像変換パネルは上記実施形態に記載したものに限定されない。例えば、支持体1は、SUS箔又は薄板ガラスなどであってもよい。
【0074】
また、第1〜第9実施形態の放射線像変換パネル10は、支持体1の裏面1b上に設けられた励起光吸収層をさらに備えてもよい。放射線像変換パネル10が第1保護膜3、第2保護膜4及び第3保護膜6のいずれかを有する場合、この励起光吸収層は、第1保護膜3、第2保護膜4及び第3保護膜6と、支持体1の裏面1bとの間に設けられてもよい。励起光吸収層は、顔料とバインダー樹脂とからなる着色樹脂層(着色樹脂層以外にも、セラミック、カーボンブラック、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄などのみからなる着色層)から構成され、その厚さは例えば20μm程度である。励起光吸収層に含まれる着色剤は、輝尽性蛍光体層2に照射される励起光の波長範囲によって決定され、励起光の波長範囲における励起光吸収層の光透過率は10%以下である。この場合、輝尽性蛍光体層2及び支持体1を透過した励起光を吸収することができるので、励起光の散乱及び反射によるコントラストの低下を軽減できる。
【0075】
また、第1〜第9実施形態の放射線像変換パネル10は、支持体1と輝尽性蛍光体層2との間に設けられた輝尽発光反射層をさらに備えてもよい。輝尽発光反射層は、白色顔料とバインダー樹脂からなる着色樹脂層、Alなどの金属反射層、SiO
2及びTiO
2などの酸化物層からなる誘電体多層膜層などから構成され、その厚さは例えば0.001μm以上であり、例えば50μm以下である。この場合、輝尽性蛍光体層2に励起光が照射されることにより輝尽性蛍光体層2において放出された光のうち、支持体1側に導光された光を輝尽発光反射層によって反射し、輝尽性蛍光体層2の上面2a側に出射される光の光量を増加することができる。
【0076】
また、第9実施形態における柱状結晶25の構成は、第1実施形態の放射線像変換パネル10だけでなく、第2〜第8実施形態の放射線像変換パネル10にも適用することが可能である。