特許第6154530号(P6154530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6154530
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】床ずれ防止マット
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/057 20060101AFI20170619BHJP
   A47C 27/10 20060101ALI20170619BHJP
   A47C 23/047 20060101ALI20170619BHJP
   A47C 23/043 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   A61G7/057
   A47C27/10 A
   A47C23/047
   A47C23/043
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-188133(P2016-188133)
(22)【出願日】2016年9月27日
【審査請求日】2016年9月27日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506391657
【氏名又は名称】菊川 清
(72)【発明者】
【氏名】菊川 清
(72)【発明者】
【氏名】菊川 康介
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−164058(JP,A)
【文献】 特開昭53−049887(JP,A)
【文献】 特開2007−330527(JP,A)
【文献】 実開昭57−071456(JP,U)
【文献】 国際公開第00/036953(WO,A1)
【文献】 特表2014−507229(JP,A)
【文献】 特開平07−275300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/057
A47C 23/043
A47C 23/047
A47C 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空体構造の弾性体からなる複数の空気セルと、前記空気セルに空気の給排気を行う千鳥状に配列された連通管からなる複数の空気セル系統で構成され、
前記空気セル系統に前記空気セルに前記連通管を介して空気の給排気を行う空気制御部を備える床ずれ防止マットであって、
前記中空体構造の弾性体からなる複数の空気セルは平面方向に並設した空気セル群として構成され、
前記空気制御部は、コンプレッサ、空気セル系統に所定のタイミングで給排気を行うための電磁弁と、前記電磁弁を制御する電磁弁制御部とからなり、
前記空気セル群を連通した状態で、空気総量を任意に設定する手段と、前記手段により設定された空気総量の全部または任意に設定する一部の空気量を、一方の空気セル群から他方の空気セル群へ移送する手段を講じた床ずれ防止マット。
【請求項2】
前記中空体構造の弾性体からなる複数の空気セルをコイルスプリング内に配設したことを特徴とする請求項1に記載した床ずれ防止マット。
【請求項3】
前記中空体構造の弾性体からなる空気セルの形状が螺旋形状、または該空気セルの側面を貫通する中空孔を設けた形状の、いずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載した床ずれ防止マット。
【請求項4】
前記中空体構造の弾性体からなる空気セルは、前記弾性体にバネ機能を有する構造体を内包させて構成されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに1つに記載した床ずれ防止マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器、健康器具として用いる病人等の床ずれ防止マットに関する。
【背景技術】
【0002】
ベッドの上で長期療養の必要がある病人や老人は、体が自由に動かせないため床ずれに悩まされている。床ずれは、体の背中部や腰部などの特定部位が長時間圧迫されて血行不良となるために発生し、床ずれが進行すると褥瘡となる。
【0003】
床ずれを防ぐためには、ときどき寝返りをするなど、体重がかかる部分を移動させることが有効である。しかしながら、重病人や寝たきり老人は、自分自身で寝返りをすることが困難であるため、これを補助して床ずれを防止する必要がある。床ずれを防止するためには、体の支点を常に変えて、一点に体重による体圧が集中しないように体圧を分散させると供に、支点の位置を常に変更して体圧を分散する必要があり、このための床ずれ防止マットが提案されている(特許文献1〜4)。
【0004】
特許文献1には、病人等の背中部や腰部を支持する支持棒を格子状や千鳥状に床ずれ防止装置の指示板に配設して、隣り合う支持棒または隣り合う列や行の支持棒を所定の間隔で交互に昇降駆動する床ずれ防止装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、一側面を開口した凸状殻部を多数併設されたマットシートであって、凸状殻部の形状の異なるマットシートを成形材により上下で一体成型した空気セルにより、排気時でも変形しない、いわゆる腰のある空気セルを用いた床ずれ防止マットが開示されている。
【0006】
特許文献3には、ポンプに接続された給排気自在の空気セルを多数設けた膨縮ゾーンの周囲に発泡材からなる非膨縮ゾーンを配設し、膨縮ゾーンがマットの上下方向においてを偏倚した位置に配設されるように、発泡材の膨縮ゾーンの上下方向の面積を変えた床ずれ防止マットが開示されている。
【0007】
特許文献4には、ベッドの上面部と下面部との空間部を格子状に区画した単位領域(セル)に、セル本体内にモータとモータの出力を減速する減速装置と、減速したモータの回転運動を直線運動に変換する回転・直動変換器と、回転・直動変換器の出力軸に連結された荷重保持体と、荷重保持体に負荷される荷重を検出する荷重検出部と、を一体的にして設けてセル駆動体を構成して配設され、ベッドの使用時であって人が横臥していないときに、各駆動セル体を独立して抜き出し可能とし、かつ各荷重検出部からの荷重を入力し、組み込まれた予め定められた床ずれ防止モードに従って各モータの駆動制御を行う制御装置を設けた床ずれ防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−024652号公報
【特許文献2】特開2005−000354号公報
【特許文献3】特開2005−118130号公報
【特許文献4】特開2005−176895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、低騒音で体圧分散性に優れるため、重病人や寝たきり老人などの使用者(以下、「使用者」という。)の使用感を満足でき、設置や運転の費用が低いため、容易に設置できる床ずれ防止マットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、既存のベッドに設置可能で、中空体構造の弾性体からなる複数の空気セルを組み合わせた床ずれ防止マットを提供することで、上記課題を解決するに至った。具体的には、以下の態様により解決できる。
【0011】
中空体構造の弾性体からなる複数の空気セルと、前記空気セルに空気の給排気を行う千鳥状に配列された連通管からなる複数の空気セル系統で構成され、
前記空気セル系統に前記空気セルに前記連通管を介して空気の給排気を行う空気制御部を備える床ずれ防止マットであって、
前記中空体構造の弾性体からなる複数の空気セルは平面方向に並設した空気セル群として構成され、
前記空気制御部は、コンプレッサ、空気セル系統に所定のタイミングで給排気を行うための電磁弁と、前記電磁弁を制御する電磁弁制御部とからなり、
前記空気セル群を連通した状態で、空気総量を任意に設定する手段と、前記手段により設定された空気総量の全部または任意に設定する一部の空気量を、一方の空気セル群から他方の空気セル群へ移送する手段を講じたことを特徴とする。
【0012】
空気セルが中空構造の弾性体で形成されており、空気の給排気時の空気セルの膨縮がほとんどなく、使用者の躰に空気セルがソフトに当たることとなって使用感が良くなる
また、空気セルを千鳥状に配列することにより、加減圧された空気セルが実質的に縦横交互に配設されるため、使用者の躰に空気セルがソフトに当たることとなって使用感が良くなる。さらには、空気総量に調整を行うことで、床ずれ防止マット全体のクッションの柔硬を調整することが可能となり、使用者の殆んどの要望を満たすことが可能となる。
さらにはまた、空気セル系統への給気を、コンプレッサからの給気だけではなく、他の空気セル系統からの給気によっても行えるため、コンプレッサの稼働を短くすることができて騒音を低減できる。また、他の空気セル系統の空気セルに充填された空気をすべて排出することがないため、空気セルの収縮が少ないため、使用感が良くなり、
使用者の躰に当たるセルを空気の給排気のみにより制御するため、セル内にモータ、モータ出力減速装置、回転・直動変換器などを設置する必要がないため騒音、保守費用が低減できる。
【0013】
(態様2) 中空体構造の弾性体からなる複数の空気セルをコイルスプリング内に配設した(態様1)または(態様2)のいずれかに記載した床ずれ防止マットである。空気セルを稼働させないとき、あるいは、停電時などのように空気セルが稼働できないときは、床ずれ防止マットに内設されているコイルスプリングのみで、通常のマットとして使用することができるからである。
【0014】
(態様3) 中空体構造の弾性体からなる空気セルの形状が螺旋構造、または該空気セルの側面を貫通する中空孔を設けた形状、のいずれかであることを特徴とする(態様1)乃至(態様3)のいずれか1つに記載した床ずれ防止マットである。中空構造の弾性体を螺旋構造とすることで弾性体自体の変形に加えて、螺旋構造の変形によりクッション性に相乗効果が生じて、床ずれ防止マットの使用感が高まるからである。同様に、空気セルの側面を貫通する中空孔を設けた形状においても、弾性体自体の変形に加えて、貫通する中空孔の変形によりクッション性に相乗効果が生じて、床ずれ防止マットの使用感が高まるからである。
【0015】
(態様4) 中空体構造の弾性体からなる空気セルは、弾性体にバネ機能を有する構造体を内包させて構成されたものであることを特徴とする(態様1)乃至(態様4)のいずれかに1つに記載した床ずれ防止マットである。マットの底付き感を無くすためと、停電時においても最低限のクッション性を有するためのものでる。弾性体にバネ機能を有する構造体を内包させて構成された中空体構造の弾性体からなる空気セルとすることで、クッション性が向上して使用感が高まるからである。
【発明の効果】
【0016】
空気セルを千鳥状に配列することにより、加減圧された空気セルが実質的に縦横交互に配設され、且つ、空気総量を調整することができることで、空気セルのクッション性に対するほとんどの使用感を満足させることができる。
また、空気セルが中空構造の弾性体で形成されており、空気の給排気時の空気セルの膨縮がほとんどなく、使用者の躰に空気セルがソフトに当たることとなって使用感が良くなる。さらには、使用者の躰に当たるセルを空気の給排気のみにより制御するため、セル内にモータ、モータ出力減速装置、回転・直動変換器などを設置する必要がないため騒音、保守費用が低減できる。
空気セル系統への給気を、コンプレッサからの給気だけではなく、他の空気セル系統からの給気によっても行えるため、コンプレッサの稼働を短くすることができて騒音を低減できる。また、他の空気セル系統の空気セルに充填された空気をすべて排出することがないため、空気セルの収縮が少ないため、使用感が良くなる。
中空構造の弾性体を螺旋構造とすることで弾性体自体の変形に加えて、螺旋構造の変形によりクッション性に相乗効果が生じて、床ずれ防止マットの使用感が高まる。同様に、空気セルの側面を貫通する中空孔を設けた形状においても、弾性体自体の変形に加えて、貫通する中空孔の変形によりクッション性に相乗効果が生じて、床ずれ防止マットの使用感が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の床ずれ防止マットの基本構成を示す側面図である。
図2】本発明の床ずれ防止マットの構成要素である空気セルを配設したコイルスプリングの説明図である。
図3】本発明の床ずれ防止マットの構成要素である空気セルの代表的な形態を示す模式図である。
図4】本発明の床ずれ防止マットの構成要素である螺旋管状形態の空気セルの作用を示す模式図である。
図5】本発明の床ずれ防止マットの構成要素である連通管の床ずれ防止マットにおける配置を示す模式図である。
図6】本発明の床ずれ防止マットの構成要素である連通管の空気セルとの連結部の構造を示す模式図である。
図7】本発明の床ずれ防止マットの空気制御2ラインの基本構成を示す模式図である。
図8】本発明の床ずれ防止マットの空気制御2ラインの第1の実施態様での稼働フローを示す模式図1である。
図9】本発明の床ずれ防止マットの空気制御2ラインの第2の実施態様での稼働フローを示す模式図である。
図10】本発明の床ずれ防止マットの空気制御2ラインの第3の実施態様での稼働フローを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態を図面により、以下に説明する。なお、本発明の上記特徴(態様1)から(態様5)を備えるものであれば良く、実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の床ずれ防止マットの基本構成を示す側面図である。床ずれ防止マット1は、複数の空気セル4が平面方向に並設された床ずれ防止マット本体6と、空気セル4に空気の給排気を行うための空気制御部3と連通管2により構成されている。床ずれ防止マット本体6は、架台5に載置されている。ただし、床ずれ防止マット本体6は、必ずしも架台5に載置する必要はない。
【0020】
図2は、本発明の床ずれ防止マット1の構成要素である空気セル4をコイルスプリング41に配設したコイルスプリング配設空気セル42について模式的に説明した説明図である。寝具として利用されているベットマットのコイルスプリング41に本発明の空気セル4を組み込むことで、コイルスプリング配設空気セル42とすることができる。この態様により、床ずれ防止機能を発揮させないときは、通常のベットマットとして使うことができ、停電時など空気セルの稼働を停止せざるをえないときにも、通常のベットマットとしての最低限の機能を果たすことができるため、使用者の負担を軽減することができる。
【0021】
本発明の空気セル4は、中空構造の弾性体で構成されている。中空構造としているのは、中空構造の内部に空気制御部3から給排気される空気を保持するためであり、素材を弾性体とするのは、空気圧負荷に対して柔軟に変形し、除荷後に容易に復元できる素材であることが必要だからである。
【0022】
弾性素材としては、ゴム系材料と熱可塑性エラストマとがある。ゴム系材料には、天然ゴム、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムがあり、ジエン系ゴムとしては、スチレンブタジエンゴムが、耐摩耗性と耐老化性に優れる点で有利であり、ブタジエンゴムが、弾性、耐摩耗性に優れる点で好適である。非ジエン系ゴムの中でも、ブチルゴムは、耐候性と耐薬品性が良好であり、ウレタンゴムは、力学的強度が大きい点で好ましい。熱可塑性エラストマは、ゴムの有する柔軟性と弾性回復性を有するとともに、熱可塑性を有するため、加工が容易であり、リサイクル性があるため好適である。熱可塑性エラストマには、塩ビ系、スチレン系、オレフィン系、エステル系、ウレタン系等がある。これらの中で、スチレン系熱可塑性エラストマは、加硫ゴムに特性が近く、高弾性で、シットリとした触感があり、耐摩耗性に優れる点で好ましい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマは、劣化しにくく、柔軟性、成形性に優れる点で有利である。
【0023】
空気セル4の形態については、代表的な形態(タイプI〜V)を図3に示す。形態としては、タマゴ形(タイプI)、洋ナシ形(タイプII,III)のような球状型と、螺旋管状型(タイプIV,V)があり、球状型には、空気セル本体11に側面を貫通する孔12を設けた形態がある(タイプI,III)。
また、図4に示すように、螺旋環状型(タイプIV,V)では、螺旋空間部aの圧縮はソフトな使用感があり、管状部の圧縮bは、空気圧と中空構造弾性体の特質から管内部圧力によって使用者の躰を支持して体圧の分散を図ることができ、これにより躰の沈み込みを防ぎ、底付きを無くす効果に基づくハード感を生じるという2段階のクッション効果を得られるのが特徴である。2段階のクッション効果によって特別な制御機構を設けることが不要となるため、床ずれ防止マットの構造を簡略化できてコストダウンを図ることができる。空気セル本体11に側面を貫通する孔12を設けた形態(タイプI,III)においても同様の2段階のクッション効果を生じるため、コストダウンを図ることができる。
【0024】
空気セル4には、バネ機能を有する構造体を、図3に示した代表的な形態(タイプI〜V)の枠組みにした後、上述した弾性素材を被覆して内包させた空気セルも含まれる。
【0025】
図5は、本発明の床ずれ防止マットの構成要素である連通管の床ずれ防止マットにおける配置を示す模式図であり、図6は、本発明の床ずれ防止マットの構成要素である連通管の空気セルとの連結部の構造を示す模式図である。連通管は、千鳥状に成型された樹脂製の管材の内部に、可撓性に優れる簡易埋め込み型の軟質ゴム材を内装したものであり、屈曲部に空気セル4を繋ぐ接続口を設けている。
【0026】
図7は、本発明の床ずれ防止マットの空気制御2ラインの基本構成を示す模式図である。床ずれ防止マット本体6と、床ずれ防止マット本体6に配設された空気セル(4a,4b)に連通管(2,2a,2b)を介して空気の給排気を制御する空気制御部3で構成される。空気制御部3は、制御装置31、空気を給気するメインコンプレッサ32、全空気量を調整する空気総量調整用コンプレッサ33、電磁弁34、信号配線35、圧力センサー(36a,36b)で構成される。
床ずれ防止マット本体6には、千鳥状に配管された連通管(2a,2b)に複数の空気セル(4a,4b)が繋がれた空気セル群からなる空気セル系統(9a,9b)を構成する。空気セル系統(9a,9b)の添え字a,bは 、同一の圧力センサー(36a,36b)によって給排気を同じくする空気セル群を示す。
【0027】
本発明の特徴である空気総量を所定の設定により調整し、次に、空気セル系統ごとの負荷(空気圧)を変動させる床ずれ防止マットの稼働フローを、図8図9及び図10に示す実施態様により説明する。
【0028】
図8は、本発明の床ずれ防止マットの空気制御2ラインの第1の実施態様における稼働フローを示す模式図である。空気総量を14に、空気セル系統(9a,9b)の空気量をそれぞれA,Bとし、それぞれの空気量を交互に8と6に変動させている。
以下に述べる<ステップ1>乃至<ステップ3>において、空気総量調整用コンプレッサ33により全空気量を所定の空気総量に調整して、床ずれ防止マット全体のクッションの柔硬の調整を行う。
電磁弁34の開放により、圧力の高い他の空気セル系統(例、9aに対する9b、または、9bに対する9a)からの空気量補充と、外部空気の補充とを併用することで、空気セル系統への給気を、コンプレッサからの給気だけではなく、他の空気セル系統からの給気によっても行えるため、コンプレッサの稼働を短くすることができて騒音を低減できる。また、他の空気セル系統の空気セルに充填された空気をすべて排出することがないため、空気セルの収縮が少ないため、使用感が良くなる。
【0029】
以下の<ステップ1>から<ステップ4>を繰り返す。
<ステップ1>
電磁弁34を開放し、空気セル系統(9a,9b)の空気圧を一定(A:B=7:7)にする。次いで、圧力センサー(36a,36b)により空気圧をチェックし、所定の空気総量に空気総量調整用コンプレッサ33により空気を補充、または電磁弁34を解放して空気を排出する。
<ステップ2>
電磁弁34を閉鎖し、メインコンプレッサ32により、圧力センサー(36a)で空気圧をチェックしながら空気セル系統(9a)に、所定空気圧(A=8)まで空気を圧入する。
このとき、空気セル系統(9a)に所定空気圧(A=8)まで空気を圧入する方法に代え、空気圧差2になるように空気を圧入する方法もある。
<ステップ3>
電磁弁34を開放し、空気セル系統(9a,9b)の空気圧を一定(A:B=7:7)にする。次いで、圧力センサー(36a,36b)により空気圧をチェックし、所定の空気総量に空気総量調整用コンプレッサ33により空気を補充、または電磁弁34を解放して空気を排出する。
<ステップ4>
電磁弁34を閉鎖し、メインコンプレッサ32により、圧力センサー(36b)で空気圧をチェックしながら空気セル系統(9b)に、所定空気圧(B=8)まで空気を圧入する。
このとき、空気セル系統(9a)に所定空気圧(A=8)まで空気を圧入する方法に代え、空気圧差2になるように空気を圧入する方法もある。
【0030】
図9は、本発明の床ずれ防止マットの空気制御2ラインの第2の実施態様における稼働フローを示す模式図である。空気総量を14に、空気セル系統(9a,9b)の空気量をそれぞれA,Bとし、それぞれの空気量を交互に10と4に変動させる事例を示す。
稼働フローは、模式図1の空気セル系統(9a,9b)の空気圧を一定(A:B =7:7)とし、空気セル系統(9a,9b)の空気量を交互に10と4にして、<ス テップ1>から<ステップ4>を繰り返す。
空気総量が14で、空気セル系統(9a,9b)の空気量がそれぞれ10と4の場合は、模式図1の空気総量が14で、空気セル系統(9a,9b)の空気量がそれぞれ8と6の空圧差が2のときに比し、メリハリのある使用感を得ることができる。
【0031】
図10は、本発明の床ずれ防止マットの空気制御2ラインの第3の実施態様における稼 働フローを示す模式図である。空気総量を10に、空気セル系統(9a,9b)の空気 量をそれぞれA,Bとし、それぞれの空気量を交互に6と4に変動させた事例を示す。
稼働フローは、模式図1の空気セル系統(9a,9b)の空気圧を一定(A:B=5: 5)とし、空気セル系統(9a,9b)の空気量を交互に6と4にして、<ステップ1 >から<ステップ4>を繰り返す。
空気総量が10で、空気セル系統(9a,9b)の空気量がそれぞれ6と4の場合は、模式図1の空気総量が14で、空気セル系統(9a,9b)の空気量がそれぞれ8と6の空圧差が2のときに比し、全体的にソフトな使用感を得ることができる。
また、空気総量については図示していないが、一定に固定することなく、所定のタイミ ングで14→10→14→10のように調整することもできる。
【0032】
本発明の床ずれ防止マットは、空気制御を3ライン以上に構成にすることも可能である が、原理は空気制御が2ライン同じであるので、その詳細の説明・図面については省略 する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、重病人や寝たきり老人の褥瘡防止用途、車いす、自動車運転席、飛行機座席など長時間坐る姿勢でのエコノミークラス症候群防止用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 床ずれ防止マット
2 連通管
3 空気制御部
31 制御装置
32 メインコンプレッサ
33 空気総量調整用コンプレッサ
34 電磁弁
35 信号配線
36 センサー
4 空気セル
41 コイルスプリング
42 コイルスプリング配設空気セル
5 架台
6 床ずれ防止マット本体
9 空気セル系統
11 中空構造の弾性体からなる空気セル本体
12 空気セルの側面を貫通する中空孔
【要約】
【課題】低騒音で体圧分散性に優れ、設置や運転の費用が低い床ずれ防止マットを提供する。
【課題解決手段】中空体構造の弾性体からなる複数の空気セル4と、空気セルに空気の給排気を行う千鳥状に配列された連通管2からなる複数の空気セル系統で構成され、空気セル系統には空気セルに前記連通管を介して空気の給排気を行う空気制御部3を備える床ずれ防止マットであり、中空体構造の弾性体からなる複数の空気セルは平面方向に並設した空気セル群として構成され、空気制御部は、コンプレッサ、空気セル系統に所定のタイミングで給排気を行うための電磁弁34と、電磁弁を制御する電磁弁制御部31とからなり、
空気セル群を連通した状態で、空気総量を任意に設定する手段と、前記手段により設定された空気総量の全部または任意に設定する一部の空気量を、一方の空気セル群から他方の空気セル群へ移送する手段を講じた床ずれ防止マットである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10