特許第6154562号(P6154562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6154562
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】車両ルーフ用カバーを含む機器
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/05 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   B60J7/05 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-569040(P2016-569040)
(86)(22)【出願日】2015年5月19日
(86)【国際出願番号】EP2015060999
(87)【国際公開番号】WO2015181000
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年12月20日
(31)【優先権主張番号】102014107662.1
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506027147
【氏名又は名称】ヴェバスト ソシエタス エウロペア
【氏名又は名称原語表記】Webasto Societas Europaea
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト ヴィンゲン
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−247572(JP,A)
【文献】 特開平7−32888(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/079747(WO,A1)
【文献】 特開2013−237422(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007003354(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/02
7/043
7/05
7/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ルーフ(FD)用カバー(D)を含む機器(AO)において、該カバーが前縁(VK)と、該前縁(VK)に対向する後縁(HK)とを含み、ルーフ開口(DOE)を閉鎖するための閉鎖位置から始めて、該ルーフ開口(DOE)を開放するために展開手段によって該カバーを後方領域で持ち上げることができる機器であって、前記展開手段が
ガイドレール(FS)において車両長手方向に沿って変位可能な摺動キャリッジ(S)と、
前端領域(VE)と、後端領域(HE)と、該前端領域(VE)と該後端領域(HE)との間に配置した連結要素(KE)とを有し、前記カバー(D)が閉鎖位置の場合に、前記ガイドレール(FS)に静止固定されたスロットリンク(KO)と該連結要素(KE)によって係合する展開レバー(VH)と、
前記ガイドレール(FS)において車両長手方向に沿って変位可能となるように設置され、前記カバー(D)と前記ガイドレール(FS)との間の方向に枢動可能で変位可能なように前記展開レバー(VH)を連結するスロットリンクキャリッジ(SK)と、
前記摺動キャリッジ(S)に連結され、車両長手方向に沿って前記ガイドレール(FS)に対して相対的に変位可能となるように案内される制御ロッド(SS)と、を有し、前記制御ロッド(SS)がスロット制御リンク(KS)を含み、前記展開レバー(VH)が該スロット制御リンク(KS)に連結され、第1運動区分において、前記カバー(D)の閉鎖位置から始めて、車両長手方向で後方に向かった前記摺動キャリッジ(S)の変位と共に、前記スロット制御リンク(KS)が前記連結要素(KE)を中心とした前記展開レバーの回転を制御する機器。
【請求項2】
前記第1運動区分において、前記後端領域(HE)と前記ガイドレール(FS)との距離が縮小するように、前記スロット制御リンク(KS)が前記展開レバー(VH)の後端領域(HE)の垂直運動を制御することを特徴とする、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記第1運動区分において、前記前端領域(VE)と前記ガイドレール(FS)との距離が増加するように、前記スロット制御リンク(KS)が前記展開レバー(VH)の後端領域(HE)の垂直運動を制御することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記第1運動区分において、前記スロット制御リンク(KS)が前記展開レバー(VH)の後端領域(HE)の垂直運動を制御し、前記カバー(D)の前記前縁(VK)と前記ガイドレール(FS)との距離を略同一のままとすることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の機器。
【請求項5】
前記制御ロッド(SS)が前記ガイドレール(FS)と相対的に前記スロットリンクキャリッジ(SK)上で変位可能に案内されることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の機器。
【請求項6】
前記展開レバー(VH)の後端領域(HE)に枢動可能に配置した摺動要素(SE)を更に含み、該摺動要素(SE)が前記スロットリンクキャリッジ(SK)に垂直変位可能なように連結され、該摺動要素(SE)が連結要素(KES)を含み、これによって該摺動要素(SE)が前記スロット制御リンク(KS)に案内されることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の機器。
【請求項7】
前記スロット制御リンク(KS)と前記ガイドレール(FS)との距離を車両長手方向で変化させることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の機器。
【請求項8】
車両長手方向に対する前記スロット制御リンク(KS)と前記ガイドレール(FS)との距離が後方に向かって増加するように、前記スロット制御リンク(KS)の経路を変化させることを特徴とする、請求項7に記載の機器。
【請求項9】
前記第1運動区分において前記摺動キャリッジ(S)と前記展開レバー(VH)との距離が増加するように、前記制御ロッド(SS)を介して前記摺動キャリッジ(S)を前記スロットリンクキャリッジ(SK)に変位可能に連結することを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の機器。
【請求項10】
前記後縁(HK)の領域において前記カバー(D)と前記摺動キャリッジ(S)とに枢動可能に連結された別の展開レバー(HH)を追加して含むことで、前記第1運動区分において前記摺動キャリッジ(S)を変位させる際に前記カバー(D)の展開が制御され、前記カバー(D)の前記後縁(HK)と前記ガイドレール(FS)との距離が増加することを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両ルーフ用カバーを含む機器に関する。ルーフ開口を閉鎖するための閉鎖位置から始めて、該開口を開放するために展開手段によって該カバーを後方領域で持ち上げることができる。
【背景技術】
【0002】
通常、ルーフ開口の開放工程中に駆動スライドを車両長手方向で変位させる。この場合、車両の後方を向くカバーの後縁をまず持ち上げ、カバーの位置が斜めになるようにする。この位置を換気位置とも称する。通常は同時にカバーの前縁が下がる。これはカバーが前方展開レバーの前方ベアリング点を中心に回転するからである。この場合、車両長手方向で閉鎖位置から換気位置にカバーが動く間、展開レバーは静止している。例えば6ミリ以上にカバー前縁を下向きに下げてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、精密操作を特徴とする車両ルーフ用カバーを含む機器を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による車両ルーフ用カバーを含む機器が開示されており、ルーフ開口を閉鎖するための閉鎖位置から始めて、該ルーフ開口を開放するために展開手段によって該カバーを後方領域で持ち上げることができる。該カバーは前縁と、該前縁に対向する後縁とを含む。展開手段が有する摺動キャリッジはガイドレールにおいて車両長手方向で変位可能である。その上、展開手段が含む展開レバーは、前端領域と、後端領域と、該前端領域と該後端領域との間に配置した連結要素とを有する。カバーが閉鎖位置の場合、連結要素によって展開レバーは、ガイドレールに静止固定されたスロットリンクと係合する。その上、展開手段が含むスロットリンクキャリッジは、ガイドレールにおいて車両長手方向に沿って変位可能となるように設けられ、これによってカバーとガイドレールとの間の方向に枢動可能で変位可能なように展開レバーが連結される。特に、カバーとガイドレールとの間で略垂直になるように展開レバーが変位可能にスロットリンクキャリッジに連結される。付加的に展開手段が含む制御ロッドは摺動キャリッジに連結され、車両長手方向でガイドレールと相対的に変位可能となるように案内される。例えば、制御ロッドを枢動可能に摺動キャリッジに連結する。制御ロッドはスロット制御リンクを含み、展開レバーが該スロット制御リンクに連結されるので、第1運動区分において、カバーの閉鎖位置から始めて、車両長手方向で後方に向かった摺動キャリッジの変位と共に、スロット制御リンクが連結要素を中心とした展開レバーの回転を制御するようになる。
【0005】
例えば、カバーをその後縁領域で展開した後に、車両ルーフを介して後方へ開放位置にカバーを変位させることができる。車両ルーフを介したカバーの変位とは、後縁領域で持ち上げ又は展開してからカバーを車両ルーフの外面に押し上げることを意味する。機器は、ガイドレールが車両長手方向でルーフ開口を超えて後方に延伸する摺動ルーフであることが好ましい。摺動ルーフを外部案内摺動ルーフとも称する。別法として、機器は摺動/傾動ルーフ又はスポイラールーフであってもよい。
【0006】
使用する「後方」や「前方」などの位置情報や方向情報は車両長手方向に関するものである。車両長手方向を水平方向又は数学的右手系のX方向とも称する。カバーの展開又は持ち上げは略垂直方向及び/又は数学的右手系のZ方向で行われる。カバーの後方領域とは、例えばカバーの中心から始まり車両の後方を向く領域と理解される。
【0007】
展開レバーとは、例えば前方展開レバーである。展開レバーの前端領域に連結されたカバーの前縁領域において、展開レバーを前端領域と共に回転させることができる。展開レバーは枢動可能に後端領域に連結され、スロットリンクキャリッジに連結されることで、カバーとガイドレールとの間の方向で垂直に変位できるようになる。展開レバーの連結要素を前端領域と後端領域との間に配置することで、展開レバーの回転と共に前端領域と後端領域が反対方向に動くようになる。
【0008】
第1運動区分において変位可能な摺動キャリッジによってカバーを換気位置へと動かすことで、カバーの後縁が持ち上げられる。この目的で、摺動キャリッジをドライブに連結する。この場合、展開レバーは車両長手方向に対し略同位置のままである。つまり、第1運動区分においてカバーDと、これ故に展開レバーとは車両長手方向で変位しない。第1運動区分において制御ロッドに連結される摺動キャリッジの動きによって、展開レバーが連結要素を中心に回転するように制御するために、スロット制御リンクの経路を予め設定する。その結果、展開レバーの後端領域がガイドレールの方向に動く一方、展開レバーの前端領域がガイドレールから離れて上向きに動く。展開レバーの回転は、特に後端領域でスロットリンクキャリッジに垂直変位可能に連結された展開レバーによって可能になる。
【0009】
カバーの後縁を所謂換気位置に展開してガイドレールの方向にカバーの前縁を下げることを、展開レバーの回転によって補償してもよい。特に、カバーの前縁の運動を展開レバーの回転、特に前縁とガイドレールとの間隔によって制御する。要件によって、例えばカバーの前縁を同位置のままにするかどうか、又は若干下げるかどうかを制御する。前端領域をガイドレールから離して動かさない場合、カバーが後端領域を中心に回転し、及び/又は展開レバーが連結要素を中心に回転し、カバーの前縁がガイドレールの方向で下向きに動く。しかし、これは制御ロッドとスロット制御リンクによってカウンタ制御されるので、換気位置に動く場合にカバーの前縁とガイドレールとの垂直間隔が略一定のままでとなる。このように、第1運動区分においては、ルーフ開口を規定する車両ルーフの縁がカバーの前縁と略面一のままである。また、前縁の下降は最小限で実質的に数十分の1ミリメートル又は数ミリメートルである。その結果、例えば前縁がルーフ開口上でシールから離れて動くことが防止される。その上、望ましくない雑音が回避されることもある。付加的に、高速で、例えば時速300キロまでで車両が走行する場合に不利な雑音発生と高耐風性の原因となる鋭角なヘリを形成することがない。その上、カバーの後縁を換気位置に展開する際に、前縁領域でカバーがZ方向で下向きに動くことが実質的にないため、施工空間の節約が可能である。
【0010】
一実施形態によると、第1運動区分において、スロット制御リンクが展開レバーの後端領域の垂直運動を制御し、カバーの前縁とガイドレールとの距離が略同一のままになるようにする。この場合、カバーの前縁が下がらないように、及び/又はガイドレール方向に動かないように、スロット制御リンクの経路を構成する。これは本質的に上述の趣旨である。
【0011】
別の実施形態によると、制御ロッドがスロットリンクキャリッジ上で変位できるようにガイドレールと相対的に案内される。よって、摺動キャリッジを車両長手方向で後方に向かって変位させると、制御ロッドがスロットリンクキャリッジと、これ故に展開レバーとを相対的に変位することが可能になる。その上、その結果、例えばガイドレールに対し静止固定された追加的なスロットリンクであって、制御ロッドを車両長手方向に案内するために必要であるかもしれない追加的なスロットリンクを無しで済ますことが可能である。この場合、制御ロッドは、例えばZ方向に、特にスロットリンクキャリッジの領域においてに変位可能ではない。
【0012】
更に別の実施形態によると、機器が更に、展開レバーの後端領域に枢動可能に配置される摺動要素を含む。その上、摺動要素がスロットリンクキャリッジに垂直変位可能なように連結され、連結要素を含み、これによって摺動要素がスロット制御リンクに案内される。追加摺動要素によって、枢動可能な連結と垂直変位可能な連結が展開レバーとスロットリンクキャリッジとの間に付与される。まず、展開レバーを枢動可能に摺動要素に連結し、次に摺動要素を同様に垂直変位可能なようにスロットリンクキャリッジに案内する。付加的に、展開レバーがそれ自体ではなく摺動要素を介して間接的に制御ロッドのスロット制御リンクと係合する。よって、摺動キャリッジと、これ故に制御ロッドとを変位させると、摺動要素が垂直に変位し、該摺動要素がその垂直運動を展開レバーに伝達する。この結果、とりわけ摺動要素を上記配置で使用することによって、修正せずに従来の展開レバーを用いることができる。従って、摺動要素の連結要素がスロット制御リンクの大きな表面領域越しに案内され、表面圧による効果的な力伝達を確実になるように摺動要素の連結要素を設計してもよい。その結果、円筒状の連結要素によって展開レバーをスロット制御リンクに回転可能に案内することがない。このような回転可能な案内では連結要素の結果として線圧が存在し、これが表面圧に比べて著しく大きな摩耗の原因になる。
【0013】
「摺動要素」とは、展開レバー上に枢動可能に配置した機械部品と理解される。
【0014】
更に別の実施形態によると、スロット制御リンクとガイドレールとの距離を車両長手方向で変化させる。スロット制御リンクとガイドレールとの距離が車両長手方向で後方に向かって増加するように、スロット制御リンクの経路を変化させるのが好ましい。このように構成したスロット制御リンクによって展開レバーの回転を制御してもよい。
【0015】
更に別の実施形態によると、制御ロッドを介して摺動キャリッジを枢動可能にスロットリンクキャリッジに連結することで、第1運動区分において摺動キャリッジと展開レバーとの距離が増加するようにする。つまり、ドライブによって摺動キャリッジを変位させると、換気位置に動くためにカバーの後縁がまず変位されるが、展開レバーは略同位置のままである。摺動キャリッジを変位させると、第1運動区分において摺動キャリッジとスロットリンクキャリッジ及び/又は展開レバーとの距離が結果として変化する。
【0016】
更に別の実施形態によると、機器が含む別の展開レバーが後縁領域でカバーと摺動キャリッジとに枢動可能に連結されるので、摺動キャリッジを変位させると、第1運動区分においてカバーの展開が制御されるようになり、カバーの後縁とガイドレールとの距離が増加する。この別の展開レバーによってカバーを第1運動区分において換気位置に動かしてもよい。
【0017】
更に別の実施形態ついては従属請求項と添付図面を参照した以下の典型的な実施形態の詳細説明に記載する。
【0018】
全ての図において、同じ構成又は機能を有する要素又は特徴には同じ参照番号を与える。参照番号を使用して既に記載した要素又は特徴には、必ずしも全ての図に参照番号を設けるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両の概略斜視図。
図2】車両ルーフ用機器の運動学的原則の概略図。
図3】換気位置における機器の運動学的原則の概略図。
図4】機器の分解斜視図。
図5】組立状態の図3に係る機器の斜視図。
図6】異なる位置の機器の二次元概略図。
図7】異なる位置の機器の二次元概略図。
図8】異なる位置の機器の二次元概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は車両ルーフFDを備えた車両Fの概略斜視図である。車両ルーフFDは、車両に固定され、ルーフスキンとして構成される固定部分BAを含む。車両に固定された固定部分BAには、調整可能で移動可能なルーフ要素DEによって任意で閉鎖される又は少なくとも部分的に開放可能なルーフ開口DOEが設けられる。
【0021】
ルーフ開口DOEは、車両ルーフFD上に構成されるルーフフレーム部分DRAによって規定される。ルーフフレーム部分DRAの両側にガイドレールFSを備える機器AOを配置することが好ましい。
【0022】
ルーフ要素DEはカバーDを有し、固定部分BAの領域においてガイドレールFSに対し相対的に変位可能に搭載される。この場合、ルーフ要素DEはガイドレールFSに変位可能に搭載される。カバーDをガラスカバーとして構成することが好ましい。
【0023】
車両ルーフFDのルーフ開口DOEを開放するために、ルーフ開口DOEを閉鎖するための閉鎖位置から開放位置へとカバーDを変移させることができる。この目的で、機器AOは展開手段を含む。開放の際にはカバーDを後縁HKの領域で持ち上げ、車両ルーフFDの後部に押し上げる。この目的で、閉鎖位置ではカバーDが車両ルーフFDの上面と面一に終止しているので、カバーDを持ち上げる必要がある。典型的な運動シーケンスの第1運動区分において、カバーDの後縁HKをまず展開する。この中間位置を換気位置とも称する。開放運動の間にカバーDを車両長手方向で後方に向かって開放位置へと変位させる。この場合、カバーDは後縁HKと反対側の前縁VKの領域で付加的に持ち上げられる。
【0024】
この典型的な運動シーケンスを、次の図2図8を用いて詳しく説明する機器AOを用いて実行する。ここでは図2図8において1つの機器AOのみを一方の側にて関連の機構を付して示すが、部品は全て車両の長手方向中心面に対し鏡面対称で、ルーフ開口DOEの両側に配置される。機器AOを展開装置とも称する。
【0025】
特筆すべきことではないが、機械的に固定する方法でカバーDに連結されたカバーサポートDTを図4図5に示す。このようにカバーDは機器AOの展開手段に直結され、これによって動かすことができる。カバーDの変移とは、カバーサポートDTの変移と同じ意味である。
【0026】
その上、X方向、Z方向及び/又はX、Y、Zを示す座標系を図2図8それぞれに示す。座標系は数学的右手系に対応する。ここではX方向を車両長手方向又は水平方向とも称し、Z方向を垂直方向とも称する。
【0027】
図2図3に2つの状態の機器AOの運動学的原則を示す。ここでは図2にカバーが閉鎖位置の場合の機器AOを示し、図3に換気位置の機器AOを示す。図2図3を用いて基本的な力学と運動学を概略的に説明する。更なる詳細については図4図8を参照して説明する。
【0028】
機器AOの展開手段は前方展開レバーVH、制御ロッドSS、スロットリンクキャリッジSK、摺動キャリッジS、後方展開レバーHHを含む。その上、機器AOは、ガイドレールFSに静止固定された2つのスロットリンク、つまり第1静止固定スロットリンクKO1と第2静止固定スロットリンクKO2とを含む。摺動キャリッジSはスロットリンクキャリッジKを有する。制御ロッドSSはスロット制御リンクKSを有する。
【0029】
摺動キャリッジSはドライブAによって車両長手方向で後方に変位可能であり、該摺動キャリッジはガイドレールFS内で案内される。摺動キャリッジSを駆動スライドとも称する。例えば、駆動ケーブルを介して摺動キャリッジSを電動機に連結する。
【0030】
スロットリンクキャリッジKにおいて2つの連結要素KES1によって後方展開レバーHHを案内する。この場合、後方展開レバーHHの2つの連結要素KES1は、カバーDに対してスロットリンクキャリッジKの異なる面に位置する。後方展開レバーHHを別の連結要素KES2によって枢動可能にカバーDに連結する。
【0031】
前方展開レバーVHを連結要素KEによって静止固定スロットリンクKO1に連結する。その上、前端領域VEの前方展開レバーVHを前縁VKの領域でカバーDに枢動可能に連結する。付加的に、後端領域HEの前方展開レバーVHを、Z方向において枢動可能で垂直に変位可能なように、スロットリンクキャリッジSKに連結する。
【0032】
制御ロッドSSを枢動可能に摺動キャリッジSに連結し、ガイドレールFSに対してスロットリンクキャリッジKS上で変位可能に案内する。つまり、制御ロッドSSの運動はZ方向において実質的にロックされている。前方展開レバーVHを後端領域HEで制御ロッドSSのスロット制御リンクKSに連結する。
【0033】
第1運動区分において、図2に示すカバーDの閉鎖位置から始めて、車両長手方向で後方に向かって摺動キャリッジSをドライブAによって変位させる。この場合、摺動キャリッジSがまずカバーDと相対的に動き、カバーDの後縁HKがZ方向でガイドレールFSから離れて上向きに展開する。この状態を図3に示し、カバーDの換気位置とも称する。摺動キャリッジSを変位させると、摺動キャリッジSと連結しているために制御ロッドSSもガイドレールFSと相対的に動く。カバーDは最初のうちはX方向に変位されないので、前方展開レバーVHは車両長手方向に対し略同位置のままである。
【0034】
第1運動区分において、ガイドレールFSとの相対変位によって、制御ロッドSSのスロット制御リンクKSが後端領域HEの垂直運動を制御する。その結果、後端領域HEがガイドレールFS(点線で図示)に向かってZ方向に動く。前方展開レバーVHの後端領域HEの垂直運動によって、例えば摺動要素又は回転スライドである連結要素KEで前方展開レバーVHが静止固定スロットリンクKO1に案内されるので、該レバーは連結要素KEを中心に回転する。この場合、前端領域VEがガイドレールFSから離れてZ方向で上向きに動く。これは、前方展開レバーVHの連結要素KEが後端領域HEと前端領域VEとの間に配置されているからである。つまり、連結要素KEを介してX方向と垂直に延伸する面に対し、2つの端領域HEとVEが異なる側に位置する。
【0035】
この回転によって、カバーDの前縁VKがZ方向に動くことは実質的にない(図3参照)。このように、前縁VKは車両ルーフFD及び/又はルーフ開口DOEを規定するルーフフレーム部分DRAと略面一のままである。よって、導入部分で言及した欠点、例えば不利な雑音発生が回避されることもある。その上、結果として、例えば高速での車両の耐風性が減少する。
【0036】
このような前方展開レバーVHの回転運動がなければ、カバーの後縁の展開時にカバーの前縁VKがガイドレールFS方向においてZ方向で下向きに動くことになる。この状態のカバーD’と前縁VK’を一点鎖点で図3に示す。
【0037】
但し現時点でカバーDの後縁HKの展開については詳述しない。その代わり、カバーDの前縁VKの垂直運動の補償に焦点を当てて説明する。
【0038】
図4図5に機器AOの可能な構造設計を示す。ここでは図4に機器AOを分解図で示し、図5に組立・搭載状態の機器AOを示す。特に、摺動キャリッジSの一部を見ることができ、そこにスロットリンクキャリッジKが形成される。その上、制御ロッドSSをスロット制御リンクKSと共に示す。更に、スロットリンク部品KBを示し、そこに静止固定スロットリンクKO1(視認不可)が形成される。その上、前方展開レバーVHの連結要素KEを示し、これによって該前方回転レバーが、少なくともカバーDが閉鎖位置の場合に、静止固定スロットリンクKO1に案内される。
【0039】
上述のとおり、前方展開レバーVHを枢動可能で垂直変位可能なようにスロットリンクキャリッジSKに連結する。この場合、前方展開レバーVHはスロットリンクキャリッジSKに直接的ではなく、摺動要素SEを介して間接的に連結される。この摺動要素は、前方展開レバーVHの後端領域HEで枢動軸SAに対して枢動可能に固定される。図5に見られるように、前方展開レバーVHを摺動要素SEによってスロットリンクキャリッジSKに連結する。この場合、摺動要素SEはスロットリンクキャリッジSKに搭載され、垂直方向に変位可能とされる。つまり、摺動要素SEを介して前方展開レバーVHの後端領域HEをガイドレールFSから離れるように又はガイドレールに向かって動かすことができる。このように前方展開レバーVHを枢動可能で垂直変位可能なようにスロットリンクキャリッジKSに連結する。
【0040】
上述のとおり、制御ロッドSSを枢動可能に摺動キャリッジSに連結する。別法として、固定継手を設けてもよい。その上、スロットリンクキャリッジSKは制御ロッドSSを案内する一又は複数の貫通孔DBを含む。よって、制御ロッドSSはスロットリンクキャリッジSKと前方展開レバーVHとに対して相対的に変位可能である。
【0041】
制御ロッドSSは、特に上記運動シーケンス中に、一又は複数の貫通孔DBに対し微動回転運動してもよい。これは、ガイドレールFSの若干湾曲形状(不図示)を補償するために必要な場合もある。別法として、ガイドレールFSに対し静止固定された別のスロットリンクに制御ロッドSSを案内することもできる。
【0042】
摺動要素SEは制御ロッドSSを向く側に連結要素KESを含む(図6図8を参照)。搭載状態において摺動要素SEは連結要素KESを介して制御ロッドSSのスロット制御リンクKSと係合する。このように前方展開レバーVHが摺動要素SEを介して制御ロッドSSに連結する。
【0043】
別の実施形態では、図示はしないが、摺動要素SEは不要とする。この場合、前方展開レバーVHを後端領域HEで枢動可能にスロットリンクキャリアKSに直結させる。例えば、この目的でスロットリンクキャリッジKSはスロットを含み、そこに展開レバーVHの連結要素が回転可能で垂直変位可能に案内される。付加的に、後端領域HEでは前方展開レバーVHが別の連結要素を含み、これによって該前方展開レバーは制御ロッドSSのスロット制御リンクKSと係合する。この場合、確実に別の連結要素で前方展開レバーVHをスロット制御リンクKSに回転可能に案内しなければならない。このような実施形態においては摺動要素SEを不要とでき、これによって製造費と組立が削減される。
【0044】
ガイドレールFSとスロット制御リンクKSとの距離が車両長手方向において後方に向かって増加するようにスロット制御リンクKSの経路を設計する。該距離は前方部分VAよりも後方部分HAの方が大きい。上述のとおり、連結要素KEを中心とした前方展開レバーの回転運動はスロット制御リンクKSによって制御される。この回転運動に従ってスロット制御リンクK及び/又はその経路を構成する。
【0045】
摺動キャリッジSを動かす際にどれだけ速く回転運動が行われるかによって、スロット制御リンクKSとガイドレールFSとの距離をより大きな程度又は小さな程度に変化させてもよい。回転運動の時間曲線については、摺動キャリッジSを変位させる際に、スロット制御リンクKSとガイドレールFSとの距離をより大きな傾斜又は小さな傾斜で変化させてもよい。別法として又は付加的に、曲線を湾曲した段階的な線状等に変化させてもよい。
【0046】
図2図3を用いて説明した運動シーケンスを再び次の図6図8で簡潔に説明する。明確にするために、ここでは前方展開レバーVHをカバーDに連結するカバーサポートDTの図は無しで済ませた。
【0047】
ここでは図6にカバーが閉鎖位置の場合の機器を示す。ここでは前方展開レバーVHはスロット制御リンクKSの後方部分HAにおいて制御ロッドSSに連結される。つまり、摺動要素SEの連結要素KESはスロット制御リンクKSの後方部分HAに位置する。カバーDが閉鎖位置の場合、カバーの前縁VKは車両ルーフFDと略面一で終端する。付加的に、カバーVKの前縁と車両ルーフFDとの間に配置したシールDIも図6に示す。
【0048】
ここで、図6に示す位置から始めて、摺動キャリッジSを車両長手方向で後方へ変位させると、カバーDがZ方向において後縁HKで展開する。この場合、制御ロッドSSはスロットリンクキャリッジSKと相対的に動く。この第1運動区分において、カバーDはまだ車両長手方向で車両の後方に変位していない。スロットリンクキャリッジSKがガイドレールFS内で案内され、制御ロッドSSのZ方向の動きは実質的にないため、スロットリンクキャリッジKSとの連結により、スロット制御リンクKSがガイドレールFSの方向においてZ方向で下向きに摺動要素SEの連結要素KESの動きを制御する。この場合、摺動要素SEの連結要素KESはスロット制御リンクKSの前方部分VAの方向に案内される。
【0049】
摺動要素SEの連結要素KESがZ方向に動くことにより、前方展開レバーの後端領域HEがガイドレールFSの方向においてZ方向で下向きに動き、前方展開レバーVHが連結要素KEを中心に枢動する。この回転のため、カバーDの前縁VKはZ方向に関し略同位置のままである。この場合、前端領域VEとガイドレールFSとの距離ABが増加する。この距離ABの増加は、カバーDの前縁VKの動きを補償することに対応するので、該前縁は略同位置のままとなる。この状態を図7に示す。図6の状態と比較して、摺動キャリッジSとスロットリンクキャリッジSK及び/又は前方展開レバーVHとの距離が第1運動区分では増加する。
【0050】
摺動キャリッジSを更に後方へ変位させると、カバーDの後縁HKが完全に展開した後で、このカバーが車両ルーフFDを超えて押し出される。この状態を図8に示すが、前縁VKが若干シール要素DIと車両ルーフFDから離されている。また、連結要素KEによって前方展開レバーVHがX方向で静止固定スロットリンクKO1において変位している。また、カバーDの前縁VKはZ方向では実質的に変化しない。
【0051】
図示した部品や要素は全てその明示的な形状を修正及び/又は変更してもよいが、ここで説明した運動学的・機械的配置に関する基本的動作原理は同じままとする。
【参照番号表】
【0052】
A ドライブ
AB 距離
AO 機器
BA 固定部分
D、D’ カバー
DB 貫通孔
DE カバー要素
DI シール
DOE ルーフ開口
DRA ルーフフレーム部分
DT カバーサポート
F 車両
FD 車両ルーフ
FS ガイドレール
HA、VA 部分
HE 後端領域
HH 後方展開レバー
HK 後縁
K スロットリンクキャリッジ
KB スロットリンク部品
KE、KES、KES1、KES2 連結要素
KS スロット制御リンク
KO1、KO2 固定スロットリンク
S 摺動キャリッジ
SA 枢動軸
SE 摺動要素
SK スロットリンクキャリッジ
SS 制御ロッド
VE 前端領域
VH 前方展開レバー
VK、VK’ 前縁
【要約】
【課題】 ルーフ開口DOEを閉鎖するための閉鎖位置から始めて、該開口を開放するために展開手段によって該カバーを後方領域で持ち上げることができる機器に関する。
【解決手段】 展開手段はカバーDを含み、このカバーは、前縁VKと、該前縁VKに対向する後縁HKとを有する。展開手段は、摺動キャリッジSを有し、この摺動キャリッジは、ドライブによって車両長手方向においてガイドレールFS内で変位可能である。展開手段はまた展開レバーVHを含み、この展開レバーは前端領域VEと、後端領域HEと、該前端領域VEと該後端領域HEとの間に配置した連結要素KEとを含む。展開手段は付加的に、ガイドレールFSにおいて車両長手方向で変位可能となるように配置したスロットガイドキャリッジKSと、摺動キャリッジSに連結され、車両長手方向でガイドレールFSと相対的に変位可能となるように案内される制御ロッドSSとを含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8