特許第6154576号(P6154576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154576
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】肌着
(51)【国際特許分類】
   A41B 17/00 20060101AFI20170619BHJP
   D04B 1/24 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   A41B17/00 Z
   D04B1/24
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-84865(P2012-84865)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-213300(P2013-213300A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 知佐
【審査官】 一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−307360(JP,A)
【文献】 特開2003−155646(JP,A)
【文献】 特開平10−53941(JP,A)
【文献】 特開2001−303402(JP,A)
【文献】 特開2009−68128(JP,A)
【文献】 特開2000−45155(JP,A)
【文献】 特開2002−339198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/00 − 9/16
A41B 17/00
D04B 1/00 − 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン弾性繊維が生地重量の3%以上30%以下混用されたベア天竺のシングル組織の生地からなり、肌に触れる面がニードルループ側であり、カトーテック製KES−SEを用い、感度をHに設定し、荷重25gfおよび摩擦子25gfの合計50gfで、該摩擦子に綿標準規格布「かなきん3号」を取り付け、移動速度1mm/secで測定するときの、生地のニードルループ側の経方向の摩擦係数が0.45以下であり、かつ、生地のシンカーループ側の経方向の摩擦係数が0.55以下であることを特徴とする肌着。
【請求項2】
前記生地のニードルループ側の経方向の摩擦係数が0.398以下であり、かつ、前記生地のシンカーループ側の経方向の摩擦係数が0.538以下である、請求項1に記載の肌着。
【請求項3】
再生セルロース繊維が生地重量の30%以上混用された請求項1又は2に記載の肌着。
【請求項4】
前記再生セルロース繊維が長繊維である請求項に記載の肌着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適度なフィット性と肌触りを有し、着用快適性に優れた肌着に関する。また、着用快適性と外観品位の両者に優れた肌着に関する。具体的には、天竺組織にポリウレタン弾性繊維を挿入したベア天竺組織の生地からなる、薄地で肌触りを向上させて着用快適性を高め、外観品位も高めた肌着に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、衣料品のスリムデザイン化が定着し、おのずと肌着にも身体にフィットしたデザインが要求される。この背景には、ストレッチ性の高いポリウレタン弾性繊維の台頭がある。
肌着用の織物組織には、生産設備や生産性、汎用性、消費性能の観点から、フライス、スムース、天竺などの組織が一般的に用いられているが、このような組織が有するストレッチ性及び回復性では、スリムデザインのアウターに追随できない場合がある。そこで、ポリウレタン弾性繊維をベアで挿入し、ストレッチ性を高め、フィット性や動作性を向上させる工夫がなされてきた(例えば、下記非特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、ダブル編機によるフライスやスムースにポリウレタン弾性繊維をベアで挿入し、ベアフライス組織やベアスムース組織にすると、目付が高まり且つ地厚になり、アウターのデザインに影響しかねない。
一方、シングル編機による天竺にポリウレタン弾性繊維を挿入したベア天竺組織は、相対的に薄く身体にフィットした編地に仕上げることができることから、肌着に好んで用いられている。
【0004】
ベア天竺組織は、一般的にシンカーループ側が裏面(肌に触れる面)、ニードルループ側が表面(肌に触れる面と反対)とされ(例えば、下記非特許文献1および2参照)、裏面が肌側に縫製されることが一般的である(下記非特許文献2参照)。その理由は、シンカーループ側では、染まりにくいポリウレタン弾性繊維がギラギラとした光沢として目立ちやすく、敬遠されるためである。
【0005】
ところで、この配置方法で肌着にした場合、裏、つまり半円形の編目が緯方向に配列されるシンカーループ側と、表、つまりV型に連続した編目が経方向に規則正しく配列されるニードルループ側では、風合いが全く異なる。この理由は、シンカーループ側の経方向の摩擦係数が、ニードルループ側のそれよりも高く、すべりが悪いためであるが(例えば、下記非特許文献2参照)、このことは着脱時や腕を上げる動作時の肌触りを悪化させることにつながる。人の動作時の皮膚伸び率は、水平よりも垂直方向に大きいことが判っている(例えば、下記非特許文献3参照)。肌に触れる面は、皮膚組織と一層接近する位置にあるため、経方向の摩擦をより小さくしなければ、接圧により着心地を損ねることとなる。また、特に経方向に摩擦係数の高いシンカーループ側を工夫無く表面(肌に触れる面と反対)に配置すると、アウターとのスレによる毛羽立ちが発生しやすく、ピリングやスナッグを形成しアウターとの摩擦を高めることになり、突っ張って動作性を低下させることになる。更には、表裏の摩擦係数が異なることで、消費者が店頭で確認した肌着製品の「表側」の肌触り及び風合いと、実際着用した着心地とが必然的に乖離し、信用性を低下させることとなる。
【0006】
従来より、肌と布帛の摩擦を低減させることに着目した布帛の報告がある。
例えば、運動中に生地がはためいて換気効果を促しつつ、生地肌側面が皮膚に当たる場合の摩擦係数を下げる手法が報告されているが(例えば、下記特許文献1参照)、これは本発明の肌にフィットする肌着用の生地とは全く異なる様態であり、表裏の摩擦係数の差は全く考慮されていない。また、汗をかいて生地がぬれたときに起こる肌とのべたつきを軽減することに着眼し、布帛の肌に接する側の面に一定高低差以上の凹凸を付与する手法(例えば、下記特許文献2参照)、肌との接触面積を減らして、肌との摩擦抵抗を下げ、同時に肌からの汗を吸い上げる効果でべたつきを軽減する手法(例えば、特許文献3および4参照)が報告されている。これらの手法からなる生地では、肌及び生地が濡れていない、つまり定常状態での肌に接する面と肌との摩擦を低減する効果は得られず、薄地で且つフィット性をも高めた、肌触りを向上させた肌着を提供することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−68128号公報
【特許文献2】特開2011−140733号公報
【特許文献3】国際公開第00/66822号パンフレット
【特許文献4】特開平10−053951号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】理工新書 ニットに関する24章 第12章 P136
【非特許文献2】繊維ジャーナル ニットアパレル入門 第6編 P247
【非特許文献3】着ごこちと科学 掌華房 第6章 P79、80 原田隆司
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決すべく、薄地で適度なフィット性を持ち、肌との摩擦軽減により肌触りと動作性が向上し、着用快適性に優れた肌着を提供することである。更には、適度なフィット性を持ち、着用快適性と外観品位の両立した肌着を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、天竺組織にポリウレタン弾性繊維を挿入したベア天竺組織で、皮膚との摩擦を低減したニードルループ側を肌側に配置することによって、上記目的が達成されることを見出した。さらに、シンカーループ側のポリウレタン弾性繊維の光沢を押さえ、アウターとのスレによる毛羽立ちを抑えた、薄地でフィット性が高く、肌触りのよい生地を開発することに成功し、本発明に至った。
即ち、本発明は下記の発明を提供する。
【0011】
(1)ポリウレタン弾性繊維が生地重量の3%以上30%以下混用されたベア天竺のシングル組織の生地からなり、肌に触れる面がニードルループ側であり、カトーテック製KES−SEを用い、感度をHに設定し、荷重25gfおよび摩擦子25gfの合計50gfで、該摩擦子に綿標準規格布「かなきん3号」を取り付け、移動速度1mm/secで測定するときの、生地のニードルループ側の経方向の摩擦係数が0.45以下であり、かつ、生地のシンカーループ側の経方向の摩擦係数が0.55以下であることを特徴とする肌着。
(2)前記生地のニードルループ側の経方向の摩擦係数が0.398以下であり、かつ、前記生地のシンカーループ側の経方向の摩擦係数が0.538以下である、前記(1)に記載の肌着。
(3)再生セルロース繊維が生地重量の30%以上混用された前記(1)又は(2)に記載の肌着。
(4)前記再生セルロース繊維が長繊維である、前記(3)に記載の肌着。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、適度なフィット性を持ち、肌との摩擦軽減により肌触りと動作性が向上し、着用快適性に優れた肌着が得られる。さらには、着用快適性に加えて外観品位にも優れた肌着が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の肌着は、ポリウレタン弾性繊維を3%以上30%以下混用したベア天竺組織からなり、ニードルループ側を肌に触れる面に配置した、着用快適性の高い肌着である。ニードルループ側の経方向の摩擦係数を0.45以下にすると、着用時および動作時に肌との摩擦がさらに軽減され、動作性及び肌触りがさらに良くなるので好ましい。ニードルループ側の経方向の摩擦係数を0.4以下にすると一層好ましく、乾燥肌もしくは敏感な肌を有する人に対しても刺激を低減することができる。また、シンカーループ側の経方向の摩擦係数を0.55以下にすると、アウターとのスレによる毛羽立ちが発生しにくく、アウターとの摩擦を低減し、動作性の低下を抑制することができるので好ましい。更に好ましくは0.5以下である。この摩擦係数を抑えることで、ループの浮きが抑えられるため、必然的にポリウレタン弾性繊維の光沢も押さえられる。
【0014】
ニードルループ側およびシンカーループ側の経方向の摩擦係数を小さくする方法としては、染色仕上後のコース数が60以上140以下、ウェル数が40以上90以下になるようにセットする方法がよい。仕上げ後のコース数が140、ウェル数が90を超えるまでに度目を詰め編成しようとすると、編針による糸傷が発生し、生地に毛羽ができてしまう。コース数が60未満、ウェル数が40未満の場合は、生地の目が開き凹凸ができて肌触りが悪くなる。
【0015】
本発明の肌着を構成する生地において、混用されるポリウレタン弾性繊維は3%以上30%以下であることが必要である。3%未満ではフィット性に劣り、アウターのスリムデザインにひびく、弛みのできた肌着となる。ポリウレタン弾性繊維の混用率が30%を超えると、身体を圧迫しすぎ、血流を阻害し、就寝時も着用されうる肌着としてはふさわしくない。着用時、適度な緊張感と、ストレスの発生から逃れるために、好ましくは5%以上15%以下である。
【0016】
ポリウレタン弾性繊維の繊度は20dtex以上50dtex未満が好ましい。20dtex未満では染色仕上後、生地が伸びすぎてストレッチ性及び回復性の保持が困難となる。50dtex以上では染色仕上後、生地が入りすぎて分厚くなりすぎ、過度な被服圧をもたらし、前述同様肌着にはふさわしくない生地となる。フィット性と着用感から最も好ましい繊度は22dtex以上40dtex以下である。
【0017】
本発明の肌着を構成する生地には、高い吸放湿性を有する再生セルロース繊維が30%以上混用されることが好ましい。その理由は、吸放湿スピードが非常に高く、肌からの不感蒸泄を吸収し、肌着内の温湿度をコントロールすることができるためである。この湿度コントロール機能は、再生セルロース繊維の混用率が40%以上で実感され、60%以上でその効果を大きく発揮することができる。この再生セルロース繊維は、繊維毛羽が少ない長繊維糸条であると肌との摩擦を軽減する観点から尚一層好ましい。
【0018】
本発明の肌着を構成する生地に、再生セルロース繊維とそれ以外の繊維を混用する場合は、吸放湿性の観点から、再生セルロース以外の繊維の混率を67%以下、蒸れ感の軽減を実感するためには50%以下、蒸れ感を抑止するためには40%以下にすることが好ましい。更に、再生セルロース繊維とそれ以外の繊維を単独で機上交編するよりも、2種以上の繊維をエア、熱、撚糸装置により一糸条に複合する形態が好ましい。その理由は、繊維固有の収縮差、膨らみ差、捲縮特性差等の差異が、染色仕上後の生地に凹凸をもたらし、ひいては生地の摩擦係数を高めるからである。一糸条に複合する方法としては、例えば、再生セルロース長繊維と、ポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系等の合成長繊維とを、合撚、インターレース混繊、仮撚後インターレース混繊、インターレース混繊後仮撚、インターレース混繊後追撚および流体撹乱加工による混繊等の手法で複合する方法が挙げられる。
【0019】
複合の組み合わせとしては、着用快適性、消費性能および生産性の観点からは再生セルロース長繊維とポリエステル系長繊維との複合糸が、また着用快適性、特に吸湿性と曲げ柔らかさの観点からは再生セルロース長繊維とポリアミド系長繊維との複合糸が好ましく、いずれも合成繊維に未延伸糸(POY)を用いてもよい。
【0020】
本発明の肌着を構成する繊維は、毛羽を有する短繊維よりも毛羽のない長繊維が好ましい。長繊維の場合、繊維の繊度が30dtex以上130dtex未満の繊維を選定し編成することが好ましい。この理由は、生地の風合いを柔らかくするからである。30dtex未満では肌着に必要な破裂強度がもたない。また130dtex以上では肌に添う柔らかさが得られない。構成繊維の形状としては、肌との摩擦を低減し、ミクロな傷を付けにくく、またアウターとの摩擦をも低減する観点から、構成単糸は三角や十字等の角のある断面形状よりも、角がない丸や楕円等の断面形状であることが好ましい。構成糸の単糸繊度は、細いほど生地が柔らくなることから、4dtex以下であることが好ましく、2dtex以下がさらに好ましい。繊維の形態は原糸または加工糸のいずれでもよい。
【0021】
構成繊維に短繊維を用いる場合は、風合いを柔らかく、肌との摩擦を軽減するため、単糸繊度は2dtex以下が好ましい。繊維長は25mm以上が好ましく、さらに好ましくは38mm以上である。その素材としては、セルロース系ステープル、ポリエステル系ステープル、アクリル系ステープル、ナイロン系ステープル、もしくはこれらの複合ステープルが挙げられる。いずれも角のない断面形状の繊維が好ましい。このとき、短繊維の太さは40番手から60番手であれば、短繊維であっても生地を柔らかくする傾向がある。この際の構成短繊維の撚数は糸の硬さ、風合いの面から20/inch以上で30/inch以下が好ましい。この短繊維を前述の長繊維と機上で複合することもできるが、摩擦係数を下げるためには、予め精紡交撚の技術で一糸条とし、短繊維の毛羽を長繊維で包み込むようにすることが好ましい。
【0022】
本発明の肌着を構成する生地の編成には、一般のシングル丸編み機を用いればよいが、そのゲージは28G以上60G以下が肌着用の生地としての風合い、物性、生産性の観点から好ましい。さらに好ましくは28G以上50G以下である。
【0023】
本発明の肌着を構成する生地の染色加工は、プレセット、精練、染色、仕上げ加工、ファイナルセットの順で処理を施す。精練及び染色に用いる処理機は、一般に使用される液流染色機などのテンションの小さいものや連続精練機等が好ましい。
染色の前に、晒及び漂白仕上により、白度を高める工程を加えてもよい。染料、染色助剤、仕上加工剤は、一般に市販されている合成繊維及び/又はセルロース繊維の染色に開発されているものを任意に選定できる。染色前に再生セルロース系繊維の染色性改善のためのアルカリ処理や、風合い向上のためのポリエステル系繊維用アルカリ減量加工などの処理を施してもよい。また染浴中で吸水加工剤や柔軟剤を併用したり、ソーピング後にこれらをパディングすることも可能である。柔軟剤の利用は、肌触りや風合いを高めるために有効である。ファイナルセット時は、生地をフラットにする意味で巾出しを行うとよい。更に、生地の平滑加工として、ペーパー、フェルト、プラスト等によるカレンダー処理を行うと、肌やアウターとの摩擦係数を抑える効果が高まる。
【0024】
本発明の肌着を構成する生地の目付は特に限定されないが、約100g/m〜約200g/mが好ましく、さらに好ましくは約120g/m〜約180g/mである。目付が小さすぎると汗処理機能に劣り、破裂強度が小さく、消費性能に問題が生じ、反対に大きすぎると分厚くなりすぎて、着用動作性が劣り、外観に影響を及ぼすこととなる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。まず、本発明で用いた測定方法および評価方法について説明する。
(1)摩擦係数の測定
カトーテック製KES−SEを用い、感度をHに設定し、荷重25gfおよび摩擦子25gfの合計50gfで測定した。摩擦子に綿標準規格布「かなきん3号」を取り付け、移動速度は標準条件の1mm/secで、シンカーループ側、ニードルループ側共に経方向について3回測定し、平均値を算出した。測定する生地はカールを考慮し、伸ばさないように、押さえ金枠で把持して測定した。
【0026】
(2)着心地の判定
10人のモニターが試作生地で作製したTシャツを着用し、肌側の着用時の肌触り、着脱性および動作時の動きやすさの3点を総合して、「着心地」として下記の5段階で官能評価し、最頻値を評価結果とした。
5 良い
4 やや良い
3 どちらともいえない
2 やや悪い
1 悪い
【0027】
(3)生地風合いの判定
上記(2)とは別の10人のモニターが試作生地のニードルループ側およびシンカーループ側の肌触りを下記の5段階で官能評価し、最頻値を評価結果とした。
5 良い
4 やや良い
3 どちらともいえない
2 やや悪い
1 悪い
【0028】
(4)シンカーループ側のギラツキの判定
上記(3)と同じモニターに、シンカーループ側のぎらつき感を下記の5段階で官能評価させ、最頻値を評価結果とした。
5 全く目立たない
4 殆ど目立たない
3 どちらともいえない
2 やや目立つ
1 目立つ
【0029】
(5)消費性能(毛羽立ち、毛玉発生の確認)の判定
試作生地で作製した肌着を、シンカーループ側を外表にした状態で、洗濯、脱水、タンブラー乾燥を10回繰り返し、シンカーループ側の外観変化を下記基準で評価した。
5 毛羽立ち毛玉がほとんど目立たない
4 毛羽立ち毛玉が僅かに認められる
3 毛羽立ち毛玉がやや認められる
2 毛羽立ち毛玉が認められる
1 毛羽立ち毛玉が目立つ
なお、洗濯方法は、JIS−L−1027 103法に準じ、洗濯と乾燥を10回繰り返し行った。洗剤は花王(株)製アタックを用い、増量布と共に、5分洗濯−30秒脱水−2分すすぎ−30秒脱水−2分すすぎ−30秒脱水−タンブラー乾燥60℃×1時間を1回とした。
【0030】
(実施例1)
41dtex26fの丸断面ナイロン66のPOYを公知の方法で仮撚加工して得た仮撚フィラメントと、84dtex54fのキュプラ(登録商標ベンベルグ)ブライトフィラメントとを、公知の方法でインターレース混繊を行った。出来上がった複合糸は、キュプラの混率が71.8%、ナイロン66の混率が28.2%となった。この複合糸と、22dtex3fのポリウレタン弾性繊維(登録商標ロイカ)を積極送り装置を用いて28Gシングル丸編機上で複合し、キュプラ混率が65%、ナイロン混率が25%、ポリウレタン弾性繊維混率が10%ベア天竺を得た。この生地をプレセットした後、液流染色機を用いて精練、染色し、ファイナルセット後にコース数が80、ウェール数が45の生地1を得た。この生地の摩擦係数を測定したところ、表1に示す通り、小さかった。続いてニードルループ側を肌に触れる面になるよう縫製して肌着(上半身用)とし、モニターに着心地の検査、生地表裏の風合いの検査を行わせた。結果を表1に示す。着心地に高い評価を得、風合いについても表裏差が小さく、良好と判定された。また繰り返し洗濯を行い、外観検査を行ったところ、毛羽立ちが少なく、消費性能にも優れていた。
【0031】
(実施例2)
56dtex30fのキュプラブライトフィラメントを2本引き揃え、22dtex3fのポリウレタン弾性繊維を積極送り装置を用いて28Gシングル丸編機上で複合し、キュプラ混率90%、ポリウレタン弾性繊維混率10%のベア天竺を得た。この生地をプレセットした後、液流染色機を用いて精練、染色し、ファイナルセット後にコース数が70、ウェール数が48の生地2を得た。この生地の摩擦係数は表1に示す通り、小さかった。続いてニードルループ側を肌に触れる面になるよう縫製して肌着(上半身用)とし、モニターに着心地の検査、生地風合いの検査を行わせた。着心地に高い評価を得、風合いについても表裏差が小さく、良好と判定された。また繰り返し洗濯を行い、外観検査を行ったところ、毛羽立ちは目立たず、消費性能にも優れていた。結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
40dtex24fの丸断面ポリエステルのPOYを公知の方法で仮撚加工して得た仮撚フィラメントと、56dtex30fのキュプラフルダルフィラメントとを公知の方法でインターレース混繊を行った。出来上がった複合糸は、キュプラの混率71.8%、ポリエステルの混率28.2%となった。この複合糸と、84dtex36fの丸断面ポリエステルフィラメントを公知の方法で仮撚加工して得たポリエステル仮撚フィラメントと、22dtex3fのポリウレタン弾性繊維を積極送り装置を用いて28Gシングル丸編機上で複合し、キュプラ混率30%、ポリエステル混率60%、ポリウレタン弾性繊維混率10%のベア天竺を得た。この生地をプレセットした後、液流染色機を用いて精練、染色し、ファイナルセット後にコース数が76、ウェール数が50の生地3を得た。この生地の摩擦係数は表1に示す通り、小さかった。続いてニードルループ側を肌に触れる面になるよう縫製して肌着(上半身用)とし、モニターに着心地の検査、生地表裏の風合いの検査を行わせた。着心地に高い評価を得、風合いについても表裏差が小さく、良好と判定された。また繰り返し洗濯を行い、外観検査を行ったところ、毛羽立ちが少なく、消費性能にも優れていた。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
84dtex45fのキュプラフィラメントと、38dtex13fの丸断面ナイロン66を、公知の方法でインターレース仮撚加工を行った。出来上がった複合糸は、キュプラの混率69%、ナイロン66の混率39%となった。この複合糸と22dtex3fのポリウレタン弾性繊維を積極送り装置を用いて28Gシングル丸編機上で複合し、キュプラ混率67%、ナイロン混率30%、ポリウレタン弾性繊維混率3%のベア天竺を得た。この生地をプレセットした後、液流染色機を用いて精練、染色し、ファイナルセット後にコース数が64、ウェール数が42の生地4を得た。この生地の摩擦係数は表1に示す通り、小さかった。続いてニードルループ側を肌に触れる面になるよう縫製して肌着(上半身用)とし、モニターに着心地の検査、生地表裏の風合いの検査を行わせた。着心地に高い評価を得、風合いについても表裏差が小さく、良好と判定された。また繰り返し洗濯を行い、外観検査を行ったところ、毛羽立ちが少なく、消費性能にも優れていた。結果を表1に示す。
【0034】
参考例5)
100dtex48fの十字断面ポリエステルを公知の方法で仮撚加工して得たポリエステル仮撚フィラメントと、22dtex3fのポリウレタン弾性繊維を積極送り装置を用いて28Gシングル丸編機上で複合し、ポリエステル混率91%、ポリウレタン弾性繊維混率9%のベア天竺を得た。この生地をプレセットした後、液流染色機を用いて精練、染色し、ファイナルセット後にコース数が72、ウェール数が44の生地5を得た。この生地の摩擦係数は表1に示す通り、やや大きかった。続いてニードルループ側を肌に触れる面になるよう縫製して肌着(上半身用)とし、モニターに着心地の検査、生地表裏の風合いの検査を行わせた。風合いについては、表裏差が大きかったが、肌側の裏面は悪くはなかった。着心地は、ふかつき感が若干有り、やや悪かった。また繰り返し洗濯を行い、外観検査を行ったところ、毛羽立ちは僅か認められる程度で、消費性能にも優れていた。結果を表1に示す。
【0035】
参考例6)
100dtex72fの丸断面ナイロン66を、公知の方法で仮撚加工して得たナイロン66仮撚フィラメントと、22dtex3fのポリウレタン弾性繊維を積極送り装置を用いて28Gシングル丸編機上で複合し、ナイロン混率91%、ポリウレタン弾性繊維混率9%のベア天竺を得た。この生地をプレセットした後、液流染色機を用いて精練、染色し、ファイナルセット後にコース数が72、ウェール数が44の生地6を得た。この生地の摩擦係数は表1に示す通り、やや大きかった。続いてニードルループ側を肌に触れる面になるよう縫製して肌着(上半身用)とし、モニターに着心地の検査、生地表裏の風合いの検査を行わせた。風合いについては、表裏差が大きかったが、肌側の裏面は良好と判定された。着心地は、ふかつき感が若干有ったが、悪くはなかった。また繰り返し洗濯を行い、外観検査を行ったところ、毛羽立ちは僅か認められる程度で、消費性能にも優れていた。結果を表1に示す。
【0036】
参考例7)
40/−のコーマ綿と、33dtex3fのポリウレタン弾性繊維を積極送り装置を用いて28Gシングル丸編機上で複合し、綿混率90%、ポリウレタン弾性繊維混率10%のベア天竺を得た。この生地をプレセットした後、液流染色機を用いて精練、染色し、ファイナルセット後にコース数が44、ウェール数が28の生地7を得た。この生地の摩擦係数は表1に示す通り、やや大きかった。続いてニードルループ側を肌に触れる面になるよう縫製して肌着(上半身用)とし、モニターに着心地の検査、生地表裏の風合いの検査を行わせた。風合いについては、表裏差が大きかったが、肌側の裏面は悪くはなかった。着心地は、がさつき感が有り、やや悪かった。また繰り返し洗濯を行い、外観検査を行ったところ、毛羽立ちが認められた。結果を表1に示す。
【0037】
(比較例1)
実施例5で得た生地5を、シンカーループ側を肌に触れる面になるように縫製して肌着(上半身用)とし、実施例5と同様に、モニターに着心地の検査、生地表裏の風合いの検査を行わせた。風合いについては、表裏差が大きく、肌側の裏面は悪かった。着心地は、ふかつき感が有り、悪かった。また繰り返し洗濯を行い、外観検査を行ったところ、毛羽立ちはほとんどなく、消費性能には優れていた。結果を表1に示す。
【0038】
(比較例2)
実施例6で得た生地6を、シンカーループ側を肌に触れる面になるようにして縫製して肌着(上半身用)とし、実施例6と同様に、モニターに着心地の検査、生地表裏の風合いの検査を行わせた。風合については、表裏差が大きく、肌側の裏面は悪かった。着心地は、ふかつき感が有り、悪かった。また繰り返し洗濯を行い、外観検査を行ったところ、毛羽立ちは僅か認められる程度で、消費性能に優れていた。結果を表1に示す。
【0039】
(比較例3)
実施例7で得た生地7を、シンカーループ側を肌に触れる面になるようにして縫製して肌着(上半身用)とし、実施例7と同様に、モニターに着心地の検査、生地表裏の風合いの検査を行わせた。風合については、表裏差が大きく、肌側の裏面は悪かった。着心地は、短繊維特有の毛羽によるざらつき感が有り、悪かった。また繰り返し洗濯を行い、外観検査を行ったところ、ピリングが認められ、消費性能にやや劣っていた。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の肌着は、適度なフィット性を有し、肌触りおよび動作性等の着用快適性にも優れ、消費性能にも優れた肌着であり、特に上半身用途にふさわしい肌着である。