特許第6154641号(P6154641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154641
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】自動ねじ締め機
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   B23P19/06 K
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-74308(P2013-74308)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-198357(P2014-198357A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇野 穣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大和
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−328962(JP,A)
【文献】 特開平07−223131(JP,A)
【文献】 特開昭53−068500(JP,A)
【文献】 特許第3758423(JP,B2)
【文献】 実開平06−005831(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじの頭部に係合可能なビットと、このビットを回転駆動する回転駆動源と、前記ビットに推力を付与可能かつ前記ビットをビットの延びる方向へ往復移動可能な推力付与手段と、前記回転駆動源および前記推力付与手段をそれぞれ制御する制御手段とを備えて成る自動ねじ締め機において、
前記回転駆動源は、前記ビットに平行に配されたスプライン軸を接続して成り、
前記スプライン軸は、これと一体に回転しつつスプライン軸の延びる方向に沿って摺動自在な摺動部材を備え、
前記摺動部材は、これに固定され前記スプライン軸の回転に伴い回転する駆動ギアを備えて成り、
前記ビットは、その上方に固定され前記駆動ギアに噛合する従動ギアを備え、
前記推力付与手段は、その先端に前記従動ギアを回転自在に接続して成り、前記ビットの軸線の延長線上に配され、
前記制御手段は、前記ビットの位置を検出する高さ検出手段を接続するとともに、前記ねじの先端がワークを貫通した検出信号を前記高さ検出手段から受け取り、この検出信号に基づいて前記推力付与手段の出力を切り替えて前記推力付与手段を高推力から低推力に切り替えねじを螺入するよう制御して成ることを特徴とする自動ねじ締め機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフドリリングタッピンねじの締結作業を行う自動ねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂ねじをワークなどへ締結する場合、前記ワークには下穴あるいはめねじが予め加工されていることが多い。しかしながら、昨今、下穴およびめねじの加工費用を削減するため、ワークの下穴加工およびめねじ加工は、締結するねじ自身により行う方法が採用されることも多い。このような加工費用を削減できる締結作業に用いられるねじは、後述するビットに係合する頭部と、この頭部に隣接し外周に螺旋を形成したねじ部と、このねじ部の一端に刃を形成した先端部と、から構成されており、一般的にセルフドリリングタッピンねじ(以下、単にねじという)と呼ばれている。
【0003】
前記ねじを締結する自動ねじ締め機は、特許文献1に開示されており、以下、図3に基づき説明する。この従来の自動ねじ締め機100は、前記ねじ(図示せず)の頭部に係合可能なビット102と、このビット102に回転を付与する回転駆動源の一例であるACサーボモータ103と、前記ビット102の下降および前記ビット102への推力を付与可能な推力付与手段104と、前記ねじのねじ込み深さを検出する深さ検出手段120と、前記深さ検出手段120の検出に基づき前記推力付与手段104の作動を切り替える制御手段(図示せず)と、を備えている。また、前記ビット102は、前記推力付与手段104の作動によってACサーボモータ103とともに昇降するように構成されている。さらに、前記ACサーボモータ103には、検出信号などを伝送するケーブル103aが接続されており、このケーブル103aは前記制御手段に接続されている。つまり、従来の自動ねじ締め機100は、前記深さ検出手段120および前記制御手段によって前記ビット102の高さ位置を検出するように構成されている。
【0004】
次に、従来の自動ねじ締め機100の作用について説明する。従来の自動ねじ締め機100は、まず、前記ビット102に高推力および高回転を付与し、ビット102に係合した前記ねじをワーク(図示せず)へ強く押し当てながら高速で回転させて前記ワークへの下穴加工を行う。ねじの先端が薄いワークを貫通して前記下穴加工が完了すれば、ワークへのめねじ加工を行うことになり、このめねじ加工では、前記ビット102を低推力および低回転に切り替える必要がある。そこで、前記深さ検出手段120の検出信号が下穴加工完了時に発せられるように予め設定されているため、めねじ加工時のビット102は、低推力および低回転で動作するよう前記制御手段によって切り替えられる。このように、従来の自動ねじ締め機100は、ビット102に付与する推力および回転を下穴加工あるいはタップ加工などの各工程に合わせて設定できるため、ワークへの下穴加工を短時間で行え、しかもタップ加工を最適な推力で行える特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-156649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記ビット102の下降速度について、前記下穴加工の完了直前は、ねじの先端がワークを貫通していないため、ほぼ零に近い低速となっている。一方、下穴加工の完了直後は、前記ねじに高推力が負荷され続けているため、前述のほぼ零の低速から急激に速度を増しビット102の下降速度が高速になる。続いて、この高速の下降速度は、前記深さ検出手段120によって低速に切り替えられるため、急激に低速へと変化する。つまり、従来の自動ねじ締め機100は、このように下降する際、低速から高速あるいは高速から低速へと急激な速度差が生じるため、ビット102とともに下降する前記ACサーボモータ103に大きな加速度が伝わる。これにより、ACサーボモータ103自身やACサーボモータ103に内蔵されるエンコーダ(図示せず)を破壊し易く、ビット102が回転不能となる問題があった。また、前記ACサーボモータ103がビット102とともに下降するため、ACサーボモータ103に接続された前記ケーブル103aが下方へ引っ張られ易く、断線してACサーボモータ103が動作不能となる問題もあった。さらに、前記推力付与手段104は、前記ビット102の軸線上に対してオフセットした位置に配されているため、推力の付与時の前記ビット102は、その軸線に対して反ってしまい、係合したねじを傾けてワークに押さえ付けてしまう。これにより、従来の自動ねじ締め機100は、前記ねじを斜めに締め付ける問題もあった。さらに、前記ビット102の反りによって、このビット102に曲げモーメントが生じるため、前記ビット102が折れ易い問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、ビットの昇降速度が大きく変化しても、過大な加速度が前記回転駆動源に伝わり難い自動ねじ締め機の提供を目的とする。この目的を達成するため、本発明は、前記回転駆動源は、前記ビットに平行に配されたスプライン軸を接続して成り、前記スプライン軸は、これと一体に回転しつつスプライン軸の延びる方向に沿って摺動自在な摺動部材を備え、前記摺動部材は、これに固定され前記スプライン軸の回転に伴い回転する駆動ギアを備えて成り、前記ビットは、その上方に固定され前記駆動ギアに噛合する従動ギアを備え、前記推力付与手段は、その先端に前記従動ギアを回転自在に接続して成り、前記ビットの軸線の延長線上に配され、前記制御手段は、前記ビットの位置を検出する高さ検出手段を接続するとともに、前記ねじの先端がワークを貫通した検出信号を前記高さ検出手段から受け取り、この検出信号に基づいて前記推力付与手段の出力を切り替えて前記推力付与手段を高推力から低推力に切り替えねじを螺入するよう制御して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動ねじ締め機1は、スプライン軸10およびスプラインナット11を採用しているため、前記ビット2の回転およびビット2の摺動動作時であっても、回転駆動源の一例であるACサーボモータ3は、常に一定の位置から動くことがない。つまり、前記ACサーボモータ3には、前記ビット102の下降速度の変化によって生じる加速度が伝わらなくなる。よって、前記ACサーボモータ3には過大な加速度が伝わり難いため、ACサーボモータ3自身の損傷およびこのACサーボモータ3に内蔵されるエンコーダ(図示せず)の破損を従来よりも低減できる利点がある。また、本発明の自動ねじ締め機1は、前記ACサーボモータ3が常に一定の位置で固定されているため、ACサーボモータ3に接続されたケーブル3aが前記ビット102の下降によって下方へ引っ張られることがない。このため、従来のようなケーブルの断線の問題が低減する利点もある。さらに、前記推力付与手段4は、ビット2の軸線の延長線上に位置するよう配されており、前記ビット2を真上から押さえ付けるため、前記ビット2は、その軸線に対して反りにくくなる。よって、本発明の自動ねじ締め機1は、従来のようにねじを斜めに締め付けることが低減するとともに、曲げモーメントの発生を抑制してビットの破損が低減する利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は、本発明に係る自動ねじ締め機の正面図であり、(b)は、(a)の側面から見た一部切欠断面図である。
図2図1(b)の動作状態を示す一部切欠断面図である。
図3】従来の自動ねじ締め機の要部を示す一部切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の自動ねじ締め機について、図1(a)、図1(b)および図2を用いて以下に説明する。本発明の自動ねじ締め機1は、ねじSの頭部に係合可能なビット2と、このビット2を回転自在かつ摺動自在に支持してなるLMガイド20と、前記ビット2に推力を付与する推力付与手段と、前記ビット2に回転を付与する回転駆動源と、前記回転駆動源に駆動指令を与える制御手段と、から構成される。この自動ねじ締め機1は、積層されたワークW1,W2に前記ねじSを螺入して所定の高さまで締結するように構成されている。なお、前記ワークW1は、本実施例において、木材が設定される一方、前記ワーク2は、厚みの薄い金属板に設定されている。また、ねじSは、上述したセルフドリリングタッピンねじであるため、ここでは説明を省略する。
【0011】
前記ビット2は、ねじSを内部に保持可能なチャック40に挿通されており、チャック40内に保持されたねじSの上方に位置している。また、前記ビット2の上部は、ビット2とともに回転自在に支持されたビット軸30に連結されており、このビット軸30の上部には、このビット軸30とともに回転可能な従動ギア11bが配されている。前記ビット軸30は、板状からなるプレート23を挿通しており、このプレート23に固定されたフランジにより回転自在に支持されている。また、前記プレート23の上方には、プレート23と平行に配されたジョイントプレート21が配されており、前記ジョイントプレート21および前記プレート23は、本実施例では4本のスペーサ22によって固定されている。前記ジョイントプレート21には、後述するエアシリンダ4のロッド4aに取り付けられるジョイント9が配されており、このジョイント9は、後述するエアシリンダ4に接続されている。また、前記ジョイント9、前記従動ギア11b、前記ビット軸30、前記ビット2は、それぞれの軸線が一致するようにほぼ一直線上に並んで配されている。
【0012】
前記推力付与手段は、その一例であるエアシリンダ4であり、このエアシリンダ4は、圧縮空気を供給することでロッド4aを伸縮自在に構成されており、前記ロッド4aおよび前記ジョイント9の軸線とがほぼ一致するように配されている。このエアシリンダ4は、逆L字の形状をしたフレーム6の上端に固定されており、前記ロッド4aが伸縮すると前記ジョイント9、前記ジョイントプレート21、前記スペーサ22、前記プレート23、前記従動ギア11b、前記ビット軸30、前記ビット2を一体に摺動可能に構成される。
【0013】
前記エアシリンダ4に供給する圧縮空気の圧力は、高圧あるいは低圧の2種類に設定されており、2種類の圧縮空気の切り替えは、図示しない電磁弁および前記制御手段によって行われる。よって、前記エアシリンダ4へ高圧の圧縮空気が供給されると前記ビット2が高推力でねじSを押し付ける一方、エアシリンダ4へ低圧の圧縮空気が供給されると前記ビット2が低推力でねじSを押し付ける。
【0014】
前記高さ検出手段は、その一例である近接センサ5であり、この近接センサ5は、前記チャック40の上方に配され、前記ビット軸30に取り付けられたドグ30aを検出可能に構成されている。また、前記近接センサ5は、前記制御手段にその検出信号を伝送可能に構成されており、前記ドグ30aの取り付け位置を予め調整しておくことで前記ビット2が所定の高さまで下降したことを検出できる。
【0015】
つまり、前記エアシリンダ4の発揮する推力は、前記近接センサ5がドグ30aを検出するまでの区間であると高推力が出力される一方、前記近接センサ5がドグ30aを検出した後の区間であると低推力が出力される。具体的には、前記ねじSの先端部がワークW2の下穴を貫通した後に前記ドグ30aが近接センサ5に検出されるよう、前記ドグ30aの取り付け位置が設定されている。
【0016】
また、図1(a)に示すように前記近接センサ5よりも若干低い位置に近接センサ50が配されているが、この近接センサ50は、図2に示すようにワークW1,W2にねじSが締結され所定の高さまで螺入できたことを検出するセンサである。この近接センサ50は、前記ドグ30aを検出すると前記制御手段に信号を送るように構成される。
【0017】
前記回転駆動源は、その一例であるACサーボモータ3であり、このACサーボモータ3は、前記エアシリンダ4と並んで配され、前記フレーム6の上端に固定されている。また、このACサーボモータ3は、その内部にエンコーダ(図示せず)を搭載しており、この出力軸の回転角を検出可能に構成されている。さらに、前記ACサーボモータ3には、前記制御手段に接続されるケーブル3aが取り付けられており、このケーブル3aは、前記出力軸の回転駆動に必要な動力および前記エンコーダの検出信号を伝送可能に構成されている。また、前記ケーブル3aは、図示しないが前記フレーム6に固定されたケーブル取付板に固定されている。
【0018】
前記出力軸の下方には、前記出力軸の軸線とほぼ一致するようにスプライン軸10が前記ビット軸30とほぼ平行に配されており、前記出力軸および前記スプライン軸10には、カップリング8が固定されている。これにより、前記出力軸および前記スプライン軸10は、それぞれが一体に回転するように構成される。
【0019】
前記スプライン軸10には、内輪(図示せず)および外輪(図示せず)がそれぞれ差動回転可能に構成された摺動部材の一例であるスプラインナット11が挿通されている。また、前記外輪と前記内輪との間に例えば複数の鋼球(図示せず)が組み込まれているため、それぞれが差動回転でき、しかも、一体にスプライン軸10に沿って摺動できる。つまり、前記スプラインナット11は、前記内輪が前記スプライン軸10とともに回転可能かつ、前記内輪および前記外輪が一体となって前記スプライン軸10の延びる方向に沿って摺動可能に構成される。なお、前記スプライン軸10と前記スプラインナット11とを組み合わせたものは、一般的にロータリーボールスプラインと呼ばれている。
【0020】
前記スプラインナット11の前記内輪は、その上部に前記従動ギア11bと係合する駆動ギア11aが固定されているため、前記ACサーボモータ3の反時計回りに回転すると、前記スプライン軸10、スプラインナット11の内輪、前記駆動ギア11aが反時計回りに一体に回転し、前記従動ギア11b、前記ビット軸30、前記ビット2が時計回りに一体に回転するように構成される。
【0021】
前記スプラインナット11の前記外輪は、前記プレート23が固定されており、このプレート23は、前記スプライン軸10の延びる方向に摺動するLMガイド20に固定されている。これにより、前記エアシリンダ4のロッド4aが伸びる方向へ作動すると、前記ジョイントプレート21、前記スペーサ22、前記プレート23、前記LMガイド20、前記スプラインナット11、前記駆動ギア11a、前記従動ギア11b、前記ビット軸30、前記ビット2が一体となって下降する。
【0022】
よって、前記ビット2は、前記ACサーボモータ3の回転を受けながら回転しつつ前記エアシリンダ4の作動を受けて下降可能に構成されている。
【0023】
前記チャック40は、前記フレーム6の下端から延びるブラケットに固定されており、その先端に2つの爪42a,42bが揺動自在に配されている。この爪42a,42bは、互いに閉じる方向へ常時付勢されており、閉じた状態であると前記ねじSのねじ部を確実に保持可能に構成される。また、前記爪42a,42bが閉じた状態で前記ねじSを供給すると、前記ねじSの先端部は、前記爪42a,42bの先端から突出しない。これは、前記ねじSの先端部の直径がねじ部の直径よりも大きく形成されているためである。つまり、前記ねじSの先端部を前記爪42a,42bから突出させるためには、前記爪42a,42bを僅かに開いてからねじSを供給する必要がある。このため、チャック40にエアシリンダ41が配されている。また、このエアシリンダ41は、前記爪42aおよび前記爪42bに係合するように構成されており、これが作動すると爪42a,42abが僅かに開く方向へ揺動する。したがって、前記ねじSの先端部は、前記爪42a,42bの先端から突出でき、その後、前記エアシリンダ41が復帰することで、前記ねじSのねじ部が前記爪42a,42bに確実に保持される。
【0024】
次に、本発明の自動ねじ締め機1の作用について説明する。前記制御手段は、前記エアシリンダ41に動作指令を与えるため、エアシリンダ41が復帰側(縮む方向)へ作動して前記爪42a,42bを僅かに開く。これにより、ねじSは、図示しない部品供給装置から前記チャック40に供給され、その先端が前記爪42a,42bから突出すると前記エアシリンダ41が図1(a)に示すように動作側(伸びる方向)へ作動し、前記爪42a,42bが閉じる。これにより、前記ねじSの軸線および前記ビット2の軸線がほぼ一致し、前記ねじSのねじ部が爪42a,42bによって確実に保持される。
【0025】
この後、前記制御手段は、前記ACサーボモータ3および前記エアシリンダ4に動作指令を与える。この時、前記ドグ30は前記近接センサ5に検出されていないので、エアシリンダ4には、高圧の圧縮空気が供給される。これにより、前記ビット2は、高推力を発するように前記チャック40内を下降しながら、前記ACサーボモータ3の回転によって高速で回転し、前記ねじSの頭部に係合する。さらに、前記ビット2が高回転かつ高推力を保って下降するため、これと係合したねじSは、前記爪42a,42bを押し広げてワークW1に螺入され、ねじSの先端部によって前記ワークW1およびワークW2にそれぞれ穴加工を行う。
【0026】
これらの穴加工の際には、前記制御手段は、前記ビット2を約2000rpmで高速回転させ、かつ約500Nの高推力で下降させるように制御しており、前記ねじSの先端が前記ワークW1,W2の表面に順次当接してワークW1,W2にそれぞれ穴加工を行う。この時、前記ロッド4aが付与する前記推力は、前記ビット2ないし前記ロッド4aを介在する各部材(前記ビット軸30等)の軸線上を通るようにほぼ一直線で伝達されるため、ねじSを高推力で押さえる前記ビット2には、従来のような曲げモーメントを受けることがほとんど無い。よって、本発明の自動ねじ締め機1は、前記ねじSが前記ビット2の軸線に対して傾き難くなるため、ねじSを斜めに締め付ける不具合の発生が低減する。さらに、前記ビット2には従来のような曲げモーメントが加わらないため、ビット2は従来に比べて破損し難くなる。
【0027】
また、前記ビット2によって回転および下降するねじSは、前記ワークW2の表面に当接した時点で所定の下降速度からほぼ零の下降速度となるため、前記ビット2とともに下降する各部材(LMガイド20等)も下降速度が急激に変化する。このように比較的大きな加速度が前記各部材に生じても、前記ACサーボモータ3が前記ビット2とともに下降しないため、本発明の自動ねじ締め機1は、従来のように前記エンコーダ等の破損が低減する。
【0028】
また、上述からも分かるように前記ACサーボモータ3に接続された前記ケーブル3aについても前記ビット2とともに下降しない。これにより、本発明の自動ねじ締め機1は、従来のようにケーブル3aがビット2の昇降に併せて伸縮することがないため、従来のようなケーブル3aの断線の発生を低減できる。
【0029】
次に、前記ドグ30aは、上述したように前記ねじSの先端部が前記ワークW2を貫通した後に前記近接センサ5で検出される位置に配されているため、この検出信号を受けた前記制御手段が前記エアシリンダ4に供給する圧縮空気を低圧に切り替えるとともに、前記ビット2の回転数を低速回転に切り替える。これにより、前記ビット2の推力が約100Nへと低推力に切り替えられるとともに、前記ビット2の回転数が約300rpmへと低速回転へ切り替えられる。したがって、前記ビット2aは、これに係合した前記ねじSに低速回転および低推力を付与し、前記ねじSを前記ワークW2へ螺入するため、前記ねじSのねじ部は、適切な推力および回転数でめねじ加工を行える。
【0030】
次に、前記ビット2が図2に示す位置まで下降すると、前記近接センサ50が前記ドグ30aを検出してこの検出信号を前記制御手段に送る。これにより、前記制御手段は、前記ACサーボモータ3に回転停止指令を与えて前記ビット2が回転停止するとともに前記エアシリンダ4に復帰指令を与える。よって、このエアシリンダ4の前記ロッド4aは、前記ビット2を図1(b)に示す位置まで復帰して一連のねじ締め作業が終了する。
【符号の説明】
【0031】
1 自動ねじ締め機
2 ビット
3 ACサーボモータ
3a ケーブル
4 エアシリンダ
4a ロッド
5 近接センサ
6 フレーム
8 カップリング
9 ジョイント
10 スプライン軸
11 スプラインナット
11a 駆動ギア
11b 従動ギア
20 LMガイド
21 ジョイントプレート
22 スペーサ
23 プレート
30 ビット軸
30a ドグ
40 チャック
41 エアシリンダ
42a 爪
42b 爪
S ねじ
W1 ワーク
W2 ワーク
図1
図2
図3