(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブラシレスモータの制御装置は、前記モータの実回転速度と目標回転速度との偏差と、前記モータの回転速度に応じて前記フィードバックゲインの係数を可変することを特徴とする請求項2記載のブラシレスモータの制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来にあっては、
図7のタイミングチャートに示すように、モータの制御応答性を向上すべく前記フィードバックゲインの係数を大きくすると応答時間が短縮される反面、モータ起動時において、回転速度の上昇する際、モータの脱調が発生し易くなるという課題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、モータ始動時の脱調を防止しつつ、目標回転速度への収束性を高めるモータの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のブラシレスのモータの制御装置にあっては、回転駆動されるモータの回転速度を目標とする回転速度に収束すべくモータ制御量を調整してフィードバック制御するブラシレスモータの制御装置であって、前記フィードバック制御にて算出するPID制御値におけるフィードバックゲインの係数を前記モータの実回転速度に応じて可変
し、前記モータの実回転速度の閾値以下においては、通常のフィードバックゲインの係数を通常の制御値より低い値とし、前記モータが回転停止状態から起動後、前記モータの実回転速度が目標回転速度に収束するまでの間、可変する前記フィードバックゲインの係数を通常の制御値より低い値に固定することとした。
【0011】
また、請求項2のブラシレスモータの制御装置において、前記ブラシレスモータの制御装置は
、前記モータの実回転速度に到達した一定時間の経過をカウントして前記フィードバックゲインの係数を可変することとした。
【0012】
また、請求項3のブラシレスモータの制御装置にあっては、前記ブラシレスモータの制御装置は、前記モータの実回転速度と目標回転速度との偏差と、前記モータの回転速度に応じて前記フィードバックゲインの係数を可変することとした。
【0014】
更に、請求項
4のブラシレスモータの制御装置にあっては、前記ブラシレスモータの制御装置は、電動式液体ポンプの駆動に用いられることとした。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明の請求項1のブラシレスモータの制御装置にあっては、起動状態と定常の回転速度状態で前記フィードバックゲインの係数を可変するため、回転停止状態からの起動直後もしくは比較的低回転域における脱調の発生を抑制し、起動時の回転数制御時における応答性と定常的な高回転域における回転速度制御の特性を安定することができる。
【0016】
また、請求項2のブラシレスモータの制御装置にあっては、前記ブラシレスモータの制御装置は、前記モータの実回転速度と、前記モータの実回転速度に到達した一定時間の経過をカウントして前記フィードバックゲインの係数を可変することにより、モータの高回転域における目標回転速度への収束性を維持するとともに不用意なフィードバックゲインの切換に伴う制御の不安定を抑制することができる。
【0017】
そして、請求項3のブラシレスモータの制御装置にあっては、前記ブラシレスモータの制御装置は、前記モータの実回転速度と目標回転速度との偏差と、前記モータの回転速度に応じて前記フィードバックゲインの係数を可変することとすることにより、目標回転速度と実回転速度の偏差の値が大きい場合の収束性を高める一方で、目標回転速度が実回転速度より低い偏差となる場合にはフィードバックゲインを小さくすることにより、消費電力を低減することができる。
【0018】
そして、請求項4のブラシレスモータの制御装置にあっては、前記ブラシレスモータの制御装置は、前記モータが回転停止状態から起動後、前記モータの実回転速度が目標回転速度に収束するまでの間、可変する前記フィードバックゲインの係数を通常の制御値より低い値に固定することにより、回転停止状態からの起動時におけるフィードバックゲインの係数の過多に伴う、脱調の発生を抑制し、起動時の回転数制御時における応答性と通常時の回転速度制御の特性を向上することが出来る。
【0019】
加えて、請求項5のブラシレスモータの制御装置にあっては、前記ブラシレスモータの制御装置は、電動式液体ポンプの駆動に用いられることにより、ポンプの流体特性の変化、例えば作動流体の温度や粘度またはポンプ室近傍のクリアランス等機械的なばらつきがあり流量特性の制御に変動が生じる場合でも、適切なフィードバックゲインの係数を前記流体的又は機械的特性に応じて数値を決めることで、ポンプの効率を簡易的な方法にて調整することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0022】
図1及び
図2は、本実施の形態にかかるブラシレスモータの制御装置により回転速度が制御される電動式オイルポンプ1を示す図であり、該電動式歯車ポンプ1は、モータ2と、該モータ2で駆動されるオイルポンプ3を備えている。これにより、モータ冷却用のオイルを供給に用いられたり、自動車のATやCVT等の自動変速機に取り付けられアイドルストップ時に低下する油圧を所定圧に維持する用途に用いられたりする。
【0023】
すなわち、前記自動変速機4には、油圧回路が形成されており、当該自動変速機4のケーシング11内部には、前記油圧回路を構成する為の油圧経路12が形成されている。このケーシング11の外面13には、前記電動式歯車ポンプ1を取り付ける為の取付穴14が開口しており、該取付穴14に前記電動式歯車ポンプ1の先端部を挿入した状態で取り付けられるように構成されている。
【0024】
前記油圧経路12には、当該自動変速機4の制御に用いるオイル21が循環しており、前記取付穴14の奥面22には、図外のオイル貯留部に連通する連通路23と、加圧したオイル21を出力する出力路24とが開設されている。
【0025】
図2は、前記電動式歯車ポンプ1を示す分解斜視図であり、該電動式歯車ポンプ1は、トロコイド式の前記オイルポンプを構成するポンプ構成部31と、該ポンプ構成部31を駆動するモータ構成部32と、該モータ構成部32を制御する為のモータ駆動制御部33とを備えている。前記ポンプ構成部31と前記モータ構成部32と前記モータ駆動制御部33とは、前記モータ構成部32を構成する回転軸34の延出方向に配列されており、前記モータ構成部32より延出した前記回転軸34が、
図1に示したように、組立状態において前記ポンプ構成部31に接続されるように構成されている。
【0026】
この電動歯車式ポンプ1は、外周部を構成する円筒状のケース41を備えており、前記ポンプ構成部31と前記モータ構成部32とは、前記ケース41内に内嵌されている。この内嵌状態において、前記ポンプ構成部31の外周面と前記モータ構成部32の外周面とは、前記ケース41の内側面42に面接するように構成されており、この面接状態において、前記ポンプ構成部31及び前記モータ構成部32が位置決めされるように構成されている。
【0027】
前記ケース41の基端には、外方へ延出するケースフランジ部51が一体形成されており、当該電動式歯車ポンプ1は、
図1及び
図2に示したように、前記ケースフランジ部51より先端側が前記ケーシング11に設けられた前記取付穴14に挿入される挿入領域を構成するとともに、前記ケースフランジ部51より基端側が前記ケーシング11より突出した突出領域を形成するように構成されている。
【0028】
この電動式歯車ポンプ1を前記取付穴14に取り付けた状態では、前記ケースフランジ部51が、前記ケーシング11の前記外面13に面接するように構成されており、前記ケースフランジ部51によって当該電動式歯車ポンプ1を前記ケーシング11に固定できるように構成されている。
【0029】
前記挿入領域を構成する前記ケースフランジ部51より前記ケース41の先端側には、前記ポンプ構成部31及び前記モータ構成部32が配置されるように構成されており、
図1に示した取付状態において、前記ケース41より突出した前記ポンプ構成部31の先端面が前記取付穴14の前記奥面22に対向するように構成されている。
【0030】
前記ポンプ構成部31は、
図1及び
図2に示したように、先端側を構成するポンプベース71と、該ポンプベース71の基端側に配置されたポンプハウジング72とを備えており、該ポンプハウジング72と前記ポンプベース71との間には、Oリング73が配設されている。前記ポンプベース71の先端面には、
図1に示したように、前記ケース41の円形穴に挿入されて外部に突出する円形の突出部74が一体形成されており、当該ポンプベース71は、前記突出部74の外周部がケース41先端の前記折曲部61に支持された状態で先端側への抜けが阻止されるように構成されている。
【0031】
前記ポンプベース71の基端面には、ピン91の一端部が挿入されており、該ピン91の他端部は、前記ポンプベース71に対向して配設された前記ポンプハウジング72の先端面に挿入されている。これにより、前記ポンプベース71に対して前記ポンプハウジング72が位置決めされるように構成されており、この状態において、前記ポンプハウジング72が前記ケース41に圧入固定され、当該ポンプベース71の外周面が前記ケース41の内側面42に密着した状態で固定されている。
【0032】
前記ポンプハウジング72の中央部は、
図1に示したように、没入しており、当該ポンプハウジング72と前記ポンプベース71との間には、ロータ収容部101が形成されている。該ロータ収容部101内には、ポンプロータアウタ102が回動自在に収容されており、該ポンプロータアウタ102内には、ポンプロータインナ103が回動自在に収容されている。
【0033】
このロータ収容部101には、前記ポンプベース71に設けられた吸入ポート111と吐出ポート112とが連通しており、両ポート111,112は、前記ポンプベース71の前記突出部74の端面に開口するように構成されている。
【0034】
前記吸入ポート111は、当該電動式歯車ポンプ1を前記取付穴14に取り付けた状態において、前記取付穴14の奥面22に設けられた前記連通路23に接続されるように構成されており、前記吐出ポート112は、Oリング121を介して前記出力路24に接続されるように構成されている。
【0035】
これにより、前記ポンプロータインナ103の回転に伴って前記ポンプロータアウタ102が回転することで、前記連通路23から前記吸入ポート111を介して吸入したオイルを加圧して、前記吐出ポート112から前記出力路24へ出力するトロコイドポンプが形成されるように構成されている。
【0036】
このトロコイドポンプの基端側には、
図1に示したように、前記モータ構成部32で構成された直流式のブラシレスモータが配設されている。このモータは、外周部を形成するモータケース201を備えており、該モータケース201の外周面が前記ケース41の内側面42に密着した状態で固定されている。
【0037】
このモータケース201の内側には、モータ巻線211が巻回されたコイル212が内嵌されており、該コイル212には、コイルで励磁されるステータ213が保持されている。このステータ213の内側には、モータロータコア214が回転自在に収容されており、該モータロータコア214の外周面には、マグネット215が設けられている。このモータロータコア214には、前記回転軸34が挿通しており、当該回転軸34は、前記モータロータコア214を貫通した状態で固定されている。
【0038】
この回転軸34の他端部は、先端側へ向けて延出しており、当該回転軸34は、オイルシール221を介して前記ポンプハウジング72の中心穴222を挿通し、前記ロータ収容部101内に突出するように構成されている。該ロータ収容部101に突出した前記回転軸34の周面には、平坦面223が形成されており、断面D字状のロータ接続部224が形成されている。このロータ接続部224は、前記ロータ収容部101に収容された前記ポンプロータインナ103のD字穴225を挿通した後、先端側軸受けを介して前記ポンプベース71の座ぐり穴227に回転自在に収容された状態で支持されている。
【0039】
このモータ構成部32で構成されたモータの基端側には、前記モータ駆動制御部33が配設されており、該モータ駆動制御部33は、前記モータ構成部32の基端部に接続されたインシュレータ301を備えている(
図2参照)。
【0040】
該インシュレータ301は、合成樹脂によって形成されており、前記モータ構成部32の前記モータケース201の基端部に挿入され内嵌した状態で接続されるモータ接続部311が一体形成されている。該モータ接続部311には、基端側軸受け314を介して、前記回転軸34の一端部が回転自在に支持されている。
【0041】
前記モータ接続部311には、前記モータ巻線211への通電を中継するバスバー321,・・・がインサート成型されており、前記モータ構成部32側に突出したバスバー321,・・・には、前記モータ巻線211が電気的に接続されている。
【0042】
また、前記モータ接続部311の側縁部には、上方へ突出するとともに、ハーネス接続穴324が側方へ向けて開口したコネクタ部322が一体形成されており、該コネクタ部322の奥面には、前記ハーネスと電気的に接続される接続端子323,323がインサート成型されている。
【0043】
前記モータ接続部311の端面には、支柱部333,・・・が複数立設されており、各支柱部333,・・・によって制御基板334が支持されている。該制御基板334には、電子回路が形成されており、外部機器から延出された前記ハーネスを前記コネクタ部322に接続した状態において、該コネクタ部322から入力される信号に基づいて前記バスバー321,・・・への出力信号を制御してモータ駆動制御するコントローラが構成されている。
【0044】
前記モータ駆動制御部33は、前記ケース41の基端部に取り付けられる容器状の制御器カバー331を備えており、前記モータ接続部311に支持された前記制御基板334は、前記制御器カバー331によって覆われるように構成されている。
【0045】
この制御器カバー331は、アルミニュームによって構成されており、当該制御器カバー331の外側面には、内部で発生した熱を外部に放出する冷却フィン341,・・・が複数設けられている。
【0046】
前記インシュレータ301の前記コネクタ部322の基端部には、係合凹部351が凹設されており、該係合凹部351より端部側には、前記コネクタ部322基端の一般部よりやや低い段差部352が形成されている。このコネクタ部322の基端部と重合する前記制御器カバー331一端側の延出片353には、前記段差部352上に延在するように構成されており、当該延出片353の先端には、前記係合凹部351と係合する係合凸部354が折曲形成されている。
【0047】
これにより、前記制御器カバー331の前記係合凸部354が前記コネクタ部322の前記係合凹部351に係合した状態で噛み合わせられる噛み合わせ構造が前記係合凸部354及び前記係合凹部351によって構成されており、組立時には、前記係合凹部351と前記係合凸部354との接合部分にシール剤が塗布され前記係合凸部354と前記係合凹部351とが噛み合わせられるように構成されている。
【0048】
また、前記制御器カバー331の他端側には、取付状態において、前記モータケース201に外嵌した部位より側方へ向けて延出するカバーフランジ部371が前記ケースフランジ部51に対応した部位に一体形成されており、このカバーフランジ部371と前記ケースフランジ部51との面接部分及び前記モータケース201に外嵌した外嵌部分には、組立時においてシール剤が塗布されるように構成されている。
【0049】
前記カバーフランジ部371と該カバーフランジ部371に面接する前記ケースフランジ部51には、ボルト挿通穴381が開設されており、該ボルト挿通穴381には、カラー382が内嵌されている。
【0050】
これにより、
図1に示したように、取付時において、前記ケースフランジ部51を前記ケーシング11の前記外面13に面接した状態で、前記ボルト挿通穴381内の前記カラー382に挿通したボルト391を、前記ケーシング11に形成されたねじ穴392に螺入することで、当該電動式歯車ポンプ1を前記ケーシング11に固定できるように構成されている。
【0051】
図3は、前記電動式歯車ポンプ1を駆動するブラシレスモータの制御装置1001を示すブロック図である。
【0052】
このブラシレスモータの制御装置1001には、目標とするモータの回転速度を設定する目標回転速度設定部1002と、前記目標回転速度設定部にて設定された目標モータ回転速度と、実際のモータ回転速度との偏差、及びモータの回転位置に基づき、モータのフィードバック制御量を設定するフィードバック制御量算出部1003と、前記フィードバック制御量算出部にて設定されたモータ電圧・電流等のモータ制御量をU・V・Wの3相のモータ巻線211へ出力するインバータ部1004が設けられている。
【0053】
一方、本実施例におけるブラシレスモータにおいては、前記モータ巻線211の3相各々に生じる逆起電圧を電圧検出部1005にて検出し、各相の逆起電圧に基づきモータの回転位置や回転速度を推定するセンサレス制御を用いている。
【0054】
すなわち、前記逆起電圧の入力に基づき、モータの回転位置を推定する回転位置推定部1006と、前記モータの推定回転位置に基づきモータ回転速度を推定する実回転速度推定部1007を備えており、推定された回転速度および回転位置に基づきフィードバック制御量算出部1003における制御量算出が行われる。
【0055】
前記フィードバック制御量の設定にあたり、前記モータの回転速度に応じてモータのフィードバックゲインの係数を設定するフィードバックゲイン設定部1008が設けられている。前記フィードバックゲイン設定部1008では、起動直後の状態もしくは起動後の一定の定常状態であるかを判定して、フィードバックゲインの係数の重み付けを行う機能を備えている。
【0056】
図4は、前記ブラシレスモータの制御装置1001の動作を示すフローチャートであり、前記モータの回転速度および始動後に所定の回転速度到達後の経過時間等の条件に応じたフィードバックゲインの係数設定に関する動作が示されている。
【0057】
先ず、モータの停止状態からの起動を行った際に起動の判定を行い(S1)、起動が判定された場合には起動フラグFst=1を設定する(S2)。
【0058】
次いで、各種運転条件に基づく目標回転速度Ntの設定を行い(S3)、モータ逆起電圧等に基づき、実回転速度Nの推定を行う(S4)。
【0059】
ここで、実回転速度Nとフィードバックゲインの係数の切換の為の閾値Nslとを比較し(S5)、実回転速度Nが閾値Nsl以下となる場合には、フィードバックゲインの係数をKp=Kp1に設定する(S6)。この係数Kp1は後述する通常の係数Kp2より少ない値が設定されている。
【0060】
フィードバックゲインの係数Kpが設定されると、前記目標回転速度Ntと実回転速度Nとの偏差eと係数Kpに基づいて、
図6に示したPID制御の基本式によりフィードバック制御量が算出され(S7)、モータ制御の為の電流・電圧等がコイル211に出力される(S8)。
【0061】
一方、前記ステップS5において、実回転速度Nが閾値Nslを上回る場合には、起動フラグFstの設定の有無を判定し(S9)、Fst=1がセットされている場合にはタイマーTのカウントを開始する(S10)。
【0062】
次いで、前記目標回転速度Ntと実回転速度Nとの偏差eがe=0、即ち収束状態にあるか否を判定する(S11)。e=0でない場合にはフィードバックゲインの係数をKp=Kp1に設定し(S6)、e=0である場合には定常状態に達しつつあるものとして、タイマーTの経過時間を判定する。
【0063】
前記起動フラグFst=1の設定がされており、その後の実回転速度Nの上昇により前記閾値Nsl以上になった場合、前記タイマーTの経過時間が所定値Tslを経過したか否かを判定し(S12)、前記所定値Tslを経過しない場合には、フィードバックゲインの係数をKp=Kp1に設定する(S6)。
【0064】
一方、タイマーTの経過時間が所定値Tslを経過した場合には、起動フラグFstをFst=0へリセットし(S13)、タイマーTのカウントをリセットする(S14)。この時のフィードバックゲインは前述した通常の係数Kp2を与えられ(S15)、前記フィードバック制御量の算出(S7)及びモータ制御電流・電圧等の出力(S8)が行われる。
【0065】
尚、本実施例においては、前記起動フラグFst=1の設定判定(S9)において、起動フラグFst=0の運転状態の場合、前記目標回転速度Ntと実回転速度Nとの偏差eが正の値にあるか負の値にあるかを判定し、前記フィードバックゲインの係数をKpを可変するようになっている(S16)。この場合偏差e≧0、即ち、制御方向が増加方向および一定の回転速度を維持する状態にある場合には、フィードバックゲインは前述した通常の係数Kp2を与えられ(S15)、また、偏差e<0、即ち、制御方向が減少方向にある場合はフィードバックゲインの係数はKp=Kp1が与えられる。(S6)。
【0066】
図5は目標回転速度Nt、実回転速度Nおよび、フィードバックゲインの係数Kpのモータ起動時からの時系列での数値変化を示すタイミングチャートである。
【0067】
モータ回転停止からの起動時においてはフィードバックゲインの係数は高回転域の目標回転速度Nt2迄上昇している間は常にKp=Kp1が与えられ、モータの脱調を防止するフィードバック制御をおこなわれている。
【0068】
一方、前記実回転速度Nがフィードバックゲインの係数切換え判定の閾値Nslを超えた時に経過時間をカウントして、前記実回転速度Nが前記目標回転速度Ntに収束した状態が一定期間継続された場合には、フィードバックゲインの係数はKp=Kp2の通常制御状態になり応答性を重視したフィードバック制御がおこなわれる。
【0069】
その後、目標回転速度Ntが前記閾値Nsl以下となり実回転速度Nが減少する方向に収束する場合に、再びフィードバックゲインの係数はKp=Kp1になることでモータの消費電力は抑制される。モータの実回転速度Nが前記閾値Nsl以下にある低回転域から、前記閾値Nslを超える方向の制御に転じた場合は、フィードバックゲインの係数は直ちにKp=Kp2になる一方、目標回転速度Ntが0となりモータが停止となる場合は当初と同じ、起動時のフィードバックゲインの係数設定Kp=Kp1に戻る。
【0070】
前記フィードバックゲインの係数Kp1、Kp2はモータの出力側の負荷、すなわち、本実施例においては電動式ポンプの流量特性や歯車ポンプのクリアランス等の個体ばらつきを考慮して係数を設定することが可能の為、負荷の形態によらず所望とするフィードバック制御量の最適化が可能になる。
【0071】
特に、本実施例においては起動時のモータ回転速度のフィードバック制御時で、低いフィードバックゲインの係数Kp1を使用する一方で、モータの高回転域においては高いフィードバックゲインの係数Kp2を使用することで、前者で脱調を防止するフィードバック制御を行う一方で、後者で応答性を重視したフィードバック制御を両立することが可能となる。
【0072】
また、目標回転速度Ntが実回転速度Nを下回るような減速方向のフィードバック制御においても、低いフィードバックゲインの係数Kp1を使用するので、モータの消費電力を低減することも可能になる。
【0073】
なお、本発明はモータの負荷として電動式の歯車ポンプを用いているがこれに限定されず、別の回転ポンプを用いても良いし、ポンプ以外の負荷であっても良い。
【0074】
また、本実施例はモータ回転速度が、起動時から定常時に至るまでの判定に前記閾値Nslへの到達時をタイマカウントの起点とするようにしたが、前記閾値Nslを超えた高回転域で、実回転速度Nが目標回転速度Ntに収束した時点でタイマーのカウントを開始しても良い。
【0075】
また、本実施の形態は、偏差e=0を収束条件としたが、これに限らず、0を挟んで上下に許容差を持たせても良い。
【0076】
また、本実施の形態は、起動フラグFst=0へのリセットのタイミングをタイマーTの所定値Tslの経過をもって行うようにしたが、起動後にモータが停止状態となったときに起動フラグTstをリセットするようにしても良い。