(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るファンモータの制御装置の実施形態について説明する。
【0013】
〔ファンモータの制御装置の構成〕
図1は、本実施形態に係るファンモータの制御装置の構成図である。
【0014】
ファンモータの制御装置100は、平滑コンデンサCを備えた整流回路110とファンモータMに接続されたインバータ回路130とを有する。インバータ回路130は基板上に形成されており、基板はファンモータMのケースに取り付けられるか、ケースに内蔵される。本実施形態では、整流回路110をファンモータの制御装置100に含ませているが、外部から直流電源が供給される場合には、整流回路100は除外することができる。
【0015】
整流回路110は、図に示す通り、ブリッジ接続した6個のダイオードD1−D6を有し、6個のダイオードD1−D6は交流電源(三相)120から流れる電流を全波整流する。6個のダイオードD1−D6によって全波整流された電流は、平滑コンデンサCによって平滑化され、全波整流後の直流電流のリップルが低減される。整流回路110はファンモータMの電源となる。
【0016】
整流回路110には、スイッチング部となるインバータ回路130が並列に接続してある。整流回路110とインバータ回路130との間には電圧センサ148が接続してある。電圧センサ148は、ファンモータMに印加される電圧を検出する。インバータ回路130は、ファンモータMのステータコイル(後述する)のそれぞれと整流回路110とを選択的に接続する。インバータ回路130は、整流回路110が整流した直流電流をスイッチングする3つのアーム回路140A、140B、140Cを有する。
【0017】
アーム回路140Aは、一対のトランジスタTR1とTR4とを直列に接続し、一対のトランジスタTR1とTR4同士の接続ライン142AにファンモータMのステータコイルLuを接続する。アーム回路140Bは、一対のトランジスタTR2とTR5とを直列に接続し、一対のトランジスタTR2とTR5同士の接続ライン142BにファンモータMのステータコイルLwを接続する。アーム回路140Cは、一対のトランジスタTR3とTR6とを直列に接続し、一対のトランジスタTR3とTR6同士の接続ライン142CにファンモータMのステータコイルLvを接続する。ステータコイルLu、Lv、Lwは、図示するようにスター接続してある。
【0018】
3つのアーム回路140A、140B、140Cは整流回路110の平滑コンデンサCに並列に接続される。6つのトランジスタTR1、TR4、TR2、TR5、TR3、TR6のコレクタ−エミッタ間には、ダイオードDが逆接続される。6つのトランジスタTR1、TR4、TR2、TR5、TR3、TR6のゲートには、これらのトランジスタをスイッチングさせる駆動回路145が個別に接続される。駆動回路145には後述するスイッチング制御部150が接続される。駆動回路145はスイッチング制御部150が出力する駆動パルスを受けて、トランジスタをONさせる。
【0019】
本実施形態で例示するファンモータMはブラシレスモータである。ファンモータMのステータMSは、スター接続された3つのステータコイルLu、Lv、Lwを有する。ファンモータMのロータMRは、N極とS極を2分割して着磁された円筒形の磁石を有し、ステータコイルLu、Lv、Lwによって形成される磁界を用いて回転する。
【0020】
ロータMRの周囲には、ロータMRの回転方向に沿って3つのセンサ部H1、H2、H3が配置される。3つのセンサ部H1、H2、H3は、120°の位相差を持って配置される。センサ部H1、H2、H3は、たとえば
図1に示すように、ロータMRのN極と対峙しているときにはHiの信号を出力し、そのS極と対峙しているときにはLoの信号を出力する。N極とS極の境目ではHiの信号とLoの信号が切り替わる。センサ部H1、H2、H3は、ロータMRの回転速度に応じたパルス幅の信号を出力する。
【0021】
なお、センサ部H1、H2、H3は本実施形態ではホール素子を用いている。しかし、ロータMRの回転位置を検出できるセンサであれば、ホール素子以外のセンサの使用も可能である。ステータコイルLu、Lv、Lwをセンサ部の代わりとしても良い。
【0022】
ファンモータの制御装置100は、センサ部H1、H2、H3が接続されたスイッチング制御部150を備える。スイッチング制御部150は、電圧センサ148が検出する電圧が閾値を超えたときには、ファンモータMに供給する駆動パルスのデューティー比を低下させる。駆動パルスの出力タイミング、すなわち、ステータコイルLu、Lv、Lwと整流回路110とを接続するタイミングは、センサ部H1、H2、H3が検出する回転位置を用いて決める。
【0023】
スイッチング制御部150はそれぞれの駆動回路145に向けて駆動パルスを出力する。スイッチング制御部150が出力する駆動パルスのデューティー比は、電圧センサ148が検出する電圧が閾値を超えると小さくなる。たとえば、定格電圧12Vを超える上限電圧が14Vであったとすると、閾値は14Vに設定され、14Vを超えるとデューティー比を小さくし、インバータ回路130の損失が一定値を超えないようにする。
【0024】
図2は、
図1に示したスイッチング制御部150の構成を示すブロック図である。スイッチング制御部150は、記憶部154とスイッチングパルス出力部158とを有する。
【0025】
記憶部154は、デューティー比を低下させるタイミングを取るための閾値と、電圧センサ148が検出する電圧に対するデューティー比とを記憶する。記憶部154は、異なる大きさの複数のデューティー比を記憶する。たとえば、その電圧が13Vのときには80%、14Vのときには60%というように、電圧毎に異なる値のデューティー比を記憶する。
【0026】
また、記憶部154は、上記のように、電圧毎に段階的に異なるデューティー比を記憶させておくことの他、閾値を超えたら、電圧の大きさに応じて無段階の連続するデューティー比が得られるように、直線状または曲線状に変化する線形データを記憶させておくこともできる。
【0027】
スイッチングパルス出力部158は、3つのセンサ部H1、H2、H3と電圧センサ148を接続する。3つのセンサ部H1、H2、H3のそれぞれは、ロータMR(
図1参照)の回転位置によって、電気角で120°位相のずれたHi、Loの信号を出力する。したがって、スイッチングパルス出力部158は、3つのセンサ部H1、H2、H3がそれぞれ出力するHi、Loの信号を用いて、ロータMRの回転位置が認識できる。電圧センサ148は、ファンモータMの3つのステータコイルLu、Lv、Lwに印加される電圧を検出する。
【0028】
スイッチングパルス出力部158は、電圧センサ148が検出する電圧値と記憶部154に記憶されている閾値とを常に比較する。また、スイッチングパルス出力部158は、センサ部H1、H2、H3が出力する信号を入力し、ロータMRの位置を認識して、各駆動回路145(
図1参照)にスイッチングパルスを出力する。
【0029】
スイッチングパルス出力部158は、電圧センサ148が検出する電圧値が閾値を超えていないときには、センサ部H1、H2、H3が出力する信号が入力されてから、各駆動回路145に所定のデューティー比の駆動パルスを出力する。一方、スイッチングパルス出力部158は、電圧センサ148が検出する電圧値が閾値を超えたときには、各駆動回路145にデューティー比を低下させた駆動パルスを出力する。
【0030】
〔ファンモータの制御装置の動作〕
次に、
図1に示したファンモータの制御装置100の動作について説明する。
図3は、ファンモータの制御装置100の動作フローチャートである。
【0031】
まず、スイッチング制御部150(
図1参照)は、センサ部H1、H2、H3が出力する信号を入力し、ロータMRの回転位置を認識して、どのステータコイルLu、Lv、Lwに通電させるかを決定する相信号を出力する。相信号を入力した駆動回路145はスイッチング制御部150が次に出力する駆動パルスにしたがってトランジスタTR1−TR6をスイッチングさせることになる。たとえば、相信号が、ステータコイルLuとLwに通電させるものであったときには、トランジスタTR1とTR5が駆動パルスに従ったスイッチングを行う(ステップS100)。
【0032】
次に、電圧センサ148はファンモータMの入力電圧を検出する。そして、スイッチングパルス出力部158(
図2参照)は検出した入力電圧を入力する(ステップS110)。
【0033】
スイッチングパルス出力部158は、記憶部154に記憶されている閾値と電圧センサ148が検出する電圧に対するデューティー比とを参照し、最適なデューティー比を算出する(ステップS120)。
【0034】
スイッチングパルス出力部158は、算出したデューティー比を設定し、設定したデューティー比の駆動パルスを駆動回路145に出力する(ステップS130)。駆動回路145は、出力される駆動パルスに基づいてトランジスタTR1−TR6をスイッチングし、ファンモータMを駆動する(ステップS140)。
【0035】
図4は、スイッチングパルス出力部158が出力する駆動パルスの説明に供する図である。この図は、記憶部154に段階的に変化するデューティー比が記憶されている場合の駆動パルスを例示する。
【0036】
図に示すように、記憶部154に閾値として12Vが設定されているとすると、ファンモータMの印加電圧が12V以下では、図に示すような、たとえばデューティー比が50%の駆動パルスがスイッチングパルス出力部158から駆動回路145に出力される。
【0037】
駆動回路145は、デューティー比50%の駆動パルスでトランジスタTR1−TR6をスイッチングし、ファンモータMを駆動する。このときの駆動パルスの波形は基本波形であり、第1のデューティー比は50%である。なお、第1のデューティー比はファンモータMに流れる電流の大きさによって変化させる。つまり、ファンモータMの負荷の大きさによって変わる。たとえば、負荷が小さいときには第1のデューティー比は50%とするが、負荷が大きくなると第1のデューティー比は80%、100%とされる。
【0038】
また、記憶部154に12V以上の場合に80%のデューティー比とすることが記憶されているとすると、駆動回路145は、デューティー比50%の駆動パルスのHI波形の部分を100%から80%のデューティー比に低下させてトランジスタTR1−TR6をスイッチングし、ファンモータMを駆動する。
【0039】
このときの駆動パルスの波形はデューティー比50%の基本波形と、デューティー比80%の第2のデューティー比の波形を組み合わせた波形である。基本波形のHI波形を形成する部分のみ第2のデューティー比で小刻みにHI、LOWを形成する。
【0040】
このように第2のデューティー比を用いてファンモータMに供給する電流を低下させると、インバータ回路130で消費される電力を抑制することができる。
【0041】
図5は、スイッチングパルス出力部158が出力する他の駆動パルスの説明に供する図である。この図は、記憶部154に連続的に変化するデューティー比が記憶されている場合の駆動パルスを例示する。
【0042】
図に示すように、記憶部154に閾値として12Vが設定されているとすると、ファンモータMの印加電圧が12V以下では、図に示すような、たとえばデューティー比が50%の駆動パルスがスイッチングパルス出力部158から駆動回路145に出力される。
【0043】
駆動回路145は、デューティー比50%の駆動パルスでトランジスタTR1〜6をスイッチングし、ファンモータMを駆動する。このときの駆動パルスの波形は基本波形であり、第1のデューティー比は50%である。上記と同様、第1のデューティー比はファンモータMに流れる電流の大きさによって変化させる。つまり、ファンモータMの負荷の大きさによって変わる。たとえば、負荷が小さいときには第1のデューティー比は50%とするが、負荷が大きくなると第1のデューティー比は80%、100%とされる。
【0044】
また、記憶部154に12V以上の場合に100%のデューティー比から電圧の上昇に連動して連続的に低下させることが記憶されているとすると、駆動回路145は、デューティー比50%の駆動パルスのHI波形の部分を、電圧の上昇と共にデューティー比を低下させてトランジスタTR1−TR6をスイッチングし、ファンモータMを駆動する。
【0045】
このときの駆動パルスの波形はデューティー比50%の基本波形と、たとえば、デューティー比80%の第2のデューティー比の波形を組み合わせた波形である。基本波形のHI波形を形成する部分のみ第2のデューティー比で小刻みにHI、LOWを形成する。
【0046】
このように第2のデューティー比を用いてファンモータMに供給する電流を低下させると、インバータ回路130で消費される電力を抑制することができる。
【0047】
〔ファンモータの制御装置によって得られる効果〕
図6は、現状品の定格電圧と使用電圧上限の特性を示すグラフである。図に示すように、現状品を定格電圧で使用した場合、風量が増加するにつれて静圧が低下する。また、風量が増加するにつれてファンモータMの使用電力も低下する。一方、現状品を使用電圧上限で使用した場合、定格電圧の場合と同様に、風量が増加するにつれて静圧が低下する。また、風量が増加するにつれてファンモータMの使用電力も低下する。
【0048】
しかし、現状品を定格電圧で使用した場合よりも現状品を使用電圧上限で使用した場合の方が静圧及び使用電力が大きくなっている。
【0049】
定格電圧時の特性は、使用電圧上限で使用した場合のインバータ回路130の損失を考慮して決めなければならないため、余裕を見ると、現状品のように、使用電圧上限で使用した場合よりも特性を落して設定しなければならない。
【0050】
図7は、本発明品の定格電圧と使用電圧上限の特性を示すグラフである。図に示すように、本発明品を定格電圧で使用した場合、風量が増加するにつれて静圧が低下する。また、風量が増加するにつれてファンモータMの使用電力も低下する。一方、本発明品を使用電圧上限で使用した場合、定格電圧の場合と同様に、風量が増加するにつれて静圧が低下する。また、風量が増加するにつれてファンモータMの使用電力も低下する。
【0051】
しかし、本発明品を定格電圧で使用した場合と本発明品を使用電圧上限で使用した場合とではあまり特性の差が無い。
【0052】
図8は、現状品と本発明品との特性の比較を示すグラフである。本発明品と現状品の特性とを比較すると、本発明品を使用した場合には、定格電圧の特性を現状品に比較してかなり引き上げることができるのがわかる。
【0053】
以上のように、本発明によれば、電圧センサ148が検出した電圧が閾値を超えると、インバータ回路130に与える駆動パルスのデューティー比を低下させるようにしたので、ファンモータMの駆動回路145の損失を一定以下に抑制することができる。また、駆動回路の損失を一定以下に抑制できるため、定格電圧を上げることができ、定格電圧における風量−静圧特性を向上させることができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、三相のモータを例示して説明したが、本発明の思想は、単相モータ、2相モータ、5相モータ等の様々な相数のモータに対しても適用することができる。また、上記実施形態では、ロータの極数が2極の場合を例示したが、3極以上の極数のモータについても本発明の思想を適用することができる。さらに、スロット数も様々な数のモータに対して適用することができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。