特許第6154725号(P6154725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンケルジャパン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154725
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20170619BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20170619BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20170619BHJP
   C09J 123/12 20060101ALI20170619BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170619BHJP
   C09J 167/04 20060101ALI20170619BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   C09J153/02
   C09J167/00
   C09J123/00
   C09J123/12
   C09J11/06
   C09J167/04
   C09J109/00
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-221628(P2013-221628)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-81344(P2015-81344A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】竹中 真
(72)【発明者】
【氏名】早川 正
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−271638(JP,A)
【文献】 特表平07−502069(JP,A)
【文献】 特開平10−251612(JP,A)
【文献】 特開2001−072749(JP,A)
【文献】 特開2002−317109(JP,A)
【文献】 特開2003−119448(JP,A)
【文献】 特開2004−131675(JP,A)
【文献】 特開2004−256642(JP,A)
【文献】 特開2010−155951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)極性官能基で変性された共役ジエン系重合体、
(B)脂肪族ポリエステル系樹脂、
(C)非晶性オレフィン系重合体、
(D)結晶性ポリプロピレン樹脂、および
(E)粘着付与樹脂
を含むホットメルト接着剤。
【請求項2】
(A)極性官能基で変性された共役ジエン系重合体が、アミノ基で変性された水素添加型スチレンブロック共重合体およびマレイン酸で変性された水素添加型スチレンブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(B)脂肪族ポリエステル系樹脂がポリ乳酸系樹脂を含む、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤が塗布されて得られた自動車内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホットメルト接着剤に関し、さらに詳しくはポリオレフィンやポリエステル等の基材に対して接着性が良好なホットメルト接着剤、特に自動車内装材用途に好適なホットメルト接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、無溶剤の接着剤であり、加熱溶融することで被着体に塗工後、冷却することで固化して接着性を発現するので、瞬間接着及び高速接着が可能である。例えば、紙加工、木工、衛生材料及び電子分野、自動車内装材等の幅広い分野でホットメルト接着剤は使用されている。
【0003】
特許文献1には、α―オレフィン系重合体を主成分とする自動車内装材用ホットメルト接着剤が開示されている([請求項1]の成分(A)参照)。自動車内装材であるドアトリムやルーフトリムは、プロピレン樹脂等のポリオレフィンで成形されたものが多い。よって、同文献のホットメルト接着剤は、α―オレフィン系重合体を多く含むことで、自動車内装材との接着性が向上する。
【0004】
さらに、同文献のホットメルト接着剤には、融点120℃以上の結晶性ポリプロピレンが配合されている([請求項1]の成分(B)参照)。この結晶性ポリプロピレン樹脂によって、ホットメルト接着剤は、耐熱性が向上し、自動車内装材用途としてより適したものとなる([0024])。
【0005】
しかしながら、自動車内装材には、天井部分の表皮等、ポリエステルが使われることもある。特許文献1のホットメルト接着剤は、ポリオレフィン基材への接着性は優れているが、ポリエステル基材への接着が十分ではない。また、特許文献1のホットメルト接着剤は、耐熱性には優れているが、その反面、脆化し易く、剥離強度が十分ではない。
【0006】
さらに、自動車分野では、環境問題に対する意識の高まりから従来の石油由来の原料から天然素材、植物素材、生分解性素材への置き換えが進んでいる。そして、炭酸ガス排出量増加に伴う地球温暖化といった環境問題の観点から、自動車内装材や接着剤についても、石油を原料としないポリ乳酸系樹脂等が検討されている。
【0007】
特許文献2には、ポリ乳酸系樹脂と、ポリブチレンサクシネートまたはポリエチレンサクシネートとを含むホットメルト接着剤が開示されている。特許文献3には、ポリ乳酸とポリビニルアルコール系樹脂とを含むホットメルト接着剤の開示がある。さらに、特許文献4には、熱可塑性樹脂と粘着付与剤を主成分とし、そのいずれか一方または両方が、ポリ乳酸または乳酸と他のヒドロキシカルボン酸から誘導された乳酸共重合樹脂を含む組成物であるホットメルト接着剤組成物の記載がある。
【0008】
ポリ乳酸系ホットメルト接着剤は、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤と比較して、粘着性、接着性、熱安定性や耐熱性等が劣る傾向にある。特に、自動車内装材等に使用されるポリオレフィン基材への接着性が乏しいため、特許文献2〜4に記載のポリ乳酸系ホットメルト接着剤は、自動車内装材への用途には不向きであった。
【0009】
ポリオレフィン基材への接着性を高める手段としては、ポリ乳酸系ホットメルト接着剤にポリオレフィンを配合する方法が考えられる。しかしながら、ポリ乳酸は、ポリオレフィンとは混ざり難く、さらにホットメルト接着剤の添加剤である「粘着付与樹脂」とも相溶性が悪く、熱安定性に乏しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−126991号公報
【特許文献2】特開2010−155951号公報
【特許文献3】特開2004−256642号公報
【特許文献4】特開平5−339557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決し、環境調和性および熱安定性が高く、ポリオレフィン基材やポリエステル基材への接着性に優れ、耐熱性に優れたホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
【0013】
1.(A)極性官能基で変性された共役ジエン系重合体、
(B)脂肪族ポリエステル系樹脂、
(C)非晶性オレフィン系重合体、
(D)結晶性ポリプロピレン樹脂、および
(E)粘着付与樹脂
を含むホットメルト接着剤。
【0014】
2.前記極性官能基が、酸無水物基、マレイン酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基である、上記1に記載のホットメルト接着剤。
【0015】
3.(A)極性官能基で変性された共役ジエン系重合体がアミノ基で変性された水素添加型スチレンブロック共重合体およびマレイン酸で変性された水素添加型スチレンブロック共重合体から選ばれた少なくとも1種を含む、上記1または2に記載のホットメルト接着剤。
【0016】
4.(B)脂肪族ポリエステル系樹脂がポリ乳酸系樹脂を含む、上記1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0017】
5.(C)非晶性オレフィン系重合体がエチレン/プロピレン/1−ブテン共重合体を含む、上記1〜4のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0018】
6.(A)〜(E)の総重量100重量部に対し、(D)結晶性ポリプロピレン樹脂が3〜30重量部である、上記1〜5のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0019】
7.上記1〜6のいずれかに記載のホットメルト接着剤が塗布されて得られた自動車内装材。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、ホットメルト接着剤に、極性官能基で変性された重合体を配合することにより、ポリ乳酸系樹脂等の脂肪族ポリエステル系樹脂と、他の成分との相溶性が改善される。これにより、環境に優しく、かつ、ポリオレフィン基材およびポリエステル基材への接着性および熱安定性等が向上し、耐熱性にも優れたホットメルト接着剤、特に自動車内装材用途に適したホットメルト接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のホットメルト接着剤は、少なくとも、(A)極性官能基で変性された共役ジエン系重合体、(B)脂肪族ポリエステル系樹脂、(C)非晶性オレフィン系重合体、(D)結晶性ポリプロピレン樹脂、および(E)粘着付与樹脂を含む。以下、それぞれ、「A成分」、「B成分」、「C成分」、「D成分」、および「E成分」と記載することもある。
【0022】
なお、本明細書において、「変性された重合体」とは、(i)重合体を得てから官能基が付与されたもの、(ii)重合の過程で官能基が導入されたもの、の双方を含むことを意味する。
【0023】
<(A)極性官能基で変性された共役ジエン系重合体>
本発明のホットメルト接着剤は、(A)極性官能基で変性された共役ジエン系重合体(A成分)を含有することにより、(B)脂肪族ポリエステル系樹脂と、(C)非晶性オレフィン系重合体、(D)結晶性ポリプロピレン樹脂、(E)粘着付与樹脂等の他の成分との相溶性が高まり、粘着性、接着性および熱安定性等が向上する。
【0024】
本発明に用いる(A)極性官能基で変性された共役ジエン系重合体とは、少なくとも1つの極性官能基を有する共役ジエン系重合体のことをいう。極性官能基が導入されている位置は特に限定されず、重合体の末端であってもよいし、重合体の末端以外の内部であってもよい。極性官能基は、得られた重合体に付与されても良いし、モノマーを重合する過程で導入されても良い。
【0025】
「極性官能基」としては、無水マレイン酸基等の酸無水物基、カルボキシル基、マレイン酸基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基等が挙げられ、これらのうち無水マレイン酸基、マレイン酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基が好ましい。
【0026】
「共役ジエン系重合体」とは、共役ジエン化合物に基づく構成単位(共役ジエン単位)を有する重合体のことをいう。
【0027】
ここで、「共役ジエン化合物」とは、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物を意味する。「共役ジエン化合物」として、具体的には、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(又はイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンを例示することができる。1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが特に好ましい。これらの共役ジエン化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明において、共役ジエン系重合体は、共役ジエン単位に加え、他の単量体に基づく構成単位を有していてもよい。他の単量体としては、ビニル系芳香族炭化水素、ビニルニトリル、不飽和カルボン酸エステルがあげられる。
【0029】
本発明において、「共役ジエン系重合体」は、本発明の目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されないが、例えば、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とがブロック共重合した共重合体、すなわち、ビニル系芳香族炭化水素ブロックと共役ジエン化合物ブロックを有して成るものが好ましい。
【0030】
「ビニル系芳香族炭化水素」とは、ビニル基を有する芳香族炭化水素化合物を意味し、具体的には、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、及びビニルアントラセン等を例示できる。特にスチレンが好ましい。これらのビニル系芳香族炭化水素は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明において、A成分として含まれる極性官能基で変性された共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン系重合体は、非水素添加型の共役ジエン系重合体であっても、水素添加型の共役ジエン系重合体であってもよいが、水素添加型の共役ジエン系重合体がより好ましい。
【0032】
「非水素添加型の共役ジエン系重合体」として、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(「SIS」ともいう)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(「SBS」ともいう)を例示できる。「水素添加型の共役ジエン系重合体」として、例えば水素添加されたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(即ち、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体「SEPS」ともいう)及び水素添加されたスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(即ち、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体「SEBS」ともいう)を例示できる。これらのうち、A成分として含まれる極性官能基で変性された共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン系重合体は、SEBSが好ましく、スチレン含有量が3〜40重量%のSEBSがより好ましい。
【0033】
「極性官能基で変性された共役ジエン系重合体」の「極性官能基」としては、無水マレイン酸基等の酸無水物基、カルボキシル基、マレイン酸基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基等が挙げられ、これらのうちマレイン酸基、アミノ基がより好ましい。
【0034】
極性官能基で変性された共役ジエン系重合体の製造方法としては、共役ジエン系重合体をまず合成し、後から極性官能基を導入することにより製造してもよいし、極性官能基を含有する単量体を用いて共重合反応を行うことにより製造してもよい。
【0035】
「極性官能基で変性された共役ジエン系重合体」としては、例えば、アミノ基で変性されたSEBS、マレイン酸基で変性されたSEBS等を挙げることができる。
【0036】
極性官能基で変性された共役ジエン系共重合体において、アミノ基やマレイン酸基等の極性基の導入位置は、特に限定されないが、例えば、共役ジエン系共重合体の少なくとも片末端に導入されていることが好ましい。
【0037】
極性官能基で変性された共役ジエン系共重合体として、市販品を用いることができ、例えば、旭化成ケミカルズ製のタフテックMP10、JSR製のダイナロン8630P、旭化成ケミカルズ製のタフテックM1913、タフテックM1943が挙げられる。
【0038】
本発明において、A成分は、重量平均分子量(Mw)1.0×10〜3.0×10の極性官能基で変性された重合体を含んでいることが好ましく、特に2.0×10〜2.0×10の極性官能基で変性された共役ジエン系重合体を含むのが好ましい。
【0039】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量を換算して求められる。
【0040】
本発明のホットメルト接着剤において、A成分は、A成分〜E成分の総重量100重量部に対し、1〜20重量部配合されることが好ましく、2〜10重量部配合されることがより好ましい。
【0041】
<(B)脂肪族ポリエステル系樹脂>
本発明のホットメルト接着剤は、(B)脂肪族ポリエステル系樹脂(B成分)を含むことにより、石油を原料とする材料等の含有量を減らすことができ、かつ、ポリエステル基材への接着性を高くすることができる。(B)脂肪族ポリエステル系樹脂が、A成分と共に配合されることで、脆化し難く、剥離強度の高いホットメルト接着剤が得られる。
【0042】
(B)脂肪族ポリエステル系樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・カーボネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸・ヒドロキシ吉草酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシ酪酸が好ましく、ポリ乳酸樹脂およびポリブチレンサクシネートがより好ましい。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記ポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などから生成する単位が挙げられる。このような乳酸以外の他の共重合単位は、全単量体単位を100モル%としたときに、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。
【0044】
本発明のホットメルト接着剤において、B成分は、A成分〜E成分の総重量100重量部に対し、5〜50重量部配合されることが好ましく、10〜35重量部配合されることがより好ましい。
【0045】
<(C)非晶性オレフィン系重合体>
本発明のホットメルト接着剤は、(C)非晶性オレフィン系重合体を含むことによって、ポリオレフィン基材への接着性が高くなる。ポリオレフィン基材への接着性が向上することで、本発明のホットメルト接着剤は、ポリオレフィンから構成される自動車内装材や衛生材料等の使い捨て製品を製造するのに適したものとなり、特に自動車内装材製造用に適している。
【0046】
本発明において、(C)非晶性オレフィン系重合体は、明確な融点を持たないオレフィン系重合体を意味し、好ましくは180℃以下で溶融する。ここで、「非晶性」とは、通常、結晶性ではないことを意味するが、より具体的には、高分子の分子鎖が不規則に配列する状態をいう。
【0047】
(C)非晶性オレフィン系重合体は、一般的に、非晶性ポリα−オレフィンと呼ばれるものであり、本発明に係るホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
【0048】
本明細書において、「オレフィン系重合体」とは、オレフィンに基づく構成単位を有する重合体を意味し、オレフィン単独重合体でもよく、オレフィンと共重合可能な化合物と共重合した共重合体でもよい。本発明において、ポリオレフィン系共重合体は、オレフィンを50重量%以上、好ましくは80重量%以上(100重量%を含む)有する。また、オレフィン系重合体は、オレフィンと共重合可能な化合物に基づく構成単位を有していてもよく、オレフィンと共重合可能な化合物を50重量%未満、好ましくは20重量%未満(0重量%を含む)有するオレフィン系共重合体が好ましい。
【0049】
本発明の(C)非晶性オレフィン系重合体は、単独重合体であっても共重合体であってもよく、共重合体であることが好ましく、エチレン系共重合体を含んでいるのが好ましい。本明細書において、「エチレン系共重合体」とは、エチレンと、その他の重合性単量体との共重合体を意味する。
【0050】
「その他の重合性単量体」とは、エチレンと付加重合することができる炭素原子間二重結合を有する単量体をいう。
【0051】
「その他の重合性単量体」としては、具体的には、例えば、「エチレンを除くオレフィン系炭化水素」及び「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」が挙げられる。
【0052】
「エチレンを除くオレフィン系炭化水素」として、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、cis−2−ブテン、trans−2−ブテン、イソブチレン、cis−2−ペンテン、trans−2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン及び2,3−ジメチル−2−ブテン等を例示できる。
【0053】
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル及び酢酸アリル等のカルボン酸ビニル及びアリルエステル等を例示することができる。
【0054】
これらの「その他の重合性単量体」は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
本発明では、エチレン系共重合体は、「エチレンとエチレンを除くオレフィンとの共重合体」を含むことが好ましい。従って、「その他の重合性単量体」は「エチレンを除くオレフィン系炭化水素」、特に炭素数3〜20のα−オレフィンであることが好ましく、プロピレン、ブテン、オクテンであることがより好ましい。
【0056】
「エチレンとエチレンを除くオレフィンとの共重合体」として、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、具体的には、エチレンとオクテンとの共重合体、エチレンと、プロピレンと、1−ブテンとの共重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとブテンとの共重合体等が好ましく、エチレンとオクテンとの共重合体、エチレンとプロピレンと1−ブテンとの共重合体がより好ましく、エチレンと、プロピレンと、1−ブテンとの共重合体が特に好ましい。このようなエチレンと、エチレンを除くオレフィンとの共重合体は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
エチレンとエチレンを除くオレフィンとの共重合体として、市販品を使用することができる。
【0058】
「エチレンと、プロピレンと、1−ブテンとの共重合体」として、例えば、エボニックデグサ社製のベストプラスト703(商品名)、ベストプラスト708(商品名)、ベストプラスト750(商品名)等を例示できる。
【0059】
「エチレンとオクテンとの共重合体」として、例えば、ダウ・ケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、アフィニティGA1950(商品名)、アフィニティEG8185(商品名)、アフィニティEG8200(商品名)、エンゲージ8137(商品名)、エンゲージ8180(商品名)、エンゲージ8400(商品名)等を例示できる。
【0060】
「エチレンとプロピレンとの共重合体」として、例えば、イーストマンケミカル社製のEastoflex E1016PL-1等を例示できる。
【0061】
本発明では、エチレン系共重合体は、エチレンと、「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」から選ばれる少なくとも1種との共重合体を含んでも良く、市販品を使用することができ、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
「エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルとの共重合体」として、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−2エチルヘキシルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルメタクリレート共重合体等を例示できる。これらの中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体がより好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0063】
上記(C)非晶性オレフィン系重合体は、一種類を単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0064】
本発明のホットメルト接着剤は、A成分〜E成分の総重量100重量部に対し、C成分が5〜60重量部であるのが好ましく、15〜50重量部がより好ましく、20〜40重量部がさらに好ましい。(C)非晶性オレフィン系重合体が上記範囲で配合されていることによって、ホットメルト接着剤のポリオレフィン基材に対する接着性が向上する。
【0065】
<(D)結晶性ポリプロピレン樹脂>
本発明のホットメルト接着剤は、(D)結晶性ポリプロピレン樹脂を含むことによって、耐熱性が向上する。耐熱性に優れるホットメルト接着剤は、夏場の高温時での耐久性が必要な自動車内装材用途として、非常に好適である。
【0066】
本発明においては、(D)結晶性ポリプロピレン樹脂は、融点を持つポリプロピレン樹脂を意味する。ここで、「結晶性」とは、通常、非晶性ではないことを意味するが、より具体的には、高分子の分子鎖が規則的に配列する状態をいう。
【0067】
本発明において、(D)結晶性ポリプロピレン樹脂は、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、及びこれらの変性物を使用することができる。
【0068】
(D)結晶性ポリプロピレン樹脂は、融点が120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、170℃以下であることが好ましい。融点が120℃以上、融解熱量が50J/g以上であることがより好ましく、融点が120℃以上、融解熱量が50J/g以上、メルトフロー[JIS K7210]が200〜1,500(g/10分)であることがさらに好ましく、融点が120℃以上、融解熱量が50J/g以上、かつ、メルトフロー[JIS K7210]が200〜1,200(g/10分)であることが特に好ましい。
【0069】
ここで、「融点」とは、DSC(示差走査熱量計)で測定された値のことをいう。示差走査熱量計によって、測定試料と基準物質との間の熱量の差が計測され、測定資料の融点が算出される。具体的には、−50℃から10℃/分で220℃まで昇温して観察される吸熱ピークのピークトップを融点とした。
【0070】
「融解熱量」とは、物質が融解するときに外部から吸収する熱量のことであって、潜熱の一種である。DSCにより測定することができる。通常、1gの物質を融解するのに要する熱量で表す。
【0071】
「メルトフローレート」とは、樹脂の流動性を示す指数を意味し、ヒーターで加熱された円筒容器内で一定量の合成樹脂を、230℃で加熱・加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押出された樹脂量を測定して求める。単位は、「g/10min」が使用される。
【0072】
本発明のホットメルト接着剤は、(D)結晶性ポリプロピレン樹脂の融点およびメルトフローが上記範囲にあることによって、耐熱性が向上し、かつ、ポリオレフィン基材やポリエステル基材に塗工し易いものとなる。
【0073】
本発明において、(C)非晶性オレフィン系重合体と(D)結晶性ポリプロピレン樹脂とは、DSCでも容易に区別される。(D)結晶性ポリプロピレン樹脂の融点は、DSC測定によって、昇温時に吸熱ピークとして観察され、降温時には発熱ピークとして観察される。(C)非晶性オレフィン系重合体の融点はDSCで測定すると、明確に観察されないことから、(D)結晶性ポリプロピレン樹脂と区別することは可能である。
【0074】
(D)結晶性ポリプロピレン樹脂は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0075】
(D)結晶性ポリプロピレン樹脂としては市販品を用いることができ、市販品としては、日本ポリプロ株式会社製のノバテック、株式会社グランドポリマー社製のグランドポリプロ、プライムポリマー社製のプライムポリプロ等が挙げられる。
【0076】
本発明のホットメルト接着剤は、A成分〜E成分の総重量100重量部に対し、D成分が3〜30重量部であるのが好ましく、5〜25重量部がより好ましく、7.5〜20重量部がさらに好ましい。(D)結晶性ポリプロピレン樹脂を上記範囲内の含有量で含有することにより、ホットメルト接着剤の耐熱性が向上することができ、かつ、基材に塗工しやすくなる。
【0077】
<(E)粘着付与樹脂>
本発明のホットメルト接着剤は、(E)粘着付与樹脂(E成分)を含むことにより、粘着性を向上することができる。「粘着付与樹脂」は、ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。
【0078】
粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色〜淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、樹脂等の水素化誘導体が好ましい。
【0079】
粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として、例えば、丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名)、安原化学社製のクリアロンK100(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブS100(商品名)、安原化学社製のクリアロンK4090(商品名)及びクリアロンK4100、クリアロンM105(商品名)、エクソンモービル社製のECR5380(商品名)、ECR179EX(商品名)、ECR5400(商品名)、ECR5600(商品名)、イーストマンケミカル社製のリガライトR7100(商品名)、イーストタック H―100W、エクソン社製のECR179X(商品名)、荒川化学社製のアルコンP100(商品名)、出光興産社製のアイマーブ S110(商品名)、アイマーブ Y135(商品名)、アイマーブP100(商品名)アイマーブP125(商品名)、イーストタック社製のEasttack C100−R(商品名)、荒川化学社製のKR−85(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0080】
本発明のホットメルト接着剤において、E成分は、A成分〜E成分の総重量100重量部に対し、20〜60重量部配合されることが好ましく、30〜50重量部配合されることがより好ましい。
【0081】
本発明のホットメルト接着剤は、上述のA成分〜E成分を含むものであれば良いが、好ましい実施形態として、A成分がアミノ基で変性された共役ジエン系共重合体を含み、B成分がポリ乳酸を含み、C成分が非晶性エチレン系共重合体を含み、D成分が結晶性ポリプロピレン樹脂を含んでいるものが挙げられる。
【0082】
本発明の特に好ましい実施形態としては、A成分がアミノ基で変性されたスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(「SEBS」)を含み、B成分がポリ乳酸を含み、C成分がエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体を含み、D成分が結晶性のランダムポリプロピレン樹脂を含んでいるホットメルト接着剤が挙げられる。
【0083】
本発明の最も好ましい実施形態としては、A成分がアミノ基で変性されたスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(「SEBS」)を含み、B成分がポリ乳酸を含み、C成分が、エチレンと、プロピレンと、1−ブテンとの共重合体を含み、D成分が結晶性のランダムポリプロピレンで融点が120℃以上の樹脂を含むホットメルト接着剤が挙げられる。
【0084】
本発明のホットメルト接着剤は、A成分、B成分、C成分、D成分およびE成分に加えて、(F)安定化剤(以下、「F成分」と記載することもある。)を含むことが好ましい。F成分の配合比率は、A〜E成分の合計量を100重量部として、0.1〜2.0重量部であることが好ましく、0.2〜0.5重量部であることがより好ましい。
【0085】
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「安定化剤」として、例えば酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0086】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。
【0087】
酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。酸化防止剤の市販品として、以下の製品を使用することができる。
【0088】
具体的には、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャルティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、チヌビンP、城北化学社製のJF77(商品名)、エーピーアイコーポレーション製のトミノックスTT(商品名)、アデカ社製のAO−412S(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0089】
本発明のホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0090】
本発明に係るホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、A成分、B成分、C成分、D成分およびE成分と、好ましくはF成分と、更に必要に応じて各種添加剤とを配合して製造することができる。例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0091】
本発明の好ましい態様として、ホットメルト接着剤は、200℃での粘度(又は溶融粘度)が100000mPa・s以下であることが好ましく、30000mPa・s未満であることが特に好ましい。ホットメルト接着剤を均一に塗工できる粘度は、30000mPa・s以下であり、均一な塗工を容易に行える粘度は、20000mPa・s未満である。ホットメルト接着剤は、200℃での粘度が上記範囲にあることによって、よりいっそう塗工に適したものとなる。本明細書の200℃での粘度(又は溶融粘度)とは、27番ローターを用い、ブルックフィールド粘度計で測定された値を意味する。
【0092】
本発明に係るホットメルト接着剤は、紙加工、製本、使い捨て製品、自動車内装材等、幅広く利用されるが、ポリオレフィン基材およびポリエステル基材への接着性に優れているので、自動車内装材に特に有効に利用される。
【0093】
本発明に係る自動車内装材は、一般的には、基材と被着体とが、上記ホットメルト接着剤を介して貼り付けられることで製造される。基材であるプラスチック材料に、被着体を貼り付ける際、ホットメルト接着剤は、基材側に塗布しても、被着体側に塗布しても良い。本発明において自動車内装材の「基材」はポリオレフィンやポリエステルが好ましい。「被着体」は、特に限定されないが、繊維質材料が好ましい。繊維質材料とは、合成繊維又は天然繊維を紡績機でシート状に編んだ材料のことをいう。
【0094】
自動車内装材としては、具体的に、天井材、リアパッケージトレイ、ドアトリム、リーフトリム、フロアインシュレータ、トランクトリム、ダッシュインシュレータ、リテーナー、ブラケット、クリップ座等が挙げられる。
【0095】
本発明の自動車内装材を製造するために、特別な装置を使う必要はない。搬送機、コーター、プレス機、ヒーター、及び裁断機等を含む一般的に既知の製造装置を用いて製造することができる。
【0096】
ホットメルト接着剤を塗布する方法は、目的とする製品を得ることができる限り、特に制限されるものではない。そのような塗布方法は、接触塗布、非接触塗布に大別される。「接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗布方法をいい、「非接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗布方法をいう。接触塗布方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗布方法として、例えば、螺旋状に塗布できるスパイラル塗工、波状に塗布できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗布できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工などを例示できる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を更に詳細に、かつ、より具体的に説明することを目的として、実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
【0098】
実施例および比較例においてホットメルト接着剤に配合した成分を以下に示す。
【0099】
<(A)極性官能基で変性された共役ジエン系重合体>
(A1)アミノ基変性SEBS(JSR社製“ダイナロン8630P”)
(A2)マレイン酸基変性SEBS(旭化成ケミカルズ社製“タフテックM1943”)
【0100】
<(B)脂肪族ポリエステル系樹脂>
(B1)ポリLD乳酸樹脂(Nature works社製“4060D”)
(B2)ポリL乳酸樹脂(Nature works社製“4032D”)
(B3)ポリブチレンサクシネート樹脂(三菱化学社製“AD92W”)
【0101】
<(C)非晶性オレフィン系重合体>
(C1)プロピレン/エチレン/1−ブテン共重合体(エボニックデグサ社製“ベストプラスト703”)
(C2)プロピレン/エチレン/1−ブテン共重合体(エボニックデグサ社製“ベストプラスト750”)
(C3)エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製“AFFINITY GA1950”)
【0102】
<(D)結晶性ポリプロピレン樹脂>
(D1)ランダムポリプロピレンポリマー(プライムポリマー社製“プライムポリプロ E239”)
【0103】
<(E)粘着付与樹脂>
(E1)水素添加テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製“クリアロンP135”)
(E2)芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(出光興産社製 アイマーブP125)
(E3)芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(出光興産社製 アイマーブP100)
(E4)水素添加テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製“クリアロンM115”)
【0104】
<(F)安定化剤>
(F1)酸化防止剤(アデカ社製“AO−60”)
【0105】
(A)〜(F)の成分を表1に示す組成で配合し、約160℃で約3時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例1〜8、比較例1〜4のホットメルト接着剤を製造した。表1に示されるホットメルト接着剤の組成(配合)に関する数値は、全て重量部である。
【0106】
実施例および比較例の各々のホットメルト接着剤について、熱安定性、各種基材に対する剥離強度、せん断強度を評価した。以下、各評価の概要について説明する。
【0107】
<180°剥離強度 PP(ポリプロピレン)板/ポリエステル不織布 (測定時温度:23℃または80℃)>
ホットメルト接着剤の接着性について、PP板/ポリエステル不織布(“ボンニップ”前田工繊社製)の被着体に対する剥離強度から評価した。ホットメルト接着剤を空気中、180℃で溶融させ、オープンタイム20秒、0.30g/inchの塗布量でPP基材に塗布しポリエステル不織布(目付け量300g/m)を張り合わせ試験片を作製した。
【0108】
試験片を23℃の室内で1日放置し、オリエンテック社製UR−500Lロードセル(最大荷重500kg)およびオリエンテック社製RTM−250試験機によって、300mm/分のストローク速度で180°剥離強度を測定した。剥離強度測定時の温度は、23℃および80℃でそれぞれ行った。評価基準は以下のとおりである。
【0109】
(23℃で測定したときの剥離強度)
◎ : 16kg/inchより大きい
○ : 10kg/inchより大きく、16kg/inch以下
△ : 8kg/inchより大きく、10kg/inch以下
× : 8kg/inch以下、またはホットメルトにならず測定不可
【0110】
(80℃で測定したときの剥離強度)
◎ : 5kg/inchより大きい
○ : 2kg/inchより大きく、5kg/inch以下
△ : 1kg/inchより大きく、2kg/inch以下
× : 1kg/inch以下、またはホットメルトにならず測定不可
【0111】
<せん断接着強度(PP/PP 80℃)>
ホットメルト接着剤の接着性について、ポリプロピレン(PP)の被着体に対する引張せん断強度から評価した。各被着体には、幅25mm、長さ100mm、厚み2mmの短冊状のものを使用した。ホットメルト接着剤を空気中、180℃で溶融させ、25mm四方の塗布面積で厚みが2mmになるように2つの被着体を貼り合わせることで試験片を作製した。
【0112】
試験片を23℃の室内で1日放置し、オリエンテック社製UR−500Lロードセル(最大荷重500kg)およびオリエンテック社製RTM−250試験機によって、300mm/分のストローク速度で引張せん断強度を測定した。せん断強度測定時の温度は、80℃であった。評価基準は以下のとおりである。
【0113】
◎: 0.5MPaより大きい
○: 0.3MPa以上、0.5MPa以下
△: 0.1MPa以上、0.3MPa未満
×: 0.1MPa未満、またはホットメルトにならず測定不可
【0114】
<熱安定性>
70mlのガラス瓶にホットメルト接着剤を35g入れ、180℃の乾燥機に24時間静置した後、外観変化を目視で判定した。
【0115】
◎: 相分離、炭化物、およびリング(ホットメルト接着剤の劣化物がリング状に析出したもの)が観察されなかった
○: 極わずかに相分離、炭化物、およびリングが観察された
△: わずかに相分離、炭化物、およびリングが観察された
×: 相分離、炭化物、およびリングが観察された
【0116】
【表1】
【0117】
表1に示されるように、実施例1〜8のホットメルト接着剤は、A成分、B成分、C成分、D成分およびE成分の5成分全てを含んでいるので、脆化し難くて剥離強度に優れ、ポリオレフィン基材およびポリエステル基材への接着性にも優れている。さらに、実施例1〜8のホットメルト接着剤は、各成分の相溶性(熱安定性評価)が良いので熱安定性にも優れており、B成分を含むので環境面でも好ましく、D成分を含むことで耐熱性(80℃でのせん断強度評価)にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、ホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤が塗工された自動車内装材を提供できる。本発明に係る自動車内装材は、ポリオレフィン基材やポリエステル基材から製造されるものが特に有効である。