(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダと、このシリンダに出入りするピストンロッドと、このピストンロッドの先端部に保持されて上記シリンダ内に軸方向に移動可能に挿入されるピストンと、上記シリンダ内に形成されて上記ピストンで区画され作動液が充填されるロッド側室及びピストン側室と、上記シリンダ外に形成されて作動液が貯留されるリザーバと、上記ピストン側室から上記ロッド側室へ向かう作動液の流れのみを許容するピストン通路と、上記リザーバから上記ピストン側室へ向かう作動液の流れのみを許容する吸込み通路と、上記ロッド側室と上記リザーバとを連通する排出通路と、この排出通路の途中に設けられる減衰弁とを備える緩衝器において、
上記シリンダの外周に配置され上記シリンダとの間に筒状隙間を形成する外筒を備えて二重管構造とされるとともに、上記外筒に外付けされて内部に上記リザーバが形成されるタンクと、上記外筒と上記タンクとを接続する接続部材とを備えており、上記排出通路は、上記筒状隙間と上記接続部材を通って上記リザーバに連通することを特徴とする緩衝器。
上記タンク内には、隔壁部材が設けられており、この隔壁部材は、上記リザーバを作動液が充填される液溜室と気体が圧縮されながら封入される気室とに区画するとともに、上記リザーバにおける上記液溜室と上記気室の容積比率を変更可能に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の緩衝器。
上記減衰弁は、上記排出通路の一部を構成するポートが形成される弁座部材と、上記ポートを開閉する弁体と、この弁体を内部圧力で上記弁座部材側に向けて附勢する背圧室と、この背圧室に上記ポートの上流側となる上記筒状隙間の圧力を減圧して導くパイロット通路と、このパイロット通路の途中に設けられて上記背圧室内の圧力を制御するパイロット弁と、このパイロット弁の開弁圧を調節するソレノイドとを備えていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の緩衝器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の一実施の形態に係る緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係る緩衝器Dは、シリンダ1と、このシリンダ1に出入りするピストンロッド2と、このピストンロッド2の先端部に保持されて上記シリンダ1内に軸方向に移動可能に挿入されるピストン3と、上記シリンダ1内に形成されて上記ピストン3で区画され作動液が充填されるロッド側室10及びピストン側室11と、上記シリンダ1外に形成されて作動液が貯留されるリザーバRと、上記ピストン側室11から上記ロッド側室10へ向かう作動液の流れのみを許容するピストン通路L1と、上記リザーバRから上記ピストン側室11へ向かう作動液の流れのみを許容する吸込み通路L2と、上記ロッド側室10と上記リザーバRとを連通する排出通路L3と、この排出通路L3の途中に設けられる減衰弁V3とを備えている。
【0012】
さらに、緩衝器Dは、上記シリンダ1の外周に配置され上記シリンダ1との間に筒状隙間12を形成する外筒4を備えて二重管構造とされるとともに、上記外筒4に外付けされて内部に上記リザーバRが形成されるタンク5と、上記外筒4と上記タンク5とを接続する接続部材RHとを備えている。そして、上記排出通路L3は、上記筒状隙間12と上記接続部材RHを通って上記リザーバRに連通する。
【0013】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態に係る緩衝器Dは、二輪車や三輪車等の鞍乗型車両において後輪を懸架するリアクッションに利用されている。本実施の形態において、リアクッションは、緩衝器Dと、この緩衝器Dの外周に設けられる懸架ばねSと、この懸架ばねSの端部を支持する上下一対のばね受けSS1,SS2と、車高調整用のジャッキ機構Jとを備えている。そして、上記懸架ばねSは、コイルばねからなり、緩衝器Dを伸長方向に附勢して車体を弾性支持し、路面凹凸による衝撃を吸収する。
【0014】
本実施の形態において、ジャッキ機構Jは、非圧縮性の作動流体が充填されるジャッキ室40と、このジャッキ室40の下側開口を塞ぐとともに上側のばね受けSS1を支える上下動可能なジャッキピストン41と、ジャッキ室40とホースJHで接続される図示しないポンプと、ばね受けSS1を懸架ばねS側に附勢する補助ばね42とを備えており、ポンプでジャッキ室40に作動流体を給排し、ジャッキピストン41でばね受けSS1を昇降させて車高を調節する。また、本実施の形態においては、ばね受けSS1を補助ばね42でも支えているので、ジャッキ室40に作動流体を供給しやすい。なお、リアクッションの構成は、適宜変更することが可能であり、ジャッキ機構Jを廃するとしてもよい。また、本発明に係る緩衝器Dがリアクッション以外に利用されるとしてもよい。
【0015】
つづいて、緩衝器Dは、有底筒状に形成されるとともに底部4bを上側に向けて配置される外筒4と、この外筒4の軸心部に起立する筒状のシリンダ1と、このシリンダ1の上端と外筒4の底部4bとの間に挟まれて固定されるベース部材6と、外筒4の下側開口端部に螺合する環状のキャップ7と、このキャップ7で抜け止めされてシリンダ1の下側開口部に固定される環状のロッドガイド8と、このロッドガイド8で軸支されながらシリンダ1に出入りするピストンロッド2と、このピストンロッド2の上端部(先端部)に保持されてシリンダ1内に軸方向に移動可能に挿入されるピストン3と、ロッドガイド8と外筒4との間を塞ぐ環状のシールリング80と、ロッドガイド8とピストンロッド2との間を塞ぐ環状のダストシール81及びオイルシール82と、外筒4の外側に配置され車体に固定されるタンク5と、このタンク5と外筒4とを接続する接続部材RHとを備えている。
【0016】
そして、外筒4の上端とピストンロッド2の下端には、取付部材B1,B2がそれぞれ固定されており、上側の取付部材B1が車体の骨格となる車体フレームに連結され、下側の取付部材B2が後輪を支持するスイングアームに連結されるので、路面凹凸による衝撃が後輪に入力されるとピストンロッド2がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮する。なお、本実施の形態において、シリンダ1が車体側に連結されるとともに、ピストンロッド2が車輪側に連結されて、緩衝器Dが倒立型に設定されている。このようにすることで、減衰弁V3をばね上に配置できるが、シリンダ1が車輪側に連結されるとともに、ピストンロッド2が車体側に連結されて、緩衝器Dが正立型に設定されるとしてもよい。
【0017】
外筒4の内側には、シリンダ1内に形成されてピストン3で区画されるロッド側室10及びピストン側室11と、シリンダ1の外周に形成される筒状隙間12と、外筒4の底部4bに形成される溝4cとベース部材6との間に形成されるボトム室13とが形成されており、ロッド側室10、ピストン側室11、筒状隙間12及びボトム室13に作動液が充填されている。
【0018】
また、外筒4に外付けされるタンク5の内部には、リザーバRが形成されており、このリザーバRは、タンク5内に設けられる隔壁部材50で液溜室51と気室52に区画されている。タンク5が外筒4に外付けされた状態とは、外筒4の内部にタンク5が収容されたり、タンク5の内部に外筒4が収容されたりしておらず、外筒4の外部にタンク5が配置され、且つ、タンク5の外部に外筒4が配置された状態をいうものである。なお、本実施の形態において、タンク5は、ホースや管路等、内部に図示しない通路が形成される接続部材RHで外筒4と接続されており、当該接続部材RHの図示しない通路を介して液溜室51とボトム室13とが連通している。しかし、タンク5が外筒4に外付けされていれば、外筒4とタンク5が一体形成されていてもよい。この場合、外筒4とタンク5の接合部分が接続部材RHに相当し、この接合部分に液溜室51とボトム室13とを連通する通路を形成すればよい。
【0019】
本実施の形態において、隔壁部材50は、弾性変形可能なブラダからなり、液溜室51と気室52とを区画しながらこれらの容積比率を変更できる。液溜室51には作動液が充填されるとともに、気室52には気体が圧縮されながら封入されている。なお、本実施の形態において、作動液は作動油からなるが、この限りではなく、作動油以外にも、減衰力を発揮可能な液体であれば作動液として利用することができる。また、気体は、空気からなるが、窒素等の不活性ガスからなるとしてもよい。また、隔壁部材50は、液溜室51と気室52とを区画しながらリザーバRにおける液溜室51と気室52の容積比率を変更できればブラダ以外であってもよく、例えば、フリーピストンやベローズであってもよい。
【0020】
ロッド側室10とピストン側室11は、ピストン3に形成されるピストン通路L1を介して連通している。ピストン通路L1には、逆止弁V1が設けられているので、ピストン通路L1をピストン側室11からロッド側室10に向かう作動液の流れのみが許容され、反対方向の流れが阻止される。
【0021】
ピストン側室11は、ベース部材6に形成されるベース通路6aを介してボトム室13と連通する。また、このボトム室13には、外筒4の底部4bに形成される第一ボトム通路4dの一端が連なるとともに、この第一ボトム通路4dの他端には、リザーバRの液溜室51と連通する接続部材RHが接続されている。つまり、本実施の形態において、ベース通路6aと、ボトム室13と、第一ボトム通路4dと、接続部材RH内に形成される図示しない通路とを備えて、ピストン側室11とリザーバRとを連通する吸込み通路L2が構成されている。ベース通路6aには、逆止弁V2が設けられているので、吸込み通路L2をリザーバRからピストン側室11に向かう作動液の流れのみが許容され、反対方向の流れが阻止される。
【0022】
ロッド側室10は、シリンダ1の下部に形成される通孔1aを介して筒状隙間12と連通する。また、この筒状隙間12には、外筒4の筒部4aと底部4bの境界部分に径方向に沿って形成される取付孔9が開口している。この取付孔9には、外筒4の底部4aに形成される第二ボトム通路4eの一端が連なっており、この第二ボトム通路4eの他端は、第一ボトム通路4dに連なっている。つまり、本実施の形態において、シリンダ1の通孔1aと、筒状隙間12と、取付孔9と、第二ボトム通路4eと、第一ボトム通路4dと、接続部材RH内に形成される図示しない通路とを備えて、ロッド側室10とリザーバRとを連通する排出通路L3が構成されている。また、取付孔9には、排出通路L3を通過する作動液の流れに抵抗を与える減衰弁V3が取り付けられている。
【0023】
具体的に、取付孔9は、外筒4の上部に形成されて外側に突出する厚肉部4fに、外筒4の筒部4aの軸心線に対して略垂直に形成されており、
図2に示すように、外筒4の外側に面する大径な挿入穴9aと、この挿入穴9aの中心から筒状隙間12に向けて外筒4を貫通する小径な螺子孔9bとからなる。この螺子孔9bが形成される外筒4の内周面には、筒状隙間12側に雌螺子加工がなされている。そして、減衰弁V3は、本実施の形態において、バルブケースVCに収容されており、このバルブケースVCととともにバルブアッシーを構成し、一体化されている。バルブケースVCは、外筒4に連結される筒状のケース部材90と、このケース部材90の外側開口を塞ぐ有底筒状のキャップ部材91とで構成されている。
【0024】
ケース部材90は、上記したように、筒状に形成されており、シリンダ側から順に連なり同軸上に配置される螺子部90aと、中径部90bと、大径部90cと、フランジ部90dと、スリーブ90eとを備えて構成されている。螺子部90aの先端部の外周面には、雄螺子加工がなされており、取付孔9における螺子孔9bに螺合するようになっている。中径部90bは、螺子部90a及び螺子孔9bよりも外径が大きく、挿入穴9aよりも外径が小さく形成されており、中径部90bの外周に作動液が移動可能な環状通路14を形成している。螺子部90aの基端部には、環状のシールリング43が取り付けられているので、作動液が減衰弁V3を介さずに環状通路14と筒状隙間12との間を移動できないようになっている。大径部90cは、中径部90bよりも外径が大きく形成されて挿入穴9aに挿入されている。そして、この大径部90cの外周に環状のシールリング44が取り付けられているので、取付孔9の作動液が外側に漏れないようになっている。また、大径部90cの
図2中右側端部には、周方向に沿って複数の切欠き90fが設けられており、ケース部材90の内側と環状通路14とを連通するようになっている。フランジ部90dは、大径部90c及び挿入穴9aよりも外径が大きく形成されて外筒4における肉厚部4fの
図2中左側面に当接している。スリーブ90eの外周面には、雄螺子加工がなされている。
【0025】
また、ケース部材90には、螺子部90aから中径部90bの軸方向の略中央にかけて形成されて筒状隙間12に開口する流入孔90gと、この流入孔90gに連なるとともに流入孔90gよりも大径であり中径部90bから大径部90cにかけて形成される保持孔90hと、この保持孔90hに連なるとともに保持孔90hよりも大径であり大径部90cからスリーブ90eにかけて形成されて外側に開口する収容孔90iが設けられている。そして、この収容孔90iが上記切欠き90fを介し、環状通路14と連通するようになっており、筒状隙間12の作動液が流入孔90gからケース部材90の内側に流入し、減衰弁Vを通って切欠き90fから環状通路14に移動し、第二ボトム通路4e(
図1)からリザーバRに移動できる。
【0026】
上記ケース部材90とともにバルブケースVCを構成するキャップ部材91は、先端部の内周面に雌螺子加工がなされた筒部91aと、この筒部91aの
図2中左側開口を塞ぐ底部91bとを備えて構成されており、底部91bは、筒部91aの
図2中左端に加締め固定されている。
【0027】
バルブケースVCに収容される減衰弁V3は、
図3(a)に示すように、ケース部材90における保持孔90hに先端部92aを嵌合するとともに組付軸92bを収容孔90iの軸心部に起立させる弁座部材92と、この弁座部材92の組付軸92bに連結される環状のバルブハウジング93と、組付軸92bの外周で弁座部材92とバルブハウジング93との間に保持される環板状の弁体94及び板ばね95と、バルブハウジング93の外周に軸方向に移動可能に取り付けられる筒状のスプール96と、バルブハウジング93の
図3中左側開口部に配置される有底筒状のパイロット弁座部材97と、バルブハウジング93の
図3中左端部外周に嵌合しパイロット弁座部材97の外周に配置される環状のフェール弁座部材98と、フェール弁座部材98の内側に配置されパイロット弁座部材97に出入りするパイロット弁体99と、このパイロット弁体99を退出方向に附勢するコイルばね100と、パイロット弁体99の
図3中左側に配置されパイロット弁体99にコイルばね100に対抗する推力を与えるソレノイド101と、バルブハウジング93とパイロット弁座部材97との間に内周部を挟まれる環板状のフェール弁体102とを備えている。
【0028】
そして、弁座部材92には、
図3(c)に示すように、筒状隙間12と環状通路14とを連通するポート92cと、このポート92cの出口を囲う弁座92dが形成されており、この弁座92dに弁体94を離着座させてポート92cの連通を許容したり遮断したりできる。板ばね95は、スプール96を介して弁体94を閉じ方向に附勢するとともに、バルブハウジング93及びスプール96と協働して背圧室15を形成している。このため、弁体94は、板ばね95と背圧室15の内部圧力とで閉じ方向に附勢されている。本実施の形態において、弁体94は、主弁体94aと副弁体94bとからなり、主弁体94aの開弁圧が副弁体94bの開弁圧よりも大きくなるように設定されている。このため、弁体94は、副弁体94b、主弁体94aの順に二段階に開弁できる。そして、ポート92cの上流側となる筒状隙間12の圧力が高まると、副弁体94b、或いは、副弁体94bと主弁体94aの両方が開弁し、筒状隙間12の作動液がポート92cを通って弁座部材92の外周側に移動し、切欠き90fと、環状通路14と、第二ボトム通路4e(
図1)を通ってリザーバRに移動することができる。つまり、ポート92cや環状通路14も排出通路L3の一部を構成する。
【0029】
また、弁座部材92には、この弁座部材92を軸方向に貫通してバルブハウジング93の内側に開口する中心孔92eが形成されるとともに、バルブハウジング93には、このバルブハウジング93の内側と背圧室15とを連通する連通路93aが形成されており、中心孔92eと、バルブハウジング93の内側と、連通路93aはパイロット通路L30の一部を構成する。中心孔92eの途中には、オリフィスOが設けられているので、パイロット通路L30は、ポート92cの上流側の圧力を減圧して背圧室15に導くことができる。さらに、パイロット通路L30は、
図3(b)に示すように、パイロット弁座部材97に形成されてバルブハウジング93の内側と外側とを連通する通孔97aと、パイロット弁座部材97とパイロット弁体99との間と、パイロット弁体99とフェール弁座部材98との間と、フェール弁座部材98の
図3中左側及び外周に形成される切欠き98a,98bと、スプール96の外周を通って環状通路14に連通している。
【0030】
そして、パイロット弁体99は、パイロット弁座部材97とともにパイロット弁V30を構成しており、パイロット弁体99がパイロット弁座部材97の弁座97bに着座してパイロット弁V30が閉弁すると、パイロット通路L30の連通が遮断され、反対に、パイロット弁体99が弁座97bから離座してパイロット弁V30が開弁すると、パイロット通路L30の連通が許容される。また、パイロット弁体99は、コイルばね100で退出方向に附勢されており、附勢ばね100に対抗するソレノイド101からの推力を受けないと弁座97bから離れるが、フェール弁座部材98の内周突起部98cに当接してパイロット通路L30の連通を遮断する。
【0031】
上記パイロット弁V30の開弁圧は、ソレノイド101で制御できる。当該ソレノイド101は、キャップ部材91に収容されており、巻線101aが巻き回されるとともにキャップ部材91の底部91bに固定される環状のソレノイドボビン101bと、ソレノイドボビン101bの
図3中左側の内周に嵌合される有底筒状の第一固定鉄心101cと、ソレノイドボビン101bの
図3中右側の内周に先端部が嵌合されて第一固定鉄心101cとの間に空隙を有する第二固定鉄心101dと、第一固定鉄心101cの内側に挿入される筒状の可動鉄心101eと、この可動鉄心101eの軸心部を貫通し当該可動鉄心101eに固定されパイロット弁体99の
図3中左端に当接するシャフト101fとを備えている。そして、このソレノイド101にあっては、磁路が第一固定鉄心101c、可動鉄心101e及び第二固定鉄心101dを通過するように形成されており、巻線101aが励磁されると、第一固定鉄心101c寄りに配置される可動鉄心101cが第二鉄心101d側に吸引され、可動鉄心101eに
図3中右側へ向かう推力が作用する。このため、ソレノイド101の励磁時において、パイロット弁体99には、コイルばね100の附勢力に抗する推力がシャフト101fを介して作用する。
【0032】
上記構成によれば、ソレノイド101に電流を供給してパイロッド弁体99に推力を作用させると、パイロット弁体99がコイルばね100の附勢力に抗してパイロット弁座部材97の弁座97bに着座する。そして、パイロット通路L30の上流側となる筒状隙間12の圧力がパイロット弁体99に作用して、この圧力によるパイロット弁体99を弁座97bから離座させる力とコイルばね100の附勢力の合力がソレノイド101の推力を上回るようになると、パイロット弁V30が開弁してパイロット通路L30を開放する。このため、ソレノイド101へ供給する電流量の大小でソレノイド101の推力を調節し、パイロット弁V30の開弁圧を大小調節することができる。パイロット弁V30が開弁すると、パイロット通路L30のパイロット弁V30よりも上流側の圧力は、パイロット弁V30の開弁圧に等しくなり、パイロット通路L30のパイロット弁V30の上流側の圧力が導入される背圧室15の圧力も当該開弁圧に制御される。
【0033】
もどって、フェール弁座部材98の
図3中右側には、
図3(b)に示すように、パイロット弁座部材97との間に隙間を形成する切欠き98dが形成されている。また、フェール弁座部材98において、バルブハウジング93に嵌合する嵌合部(符示せず)には、径方向に貫通する通孔98eが形成されている。上記切欠き98dは、フェール弁座部材98の内側に面し、通孔98eとともにパイロット通路L30から分岐するフェール通路L31の一部を構成しており、このフェール通路L31は、フェール弁座部材98の外周の切欠き98bと、スプール30の外周を通って環状通路14に連通している。
【0034】
フェール弁体102は、環板状に形成されて内周部をパイロット弁座部材97とバルブハウジング93との間に挟まれており、フェール弁座部材98とともにフェール弁V31を構成している。そして、パイロット弁座部座97から外側に張り出すフェール弁体102の外周部がフェール弁座部材98の弁座98fに着座してフェール弁V31が閉弁すると、フェール通路L31の連通が遮断され、反対に、フェール弁体V31の外周部がフェール弁座部材98の弁座98fから離座してフェール弁V31が開弁すると、フェール通路L31の連通が許容される。
【0035】
上記構成によれば、ソレノイド101への電流供給が断たれ、パイロット弁体99がコイルばね100の附勢力によりフェール弁座部材98の内周突起部98cに当接してパイロット通路L30の連通が遮断された状態で、パイロット通路L30の圧力が高まりフェール弁V31の開弁圧に達すると、フェール弁体102の外周部が弁座98fから離座してパイロット通路L30の作動液をフェール通路L31を介して環状通路14に逃がすことができる。なお、減衰弁V3の構成は、上記の限りではなく、適宜変更することができる。
【0036】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作動について説明する。
【0037】
ピストンロッド2がシリンダ1から退出する緩衝器Dの伸長時には、縮小されるロッド側室10の作動液が排出通路L3を通過してリザーバRに移動するとともに、シリンダ1から退出したピストンロッド2体積分の作動液が吸込み通路L2を通過して拡大するピストン側室11に移動するので、リザーバRでは、液溜室51が縮小して気室52が拡大する。
【0038】
反対に、ピストンロッド2がシリンダ1に進入する緩衝器Dの圧縮時には、縮小されるピストン側室11の作動液がピストン通路L1を通過して拡大するロッド側室10に移動するとともに、シリンダ1に進入したピストンロッド2体積分の作動液が排出通路L3を通過してリザーバRに移動するので、リザーバRでは、液溜室51が拡大して気室52が縮小する。
【0039】
つまり、緩衝器Dは、伸長時、圧縮時の何れにおいても、作動液がピストン側室11、ロッド側室10、リザーバRを一方通行で循環するユニフロー型となっている。また、伸長時、圧縮時の何れにおいても、シリンダ1内の作動液が排出通路L3を通ってリザーバRに移動するようになっているので、緩衝器Dは、排出通路L3を作動液が通過する際の減衰弁V3の抵抗に起因する減衰力を発生する。なお、ピストンロッド2の断面積をピストン3の断面積の二分の一にしておくことで、同振幅であればシリンダ1内から排出される作動液の量を伸圧両側で等しくできるため、減衰弁V3が作動液の流れに与える抵抗を同じにしておくと、伸長時と圧縮時の減衰力を同じに設定することもできる。
【0040】
減衰弁V3が正常動作し、ソレノイド101に電流を供給してパイロット弁V30の開弁圧を調節する場合、緩衝器Dが伸縮してポート92cとパイロット通路L30の上流側となるロッド側室10及び筒状隙間12の圧力が高まると、パイロット通路L30におけるオリフィスOとパイロット弁V30との間の圧力が背圧室15に導かれる。背圧室15の内部圧力は、パイロット弁V30の開弁圧に制御され、当該開弁圧をソレノイド101で調節することにより弁体94の背面に作動する圧力を調節することができ、延いては、弁体94がポート92cを開放する開弁圧をコントロールすることができる。
【0041】
また、本実施の形態において、弁体94が主弁体94aと副弁体94bとからなり、二段階に開弁することができるようになっているので、緩衝器Dの発生する減衰力の減衰係数(ピストン速度変化量に対する減衰力変化量の割合)を、副弁体94bのみが開弁するピストン速度領域と、ピストン速度が高くなり主弁体94aも開弁するピストン領域とで変えることができる。
【0042】
また、フェール時には、ソレノイド101への電流供給が断たれ、パイロット弁体99がコイルばね100によって押圧されて、フェール弁座部材98の
図3中左側の開口を塞ぐが、パイロット通路L30内の圧力が開弁圧に達するとフェール弁V31が開弁する。このため、パイロット通路L30の作動液がフェール通路L31を通って環状通路14に流入し、リザーバRに移動する。このため、フェール弁V31の開弁圧の設定によって、緩衝器Dのフェール時の減衰力の特性を予め任意に設定することができる。
【0043】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作用効果について説明する。
【0044】
本実施の形態において、減衰弁V3は、排出通路L3の一部を構成するポート92cが形成される弁座部材92と、ポート92cを開閉する弁体94と、この弁体94を内部圧力で弁座部材92側に向けて附勢する背圧室15と、この背圧室15にポート92cの上流側となる筒状隙間12の圧力を減圧して導くパイロット通路L30と、このパイロット通路L30の途中に設けられて背圧室15内の圧力を制御するパイロット弁V30と、このパイロット弁V30の開弁圧を調節するソレノイド101とを備えている。
【0045】
上記構成によれば、パイロット弁V30の開弁圧をソレノイド101で調節すると、減衰弁V3が排出通路L3を通過する作動液の流れに与える抵抗を可変にでき、所望する減衰力を緩衝器Dに発生させることができる。しかし、減衰弁V3の構成は、上記の限りではなく、適宜変更することができる。
【0046】
また、本実施の形態において、タンク5内には、隔壁部材50が設けられており、この隔壁部材50は、リザーバRを作動液が充填される液溜室51と気体が圧縮されながら封入される気室52とに区画するとともに、上記リザーバRにおける上記液溜室51と上記気室52の容積比率を変更可能に設定されている。
【0047】
上記構成によれば、気室52内に封入される気体で作動液を加圧できるので、減衰力発生応答性を向上させることができる。本実施の形態において、隔壁部材50は、ブラダであるが、適宜変更することが可能であり、例えば、フリーピストンやベローズであってもよい。
【0048】
また、本実施の形態において、緩衝器Dは、減衰弁V3を収容するバルブケースVCを備えている。そして、外筒4にバルブケースVCが螺合する螺子孔9bが形成されている。
【0049】
上記構成によれば、タップを利用して外筒4に螺子孔9bを開け、減衰弁V3を取り付けることができるので、減衰弁V3の取り付け作業を極めて簡易にすることができる。しかし、減衰弁V3の取り付け方法は適宜変更することが可能である。例えば、専用工具を用いて外筒4をチャックし、旋盤で外筒4の肉厚部4fの外周面に雄螺子加工を施して、肉厚部4fにキャップ部材91を直接螺合すこともできる。しかし、この場合、外筒4を鋳造等で形成するなど、外筒4の寸法公差が大きい場合には、専用工具を用いで外筒4をチャックすることが困難であり、外筒4の肉厚部4fには、雄螺子加工を施すことが難しい。これに対して、タップで螺子孔90aを形成する場合、外筒4の寸法公差に関わらず加工が容易である。したがって、上記構成によれば、減衰弁V3の取り付けが極めて容易であるとともに、外筒4の製造方法が限定されることがない。
【0050】
また、本実施の形態において、緩衝器Dは、シリンダ1と、このシリンダ1に出入りするピストンロッド2と、このピストンロッド2の先端部に保持されて上記シリンダ1内に軸方向に移動可能に挿入されるピストン3と、上記シリンダ1内に形成されて上記ピストン3で区画され作動液が充填されるロッド側室10及びピストン側室11と、上記シリンダ1外に形成されて作動液が貯留されるリザーバRと、上記ピストン側室11から上記ロッド側室10へ向かう作動液の流れのみを許容するピストン通路L1と、上記リザーバRから上記ピストン側室11へ向かう作動液の流れのみを許容する吸込み通路L2と、上記ロッド側室10と上記リザーバRとを連通する排出通路L3と、この排出通路L3の途中に設けられる減衰弁V3とを備えている。
【0051】
さらに、緩衝器Dは、上記シリンダ1の外周に配置され上記シリンダ1との間に筒状隙間12を形成する外筒4を備えて二重管構造とされるとともに、上記外筒4に外付けされて内部に上記リザーバRが形成されるタンク5と、上記外筒4と上記タンク5とを接続する接続部材RHとを備えている。そして、上記排出通路L3は、上記筒状隙間12と上記接続部材RHを通って上記リザーバRに連通する。
【0052】
上記構成によれば、リザーバRをタンク5に形成して、ユニフロー型に設定される緩衝器Dを二重管構造としているので、従来のように三重管構造とする場合と比較して、緩衝器Dの構造を簡易にすることができる。
【0053】
また、従来の緩衝器Dのように、中間筒900と外筒400の両方にスリーブ902,402を設ける必要がなく、外筒4にのみスリーブ90eが起立するようになっていればよいので、減衰弁V3を取り付けるための作業効率を向上させることができるとともに、減衰弁V3をシリンダ1の一端に寄せて取り付けることが可能となる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。