【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する真空ポンプにより解決される。
【0009】
好ましくはターボ分子ポンプである、またはサイドチャネルポンプである真空ポンプが、作動室、支承室、作動室と支承室の間に配置された分離壁、および分離壁を通り貫通して延在する少なくとも一つのローター軸を有する。このローター軸は、分離壁と間隙を形成している。その上、真空ポンプは作動室と支承室の間の隔離の為のシール装置を有している。シール装置は、ジーグバーンポンプステージによって形成される。このジーグバーンポンプステージは、作動室と支承室の間の、間隙を通って及ぼされるポンプ効果を提供する。
【0010】
そのようなジーグバーンポンプステージによって、作動室とポンプ室の間の効果的な隔離が達成され、その際、製造コスト、真空ポンプの軸方向の構造高さ、または性能要求が高められることが無く、または真空ポンプの安定性と寿命が損なわれることが無いということが判明した。
【0011】
ジーグバーンポンプステージは、作動室と支承室の間の効果的な隔離を行う。というのは、ジーグバーンポンプステージのポンプ効果によって、間隙を通ってのジーグバーンポンプステージのポンピング方向と反対に向けられたガス流が効果的に防止されるからである。シールガスの使用が、その際場合によっては省略されることが可能である。シールガスの使用もまた、原理的には考え得る。ジーグバーンポンプステージの運転は、その上、真空ポンプの性能要求の著しい上昇には通じない。
【0012】
ジーグバーンポンプステージの提供は、簡単な手段によって可能である。例えば、ジーグバーンポンプステージは、放射方向に向けられたディスク形状のステータ器官と、放射方向に向けられたディスク形状のローター器官から成り、これらは互いに向き合ったポンピングを行う面を形成し、その際、ポンピングを行う一方の面は、滑らか、又は平らであり、そして他方の面は構造を付与されて形成されている。その様なステータ器官およびローター器官は、容易に製造可能であり、複数の軸方向の微傷を製造する為のローターディスクおよび対向配置されたステータパートナーの高コストな処理と、これに伴うローターディスクの脆弱化が防止されることが可能である。
【0013】
ジーグバーンポンプステージの放射方向の向きに基づいて、軸方向の高さはジーグバーンポンプステージによってわずかに高められる。ジーグバーンポンプステージは、軸方向の密間隙を有している。その際、真空ポンプの熱膨張にもかかわらず、少ないコストで密間隙の狭い間隙幅が達成可能である。
【0014】
本発明の有利な実施形は、下位の請求項、明細書および図面に記載されている。
【0015】
好ましくは、ジーグバーンポンプステージは、支承室から間隙を通じて作動室へポンプ効果を提供するために形成される。これによって支承室は作動室に対して効果的に隔離されるので、有害なプロセスガスが作動室から支承室内へと至ることができない。
【0016】
ジーグバーンポンプステージは、好ましくは一つのステータ器官および一つのローター器官を有する。ステータ器官およびローター器官は其々、好ましくはジーグバーンポンプステージの互いに向き合った二つのポンピングを行う面の一方を形成する。ステータ器官は、好ましくは、真空ポンプの静的な部材によって、例えばポンプハウジングによって、又は分離壁によって担持されている、またはこれから形成されている。ローター器官は好ましくは、ローター軸によって担持され、特にローター軸に回転不能に取り付けられている。
【0017】
有利には、ジーグバーンポンプステージの少なくとも一つのポンピングを行う面が、構造付与された面により形成され、及び/又は少なくとも一つのポンピングを行う面が、平らな面により形成されている。一つの実施形に従い、一方のポンピングを行う面は構造付与された面により形成され、かつ他方のポンピングを行う面が平らな面により形成されている。
【0018】
好ましくは、ステータ器官は構造付与されたポンピングを行う面を有している。反対にローター器官は、平らなポンピングを行う面を有していることが可能である。ローター器官は、この場合、特に低いコストで製造可能であり、その際同時に、構造化により生じる、ローター器官の不利な脆弱化が防止される。よってローター器官は、容易に、真空ポンプの運転の際に発生する遠心力負荷に耐えることができる状態であり、その際、真空ポンプの運転安全性を損なう過度の応力が発生することが無い。更に、ローター器官によって引き起こされるローターのアンバランスは、ローター器官のポンピングを行う面の平らな、または滑らかな造形によって大幅に防止される。
【0019】
ローター器官は、好ましくは同時に、ジーグバーンポンプステージの為のポンピングを行う面も、プロセスガスを搬送するためのポンプステージの為の回転する器官も形成する。好ましくは、ローター器官は、プロセスガスの為のポンプステージの回転するポンピングを行う器官によって形成され、この器官は、プロセスガスの為のポンピングを行う面を有し、またはプロセスガスの為のポンプステージのローターハブによって形成される。例えば、ローター器官は、ターボ分子ポンプステージのローターディスクによって形成されることが可能であり、またはホルベックポンプステージ若しくはクロススクリューポンプステージのローターハブによって形成されることが可能である。これは例えばホルベックシリンダーを担持することが可能である。
【0020】
ジーグバーンポンプステージのポンピングを行う面は、ジーグバーンポンプステージの少なくとも一つの搬送チャネルと、搬送チャネルのシールの為の密間隙を境界づけることが可能である。ガスは、真空ポンプの運転の際に、搬送チャネルを通って駆動される。その際、密間隙は、狭く形成されているので、搬送チャネルを通って搬送されるガスのポンプ方向と反対に向けられた、望まれていない逆流は大幅に防止される。
【0021】
好ましくは、真空ポンプの構造付与されたポンピングを行う面は、少なくとも一つの窪みと少なくとも一つの隆起部を有する。この窪みは、搬送チャネルを形成する。その際、隆起部の、向かい合った側のポンピングを行う面に向けられている面領域は、向かい合った側のポンピングを行う面と共に、密間隙を境界づけることが可能である。
【0022】
搬送チャネルは、らせん形状に形成されることが可能であり、及び/又は基本的に、一つの放射方向の面内を推移する。搬送チャネルは、好ましくはジーグバーンポンプステージのインレットおよびアウトレットを接続する。インレットおよびアウトレットの一方は、ジーグバーンポンプステージの放射方向内側面に配置されていることが可能であり、およびインレットおよびアウトレットの各他方は、ジーグバーンポンプステージの放射方向外側に配置されていることが可能である。
【0023】
ジーグバーンポンプステージのポンピングを行う面の間の軸方向の間隙によって、密間隙が形成されていることが可能である。ジーグバーンポンプステージは、原理的には完全に放射方向の密間隙無しに済ますことが可能である。軸方向で発生する、真空ポンプの熱膨張は、放射方向の膨張に比較して小さいので、その際、小さな間隙幅および対応して良好な隔離効率が保証されることが可能である。
【0024】
好ましくは、少なくとも一つのポンピングを行う面の密間隙を境界付ける領域が、少なくとも部分的に、材料除去を行う処理によって生じる、または発生可能である。材料除去を行う処理によって、高い信頼性および低いコストでもって、密間隙の所望の小さな間隙幅と、相応してジーグバーンポンプステージの高い隔離効率が保証されることが可能である。材料除去を行う処理は、特に、切削法、または機械加工、例えば旋盤処理または研磨のようなものを含むことが可能である。
【0025】
例えば、構造付与されたポンピングを行う面を有する器官、好ましくはステータ器官の製造の為に、まず、構造付与された面を有する未加工鋳造品が提供される。その際、引き続いて構造付与された面の、密間隙を境界づける領域が、未加工鋳造品の表面の旋盤処理又は研磨によって処理され、器官を、望まれる間隙幅に合わせる。
【0026】
有利には、ステータ器官及び/又はローター器官が、基本的にディスク形状に形成されている。ステータ器官及び/又はローター器官のディスク面は、その際、好ましくはローター軸の回転軸に対して放射方向に推移している。ローター器官は、好ましくは回転対称に形成されている。これによって運転安全性が高められる。というのは、ローター器官によって引き起こされるアンバランスが防止されるからである。
【0027】
ステータ器官及び/又はローター器官は、射出成型部材として、鍛造部材として、又は成型加工部材として形成されている。特に、射出成型、鍛造又は成型加工が、構造を付与されたポンピング面を有する器官、例えば構造を付与されたポンピングを行う面を有するステータ器官の製造に適している。射出成型、鍛造、又は成型加工の際に、構造を付与されたポンピングを行う面の為の構造が作りだされることが可能である。射出成型、鍛造、または成型加工の際に作りだされる構造は、最終的であるか、または後処理されることが可能である。特に、上述した材料除去を行う方法によってこれを行う。
【0028】
一つの実施形に従い、ステータ器官及び/又はローター器官は少なくとも部分的に、又は完全に、例えばアルミニウムのような金属から成っている。一つの別の実施形に従い、ステータ器官及び/又はローター器官は、少なくとも部分的にまたは完全にプラスチックから成っている。ステータ器官及び/又はローター器官は、少なくとも部分的に又は完全に、例えばガラス繊維強化されたプラスチックまたは炭素繊維強化されたプラスチックのような繊維強化プラスチックから成っていることが可能である。これら材料は、ジーグバーンポンプステージの高い効率に対して望まれる形状的正確性を有するステータ器官またはローター器官の安価な製造性を保証する。同時に、上述の材料は、真空ポンプの運転の際に発生する機械負荷および熱負荷に耐えることができる状態である。
【0029】
ステータ器官は、別体式の部材として形成されることが可能である。この部材は、真空ポンプの静的コンポーネントにより担持される。ステータ器官は、例えば真空ポンプのポンプハウジングによって、または分離壁によって担持されていることが可能である。ステータ器官は、真空ポンプの静的コンポーネントと接着されていることが可能である。ステータ器官は、この形態においては、別体式に製造可能である。これによって、真空ポンプの提供の為に必要とされるコストが削減される。
【0030】
作動室および支承室は、好ましくは互いに直接隣接しており、および分離壁によって直接お互いから分離されている。支承室内には、好ましくは、ローター軸の回転可能な支持の為の回転支承部が配置されている。これは例えば転がり軸受であり、好ましくは潤滑された転がり軸受として形成されている。代替として、または追加的に、支承室内にはローター軸の回転駆動の為の駆動部が配置されていることが可能である。
【0031】
支承室内に設けられる回転支承部は、好ましくはシール装置の近傍に配置されている。これによって、真空ポンプの運転の際に発生する機械負荷および熱負荷による、ジーグバーンポンプステージの領域におけるローター軸の位置正確性への影響が制限される。その結果、特に小さな間隙幅を有する密間隙を有するジーグバーンポンプステージが実現可能である。
【0032】
真空ポンプは、好ましくは高速回転する真空ポンプである。例えばターボ分子ポンプまたはサイドチャネルポンプである。真空ポンプの作動室内には、真空ポンプのポンピング構造が配置されていることが可能である。これによって、真空ポンプによりポンピングすべきプロセスガスが、真空ポンプのポンプインレットからポンプアウトレットへと搬送可能である。このポンピング構造の回転する部材は、好ましくはローター軸により担持されている。
【0033】
ポンピング構造は、ターボ分子ポンプにおいて好ましくは、一または複数のステータディスクおよび、ステータディスクの間に配置されたローターディスクを有している。これらは協働して一つのターボ分子的ポンピング原理を発揮する。サイドチャネルポンプにおいては、ポンピング構造は、羽根の、少なくとも一つのローター側のクラウンを有しており、これらはステータ側のサイドチャネル内に配置されている。このサイドチャネルは、回転方向でみて羽根の輪郭形状に対して拡張されているので、サイドチャネルポンプ原理が発揮される。
【0034】
支承室には、特にシールガスインレットを介してシールガスが供給可能である。シールガスインレットは、ガス案内的に支承室をポンプ外部と接続する。シールガスは、ジーグバーンポンプステージによって支承室から作動室内へと搬送可能である。これによってジーグバーンポンプステージによって提供されるシール効果が最適化される。
【0035】
さらに本発明の対象は、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプまたはサイドチャネルポンプの製造の方法である。このポンプにおいて、作動室、支承室、作動室と支承室の間に配置された分離壁および、分離壁を通り貫通して延在する少なくとも一つのローター軸が提供される。このローター軸は、分離壁と一つの間隙を形成している。更に、作動室と支承室の間の隔離の為のシール装置が提供される。その際、シール装置として、ジーグバーンポンプステージが意図される。このジーグバーンポンプステージは、作動室と支承室の間の、間隙を通して及ぼされるポンプ効果の提供の為に形成されている。本方法は、本明細書に従う発明に係る真空ポンプを製造するのに適している。本明細書内で真空ポンプに関しておよびその製造に関して記載される有利な実施形および長所は、本方法の有利な実施形および対応する長所を意味する。
【0036】
有利な実施形に従い、各一つのポンピングを行う面を有するステータ器官およびローター器官が生ずる。ポンピングを行う面は、好ましくは、ジーグバーンポンプステージの少なくとも一つの搬送チャネル、および搬送チャネルのシールの為の密間隙を境界づける。有利な実施形に従い、少なくとも一つのポンピングを行う面の密間隙を境界づける領域は、少なくとも部分的に材料除去を行う処理により生ずる。これによって密間隙は、特に正確に合わせられることが可能であり、かつ密間隙の特に少ない間隙幅が保証されることが可能である。これはジーグバーンポンプステージの高い効率を保証する。
【0037】
一つの実施形に従い、ジーグバーンポンプステージの為のステータ器官が、別体の部材として提供され、かつ真空ポンプの静的コンポーネントに取り付けられている。ステータ器官は、例えば真空ポンプのポンプハウジングに、または分離壁に取りつけられることが可能である。取付けは、ステータ器官を静的コンポーネントに接着することを含む。
【0038】
以下に本発明を、添付の図面を参照しつつ例示的に有利な実施形に基づいて説明する。