(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154890
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】アクチニド粉末ならびに芳香族ポリマーおよび/またはPMMAを用いて充填された組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20170619BHJP
C08L 91/08 20060101ALI20170619BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20170619BHJP
C08L 25/06 20060101ALI20170619BHJP
C08L 33/12 20060101ALI20170619BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20170619BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20170619BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L91/08
C08L23/00
C08L25/06
C08L33/12
C08L23/06
C08L23/12
C08K3/00
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-510783(P2015-510783)
(86)(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公表番号】特表2015-516019(P2015-516019A)
(43)【公表日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】EP2013059442
(87)【国際公開番号】WO2013167566
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年4月25日
(31)【優先権主張番号】1254332
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリク,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ブロチエ,メリ
(72)【発明者】
【氏名】マテロン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】アブリゼル,カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラン,ジャン−クロード
【審査官】
岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−319903(JP,A)
【文献】
特開平02−194104(JP,A)
【文献】
特開平04−059651(JP,A)
【文献】
特開昭55−115436(JP,A)
【文献】
特開2005−205805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00−101/14
23/00−23/36
25/00−25/18
33/00−33/26
91/00−91/08
C08K 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機マトリックスおよび単一のアクチニド粉末またはアクチニド粉末の混合物を含むアクチニド粉末を用いて充填された組成物であって、それが少なくとも、
− 有機化合物のみの全容積の43.4%〜55%の間の容積含量を占めるパラフィンを含む可塑剤;
− 有機化合物のみの全容積の20%〜51.6%の間の容積含量を占める、ポリスチレン、ポリエチレンおよびポリスチレンならびに/またはポリエチレンおよびポリメタクリル酸メチル(PMMA)であるバインダー;
− 少なくとも100g/molに等しいモル質量を有するカルボン酸またはそれらの塩を含み、その容積含量が、有機化合物のみの全容積の10%未満である、分散剤;
を含み、
− 前記アクチニド粉末または前記アクチニド粉末の混合物が、充填されたマトリックスの容積の40%〜65%の間を占めている
ことを特徴とする、アクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【請求項2】
前記バインダーがポリスチレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のアクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【請求項3】
前記バインダーが、ポリスチレンおよびポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のアクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【請求項4】
前記バインダーが、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)と、ポリエチレンとを含むことを特徴とする、請求項1に記載のアクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【請求項5】
前記可塑剤がポリプロピレンをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【請求項6】
前記アクチニド粉末の粒子の比表面積が、1m2/g〜15m2/gの間であることを特徴とする、請求項1〜5の1項に記載のアクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【請求項7】
前記アクチニド粉末のタップ密度が、前記粉末の前記化合物の理論密度の10%〜70%の間であることを特徴とする、請求項1〜6の1項に記載のアクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【請求項8】
前記粉末の構成成分原料の理論密度が、2〜20の間であることを特徴とする、請求項1〜7の1項に記載のアクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【請求項9】
前記粉末の構成成分原料の理論密度が、7〜19の間であることを特徴とする、請求項8に記載のアクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【請求項10】
前記ポリエチレンが、少なくとも10000g/molの平均モル質量を有することを特徴とする、請求項1〜9の1項に記載のアクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【請求項11】
前記カルボン酸またはその塩のアクチニド粉末の質量に対する質量比率が、0.01%〜1質量%の間であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のアクチニド粉末を用いて充填された組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、アクチニド粉末をベースとし、射出システムに適合したレオロジーを与えるために射出成形することが可能となる利点を有する組成物の分野である。主たる応用分野の一つは、核燃料(より一般的には、アクチニドベースの構成要素/原料)の製造に関連するであろう(これに限定される訳ではない)。
【0002】
より一般的には、本発明は、金属、酸化物、炭化物、または窒化物のいずれの形態であるかには関わらず、アクチニドを含む多少なりとも複雑な形状を有する構成要素の製造に関する。燃料の標準的および工業的な製造は、現在のところ主として、(成形するべき構成要素/燃料を構成する粉末を加圧し、加圧後に得られた圧縮成形物を焼結することをベースとした)粉末冶金法の開発を介して進行している。
【背景技術】
【0003】
しかしながら、粉末冶金法を使用すると、修正工程を必要とせずに、複雑な形状の構成要素を製作したとき、あるいは製造するべき構成要素のサイズを極めて良好に調節したいとき(それらの構成要素が複雑な形状であればさらに)には、いくつかの欠陥および障害が生じる。
【0004】
現在のところ、核燃料(アクチニド化合物)の製造は、典型的には、粉末を冶金することをベースとする標準的なプロセスで実施されている。そのためには、二つの主たる工程が開発されている:
− 燃料の構成成分の粉末を成形する工程(粉体を調製する前に加圧する工程);
− 粉末加圧工程の後で得られた圧縮成形物を焼結する工程。
【0005】
このタイプのプロセスは、実証されており、工業的にも使用されているが、少なくとも四つのタイプの欠陥が誘発される:
− 焼結の後に得られる構成要素の形状(加圧金型中での粒状スタックの調節によって、それ自体が支配され、原料の分布の均質性にも関連する)を調節することが困難。ここで、アクチニド粉末のいくつかでは、粘着性が比較的に高いので、この調節が簡単ではなく、通常は、成形する前にそれらの粉末を調製しておく必要がある。ある種の用途のためには、形状的な配慮を加えて、粉末を冶金することによって生じる可燃性の対象物を整える必要がある;
− この粉末調製法では、多くの場合、粉末の飛散が起き、そのため、その製造プロセスの閉じ込めチャンバーの中での残留量が増大することになる。その結果、放射線的リスクが増大する;
− その形状が複雑である(すなわち、いかなる形状であってもよい)、および/または軸対称でないような構成要素/燃料を得ることが不可能である(工業的にはその成形が、一軸加圧によって実施されるため);
− (特に、そのアクチニドが、金属または炭化物の形態にある場合)自然発火のリスクを制限するために、アクチニド粉末を含む閉じ込めチャンバーを不活性雰囲気にしておく必要がある。
【0006】
これらの欠陥すべてに対処するために、本願出願人は、充填された組成物を提案するが、それによって、粉末射出成形(PIM)法として公知のプロセスを使用することが可能となる。
【0007】
しかしながら、アクチニド粉末の使用に対して、このタイプのプロセスを実施可能とするためには、有機化合物の構成要素からなる、一般的にはポリマーをベースとする流体の有機マトリックスが利用可能となり、それによって、粉末を前記有機マトリックスの中に(均質な分散という意味で)良好に組み入れることができるようになる必要がある。この有機マトリックスは、使用される核物質の特殊性、および目標としている燃料の規格に鑑みて、このタイプのプロセスに伴うすべての、対象となる機能および制約を満足するものでなければならない。
【0008】
現時点において、アクチニド構成要素を調製するための流体の有機マトリックスの配合は、技術的および科学的文献にはまったく記載されていない。このことは特に、充填された有機マトリックスにかかってくる数々の制約/基準によって説明できるかもしれない。これらは、特殊な性質を有するアクチニド粉末を使用すること、および満足のいく条件下(すなわち、その特性が、粉末冶金法によって得られるものと少なくとも同等であるような構成要素を得ることが可能となる条件)ということを考慮に入れなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、PIMプロセスを介してアクチニド燃料/構成要素を製造する際の、この一般的な問題を、満足のいくような方法で(すなわち、その特性が、粉末冶金法によって得られるものと少なくとも同等であるような構成要素を得ることを可能とする方法で)解決するためには、想定される充填されたマトリックスが、付随して、以下のような基準を満たしている必要がある:
− 充填されたマトリックス中のアクチニド粉末充填剤含量が、脱バインダー後に、40%よりも高い粒状スタック密度を得るに十分であること。(その脱バインダー操作が、複合材料充填剤の構成成分の炭素ベースの化合物を除去することからなるということを思い出してほしい。この脱バインダーは、従来法のようにして、熱を作用させて充填剤を蒸発させることにより実施することができる。)
【0010】
とりわけ、PIMプロセスをアクチニド粉末に適用して、その特性が、粉末冶金法によって得られる特性と類似になるような対象物を得ようとする場合には、成形したポリマーの脱バインダー工程の後で、粘着性である、すなわちそれらの形状を保持することが必要とされる粒状スタックが得られ、その密度が、一軸粉末加圧法(粉末冶金法)によって得られたものと同等であることが必要である。それが特に、Geldardの定義(クラスC)を満たすか、または1.4よりも高いHausner係数を有しているのならば、その粉末は粘着性であると考えてよい(Techniques de l’ingenieur mise en forme des poudres,J 3 380−1)。この最小充填剤含量値を達成するためには、アクチニド粉末(および特にそれらの酸化物)の場合に通常そうであるように、粉末が粘着性であるならば、その粉末が、充填剤のブレンド/調製の間にデアグロメレートされることが必要である。この前提条件は、以下の理由から、それ自体で軽視できない:
− 充填剤の射出成形性:先に挙げた充填剤含量の判定基準にも関わらず、金型の中で(または、押出し加工をするのならダイを通過させて)充填されたマトリックスを使用することができる必要があるが、そのためには、射出成形の際に、速度勾配100s
−1で、50〜10000Pa・sの間の剪断粘度範囲、好ましくは1000Pa・s未満の範囲でなければならない;
− 温度、より一般的にはブレンド条件に伴う剪断減粘性挙動および、レオロジー的挙動の堅牢性。充填剤のレオロジー的挙動は、抑止的であることが判明するかもしれない。さらに、アクチニド粉末が、比較的に濃厚で、粘着性で、ポリモーダルである可能性もあるので、ブレンドの際に、配合や混合条件がよくない場合に、充填されたマトリックスの中で、成分分離/沈降が起きるリスクを回避する必要が特にある。
− 充填されたマトリックスの性質の安定性、これは、以下の基準を意味している:
・物理化学的混和性、特にPIMプロセスの作業条件下でのポリマーの不混和性;
・化学的安定性(すなわち、ポリマー同士の間、およびポリマーと使用されるアクチニド粉末との間で、顕著な化学的相互作用がないこと)。特に、この判定基準は、マトリックスの構成成分のポリマーの混合物が、少なくとも有機化合物のマトリックスの構成成分の最低分解温度までは安定であることを必要とする。
【0011】
さらに、アクチニドが、充填されたマトリックスの構成成分の炭素ベースの化合物の分解を促進することが知られている化合物であることを考慮に入れれば(参照、「The activity and mechanism of uranium oxide catalysts for the oxidative destruction of volatile organic compounds」,S.H.Taylor,C.S.Heneghana,G.J.Hutchingsa,et al.,Catalysis Today,59:249〜259,2000;「A study of uranium oxide based catalysts for the oxidative destruction of short chain alkanes」,Applied Catalysis B:environmental,25:137〜149,2000,S.H.Taylor et al.)、特に、PIMプロセスの実施中に、マトリックスの構成成分の化合物と接触状態にあるアクチニドの酸化度を変化させるリスク、または脱バインダーさせることが不可能な炭素ベースの残渣が生成するリスク(このことは、そのために、その残存物含量に依存して、製造終了時では不利となり得る)のいずれかがあって、この性質の安定性に関わる判定基準を達成するのは容易ではない;
− 水溶液を使用する必要がなく、水を一切含まない、脱バインダーさせることが可能な充填されたマトリックス。とりわけ、アクチニド粉末を使用すると、水を使用した際の臨界性のリスクが増大し、またこの使用によってさらに、核環境においてはいつの場合でも、扱うのが困難な液状の流体の発生も起きる。
【0012】
さらに、多くのアクチニドは本来的に、放射線分解現象を引き起こす。このことは、流体の有機マトリックスの構成成分の有機化合物の分解を招く可能性があるが、これは、製品が意図されている用途においては排除すべきことがらである(機械的強度の低下、膨潤、炭素含量の増大、受容不可能な量の水素または可燃性ガスの発生など)。したがって、有機マトリックスの構成成分の有機化合物は、それらの放射線分解現象に対して十分な抵抗性を有していて、先に述べたその他の基準に関連して、前記有機マトリックスの受容性が維持されるようにしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これが、アクチニド粉末を用いて充填された組成物を本願出願人が提案する理由であり、それらは、放射線分解現象に耐えることが可能であり、標準的なPIMプロセスを介してアクチニド粉末を成形するためのプロセスにおいて、良好な挙動を示すのに必要な性質に適合している。
【0014】
特に、そのモノマーが芳香族核を含んでいるポリマーは、放射線分解に対する抵抗性が比較的高く、成形した対象物がそれらの形状を実質的に保持できるようになる。上述の射出成形の問題点に適合するような充填された組成物を同定することによって、放射線分解に抵抗性を有する充填されたマトリックスを規定することが可能となる。
【0015】
芳香族核のコーキングの可能性があるために、一つの困難が残っているが、それは、脱バインダー操作の後では低くなっていなくてはならない炭素ベースの残渣に関連するものである。しかしながら、本発明の組成物では、可能性、特に放射線分解からの保護を与える芳香族ポリマーを使用する可能性が理由で、この問題を回避することができるようになる。
【0016】
本願出願人が観察したところでは、その一方で、放射線分解の影響を比較的に受けやすい「おとり」を導入することもまた可能である。そのような「おとり」(ポリメタクリル酸メチルのタイプのポリマーであってよい)は、アクチニド粉末によって放出される放射線によってもたらされるエネルギーを吸収し、有機マトリックスのその他の構成成分の分子を保護する。しかしながら、目的としている放射線分解抵抗時間(2日のオーダー)の間に、たとえば構成要素が膨潤するリスクを存在させないようにするためには、過剰な「おとり」含量を超えないようにするべきであるか、またはそれでもなお、あまりにも影響を受けやすい「おとり」(すなわち、有機マトリックスの中にアクチニド粉末に関して過剰な放射線分解収率を組み入れたような「おとり」)は使用するべきではなく、この条件は、本発明において選択されるパーセントの範囲の手段で尊重されるのがよい。
【0017】
上述の特性は、尊重されねばならず、さらに付随して、その目標とされたアクチニド燃料/構成要素の特性は、粉末冶金法によって達成し得る特性と少なくとも同等の特性を有していなければならない、すなわち、特に:
− 脱バインダー化した構成要素を焼結させた後で、目標としているアクチニド化合物の理論密度の少なくとも95%に等しい密度;
− 微細構造の均質性、すなわち粒度および多孔度の均質な分布;
− サイズのコントロール、すなわち、0.2%未満の、予想される平均寸法に対する燃料の寸法の変動、すなわち、±0.012mmの値;
− 0.05%未満の残存炭素質量含量(炭化物以外の粉末の場合)。
【0018】
合成においては、充填されたマトリックスに直接関わるすべての基準、およびこの同じマトリックスのPIMによって達成することが可能な対象物に予想される基準が、本発明が解決法を提案している特に重要な問題を規定し、さらに、それらの基準が、燃料製造プラントにおいて完全に脱バインダーするより前に、前記マトリックスを放射線分解にかけ得る時間に相当する、十分な時間(それは、典型的には、充填されたマトリックスを製造した後、少なくとも2日まででよい)でコンパイルされていなくてはならないということに注目するべきである。
【0019】
さらに具体的には、本発明の一つの主題は、有機マトリックスおよび単一のアクチニド粉末またはアクチニド粉末の混合物を含む、アクチニド粉末を用いて充填された組成物であり、それが少なくとも以下のものを含むことを特徴としている:
− その最長のラジカル連鎖が少なくとも数十個の炭素原子を含むアルカンを含み、有機化合物のみの全容積の20%〜70%の間の容積含量を占める、可塑剤;
− 少なくとも1種の芳香族ポリマーおよび/またはポリメチルメタクリレートを含み、有機化合物のみの全容積の20%〜50%の容積含量を占める、バインダー;
− カルボン酸またはそれらの塩を含み、その容積含量が、有機化合物のみの全容積の10%未満である、分散剤;
− 充填されたマトリックスの全容積の40%〜65%の間に相当する、前記アクチニド粉末または前記アクチニド粉末の混合物。
【0020】
これらの組成物によって、先に挙げた特定の問題で規定された規格値を達成することが可能となる、すなわち、得られる充填されたペーストのレオロジーおよび脱バインダー前の射出成形された対象物の機械的強度に対する放射線分解の影響が限定される。
【0021】
本発明の一つの変形形態においては、そのバインダーがポリスチレンを含んでいる。
【0022】
本発明の一つの変形形態においては、そのバインダーがポリスチレンおよびポリオレフィンを含んでいる。
【0023】
本発明の一つの変形形態においては、そのバインダーが、ポリメタクリル酸メチルおよびポリオレフィン(ポリエチレンであってよい)を含んでいる。
【0024】
本発明の一つの変形形態においては、その可塑剤がパラフィンを含んでいる。
【0025】
本発明の一つの変形形態においては、その可塑剤がポリプロピレンを含んでいる。
【0026】
本発明の一つの変形形態においては、前記アクチニド粉末の粒子の比表面積が、約1m
2/g〜15m
2/gの間である。
【0027】
本発明の一つの変形形態においては、前記アクチニド粉末のタップ密度が、その粉末化合物の理論密度の約10%〜70%の間である。
【0028】
本発明の一つの変形形態においては、その粉末の構成成分の物質の理論密度が、2〜20の間である。
【0029】
本発明の一つの変形形態においては、その粉末の構成成分の物質の理論密度が、7〜19の間である。
【0030】
本発明の一つの変形形態においては、そのポリオレフィン性ポリマーが、少なくとも10000g/molの平均モル質量を有している。
【0031】
本発明の一つの変形形態においては、カルボン酸またはその塩が、少なくとも100g/molに等しいモル質量を有している。
【0032】
本発明の一つの変形形態においては、前記カルボン酸またはその塩のアクチニド粉末の質量に対する質量比率が、約0.01質量%〜1質量%の間である。
【0033】
以下の記述(いかなる限定を与えるものではない)を読み、添付した図面を参照する手段により、本発明をより明らかに理解し、その他の利点もより明らかに浮かび上がることであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の充填された組成物を用いて実施されるPIMプロセスの全部を説明した図である。
【
図2】貧弱な配合条件またはブレンド条件(poor formulation or blending condition)の典型的な場合における、剪断速度の関数としての流れ圧力の不安定性の割合の例を示す図である。
【
図3】本発明による各種の充填されたについて、220℃における、剪断速度の関数としての剪断粘度を示す図である。
【
図4a】本発明において、乾燥ルートを介して得られた粉末を用いて充填した3種の組成物の例について、組み入れトルク(incorporation torque)の変化を時間の関数として示す図である。
【
図4b】本発明において、乾燥ルートを介して得られた粉末を用いて充填した3種の組成物の例について、組み入れトルク(incorporation torque)の変化を時間の関数として示す図である。
【
図4c】本発明において、乾燥ルートを介して得られた粉末を用いて充填した3種の組成物の例について、組み入れトルク(incorporation torque)の変化を時間の関数として示す図である。
【
図5】本発明による粉末を用い、50容積%にまで充填した3種の組成物の例についてのブレンドトルクを示す図である。
【
図6a】脱バインダー操作の際の、本発明による組成物Fd、FeおよびFfの例の質量損失における実験的変化を示し、理論曲線と比較した図である。
【
図6b】脱バインダー操作の際の、本発明による組成物Fd、FeおよびFfの例の質量損失における実験的変化を示し、理論曲線と比較した図である。
【
図6c】脱バインダー操作の際の、本発明による組成物Fd、FeおよびFfの例の質量損失における実験的変化を示し、理論曲線と比較した図である。
【
図7】本発明の充填された組成物の例に従う、Ar/H
2雰囲気下の脱バインダー操作温度サイクルの例を示す図である。
【
図8a】本発明の組成物について実施した、熱重量分析(TGA)および示差熱分析(DTA)測定の応答を示す図である。
【
図8b】本発明の組成物について実施した、熱重量分析(TGA)および示差熱分析(DTA)測定の応答を示す図である。
【
図8c】本発明の組成物について実施した、熱重量分析(TGA)および示差熱分析(DTA)測定の応答を示す図である。
【
図9a】本発明の充填された組成物の例のXRDスペクトルを示す図である。
【
図9b】本発明の充填された組成物の例のXRDスペクトルを示す図である。
【
図9c】本発明の充填された組成物の例のXRDスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
一般的には、本発明の充填された組成物は、満足のいく性質を有し、以下において説明し
図1にまとめた工程で示したPIMプロセスに従って実施することを可能とする、アクチニド充填剤を得ることを目的としている。
【0036】
出発原料の混合およびブレンドに相当する、第一の工程1においては、すべての(すなわち本発明における)出発原料を共に混合し:その有機マトリックスM
orgは、可塑剤、バインダー、分散剤、およびアクチニド粉末P
iをベースとする充填剤を含んでいる。手順に関して述べれば、一般的には、ブレンダーを使用して、他の加熱した出発原料の混合物にその粉末を徐々に添加するが、そのブレンダーにはパドルが備わっていて、高い剪断速度が得られるように、したがって、全体の均質性が保証されるようになっているのがよい。
【0037】
第二の工程2においては、射出成形の工程を次のようにして実施することができる:先に得られた流体の充填されたマトリックスを、射出成形機に入れる。次いで、以下のようにして射出サイクルを進める:射出成形機のホッパーに加えた原料が、適切な温度に加熱されたシースの中に到達し、次いでエンドレススクリューを介して、所望の形状を有する金型に直結された射出ノズルに送られる。原料が計量値(射出される構成要素の容積にリンクした容積)に達すると、スクリューの回転が停止し、金型が加圧充填される(スクリューがピストンとして機能する)。次いで、圧力が保持されている間に、その混合物が金型の形状に圧縮成形される。次いで、その混合物を十分に冷却して(十分な剛性となってから)その構成要素を排出させる。この工程を支配する主なパラメーターは、出発原料の温度、金型の温度、射出圧力、および射出速度である。
【0038】
第三の工程3は、脱バインダー操作に相当する。脱バインダーは、このプロセスのキーとなる操作であって、構成要素を射出成形した後に、その充填されたマトリックスから有機物質を除去することからなっている。この操作の品質は、その構成要素において、いかなる物理的損傷(クラック)や化学的損傷(カーバイド化)も起きないようにするためには、本質的に重要である。焼結をした後で出てくる欠陥の大部分は、脱バインダーが不十分であることが原因で発生する。
【0039】
第四の工程4は、焼結操作に相当する。脱バインダー工程が完了したら、焼結工程によってその構成要素を固結させなければならない。焼結は、圧縮成形した粉末を、通常はそれらの融点より低い温度に加熱することによって、それらに冷却後の凝集を与え、最終的な材料が所望の微細構造を得られるようにする加熱プロセスである。焼結の原理は、原子的な拡散に基づいており、粒子が絶対温度融点の半分よりも高い温度にさらされると、接触状態にある粒子が原子移動現象により、拡散を介して溶着して、最終的な目的物O
Fが得られる。
【0040】
本発明において使用される、充填された組成物の例:
本発明の組成物を(上述の特定の問題という意味で)満足のいく方法で使用することが可能であることを示す目的で、可塑剤、バインダー、および粘着性であることが知られているアクチニド粉末を用いた本発明に記載された分散剤を含む、いくつかの充填された組成物を、工業用酸化ウラン粉末を用いて調製した。
【0041】
PIMプロセスにおいてアクチニド粉末を使用することによって生じる、主な困難の一つが、このタイプの粉末の粘着性と関わっているので、本発明の説明のために使用した粉末の例が、この特性を代表している。これを実施するために、酸化ウランの粉末を使用したが、それの微結晶(その粉末の構成成分の元素状の対象物)は、アグリゲートに分類され、それ自体塊状化されてアグロメレートとなる。
【0042】
本発明を説明するために主として使用される粉末の主たる特性は次の通りである:
− 形成されるアグロメレートの直径:D
agglomerate;10〜200μmの間;
− 形成されるアグリゲートの直径:D
aggregate;1μmに等しい;
− 形成される微結晶の直径:D
crystallite;0.3μmに等しい;
− 比表面積:Ssa=2m
2/g。
【0043】
図2には、貧弱な配合条件またはブレンド条件の典型的な場合での、剪断速度(単位:s
−1)の関数としての流れ圧力の割合を示しているが、これは典型的には、標準的なポリマーを含む有機マトリックスから得ることができる。約2000s
−1の剪断速度では、圧力が極めて不安定となっている。
【0044】
以下の表1に列挙した、本発明による各種の充填された複合材料組成物について、検討した。
【0046】
以下の表2に、本発明の組成物を調製した操作条件の例を示している。
【0048】
以下の本発明の説明は、特に本発明の問題点に関連して記載された、充填された組成物のための各種の受容可能性基準を達成するための要素を与える。
【0049】
本発明による充填された組成物における、射出成形性および充填剤含量:
図3に、上述の組成物Fd、FeおよびFfの射出成形性の図を与えるが、ブレンド工程の温度175℃、充填剤含量50容積%の場合で220℃における、剪断速度(単位:s
−1)の関数としての剪断粘度で代表させている。曲線C
3Fd、C
3FeおよびC
3Ffは、それぞれ、組成物Fd、FeおよびFfに関連する。
【0050】
これらの配合物における剪断粘度の値から照らし合わせて、これらの充填された組成物は、充填剤含量が比較的広いにも関わらず、実際のところ、レオロジー判定基準に関しては受容可能であると示唆することが可能であるが、その理由は、それが50〜10000Pa・sであるからである。
【0051】
図4a、4bおよび4cは、組成物Fd、FeおよびFfの、時間の関数としてのブレンドトルクの変化を示している(これらの図において、右側のy軸は、ブレンド温度に相当する)。
【0052】
図5は、配合物Fd、FeおよびFfについてのブレンドトルク値を示しているが、UO
2粉末の組み入れ度は50容積%、充填された組成物FeおよびFfでは温度T
blending=145℃、充填された組成物Fdでは温度T
blending=175℃である。
【0053】
本発明による充填された組成物の性質の安定性:
前述の3種の充填された組成物について、脱バインダー操作の間にさらなる評価をして、それらの結果を理論的な結果と比較した。
図6a、6bおよび6cはそれぞれ、充填された組成物Fd、FeおよびFfに関連し、マトリックスの有機構成成分の相互作用が事実上ないということを示しており、それらの総合的な脱バインダー挙動は、後者の個別の挙動の一次結合とみなすことができる。さらに具体的には、曲線C
6d1、C
6e1およびC
6f1は、理論曲線に関連し、曲線C
6d2、C
6e2およびC
6f2は、実験曲線に関連する。
【0054】
脱バインダープロセスにおいて、アルゴンおよび水素の雰囲気下で使用できる温度サイクルの例を
図7に示し、3種の充填された組成物:Fd、FeおよびFfに適用するが、この短い温度サイクルを実施すると、得られた組成物を迅速に評価することが可能となる。一般的には、工業的な処理で成形された粉末の製造が構成要素の完全性を保持できるように、長い脱バインダーサイクル(典型的には、数時間)が好ましいであろう。
【0055】
図8a、8bおよび8cは、充填された組成物Fd、FeおよびFfの熱的挙動に関連させた、脱バインダー操作を示している。さらに具体的には、曲線C
8d1、C
8e1およびC
8f1は、TGA測定の結果に関連し、曲線C
8d2、C
8e2およびC
8f2は、DTA測定の結果に関連する。これらは、熱重量分析(TGA)および示差熱分析(DTA)測定である。
【0056】
示差熱分析(DTA)は、温度処理の関数として、物質の中での変化に相当する温度を測定するために使用される方法である。それは、サンプルおよび参照物質を、調節された雰囲気下で、プログラムされた温度変化にかけたときの、サンプル(Te)と参照物質(Tr)(熱的に不活性な物質)との間の温度差を、時間または温度の関数として測定することからなっている。
【0057】
一般的には、相転移および溶媒の蒸発が、吸熱ピークとして反映される。その一方で、結晶化、酸化およびある種の分解反応が、発熱ピークで特色づけられる。DTAは一般的には、熱重量分析(TGA)と関連づけられるが、後者によって、サンプルの質量の変化を加熱処理温度の関数として測定することが可能である。この質量の変化は、たとえば蒸気の放出のような質量損失であったり、たとえばガスの固着の場合の質量増加であったりする。これらの図の曲線では、何の発熱ピークもなく、あるいは、溶融および原料マトリックス構成成分の分解/蒸発の現象以外には注目すべき事象も示しておらず、このことが、これらの配合物の安定性を証明している。
【0058】
これらの測定は、XRD測定によってその結論が補強されるが、XRD測定は、粉末を製造するプロセスの最後、したがって焼結操作の後に実施された。
図9a、9bおよび9cは、この目的のための、充填された組成物Fd、FeおよびFfのXRDスペクトルを示しているが、燃料のUO
2相には何の変化も認められず、このことは、アクチニド粉末と成形用ポリマーとの間で顕著な相互作用がないということを支持しており、それが本発明の充填された組成物Fd、FeおよびFfが目的としていることである。
【0059】
本発明による充填された組成物の脱バインダー能力:
脱バインダー能力の判定基準に関しては、成形用のポリマーが脱バインダーされたときに構成要素の完全性が保持され、焼結の際に除去できず、さらに、焼結されたアクチニド材料の微細構造に変化を与える可能性がある炭素ベースの残渣が過剰な割合で存在しないように、脱バインダー操作を実施できるということが必要である。
【0060】
この判定基準に関連して、充填された組成物Fd、FeおよびFfの例の受容可能性を説明するために、次の表4に、焼結で得られた最終構成要素における炭素ベースの残渣のパーセントを示している。