特許第6154913号(P6154913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6154913フレキシブル基板の薄膜窒化ケイ素バリア層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6154913
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】フレキシブル基板の薄膜窒化ケイ素バリア層
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20170619BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170619BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20170619BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20170619BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20170619BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   H05B33/14 A
   H05B33/04
   H05B33/02
   H01L31/04 560
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-550703(P2015-550703)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公表番号】特表2016-508898(P2016-508898A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】US2013077104
(87)【国際公開番号】WO2014105734
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】12/62975
(32)【優先日】2012年12月31日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】61/805,782
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500149223
【氏名又は名称】サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(72)【発明者】
【氏名】アニルバン・ダール
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・ギアッシ
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−220646(JP,A)
【文献】 特開2008−056967(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0034451(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/142059(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H01L 31/048
H01L 51/50
H05B 33/02
H05B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー基板と、
実質的に窒化ケイ素からなる無機バリア層と、
を備える物品であって、
前記無機バリア層は、約400MPa以下の応力少なくとも約1.5g/cmの密度および0.005g/m/日以下の水蒸気透過率(WVTR)を有する、ことを特徴とする物品。
【請求項2】
電子部品と、
該電子部品を覆うバリアスタックと、
を備えるカプセル封止光学デバイスであって、
前記バリアスタックは、
ポリマー基板と、
約400MPa以下の応力少なくとも約1.5g/cmの密度および0.005g/m/日以下の水蒸気透過率(WVTR)を有する実質的に窒化ケイ素からなる無機バリア層とを備える、ことを特徴とするカプセル封止光学デバイス。
【請求項3】
前記カプセル封止光学デバイスは、有機発光ダイオード(OLED)または太陽電池(PV)モジュールである、請求項2記載のカプセル封止光学デバイス。
【請求項4】
前記基板はフレキシブルである、請求項1から3いずれか1項記載の物品またはカプセル封止光学デバイス。
【請求項5】
前記応力は、約390MPa以下である、請求項1から4いずれか1項記載の物品またはカプセル封止光学デバイス。
【請求項6】
前記密度は、少なくとも約2g/cmであり、かつ約2.85g/cm以下である、請求項1から4いずれか1項記載の物品またはカプセル封止光学デバイス。
【請求項7】
応力および密度は、以下の数式
応力<S*密度+I、によって関連し、
Sは、550MPa・cm/g以下の値を有し、かつIは、−400MPa以下である、請求項1から4いずれか1項記載の物品またはカプセル封止光学デバイス。
【請求項8】
Sは、539MPa・cm/gであり、かつIは、−915MPaである、請求項7記載の物品またはカプセル封止光学デバイス。
【請求項9】
前記無機バリア層は、約350MPa以下の応力および少なくとも約2.0g/cmの密度を有する、請求項7記載の物品またはカプセル封止光学デバイス。
【請求項10】
前記ポリマー基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、フルオロポリマー、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1から4いずれか1項記載の物品またはカプセル封止光学デバイス。
【請求項11】
前記少なくとも1つの無機バリア層の厚さは、少なくとも約30nmである、請求項1から4いずれか1項記載の物品またはカプセル封止光学デバイス。
【請求項12】
ポリマー基板に窒化ケイ素層を形成する方法であって、前記窒化ケイ素層は、約400MPa以下の応力少なくとも約1.5g/cmの密度および0.005g/m/日以下の水蒸気透過率(WVTR)を有し、前記ポリマー基板に、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)により窒化ケイ素を堆積させることを含む、ことを特徴とするポリマー基板に窒化ケイ素層を形成する方法。
【請求項13】
前記PECVDは、リアクタを有するチャンバにおいて実施され、
SiHとNHとを、SiH/NHのモル比が約0.4〜約1.0で前記チャンバに加えることと、
前記チャンバを、約70℃〜約130℃の温度に加熱することと、
前記チャンバの圧力を約225μbar〜約500μbarで調整することと、
前記リアクタから、約200W〜約450Wの電力で無線周波数を放出することと、
をさらに含む、請求項12記載のポリマー基板に窒化ケイ素層を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオードや太陽電池などの感湿エレメントを保護するためのポリマー基板に堆積される無機薄膜バリア層に関する。本発明は、そのようなバリア層コンポーネントを備えた物品およびそのようなコンポーネントを製造するためのプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
光学デバイスの機能エレメントは、環境条件の影響、特に湿気および空気にさらされる影響によって劣化しやすい。一例として、有機発光ダイオード(OLED)または有機太陽電池の場合、有機材料は、特に環境条件の影響を受けやすい。
【0003】
電子デバイスの機能エレメントを湿気にさらされることによる劣化から保護するために、機能エレメントが保護基板によりカプセル封止された、積層構造を有するデバイスを製造することが知られている。
【0004】
デバイスの用途に応じて、保護基板は、ガラスまたは有機ポリマー材料によって構成されていてよい。ガラス基板ではなく、フレキシブルポリマー基板でカプセル封止されたOLEDまたは太陽電池は、柔軟であり、極薄であり、かつ軽量であるという利点を有する。
【0005】
しかしながら、電子デバイスが、空気および/または湿気の影響を受けやすい機能エレメントに対向して位置する有機ポリマー基板を備える場合、デバイスが高い劣化率を有することが分かっている。というのも、ポリマー基板は、湿気を蓄えやすく、かつ水蒸気や酸素などの汚染種の、影響を受けやすい機能エレメントへの移動を促進し、それによりこの機能エレメントの特性が損なわれるからである。
【0006】
そのようなデバイスの感水電子部品を保護するために、ポリマー基板の上部に1組のバリア層を使用することが知られている。しかしながら、特にフレキシブル基板の場合、薄膜バリア層の堆積は、非常に困難である。というのも、フレキシブル基板における比較的硬い無機薄膜は、容易に割れおよび剥離を形成しがちであり、それにより薄膜バリア層のバリア特性を劣化させるからである。さらに、複数の有機バリア層からなるスタックの一般に知られた使用には、大変な製造上の努力が必要であり、バリア性能を向上するためのより経済的かつより単純な方法が望まれている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ポリマー基板と、少なくとも1つの無機バリア層とを備える物品であって、無機バリア層は、約400MPa以下の応力および少なくとも約1.5g/cmの密度を有する物品を提供する。好ましくは、物品は、有機発光ダイオード(OLED)や太陽電池(PV)モジュールなどの光学デバイスである。
【0008】
1つの態様では、無機バリア層は、フレキシブルポリマー基板にプラズマ化学気相堆積法(PECVD)によって積層される窒化ケイ素バリア層である。湿気に対する窒化ケイ素層の最良のバリア性能は、高い密度と低い応力との組み合わせにおいて得られることが分かっている。
【0009】
本発明の別の主題は、ポリマー基板にPECVDによって堆積される窒化ケイ素層を形成する方法である。この方法は、堆積される窒化ケイ素層において所望の高い密度および低い応力を得るために、SiHとNHとのモル比、反応温度、圧力および印加される電力などの、反応キーパラメータに関して特別に選択された範囲を含む。
【0010】
本発明の別の特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載されており、詳細な説明から部分的に明らかとなるかまたは本発明を実施することによって理解することができる。本発明は、明細書および特許請求の範囲で特に指摘されている方法およびデバイスによって実現され、かつ達成される。この詳細な説明は、単に例示的に説明されているに過ぎず、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、窒化ケイ素単層の湿気バリア性能を、窒化ケイ素単層の密度および応力値に関して示すグラフである。
図2図2は、市販の参考品FG500および比較例と比べた、本発明による窒化ケイ素単層の長期の湿気バリア性能を示す。
図3図3は、MOCON Aquatranテストを使用した市販の参考品FG500と比べた、2つの代表例の水蒸気透過率(WVTR)を示す。
図4図4は、市販の参考品FG500と比べた、本発明による3つの窒化ケイ素層の湿気バリア性能に対する熱サイクルの影響を示す。
図5図5は、最良のバリア性能のための窒化ケイ素層の臨界厚さを決定する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面とともに示す以下の記載は、本明細書において開示される教示を理解することを助けるために提供されている。以下の議論は、教示の具体的な実施および実施形態に重点を置いている。こうして重点を置いているのは、教示の記載を助けるためあって、教示の範囲または適用性に対する限定としては理解されない。
【0013】
本明細書において使用される、「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」という用語またはこれらの別の変形は、非排他的な包含に及ぶことを意図している。例えば、一連の特徴を含む方法、物品または装置は、必ずしもその特徴にのみ限定されるのではなく、明示的には記載されていないか、もしくはその方法、物品または装置に特有の別の特徴を含んでもよい。さらに、反対に、明示的に記載されていない場合、「または」は、包括的または、を意味するのであって、排他的または、を意味するのではない。例えば、条件AまたはBは以下のいずれかによって満たされる。すなわち、Aが真(または有)およびBが偽(または無)、Aが偽(または無)およびBが真(または有)、ならびにAおよびBともに真(有)。
【0014】
また、本明細書に記載されるエレメントおよびコンポーネントを記載するために「1つの」という用語が使用されている。これは、単に便宜のためであって、本発明の一般的な範囲を示すものである。この記載は、他に明らかに意図されていない限り、1つまたは少なくとも1つを含むものとして理解されるのであり、単数は複数も含み、逆もまた同様である。例えば、本明細書において1つのアイテムが記載されている場合、1つのアイテムの代わりに、2以上のアイテムを使用してもよい。同様に、本明細書において2以上のアイテムが記載されている場合、その2以上のアイテムに代わり、1つのアイテムを使用してもよい。
【0015】
別段の規定がない限り、本明細書において使用される技術的および科学的用語はすべて、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同様の意味を有する。材料、方法および例は、単に例示であって、限定するものであることは意図していない。本明細書において記載されていない範囲においては、具体的な材料および処理行為に関する多くの詳細は、従前のものであり、無機層堆積技術および対応する製造技術における教科書および別の情報源において見つけることができる。
【0016】
本発明は、ポリマー基板と少なくとも1つの無機バリア層とを備える物品であって、無機バリア層は、約400MPa以下の応力および少なくとも約1.5g/cmの密度を有する物品を提供する。物品は、例えば、感湿電子部品を備える光学デバイスであってよい。
【0017】
好ましい実施形態では、上記ポリマー基板はフレキシブルである。
【0018】
ポリマー基板は、熱可塑性または熱硬化性であってよい。例えば、ポリマー基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、フルオロポリマーまたはこれらの任意の組み合わせであってよい。好ましいフルオロポリマーは、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、フッ化エチレン−プロピレンコポリマー(FEP)およびパーフルオロアルキルオキシポリマー(PFA)である。最も好ましい実施形態では、ポリマー基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)であってよい。
【0019】
ポリマー基板は、0.001nm〜10nmの範囲の表面粗さRaをさらに有してよい。例えば、表面粗さは、少なくとも0.1nm、少なくとも0.6nm、少なくとも0.8nm、少なくとも1.0nm、少なくとも1.2nm、少なくとも1.4nm、少なくとも1.6nm、少なくとも1.8nmであって、9nm以下、8nm以下、7nm以下、または6nm以下であってよい。好ましくは、表面粗さは、1nm〜5.5nmの範囲である。
【0020】
別の態様では、ポリマー基板は、透明である。本発明の文脈において、1つの層または複数の層からなるスタックは、少なくとも意図する用途に関して有用な波長帯内において、少なくとも80%の透過率の場合に透明であると考えられる。一例として、太陽電池を備える太陽電池デバイスの場合、各透明層は、400nm〜2500nmの波長帯において透明であり、この種類の電池に関して有用な波長がもたらされる。さらに、ある特定の実施形態においては、透明度は、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%であってよい。
【0021】
本発明の1つの実施形態においては、少なくとも1つの無機バリア層は、ポリマー基板に直接堆積される。別の実施形態においては、1つ以上の中間層を、ポリマー基板と少なくとも1つの無機バリア層との間に含んでもよい。
【0022】
さらなる実施形態においては、少なくとも1つの無機バリア層は、400nm〜760nmの波長帯において、少なくとも約60%、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%の透明度を有する。
【0023】
無機バリア層は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物またはこれらの任意に組み合わせを含んでもよい。上記金属は、Si、Al、Sn、Zn、Zr、Ti、Hf、Bi、Ta、またはこれらの任意の組み合わせであってよい。好ましくは、金属は、SiまたはAlである。より好ましくは、金属はSiである。最も好ましくは、無機バリア層は、窒化ケイ素で構成されている。
【0024】
本発明の1つの態様では、無機バリア層は、化学気相堆積法(CVD)または原子層堆積法(ALD)によって堆積される。好ましくは、化学気相堆積法(CVD)は、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)である。
【0025】
驚くべきことに、無機バリア層の良好な湿気バリア特性を得るためには、その層の低い応力および高い密度が有利であるということが分かっている。このことは、フレキシブル基板において効率的かつ安定した薄膜バリア層を形成するのに特に有利である。
【0026】
本発明の1つの態様によれば、バリア層の応力は、400MPa〜0MPaである。好ましくは、応力は、約390MPa以下であり、例えば、約380MPa以下、約370MPa以下、約360MPa以下、約350MPa以下、約340MPa以下、約330MPa以下、約320MPa以下、約310MPa以下、約300MPa以下、約290MPa以下、約280MPa以下、約270MPa以下、約260MPa以下、約250MPa以下、約240MPa以下、約230MPa以下、約220MPa以下、約210MPa以下、約200MPa以下、約190MPa以下、約180MPa以下、約170MPa以下、約160MPa以下、約150MPa以下、約140MPa以下、約130MPa以下、約120MPa以下、約110MPa以下、約100MPa以下、約90MPa以下、約80MPa以下、約70MPa以下、約60MPa以下、約50MPa以下、約40MPa以下、約30MPa以下、約20MPa以下、または約10MPa以下である。
【0027】
さらに、無機バリア層の密度は、少なくとも約1.5g/cm、例えば、少なくとも約1.55g/cm、例えば、少なくとも約1.6g/cm、少なくとも約1.65g/cm、少なくとも約1.7g/cm、少なくとも約1.75g/cm、少なくとも約1.8g/cm、少なくとも約1.85g/cm、少なくとも約1.9g/cm、少なくとも約1.95g/cm、少なくとも約2g/cm、少なくとも約2.05g/cm、少なくとも約2.1g/cm、少なくとも約2.15g/cm、少なくとも約2.2g/cm、少なくとも約2.25g/cm、少なくとも約2.3g/cm、少なくとも約2.35g/cm、少なくとも約2.4g/cm、少なくとも約2.45g/cm、少なくとも約2.5g/cm、少なくとも約2.55g/cm、少なくとも約2.6g/cm、少なくとも約2.65g/cm、少なくとも約2.7g/cm、少なくとも約2.75g/cm、少なくとも約2.8g/cm、少なくとも約2.85g/cm、少なくとも約2.9g/cm、少なくとも約3g/cm、少なくとも約3.05g/cm、少なくとも約3.1g/cm、少なくとも約3.15g/cm、少なくとも約3.2g/cm、少なくとも約3.25g/cm、少なくとも約3.3g/cm、または少なくとも約3.35g/cmである。好ましくは、密度は約2.0〜約3.0g/cmの範囲である。
【0028】
1つの実施形態において、無機バリア層の応力は、約170MPa以下であり、かつ密度は少なくとも約2.0g/cmである。別の実施形態においては、応力は約350MPa以下であり、かつ密度は少なくとも約2.5g/cmである。
【0029】
図1は、複数の窒化ケイ素単層の湿気バリア性能を、その窒化ケイ素単層の密度および応力値に関して示している。最良の湿気バリア性能を有する領域は、等式y=539x−915(yは応力、xは密度)を備える傾斜線の右側に位置し、かつ応力が約400MPaで頭打ちとなることが分かる。したがって、本発明のバリア層の好ましい応力および密度は、以下の数式に対応する。
応力<S・密度+I
Sは、550MPa・cm/g以下、例えば、540MPa・cm/g以下、530MPa・cm/g以下、520MPa・cm/g以下、510MPa・cm/g以下、500MPa・cm/g以下、490MPa・cm/g以下、470MPa・cm/g以下、450MPa・cm/g以下、430MPa・cm/g以下、410MPa・cm/g以下、350MPa・cm/g以下、300MPa・cm/g以下、または250MPa・cm/g以下の値を有し、Iは、−400MPa以下、例えば、−500MPa以下、−600MPa以下、−700MPa以下、−800MPa以下、−900MPa以下、最大で−1000MPaであり、好ましくは、Sは、539MPa・cm/gであり、Iは、−915MPaである。
【0030】
上述した高い密度および低い応力値を有する無機バリア層は、0.01g/m/日以下、例えば、0.009g/m/日以下、0.008g/m/日以下、0.007g/m/日以下、0.006g/m/日以下、0.005g/m/日以下、0.004g/m/日以下、0.003g/m/日以下、0.002g/m/日以下、0.001g/m/日以下、または0.0001g/m/日以下の水蒸気透過率(WVTR)に対応してもよい。
【0031】
無機バリア層の厚さは、少なくとも約10nm、例えば、少なくとも約20nm、少なくとも約30nm、少なくとも約40nm、少なくとも約50nm、少なくとも約70nm、少なくとも約100nm、少なくとも約150nm、少なくとも約200nm、少なくとも約250nm、少なくとも約300nm、少なくとも約350nm、または少なくとも約400nmであってよい。
【0032】
本発明は、ポリマー基板に窒化ケイ素を堆積させる方法をさらに提供する。窒化ケイ素は、化学気相堆積法(CVD)または原子層堆積法(ALD)によって堆積されてもよい。好ましくは、化学気相堆積法は、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)によって実施される。
【0033】
本発明のPECVD法は、以下の異なる4つのキーパラメータを含む。すなわち、1)約0.4〜約1.0の範囲にあるSiHとNHとのモル比、2)約70℃〜約130℃の反応チャンバの温度、3)約225μbar〜約500μbarでの反応チャンバの圧力の調整、4)約200W〜約450Wの電力でのリアクタからの無線周波数の放出である。好ましくは、SiHとNHとのモル比は、約0.5〜約0.9、より好ましくは、約0.58〜約0.8である。チャンバ温度は、好ましくは、約80℃〜約120℃であり、より好ましくは約100℃〜約120℃である。
【0034】
多くの様々な態様および実施形態が可能である。これらの態様および実施形態のうちの幾つかは、本明細書に記載されている。本明細書を読めば、当業者にはそれらの態様および実施形態は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定しないことが理解される。実施形態は、以下に記載される任意の1つ以上のアイテムに基づくことができる。
【0035】
アイテム1 ポリマー基板と、少なくとも1つの無機バリア層とを備える物品であって、無機バリア層は、約400MPa以下の応力および少なくとも約1.5g/cmの密度を有する。
【0036】
アイテム2 電子部品と、電子部品を覆うバリアスタックとを備えるカプセル封止光学デバイスであって、バリアスタックは、ポリマー基板と、無機バリア層とを備え、無機バリア層は、約400MPa以下の応力および少なくとも約1.5g/cmの密度を有する。
【0037】
アイテム3 アイテム2のカプセル封止光学デバイスであって、カプセル封止光学デバイスは、有機発光ダイオード(OLED)または太陽電池(PV)モジュールである。
【0038】
アイテム4 アイテム1〜3のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、基板はフレキシブルである。
【0039】
アイテム5 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、応力は、約390MPa以下、例えば、約380MPa以下、約370MPa以下、約360MPa以下、約350MPa以下、約340MPa以下、約330MPa以下、約320MPa以下、約310MPa以下、約300MPa以下、約290MPa以下、約280MPa以下、約270MPa以下、約260MPa以下、約250MPa以下、約240MPa以下、約230MPa以下、約220MPa以下、約210MPa以下、約200MPa以下、約190MPa以下、約180MPa以下、約170MPa以下、約160MPa以下、約150MPa以下、約140MPa以下、約130MPa以下、約120MPa以下、約110MPa以下、約100MPa以下、約90MPa以下、約80MPa以下、約70MPa以下、約60MPa以下、約50MPa以下、約40MPa以下、約30MPa以下、約20MPa以下、または約10MPa以下である。
【0040】
アイテム6 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、応力は、少なくとも約0.001MPa、例えば、少なくとも約20MPa、少なくとも約30MPa、少なくとも約40MPa、少なくとも約50MPa、少なくとも約60MPa、少なくとも約70MPa、少なくとも約80MPa、少なくとも約90MPa、少なくとも約100MPa、少なくとも約110MPa、少なくとも約120MPa、少なくとも約130MPa、少なくとも約140MPa、少なくとも約150MPa、少なくとも約160MPa、少なくとも約170MPa、少なくとも約180MPa、少なくとも約190MPa、少なくとも約200MPa、少なくとも約210MPa、少なくとも約220MPa、少なくとも約230MPa、少なくとも約240MPa、少なくとも約250MPa、少なくとも約260MPa、少なくとも約270MPa、少なくとも約280MPa、少なくとも約300MPa、少なくとも約310MPa、少なくとも約320MPa、少なくとも約330MPa、少なくとも約340MPa、少なくとも約350MPa、少なくとも約360MPa、少なくとも約370MPa、少なくとも約380MPa、または少なくとも約390MPaである。
【0041】
アイテム7 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、密度は、少なくとも約1.55g/cm、例えば、少なくとも約1.6g/cm、少なくとも約1.65g/cm、少なくとも約1.7g/cm、少なくとも約1.75g/cm、少なくとも約1.8g/cm、少なくとも約1.85g/cm、少なくとも約1.9g/cm、少なくとも約1.95g/cm、少なくとも約2g/cm、少なくとも約2.05g/cm、少なくとも約2.1g/cm、少なくとも約2.15g/cm、少なくとも約2.2g/cm、少なくとも約2.25g/cm、少なくとも約2.3g/cm、少なくとも約2.35g/cm、少なくとも約2.4g/cm、少なくとも約2.45g/cm、少なくとも約2.5g/cm、少なくとも約2.55g/cm、少なくとも約2.6g/cm、少なくとも約2.65g/cm、少なくとも約2.7g/cm、少なくとも約2.75g/cm、少なくとも約2.8g/cm、少なくとも約2.85g/cm、少なくとも約2.9g/cm、少なくとも約3g/cm、少なくとも約3.05g/cm、少なくとも約3.1g/cm、少なくとも約3.15g/cm、少なくとも約3.2g/cm、少なくとも約3.25g/cm、少なくとも約3.3g/cm、または少なくとも約3.35g/cmである。
【0042】
アイテム8 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、密度は、約3.3g/cm以下、約3.25g/cm以下、約3.2g/cm以下、約3.15g/cm以下、約3.1g/cm以下、約3.05g/cm以下、約3g/cm以下、約2.95g/cm以下、約2.9g/cm以下、約2.85g/cm以下、約2.8g/cm以下、約2.75g/cm以下、約2.7g/cm以下、約2.65g/cm以下、約2.6g/cm以下、約2.55g/cm以下、約2.5g/cm以下、約2.45g/cm以下、約2.4g/cm以下、約2.35g/cm以下、約2.3g/cm以下、約2.25g/cm以下、約2.2g/cm以下、約2.15g/cm以下、約2.1g/cm以下、約2.05g/cm以下、約2g/cm以下、約1.95g/cm以下、約1.9g/cm以下、約1.85g/cm以下、約1.8g/cm以下、約1.75g/cm以下、約1.7g/cm以下、約1.65g/cm以下、約1.6g/cm以下、または約1.55g/cm以下である。
【0043】
アイテム9 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、応力および密度は、以下の数式、すなわち、応力<S*密度+Iに関連しており、Sは、550MPa・cm/g以下、例えば、540MPa・cm/g以下、530MPa・cm/g以下、520MPa・cm/g以下、510MPa・cm/g以下、500MPa・cm/g以下、490MPa・cm/g以下、470MPa・cm/g以下、450MPa・cm/g以下、430MPa・cm/g以下、410MPa・cm/g以下、350MPa・cm/g以下、300MPa・cm/g以下、または250MPa・cm/g以下の値を有し、Iは、−400MPa以下、例えば、−500MPa以下、−600MPa以下、−700MPa以下、−800MPa以下、−900MPa以下であり、最大で−1000MPaである。
【0044】
アイテム10 アイテム9による物品またはカプセル封止光学デバイスであって、Sは、539MPa・cm/gおよびIは−915MPaである。
【0045】
アイテム11 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、無機バリア層は、約170MPa以下の応力および少なくとも約2.0g/cmの密度を有する。
【0046】
アイテム12 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、無機バリア層は、約350MPa以下の応力および少なくとも約2.5g/cmの密度を有する。
【0047】
アイテム13 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、ポリマー基板は、熱可塑性または熱硬化性である。
【0048】
アイテム14 アイテム1〜4による物品またはカプセル封止光学デバイスであって、ポリマー基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミドおよびフルオロポリマーからなる群より選択される。
【0049】
アイテム15 アイテム14の物品またはカプセル封止光学デバイスであって、ポリマー基板は、実質的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはこれらの任意の組み合わせからなる。
【0050】
アイテム16 アイテム14の物品またはカプセル封止光学デバイスであって、フルオロポリマーは、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、フッ化エチレン−プロピレンコポリマー(FEP)およびパーフルオロアルキルオキシポリマー(PFA)からなる群より選択される。
【0051】
アイテム17 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、ポリマー基板は、400nm〜750nmで少なくとも80%の透明度を有する透明ポリマーである。
【0052】
アイテム18 アイテム17の物品またはカプセル封止光学デバイスであって、透明度は、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。
【0053】
アイテム19 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、バリア層は、透明であり、少なくとも60%の透明度を有する。
【0054】
アイテム20 アイテム19による物品またはカプセル封止光学デバイスであって、透明度は、少なくとも65%%、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%である。
【0055】
アイテム21 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、基板は、少なくとも0.001nm、例えば、少なくとも0.1nm、少なくとも0.6nm、少なくとも0.8nm、少なくとも0.9nm、少なくとも1.0nm、少なくとも1.2nm、少なくとも1.4nm、少なくとも1.6nm、または少なくとも1.8nmの表面粗さRを有する。
【0056】
アイテム22 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、基板は、10nm以下、例えば、9nm以下、8nm以下、または7nm以下、6以下、および5.5nm以下の表面粗さRを有する。
【0057】
アイテム23 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、無機バリア層は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0058】
アイテム24 アイテム23の物品またはカプセル封止光学デバイスであって、金属は、Si、Al、Sn、Zn、Zr、Ti、Hf、Bi、Ta、またはこれらの任意の合金からなる群より選択される。
【0059】
アイテム25 アイテム24の物品またはカプセル封止光学デバイスであって、金属は、SiまたはAlである。
【0060】
アイテム26 アイテム25の物品またはカプセル封止光学デバイスであって、金属は、実質的にSiからなる。
【0061】
アイテム27 アイテム23の物品またはカプセル封止光学デバイスであって、無機バリア層は、窒化ケイ素を含む。
【0062】
アイテム28 アイテム27の物品またはカプセル封止光学デバイスであって、無機バリア層は、実質的に、窒化ケイ素からなる。
【0063】
アイテム29 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、無機バリア層は、化学気相堆積法(CVD)または原子層堆積法(ALD)により形成されている。
【0064】
アイテム30 アイテム29の物品またはカプセル封止光学デバイスであって、化学気相堆積法(CVD)は、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)である。
【0065】
アイテム31 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、無機バリア層は、0.01g/m/日以下、例えば、0.009g/m/日以下、0.008g/m/日以下、0.007g/m/日以下、0.006g/m/日以下、0.005g/m/日以下、0.004g/m/日以下、0.003g/m/日以下、0.002g/m/日以下、0.001g/m/日以下、または0.0001g/m/日以下の水蒸気透過率(WVTR)を有する。
【0066】
アイテム32 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、少なくとも1つの無機バリア層の厚さは、少なくとも約10nm、少なくとも約20nm、少なくとも約30nm、少なくとも約40nm、少なくとも約50nm、例えば、少なくとも約70nm、少なくとも約100nm、少なくとも約150nm、少なくとも約200nm、少なくとも約250nm、少なくとも約300nm、少なくとも約350nm、または少なくとも約400nmである。
【0067】
アイテム33 アイテム1〜4のいずれか1つによる物品またはカプセル封止光学デバイスであって、基板と少なくとも1つの無機バリア層との間には境界層が含まれていない。
【0068】
アイテム34 ポリマー基板に窒化ケイ素層を形成する方法であって、窒化ケイ素層は、約400MPa以下の応力および少なくとも約1.5g/cmの密度を有し、この方法は、ポリマー基板に窒化ケイ素を堆積させることを含む。
【0069】
アイテム35 アイテム34による方法であって、堆積は、化学気相堆積法(CVD)または原子層堆積法(ALD)を含む。
【0070】
アイテム36 アイテム35による方法であって、化学気相堆積法(CVD)は、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)である。
【0071】
アイテム37 アイテム36によるポリマー基板に窒化ケイ素層を形成する方法であって、プラズマ化学気相堆積法は、リアクタを有するチャンバで行われ、この方法は、SiHとNHとを、SiH/NHのモル比が約0.4〜約1.0でチャンバに加えることと、チャンバを約70℃〜約130℃の温度に加熱することと、チャンバの圧力を約225μbar〜約500μbarで調整することと、約200W〜約450Wの電力でリアクタから無線周波数を放出することと、をさらに含む。
【0072】
アイテム38 アイテム37によるポリマー基板に窒化ケイ素層を形成する方法であって、SiHとNHとのモル比は、約0.5〜約0.9、例えば、約0.58〜約0.79であり、チャンバ温度は、約80℃〜約120℃、例えば、約100℃〜120℃である。
【0073】
以下の実施例は本発明の例示であって、本発明の範囲を限定するものとは理解されない。これらの実施例の変形および均等物は、本明細書における本開示、図面および特許請求の範囲に鑑みて当業者には明らかである。別段の記載がない限り、すべての百分率は、全組成の重量基準である。
【実施例】
【0074】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示している。
【0075】
実施例1〜7
【0076】
表1は、フレキシブルPET基板にPECVDによって形成された窒化ケイ素単層の、本発明による代表的な7つの実施例と、本発明には該当しない4つの比較例C1〜C4との概要を示している。各窒化ケイ素単層の、厚さ、密度、応力、屈折率および湿気バリア性能が測定されている。表1の値は、最良のバリア性能を有する窒化ケイ素層が上面にある状態の層のバリア性能に関して構成されている。さらに、表1は、PECVDプロセスに関する以下の4つのキーパラメータを含んでいる。すなわち、SiH4とNH3との比、温度、圧力および電力である。
【0077】
表1および図1の湿気バリア性能の値は、111時間後に試験電池内に放出された飽湿度の対数として定義されている。最良のバリア性能は、−0.01〜−0.35ln(%湿気)の範囲に関する。許容できるバリア性能ではない値は、−1.0〜−1.65の範囲であり、比較例C1〜C4として示されている。
【0078】
【表1】
【0079】
湿気バリア性能は、ポリマーにおけるバリア層にわたって湿気捕捉カプセル封止コンパートメント内の湿気の損失を測定することによって評価されている。コンパートメント内の水分の初期パーセンテージは、カプセル封止直後に測定され、100%として示される。次いで、カプセル封止コンパートメント内の水分パーセンテージが周期的に測定され、%湿気−時間曲線が得られる。グラフ表示では、曲線は、ln(%湿気)−時間に変換されている。カプセル封止コンパートメント内の水分濃度における変化は、水蒸気透過率(WVTR)に比例しており、そのため、曲線の傾きが低いと、関連するWVTRが低くなる。
【0080】
図1は、表1に記載される実施例および比較例をすべて含んだ、種々の窒化ケイ素単層の湿気バリア性能を、その窒化ケイ素単層の密度および応力に関して示している。グラフは、最良のバリア性能は、約2.0g/cm以上の高い密度および約400MPa未満の低い応力で得られることを示している。さらに、窒化ケイ素層の良好なバリア性能を予測するために、(y=539x−915の等式の)傾斜線が、より具体的に密度および応力パラメータの適切なグループ化を可能にしていることが分かる。
【0081】
図2は、140日という期間にわたる実施例1〜6および比較例1〜4の窒化ケイ素層のバリア性能を示している。図2は、5重のシステムからなる、Vitex systemsの市販の参考品FG500をさらに含んでいる。図2は、代表的な実施例E1〜E6のすべてが、参考のバリアプローブであるFG500より優れたバリア性能を有することを示している。さらに、比較例C1〜C4は、参考品であるFG500と比べて、はるかに悪い湿気バリア性能を有することが分かる。
【0082】
実施例8
【0083】
水蒸気透過率(WVTR)は、実施例2および3の窒化ケイ素層ならびに参考プローブであるFG500に関して、標準的な、MOCON Aquatran法により測定されている。結果は、表2および図3に示されている。図3の棒グラフは、実施例E2およびE3が、市販の参考品であるFG500よりもはるかに低いWVTRを有することを示している。このことは、本発明による窒化ケイ素層の湿気バリア性能が有利であることをさらに証明している。
【0084】
MOCON Aquatranテスト結果
【0085】
温度:38℃、湿度:100%RH、キャリアガス流量:50sccm、テスト面積:20cm、圧力(ゲージ):10psi(0.68atm)
【0086】
【表2】
【0087】
実施例9
【0088】
少なくとも市販の参考バリア層であるFG500のバリア性能程度のバリア性能に関して、窒化ケイ素層の臨界厚さを決定するために、実施例5の窒化ケイ素層は、50nmおよび25nmの厚さで形成されている。図5に示されるように、50nmの厚さは、依然として、市販の参考品であるFG500バリアに対して明らかな利点を有しており、一方で、25nmの厚さは、参考品FG500のバリア性能に対してわずかに劣る。
【0089】
実施例10
【0090】
実施例1、2および7による堆積された窒化ケイ素層を有する基板に、積層サイクルをシミュレーションするために、15分間、150℃で熱処理を行った。結果は、図4にまとめて示されている。実施例1、2および7の熱処理後の湿気バリア性能(E1 R、E2 RおよびE7 R)は、わずかに湿気バリア性能が減少しているに過ぎず、市販の参考品であるFG500よりも依然として優れていることが分かる。
【0091】
応力測定
【0092】
応力は、DEKTAK Stylus Profilerを使用して、VEECO社のStress Measurement Analysisにより測定した。Stress Measurement Analysisは、積層された薄膜層の応力を、膜および基板の曲率および材料特性における変化に基づいて計算する板曲げ法を使用する。2004年の「Thin Film Stress Measurement Using Dektak Stylus Profilers」に記載されるVEECO法は、本明細書に引用として明示的に取り込む。
【0093】
ここまで本発明を十分に記載したが、当業者には本発明の方法が、本発明の範囲またはその任意の実施形態から逸脱しない限りにおいて、広範かつ均等な範囲の条件、構成および別のパラメータにより実施することができることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5