特許第6154939号(P6154939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6154939
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】ニンニク成分の吸収促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/8962 20060101AFI20170619BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20170619BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170619BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   A61K36/8962
   A61K31/198
   A61P43/00 111
   A61K47/46
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-115985(P2016-115985)
(22)【出願日】2016年6月10日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】398013554
【氏名又は名称】株式会社健康家族
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】藤 裕己
【審査官】 渡邊 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−176421(JP,A)
【文献】 特開2006−182776(JP,A)
【文献】 特開2005−168321(JP,A)
【文献】 特開2013−021997(JP,A)
【文献】 食品と開発, 2006, Vol.41 No.2, p.55-59
【文献】 日本農芸化学会大会講演要旨集, 2015, 2F26p10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 31/198
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
にんにく卵黄を含む、S−アリルシステイン(SAC)及びアリインの吸収促進剤。
【請求項2】
にんにく卵黄が、にんにく卵黄粉末である、請求項1に記載のS−アリルシステイン(SAC)及びアリインの吸収促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニンニク成分の吸収促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
にんにく卵黄は、江戸時代より南九州の各家庭で親しまれてきた日本の優れた伝統食である。「伝統にんにく卵黄」は、生にんにくをすり潰し、低温で卵黄と練り合わせ、にんにく約80%、卵黄約20%に調製したにんにく卵黄粉末に米油等を加えたものである。
【0003】
分析科学技術の発達に伴い種々のにんにくの有効成分が単離され、それぞれの成分と機能が次第に明らかとなってきている。にんにくには、アリイン、メチイン、シクロアリインと呼ばれる含硫アミノ酸や、γ−グルタミル−S−アリルシステイン、γ−グルタミル−S−1−プロペニルシステインと呼ばれるペプチドなどが含まれていることが知られている。にんにくに前立腺がんや膀胱がんの予防効果や増殖抑制効果があることは、特許文献1に開示されている。
【0004】
しかし、にんにく卵黄粉末に特有の機能については、未だ十分には解明されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−302531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、S−アリルシステイン(SAC)及びアリインの吸収促進剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、驚くべきことに、にんにく卵黄粉末が、にんにく粉末に比べて、S−アリルシステイン(SAC)及びアリインの吸収性に優れることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下に示すとおりである。
【0008】
[1]にんにく卵黄を含む、S−アリルシステイン(SAC)及びアリインの吸収促進剤、
[2]にんにく卵黄が、にんにく卵黄粉末である、[1]に記載のS−アリルシステイン(SAC)及びアリインの吸収促進剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、S−アリルシステイン(SAC)及びアリインの吸収を促進することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、にんにく卵黄とは、にんにく卵黄粉末を配合した食品で、ソフトカプセル、錠剤、ハードカプセル、粉末、顆粒の形態で利用することができる。
【0011】
本発明において、にんにく卵黄粉末とは、粉末化されたにんにく卵黄をいう。粉末化されたにんにく卵黄は、にんにくを剥皮し洗浄後、蒸煮、もしくは減圧状態で加温しながら混練し粥状になった時点で、卵黄を加えて混練しさらに加熱乾燥を行い粉末状態にすることによって製造することができる。または、にんにくと卵黄をそれぞれ粉体状に加工し混合することによっても製造することができる。
【0012】
アリインは、ニンニクに含まれる天然の硫黄化合物である。カットやすり下ろしにより、ニンニク中の酵素アリイナーゼの作用で、臭いの元となるアリシンに変化する。アリインをインビトロで血液細胞に添加すると、白血球の貪食能力の増加が観察される。
【0013】
S−アリルシステイン(SAC)は、ニンニクを加熱加工処理することによって生成される無臭の水溶性含硫アミノ酸であり、(大腸)がん予防作用等が報告されている。
加熱加工処理を行うと、処理の程度(温度・期間)によって、果肉色が、白〜琥珀色〜黒に変化する。S−アリルシステインは、琥珀色の時に最も含有量が高く、黒くなるまで加熱すると減少する。一方、琥珀色の時より刺激が少なく、食べやすくなる。
【0014】
本発明のにんにく卵黄は、S−アリルシステイン(SAC)及びアリインの吸収促進のために用いることができる。
【0015】
また、本発明のにんにく卵黄は、ソフトカプセル、錠剤、ハードカプセル、粉末、顆粒のために用いることができる。
【0016】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例1】
【0017】
20歳から39歳の男性14名に、試験食品1(にんにく粉末)及び試験食品2(にんにく卵黄粉末)をクロスオーバーで単回摂取させ、経時的に血中SAC及びアリイン濃度を測定し、吸収性を比較検討した。
【表1】
【0018】
にんにく粉末の調製方法
にんにくを混練しながら減圧状態で80〜100度に加熱し、粉末状になるまで撹拌を続け、SAC、アリインの濃度がにんにく卵黄粉末と同等となるようにデキストリンを加えて調製した。
【0019】
にんにく卵黄粉末の調製方法
にんにく70〜90重量部を混練しながら減圧状態で80から100℃に加熱し、混練後に常圧にし、65℃以下の温度で卵黄10〜30重量部加え混練をしながら減圧、80〜100℃まで昇温し粉末状になるまで撹拌しにんにく卵黄粉末を得た。
【0020】
SACの測定方法
高速液体クロマトグラム分析法
(カラム:4.6×150mm、Inertsil ODS−45μm)
移動相:リン酸バッファー pH2.6/メタノール=85/15
検出器:UV205nm
【0021】
アリインの測定方法
高速液体クロマトグラム分析法
(カラム:4.6×150mm、Inertsil ODS−45μm)
移動相:リン酸バッファー pH2.6/メタノール=85/15
検出器:UV205nm
【0022】
試験食品の組成 1袋(3.5g当たり)
【表2】
【0023】
空腹時に1袋(3.5g)をオブラートに包み、水180mLとともに単回摂取させた。
【0024】
SAC及びアリインの測定は、摂取前(0h)、摂取後(1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h)に行った。
【0025】
SACのAUC0−8h及びアリインのAUC0−8hについて、順序効果、時期効果を解析し、クロスオーバーデザインが適切であったことを確認した後に、クロスオーバー法による試験食品1と試験食品2の比較を、2標本t検定を用いて評価した。AUCの算出は、摂取前の値を基準として台形法にて求めた面積とした。また、摂取後の0から上の面積(ΔAUC0−8h)ついても解析した。
【0026】
Cmaxについては、試験食品1と試験食品2の比較を、1標本t検定を用いて評価した。参考として、各時点の濃度についても、同様に評価した。
【0027】
数値は平均値±標準偏差で示し、検定の有意水準は両側5%とした。
【0028】
SAC濃度AUC0−8h
SAC濃度AUC0−8hについて、順序効果、時期効果を検討したところ順序効果、時期効果は有意であり、クロスオーバーデザインは適切でなかった。
【表3】
【0029】
変化量から求めたSAC濃度ΔAUC0−8hは、時期効果は有意であったが、順序効果は有意ではなく、クロスオーバーデザインは適切であった。
【表4】
【0030】
SAC濃度ΔAUC0−8hは、試験食品1では3345.53±654.11ng/mL・h、試験食品2では3597.93±584.33ng/mL・hであり、食品効果として試験食品2は試験食品1と比較して有意に高かった。
【表5】
【0031】
アリイン濃度AUC0−8h
アリイン濃度AUC0−8hについて、クロスオーバーの順序効果、時期効果を検討したところ時期効果は有意であったが、順序効果は有意でなく、クロスオーバーデザインは適切であった。
【表6】
【0032】
アリイン濃度AUC0−8hは、試験食品1摂取では3253.74±701.79ng/mL・h、試験食品2摂取では3613.51±588.18ng/mL・hであり、食品効果として試験食品2は試験食品1と比較して有意に高かった。
【表7】
【0033】
アリイン濃度ΔAUC0−8hも、時期効果は有意であったが、順序効果は有意でなくクロスオーバーデザインは適切であった。
【表8】
【0034】
アリイン濃度ΔAUC0−8hは、試験食品1摂取では3011.51±716.76ng/mL・h、試験食品2摂取では3313.20±543.41ng/mL・hであり、食品効果として試験食品2は試験食品1と比較して有意に高かった。
【表9】
【0035】
SAC濃度Cmax
実測値では、クロスオーバーデザインは不適切であったことから、第I期のみの結果から、試験食品1のCmaxは611.33±197.41ng/mL、試験食品2のCmaxは503.04±126.11ng/mLであり、試験食品1摂取の方が高い値を示したが、有意差は認められなかった(2標本t検定)。その時のTmaxは試験食品1及び2ともに摂取後2時間であった。
【0036】
変化量では、試験食品1のCmaxは524.73±116.93ng/mL、試験食品2のCmaxは562.45±141.89ng/mLであり、試験食品2の方が高い値を示したが、有意差は認められなかった(1標本t検定)。その時のTmaxは試験食品1及び2ともに摂取後2時間であった。
【0037】
アリイン濃度Cmax
実測値では、試験食品1のCmaxは799.45± 266.72ng/mL、試験食品2のCmaxは910.14±217.74ng/mLであり、試験食品2の方が高い値を示したが、有意差は認められなかった(1標本t検定)。その時のTmaxは試験食品1及び2ともに摂取後1時間であった。
【0038】
変化量では、試験食品1のCmaxは769.18±262.01ng/mL、試験食品2のCmaxは872.60±214.48ng/mLであり、試験食品2の方が高い値を示したが、有意差は認められなかった(1標本t検定)。その時のTmaxは試験食品1及び2ともに摂取後1時間であった。
【0039】
有効性の結論
主要評価項目のSAC濃度AUC0−8hは、実測値ではクロスオーバーデザインは適切ではなかったが、変化量でのSAC濃度ΔAUC0−8hでは、クロスオーバーデザインは適切であり、試験食品2は試験食品1よりもΔAUC0−8hは有意に高かった。
【0040】
アリイン濃度AUC0−8h、アリイン濃度ΔAUC0−8hは、クロスオーバーデザインは適切であり、試験食品2は試験食品1よりもAUC0−8h及びΔAUC0−8hが有意に高かった。
【0041】
SAC濃度Cmax及びアリイン濃度Cmaxにおいては、試験食品1と試験食品2との有意差は認められなかった。
【0042】
以上の結果から、試験食品2(にんにく卵黄粉末)は、試験食品1(にんにく粉末)と比較してSAC及びアリインの吸収性が良いことが確認された。
【0043】
安全性については、有害事象の発現はなく、問題は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、S−アリルシステイン(SAC)及びアリインの吸収を促進することができる。
【要約】      (修正有)
【課題】にんにくの有効成分である、S−アリルシステイン(SAC)及びアリインの吸収促進剤の提供。
【解決手段】にんにく卵黄を含む、S−アリルシステイン及びアリインの吸収促進剤。にんにく卵黄が、にんにく卵黄粉末であることが好ましい。
【選択図】なし