【実施例】
【0030】
[装置概要]
図1は、本発明の実施例を適用した穴抜き装置の正面図を示している。
【0031】
図1のように、この穴抜き装置1は、加圧装置3と金型5とストライカ7とからなっている。前記加圧装置3は、加圧機構を構成し、油圧などの液圧や機械プレスにより加圧力を発生させるものである。この加圧装置3は、下部にボルスター9、上部にスライド11を備え、スライド11はプランジャ13によって加圧動作可能となっている。15はバランスシリンダである。
【0032】
この金型5は、前記ボルスター9のベースとしてのベースプレート17上に取り付けられている。ストライカ7はスライド11に取り付けられている。
【0033】
ベースプレート17とスライド11との間には、スライドリフター19がXY方向の4箇所に備えられている。
【0034】
なお、X方向とは、穴抜き作業時の材料の送り方向であり、
図1では、左方向としている。Y方向とは、X方向に直交する金型5の移動方向であり、
図1では、紙面直交方向としている。
【0035】
穴抜き装置1のX方向上流側の前部には、供給機構21が備えられている。穴抜き装置1のX方向下流側の後部には、搬出機構23が備えられている。供給機構21及び搬出機構23については後述する。
【0036】
そして、材料として、例えば平板長尺のスチール板材(以下、「ワーク」と言う。)が
図1のX方向から金型5に供給され、NC制御によってプランジャ13が働きスライド11が下降すると、ストライカ7が動作し、金型5によって材料に穴加工を行わせることができる。
【0037】
ワークは、ワークの長手方向であるX方向に移動しつつ、適宜位置決められる。同時にストライカ7がワークの幅方向であるY方向にワーク幅内で移動しつつ適宜位置決めされる。かかる動作状態において穴抜き加工が行われ、ワークの全範囲に所望の穴加工を施すことができる。
【0038】
ワークの供給構造については後述する。
【0039】
[金型]
図2は、金型及びその周辺を示すX方向の断面図である。
図3は、上型側から見た金型の平面図である。
図4は、金型のY方向の断面図出る。
図5は、下型側を見た金型の平面図である。
図6は、金型リフター及びバランス用のコイルスプリングを示す断面図である。
図7は、上下金型の断面図である。
【0040】
図2〜
図7のように、前記金型5は、それぞれ上型25と下型27とを備えている。上型25は、上型べースプレート25aに取り付けられ、下型27は、下型べースプレート27aに取り付けられている。上型25は、上型べースプレート25aを含んで上型25と言い、下型27は、下型べースプレート27aを含んで下型27と言う。
【0041】
前記上型25には上挟持面29が設けられ、下型27には下挟持面31が設けられている。下挟持面31は、穴加工時にワークを下から支える。上挟持面29は、下型27に対する下降位置で下挟持面31と共にワークを挟持する。
【0042】
本実施例の金型5は、特許文献1の一対の金型が合体されたようなものである。従って、上下挟持面29、31の幅は特許文献1に記載の金型よりも拡大している。
【0043】
このため、上下挟持面29、31が設けられる範囲は、
図5の上型25の拡大平面図を加えた
図2〜
図7のように、パンチ33、ダイス35が設けられる範囲が特許文献1の金型に比較して幅広になっている。
【0044】
前記パンチ33は、上型25に取り付けられ、ダイス35は下型27に取り付けられている。これらパンチ33及びダイス35は、ワークに複数種の穴加工を行うために径の異なる複数組が備えられている。これら複数種の穴は、例えば複数種の小穴、パイロット穴の組合せである。
【0045】
パンチ33、ダイス35の取付構造は
図7のようになっている。
【0046】
この
図7のように、パンチ33は、パンチ付勢機構として皿ばね37を備えている。皿ばね37は、パンチ33及び上型25間に介設されている。皿ばね37によりパンチ33を上型25に対する上昇位置へ付勢し、上型25にパンチ33を昇降自在に支持する。
【0047】
つまり、パンチ33は前記上型25側に取り付けられたパンチガイド39に挿入されている。パンチガイド39上には、ばね座41が固定されている。パンチ33の上端には、ボルト43によってパンチヘッド45が締結固定されている。ばね座41とパンチヘッド45との間に、皿ばね37が積層状態で介設されている。
【0048】
従って、パンチ33はパンチヘッド45への加圧によって上型25に対し下降し、加圧力が解除されると皿ばね37の付勢力で上型25に対する上昇位置へ付勢されるようになっている。前記ダイス35は下型27に固定支持されている。
【0049】
上型25は、下型27に対して上型支持機構としての金型ガイド47によって昇降可能に支持されている。
【0050】
図2〜
図6のように、金型ガイド47は、平面から見て上型ベースプレート25a及び下型ベースプレート27aの各四隅に設けられている。この金型ガイド47は、ガイドポスト49と、ガイドブッシュ51とを備えている。
【0051】
ガイドポスト49は下型27側に取り付けられ、ガイドブッシュ51は上型25側に取り付けられている。このガイドポスト49がガイドブッシュ51に図示しないボールリテーナを介して嵌合している。従って、この金型ガイド47を介し、上型25はその四隅が下型27に対し昇降ガイドされるように支持されている。
【0052】
[抗回転モーメント]
図8は、上型リフターを含む上型上昇時の要部拡大断面図である。
図9は、上型リフターを含む上型下降時の要部拡大断面図である。
図10(A)は、上型上昇時の要部模式図、(B)は、上型下降時の要部模式図である。
図11は、比較例に係り、(A)は、上型上昇時の要部模式図、(B)は、上型下降時の要部模式図である。
【0053】
図2〜
図6、
図8、
図9のように、前記上型25と下型27との間には、さらに一対の上型リフター53が設けられている。
【0054】
上型リフター53は、上下型ベースプレート27a、29aの長手方向両端において金型ガイド47間に配置されている。上型リフター53は下型27に対し上型25に上昇力を与える。この上昇力により上下挟持面29、31間を離間させる。上型リフター53の上昇力を解除すると上型25が自重により瞬時に下降する。
【0055】
上型リフター53は、エアシリンダーで構成されている。但し、上型リフター53は、油圧シリンダー等で構成することもできる。上型リフター53のシリンダー部57は、下型ベースプレート27aに固定されている。上型リフター53のピストン部59は、上端がロッド61の下端に螺合結合されている。ピストン部59及びロッド61の間には、ブロック63が固定されている。ブロック63は、上型ベースプレート25aに固定されている。
【0056】
従って、シリンダー部57にエアが供給されるとその圧力によって、ピストン部59が上昇する。このピストン部59の上昇により、
図8のように、ブロック63を介して上型25の下面が押圧され、上昇力が与えられる。この上昇力によって、上型25、下型27の上下挟持面29、31間が離間する。
【0057】
シリンダー部57のエアの切り換えにより、
図9のように、ピストン部59が瞬時に下降する。この下降により、ブロック63による上昇力が解除されると、次の瞬間に、上型25が自重によって下降する。
【0058】
前記上型リフター53の両側で上型ベースプレート25aには、一対のばね支持孔65が対称に設けられている。ばね支持孔65は、上型ベースプレート25aを貫通して形成されている。
【0059】
ばね支持孔65には、同軸に配置されたコイルばね67が備えられている。コイルばね67の外径は、ばね支持孔65の内径とほぼ同一に設定されている。
【0060】
コイルばね67は、上型ベースプレート25aと下型ベースプレート27aとの間に介設されている。
【0061】
上型ベースプレート25aの上面には、ばね受けプレート69がボルト71により固定されている。ばね受けプレート69は、ばね支持孔65の上端を閉止している。
【0062】
下型ベースプレート27aには、ばね座73がボルト75により固定されている。ばね支持孔65のコイルばね67は、上端がばね受けプレート69に当接支持され、下端が上型25外でばね座73の凹部73a内に当接支持されている。
【0063】
ばね支持孔65の軸心部には、コイルばね67の内径側にロッド77が貫通配置されている。ロッド77の外径は、コイルばね67のコイル内径より僅かに小さく形成されている。
【0064】
ロッド77の上端部は、ばね受けプレート69を貫通している。この貫通によりロッド77は、ばね受けプレート69に対し上下相対移動が可能となっている。ロッド77の上端部には、ストッパー79が固定されている。ストッパー79は、ばね受けプレート69の上面に当接している。
【0065】
ロッド77の下端部は、ばね座73に対し凹部73a内で螺合結合されている。
【0066】
従って、上型リフター53による上型25の上昇時、自重による上型25の下降時に、
図10のように、上型リフター53の両側でコイルばね67がばね受けプレート69とばね座73との間で弾発力を発生する。この弾発力により上型25が上型リフター53の両側で支持されることになる。
【0067】
上型25は、上型リフター53の左右両側で重量が不均一ある。穴抜き加工時に上型25の重量のアンバランスに起因する回転モーメントが
図11のように上型リフター53を中心に働く。
【0068】
本実施例では、この回転モーメントに対し、前記のように上型リフター53両側のコイルばね67の弾発力が対抗する。
【0069】
コイルばね67が回転モーメントに対抗するとき、コイルばね67は伸縮する。この伸縮は、コイルばね67のコイル外周がばね支持孔65の内周に摺動することでフリクションが働き、コイルばね67の伸縮がダンピングされる。
【0070】
従って、コイルばね67による弾発力とコイルばね67及びばね支持孔65間のフリクションによるダンピング作用とにより回転モーメントに抗して上型25の姿勢を維持させることができる。
【0071】
コイルばね67の伸縮時は、ロッド77がコイルばね67の内径側をガイドする。このガイドによりコイルばね67をばね支持孔65の内周に確実に摺動させる。
【0072】
[パンチ加圧機構]
図1のように、前記ストライカ7は、加圧装置3と共にパンチ加圧機構を構成する。パンチ加圧機構は、上型25の下降位置での昇降動作によりパンチ33に加圧力を与えてパンチ33を上型25に対し相対的に下降させダイス35と共にワークに穴加工を行わせる。
【0073】
この場合、ストライカ7は、ワークの上下に位置する複数組のパンチ33及びダイス35の何れかに穴加工を行わせるための選択機能を有する。
【0074】
ストライカ7は移動部としてのストライカベース81と、プレッシャー部としてのプレッシャーピン83と、規制部としてのプレッシャープレート85とを備えている。
【0075】
ストライカベース81は、金型5上でX方向に渡って設けられている。ストライカベース81のX方向両側のガイド87が加圧装置3のスライド11に取り付けられた図示しないガイドレールにスライドガイドされる構成となっている。ガイドレールは、ワークの幅方向であるY方向に沿って設けられている。
【0076】
特許文献1同様に、前記ストライカベース81の中央部には、図示しないナット部が設けられ、図示しない送りネジに螺合している。送りネジはスライド11の下面に軸受によって回転自在に支持され、端部がモータに結合されている。従って、モータの正逆回転制御によって、送りネジが正逆回転すると、ナットが送りネジに沿って前後移動し、ストライカベース81がガイド87を介しガイドレールに沿ってY方向に移動する。この移動はワークの幅内において、その上方側で穴加工位置に応じたものとなっている。
【0077】
前記プレッシャーピン83は、金型5に対し計4本設けられ、ストライカガイド89に昇降自在に支持されている。各プレッシャーピン83の上方側にはスライド11との間に、逃げ用の空間が設けられ、プレッシャーピン83は加圧力を選択的に逃がすために空間内へ上昇可能となっている。
【0078】
前記プレッシャープレート85は各プレッシャーピン83に対応して4つ設けられ、ストライカベース81にY方向にスライド自在に支持されている。各プレッシャープレート85にはエアシリンダーがそれぞれ接続され、各エアシリンダーのNC制御による選択的な動作によって各プレッシャープレート85の何れかがプレッシャーピン83上に位置する。
【0079】
従って、加圧装置3が作動し、スライド11が下降してプレッシャーピン83がパンチヘッド45に当接すると、プレッシャープレート85の選択によって上昇が規制されたプレッシャーピン83のみがパンチ33に加圧力を伝える。他のプレッシャーピン83は上部の空間内へ逃げて、加圧力の伝達をしないことになる。
【0080】
[金型リニアガイド]
図12は、金型リニアガイドのガイドピンにおける断面図である。
図13は、金型リニアガイドに係り、(A)は、実施例の断面図、(B)は、比較例の断面図である。
【0081】
図1、
図2、
図4、
図6、
図7、
図12、
図13のように、上型25及び下型27は、ボルスター9(
図1、
図2)のベースプレート17(
図1、
図2)上に
図12、
図13(A)で示す金型リニアガイド91により支持されている。上型25及び下型27は、金型リニアガイド91によりY方向への移動が可能となっている。この移動によりパンチ33及びダイス35の何れかの組み合わせを穴加工位置に位置決める。
【0082】
金型リニアガイド91は、ガイドレール93とスライダー95とアッパープレート99とを備えている。
【0083】
前記ガイドレール93は、ボルスター9上のベースプレート17に固定されている。
【0084】
ガイドレール93は、
図4のように、Y方向に延設されている。このガイドレール93に対し、スライダー95がスライド自在に取り付けられている。この取り付けで、スライダー95は、ガイドレール93に走行ガイドされるように支持されている。
【0085】
前記アッパープレート99は、下型27の下面に設けられている。このアッパープレート99は、皿ばね101を介してスライダー95に対向配置されている。
【0086】
アッパープレート99は、スライダー95に対して隙間を有している。この隙間は、ベースプレート17に対する下型27の穴加工時の加圧力による下降を後述のストッパークリアランスにおいて許容するためのものである。
【0087】
アッパープレート99には、ガイドピン103が固定されている。ガイドピン103の下端103aは、スライダー95の凹部95aに上下相対移動を許容するように嵌合している。
【0088】
アッパープレート99とスライダー95とは、上下相対移動を許容するように頭無しのボルト105により結合されている。ボルト105は、下部105aがスライダー95に螺合結合され、上部105bがストレートに形成されている。ボルト105の上端面には、例えば六角穴105cが形成されている。
【0089】
ボルト105の上部105bは、アッパープレート99に相対移動可能に貫通している。ボルト105の上部105bは、アッパープレート99の凹部99a内に臨んでいる。
【0090】
従って、下型27はガイドレール93に沿ってワークに対しY方向に往復移動可能となっている。
【0091】
前記ガイドレール93間において、ボルスター9のベースプレート17上には、ストッパープレート106(
図2)が下型27との間に介設されている。ストッパープレート106とベースプレート17との間には、0.6mm程度のストッパークリアランスが設けられている。このストッパークリアランスは穴抜き加工時の加圧力によって詰められ、加圧力は下型27からストッパープレート106を介しボルスター9のベースプレート17で受けられるようになっている。このストッパークリアランスをガイドレール93に対し吸収するのが前記皿ばね101及び隙間である。すなわち、下型27のストッパークリアランス分の下降は、皿ばね101の隙間内での撓みによって吸収され、ガイドレール93側に過大な荷重が働かないようになっている。
【0092】
穴抜き加工により上型25が上昇するときパンチ33及びダイス35間の引き抜きで下型27にも引き抜き力が伝達される。この引き抜き力の伝達で下型27が上方への力を受ける。
【0093】
図13(B)のように、アッパープレート99とスライダー95とが、頭付きのボルト105Aにより結合されていると、穴抜き加工時の下型27への上方への力の伝達によりボルト105Aの頭が力を受け止めることになる。このため、ボルト105Aの早期の破損の原因となっていた。
【0094】
これに対し、実施例のボルト105は頭無しであり、アッパープレート99に対し上下方向に相対移動可能であるから、アッパープレート99から上方へ力が伝達されず、破損を防止することができる。
【0095】
ボルト105の主な機能は、アッパープレート99とスライダー95とのXY方向への位置決めであり、上下方向の若干の相対移動を許容することに問題は無い。
【0096】
[金型駆動部]
図14は、金型のY方向への駆動構造を示す平面図である。
図15は、金型のY方向への駆動構造に係り、(A)は、実施例の模式図、(B)は、比較例の模式図である。
【0097】
図14のように、金型リニアガイド91によりベースプレート17上にY方向へ移動可能に支持された金型5の両側に、一対の金型駆動部107、109が配置されている。
【0098】
金型駆動部107、109は、金型リニアガイド91に沿った金型5の移動を移動方向であるY方向に交差するX方向の両側から駆動するものである。
【0099】
金型駆動部107、109は、金型5の両側で対称の構造となっている。
【0100】
金型駆動部107、109は、ボールねじで構成され、ねじ軸111及びナット113がボールを介して螺合している。
【0101】
ねじ軸111は、Y方向に沿って平行に配置され、両端部が軸受115a、115bにより回転自在に支持されている。ねじ軸111の端部には、ステッピングモーター117が結合されている。
【0102】
ナット113には、アーム部材119の一端が結合され、アーム部材119の他端は、下型27の下型ベースプレート27aに結合されている。
【0103】
従って、ステッピングモーター117の駆動によりねじ軸111が正逆回転し、ナット113がねじ軸111に沿って前後移動する。
【0104】
図15(A)のように、金型駆動部107、109が金型5の両側で対称の構造となっているので、重量の有る金型5の走行開始時でも両側のねじ軸111で確実に荷重を受けることができる。
【0105】
これに対し、特許文献1に記載の金型は、小穴用の金型とパイロット穴用の金型とが一対別々に並設され、それぞれ
図15(B)のように駆動していた。この駆動では、一対の金型5Aa、5Abが併設され、スペース上の理由から両者間にねじ軸等を配置することができなかった。このため、一対の金型5Aa、5Abが別々の金型駆動部107、109に結合され、片持ち状に駆動される構造となっている。
【0106】
分離型の金型5Aa、5Abであっても、それぞれ重量があり、金型5の走行開始時に片側のねじ軸111で大きな荷重を受けることになっていた。
【0107】
このような構造の相違は、金型5へのワークの供給機構を後述するグリッパーから、フィードローラー及びメジャーリングローラーを用いた供給機構に変更したことによる。
【0108】
[ワーク供給搬出構造]
図16は、穴抜き装置と材料供給構造との関係を示す平面図である。
図17は、材料の供給機構に係り、(A)は、ワークの待機状態、(B)は、長手基準板への到達状態、(C)は、フィードロール及び押えロールのセット状態、(D)は、長手基準板の下降及び加工開始状態の概要断面図である。
【0109】
図16、
図17のように、穴抜き装置1の供給機構21の上流側にワークの供給用のローラーコンベア121が配置されている。供給用のローラーコンベア121は、供給機構21側の端部が駆動ロール121aであり、その他は、アイドルロール121bである。
【0110】
供給用のローラーコンベア121には、アイドルロール121bに幅ガイド121cが配置され、X方向に例えば7個備えている。
【0111】
供給用のローラーコンベア121に図示しないワークストック台が並設され、このワークストック台上に平板長尺のワークWが積層待機されている。ワークWの長尺2種の表示は、許容されるワークWの全長の最長及び最短を表している。
【0112】
供給用のローラーコンベア121の下流側には、供給機構21のメジャーリングローラー123が配置されている。
【0113】
穴抜き装置1の搬出機構23の下流側は、供給機構21の上流側に対して略対称構造となっている。従って、搬出用のローラーコンベア125とメジャーリングローラー123とが備えられている。
【0114】
搬出用のローラーコンベア125は、搬出機構23側の端部が駆動ロール125aであり、その他は、アイドルロール125bである。
【0115】
搬出用のローラーコンベア125には、アイドルロール125bに幅ガイド125cが配置され、X方向に例えば2個備えている。
【0116】
搬出用のローラーコンベア125に製品ストック台が並設され、この製品ストック台上に穴抜き後のワークWが移載される。
【0117】
図17のように、供給機構21は、入口ハウジング127を備え、この入口はハウジング127の下流側外側部に前記メジャーリングローラー123を備えている。メジャーリングローラー123の下流側に、長手基準板137が備えられている。メジャーリングローラー123の上流側で入口ハウジング127にフィードローラー139が備えられている。なお、
図17は、
図16の供給方向と逆になっている。
図17は、供給機構21をX方向上流側から見て右側面から見た状態である。
【0118】
メジャーリングローラー123は、フィードローラー139によるワークWの供給位置を検出するものである。
【0119】
メジャーリングローラー123は、入口ハウジング127外に配置されている。メジャーリングローラー123は、下部のメジャーリングロール141と上部の押えロール143とからなっている。
【0120】
メジャーリングロール141は、ワークWに接触し、ワークWのX方向への移動により連動する。この連動により、メジャーリングロール141は、計測したワークWの移動量の信号を制御部に送信する。制御部は、入力された計測信号からワークWのX方向への移動量を算出し、穴抜き加工のNC制御に用いる。
【0121】
押えロール143は、入口ハウジング127外に支持されたロール用シリンダー145に支持されている。
【0122】
従って、ロール用シリンダー145の伸張により押えロール143を下降させる。この下降により押えロール143がワークWの上面に当接する。この当接により押えロール143とメジャーリングロール141との間にワークWが適度な圧力で挟圧され、前記のようなメジャーリングローラー123によるワークWのX方向の移動位置を検出することができる。
【0123】
長手基準板137は、昇降可能に配置され、上昇位置でワークWの先端を当接させ、ワークWのX方向の基準位置を決める。
【0124】
図1、
図17のように、フィードローラー139は、ワークを下型27及び上型25間に供給するものである。このフィードローラー139は、上部のフィードロール147aが駆動側であり、下部のアイドルロール147bが従動側である。駆動側のフィードロール147aは、ステッピングモーターなどのフィードモーター149に連動結合されている。フィードモーター149は、入口ハウジング127に昇降自在に支持されている。
【0125】
フィードモーター149は、エアシリンダーなどで構成されたフィードシリンダー151のピストンロッド下端に結合されている。フィードシリンダー151は、シリンダー部が入口ハウジング127に支持されている。
【0126】
従って、フィードシリンダー151の伸張によりフィードモーター149が下降する。この下降によってフィードロール147aが連動して下降する。このフィードロール147aの下降によりフィードロール147aがワークWの上面に当接する。この当接によりフィードロール147aとアイドルロール147bとの間にワークWが適度な圧力で挟圧され、フィードローラー139によるワークWの供給駆動を可能とする。
【0127】
[穴抜き加工]
穴抜き加工に際しては、ワークストック台上のワークWが電磁チャックにより供給用のローラーコンベア121上に移載される。この移載により、
図16、
図17(A)のように、ローラーコンベア121上でワークWが待機状態となる。
【0128】
ローラーコンベア121上のワークWは、待機状態から駆動ロール121aの駆動により幅ガイド121cにガイドされながら供給機構21側へ供給移動される。
【0129】
この移動により
図16、
図17(B)のように、ワークWの先端が供給側の長手基準板137に突き当てられ、X方向の基準位置が決定される。
【0130】
次いで、
図16、
図17(C)のように、押えロール143、フィードロール147aが下降する。メジャーリングローラー123では、押えロール143がワークWの上面に当接してメジャーリングロール141との間にワークWを挟圧する。フィードローラー139では、フィードロール147aがワークWの上面に当接してアイドルロール147bとの間にワークWを挟圧する。
【0131】
次いで、
図16、
図17(D)のように、長手基準板137が下方へ退避駆動される。駆動ロール121a及びフィードローラー139の駆動によりワークWが幅ガイド121cによりガイドされながら移動する、この移動により前記金型5において順次穴抜き加工が行なわれる。ワークWのX方向の基準位置からの移動位置は、メジャーリングローラー123で検出され、制御部に送信され、NC加工制御に用いられる。
【0132】
穴抜き加工の進行によりワークWの先端が、
図16の搬出側の長手基準板に当接すると、再度X方向の基準位置が決定される。
【0133】
次いで、搬出機構23側において、前記
図17(B)〜(C)と同様にして機能し、ワークWの移動位置を検出しながらワークWの搬出を行なう。
【0134】
この場合、搬出側の長手基準板137が下方へ退避駆動されると搬出機構23によりワークWが搬出されながら金型5による穴抜き加工が引き続き行なわれる。
【0135】
このとき、幅ガイド121cがワークWを上流側でガイドし、幅ガイド125cがワークWを下流側でガイドする。この上流側の幅ガイド121cと下流側の幅ガイド125cとにより、ワークWの外形と加工する穴との関係位置精度を向上させることができる。
【0136】
金型5による穴抜き加工が終了し、ワークWが搬出機構23から搬出されると駆動ロール125aの駆動によりワークWが下流側に搬出され、搬出用のローラーコンベア125上で待機する。
【0137】
搬出用のローラーコンベア125の穴抜き後のワークWは、電磁チャックにより製品ストック台上に移載される。
【0138】
図18は、穴抜き加工後のワークWの平面図である。
【0139】
上記のようなフィードローラー139及びメジャーリングローラー123を採用することで、
図18のように、ワークWに対し、多数の小穴153、パイロット穴155を正確に穴抜き加工することができる。
【0140】
[比較例]
図19は比較例に係り、(A)は、待機状態、(B)は、穴抜き加工状態、(C)は、搬出側のグリッパーのグリップ状態を示す平面概略図である。
【0141】
この比較例では、特許文献1と同様に、一対の小穴用の金型5Aaとパイロット穴用の金型5Abとが一対別々に並設されている。これら一対の金型5Aa、5Abは、それぞれ
図15(B)の構造においてY方向へ駆動される。
【0142】
金型5Aa、5Abに対するワークの供給、搬出は、供給側の上流グリッパー157及び搬出側の下流グリッパー159が用いられている。
【0143】
上流グリッパー157は、供給側のローラーコンベア161に対して備えられ、下流グリッパー159は、搬出側のローラーコンベア163に対して備えられている。
【0144】
上流グリッパー157及び下流グリッパー159は、X方向に移動可能に備えられ、グリップしたワークのX方向の基準位置は、長手基準板165への当接によって検出する。
【0145】
従って、供給側のローラーコンベア161上に待機するワークの一端を上流グリッパー157がグリップしてX方向へ移動し、
図19(A)の長手基準板165にワークWの先端を当接させて基準位置を検出する。
【0146】
金型5Aaは、
図19(B)のように退避駆動され、
図19(C)のように下流グリッパー159が前進してワークWの他端をグリップする。
【0147】
上流グリッパー157及び下流グリッパー159の協働によりワークWを下流側へ移動させながら金型5Abによりパイロット用の穴抜き加工を行なう。
【0148】
ワークWの移動により下流グリッパー159が金型5Aa位置から外れ、ワークWの先端が金型5AaのX方向位置に達したとき、金型5Aaを
図19(A)のような位置に戻し、金型5Aaによる小穴の穴抜き加工を同時に行なう。
【0149】
かかる工程により、
図18と同様な穴抜き加工を行わせることができる。
【0150】
そして、比較例では、一対の金型5Aa、5Ab、上流グリッパー157及び下流グリッパー159を用いるため、装置が大型であり、設置面積も大きかった。
【0151】
これに対し、本願発明の実施例では、上記のように金型5及びワーク供給搬出構造を変更したものである。
【0152】
金型5は、金型5Aa、5Abを合体させて一体とし、ワーク供給搬出構造として前記フィードローラー139及びメジャーリングローラー123を採用した。
【0153】
このため、装置の設置面積が減少し、材料搬入時間も短縮できた。
【0154】
[穴抜き加工]
穴抜き加工の動作は本実施形態においては、NC制御によって自動的に行っている。
【0155】
材料Wは決められた位置に穴加工を施すため、X方向に移動し、金型5は何れかのパンチ33、ダイス35の組み合わせを選択するためにY方向に移動している。これに応じてストライカ7もY方向に移動する。このとき上型リフター53は上昇位置にあり、加圧装置3は停止している。
【0156】
材料Wは規定位置で位置決めされ、金型5、ストライカ7もそれぞれ位置決められる。また、上型リフター53は上昇位置にある。ストライカ7では何れかのプレッシャープレート85がプレッシャーピン83上に配置され、穴抜き可能状態となる。加圧装置3は動作を始め、スライド11が下降を始める。
【0157】
上型リフター53が下降し、上型25、下型27の上下挟持面29、31によって材料Wが挟持され、穴抜き待機状態となる。同時に、加圧装置3のスライド11もさらに下降する。
【0158】
加圧装置3のスライド11の下降によって、各プレッシャーピン83がパンチヘッド45に当たる。プレッシャープレート85によってその上昇が選択的に規制されたプレッシャーピン83のみがパンチ33に加圧力を伝達する。他のプレッシャーピン83は、上部の空間内に逃げて加圧力を伝達しない。パンチ33が加圧力を受け、さらに下降すると、皿ばね37が撓む。同時に、パンチ33が材料Wに当たる。続いて金型5全体が皿ばね101を撓ませながら下降し、下型ベースプレート27aがストッパープレート106に当たる。この当たりでストッパークリアランスが零になる。
【0159】
加圧装置3は下死点まで下降する。このとき下型ベースプレート27aがストッパープレート106に当たっているため、パンチ33は皿ばね37を撓ませながらパンチガイド39に沿って下降し、ダイス35と共にワークWに穴を抜く。
【0160】
加圧装置3が上昇を開始すると、まず皿ばね37の付勢力によってパンチ33が上型25に対して上昇し、パンチ33がワークWから抜ける。続いて金型5は、皿ばね101の付勢力でガイドレール93側に対し上昇し、下型ベースプレート27aがストッパープレート106に対して再びストッパークリアランス形成する。
【0161】
上型リフター53が上昇してブロック63が上型25に上昇力を与え、上型25が上昇して上下挟持面29、31間に材料移動スペースが形成される。同時に、加圧装置3も上昇を続け、材料W、金型5、ストライカ7が次の位置に穴加工を施すため移動を開始する。
【0162】
加圧装置3が1サイクル動作して上死点となり、元状態に戻る。
【0163】
かかる動作において、材料Wは上下型25、27の上下挟持面29、31によって直接挟持して穴抜き加工するようにしたから、特別なストリッパを必要とすることなく、ストリッパの高さに応じた余分な高さを確保する必要がなく、金型5などの高さを大幅に低くすることができる。また、パンチ33、ダイス35を複数組設ける場合でも、それぞれにストリッパを設ける必要がなく、部品点数の大幅な削減を行うことができる。
【0164】
上型25及び下型27は金型ガイド47によって結合し、上型リフター53によって昇降させるようにしたため、両者同心精度を保ったまま移動させることができる。従って、加圧装置の上死点側などにおいて同心精度を合わせるための待機時間がなくなり、加工時間が大幅に短くなる。
【0165】
また、上型25、下型27に複数種のパンチ33、ダイス35を複数組搭載することができ、他種類の穴を材料の任意の位置に穴抜き加工することができる。更にストライカ7の選択機能により1つのパンチ33を選択して加圧力を伝達するようにしたため、複数の穴を同時に抜くのに比べて加圧装置3の容量を大幅に小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。また、上型25、下型27を共通の駆動軸で移動させることができ、上下別々に移動させるものに比べて軸数を少なくすることができ、この点からも構造が簡単で小型化を図ることができる。
【0166】
上型リフター53はエアシリンダーによって構成したが、油圧など液圧シリンダーによって構成することもできる。ストライカ7のエアシリンダーも油圧などの液圧シリンダーで構成することもでき、またモータ駆動にすることも可能である。さらに、ストライカベース81を流体シリンダーで移動させる構成にすることも可能である。
【0167】
[実施例の効果]
本発明の実施例では、上型リフター53の両側で上型25に設けられたばね支持孔65と、上型25と下型27との間に介設さればね支持孔65に同軸に配置されたコイルばね67とを備え、コイルばね67の外径は、ばね支持孔65の内径とほぼ同一に設定された。
【0168】
このため、上記のようにコイルばね67の弾発力とばね支持孔65に対するダンピング作用とにより上型25の回転モーメントに抗し、上型25の姿勢を安定させ、維持させることができる。
【0169】
この上型25の姿勢維持により、上型リフター53及びポスト49に働く無理な荷重による変磨耗を抑制し、耐久性を向上させることができる。
【0170】
また、上型25の姿勢を安定させ、維持させることで、上型25が傾斜して下降することが抑制され、穴がワークWの板厚方向に斜めに抜かれることも抑制され、品質を維持、向上することができる。
【0171】
前記ばね支持孔65の軸心部でコイルばね67の内径側に貫通配置され上型25の昇降動作を許容するように下型27及び上型25に結合されたロッド77を備えた。
【0172】
このため、コイルばね67の伸縮時は、ロッド77がコイルばね67の内径側をガイドする。このガイドにより特に上型ベースプレート25aとばね座73との間でコイルばね67が座屈するのを抑制することができる。この座屈抑制により、上型ベースプレート25aの下降時に上型ベースプレート25a外からコイルばね67が無理なく入り込むことができる。コイルばね67のばね支持孔65内に位置する部分は勿論、上型ベースプレート25aの上昇時に上型ベースプレート25a下に露出しているコイルばね67の部分の一部もばね支持孔65の内周に確実に摺動させることができる。
【0173】
この確実な摺動により、コイルばね67とばね支持孔65との間のフリクションを確実に発生させ、ダンピング作用を確実に得ることができる。
【0174】
前記ワークWに複数種の穴加工を行うために設けられたパンチ33及びダイス35の複数組とを備えた。
【0175】
パンチ33及びダイス35の何れかの組み合わせを穴加工位置に位置決めるために上型25及び下型27の移動を可能にする金型リニアガイド91と、上型25及び下型27の金型リニアガイド91に沿った移動を移動方向に交差する両側から駆動する一対のボールネジで構成された金型駆動部107、109及びステッピングモーター117とを備えた。
【0176】
さらに、ワークWを下型27及び上型25間に供給するフィードローラー139と、フィードローラー139によるワークWの供給位置を検出するメジャーリングローラー123とを備えた。
【0177】
このため、金型駆動部107、109が金型5の両側で対称の構造となっているので、重量の有る金型5の走行開始時でも両側のねじ軸111で荷重を受けることができる。
【0178】
この両側での荷重の受けにより、ねじ軸111等の捩じれが抑制され、耐久性を向上させることができる。
【0179】
金型5は、金型5Aa、5Abを合体させて一体とし、ワーク供給搬出構造としてフィードローラー139及びメジャーリングローラー123を採用した。
【0180】
このため、装置の設置面積が減少し、材料搬入時間も短縮することができる。
【0181】
前記金型リニアガイド91は、ガイドレール93とスライダー95とアッパープレート99とを備えた。
【0182】
ガイドレール93は、ベースプレート17に固定され、スライダー95は、ガイドレール93に走行ガイドされるように支持された。
【0183】
アッパープレート99は、下型27に設けられベースプレート17に対する下型27の穴加工時の加圧力による下降をストッパークリアランスで許容するための隙間をスライダー95に対して有する。
【0184】
アッパープレート99は、スライダー95に皿ばね101を介して対向配置され、アッパープレート99とスライダー95とは、上下相対移動を許容するように頭無しのボルト105により結合された。
【0185】
穴抜き加工により上型25が上昇するとき下型27が上方への力を受けても、ボルト105は頭無しであるから、上記のように破損を防止することができる。
【0186】
ボルト105の主な機能として、アッパープレート99とスライダー95とのXY方向への位置決めを行なうことができる。