(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155005
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】アキュムレータ
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
F25B43/00 D
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-226514(P2012-226514)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-77606(P2014-77606A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年7月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】細川 侯史
(72)【発明者】
【氏名】小栗 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】古田 卓司
(72)【発明者】
【氏名】山崎 庫人
(72)【発明者】
【氏名】堀田 照之
(72)【発明者】
【氏名】牧田 和久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 肇
【審査官】
横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−052139(JP,A)
【文献】
米国特許第05177982(US,A)
【文献】
特開2008−215727(JP,A)
【文献】
特開昭63−271072(JP,A)
【文献】
特開昭60−120163(JP,A)
【文献】
特開2008−032269(JP,A)
【文献】
米国特許第04474035(US,A)
【文献】
特開平07−043048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開口の筒形の胴体と、該胴体の開口部に連結されるヘッダとからなるタンク本体を含み、前記ヘッダには、縦方向に開口する冷媒流入孔と冷媒流出孔とが備わっており、
前記胴体内の上方空間位置に、前記ヘッダの前記冷媒流入孔が対向する気液分離部材とその下方に近接して固定配置される乾燥剤入りバッグとが備わっており、
前記冷媒流出孔に前記胴体の内底部の近くまで延伸するインナーパイプが連結され、その外側にアウターパイプが二重管をなすように配置され、
前記アウターパイプに乾燥剤入りバッグが、前記乾燥剤入りバッグの上下端部に位置する乾燥剤が充填されていない箇所において結束バンドを介して固定される
ことを特徴とするアキュムレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを循環する冷媒を気液分離して貯留する形式のアキュムレータに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルを循環する冷媒を気液分離して貯留するため、レシーバタンクやアキュムレータ等が用いられる。この種のアキュムレータとして、例えば、特許文献1には、ハウジングと、ハウジング内に配置された管部、フィルタ及び乾燥剤を封入した袋等の内機部品等で構成され、冷媒の導入口からハウジング内に流入した冷媒は、気液分離部材としての笠部に衝突して気相冷媒と、オイルを含む液相冷媒とに気液分離され、分離された気相冷媒は、管部に進入して導出口から排出されるアキュムレータが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、上端が開口した瓶状の胴体と、胴体の開口端を封止し、冷媒流入孔及び冷媒流出孔が穿設された本体(ヘッダ)と、胴体の下方に配置された乾燥剤容器等の内機部品とを備え、本体の冷媒流入孔から本体内に流入した冷媒が、旋回部において旋回流へと変換され、旋回流による遠心分離にて液冷媒とガス冷媒とに分離されるアキュムレータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57−2371号公報
【特許文献2】特開2011−21773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されたような旋回式のアキュムレータでは、特に問題とはならないが、特許文献1に記載のような、冷媒流入孔及び冷媒流出孔が穿設されたヘッダの下方に気液分離部材が存在するアキュムレータでは、乾燥剤が胴体の下部に溜まった液相冷媒と接触することで気泡が発生し、この気泡が気液分離部材に衝突して大きな異音が生じるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みて、気液分離部材を備えたアキュムレータにおいて、上記気泡の発生に伴う異音の発生を最小限に抑えることができるアキュムレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、アキュムレータであって、上端開口の筒形の胴体と、該胴体の開口部に連結されるヘッダとからなるタンク本体を含み、前記ヘッダには、縦方向に開口する冷媒流入孔と冷媒流出孔とが備わっており、前記胴体内の上方空間位置に、前記ヘッダの前記冷媒流入孔が対向する気液分離部材とその下方に近接して固定配置される乾燥剤入りバッグとが備わって
おり、前記冷媒流出孔に前記胴体の内底部の近くまで延伸するインナーパイプが連結され、その外側にアウターパイプが二重管をなすように配置され、前記アウターパイプに乾燥剤入りバッグが、前記乾燥剤入りバッグの上下端部に位置する乾燥剤が充填されていない箇所において結束バンドを介して固定されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、乾燥剤入りバッグを気液分離部材16に近い上方位置に配置したため、胴体に貯留される液相冷媒が乾燥剤と触れる割合が少なくなり、それに伴って気泡の発生が少なくなり、気泡発生に伴う異音が減少する。また、気泡が発生したとしても、気泡の発生位置から気液分離部材までの距離が短いため、気泡が勢いよく気液分離部材に衝突することが回避され、このこととの相乗効果によって、異音の発生は著しく減少する。
また、乾燥剤入りバッグを低コストで容易に固定することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、冷媒流入孔及び冷媒流出孔がヘッダの上方に開口すると共に、流入する冷媒が気液分離部材に上方より衝突する形式のアキュムレータにおいて、異音の発生を最小限に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にかかるアキュムレータの一実施形態を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明にかかるアキュムレータの一実施形態を示し、このアキュムレータ1は、胴体3とヘッダ4とからなるタンク本体2と、タンク本体2内に配置されたアウターパイプ5、インナーパイプ6及びバッグ7等の内機部品等で構成される。
【0015】
タンク本体2は、上端が開口した有底円筒状の胴体3と、溶接部10を介して胴体3と溶接接合され、胴体3の開口端を封止するヘッダ4とから構成される。これら胴体3及びヘッダ4は、いずれもアルミニウム合金等の金属によって形成される。
【0016】
ヘッダ4は、上面視円状に形成され、冷媒流入孔8及び冷媒流出孔9が上方に開口する。冷媒流出孔9は、インナーパイプ6と連通する。
【0017】
ヘッダ4の下方には、冷媒流入孔8からの混合冷媒(気相分と液相分が混在した冷媒)を、密度の高い液相冷媒及びコンプレッサオイル(以下、「オイル」という)と、密度の低い気相冷媒とに分離する気液分離部材16が逆皿状に設けられる。
【0018】
胴体3の内部には、気液分離された気相冷媒が流入するアウターパイプ5と、アウターパイプ5に流入した気相冷媒を冷媒流出孔9に導くインナーパイプ6とが配置される。
【0019】
アウターパイプ5は、合成樹脂からなり、上端部5aが開口した状態で胴体3内に嵌め込まれる。アウターパイプ5の底部には、金属や樹脂からなる網目部材21がインサート成形されたストレーナ20が設けられ、このストレーナが胴体3の内底面に載置される。
【0020】
また、胴体3内の上方空間には、気液分離部材16に近い位置で、乾燥剤(吸湿剤)7a入りバッグ7が配置される。このバッグ7は、結束バンド30を介してアウターパイプ5に固定される。
【0021】
鍔部22には、上面視放射状に形成され、下方に突出する補強用リブ22aが計6つ設けられる。
【0022】
アウターパイプ5の下部内周面には、インナーパイプ6の外周面と当接するパイプリブ23a〜23dが一体に形成され、これらパイプリブ23a〜23dは、
図1(b)に示すように、十字状に配置される。
【0023】
インナーパイプ6は、アルミニウム合金等の金属からなり、下端部6aが開口すると共に、上端部6bがヘッダ4の冷媒流出孔9に連結される。また、インナーパイプ6の下部は、アウターパイプ5の内周面に凸設されたパイプリブ23a〜23dの内側に嵌入され、これにより、インナーパイプ6が安定して保持される。
【0024】
次に、上記構成を有するアキュムレータ1の動作について、
図1を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、アキュムレータ1を冷凍サイクルの蒸発器と圧縮機との間に配置し、蒸発器からの冷媒に含まれる水分を除去してガス冷媒を生成し、これを圧縮機へ戻す場合を例にとって説明する。
【0025】
蒸発器から冷媒が排出されると、接続配管(不図示)を通じてアキュムレータ1に搬送される。アキュムレータ1に到達した冷媒は、冷媒流入孔8から胴体3の内部に流入した後、気液分離部材16に衝突し、密度の高い液相冷媒及びオイルと、密度の低い気相冷媒(ガス冷媒)とに分離される。
【0026】
気液分離後の液相冷媒及びオイルは、自重により胴体3内に貯留される。その過程で、液相冷媒とオイルとの分離が進み、オイルは液相冷媒の下方に溜まる。このとき、液相冷媒の液面は、乾燥剤7a入りバッグ7の一部(略中央)が浸漬する高さ位置にまで達する。したがって、液相冷媒に含まれる水分も気相冷媒に含まれる湿分も乾燥剤7aによって吸湿される。
【0027】
乾燥剤7a入りバッグ7を気液分離部材16に近い上方位置に配置したため、胴体3に貯留される液相冷媒が乾燥剤7aと触れる割合が少なくなり、それに伴って気泡の発生が少なくなり、気泡発生に伴う異音が減少する。また、気泡が発生したとしても、気泡の発生位置から気液分離部材16までの距離が短いため、気泡が勢いよく気液分離部材16に衝突することが回避され、このこととの相乗効果によって、異音の発生は著しく減少する。
【0028】
一方、気液分離された気相冷媒は、アウターパイプ5の上端開口部から流入し、アウターパイプ5内を下降する。その後、アウターパイプ5の底部で折り返されてインナーパイプ6に流入し、インナーパイプ6内を上昇して冷媒流出孔9に導かれる。このとき、オイル戻し孔24を通じて、胴体3の底に溜まったオイルが吸引され、ここでオイル成分を潤沢に含んだ気相冷媒となり、それが冷媒流出孔9から接続配管(不図示)を通じて圧縮機に供給される。
【0029】
以上のように本発明によれば、冷媒流入孔及び冷媒流出孔がヘッダの上方に開口すると共に、流入する冷媒が気液分離部材に上方より衝突する形式のアキュムレータにおいて、異音の発生を最小限に抑えることができる。
【0030】
なお、上記実施の形態においては、インナーパイプ6及びアウターパイプ5からなる二重管によって冷媒出口管を構成する場合を例示したが、本発明は、単一の冷媒出口管を備えるアキュムレータにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 アキュムレータ
2 タンク本体
3 胴体
4 ヘッダ
5 アウターパイプ
5a 上端部
6 インナーパイプ
6a 下端部
6b 上端部
7 バッグ
7a 乾燥剤
8 冷媒流入孔
9 冷媒流出孔
10 溶接部
16 気液分離部材
20 ストレーナ
21 網目部材
22 鍔部
22a リブ
23(23a〜23d) パイプリブ
24 オイル戻し孔
30 結束バンド