(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、
図1に示す椅子1において、正規姿勢で着座した人の正面が向く矢印FRの指す向きを「前」と呼び、それと逆側の矢印RRの指す向きを「後」と呼ぶとともに、着座した人の左となる矢印LHの指す向きを「左」、それと逆側の矢印RHの指す向きを「右」と呼ぶものとする。また、「上」,「下」については、特別に断らない限り、椅子1が水平面上に設置されたときに、鉛直方向上側となる側と鉛直方向下側となる側とをそれぞれ意味するものとする。なお、
図1以外の図面においては、椅子1の各部の向きを明確にするために、
図1と同様の矢印FR,RR,LH,LHを適宜付記している。
【0016】
図1は、この実施形態の椅子1の全体構成を示す図である。
同図に示すように、この実施形態の椅子1は、キャスタ2付きの多岐脚3と、多岐脚3の中央部より起立し昇降機構であるガススプリングを内蔵する脚柱4と、脚柱4の上端部に取り付けられて、座体5を支持するボックス状の支基6と、支基6の左右両側部に枢着されて支基6内の不図示のリクライニング装置(可変機構部)により傾動し得る側面視L字状の背凭れ支持体7と、背凭れ支持体7の後上部の前面に取り付けられる背凭れ本体8と、背凭れ支持体7に取り付けられ、着座者の肘先が載せ置かれる左右一対の肘掛け9,9と、を備えている。
この実施形態においては、背凭れ支持体7と背凭れ本体8が背凭れ10を構成し、座体5と、支基6と、背凭れ10、多岐脚3、脚柱4等が椅子本体11を構成している。また、支基6内には、上記のリクライニング装置の他に、脚柱4内のガススプリングの不図示のロック解除機構(可変機構部)が内装されている。
【0017】
図2は、背凭れ支持体7の詳細を示す図である。
背凭れ支持体7は、アルミニウム合金等の金属材料から成り、同図に示すように、背凭れ本体8の下部後方に配置される起立部12と、起立部12の下方で左右に分岐して前方に湾曲しつつ延びる左右一対の前向き腕部13,13と、を一体に有している。支基6の左右両側には、内部のリクライニング装置の回動軸62(
図1参照)が左右方向に沿って突出している。回動軸62には、背凭れ支持体7の左右の前向き腕部13,13の前端部が一体回動可能に連結されている。したがって、背凭れ10は、支基6内のリクライニング装置を介して脚柱4に支持され、リクライニング装置の機能により、傾動姿勢を自由に調整できるようになっている。
【0018】
左右の前向き腕部13の前部寄りの中間領域には、斜め前部上方に向かって延びる座体連結部14が突設され、その座体連結部14の上端が座体5の前後方向略中央の対応する側部に回動可能に連結されている。また、座体5の前部の下面は、支基6の前側上部の傾斜面に摺動自在に支持されている。したがって、背凭れ10が後部下方に傾動すると、座体5は、座体連結部14によって後部下方に引き込まれることにより、後ろ下がりに傾斜しつつ後方側に若干移動する。
【0019】
図3以下の図は、肘掛け9の詳細を示す図である。
図3,
図4に示すように、肘掛け9は、対応する前向き腕部13の左右方向外側の側面に下端が連結され、その連結部から座体5の側方を通って上方に延出する肘掛け支柱15と、肘掛け支柱15の上端部に支持される肘掛け本体16と、を備えている。左右の肘掛け9,9は、肘掛け支柱15の湾曲する向き等は相違するものの、基本的にほぼ同様の構造とされている。
【0020】
肘掛け支柱15は、前向き腕部13の側面に連結される下部側の支柱本体15Aと、支柱本体15Aの上部領域に長手方向に沿って摺動自在に外観される昇降筒15Bと、を備え、昇降筒15Bが、支柱本体15Aに対し、後に詳述する高さ調整機構17(
図10参照。)を介して昇降可能に組み付けられている。
【0021】
肘掛け本体16は、その内部に移動ガイド機構18(
図8参照。)の主要部が収納され、その移動ガイド機構18を介して、肘掛け支柱15の上部(昇降筒15Bの上部)に略水平方向(上下方向と交差する方向)に移動可能に支持されている。
【0022】
図5は、肘掛け9の構成部品を示す分解斜視図であり、
図6は、支柱本体15Aとその付随部品を拡大して示した分解斜視図、
図7は、昇降筒15Bとその付随部品の一部を拡大して示した分解斜視図、
図8は、昇降筒15Bの一部の付随部品と肘掛け本体16の一部の構成部品を拡大して示した分解斜視図である。また、
図9は、
図4のA−A断面に対応する断面図であり、
図10は、
図9のB−B断面に対応する断面図である。
図6、及び、
図9,
図10に示すように、支柱本体15Aは、前向き腕部13との連結部から左右方向の外側に延出する側方延出領域と、その側方延出領域から上方に湾曲しつつ延出する起立領域と、を含み、全体の正面視が略L字状とされている。支柱本体15Aの延出方向のほぼ全域は前後方向に長い略楕円状の断面形状とされている。また、支柱本体15Aは、支柱本体15Aの主要な外形を形成するアルミニウム合金等の金属製の支柱基材19と、支柱基材19の側方延出領域の上面から起立領域の左右方向内側の側面の一部にかけてを覆う樹脂製のカバー部材20と、を備えている。
【0023】
支柱基材19は、起立領域の上端部が筒状に形成され、その筒状部分の下方に連続する起立領域の内側側面と側方延出領域の上面に亘る部位には連続した二条の溝21,22が形成されている。これらの溝21,22の上方側の端部は、昇降筒15Bの内部空間に連通するように上方に開口している。二条の溝21,22のうちの一つ溝21は、起立領域の水平断面の前後方向のほぼ中央に配置され、後述する回動杆23が遊挿される遊挿溝(以下、「遊挿溝21」と呼ぶ。)とされており、他の一つの溝22は、起立領域の水平断面の後方側に偏倚した位置に配置されて、支基6内の可変機構部(リクライニング装置やガススプリングのロック解除機構)を操作するためのケーブル24が配索されるケーブル配索溝(以下、「ケーブル配索溝22」と呼ぶ。)とされている。遊挿溝21は、支柱基材19の側方延出領域の途中までで消失し、ケーブル配索溝22は、側方延出領域のうちの支柱基材19の端末部の近傍まで連続している。ケーブル配索溝22は、支柱基材19の端末部の近傍では溝幅が前方側に拡大している。
前述のカバー部材20は、遊挿溝21とケーブル配索溝22の上部側の一部の領域を除くほぼ全域を覆うように、支柱基材19に取り付けられている。
【0024】
支柱基材19の上端の筒状部分には、高さ調整機構17を構成するロック部材25と、ロック部材25を前方側に付勢する付勢スプリング26とが収容されている。ロック部材25は、楕円筒状の胴部25aの長径側の端部に係止ピン25bが突設された外面形状とされている。支柱基材19の上端の筒状部分の前壁には、前方側に開口する切欠き窓27が形成され、筒状部分の内側に配置されたロック部材25の係止ピン25bがこの切欠き窓27に挿通されている。係止ピン25bは、胴部25aの前方変位に伴って切欠き窓27から突出し、その状態からの胴部25aの後方変位に伴って切欠き窓27内に後退する。
【0025】
支柱基材19の上端面には、前述のように筒状部分の内側にロック部材25と付勢スプリング26を収容した後に、エンドキャップ28がビス止め固定されている。このエンドキャップ28は支柱基材19の上端の断面形状にほぼ合致する略楕円形状に形成され、その前後方向のほぼ中央には、前記回動杆23が遊挿される左右方向に長いに長孔29が形成されている。また、エンドキャップ28上の後方側に偏倚した領域には、ケーブル24を支柱基材19の内部に引き入れるためのケーブル挿通溝30が形成されている。このケーブル挿通溝30は、支柱基材19の内部に引き入れられたケーブル24がエンドキャップ28の直下の付勢スプリング26と干渉するのを回避するために、エンドキャップ28の左右方向の外側に偏倚した領域に形成されている。
【0026】
上端部にエンドキャップ28を取り付けた支柱基材19の上部側の外周面には、半割筒状の一対のカバー壁31,31が嵌合されて取り付けられている。このカバー壁31は、外面に上下方向に延出する複数のリブ32…が設けられ、そのリブ32…を含む外面が昇降筒15Bの内面に摺動自在に接触するようになっている。また、カバー壁31,31には、ロック部材25の係止ピン25bの突出作動を許容するための切欠き溝33が設けられている。
【0027】
一方、
図7、及び、
図9,
図10に示すように、昇降筒15Bは、上部が段差状に拡大した楕円筒状の外筒部材34と、外筒部材34の内側に固定される半割筒状の一対の内筒部材35A,35Bと、を備えている。
外筒部材34の上部の段差状の拡開壁36は、前方側に向かって膨出し、かつ前端側に向かって次第に窄まって形成されており、その前方側の膨出領域の下面には、
図10に示すように、高さ調整機構17のロック解除レバー37が配置される略矩形状の開口38が形成されている。
【0028】
一対の内筒部材35A,35Bのうちの前方側に配置される一方の内筒部材35Aは、半割円筒部の長手方向に沿って複数の嵌合孔48…が等間隔に離間して形成されるとともに、半割円筒部の上端部に、一方の内筒部材35Aの上部と他方の内筒部材35Bの上部を両者に跨って閉塞する頂壁ブロック39が形成されている。
この頂壁ブロック39の上面には、
図8〜
図10に示すスライダ50を前後摺動可能に収納する受け凹部49が設けられるとともに、受け凹部49の上部側の開口縁に係止フランジ40が延設されている。受け凹部49は左右方向の幅が一定幅に形成されるとともに前方側に開口している。受け凹部49の開口の前方には、ロック解除レバー37が回動可能に配置されている。スライダ50は、ロック解除レバー37と連動可能に係合され、ロック解除レバー37の回動作動を前後方向の進退作動に変換する。
【0029】
一方の内筒部材35Aと他方の内筒部材35Bとは凹凸嵌合によって相互に固定され、その状態で外筒部材34の内側に固定される。内筒部材35A,35Bは、外筒部材34の内側に固定された状態において、その内周面が支柱本体15Aの起立領域に摺動自在に嵌合される。このとき、付勢スプリング26で付勢されて支柱本体15Aの起立領域から前方に突出するロック部材25の係止ピン25bは、一方の内筒部材35Aの半割円筒部上のいずれかの嵌合孔48に嵌合され、それによって支柱本体15Aに対する昇降筒15Bの昇降位置がロックされる。
なお、
図21,
図22に示すように、受け凹部49の底壁の前後方向のほぼ中央には、前記回動杆23が遊挿される貫通孔41が形成され、受け凹部49の底壁の貫通孔41の後方側に隣接する位置には、後に詳述するケーブル挿入孔42が形成されている。ケーブル挿入孔42には、ケーブル24が保持部材43とともに挿入され、保持部材43がケーブル挿入孔42に係止固定されるようになっている。
【0030】
ここで、外筒部材34の内側に配置された内筒部材35A,35Bは、一方の内筒部材35Aの頂壁ブロック39の係止フランジ40が外筒部材34の拡開壁36の段差部上に載置され、その状態で
図8〜
図10に示す金属製の支持ベース部材44とともにその段差部上にビス止めされている。支持ベース部材44は、外筒部材34の拡開壁36の内面にほぼ合致する形状に形成されている。支持ベース部材44は、頂壁ブロック39の上部に重ねられて拡開壁36の内側に配置され、その状態で頂壁ブロック39とともに外筒部材34に固定されることにより、外筒部材34の上端の開口をほぼ閉塞している。
【0031】
支持ベース部材44は、肘掛け本体16を回動可能に支持する支持ボス45がその上面の中央に突設されるとともに、支持ボス45よりも前方側の下面に一対のレバー支持アーム46,46(
図8参照。)が突設されている。レバー支持アーム46,46は、支持ベース部材44の下面に左右方向に離間して配置され、左右方向に沿って延出するロック解除レバー37の回動軸47を回動自在に支持する。したがって、ロック解除レバー37は、支持ベース部材44の下面側に枢支された状態において、外筒部材34に取り付けられている。また、支持ベース部材44の支持ボス45の後方側に隣接する位置には、ケーブル24を肘掛け支柱15(昇降筒15B)の内側に引き入れるための左右方向に長い長孔58が形成されている。
【0032】
この肘掛け9における高さ調整機構17は、前述した係止ピン25bを有するロック部材25と、係止ピン25bが選択的に嵌合される複数の嵌合孔48…を有する内筒部材35Aと、外筒部材34の上端前部で着座者によって回動操作されるロック解除レバー37と、ロック解除レバー37の操作力をロック部材25に伝達するスライダ50及び回動杆23と、を備えている。
【0033】
以下、高さ調整機構17の具体的な構造について説明する。
図11,
図12は、スライダ50と回動杆23との係合状態を示す部分断面上面図であり、
図13,
図14は、回動杆23とロック部材25との係合状態を示す
図10のC−C断面に対応する断面図、
図15は、回動杆23の下方の状態を示す
図10のD−D断面部分で破断した斜視図である。
ロック部材25は、
図13,
図14に示すように、楕円筒状の胴部25aの前面の中央に円柱状の係止ピン25bが突設されるとともに、胴部25aの後面の中央に係止ピン25bと同軸で後方側に開口するピン孔25cが形成されている。また、胴部25aの左右方向外側の壁の内面には、左右方向内側に向かって突出する突部25dが設けられている。胴部25aの内側には回動杆23が挿通され、回動杆23と胴部25aが突部25dを介して連動可能に係合されるようになっている。
【0034】
また、支柱基材19の起立領域上部の後壁には、先端軸部51aを有する軸支ネジ51が螺着されている。軸支ネジ51の先端軸部51aは支柱基材19内において前方に向いて突出し、ロック部材25の胴部25aのピン孔25cに嵌合されている。先端軸部51aは、ピン孔25cに対し軸方向と回動方向について摺動可能とされている。また、支柱基材19の前壁でロック部材25の係止ピン25bが挿入される切欠き窓27は、下端側が係止ピン25bの外周面に沿う円弧形状とされ、係止ピン25bの軸方向と回動方向の摺動作動が可能とされている。
したがって、ロック部材25は、同軸に配置される係止ピン25bと軸支ネジ51の先端軸部51aとにより、左右方向の傾動が可能とされている。なお、ロック部材25を前方側に付勢する付勢スプリング26は、軸支ネジ51の先端軸部51aの外周に配置されている。
【0035】
回動杆23は、
図8〜
図10に示すように、支柱本体15Aの起立領域に挿通される軸部23aと、その上方に段差状に縮径して連なる小径軸部23bと、その上方に段差状に拡径して連なる被操作部23cと、が同軸に設けられている。
【0036】
軸部23aは、その外周に軸方向に沿う縦リブ及び軸方向に直交する横リブを残すように適宜肉抜きが施されるとともに、
図13,
図14に示すように、左右方向の外側(ロック部材25の突部25dと同側)の外面に軸方向に沿う縦溝52が形成されている。縦溝52は、軸部23aがロック部材25の胴部25aに挿通された際に、胴部25a内に突設された突部25dと摺動自在に係合する。縦溝52は、軸部23aの長手方向(軸方向)に沿って連続して形成されているため、回動杆23が昇降筒15Bとともに上下に移動しても、その移動高さに拘わらず縦溝52とロック部材25側の突部25dとの係合関係が維持される。回動杆23は、ロック解除レバー37の操作によって回動操作されると、縦溝52の壁が、
図14に示すようにロック部材25を後退方向(ロック解除方向)に移動させる。
なお、この実施形態の場合、昇降筒15Bの上下の移動に伴って回動杆23の下端が支柱本体15A(支柱基材19)内の遊挿溝21内を移動し、このとき支柱本体15Aの下縁の左右方向内側に曲がる湾曲変化に伴って回動杆23の姿勢が左右方向に傾動する。しかし、ロック部材25は、上述のように係止ピン25bと軸支ネジ51により、左右方向の傾動が可能とされているため、回動杆23の姿勢が変化してもロック部材25がその姿勢変化に柔軟に追従する。したがって、回動杆23の縦溝52とロック部材25の突部25dとの係合状態は、安定的に維持されることになる。
【0037】
被操作部23cは、
図8、及び、
図11,
図12に示すように、上端部に円板状の抜け止めフランジ60が一体に形成されるとともに、抜け止めフランジ60の下方領域に、外周面と略直交する被押圧面61aを含む切欠き部61が設けられている。回動杆23には、被押圧面61aを通してスライダ50から操作力が伝達される。
【0038】
スライダ50は、平面視が前後方向に長い略矩形状に形成され、
図8,
図10に示すように、その前縁部に、ロック解除レバー37の作用部である上部突片53が挿入係合される入力側開口54が形成されるとともに、その後縁部に、回動杆23の被操作部23cが下方から上方に貫通して係合される出力側開口55が形成されている。
【0039】
ロック解除レバー37の上部突片53は、ロック解除レバー37の下端の操作面が、
図8に示す付勢スプリング59の力に抗して上方に回動操作されたときに、スライダ50の入力側開口54に挿入係合されたまま、スライダ50全体を後方側に摺動変位させる。
【0040】
出力側開口55は、
図11,
図12に示すように、前後方向に長い略矩形状に形成され、その縁部には、回動杆23の抜け止めフランジ60が上面側に当接可能な内向きフランジ56が設けられている。左右方向外側の内向きフランジ56には突出片57が形成されている。
突出片57の後端部は、
図11に示すように、スライダ50が前方側の初期位置にあるときには、回動杆23の軸心から離間した位置で被押圧面61aに正対して当接しており、この状態からスライダ50が、
図12に示すように後退すると、その後退作動に伴って被押圧面61aを回動杆23の軸回りに押圧する。この結果、回動杆23は、図中時計回り方向に所定角度回転する。
したがって、ロック解除レバー37が上方に押し上げ操作されると、その操作力がスライダ50の後退変位に変換された後に、回動杆23の回動に変換され、さらに回動杆23の回動がロック部材25の後退作動に変換される。これにより、ロック部材25の係止ピン25bは、内筒部材35Aの嵌合孔48から引き抜かれ、肘掛け本体16(昇降筒15B)の高さ調整が可能となる。肘掛け本体16(昇降筒15B)が任意の高さに調整された後に、ロック解除レバー37の操作が解除されると、ロック部材25の係止ピン25bは新たな高さ位置の対応する嵌合孔48に挿入係合される。
【0041】
図16〜
図20は、肘掛け本体16の内部の構造を示す図である。
図8、及び、
図16〜
図20に示すように、肘掛け本体16は、前後の端部が凸状に湾曲し、上面側に凹状の収納空間が設けられた前後方向に長い肘掛けベース65と、この肘掛けベース65の上面側の収納空間を覆うように肘掛けベース65に取り付けられ、上面側が肘当て部として機能するカバー部材66と、肘掛け支柱15側の支持ベース部材44に、肘掛けベース65を略水平方向に移動可能に支持させる移動ガイド機構18と、支基6内の可変機構部を、ケーブル24を介して遠隔操作するための操作レバー67(可動操作部)と、を備えている。なお、この実施形態のカバー部材66は、
図5に示すように、肘掛けベース65に直接取り付けられるカバー骨格66aと、カバー骨格66bの上部に取り付けられるカバー表皮66bと、を備えた構成とされている。
【0042】
肘掛けベース65は、前後方向の中央領域に前後方向に長い比較的大型の略矩形状の開口部68が形成されるとともに、前部側領域に操作レバー67を回動作動可能に取り付けるための比較的小型の開口部69(
図10参照)が形成されている。中央の開口部68は、前後方向に沿って延出し相互に平行な一対の側壁68a,68aを有している。また、肘掛けベース65の開口部68の上面側の左右方向の縁部には、側壁68a,68aと平行な一対のガイド壁70,70が突設されている。両ガイド壁70,70の相互に対向する面には、複数の凹凸係合部70a…が前後方向に沿って形成されている。また、左右のガイド壁70,70の前端部は、肘掛けベース65の上面に突設された連結リブ71によって相互に連結されている。
【0043】
肘掛けベース65の上面のうちの中央の開口部68の後方側には、肘掛けベース65の後部周壁65aによって囲まれて、ループ状に引き回されたケーブル24が配置される略半円状の後部平坦面72が設けられている。この後部平坦面72は、上面の略中央に、カバー部材66をビス止めするためのボス部73が突設されている。後部平坦面72は、肘掛けベース65の上部にカバー部材66が取り付けられた状態において、カバー部材66との間で、ケーブル24の湾曲形態の変化を許容する許容空間74を形成する。この許容空間74には、ケーブル24のうちの、開口部69からの引き入れ位置と、操作レバー67との連結位置との間で、略水平面内でループ状に湾曲する湾曲撓み部75が収容される。
ケーブル24の湾曲撓み部75は、肘掛け本体16が移動ガイド機構18を介して略水平方向に移動したときに、その移動に伴って湾曲形状や引き出し向き等の湾曲形態が変化する。
【0044】
移動ガイド機構18は、
図8に示すように、肘掛けベース65内に、前後方向に移動可能に保持された前後動案内ブロック76と、前後動案内ブロック76に左右方向に移動可能に保持された左右動案内ブロック77と、左右動案内ブロック77に回動可能に保持された回動案内ブロック78と、を備え、回動案内ブロック78が支持ベース部材44の支持ボス45にネジ63によって一体に結合されている。
【0045】
図24〜
図26は、移動ガイド機構18による肘掛けベース65の移動の状態を示す図である。
支持ベース部材44に対する肘掛けベース65の回動は、
図26に示すように、左右動案内ブロック77が回動案内ブロック78に対して相対回動することによって許容され、支持ベース部材44に対する肘掛けベース65の左右方向の移動は、
図25に示すように、前後動案内ブロック76が左右動案内ブロック77に対して左右方向に相対移動することによって許容される。また、支持ベース部材44に対する肘掛けベース65の前後方向の移動は、
図24に示すように、肘掛けベース65が前後動案内ブロック76に対して前後方向に相対移動することによって許容される。
【0046】
この実施形態の椅子1では、肘掛け本体16内に配索されるケーブル24に、略水平方向にループ状に湾曲する湾曲撓み部75が設けられているため、
図27に示すように、肘掛け本体16(肘掛けベース65)が前後方向、左右方向、回動方向に種々に組み合わされて移動する場合であっても、湾曲撓み部75がその移動に柔軟に追従して湾曲形態を変化させる。
なお、
図27の上段の(A),(B),(C)は、肘掛け本体16を後退させた状態を示し、そのうちの(A)は、左に移動させ、かつ半時計回りに回動させた状態、(B)は、横移動も回動も行わない状態、(A)は、右に移動させ、かつ時計回りに回動させた状態を示している。また、
図27の下段の(D),(E),(F)は、肘掛け本体16を前進させた状態を示し、そのうちの(D)は、左に移動させ、かつ半時計回りに回動させた状態、(E)は、横移動も回動も行わない状態、(F)は、右に移動させ、かつ時計回りに回動させた状態を示している。
【0047】
前後動案内ブロック76は、全体が上面視略方形状に形成され、底壁に左右方向に長い長孔79が形成されるとともに、底壁を取り囲む四辺に左右一対の側壁80a,80aと前部壁80bと後部壁80cとが突設されている。左右の側壁80a,80aの下端の外面には、肘掛けベース65の左右のガイド壁70の凹凸係合部70aに選択的に係合する板ばね部材81(
図8参照る)が取り付けられている。前部壁80bの後面には左右方向に沿って複数の凹凸係合部80dが設けられている。また、後部壁80cは、底壁から上部後方側に傾斜して突設され、肘掛けベース65の開口部68から上方に引き出されたケーブル24が後部壁80cの傾斜した下面に沿って許容空間74方向に引き出されるようになっている。
【0048】
左右動案内ブロック77は、全体が上面視矩形状に形成され、上面中央に回動案内ブロック78を収容する凹部82が形成されるとともに、下面中央に、支持ベース部材44上の支持ボス45の外周に嵌合され、かつ前後動案内ブロック76の長孔79に摺動自在に嵌入される円筒状のボス部83が突設されている。また、左右動案内ブロック77の前面には、前後動案内ブロック76の前部壁80bの凹凸係合部80dに選択的に係合する板ばね84が取り付けられている。
【0049】
回動案内ブロック78は、外周面の一部に円周方向に沿って複数の凹凸係合部78aが設けられている。この凹凸係合部78aには、左右動案内ブロック77に弾性体によって付勢された不図示の係合突起が選択的に係合されるようになっている。
以上のように、移動ガイド機構18を構成する各要素は、凹凸係合部78a,80d,70aによる係合によって任意の移動位置に停止させることができる。
【0050】
また、
図8〜
図10に示すように、肘掛けベース65の下方には、肘掛けベース65の中央の開口部68を下方から閉塞する閉塞部材85が配置されている。閉塞部材85は、開口部68よりも外形サイズが大きく肘掛けベース65の下面に摺動可能に接触するプレート部85aと、プレート部85aの上面中央に突設された平面視略矩形状のガイド突部85bと、を備えている。
【0051】
ガイド突部85bの左右方向の幅は、開口部68の左右方向の幅とほぼ同幅に設定され、ガイド突部85bが開口部68内に前後摺動可能に嵌入されるようになっている。ガイド突部85bには、上下方向に貫通する左右方向に長い長孔86が形成されている。閉塞部材85は、支持ベース部材44と肘掛けベース65の間に介装され、支持ベース部材44上の支持ボス45がガイド突部85bの長孔86部分を上下方向に貫通するようになっている。閉塞部材85は、長孔86を貫通した支持ボス45に、前後動案内ブロック76、左右動案内ブロック77、回動案内ブロック78を順次セットし、その状態で回動案内ブロック78を支持ボス45に締結固定することにより、肘掛けベース65の下面側に保持されている。なお、閉塞部材85は、支持ベース部材44の開口部68を挟んで前後動案内ブロック76と一体移動可能とされている。
【0052】
また、閉塞部材85上の中央の長孔86よりも僅かに後方側位置には、肘掛け支柱15内に連続するケーブル24を肘掛けベース65の開口部68内に引き入れるための引き込み孔87が形成されている。引き込み孔87は、左右方向に長い長孔状に形成され、その一部は閉塞部材85のガイド突部85bに跨って(ガイド突部85bを一部切り欠いて)形成されている。
【0053】
この実施形態における操作用のケーブル24は、
図17,
図19に示すように、筒状のアウタケーブル24aと、アウタケーブル24a内に摺動自在に保持されるインナケーブル24bと、を備えてなり、アウタケーブル24aが配索経路内の適所に固定されるとともに、インナケーブル24bの両端部が操作レバー67側と支基6内の可変機構部側とに接続されている。ただし、この実施形態では、インナケーブル24bは操作レバー67に直接連結されているのではなく、増幅レバー88と動滑車89を用いた後に詳述するストローク増幅機構90を介して操作レバー67に接続されている。また、アウタケーブル24aは、肘掛け本体16の内部においては、許容空間74以外の箇所に固定されている。この実施形態では、アウタケーブル24aの肘掛け本体16側の端末部が、肘掛けベース65上のガイド壁70の外側位置に係止具91を介して固定されている。即ち、この実施形態では、開口部68から引き入れられたケーブル24は許容空間74にループ状に引き回された後に、その前端側がガイド壁70の外側に引き回され、そこでアウタケーブル24aが係止具91を介して肘掛けベース65上に固定されている。
【0054】
また、この実施形態におけるケーブル24は、肘掛け支柱15の内部空間に挿通される第1領域a1(
図5参照。)と、肘掛け本体16内に配索される第2領域a2(
図5参照。)とで曲げ剛性が異なるように、アウタケーブル24aの材質や内部構造を異ならせている。具体的には、肘掛け本体16内に配索される第2領域a2の曲げ剛性が肘掛け支柱15内に配索される第1領域a1の曲げ剛性よりも低く設定されている。
これにより、肘掛け本体16の略水平方向の移動時に、開口部68からの引き入れ位置から操作レバー67との連結位置までの距離や引き出し方向等が大きく変化する部位で用いられる第2領域a2では、肘掛け本体16内、特に許容空間74での柔軟な湾曲形態の変化を得ることができる。これに対し、肘掛け本体16の昇降時(肘掛け支柱15の伸縮時)に、肘掛け支柱15内での襞状の曲がりを抑制したい第1領域a1では、曲げの生じにくい充分な剛性を得ることができる。
【0055】
ケーブル24の第1領域a1と第2領域a2の境界部には、
図5に示すように、両領域のアウタケーブル24aを相互に接続する連結部材92が一体に取り付けられている。第1領域a1と第2領域a2の境界部に位置されるこの連結部材92は、一方の内筒部材35Aの上端の頂壁ブロック39に取り付けられるようになっている。
【0056】
図21は、連結部材92の一方の内筒部材35Aの上端の断面を示す図であり、
図22は、内筒部材35Aの上面視の状態を示す図である。また、
図23は、連結部材92を保持する保持部材43を示す図である。
これらの図に示すように、連結部材92には軸方向と直交する方向に延出する一対の突起92a,92aが設けられている。これに対し、保持部材43は、連結部材92の外周面を保持する略U字状の保持溝43aが設けられるとともに、連結部材92の一対の突起92a,92aを係止する係合溝43b,43bが保持溝43aの内壁に設けられている。連結部材92とケーブル24は、一対の突起92a,92aが係合溝43b,43bに係合されることにより、上下移動不能に保持部材43と一体化される。この実施形態においては、連結部材92と保持部材43が係止部材を構成している。
【0057】
また、保持部材43の前方側の端面は、下方に向かって前後幅が窄まるように傾斜する傾斜面43cが設けられ、その傾斜面43cの下端に一対の係止突起43d,43dが突設されている。保持部材43の後方側には上方に突出する突片93が延設され、その突片93に後方側に突出する係止突起93aが一体に設けられている。
保持部材43が取り付けられる内筒部材35Aのケーブル挿入孔42には、保持部材43の傾斜面43cが当接する傾斜面42aが設けられている。傾斜面42aは、ケーブル挿入孔42が下方に向かって窄まるように傾斜が設定されている。この傾斜面42aは、連結部材92と保持部材43の下方変位を規制する規制面を構成している。また、傾斜面42aの下端近傍には、保持部材43の一対の係止突起43d,43dが係合される係合溝42b,42b(
図22参照。)が設けられており、ケーブル挿入孔42の後部上方側の壁には、保持部材43側の係止突起93aが嵌入される係止孔94が設けられている。ケーブル24と連結部材92を保持した保持部材43は、ケーブル挿入孔42内に嵌入され、係止突起43d,43dと93aをケーブル挿入孔42側の対応個所に係合させることによって内筒部材35Aに固定される。
この実施形態においては、連結部材92及び保持部材43と、ケーブル挿入孔42とがケーブル24の第1領域a1と第2領域a2の境界の近傍部を上下方向に位置決めする位置決め手段を構成している。
【0058】
上記のように連結部材92及び保持部材43を介して内筒部材35Aの上部に係止されたケーブル24は、第1領域a1が昇降筒15Bの内側に引き出されて、支柱本体15Aのエンドキャップ28のケーブル挿通溝30に挿入された後に、
図15に示すように、支柱基材19上のケーブル配索溝22内を配索される。
【0059】
ここで、肘掛け本体16に設けられる操作レバー67のストローク増幅機構90について、
図17〜
図20を参照して説明する。
ストローク増幅機構90は、肘掛けベース65上の開口部69と連結リブ71の間の前部平坦面95に水平方向に回動可能に軸支される増幅レバー88と、操作レバー67の支軸67aから離間した位置に回転可能に設けられた動滑車89と、一端が肘掛けベース65に、他端が増幅レバー88にそれぞれ連結されるとともに中間部が動滑車89に掛け回される連結ワイヤ96と、を備えている。
【0060】
増幅レバー88は、前部平坦面95上に左右方向に沿って配置され、左右方向に延出した一端部が枢軸88aによって前部平坦面95上に回動可能に支持されるとともに、他端部に、インナケーブル24bの端部が連結される出力部88bが設けられている。また、増幅レバー88の左右方向の中央には、連結ワイヤ96の他端が連結される入力部88cが設けられている。したがって、増幅レバー88の入力部88cに入力されたストロークは、増幅レバー88のレバー比に応じた比率に増幅されて、インナケーブル24bをストロークさせる。
【0061】
肘掛けベース65上の開口部69の後縁には、下方に向かって突出する隔壁97が延設されている。この隔壁97は、
図10に示すように、肘掛け支柱15の上部前端側に配置されているロック解除レバー37と、肘掛けベース65に保持されている操作レバー67の間を隔離する。連結ワイヤ96の一端部は、隔壁97の上下方向の略中央位置に連結されている。
なお、隔壁97の付根部側の後面は、肘掛け本体16が肘掛け支柱15に対して最大に後退移動したときに閉塞部材85の前端部85dと当接し、それによって肘掛け本体16の過大変位が規制される。これにより、隔壁97とロック解除レバー37の間には、ロック解除レバー37の操作を阻害しない充分な隙間dが確保される。
【0062】
操作レバー67は、開口部68の下方側に配置される断面略T字状の操作部67bと、開口部68の上方側にあって肘掛けベース65に回動可能に支持される支軸67aと、操作部67bと支軸67aを連結するアーム部67cと、を備え、アーム部67cの略中間部に動滑車89が回転可能に支持されている。そして、操作レバー67は、不図示の付勢スプリングによって操作部67bが最下端に位置される方向に付勢されている。
【0063】
操作レバー67が操作されない初期状態では、
図17,
図18に示すように、動滑車89は後退位置に位置されており、動滑車89と連結ワイヤ96を介して操作レバー67に連係された増幅レバー88は、出力部88bが最後退位置となる回動角度で停止している。
この状態から操作レバー67が着座者によって押し上げ操作されると、
図19,
図20に示すように動滑車89が前方に移動し、その結果、連結ワイヤ96を介して増幅レバー88の入力部88cが動滑車89の二倍の距離だけ前方に移動する。こうして、増幅レバー88が回動すると、増幅レバー88は、レバー比に応じた比率に増幅されたストロークでインナケーブル24bを引き込むことになる。
【0064】
ところで、肘掛け支柱15と前向き腕部13の連結部の構造と、その連結部におけるケーブル24の配索は以下のようになっている。
図28は、この実施形態の椅子1の下面の右半分を示した図であり、
図29は、左右両側の肘掛け9,9を含む椅子1の縦断面図、
図30は、
図29のG−G線に沿う断面図である。
これらの図と、
図2〜
図6に示すように、肘掛け支柱15の支柱本体15Aの下方の端末には、支柱本体15Aの側方延出領域の一般部の断面と連続する形状の一般端面110と、その一般端面110に段差状に縮径して突設された多角形断面の突部111と、が設けられている。一方、前向き腕部13の左右方向の外側面には、その内底面に支柱本体15Aの一般端面110が突き当てられるとともに、支柱本体15Aの一般端面110に隣接する外周面の一部が浅く嵌合される第1の凹部112(外側凹部)と、支柱本体15Aの突部111が嵌合される多角形断面の第2の凹部113(係合凹部)が設けられている。第1の凹部112は、第2の凹部113を取り囲むように前向き腕部13の外側面に形成されている。
【0065】
支柱本体15Aの一般端面110は、支柱基材19と、その支柱基材19に取り付けられるカバー部材20とによって構成されており、支柱本体15Aの突部111は、金属製の支柱基材19の端部に連続して形成されている。
支柱本体15Aの一般端面110の上部領域(突部111の上方側に位置される領域)には、支柱基材19の起立領域から側方延出領域に向かって延出したケーブル配索溝22の下方の端末部が位置されている。また、同じ一般端面110の上部領域には、カバー部材20の裏面に形成された一対のケーブル誘導壁20a,20aの端末部が位置されている。ケーブル誘導壁20a,20aは、支柱基材19のケーブル配索溝22内に配置され、ケーブル配索溝22を通して下方の端末方向に誘導されたケーブル24をさらに支柱本体15Aの前後方向の中央領域に誘導する。ケーブル配索溝22と一対のケーブル誘導壁20a,20aに囲まれた開口部114は支柱本体15Aの一般端面110の上部中央に位置されている。
【0066】
支柱本体15Aの下方の端末は、前向き腕部13の左右方向外側の側面に対し、一般端面110を第1の凹部112内に挿入し、かつ突部111を第2の凹部113に嵌合した状態において、不図示のボルトによって締結固定されるようになっている。なお、図中符号115は、支柱本体15A側の突部111の端面に形成されたボルト挿通孔であり、符号116は、前向き腕部13を左右方向に貫通して設けられたボルト挿通孔である。支柱本体15Aを締結固定するボルトはこれらのボルト挿通孔116,115に挿入される。
この実施形態においては、支柱本体15Aの突部111が嵌合状態で締結固定される第2の凹部113と、その底部領域とが、前向き腕部13における肘掛け支柱15との連結部を構成している。
【0067】
前向き腕部13の第1の凹部112には、前向き腕部13を左右方向に貫通するケーブル案内孔117が形成されている。この実施形態では、ケーブル案内孔117は、第1の凹部112の底面のうちの、支柱本体15Aの一般端面110の開口部114と対向する位置に形成されている。したがって、肘掛け9が前向き腕部13に締結固定された状態においては、支柱本体15Aの端末の開口部114と前向き腕部13のケーブル案内孔117とが左右方向に沿って直線状に連続する。支柱本体15Aの下方の端末の開口部114から引き出されたケーブル24は、
図29に示すように、前向き腕部13の左右に貫通するケーブル案内孔117に挿入された後、前向き腕部13の左右方向の内側領域から支基6の上部側に湾曲撓み部118をもって引き回され、その端末部が支基6内の可変機構部に接続されている。
【0068】
以上のように、この実施形態の椅子1においては、支柱本体15A(肘掛け支柱15)の下方の端末の開口部114から引き出されたケーブル24が、前向き腕部13のケーブル案内孔117に挿通され、そのケーブル案内孔117に拘束された状態で支基6内の可変機構部に引き回されているため、肘掛け9から椅子本体11にかけてを特殊な形状にすることなく、支柱本体15Aの下方の端末から引き出されたケーブル24の外部から見える部位でのあばれを防止することができる。したがって、座体5の下方の見栄えの低下やケーブル24の位置ずれを未然に防止することができる。
【0069】
また、この実施形態の椅子1では、支柱本体15Aの下方の端末が前向き腕部13に直接連結され、ケーブル案内孔117が前向き腕部13のうちの支柱本体15Aとの連結部(第2の凹部113)の上方に離間した部位に形成されているため、支柱本体15Aの下方の端末の開口部114とケーブル案内孔117との位置ずれを防止し、ケーブル24の配索を容易かつ確実なものとすることができるとともに、ケーブル24の交換なメンテナンスを行うにあたり、支柱本体15Aの下方の端末の上方側において、容易に作業を行うことが可能になる。
【0070】
特に、この実施形態の椅子1は、支柱本体15Aの下方の端末が第1の凹部112と第2の凹部113に嵌合された状態で前向き腕部13に締結固定され、支柱本体15Aの下方の端末の開口部114がその端末の上部領域に設けられるとともに、ケーブル案内孔117が前向き腕部13の第2の凹部113の上方位置に形成されているため、支柱本体15Aを前向き腕部に位置決めし、その状態で支柱本体15A側の開口部114と前向き腕部13側のケーブル案内孔117とを、第2の凹部113の上方側で合致させることができる。
したがって、開口部114とケーブル案内孔117との位置ずれを防止してケーブル24の摺動抵抗を低減することができる。また、ケーブル案内孔117が第2の凹部113の上方側に配置されることから、ケーブル案内孔117から可動機構部までの距離の短くし、ケーブル24の不要な長尺化を回避することができる。
【0071】
また、この実施形態の椅子1においては、前向き腕部13の左右方向の外側面に、第2の凹部113を取り囲むように第1の凹部112が形成され、第1の凹部112の底部にケーブル案内孔117が形成されているため、ケーブル24をケーブル案内孔117に挿入する場合に、開口の広い第1の凹部112を通して作業を容易に行うことができる。
【0072】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。