特許第6155022号(P6155022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155022
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/21 20060101AFI20170619BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20170619BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20170619BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   A61K8/21
   A61K8/34
   A61K8/44
   A61Q11/00
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-282122(P2012-282122)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-125443(P2014-125443A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 敦
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−001402(JP,A)
【文献】 特開2012−036172(JP,A)
【文献】 特開2011−046654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D):
(A)N−ココイルグルタミン酸又はその塩 0.005質量%以上1質量%以下
(B)20℃における水に対する溶解度が40質量%以下の糖アルコール 2質量%以上40質量%以下
(C)フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム及びフッ化ケイ素酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であるフッ化物イオン供給化合物 0.002質量%以上2質量%以下
(D)水 25質量%を超え95質量%以下
を含有し、塩化ナトリウムの含有量が3質量%以下であり、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が5以上8000以下であり、成分(C)と成分(A)の質量比(C)/(A)が0.01以上100以下であり、かつ成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が0.006×10-2以上4×10-2未満である口腔用組成物。
【請求項2】
成分(B)が、エリスリトール、還元パラチノース、グルコピラノシルソルビトール、グルコピラノシルマンニトール及びマンニトールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
液体口腔用組成物であって、
成分(A)の含有量が0.005質量%以上0.5質量%以下であり、
成分(B)の含有量が2質量%以上25質量%以下であり、
成分(D)の含有量が50質量%以上95質量%以下であり、
成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が5以上5000以下であり、かつ成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が0.01×10-2以上0.8×10-2以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
歯磨組成物であって、
成分(A)の含有量が0.005質量%以上1質量%以下であり、
成分(B)の含有量が2質量%以上40質量%以下であり、
成分(D)の含有量が25質量%を超え70質量%以下であり、
成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が5以上3000以下であり、かつ成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が0.01×10-2以上3×10-2以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
さらに成分(E)グリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる成分を2〜20質量%含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
20℃における水に対する溶解度が40質量%を越える糖アルコールを2質量%以上35質量%以下含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
成分(A)及び成分(B)を有効成分とする歯牙へのフッ素取り込み量促進剤である請求項1〜のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯質の主成分はハイドロキシアパタイトであり、口中においては通常、リン酸イオンやカルシウムイオンの溶出(脱灰)と、リン酸カルシウムやハイドロキシアパタイトへの結晶化(再石灰化)が平衡状態にある。歯のう蝕は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)等の細菌がショ糖等を分解して有機酸を産生しpHを低下させて、歯のカルシウム等を溶出させることにより脱灰を促進することで進行していく。う蝕の初期段階においては、エナメル質に白斑(ホワイトスポット)といわれる歯の表層下脱灰病巣を生じる。ここでフッ化物イオン(F-)は歯に取り込まれてフッ化カルシウムを生成し、低濃度のフッ化物イオンを徐々に放出することで、歯の脱灰抑制効果や、カルシウムイオンとリン酸イオンの結晶化の効果、すなわち再石灰化効果を発揮する。従って、フッ化物イオンは、う蝕の発生を防止し、かかる白斑を消失させうることが知られている。
【0003】
一方、アニオン界面活性剤なかでもN−アシルアミノ酸又はその塩は、低刺激性である上、例えば、特許文献1にも開示されるように、優れた発泡性と良好な風味をもたらすことから、アルキル硫酸塩等の代替成分として、種々の口腔用組成物に用いられている。また、N−アシルアミノ酸又はその塩は、特許文献2にも開示されるように、ステインの形成を阻害する効果を発揮することでも知られており、さらに特許文献3には、これを多価アルコールと併用することにより、泡質の改善を図ったノンエアゾール型泡状歯磨製品が開示されている。
【0004】
このような優れた性能を有するN−アシルアミノ酸又はその塩を用いつつ、フッ化物イオンを有効に取り込むことができる口腔用組成物を実現することは、う蝕の発生を防止する上で非常に有用である。例えば、特許文献4には、水酸化アルミニウムとN−長鎖アシルアミノ酸とフッ素化合物とを含有する口腔用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−97215号公報
【特許文献2】特開平10−17444号公報
【特許文献3】特開平10−87460号公報
【特許文献4】特開平2−233607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの文献に記載の組成物においても、N−アシルアミノ酸又はその塩を用いつつ、フッ化物イオンの歯への吸着量を十分に高めるには至らず、さらなる改善が求められている。
【0007】
本発明は、N−アシル酸性アミノ酸又はその塩を用いつつ、フッ化物素イオンの歯への吸着量を十分に高めてう蝕の発生を有効に防止することができる口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、フッ化物イオン供給化合物と十分な水の存在下、N−アシル酸性アミノ酸又はその塩と特定の糖アルコールを併用することにより、フッ化物イオンを歯へ効果的に吸着させることができることに着目し、さらに塩化ナトリウムの含有量とともにこれらの含有量及び量比を特定することで、飛躍的にフッ化物イオンの歯への取り込み量を増大させることができる口腔用組成物が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(D):
(A)N−アシル酸性アミノ酸又はその塩 0.005質量%以上1質量%以下
(B)20℃における水に対する溶解度が40質量%以下の糖アルコール 2質量%以上40質量%以下
(C)フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム及びフッ化ケイ素酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であるフッ化物イオン供給化合物
(D)水 25質量%を超え95質量%以下
を含有し、塩化ナトリウムの含有量が3質量%以下であり、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が5以上8000以下であり、かつ成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が0.006×10-2以上4×10-2未満である口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の口腔用組成物によれば、十分な水分の含有量と、N−アシル酸性アミノ酸又はその塩と特定の糖アルコールの併用により、フッ化物イオンの歯への取り込み量を効果的に増大させることができるので、う蝕の発生を有効に防止することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、次の成分(A)〜(D):
(A)N−アシル酸性アミノ酸又はその塩 0.005質量%以上1質量%以下
(B)20℃における水に対する溶解度が40質量%以下の糖アルコール 2質量%以上40質量%以下
(C)フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム及びフッ化ケイ素酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であるフッ化物イオン供給化合物
(D)水 25質量%を超え95質量%以下
を含有し、塩化ナトリウムの含有量が3質量%以下であり、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が5以上8000以下であり、かつ成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が0.006×10-2以上4×10-2未満である。かかる口腔用組成物の形態としては、口中に適用できるものであれば特に制限されず、練り歯磨剤やゲル状歯磨剤等の歯磨組成物、洗口剤や液状歯磨剤等の液体口腔用組成物として用いることができる。
【0012】
本発明の口腔用組成物は、成分(A)として、N−アシル酸性アミノ酸又はその塩を0.005質量%以上1質量%以下含有する。かかる成分(A)により、低刺激性でありながら、後述する他の成分と相まってフッ化物イオンの歯への取り込み量を増大させることができる。成分(A)のアシル基は、泡立ち等の観点から、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する炭素数8〜18の脂肪酸を由来としたものが好ましく、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する炭素数8〜16の脂肪酸を由来としたものがより好ましく、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する炭素数8〜14の脂肪酸を由来としたものがさらに好ましい。このような脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。これら脂肪酸のなかでも、泡質や保存安定性の点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸が好ましく、ラウリン酸がより好ましい。また、成分(A)のアシル基は、上記の脂肪酸の混合脂肪酸を由来としたもの、例えば、ヤシ油、パーム核油などを原料にして得られたものであってもよい。なかでも、ヤシ油脂肪酸やパーム核脂肪酸を原料にして得られたものが好ましく、ヤシ油脂肪酸を原料にして得られたものがより好ましい。成分(A)のアシル基は、かかる脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上を由来とすることができる。
【0013】
成分(A)の酸性アミノ酸部分は、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる1種又は2種であることが好ましく、フッ素取り込み量を増大させる観点から、グルタミン酸であることがさらに好ましい。また、これらのアミノ酸部分はD体、L体或いはD体とL体の混合物のいずれであってもよく、L体であるのが好ましい。
【0014】
上記N−アシル酸性アミノ酸又はその塩(A)は、フッ素取り込み量を増大させる観点から、N−ラウロイルグルタミン酸、N−ココイルグルタミン酸、N−ミリストイルグルタミン酸、N−パーム脂肪酸グルタミン酸、N−ラウロイルアスパラギン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、N−ラウロイルグルタミン酸、N−ココイルグルタミン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、N−ココイルグルタミン酸又はその塩がさらに好ましい。
【0015】
上記N−アシル酸性アミノ酸又はその塩(A)の塩としては、口腔内に使用しやすい観点及び組成物の安定性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩、オルニチン塩等の塩基性アミノ酸塩等挙げられる。成分(A)の塩としては、組成物の安定性や味及び入手容易性の観点から、アルカリ金属塩及びアルギニン塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩及びアルギニン塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれる1種又は2種がさらに好ましく、ナトリウム塩がよりさらに好ましい。
【0016】
成分(A)の含有量は、フッ化物イオンの歯への取り込み量を増大させる観点から、0.005質量%以上であって、好ましくは0.01質量%以上である。成分(A)の含有量は、味や刺激の観点から、1質量%以下であって、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。また、成分(A)の含有量は、0.005〜1質量%であって、好ましくは0.01〜0.8質量%であり、より好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0017】
例えば、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、かかる成分(A)の含有量は、味や刺激の観点及び溶解性や保存安定性の観点から、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
また例えば、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、かかる成分(A)の含有量は、味や刺激及び製造性の観点から1質量%以下であり、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0018】
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、20℃における水に対する溶解度が40質量%以下(20℃において飽和水溶液100g中の溶解量が40g以下)の糖アルコールを2質量%以上40質量%以下含有する。この溶解度は、組成物中で良好に溶解し、他の成分と相まってフッ化物イオンの歯への取り込み量を効果的に増大させる観点から、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましく、20質量%以上35質量%以下がさらに好ましい。成分(B)の糖アルコールとしては、エリスリトール、還元パラチノース、グルコピラノシルソルビトール、グルコピラノシルマンニトール、及びマンニトールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、より具体的には、エリスリトール、マンニトール、α−D−グルコピラノシル−1,6−ソルビトール、α−D−グルコピラノシル−1,6−マンニトール、α−D−グルコピラノシル−1,6−ソルビトールとα−D−グルコピラノシル−1,6−マンニトールの混合物である還元パラチノースが挙げられる。なかでも、水に対する溶解度が低く、扱い易さの点、及びフッ素取り込みを促進する観点から、エリスリトール、還元パラチノース及びマンニトールから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、適度な溶解性を有し、効果的にフッ素取り込み量を増大させる観点から、エリスリトール及び還元パラチノースから選ばれる1種又は2種がより好ましい。
【0019】
エリスリトールの構造としては、L−エリスリトール、D−エリスリトール、meso−エリスリトールの3種の異性体が存在するが、本発明では、これらいずれの構造のものを用いてもよい。例えば、結晶状のエリスリトールは、市販品として、日研化学(株)、三菱化学フーズ(株)、セレスター社製等のものが入手可能である。エリスリトールの20℃における水に対する溶解度は33質量%(20℃において飽和水溶液100g中の溶解量が33g)である。
【0020】
還元パラチノースは、二糖類の糖アルコールであり、α−D−グルコピラノシル−1,6ーマンニトール及びその異性体であるα−D−グルコピラノシル−1,6ーソルビトールの等モル混合物である。還元パラチノースはシュクロースを原料とし、シュクロースを糖転移酵素によりパラチノースとした後に、水素添加反応させることによって得られる。また、還元パラチノースとして知られているパラチニットは、三井製糖社及びSudzucker AG社(和名:南独製糖)の商品名であり、イソマルトという別名称もある。パラチニットの20℃における水に対する溶解度は28質量%(20℃において飽和水溶液100g中の溶解量が28g)である。
【0021】
マンニトールは、ヘキシトールの一種でありマンノースの糖アルコールである。工業的には、トウモロコシデンプン糖の電解還元、蔗糖の高圧還元により生産されている。本発明で用いるマンニトールは、D−マンニトール、L−マンニトール、D,L−マンニトールから選ばれる少なくとも1種であればよく、特に限定されるものではないが、天然界に存在するD−マンニトールが入手容易であり好ましい。マンニトールの20℃における水に対する溶解度は18質量%(20℃において飽和水溶液100g中に18g溶解)である。
【0022】
成分(B)の含有量は、成分(B)を組成物中で十分な量を溶解させてフッ化物イオンの歯への取り込み量を効果的に増大させる観点から、本発明の口腔用組成物中に2質量%以上40質量%以下である。例えば、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、かかる成分(B)の含有量は、フッ化物イオンの歯への取り込み量を増大させる観点から、本発明の口腔用組成物中に2質量%以上であって、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上である。本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、かかる成分(B)の含有量は、成分(B)を組成物中で良好に溶解させる観点から、本発明の口腔用組成物中に好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。また、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、かかる成分(B)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2〜25質量%であって、より好ましくは5〜25質量%であり、さらに好ましくは8〜20質量%である。
【0023】
例えば、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、かかる成分(B)の含有量は、良好な味を得つつフッ化物イオンの歯への取り込み量を増大させる観点から、本発明の口腔用組成物中に2質量%以上であって、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上である。本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、かかる成分(B)の含有量は、成分(B)を組成物中に良好に溶解させ、又は組成物中の成分(A)と成分(B)の流動性を確保して、フッ化物イオンの歯への取り込みを促進させる観点から、本発明の口腔用組成物中に40質量%以下であって、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。また、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、かかる成分(B)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に好ましくは2〜40質量%であり、より好ましくは5〜35質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%であり、またさらに好ましくは15〜30質量%である。
【0024】
本発明の口腔用組成物は、20℃における水に対する溶解度が40質量%を超える、成分(B)以外の糖アルコールを含有することができる。成分(B)以外の糖アルコールの含有量は、成分(B)を組成物中により良好に溶解させる観点、又は組成物中の成分(A)と成分(B)の流動性をより十分に確保する観点から、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。成分(B)以外の糖アルコールを含有する場合の含有量は、良好な味や湿潤効果の観点から、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上である。本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、成分(B)以外の糖アルコールの含有量は、より好ましくは10質量%以上である。本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、成分(B)以外の糖アルコールの含有量は、成分(B)を組成物中により良好に溶解させる観点、又は組成物中の成分(A)と成分(B)の流動性をより十分に確保する観点から、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。かかる成分(B)以外の糖アルコールとしては、20℃における水に対する溶解度が66質量%(20℃において飽和水溶液100g中に66g溶解)のキリシトール、20℃における水に対する溶解度が60質量%(20℃において飽和水溶液100g中に60g溶解)のマルチトール、20℃における水に対する溶解度が72質量%のソルビトール(20℃において飽和水溶液100g中に72g溶解)が挙げられる。
【0025】
成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)は、成分(A)及び成分(B)が相まって歯へのフッ化物イオン取り込み量を増大させる観点から、5以上であって、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上である。成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)は、成分(A)及び成分(B)が相まって歯へのフッ化物イオン取り込み量を増大させる観点から、8000以下であって、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1000以下である。また、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)は、5〜8000であって、好ましくは10〜2000であり、より好ましくは20〜1000である。
【0026】
例えば、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物の場合、フッ化物イオン取り込み量を増大させる観点、及び安定性や味の観点から、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)は、5以上であって、好ましくは25以上であり、より好ましくは80以上であり、好ましくは5000以下であり、より好ましくは2000以下であり、さらに好ましくは1000以下である。また、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物の場合、成分(B)と成分(A)の質量比(B/A)は、好ましくは5〜5000であり、より好ましくは25〜2000であり、さらに好ましくは80〜1000である。
例えば、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物の場合、フッ化物イオン取り込み量を増大させる観点から、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)は、5以上であって、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上であり、好ましくは3000以下であり、より好ましくは2000以下であり、さらに好ましくは1000以下である。また、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物の場合、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)は、好ましくは10〜3000であり、より好ましくは20〜2000であり、さらに好ましくは30〜1000である。
【0027】
本発明の口腔用組成物は、成分(C)として、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム及びフッ化ケイ素酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であるフッ化物イオン供給化合物を含有する。かかる成分(C)は、水溶液においてフッ化物イオンを放出する化合物である。なかでも、歯のエナメル質等へのフッ化物イオン取り込み量が高い点から、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムがより好ましく、フッ化ナトリウムがさらに好ましい。また、フッ化物イオンを直接供給しない、フッ化物イオン供給化合物(C)以外のフッ化物として、モノフルオロリン酸ナトリウムを併用することもできる。
【0028】
成分(C)の含有量は、歯のエナメル質等に対するフッ化物イオン取り込み量を充分に確保する点及び安全性の観点から、本発明の口腔用組成物中にフッ素原子換算量で、好ましくは0.002質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上である。成分(C)の含有量は、安全性等の観点から、2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。また、成分(C)の含有量は、本発明の口腔用組成物中にフッ素原子換算量で、好ましくは0.002〜2質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.5質量%である。
【0029】
成分(C)と成分(A)の質量比(C)/(A)は、フッ化物イオンの歯への取り込みを促進させる観点から、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上であり、よりさらに好ましくは0.2以上である。成分(C)と成分(A)の質量比(C)/(A)は、フッ化物イオンを効率的に歯へ取り込む観点から、好ましくは100以下であり、より好ましくは50以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下である。また、成分(C)と成分(A)の質量比(C)/(A)は、好ましくは0.01〜100であり、より好ましくは0.05〜50であり、さらに好ましくは0.1〜10であり、よりさらに好ましくは0.2〜5である。例えば、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、成分(C)と成分(A)の質量比(C)/(A)は、好ましくは0.01〜100であり、より好ましくは0.05〜50であり、さらに好ましくは0.2〜10であり、よりさらに好ましくは0.2〜5である。例えば本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、成分(C)と成分(A)の質量比(C)/(A)は、好ましくは0.01〜100であり、より好ましくは0.05〜50であり、さらに好ましくは0.05〜10であり、よりさらに好ましくは0.1〜5である。
【0030】
本発明の口腔用組成物は、成分(D)として水を25質量%を超え95質量%以下含有する。これにより、成分(B)を良好に溶解させつつ他の成分をも良好に溶解又は分散させて、フッ化物イオンの歯への取り込みを促進させることができる。例えば、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、かかる成分(D)の含有量は、各成分を良好に溶解又は分散させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、かかる成分(D)の含有量は、フッ化物イオンの歯への取り込みを有効に促進させる観点から、本発明の口腔用組成物中に95質量%以下であって、好ましくは90質量%以下である。また、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、かかる成分(D)の含有量は、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは60〜90質量%であり、さらに好ましくは70〜90質量%である。
【0031】
例えば、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、かかる成分(D)の含有量は、各成分を良好に溶解又は分散させ、成分(A)と成分(B)の相乗効果によってフッ化物イオンの取り込みを有効に促進する観点から、本発明の口腔用組成物中に25質量%を超え、好ましくは26質量%以上であり、さらに好ましくは27質量%以上である。本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、かかる成分(D)の含有量は、歯磨組成物としての良好な保形性や粘性を保持しつつフッ化物イオンの歯への取り込みを有効に促進させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。また、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、かかる成分(D)の含有量は、各成分の溶解性又は分散性と保形性のバランスを確保する観点、及びフッ化物イオンの歯への取り込みを有効に促進させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは25質量%超え70質量%以下であり、より好ましくは25質量%超え60質量%以下であり、さらに好ましくは26〜50質量%であり、さらに好ましくは27〜50質量%である。
【0032】
成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)は、成分(A)を良好に溶解させて良好にフッ化物イオンの歯への取り込みを促進させる観点から、0.006×10-2以上であって4×10-2未満である。例えば、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、好ましくは0.01×10-2以上であり、より好ましくは0.012×10-2以上であり、好ましくは0.8×10-2以下であり、より好ましくは0.3×10-2以下であり、さらに好ましくは0.14×10-2以下である。
例えば、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)は、成分(A)によるフッ化物イオンの歯への取り込みを促進させる観点から、好ましくは0.01×10-2以上であり、より好ましくは0.02×10-2以上であり、好ましくは3×10-2以下であり、より好ましくは2×10-2以下であり、さらに好ましくは1.5×10-2以下である。
【0033】
本発明の口腔用組成物は、フッ化物イオンの歯への取り込みをより促進する観点から、さらにグリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる成分(E)を含有することが好ましい。成分(E)は、フッ化物イオンの歯への取り込みをさらに促進させる観点及び味の観点からグリセリンが好ましい。成分(E)の含有量は、フッ化物イオンの歯への取り込みを促進させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合は、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは7質量%以上である。成分(E)の含有量は、フッ化物イオンの歯への取り込みを促進しつつ良好な使用感や味を保持する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。また、成分(E)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2〜30質量%であり、より好ましくは4〜20質量%であり、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合は、さらに好ましくは5〜15質量%であり、よりさらに好ましくは7〜15質量%である。
【0034】
本発明の口腔用組成物は、フッ化物イオンの歯への取り込みをより促進する観点、及び良好な風味を保持する観点から、塩化ナトリウムの含有量は、本発明の口腔用組成物中に3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましく、また不可避的に混入する場合を除き、塩化ナトリウムを含有しないことが好ましい。なお、本発明の口腔用組成物は、フッ化物イオンの歯への取り込をより促進させる観点、及び良好な風味を保持する観点から、塩化カリウムの含有量は、本発明の口腔用組成物中に、1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましく、また不可避的に混入する場合を除き、塩化カリウムを含有しないことが好ましい。
【0035】
本発明の口腔用組成物は、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリセリン以外の湿潤剤;サッカリンナトリウム、スクラロース等の甘味剤;メントール、アネトール等の香料;グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤;pH調整剤;殺菌剤;抗炎症剤;防腐剤;植物抽出物;その他有効成分等を含有することができる。
【0036】
本発明の口腔用組成物は、フッ化物イオンの歯への取り込みをより促進する観点から、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン等の多価金属イオンを供給する化合物の含有量は、多価金属イオン換算量で、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下であり、また不可避的に混入する場合を除き、多価金属イオンを供給する化合物を含有しないことが好ましい。
【0037】
本発明の口腔用組成物は、フッ化物イオンの歯への取り込みをより促進する観点から、ピロリン酸、トリポリリン酸などの縮合リン酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、また不可避的に混入する場合を除き、縮合リン酸を含有しないことが好ましい。
【0038】
本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、保形性や使いやすさ、保存安定性の観点から粘結剤を含有することが好ましい。本発明の歯磨組成物に含有する粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。このうち、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、糸引き性を抑制した使用感を向上する観点から2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。本発明の歯磨組成物における粘結剤の含有量は、好ましくは0.2〜3質量%であり、より好ましくは0.4〜2質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0039】
また、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、上記粘結剤とともに、さらに増粘性シリカを併用することが好ましい。増粘性シリカとは、吸油量が200〜400mL/100gのシリカである。ここで、吸油量とは、シリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101−13−2(2004年制定)の方法により、吸収される煮あまに油の量により特定する。増粘性シリカの含有量は、本発明の歯磨組成物中に好ましくは0.5〜10質量%である。
【0040】
本発明の口腔用組成物は、歯牙へのフッ素取り込み量を促進するために用いることができ、歯牙へのフッ素取り込み量促進剤とすることができる。本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、本発明の液体口腔用組成物を好ましくは1日1〜5回、より好ましくは1日1〜3回適用し、好ましくは3〜50mL、より好ましくは5〜25mLを口腔内に含み、好ましくは5秒〜1分含嗽し、より好ましくは10秒〜40秒含嗽し、吐出することにより適用することが好ましく、液体口腔用組成物を口腔内に含む以前に、歯牙をブラッシングすることがより好ましい。また、本発明の液体口腔用組成物は、歯牙に不織布等で塗布して用いたり、マウスピース等により歯牙を浸漬させた状態で適用することも可能であり、好ましくは30秒〜10分、より好ましくは1分〜5分適用する。本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、本発明の歯磨組成物を用いて歯ブラシでブラッシングすることが好ましく、好ましくは1日1〜5回、より好ましくは1日1〜3回適用し、使用量は好ましくは0.2〜3gであり、より好ましくは0.5〜2gであり、歯ブラシによるブラッシングの時間は、好ましくは30秒〜10分であり、より好ましくは1分〜5分である。
【0041】
上述した実施態様に関し、本発明はさらに以下の口腔用組成物及び口腔用組成物の使用を開示する。
[1]次の成分(A)〜(D):
(A)N−アシル酸性アミノ酸又はその塩 0.005質量%以上1質量%以下
(B)20℃における水に対する溶解度が40質量%以下の糖アルコール 2質量%以上40質量%以下
(C)フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム及びフッ化ケイ素酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であるフッ化物イオン供給化合物
(D)水 25質量%を超え95質量%以下
を含有し、塩化ナトリウムの含有量が3質量%以下であり、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が5以上8000以下であり、かつ成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が0.006×10-2以上4×10-2未満である口腔用組成物。
【0042】
[2]成分(B)の20℃における水に対する溶解度は、好ましくは5質量%以上である上記[1]の口腔用組成物。
[3]成分(B)は、好ましくはエリスリトール、還元パラチノース、グルコピラノシルソルビトール、グルコピラノシルマンニトール及びマンニトールから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはマンニトール、α−D−グルコピラノシル−1,6−ソルビトール、α−D−グルコピラノシル−1,6−マンニトール、及びα−D−グルコピラノシル−1,6−ソルビトールとα−D−グルコピラノシル−1,6−マンニトールの混合物である還元パラチノースから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエリスリトール、還元パラチノース、グルコピラノシルソルビトール、及びグルコピラノシルマンニトールから選ばれる1種又は2種以上であり、或いはより好ましくはエリスリトール及び還元パラチノースから選ばれる1種又は2種である上記[1]又は[2]の口腔用組成物。
【0043】
[4]成分(A)のアシル基は、炭素数8〜18の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸を由来としたものが好ましく、炭素数8〜16の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸を由来としたものがより好ましく、炭素数8〜14の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸を由来としたものがさらに好ましい上記[1]〜[3]いずれか1の口腔用組成物。
[5]成分(A)のアシル基は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸及びパーム核脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸を由来としたものが好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ヤシ油脂肪酸及びパーム核脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸を由来としたものがより好ましく、ラウリン酸、ヤシ油脂肪酸から選ばれる1種又は2種の脂肪酸を由来としたものがさらに好ましく、ヤシ油脂肪酸を由来としたものがよりさらに好ましい上記[1]〜[4]いずれか1の口腔用組成物。
[6]成分(A)の酸性アミノ酸部分は、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれる1種又は2種であることが好ましく、グルタミン酸であることがより好ましい上記[1]〜[5]いずれか1の口腔用組成物。
【0044】
[7]成分(A)のN−アシル酸性アミノ酸は、N−ラウロイルグルタミン酸、N−ココイルグルタミン酸、N−ミリストイルグルタミン酸、N−パーム脂肪酸グルタミン酸、N−ラウロイルアスパラギン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、N−ラウロイルグルタミン酸、N−ココイルグルタミン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、さらに好ましくはN−ココイルグルタミン酸又はその塩である上記[1]〜[6]いずれか1の口腔用組成物。
[8]成分(A)のN−アシル酸性アミノ酸の塩は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩及び塩基性アミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アルカリ金属塩及びアルギニン塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれる1種又は2種がさらに好ましく、ナトリウム塩がよりさらに好ましい上記[1]〜[7]いずれか1の口腔用組成物。
[9]成分(A)の含有量は、0.005質量%以上であって、好ましくは0.01質量%以上であり、1質量%以下であって、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である上記[1]〜[8]いずれか1の口腔用組成物。
【0045】
[10]成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)は、5以上であって、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、8000以下であり、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1000以下である上記[1]〜[9]いずれか1の口腔用組成物。
[11]成分(C)の含有量は、好ましくは0.002質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である上記[1]〜[10]いずれか1の口腔用組成物。
[12]成分(C)と成分(A)の質量比(C)/(A)は、好ましくは0.01以上であって、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは0.2以上であり、好ましくは100以下であって、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは10以下であり、よりさらに好ましくは5以下である上記[1]〜[11]いずれか1の口腔用組成物。
【0046】
[13]塩化ナトリウムの含有量は、好ましくは3質量%以下であって、より好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、また好ましくは塩化ナトリウムを含有しない上記[1]〜[12]いずれか1の口腔用組成物。
[14]塩化カリウムの含有量は、好ましくは1質量%以下であって、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、また好ましくは塩化カリウムを含有しない上記[1]〜[13]いずれか1の口腔用組成物。
[15]好ましくはグリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる成分(E)を含有し、好ましくは成分(E)はグリセリンであり、成分(E)の含有量は好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である上記[1]〜[14]いずれか1の口腔用組成物。
【0047】
[16]好ましくは液体口腔用組成物であって、かつ、成分(A)の含有量が0.005質量%以上0.5質量%以下であり、成分(B)の含有量が2質量%以上25質量%以下であり、成分(D)の含有量が50質量%以上95質量%以下であり、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が5以上5000以下であり、かつ成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が0.01×10-2以上0.8×10-2以下であることが好ましい[1]〜[15]いずれか1の口腔用組成物。
[17]好ましくは液体口腔用組成物であり、かつ、成分(A)の含有量は、0.005質量%以上であって、好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である上記[1]〜[16]いずれか1の口腔用組成物。
[18]好ましくは液体口腔用組成物であり、かつ、成分(B)の含有量は、2質量%以上であって、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である上記[1]〜[17]いずれか1の口腔用組成物。
[19]好ましくは液体口腔用組成物であり、かつ、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)は、5以上であって、好ましくは25以上であり、より好ましくは80以上であり、好ましくは5000以下であり、より好ましくは2000以下であり、さらに好ましくは1000以下である上記[1]〜[18]いずれか1の口腔用組成物。
【0048】
[20]好ましくは液体口腔用組成物であり、かつ、成分(C)と成分(A)の質量比(C)/(A)は、好ましくは0.01〜100であり、より好ましくは0.05〜50であり、さらに好ましくは0.2〜10であり、殊更に好ましくは0.2〜5である上記[1]〜[19]いずれか1の口腔用組成物。
[21]好ましくは液体口腔用組成物であり、かつ、成分(D)の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である上記[1]〜[20]いずれか1の口腔用組成物。
[22]好ましくは液体口腔用組成物であり、かつ、成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が、好ましくは0.01×10-2以上であり、より好ましくは0.012×10-2以上であり、好ましくは0.8×10-2以下であり、より好ましくは0.3×10-2以下であり、さらに好ましくは0.14×10-2以下である上記[1]〜[21]いずれか1の口腔用組成物。
【0049】
[23]好ましくは歯磨組成物であって、かつ、成分(A)の含有量が0.005質量%以上1質量%以下であり、成分(B)の含有量が2質量%以上40質量%以下であり、成分(D)の含有量が25質量%を超え70質量%以下であり、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が5以上3000以下であり、かつ成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が0.01×10-2以上3×10-2以下であることが好ましい[1]〜[15]いずれか1の口腔用組成物。
[24]好ましくは歯磨組成物であり、かつ、成分(A)の含有量は、0.005質量%以上であって、好ましくは0.01質量%以上であり、1質量%以下であり、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である上記[1]〜[15]及び[23]いずれか1の口腔用組成物。
[25]好ましくは歯磨組成物であり、かつ、成分(B)の含有量は、2質量%以上であって、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、40質量%以下であって、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である上記[1]〜[15]及び[23]〜[24]いずれか1の口腔用組成物。
[26]好ましくは歯磨組成物であり、かつ、成分(B)と成分(A)の質量比(B/A)は、5以上であって、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上であり、好ましくは3000以下であり、より好ましくは2000以下であり、さらに好ましくは1000以下である上記[1]〜[15]及び[23]〜[25]いずれか1の口腔用組成物。
【0050】
[27]好ましくは歯磨組成物であり、かつ、成分(C)と成分(A)の質量比(C)/(A)は、好ましくは0.01〜100であり、より好ましくは0.05〜50であり、さらに好ましくは0.05〜10であり、殊更に好ましくは0.1〜5である上記[1]〜[15]及び[23]〜[26]いずれか1の口腔用組成物。
[28]好ましくは歯磨組成物であり、かつ、成分(D)の含有量は、25質量%を超え、好ましくは26質量%以上であり、より好ましくは27質量%以上であり、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である上記[1]〜[15]及び[23]〜[27]いずれか1の口腔用組成物。
[29]好ましくは歯磨組成物であり、かつ、成分(A)と成分(D)の質量比(A)/(D)が、好ましくは0.01×10-2以上であり、より好ましくは0.02×10-2以上であり、好ましくは3×10-2以下であり、より好ましくは2×10-2以下であり、さらに好ましくは1.5×10-2以下である上記[1]〜[15]及び[23]〜[28]いずれか1の口腔用組成物。
[30]好ましくは歯磨組成物であり、成分(E)の含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上である上記[29]の口腔用組成物。
【0051】
[31]成分(A)及び成分(B)を有効成分とする、歯牙へのフッ素取り込み量促進剤である上記[1]〜[30]いずれか1の口腔用組成物。
[32]歯牙へのフッ素取り込み量を促進するために用いられる上記[1]〜[30]いずれか1の口腔用組成物。
[33]歯牙へのフッ素取り込み量を促進するための上記[1]〜[30]いずれか1の口腔用組成物の使用。
[34]歯牙へのフッ素取り込み量を促進する口腔用組成物の製造のための上記[1]〜[30]いずれか1の口腔用組成物の使用。
[35]上記[1]〜[30]いずれか1の口腔用組成物を歯牙に適用する歯牙へのフッ素取り込み量を促進する方法。
【実施例1】
【0052】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0053】
表1に示す含有量で各成分を混合して、実施例1〜11及び比較例1〜2の液体口腔用組成物を調製した。また、表2に示す含有量で各成分を混合して、実施例12〜21及び比較例3〜6の歯磨組成物を調製した。さらに、表3に示す含有量で各成分を混合して、実施例22〜31及び比較例7〜15の液体口腔用組成物を調製した。
次いで、得られた口腔用組成物を用い、以下の方法にしたがって、フッ素取り込み量(μg/cm2)を測定した。
結果を表1〜3に示す。
【0054】
《フッ素取り込み量の測定》
実施例1〜11、22〜31及び比較例1〜2、7〜15の液体口腔用組成物10mLにHAPペレット(APP−100 HOYA社製)10mm×10mm×2mmを浸漬して3分間放置した後、イオン交換水で組成物を洗浄してペレットを乾燥させた。乾燥後のペレットを1Nの塩酸1mLに30秒間浸漬することでフッ化物イオンの抽出を行い、抽出後の塩酸に1molクエン酸3ナトリウム水溶液2mLを添加して中和した。中和した後の水溶液に3mLのイオン強度調整剤(TISABII サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を加えた後、フッ素複合電極(9609BNWP サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を挿入し、イオンアナライザー(Expandable ionAnalyzer EA 940(ORION社製))を使用して抽出されたフッ素量(μg/cm2)を定量した。定量したフッ素量が、HAPペレットに吸着したフッ素量に相当する。
また、実施例12〜21及び比較例3〜6の歯磨組成物は、歯磨組成物10gにHAPペレット(APP−100 HOYA社製)10mm×10mm×2mmを浸漬した以外、上記液体口腔用組成物と同様にして、フッ素量(μg/cm2)を定量した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表1、3に示すように、糖アルコール(B)を含有しない比較例1、7〜13及びN−アシル酸性アミノ酸又はその塩(A)を含有しない比較例2、7、14〜15に比して、実施例1〜11、22〜31の液体口腔用組成物は、効果的に歯へのフッ素取り込み量を増大させるものであることがわかる。
また、表2に示すように、塩化ナトリウムの含有量が3質量%を超える比較例3、N−アシル酸性アミノ酸又はその塩(A)を含有しない比較例4、及び糖アルコール(B)を含有しない比較例5、水(D)の含有量の少ない比較例6に比して、実施例10〜18の歯磨組成物は、効果的に歯へのフッ素取り込み量を増大させるものであることがわかる。