【実施例】
【0033】
図1は、本実施例に係る航空機の通信システムの概念的な構成を示す概念構成図である。航空機には、複数の機器5が搭載されており、通信システム1は、航空機に搭載される各機器5間の通信を行うものである。通信システム1は、航空機の安全な飛行を実現するべく、冗長化された構成となっている。先ず、
図1を参照して、航空機の通信システム1の概念的な構成について説明する。
【0034】
通信システム1は、複数の機器5に対応して設けられる複数の通信処理部11と、各通信処理部11間を接続する複数の通信系統12とを備えている。通信システム1は、複数の通信系統12を介して、通信処理部11から他の通信処理部11へ向けて通信データDを送受信しており、各通信処理部11間において双方向通信が可能な構成となっている。このように、通信システム1は、マスターサーバを設けないマスターレスの簡易な構成となっている。このため、マスターサーバの故障分析が不要な構成になる。
【0035】
ここで、
図1に示すように、航空機に搭載される複数の機器5は、冗長度が異なる構成となっている。具体的に、4つの機器5a,5b,5c,5dのうち、左上に示す機器5aと左下に示す機器5bは、3重冗長となるように冗長度が設定されており、右上に示す機器5cと右下に示す機器5dは、2重冗長となるように冗長度が設定されている。
【0036】
複数の通信処理部11は、対応する複数の機器5にそれぞれ接続されており、接続される機器5の冗長度に対応した冗長度となっている。ここで、複数の通信処理部11は、4つの機器5a,5b,5c,5dに対応して4つ設けられている。機器5aに対応する通信処理部11aは、3重冗長が可能な構成、つまり、3つの通信系統12が接続可能な構成となっている。同様に、機器5bに対応する通信処理部11bも、3重冗長が可能な構成、つまり、3つの通信系統12が接続可能な構成となっている。一方で、機器5cに対応する通信処理部11cは、2重冗長が可能な構成、つまり、2つの通信系統12が接続可能な構成となっている。同様に、機器5dに対応する通信処理部11dも、2重冗長が可能な構成、つまり、2つの通信系統12が接続可能な構成となっている。
【0037】
各通信処理部11は、接続される複数の通信系統12へ向けて送信する複数の通信データDを生成するための処理を行っている。また、各通信処理部11は、接続される複数の通信系統12から受信した複数の通信データDを処理している。なお、
図1において、この通信処理部11は、機器5に接続される別体の構成となっているが、機器5の内部に設ける構成であってもよい。つまり、通信処理部11は、機器5に接続される通信機器の内部に設けられていてもよいし、機器5の内部に設けられる処理部を通信処理部11として機能させてもよい。
【0038】
複数の通信系統12は、通信システム1における冗長度に応じて設けられている。つまり、複数の通信系統12は、通信システム1において最大となる冗長度、本実施例では、最大となる3重冗長に応じて、3つ設けられている。各通信系統12は、複数の通信処理部11をそれぞれ接続している。具体的に、通信処理部11a及び通信処理部11bには、3つの通信系統12a,12b,12cのうち、全ての通信系統12a,12b,12cが接続される。一方で、通信処理部11c及び通信処理部11dには、3つの通信系統12a,12b,12cのうち、いずれか2つの通信系統12が接続される。換言すれば、通信系統12bは、4つの通信処理部11a,11b,11c,11dにそれぞれ接続されている。また、通信系統12aは、4つの通信処理部11a,11b,11c,11dのうち、3つの通信処理部11a,11b,11dにそれぞれ接続されている。さらに、通信系統12cは、4つの通信処理部11a,11b,11c,11dのうち、3つの通信処理部11a,11b,11cにそれぞれ接続されている。なお、複数の通信系統12は、主(メイン)及び副(サブ)等の優先度を特に設定していないが、適宜設定してもよい。
【0039】
従って、上記の通信システム1において、通信処理部11は、接続される複数の通信系統12を介して、他の通信処理部11から送信された複数の通信データDを受信することが可能となる。また、通信処理部11は、接続される複数の通信系統12を介して、複数の通信データDを、他の通信処理部11へ向けて送信することが可能となる。このように通信システム1は、各通信処理部11間で双方向通信を行っている。
【0040】
次に、
図2を参照して、通信システム1において用いられる通信データDについて説明する。
図2は、通信データのフレームフォーマットに関する説明図である。通信データDは、少なくとも後述する機器状態データD1及びデータリンク層(2層)を含むフレームフォーマットとなっている。なお、通信データDは、ネットワーク層(3層)及びトランスポート層(4層)を含んでいてもよい。この通信データDは、データフィールドF1と、データフィールドF1のヘッダー側のフィールドF2と、データフィールドF1のフッター側のフィールドF3とを含んでいる。
【0041】
データフィールドF1には、機器状態データD1が格納されている。機器状態データD1は、通信処理部11に接続されている機器5から送信される、機器5の状態に関するデータとなっており、複数の通信処理部11において共有されるデータとなっている。
【0042】
フィールドF2には、識別情報として、通信規格を識別するための規格識別子D2、通信データDの種類を識別するためのデータ種類識別子D3、送信元となる機器5を識別するための送信元機器識別子D4が格納されている。また、フィールドF2には、通信データDの順番に関する情報であるシーケンス番号D5、予め指定される生存期間D6等が格納されている。なお、本実施例において、生存期間D6は、通信データDに含まれているが、後述する受信用設定データTに格納してもよい。
【0043】
フィールドF3には、通信データDが欠損しているか否かをチェックするための誤り検出符号D7が格納されている。誤り検出符号D7としては、例えば、FCSである。
【0044】
なお、フィールドF2及びフィールドF3には、ネットワーク層(3層)及びトランスポート層(4層)に関する情報を含んでいてもよい。また、フィールドF2及びフィールドF3に格納される情報は、上記した情報に限らない。例えば、識別情報として、通信系統12を識別するための通信系統識別子D8(点線部)を含んでいてもよい。また、識別情報として、変数となるフラグ及び通信データDのステータス等を含んでいてもよい。
【0045】
ここで、上記したように、通信処理部11は、接続される複数の通信系統12を介して、複数の通信データDを、他の通信処理部11へ向けて送信している。また、他の通信処理部11は、接続される複数の通信系統12を介して、通信処理部11から送信された複数の通信データDを受信している。つまり、通信システム1は、通信処理部11が出版側となり、他の通信処理部11が購読側となる、出版・購読型の通信規格となっている。
【0046】
規格識別子D2は、「Protocol Identification」で表され、通信規格を識別するための識別子が設定されており、具体的には、出版・購読型の通信規格に関する識別子が設定されている。データ種類識別子D3は、「Frame Type」で表され、機器5の種類に応じた識別子が設定されている。例えば、機器5が速度計であれば、通信データDの種類は速度データであるため、データ種類識別子D3は、速度データを識別する識別子が設定される。送信元機器識別子D4は、「Source ID」で表され、機器5の固有のIDとなっている。シーケンス番号D5は、「Sequence Num」で表され、通信データDの送信毎にカウントアップされる。生存期間D6は、「Limit of Period」で表され、予め指定された生存期間D6が経過すると、通信データDが破棄される。誤り検出符号D7は、「FCS」で表され、データの破壊及び欠損等の誤りを検出するための符号となっている。
【0047】
次に、通信システム1における通信処理部11の通信処理について説明する。出版・購読型の通信システム1では、通信データDが非同期で送受信されている。そして、各通信処理部11は、送信側(出版側)及び受信側(購読側)として適宜機能する。通信処理部11は、複数の通信系統12へ向けて複数の通信データDを送信する送信側として機能する場合、
図2に示す通信データDを、接続される複数の通信系統12に応じて複数生成している。そして、通信処理部11は、生成した複数の通信データDを複数の通信系統12に送信している。
【0048】
一方で、通信処理部11は、複数の通信系統12から複数の通信データDを受信する受信側として機能する場合、受信した複数の通信データDの取得の要否を判定して、所定の通信データDを取得する。そして、通信処理部11は、取得した所定の通信データDを所定の更新周期毎に更新しながら保存する。なお、保存された通信データDは、各機器5の要求に応じて送信される。
【0049】
ここで、先ず、通信処理部11が送信側として機能するときの通信処理(送信処理)について説明する。通信処理部11には、接続される機器5から機器状態データD1を含む所定のデータが送信される。通信処理部11は、接続される機器5から機器状態データD1を含む所定のデータを取得すると、当該データに含まれる機器状態データD1をデータフィールドF1に格納すると共に、フィールドF2及びフィールドF3に上記した所定の情報を付すことで、
図2に示す通信データDを生成する。このとき、通信処理部11は、接続されている複数の通信系統12に応じて、複数の通信データDを生成する。そして、通信処理部11は、生成した複数の通信データDを、複数の通信系統12のそれぞれへ向けて送信する。通信処理部11は、このような送信処理を、所定の周期毎に繰り返し行う。
【0050】
次に、通信処理部11が受信側として機能するときの通信処理(受信処理)について説明する。通信処理部11には、接続される複数の通信系統12を介して、他の通信処理部11で生成された複数の通信データDが送信される。通信処理部11は、送信される複数の通信データDの中から、所定の通信データDを取得するために、
図3に示す受信用設定データTに基づいて、通信データDを選別している。
【0051】
図3は、受信用設定データの説明図である。
図3に示すように、受信用設定データTは、複数の通信処理部11にそれぞれ格納(保存)されている。受信用設定データTは、データ種類識別子D3(Frame Type)と、送信元機器識別子D4(Source ID)と、受信パス数(Path Redundant Level)とを関連付けたテーブルとなっている。ここで、受信パス数とは、通信データDの更新周期に受信する通信データDの受信数であり、受信状態の一態様を表している。
図3に示す受信用設定データTは、例えば、データ種類識別子D3が「10」、送信元機器識別子D4が「10」、受信パス数が「3」と関連付けて設定されている。また、受信用設定データTは、例えば、データ種類識別子D3が「10」、送信元機器識別子D4が「11」、受信パス数が「1」と関連付けて設定されている。また、受信用設定データTは、例えば、データ種類識別子D3が「11」、送信元機器識別子D4が「20」、受信パス数が「2」と関連付けて設定されている。また、受信用設定データTは、例えば、データ種類識別子D3が「11」、送信元機器識別子D4が「21」、受信パス数が「1」と関連付けて設定されている。
【0052】
ここで、
図4及び
図5を参照して、通信処理部11の受信処理に関する制御動作について説明する。
図4は、本実施例に係る航空機の通信方法に関する一例のフローチャートである。
図5は、本実施例に係る航空機の通信方法に関する一例のフローチャートである。
【0053】
先ず、通信処理部11は、通信データDを受信する(ステップS1:受信工程)。通信処理部11は、ステップS1の後、受信した通信データDに含まれる誤り検出符号D7に基づいて、通信データDが破壊されているか否かを判定する(ステップS2)。通信処理部11は、通信データDが破壊されていないと判定すると、異常がない(ステップS3:Yes)として、ステップS4に進む。一方で、通信処理部11は、通信データDが破壊されていると判定すると、異常がある(ステップS3:No)として、後述するステップS11に進む。
【0054】
通信処理部11は、ステップS3において異常がないと判定すると、通信データDのフレームフォーマットに、ネットワーク層(3層)及びトランスポート層(4層)に関する情報が含まれているか否かを判定する(ステップS4)。通信処理部11は、通信データDに3層及び4層に関する情報が含まれていないと判定する(ステップS4:Yes)と、ステップS6に進む。一方で、通信処理部11は、通信データDに3層及び4層に関する情報が含まれていると判定する(ステップS4:No)と、3層及び4層に関する処理を実行し(ステップS5)、この後、ステップS6に進む。
【0055】
続いて、通信処理部11は、通信データDに含まれる規格識別子D2に基づいて、通信データDが本規格であるか否かを判定する(ステップS6)。通信処理部11は、通信データDが本規格であると判定した場合(ステップS6:Yes)、通信データDに含まれるデータ種類識別子D3に基づいて、受信用設定データTにおいて設定された通信データDの種類であるか否かを判定する(ステップS8)。一方で、通信処理部11は、通信データDが本規格でないと判定した場合(ステップS6:No)、他の通信規格の処理を行った後(ステップS7)、ステップS11に進む。
【0056】
通信処理部11は、ステップS8において、通信データDが所定の種類であると判定する(ステップS8:Yes)と、通信データDを管理する管理テーブルの更新処理を実行する(ステップS9)。なお、ステップS9の管理テーブルの更新処理については後述する。一方で、通信処理部11は、ステップS8において、通信データDが所定の種類でないと判定する(ステップS8:No)と、ステップS11に進む。
【0057】
通信処理部11は、ステップS9において、更新処理が実行されると、所定の通信データDを取得し保存して(ステップS10:データ取得工程)、受信処理を終了する。一方で、通信処理部11は、ステップS11に進むと、受信した通信データDを保存せずに、受信処理を終了する。そして、通信処理部11は、このような受信処理を、通信データDの更新周期毎に繰り返し行う。なお、保存されなかった通信データDは、生存期間D6を経過すると破棄される。
【0058】
このように、受信処理は、ステップS1において、通信データDを受信し(受信工程)、ステップS2〜S9において、通信データDの取得の要否を判定し(取得判定工程)、ステップS10において、取得すると判定した所定の通信データDを取得する(データ取得工程)。
【0059】
続いて、
図5を参照して、ステップS9における、通信データDの管理テーブルの更新処理について説明する。ここで、更新処理に用いられる管理テーブルは、通信処理部11に格納されている。この管理テーブルでは、通信データDの受信パス数、シーケンス番号D5及び生存期間D6が管理(登録保存)されている。通信処理部11は、ステップS8において、通信データDが所定の種類であると判定する(ステップS8:Yes)と、受信した通信データDのシーケンス番号(ここではNとする)が、管理テーブルに登録されているシーケンス番号(ここではnとする)に次数(ここでは1とする)を加えたシーケンス番号と同じであるか、つまり、N=n+1であるか否かを判定する(ステップS21)。
【0060】
通信処理部11は、ステップS21において、N=n+1であると判定する(ステップS21:Yes)と、管理テーブルに登録されている受信パス数(実受信パス数)が、受信用設定データで設定された受信パス数(設定受信パス数)以上となっているか否かを判定する(ステップS22)。通信処理部11は、管理テーブルに登録されている受信パス数が、設定受信パス数以上となっていると判定する(ステップS22:Yes)と、管理テーブルを更新する(ステップS23)。つまり、通信処理部11は、管理テーブルにおいて、登録されたシーケンス番号nを受信した通信データDのシーケンス番号Nに更新し、登録された受信パス数をリセットし、登録された生存期間D6をリセットする。一方で、通信処理部11は、管理テーブルに登録されている受信パス数が、設定受信パス数未満となっていると判定する(ステップS22:No)と、通信データDに欠落があると判定して欠落エラーを記録した(ステップS24)後、ステップS23に進む。なお、ステップS24の実行時において、通信処理部11は、複数の通信系統12のうち、いずれかの通信系統12に異常があることを検出している。そして、通信処理部11は、ステップS23における管理テーブルの更新処理が終了すると、ステップS10に進む。このように、通信処理部11は、受信した通信データDに含まれるシーケンス番号に基づいて、以前に受信した通信データDよりも新しいか否かを判定し、新しいと判定した通信データDを取得している。
【0061】
一方で、通信処理部11は、ステップS21において、N=n+1でないと判定する(ステップS21:No)と、N≦n−1であるか否かを判定する(ステップS25)。通信処理部11は、N≦n−1であると判定する(ステップS25:Yes)と、通信データDが遅延していると判定して遅延エラーを記録した(ステップS26)後、ステップS11に進む。
【0062】
通信処理部11は、ステップS25において、N≦n−1でないと判定する(ステップS25:No)と、N=nであるか否かを判定する(ステップS27)。通信処理部11は、N=nであると判定する(ステップS27:Yes)と、同じシーケンス番号の通信データDを受信したとして、管理テーブルの受信パス数をカウントアップして更新する(ステップS28)。通信処理部11は、ステップS28の後、ステップS11に進む。このように、通信処理部11は、同じシーケンス番号の通信データDを複数受信したときは、最初に受信した通信データDを保存する一方で、後に受信した通信データDを受信パス数の更新に用いる。このため、通信処理部11は、同じシーケンス番号の通信データDを複数受信したときは、最初に受信したものを通信データDとして取得する。
【0063】
通信処理部11は、ステップS27において、N=nでないと判定する(ステップS27:No)と、N>n+1であるか否かを判定する(ステップS29)。通信処理部11は、N>n+1であると判定する(ステップS29:Yes)と、通信データDに欠落があると判定して欠落エラーを記録した(ステップS30)後、ステップS23に進む。つまり、通信処理部11は、シーケンス番号が欠落していたとしても、最新のシーケンス番号の通信データDを管理テーブルに保存する。なお、通信処理部11は、N>n+1でないと判定した場合(ステップS29:No)、ステップS11に進む。
【0064】
次に、
図6を参照して、通信処理部11の異常検出処理に関する制御動作について説明する。
図6は、本実施例に係る航空機の通信方法に関する一例のフローチャートである。異常検出処理は、複数の通信系統12に異常があるか否かを判定する処理である。なお、通信処理部11は、複数の通信系統12の中から異常がある通信系統12を特定する場合には、通信データDに、通信系統12に対応する識別子である通信系統識別子D8を付すことが好ましい。
【0065】
通信処理部11は、受信処理において、エラー判定された通信データDがあるか否かを判定する(ステップS41)。エラー判定としては、上記した欠落エラー及び遅延エラー等がある。通信処理部11は、エラー判定された通信データDがあると判定する(ステップS41:Yes)と、通信データDに付された通信系統識別子D8に基づいて、通信系統12を特定する(ステップS42)。通信処理部11は、ステップS42において、通信系統12を特定すると、所定の通信系統12が異常であると検出した後(ステップS43)、異常検出処理を終了する。一方で、通信処理部11は、エラー判定された通信データDがないと判定する(ステップS41:No)と、異常検出処理を終了する。そして、通信処理部11は、異常検出処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0066】
次に、通信処理部11に接続される機器5の異常検出処理に関する制御動作について説明する。機器5は、通信処理部11において所定の周期毎に更新される通信データDを通信処理部11から取得すべく、通信処理部11に対して所定の周期毎に通信データDの送信要求を行っている。ここで、機器5は、通信データDに含まれる生存期間D6内に、通信データDを取得できない場合、異常であることを検出する。つまり、通信データDは、予め指定された生存期間D6が経過すると破棄されることから、機器5は、破棄された通信データDを取得できず、この場合、通信処理部11または複数の通信系統12に異常があるとして、異常を検出する。
【0067】
次に、
図7及び
図8を参照して、上記の通信システム1を航空機100に適用した一例について説明する。
図7は、本実施例に係る通信システムを適用した航空機の一例に関する構成図である。航空機100は、動翼として、主翼に設けられるマルチファンクションスポイラーMFS、主翼に設けられるグランドスポイラーGS、補助翼111、昇降舵112、方向舵113等を備えている。また、航空機100には、複数の機器5が搭載されており、複数の機器5として、上記した各種の動翼を駆動するための複数のアクチュエータ102、複数のアクチュエータ102を制御するための主飛行制御装置(PFCC:Primary Flight Control Computer)101、及びインターフェースモジュールIM等が設けられている。
【0068】
このような航空機100において、通信システム1は、複数のアクチュエータ102にそれぞれ接続される複数の通信処理部11と、各通信処理部11間を接続する通信系統としての3つの基幹バスレーン12a,12b,12cとを備えている。
【0069】
主飛行制御装置101は、3つ設けられており、3つの主飛行制御装置101a,101b,101cは、3つの基幹バスレーン12a,12b,12cにそれぞれ接続されている。なお、3つの主飛行制御装置101a,101b,101cは、その内部に通信処理部11として機能する処理部が設けられている。
【0070】
また、3つの基幹バスレーン12a,12b,12cには、複数の通信処理部11がそれぞれ接続されている。このとき、隣接する通信処理部11には、異なる基幹バスレーン12a,12b,12cが接続され、また、隣接する通信処理部11は、バスレーン105によりそれぞれ接続されている。このため、通信処理部11は、基幹バスレーン12a,12b,12cと、隣接する他の通信処理部11に接続したバスレーン105とを介して、通信データDが送受信されることから、2重冗長の構成とすることができる。このように、基幹バスレーン12及びバスレーン105を含む通信系統を、上記のように構成することで、通信系統の配線を削減することが可能となる。
【0071】
次に、
図8を参照して、通信処理部11について説明する。
図8は、本実施例に係る通信システムの通信機器の模式図である。この航空機100に設けられる通信処理部11は、機器5と別体となる通信機器200に設けられている。通信機器200は、内部に設けられる通信処理部11と、複数の送受信ポート(送受信部)201と、機器接続ポート202とを有している。複数の送受信ポート201は、基幹バスレーン12a,12b,12c及びバスレーン105に接続される。機器接続ポート202は、アクチュエータ102等の機器5に接続される。このため、通信システム1は、機器5と通信機器200との間で物理的に切り離すことが可能な構成となっている。
【0072】
以上のように、本実施例の構成によれば、通信処理部11は、通信データDに含まれる各種識別子D2,D3,D4,D8に基づいて、受信した複数の通信データDのうち、必要な通信データDを取得することができる。このとき、各通信処理部11間を複数の通信系統12で冗長化しており、また、複数の通信データDの中から信頼性の高い通信データDを取得することで、通信データDの信頼性を確保することができる。また、機器5に設定された冗長度に応じて通信系統12を適宜設けると共に、通信系統12と通信処理部11とを適宜接続すればよいことから、機器5側に影響を与えることなく、設定された冗長度に容易に対応することが可能となる。
【0073】
また、本実施例の構成によれば、通信処理部11は、新しい通信データDを取得することができる。このため、通信処理部11は、取得した新しい通信データDを機器5に送信可能となるため、機器5は、通信データDに基づく制御を遅滞なく実行することが可能となる。
【0074】
また、本実施例の構成によれば、通信処理部11は、新しいと判定した複数の通信データDのうち、最初に受信した通信データDを取得することができる。このため、通信処理部11は、最初に受信した通信データDを機器5に送信することができるため、機器5は、通信データDに基づく制御をより迅速に実行することが可能となる。なお、本実施例において、通信処理部11は、同じシーケンス番号の通信データDを複数受信したときは、最初に受信したものを通信データDとして取得したが、この構成に限定されない。例えば、通信処理部11は、同じシーケンス番号の通信データDを複数受信したときは、複数の通信データDのうち、一致するものを通信データDとして取得してもよい。
【0075】
また、本実施例の構成によれば、通信処理部11は、通信データDに基づいて、通信系統12の異常を検出することができる。このため、異常であるとされた通信系統12に対して、適切な対策を迅速に施すことができる。なお、本実施例では、通信データDに含まれる通信系統識別子D8に基づいて、通信系統12の異常を検出したが、この構成に限定されない。例えば、受信用設定データTに通信系統識別子D8を格納し、通信処理部11は、受信用設定データTに格納される通信系統識別子D8に基づいて、通信系統12の異常を検出してもよい。
【0076】
また、本実施例の構成によれば、通信処理部11は、設定受信パス数と、実受信パス数とが相違する場合、異常であると検出することができる。つまり、通信処理部11は、実受信パス数が設定受信パス数よりも少ない場合に、複数の通信系統12のいずれかに異常があることを検出することができる。このため、通信システムの異常に対して、適切な対策を迅速に施すことができる。また、通信系統識別子D8を付す場合に比して、異常検出処理を簡易なものにできるため、異常検出処理に関する制御負荷の増大を抑制することができる。
【0077】
また、本実施例の構成によれば、通信処理部11は、破壊されていない通信データDを取得することができる。このため、通信処理部11は、取得した破壊されていない通信データDを機器5に送信することで、機器5は、通信データDに基づく制御を精度良く実行することが可能となる。
【0078】
また、本実施例の構成によれば、通信処理部11は、複数の通信系統12へ向けて、複数の通信データDを送信することができる。このため、通信処理部11は、対応する機器5の機器状態データD1を、他の通信処理部11に送信することができる。
【0079】
また、本実施例の構成によれば、機器5は、生存期間D6内に、新たな通信データDを取得していない場合、異常を検出することができる。このため、通信システムの異常に対して、適切な対策を迅速に施すことができる。なお、本実施例では、予め指定された生存期間D6内に、機器5が通信データDを取得できない場合に、異常を検出したが、この構成に限定されず、通信処理部11が異常を検出してもよい。つまり、通信処理部11は、通信データDに含まれる生存期間D6内に、通信データDの受信がない場合、異常であることを検出してもよい。
【0080】
また、本実施例の構成によれば、機器5と通信処理部11とを別体にすることができるため、機器5の構成と通信システム1の構成とを明確に切り分けることができる。また、通信処理部11の専用となる通信機器200として構成することができるため、通信の処理速度の向上を図ることが可能となる。
【0081】
なお、機器5の内部に設けられる処理部を、通信処理部11として機能させてもよい。つまり、通信処理部11として機能させることが可能なソフトウェア(いわゆるミドルウェア)を、機器5の処理部に実行させることで、処理部を通信処理部11として実現してもよい。
【0082】
また、本実施例の構成によれば、受信工程において、通信処理部11は、複数の通信データDを受信することができ、取得判定工程において、通信処理部11は、各通信データDの取得の要否を判定することができ、データ取得工程において、必要な通信データDを取得することができる。
【0083】
なお、本実施例では、航空機の通信システム1として適用したが、多重冗長化となる通信システムであれば、航空機以外のものに適用してもよく、特に限定されない。また、本実施例における複数の通信系統12は、有線であっても、無線であってもよく、特に限定されない。