特許第6155045号(P6155045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155045
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】セルロース繊維わたの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/067 20120101AFI20170619BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20170619BHJP
   D02G 3/02 20060101ALI20170619BHJP
   D04H 1/02 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   D04H1/067
   D06M15/643
   D02G3/02
   D04H1/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-28798(P2013-28798)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-43665(P2014-43665A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-168531(P2012-168531)
(32)【優先日】2012年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中川 政則
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−001830(JP,A)
【文献】 特開2006−233400(JP,A)
【文献】 特開2013−234408(JP,A)
【文献】 特開昭56−148974(JP,A)
【文献】 特開平09−316333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D02G 3/00−3/48
D06M 15/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料セルロース繊維わたを、数平均分子量8,000〜200,000の超分子化アミノ変性シリコーンを0.1〜5.5重量%の濃度で含有する20〜40℃の水溶液に浸漬処理した後、脱水処理し、次いで80〜120℃で熱処理を施す工程を含む、洗濯前のSi強度(SiO3で測定し、換算したもの)が1.5以上であり、下記式
洗濯後のSi強度保持率(%)=(洗濯30回後のSi強度/洗濯前のSi強度)×100
で示される洗濯後のSi強度保持率が60%以上であるセルロース繊維わたの製造方法
【請求項2】
セルロース繊維が再生セルロース繊維である請求項1に記載の方法
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法により製造したセルロース繊維わた紡績する工程を含む、紡績糸の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返し洗濯等による風合い硬化を抑制するセルロース繊維わた及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肌着に代表される直接肌に触れることの多い織編物は、汗処理機能や衛生面等の観点から、吸水性及び吸湿性の高い綿、麻等の天然セルロース繊維、キュプラ、ビスコースレーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維およびテンセル、リヨセル等の精製セルロース繊維が多用されている。
【0003】
これらのセルロース繊維を用いて構成される織編物は、繰り返し洗濯等による湿潤と乾燥によって、織編物が伸縮と収縮を繰り返して形態変化を生じ、これにより著しい風合い硬化や生地の損傷を誘発するため、商品性を低下させることが多々ある。
【0004】
従来、セルロース繊維の柔軟性を向上する方法として、シルクプロテイン、コラーゲン、スクワラン等の柔軟剤成分を含有する処理剤によって柔軟処理を施すことがある。該処理による柔軟効果も繰り返し洗濯による低下が著しいため、洗濯に耐えうる風合い改善のための処理方法が求められている。
【0005】
これらの問題を解決するための方法として、例えば、ジアルキルジメチル四級アンモニウム塩や脂肪酸アミド等に代表されるカチオン系柔軟剤を付与する方法が挙げられる。かかる方法は、織編物を構成する繊維表面を平滑化させ、摩擦係数を低下させることにより柔軟性を付与することを目指したものである。しかしながら、洗濯による処理剤の脱落が大きく、繰り返し洗濯による風合い硬化は避けられないものである。
【0006】
又、下記特許文献1には、セルロース繊維表面に水溶性又は水分散性の高分子にてフィルムを形成させ、風合いを損なわず水に対する寸法安定性を高める技術が提案されている。また、下記特許文献2には、グリオキザール系樹脂による樹脂加工なども提案されている。しかしながら、肌着に代表される丸編物は小寸で丸仕上げのため、これらの処理に必要な150℃以上の熱処理(セット)は設備上困難であり、繰り返し洗濯による風合い硬化を抑制することは困難である。
【0007】
更に、下記特許文献3には、特別な樹脂加工を施すことなく、耐久性のある優れた防縮性をセルロース系繊維含有構造物に付与するために、セルロース系繊維含有構造物を液体アンモニア処理した後、酸処理することを特徴とするセルロース系繊維含有構造物の防縮加工方法も提案されている。しかし、この方法では、−33℃以下で液体アンモニア処理するための特別な設備が必要であると共に、特に再生セルロース繊維を用いた丸編地の場合に、セルロース繊維が膠着し易く、風合いが硬化しやすい問題がある。
【0008】
また、耐久性のある消臭機能付与については、例えば、布帛製品自体を光触媒含有処理液に浸漬して加工処理する方法が特許文献4に開示されている。又、特許文献5には、消臭剤および光触媒を付着させることにより、洗濯耐久性に優れ、ノネナールの消臭に有効な繊維構造物が得られることが開示されている。しかしながら、これらの方法は、繊維構造物への付与にアクリル樹脂等のバインダーを使用して付着させていることで、風合いが粗硬になる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭62−12347号公報
【特許文献2】特開平3−51368号公報
【特許文献3】特開平11−200241号公報
【特許文献4】特開2007−126764号公報
【特許文献5】特許第4092554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述の状況に鑑みて、繰り返し洗濯などによる風合い硬化が抑制されたセルロース繊維わた及びそれを得るための処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、風合い硬化の原因が、繰り返し洗濯による湿潤と乾燥において織編物が伸縮と収縮を繰り返して形態変化を生じること、特に織編物を構成する繊維の単糸膠着が生じることであること、更に使用される柔軟剤の洗濯での脱落であることが判った。
【0012】
上述の原因は、セルロースフィラメント及びステープルを用いた織編物に発生する共通の問題である。また、セルロースステープルは、原綿状態で人工のクリンプを付与して、紡績糸を製造するが、この場合、再生セルロース繊維のクリンプは、綿などの天然セルロース繊維のクリンプと比較するとクリンプの形態保持が不十分であるため、再生セルロースステープルは、紡績糸での膨らみ感が不足したり、糸や織編物での染色において膨らみ感が不足したり、繰り返し洗濯による湿潤と乾燥において織編物が伸縮と収縮を繰り返して膨らみ感が不足する等して、セルロース繊維が膠着し易く、風合いが硬化しやすい問題が天然セルロース繊維と比較して大きい。
【0013】
かかる発見に基づき、セルロース原綿(以下、わたと称する)のクリンプ形態を維持するために鋭意検討した結果、比較的低温で熱セット可能な処理方法に注目し、処理剤及び処理方法を最適化して、特定のSi強度を有するセルロース繊維わたとすることにより上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
【0014】
(1)原料セルロース繊維わたを、数平均分子量8,000〜200,000の超分子化アミノ変性シリコーンを0.1〜5.5重量%の濃度で含有する20〜40℃の水溶液に浸漬処理した後、脱水処理し、次いで80〜120℃で熱処理を施す工程を含む、洗濯前のSi強度(SiO3で測定し、換算したもの)が1.5以上であり、下記式
洗濯後のSi強度保持率(%)=(洗濯30回後のSi強度/洗濯前のSi強度)×100
で示される洗濯後のSi強度保持率が60%以上であるセルロース繊維わたの製造方法
(2)セルロース繊維が再生セルロース繊維である上記(1)に記載の方法
(3)上記(1)または(2)に記載の方法により製造したセルロース繊維わた紡績する工程を含む、紡績糸の製造方法
【発明の効果】
【0015】
本発明のセルロース繊維わたは、洗濯により発生する単糸膠着や柔軟成分の脱落が防止されることにより、風合い硬化が抑制されている。従って、本発明のセルロース繊維わたを用いて製品化された肌着等のインナー商品、ブラウスやスカート等のアウター商品、裏地、枕カバー、シーツ及び布団やケットの中綿等の寝具は、長期間に渡って繰り返される着用及び洗濯に対して優れた商品耐久性を有するものである。さらに、本発明のセルロース繊維わたは耐久性のある優れた消臭機能も有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のセルロース繊維わたは、洗濯前のSi強度(SiO3で測定し、換算したもの)が1.5以上であり、下記式で示される洗濯後のSi強度保持率が60%以上である。
洗濯後のSi強度保持率(%)=(洗濯30回後のSi強度/洗濯前のSi強度)×100
洗濯前のSi強度および洗濯後のSi強度保持率が上記範囲を満足するセルロース繊維わたは、繰り返し洗濯などによる風合い硬化が抑制され、かつ、耐久性のある優れた消臭機能を有する。
【0017】
本発明に係るセルロース繊維としては、綿、麻等の天然セルロース繊維、キュプラやビスコース法レーヨン、モダール、ポリノジック等の再生セルロース繊維及びテンセル、リヨセルなどの精製セルロース繊維等が挙げられる。中でも、再生又は精製セルロース繊維が好ましく、より好ましくは再生セルロース繊維である。
【0018】
本明細書において、原料セルロース繊維わたとは、本発明の処理を受ける前のセルロース繊維わたを指し、例えばセルロース原綿及びトウ状のセルロースフィラメントを一定の繊維長に切断したものが挙げられる。勿論、市中で入手可能なセルロース繊維わた、即ち、原綿油剤を含有しているセルロース繊維わたも含まれる。
【0019】
また、本発明のセルロース繊維わたは、原料のセルロース繊維わたが超分子化アミノ変性シリコーン化合物を含有する水溶液に浸漬処理された後、脱水処理され、次いで熱処理されることを特徴とする。
本発明のセルロース繊維わたは、そのまま布団やケットの中綿として用いられたり、糸条に紡績され、得られた糸条から織編物が作製される。
【0020】
本明細書において、「アミノ変性シリコーン」とは、シリコーンオイル、即ち、ジメチルポリシロキサンオイルのメチル基の一部を有機アミノ基で置換したものを言う。該アミノ基は、セルロースの水酸基と反応する。
【0021】
本発明に用いる超分子化アミノ変性シリコーンとは、「超分子技術」を適用して得られたアミノ変性シリコーンの「超分子物」を言う。例えば、大原パラヂウム化学(株)製のパラシリコンBS−230が挙げられる。ここでいう「超分子技術」とは、複数の分子が非共有結合(=弱い結びつき)で物理的に集合し、それまでにない機能を発現することであり、その集合体を「超分子」という。
【0022】
従来、アミノ変性シリコーンを高分子量化すると、アミノ基に架橋剤を反応させて他の分子と結合させるため、アミノ基が減少し、アミノ変性シリコーンの特性である風合い改善効果等が劣ることがあった。しかし、超分子技術によるアミノ変性シリコーンは、アミノ基を封鎖せず、ポリシロキサン骨格同士が結合され、高分子量化されているため、アミノ変性による特性を損なうことがなく、好適である。
具体的には、数平均分子量が8,000〜200,000の超分子化アミノ変性シリコーンであることが好ましい。
【0023】
次に、原料セルロース繊維わたの処理方法について詳説する。
超分子化アミノ変性シリコーン化合物を含有する浸漬処理液の該化合物の濃度は、0.1〜5.5重量%であることが好ましい。0.1重量%未満では、柔軟効果が得られにくく、5.5重量%を超えると、滑りやすく、織編物に加工した場合、縫目滑脱抵抗が低くなり、縫製部のホツレに繋がり好ましくない。更に好ましくは、0.1〜3.0重量%である。
【0024】
処理液をセルロース繊維わたに均一に浸透させるため、処理温度は20〜40℃が好ましく、さらに好ましくは30〜40℃である。浸漬時間は5〜30分が好ましく、さらに好ましくは10〜20分である。処理装置としては、オーバーマイヤー染色機などが好ましい。
【0025】
超分子化アミノ変性シリコーン化合物を含む水溶液に、原料セルロース繊維わたを浸漬処理したのち、脱水処理する。脱水処理は加圧脱水、遠心脱水及びロール脱水が好ましい態様である。なお、脱水後の含液率(ピックアップ率)は、60〜80%が好ましい。
【0026】
脱水処理に続いて熱処理を行なう。熱処理温度は80〜120℃が好ましく、更に好ましくは90〜110℃である。処理時間は30〜120分が好ましく、更に好ましくは30〜60分である。熱処理装置としては乾燥機を用いることができ、熱風方式の箱型乾燥機やパッケージ型乾燥機が好ましい。タンブラー式乾燥機は、得られたセルロース繊維わたが絡みやすく、紡績工程において繊維切断等トラブルを誘発する恐れがあるため、好ましくない。
【0027】
本発明のセルロース繊維わたへの超分子化アミノ変性シリコーン化合物の付着量は、後述する洗濯前のSi強度と洗濯後のSi強度保持率によって判定することができ、洗濯前のSi強度の好ましい範囲は1.5以上であり、さらに好ましくは2.0以上である。また、下式で計算される洗濯後のSi強度保持率は60%以上であることが好ましい。
洗濯後のSi強度保持率(%)=(洗濯30回後のSi強度/洗濯前のSi強度)×100
【0028】
本発明のセルロース繊維わたは、布団やクッションなどの中綿として、あるいは紡績して糸条として、さらに糸状から作製された製編織物として、衣料用に汎用的に使用することができる。
なお、紡績においては、一般繊維にて用いられている紡績方法を使用することができる。
【0029】
本発明のセルロース繊維わたと他の繊維との混用方法としては、混紡、セルロース系繊維と他の繊維との複合糸を用いる方法及び交編織する方法が挙げられる。又、インターレース加工、流体撹乱加工、カバリング、撚糸等による複合糸を形成してもよい。
【0030】
本発明で得られるセルロース繊維わた並びにこのわたから得られた糸状及び編織物においては、必要に応じて通常の精練、漂白及び染色処理が行われる。
編織物の精練、漂白及び染色のために使用する処理機としては、一般に使用されるウインス染色機や液流染色機、連続精練機が好ましい。染色には、ウインス染色機、液流染色機等を使用することが好ましく、必要に応じてソーピングを施してもよい。乾燥には、一般に使用される乾燥機を用いることができるが、テンションレスのネット型乾燥機が好ましい。
なお、本明細書中、「洗濯と乾燥とを30回繰り返した後」とは、JIS−L−1027−103法に準じて洗濯と乾燥とを繰り返し30回行った後を意味する。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。まず、本発明における評価方法について説明する。
(1)JTETC消臭性区分消臭試験
酢酸およびイソ吉草酸の2成分を用いて消臭試験を行い、下記の方法により消臭性能を評価した。
<消臭性能評価>
JTETCが定める消臭加工繊維製品認証基準に従い、上記2成分について機器分析による消臭試験を行った。機器分析試験は、容器に臭気成分とサンプルを入れ、2時間放置後の臭気成分の残留濃度(2時間後の試料試験濃度)を測定した。臭気成分のみを入れた容器の残留濃度を空試験濃度として、下記式により、臭気成分の減少率を計算した。
減少率(%)=[(2時間後の空試験濃度−2時間後の試料試験濃度)/(2時間後の空試験濃度)]×100
なお、酢酸は検知管法により、イソ吉草酸はガスクロマトグラフィー法により測定した。
判定:酢酸の減少率80%以上、イソ吉草酸の減少率85%以上の条件を全て満足する場合を合格「○」と判定し、それ以外を不合格「×」と判定した。
【0032】
(2)風合い(洗濯前のやわらかさ、洗濯後のやわらかさ)の評価方法
以下の洗濯方法に従う洗濯前後の編織物について、10名の被験者により、以下の5段階の評価基準に従って得られた編織物の風合いを評価し、平均値を導出した。
5:とても柔らかい。
4:やや柔らかい。
3:どちらでもない。
2:やや硬い。
1:とても硬い。
評価には、編織物を20℃×65%RHの環境下にて調湿したものを用いた。
【0033】
(3)洗濯方法
JIS−L−1027 103法に準じ、洗濯と乾燥とを繰り返し30回行った。
(4)Si強度の検出方法
蛍光X線分析装置RIX3001((株)リガク社製)を用いて、Si元素強度(SiO3で測定し、換算)を測定した。
測定条件:8SCN 2θスキャン、3OHMTL 30mm
【0034】
(5)染色物のK/S値の測定方法
マクベス分光光度計MS−2020型を用いて、試料の視感染色濃度を測定する。具体的には、試料5cm×5cmを分光光度計の所定の場所に挟み、波長範囲400〜700nmの各K/S値を測定する。最大吸収波長でのK/S値を用いて視感染色濃度を推定する。K/S値が大きいほど染色濃度が高い。
【0035】
<実施例1>
1.4dtex×38mm長のベンベルグ短繊維わた(キュプラ:旭化成せんい(株)製)をオーバーマイヤー染色機に入れ、超分子化アミノ変性シリコーン(大原パラヂウム化学(株)製、パラシリコンBS−230(数平均分子量12,000))の0.5重量%水溶液を用いて35℃で30分間処理し、加圧脱水したのち、パッケージ型乾燥機にて85℃で90分熱処理した。
得られたベンベルグ短繊維わたをリング紡績機にて紡績し、ベンベルグ40綿番手の紡績糸(単糸繊度1.4dtex)を得た。
得られた紡績糸を用いて、19GG小寸丸編機にてフライス編物を試作した。得られた編地を液流染色機にて、下記条件で精練して、ネット型乾燥機にて130℃×1分で乾燥した。目付が155g/m2、セルロース混率が100質量%、コース数50、ウェール数24の丸編物を得た。
<条件> 精練:スコアロールFC−250(北広ケミカル社製) 1g/l
80℃で20分
湯洗い:60℃で20分
得られた丸編物の評価結果を表1に示す。
【0036】
<比較例1>
実施例1で用いた1.4dtex×38mm長のベンベルグ短繊維わたに、ステアリル硫酸エステルナトリウムを37重量%含有する油剤を0.4重量%付与した。得られた油剤のみが付与されたベンベルグ短繊維わたを用いて、実施例1と同様に目付が155g/m2、セルロース混率が100質量%、コース数50、ウェール数24の丸編物を得た。
得られた丸編物の評価結果を表1に示す。
【0037】
<実施例2>
実施例1で得られたフライス編物を液流染色機にて、下記条件で精練し、反応染料を用いて染色、ソーピングを行い、ネット型乾燥機にて130℃×1分で乾燥した。目付が155g/m2、セルロース混率が100質量%、コース数50、ウェール数24の丸編物を得た。
<条件> 精練:スコアロールFC−250(北広ケミカル社製) 1g/l
80℃で20分
湯洗い:60℃で20分
染色:Sumifix HF Blue BG gran 1.0%omf
硫酸ナトリウム 30g/l
炭酸ナトリウム 15g/l
60℃で90分
中和:酢酸 1cc/l
40℃で10分
ソーピング:グランアップNC(三洋化成社製) 1cc/l
90℃で20分
湯洗い:60℃で20分
得られた丸編物の評価結果を表1に示す。
【0038】
<比較例2>
比較例1で得られたフライス編物を液流染色機にて、実施例2と同様に精練し、反応染料を用いて染色、ソーピングを行い、ネット型乾燥機にて130℃×1分で乾燥した。目付が155g/m2、セルロース混率が100質量%、コース数50、ウェール数24の丸編物を得た。
得られた丸編物の評価結果を表1に示す。
【0039】
<比較例3>
比較例1で得られたフライス編物にアミノ変性シリコーン(ニッカシリコーンAMZ−3(日華化学(社)製)を2重量%含有する水溶液を付与して、ネット型乾燥機にて130℃×1分で乾燥した。目付が155g/m2、セルロース混率が100質量%、コース数50、ウェール数24の丸編物を得た。
得られた丸編物の評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
<実施例3〜6、比較例4>
超分子化アミノ変性シリコーン(大原パラヂウム化学(株)製、パラシリコンBS−230(数平均分子量12,000))の濃度を0.05重量%(比較例4)、0.2重量%(実施例3)、1.0重量%(実施例4)、3.0重量%(実施例5)、5.0重量%(実施例6)に変更した以外は、実施例2と同条件で実施した。得られた丸編物の消臭試験を行い、結果を表2に示した。なお、実施例2で得られた丸編物の消臭試験も行い、得られた結果を表2に併せて示した。
【0042】
【表2】
【0043】
表1の結果より、実施例1及び2と比較例1及び2とを比較すると、洗濯前の柔らかさに差がある。更に洗濯後の柔らかさに大きなさがあり、実施例1及び2の柔軟性が明白である。又、比較例3において、洗濯前の柔らかさが洗濯後で低下していることは、柔軟剤に耐久性のないことを明白に示している。実施例2と比較例2の比較により、染色性には差のないことが明白である。
表2の結果より、実施例2、3、4、5、6は消臭効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によって得られるセルロース繊維わたは、洗濯により発生する単糸膠着や柔軟成分の脱落が防止され、風合い硬化が抑制されている。従って、本発明によって得られるセルロース繊維わたを、用いて製品化された肌着などのインナー商品、ブラウスやスカートなどのアウター商品、裏地、枕カバー、シーツ及び布団やケットの中綿などの寝具は、長期間に渡って繰り返される着用及び洗濯に対して優れた商品耐久性を有する。